JP2001105527A - 高面圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性に優れた潤滑処理鋼板およびその成形方法 - Google Patents

高面圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性に優れた潤滑処理鋼板およびその成形方法

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JP2001105527A
JP2001105527A JP28523399A JP28523399A JP2001105527A JP 2001105527 A JP2001105527 A JP 2001105527A JP 28523399 A JP28523399 A JP 28523399A JP 28523399 A JP28523399 A JP 28523399A JP 2001105527 A JP2001105527 A JP 2001105527A
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lubricating film
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high surface
ironing
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Tomohisa Katayama
知久 片山
Masato Nakazawa
眞人 仲澤
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 板厚減少率が40%以上となるような、高面
圧での強しごき加工において型カジリを起こさず、かつ
連続成形可能な鋼材を提供する。 【解決手段】 熱延鋼板または冷延鋼板の片面または両
面に、下地処理を介さずに潤滑性皮膜を有し、かつ、板
厚減少率R(R=100 ×(t0-t1) /t0、t0:初期板厚、
t1: 加工後の板厚)が40%以上、60%以下となるU曲げ
シゴキ加工を受けた際に、最大成形荷重Pmaxと板厚減少
率Rとの間に下式(I)の関係を有する高面圧強しごき
加工での耐型カジリ性に優れた潤滑処理鋼板。 Pmax/(t1×W0×TS) ≦A×R (I) W0:鋼板の試験片幅 TS:鋼板の引張強度 A=0.
00287 × to +0.0702(t0、t1、W0の単位はmm、TSの
単位はMPa、Pmaxの単位はN)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面に潤滑処理皮
膜を有する熱延鋼板もしくは冷延鋼板に関する。特に、
従来、金属石鹸系のボンデ処理が必須とされてきた高面
圧下での強しごき加工において、ボンデ処理を省略して
も成形が可能で、かつ高速連続成形時にも、ボンデ処理
と同等以上の良好な耐型カジリ性を有する潤滑処理鋼板
およびその成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱延鋼板もしくは冷延鋼板に潤滑性を付
与してその用途を広げようとする試みは、従来から行わ
れてきた。まず熱延鋼板に関しては、コストダウンのた
め冷延鋼板の代替品として使用する場合に、そのままの
機械的特性値では深絞り成形性が得られないことから、
表面に潤滑性皮膜を付与することでこの問題を解決しよ
うとする試みがなされている。例えば、特開平9−23
9896号公報および特開平9−267430号公報に
おいては、親水性樹脂と潤滑剤を含む皮膜を0.5〜3.0g/
m2 付着させることで、熱延鋼板でありながら、SPC
C並みの限界絞り比(LDR)が得られると記載されて
いる。また、特開平8−257494号公報において
は、親水性樹脂、潤滑剤および防錆剤を含む皮膜を0.5
〜5.0g/m2 付着させることで、成形性のみならず一次防
錆性においても、防錆油を塗布した冷延鋼板に匹敵する
潤滑熱延鋼板が得られると記載されている。また、特開
平1−48604号公報には、潤滑性樹脂皮膜を形成さ
せる熱延鋼板の表面粗度を制御することで、型カジリや
