JP2001076748A - 固体高分子型燃料電池のセパレータ及びその製造方法、固体高分子型燃料電池 - Google Patents

固体高分子型燃料電池のセパレータ及びその製造方法、固体高分子型燃料電池

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 比較的安価であっても高精度なセパレータを
提供すること。 【解決手段】 固体高分子型燃料電池1のセパレータ2
は、基材11と凸部12とを備える。凸部12は、基材
11の両面に対し、導電性材料P1を付着させることに
より形成される。凸部12同士の間の領域は流体流路1
3になっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体高分子型燃料
電池、並びにそのセパレータ及びそのセパレータを製造
する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、クリーンで発電効率の高い次世代
の発電装置が望まれており、酸素及び水素の持つ化学エ
ネルギーを直接電気エネルギーに変換する燃料電池(Fu
el Cell)に対する期待が次第に高まってきている。現
状における燃料電池の種類としては、りん酸型、アルカ
リ型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型(イ
オン交換膜型ともいう。)などが知られている。なかで
も固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electro
lyte Fuel Cell)は、小規模かつポータブルな電源と
しての用途(例えば電気自動車用電源など)に適すると
考えられている。ゆえに、その実用化に向けて、現在精
力的に開発が進められている。
【0003】このタイプの燃料電池は、例えば電解質層
としてプロトン導電性を有するイオン交換膜の1つであ
る固体高分子膜(以後プロトン交換膜)の両側に電極を
配置してなる膜・電極積層体(単電池)を備えている。
このような固体高分子膜は、分子中に水素イオンの交換
基を持つため、飽和含水状態とすることによりイオン導
電性電解質として機能することができる。これらの電極
には白金等の金属触媒が担持されている。一対の電極の
うちの一方は水素極(陰極)と呼ばれ、他方は酸素極
(陽極)と呼ばれる。膜・電極積層体の両側には一対の
セパレータが配置されており、それらセパレータによっ
て両電極及びイオン交換膜の外周部が挟持されている。
セパレータ用材料としては、従来、炭素粉末及び熱硬化
性樹脂を主成分とする成形体が提案されている。
【0004】水素極側のセパレータを介して供給されて
きた水素ガス(H2)は、水素極における触媒反応によ
り水素イオン(H+)と電子(e-)とに解離する。水素
イオンはプロトン交換膜を通過しながら酸素極に向かっ
て移動し、電子は外部回路を通って酸素極側へ移動す
る。酸素極側には酸素ガス(O2)が供給されている。
【0005】従って、酸素極における触媒反応により、
水素イオン及び外部回路を経由した電子が酸素ガスと反
応し、水(H2O)が生じる。このとき、外部回路を経
由した電子は電流となり、負荷に対して電力を供給する
ことができる。別の言いかたをすると、