プレス割れを軽減できるとの記載がある。
【0003】一方、冷延鋼板では主として家電用途にお
いて、プレス成形に必要な潤滑油の脱脂工程を省略する
目的から、亜鉛めっき、クロメートを介して潤滑性皮膜
を付与する試みが従来から行われており、例えば特開平
7−195029号公報、特開平7−185455号公
報、特開平7−41962号公報などにその例を見るこ
とができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来技術
は、自動車や家電用部品の通常の成形法である、低面圧
の深絞り・張り出し成形等を対象としているため、本発
明の対象となるような高面圧強しごき加工においては潤
滑皮膜が高面圧、高伸びに耐えきれずに破断し、この結
果型かじりを発生する。ここで低面圧とは、通常1MPaの
オーダーの面圧であり、高くても10 MPaのオーダーであ
る。一方、ここで言う高面圧強しごき加工では、面圧は
低くても100 MPa のオーダーであり、高い時は、1000MP
a のオーダーとなる。さらに、通常の低面圧の成形では
引張力により成形されるため、成形性の良好な軟鋼板で
も高々50%伸びると破断する。この結果、表面の潤滑
皮膜の伸びも高々50%である。一方、高面圧強しごき
加工では、鋼板は圧延のように板厚方向の圧縮力によっ
て伸ばされるため、100%以上破断することなく変形
する。このため、表面の潤滑皮膜も100%以上伸ばさ
れることになる。このように、通常の低面圧の成形に比
べ高面圧強しごき加工において、表面の潤滑皮膜は極め
て過酷な変形を被るため、従来技術では、型かじりを防
止することが不可能である。具体的に高面圧強しごき加
工とは、例えば従来鋼材を用い鍛造で製造されていた部
品を板金化する際に行われる、最低でも10%、最大6
0%程度の板厚減少を伴うしごき成形であり、適用部品
としては寸法精度や平坦度を要求される部品、あるいは
グローブ転造で成形されている部品、例えばオートマチ
ック・トランスミッション用歯形部品等である。
【0005】また従来技術は、高面圧強しごき加工での
加工発熱に対する考慮が十分でないため、従来技術の潤
滑性皮膜を単に厚くするだけでは、単独成形時には一応
の加工が出来るケースがあっても、連続成形時には、発
熱による皮膜特性の劣化により成形不能となる。
【0006】本発明は、従来、金属石鹸系のボンデ処理
が必須とされてきた高面圧強しごき加工において、ブラ
ンキングした材料に一旦ボンデ処理をオフラインで行
い、そののちに高面圧強しごき加工による連続成形を行
う従来方式(3工程)に代えて、潤滑性皮膜を有する鋼
板のコイルもしくはフープから順送によりブランキング
を行い、引き続きオンラインで連続成形を行う(2工
程)ことにより、工程省略およびボンデ処理コストの削
減を可能とするものである。
【0007】本発明者らは公知例を詳細に調査した結
果、これらがいずれも板厚1mm前後の鋼板を円筒成形や
ハット成形することで、成形性の評価を行っていること
に気づいた。これらの成形方式では面圧が100 MPa にも
満たないため、本発明の対象である高面圧強しごき加工
をシミュレートすることは到底できず、従って、本課題
を解決する潤滑性皮膜を見出すことは決してできない。
そこで、本発明者らは高面圧での強しごき加工をシミュ
レートする試験方法を鋭意検討した結果、板厚2.6mm 以
上、板厚減少率40〜60%でのU曲げシゴキ加工がこれに
相当すること、この試験法において型カジリを発生しな
い鋼板は、実際の高面圧強しごき加工においても型カジ
リを発生しないことを見出した。ここで得られた知見の
一例を図1に示す。このように、従来技術1(パラフィ
ン系固体潤滑皮膜鋼板)では、10%程度、従来技術2
(家電用潤滑皮膜鋼板)でも30%の板厚減少率の低しご
き成形で型かじりが発生するのに対し、本発明では40%
以上の高しごき成形でも型かじりが発生せず、ボンデ処
理を施した鋼板と同等の性能を示すことがわかる。
【0008】続いて本発明者らは、上記の試験法で型カ
ジリを発生しない鋼板が、加工発熱を伴う高速連続成形
においても高面圧強しごき加工により型カジリを発生し
ないための条件について鋭意検討した。この結果、連続
成形時の鋼板温度における潤滑性皮膜の破断強度および
破断伸びが適正であれば、高速連続成形においても高面
圧強しごき加工により型カジリを発生しないことを見出
し、本発明を完成するに到った。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の(1)
〜(3)より成る。 (1)熱延鋼板または冷延鋼板の片面または両面に、下
地処理を介さずに潤滑性皮膜を有し、かつ、板厚減少率
R(R=100 ×(t0-t1) /t0、t0:初期板厚、t1: 加工
後の板厚)が40%以上、60%以下となるU曲げシゴキ加
工を受けた際に、最大成形荷重Pmaxと板厚減少率Rとの
間に下式(I)の関係を有することを特徴とする高面圧
強しごき加工での耐型カジリ性に優れた潤滑処理鋼板。 Pmax/(t1×W0×TS) ≦A×R (I) W0:鋼板の試験片幅 TS:鋼板の引張強度 A=−0.00287× to +0.0702 (t0、t1、W0の単位はmm、TSの単位はMPa、Pmaxの
単位はN) (2)鋼板の板厚が1mm以上、8mm以下、潤滑性皮膜の
厚さが1μm 以上、15μm 以下であって、かつ、連続
成形時の鋼板温度における潤滑性皮膜の材料物性が下式
(II)(III) を満足することを特徴とする前記(1)記
載の高面圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性
に優れた潤滑処理鋼板。 TS(L) ≧ 15 MPa (II) El(L) ≧ 100% (III) TS(L):潤滑性皮膜の引張強度 El(L):潤滑性皮膜の破断伸び (3)潤滑性皮膜の主成分が、有機高分子化合物(樹
脂)であることを特徴とする前記(2)記載の高面圧強
しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性に優れた潤滑
処理鋼板。 (4)潤滑性皮膜中にさらに潤滑剤を含有し、その含有
量が潤滑性皮膜の全重量に対して5〜30wt%であっ
て、かつその融点が100 ℃以上であることを特徴とする
前記(3)記載の高面圧強しごき加工での耐型カジリ
性、連続成形性に優れた潤滑処理鋼板。 (5)高速連続成形に際し、鋼板の加工発熱による金型
の温度上昇を防ぐために金型を冷却し、鋼板の温度を潤
滑性皮膜の樹脂成分のガラス転移温度+30℃以下に制
御することを特徴とする前記(3)〜(4)の鋼板の成
形方法。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳述する。まず前
記(1)は、本発明の対象である高面圧強しごき加工に
おいて、潤滑性鋼板が型カジリを発生させないための要
件を定量的に規定したものであり、特に潤滑性鋼板の高
面圧における摩擦係数にかかわる。ここで式(I)につ
いて説明する。
【0011】通常、金型との摩擦係数が低い材料ほど成
形性が優れることは一般に知られているが、本発明の対
象となるような高面圧での摩擦係数を通常の試験方法で
求めることは不可能である。そこで、板厚減少率が40%
以上60%以下となるU曲げしごき加工で得られる最大ポ
ンチ荷重(Pmax)から、塑性力学の考え方に基づき、高
面圧下での金型と材料の摩擦特性を評価する手法を発明
した。
【0012】U曲げしごき加工におけるPmaxは、摩擦係
数以外の材料特性や成形条件の影響を受けるため、その
ままでは摩擦特性の評価値とならない。そこで、U曲げ
しごき加工における釣り合い方程式を解き、まず摩擦係
数以外の影響因子を明らかにした。その結果、摩擦係数
以外に鋼板の引張強度(TS)、試験片幅(W0)、試験片の
初期板厚(t0)、試験片の加工後の板厚(t1)がPmaxに
影響を与えることが明らかになった。さらに塑性力学の
理論式から、Pmaxを式(I)の左辺のように補正すれば
高面圧下の摩擦特性を評価できることがわかった。
【0013】つぎに、U曲げしごき加工と実部品の高面
圧強しごき加工との相関関係を得るために、潤滑性皮膜
の仕様を変えて数多くの実験を行ったところ、式(I)
を満足すれば実部品の加工においても、成形性、耐型か
じりともに問題無いことが明らかとなった。すなわち、
面圧により樹脂が損傷すると摩擦係数が上昇しPmaxが大
きくなり、型かじりが発生する。
【0014】以上のように、前記(1)は、高面圧での
強しごき加工が可能であるために鋼板が具備すべき必要
条件を表わしている。図1に(I)式の境界線を太線で
示した。(I)式を満足する本発明が、特に板厚減少率
40%〜60%の範囲でも型かじりが無く、従来技術を
大幅に凌駕して、ボンデ処理並みの成形性を示すことが
分かる。
【0015】なお、U曲げしごき加工とは、図2に示し
たように固定したダイスに鋼板を置きポンチをその上方
から下降させ、鋼板をU型に成形する際に、ポンチとダ
イスの隙間を鋼板の板厚より小さくし、すなわち(Ld
−Lp)/2を鋼板板厚より小さくし板厚方向に強度の
圧縮変形を加えるしごき加工である。
【0016】本発明において、熱延鋼板や冷延鋼板の上
に、下地処理を介さずに潤滑性皮膜を設けた理由は、一
般に、亜鉛めっき鋼板などに比べて熱延鋼板や冷延鋼板
が、皮膜との密着性に優れるため、および製造工程の簡
略化によりコストダウンをはかるためである。
【0017】前記(2)は、前記(1)の試験法で型カ
ジリを発生しない潤滑性皮膜鋼板が、さらに、加工発熱
を伴う高速連続成形においても高面圧強しごき加工によ
り型カジリを発生しないための条件について規定したも
のである。
【0018】プレス成形においては、鋼板の塑性変形に
よる加工発熱、および鋼板と金型の摺動による摩擦熱に
より、金型および鋼板の温度が上昇することが一般に知
られている。高速で連続的に成形が行われる場合には、
放熱される間もなく次の成形が行われるため、温度上昇
はより顕著となる。通常、金型温度は成形開始と同時に
上昇し、その後一定となる。この最高到達温度は成形条
件や金型の寸法・形状により変化するが、これは材料の
加工の程度の違いにより発熱の程度が異なるためであ
り、また、金型の寸法・形状により熱伝達が異なるため
である。そこで、各種金型を用い成形条件を変化させ、
金型温度が定常状態になった時点での鋼板温度を測定す
るため、熱電対を取り付けた鋼板サンプルにより実部品
の高面圧強しごき加工を連続して行ったところ、鋼板温
度はおおよそ80℃〜160℃になることが明らかとな
った。また、成形後の板厚減少率は最大で60%であっ
た。
【0019】そこで、このような鋼板温度での高面圧強
しごき加工においても、良好な成形性、耐型カジリ性を
有するために必要な潤滑性皮膜の要件について検討した
結果、前記(2)を得た。
【0020】まず、鋼板の板厚を1mm以上、8mm以下と
したのは、本発明の対象となる実部品の板厚がこの範囲
にあるためであり、特に3mm以上、6mm以下のものが多
い。必要となる潤滑性皮膜の厚さは、加工の程度や工程
数により異なり、加工が厳しいほど、工程が多いほど、
必要膜厚は厚くなる。そこで、種々の実部品を成形した
ところ、最低でも1μm は必要であることが分かった。
より好ましくは3μm以上である。15μm 以上では効果
が飽和する。
【0021】つぎに、潤滑性皮膜の材料物性と高面圧強
しごき加工の連続成形性の関係を検討した。この結果、
前記(1)を満足するような高面圧でも低摩擦係数を示
す潤滑性皮膜において、連続成形性の良否に影響したの
は、潤滑性皮膜の引張り破断強度TS(L) と破断伸びEl
(L) であった。潤滑性皮膜の単離膜(膜厚10〜20μm)を
作成し、先に述べた連続成形時の鋼板温度において単軸
引張り試験を行ったところ、式(II)、(III) を同時に満
足する皮膜のみが、実部品の連続成形においても、高面
圧強しごき加工に対して良好な成形性、耐型かじり性を
発現した。これらの式のいずれか一方でも満足されない
と、高面圧強しごき加工による連続成形時に潤滑性皮膜
が損傷し、型カジリが発生する。潤滑性皮膜として使用
可能なものは、前記(I)〜(III) を満足する限りにお
いては、とくに制限はないが、(3)で述べるような樹
脂皮膜であってもよいし、無機系皮膜であっても構わな
い。
【0022】なお従来技術においても、例えば特開平7
−41962号公報のように、潤滑性皮膜の引張り破断
強度TS(L) と破断伸びEl(L) を規定したものがあるが、
いずれも引張り試験の温度が先に述べた連続成形時の鋼
板温度から大きくはずれており、高面圧強しごき加工の
連続成形において必要な皮膜特性を表わしたものとは言
えない。また、前述したように、本発明が対象とする成
形における面圧および鋼板の伸びひずみ量は、従来技術
が対象としている成形に比べ極めて大きいため、従来技
術では、そもそも前記(1)を満足することができな
い。
【0023】前記(3)は、潤滑性皮膜の好適例を述べ
たものである。皮膜の主成分の有機高分子化合物(樹
脂)は、前記(I)、(II)および(III) の要件を考慮し
て選択しなければならない。ただし、必ずしもその樹脂
単独でこれらを満足する必要はなく、2種類以上の樹脂
をブレンドしてポリマーアロイとしたり、樹脂中に添加
剤を充填するなどの方法により、TS(L) 、El(L) を調整
してもよい。あるいは、(4)で述べるように、潤滑剤
を付与することにより(I)にかかわる摩擦係数を調節
することも可能である。また、中には、成形条件を限定
することで使用可能な樹脂もある。
【0024】以上含めて、使用が可能な樹脂の例として
は、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー等の
ポリオレフィン系樹脂、ナイロン樹脂(ポリアミド樹
脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、テフ
ロン(PTFE)やその他のフッ素樹脂(PFA, FEP, ETFE,
ECTFE, PCTFE, PVDF, PVF 等)、ポリエチレンテレフタ
レート(PET) 等のポリエステル樹脂などが例示できる。
反対に、主成分としては使用が困難な樹脂の例として
は、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン樹
脂、ポリ塩化ビニル、フェノール・ホルムアルデヒド樹
脂、不飽和ポリエステルなどがあげられる。これらはい
ずれも破断伸びが数〜数十%であり、主成分として用い
ると(III) 式を満足できない。ただし、皮膜物性を損な
わない範囲で、少量添加したり主成分の樹脂をこれらで
変性したりすることは構わない。
【0025】図3は、樹脂のTS(L) 、El(L) が連続成形
時の鋼板温度に対してどのように変化するか、その結
果、その樹脂の可使用範囲がどこにあるかを、模式的に
表わしたものである。鋼板温度が高いほど樹脂のTS(L)
は小さくなり、逆にEl(L) は大きくなる。従って、(II)
式を満足する下限と(III) 式を満足する下限の間の領域
が、その樹脂の可使用範囲となる。実部品の成形条件が
この可使用範囲にあれば、その樹脂を主成分とする潤滑
性皮膜を鋼板に付与することで、高面圧強しごき加工に
よる連続成形が可能となる。可使用範囲の大小は樹脂物
性の温度依存性によって異なり、樹脂によっては可使用
範囲のないものもある。あるいは、可使用範囲が狭く、
成形条件をその範囲内に入るように変更することで初め
て使用できる樹脂もある。
【0026】なお、成形条件としては、鋼板温度だけで
はなく成形速度も樹脂のTS(L) 、El(L) に影響するが、
その影響代が温度に比べて小さい事から、ここでは、引
張り速度を1000mm/minで固定し、温度のみを実成形時の
鋼板温度と一致させて、単離塗膜の引張り試験を行い、
こうして求めた樹脂のTS(L) 、El(L) を用いた。
【0027】潤滑性樹脂皮膜の成膜方法は特に制限しな
いが、樹脂の種類に応じて、例えば、溶融状態にしてか
らこれを押し出して鋼板上にコーティングする方法(押
し出しラミネーション)、あらかじめフィルムとして成
形したものを鋼板上に熱圧着する方法(フィルムラミネ
ーション)、樹脂を溶剤に溶解して鋼板上に塗布したの
ち、乾燥・成膜する方法、樹脂をエマルジョンとして水
に分散させ、これを鋼板に塗布して、乾燥・成膜する方
法などがある。
【0028】樹脂中に充填可能な添加剤としては、例え
ば、シリカ、チタニア、ジルコニア、タルク、クレー、
ドロマイト、炭酸カルシウム、硫酸ベリウム、カーボン
ファイバー、グラスファイバー、雲母、チタン酸カリウ
イスカー、滑石などの充填剤、あるいはリン酸系、アミ
ン系、含チッソ系などの防錆剤が例示できる。
【0029】前記(4)は、前記(3)の潤滑性皮膜の
うちで、特に、前記(1)を満足させるために潤滑剤の
添加を必要とするものについて、その要件を述べたもの
である。
【0030】潤滑剤の添加量が潤滑性皮膜の全重量に対
して5%未満では効果が十分でなく、一方、30%を越
えるとむしろ皮膜強度が低下して、前記(2)の(II)式
を満足することが困難となる。潤滑剤の融点が100 ℃未
満では、鋼板温度が80℃以上となる高面圧強しごき加
工での連続成形に耐えられない。使用可能な潤滑剤とし
ては、二硫化モリブデン、グラファイト、二硫化タング
ステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、フッ化セリウム、メ
ラミンシアヌレート、テフロン等のフッ素樹脂系ワック
ス、ポリエチレンワックス等がある。
【0031】前記(5)は、図3における樹脂の可使用
範囲が、実部品の高面圧強しごき加工による連続成形条
件からずれている場合に、成形条件を可使用範囲内に入
るように変更するための手段を示したものである。これ
を図4に示す。
【0032】一般に、ガラス転移温度(Tg)を超える温
度では、樹脂のTS(L) は急激に小さくなり、逆にEl(L)
は急激に大きくなる。従って、図3における可使用範囲
の温度上限は、Tgを大きく越えることができない。ここ
で言うガラス転移温度(Tg)とは、市販の動的粘弾性測定
装置を用いて、tan δのピーク温度として測定された値
である。もしも実部品の高面圧強しごき加工による連続
成形条件が、図4の成形条件Iのように樹脂の可使用範
囲外であれば、この樹脂は使用できない。しかし、金型
を冷却することにより、成形条件をIIの範囲に変更でき
れば、この樹脂が使用可能になる。成形条件IIの要件
は、鋼板の最高到達温度が樹脂のTg+30℃である点にあ
る。これを満足させるために、金型温度を何度まで冷却
すべきかは、金型の寸法・形状や材料の加工の程度によ
り異なるため、その都度、経験的に決定しなければなら
ない。より重要なのは成形時の鋼板温度であり、鋼板に
熱電対をつけて成形する方法やサーモビュアーを利用す
る方法などで、実際に確かめる必要がある。
【0033】
【実施例】以下、本発明を実施例を用いて、非限定的に
説明する。 実施例1 第2図に示した金型で板厚減少率が45%となるU曲げし
ごき加工を行った。鋼板のTSは475MPa、試験片幅は50
mmである。表1のうち、A、F、Gの樹脂皮膜を、下地
処理無しでこの鋼板の両面に形成させた。表2の通り本
発明の範囲内であれば、型かじりが発生することなく、
良好な成形品が得られることがわかる。
【0034】実施例2 表1の潤滑皮膜のうち、実施例1以外のものについて
も、U曲げしごき加工を行ったところ、いずれも(I)
式を満足する特性が得られ、本発明の範囲内であること
が分かった。そこで今度は直径50mmの円筒形状のポン
チを用い、連続円筒成形を行った。成形速度は20spm で
ある。使用した鋼板は、板厚が2.6mm 、TSが475MPaの高
張力熱延鋼板である。しごき率を10〜60%まで変化させ
ることにより、連続成形における鋼板温度を変化させ
た。さらに、第5図に示す温度制御装置を含む成形装置
により金型冷却を行い、ポンチ及びダイスに温度制御し
た水を循環させ、鋼板温度を変化させた。結果を表3に
示す。式(II)、(III) を同時に満足するものだけが、高
温での連続成形性に優れることが分かる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【発明の効果】本発明により、従来、金属石鹸系のボン
デ処理が必須とされてきた高面圧下での強しごき加工に
おいて、ボンデ処理を省略しても成形が可能で、かつ高
速連続成形時にも、ボンデ処理と同等以上の良好な耐型
カジリ性を有する潤滑処理鋼板を提供できる。この結
果、工程省略、ボンデ処理費用削減、金型寿命延長など
によるメリットは大きく、工業的にきわめて価値が高い
発明であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の潤滑処理鋼板のU曲げしごき加工によ
る成形性を、従来技術およびボンデ処理と比較したグラ
フであり、図中の太線より下の範囲が本発明である。
【図2】U曲げしごき加工の試験方法を説明する図であ
る。
【図3】樹脂皮膜のTS(L) 、EL(L) の温度変化を示す模
式図である。
【図4】金型冷却の効果を説明する模式図である。
【図5】金型冷却の方法を表わす模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C10M 173/00 C10M 173/00 C10N 40:20 C10N 40:20 Z Fターム(参考) 4D075 AE24 CA09 DB02 DC10 4F100 AB03A AK01B AK01C AR00B AR00C BA02 BA03 BA06 BA13 CA30B CA30C GB90 JA05B JA05C JA20A JA20B JA20C JK16B JK16C JM02B JM02C YY00A YY00B YY00C 4H104 AA04C AA13C AA18C AA19C AA22C AA23C AA24C CA01A CB13A CD02A CE13A EA04A FA02 FA04 LA20 PA23 PA34 QA12

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱延鋼板または冷延鋼板の片面または両
    面に、下地処理を介さずに潤滑性皮膜を有し、かつ、板
    厚減少率R(R=100 ×(t0-t1) /t0、t0:初期板厚、
    t1: 加工後の板厚)が40%以上、60%以下となるU曲げ
    シゴキ加工を受けた際に、最大成形荷重Pmaxと板厚減少
    率Rとの間に下式(I)の関係を有することを特徴とす
    る高面圧強しごき加工での耐型カジリ性に優れた潤滑処
    理鋼板。 Pmax/(t1×W0×TS) ≦A×R (I) W0:鋼板の試験片幅 TS:鋼板の引張強度 A=−0.00287× to +0.0702 (t0、t1、W0の単位はmm、TSの単位はMPa、Pmaxの
    単位はN)
  2. 【請求項2】 鋼板の板厚が1mm以上、8mm以下、潤滑
    性皮膜の厚さが1μm 以上、15μm 以下であって、か
    つ、連続成形時の鋼板温度における潤滑性皮膜の材料物
    性が下式(II)(III) を満足することを特徴とする請求
    項1記載の高面圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続
    成形性に優れた潤滑処理鋼板。 TS(L) ≧ 15 MPa (II) El(L) ≧ 100% (III) TS(L):潤滑性皮膜の引張強度 El(L):潤滑性皮膜の破断伸び
  3. 【請求項3】 潤滑性皮膜の主成分が、有機高分子化合
    物(樹脂)であることを特徴とする請求項2記載の高面
    圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性に優れた
    潤滑処理鋼板。
  4. 【請求項4】 潤滑性皮膜中にさらに潤滑剤を含有し、
    その含有量が潤滑性皮膜の全重量に対して5〜30wt%
    であって、かつその融点が100 ℃以上であることを特徴
    とする請求項3記載の高面圧強しごき加工での耐型カジ
    リ性、連続成形性に優れた潤滑処理鋼板。
  5. 【請求項5】 高速連続成形に際し、鋼板の加工発熱に
    よる金型の温度上昇を防ぐために金型を冷却し、鋼板の
    温度を潤滑性皮膜の樹脂成分のガラス転移温度+30℃
    以下に制御することを特徴とする請求項3〜4の鋼板の
    成形方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009125780A (ja) * 2007-11-26 2009-06-11 Nisshin Steel Co Ltd プレス成形品のプレス成形方法
JP2017109224A (ja) * 2015-12-16 2017-06-22 しのはらプレスサービス株式会社 新鍛造加工法を用いた金属製品の製造方法
CN114686294A (zh) * 2022-04-06 2022-07-01 福建凯景新型科技材料有限公司 一种冷轧钢板用的乳化液及其制备方法

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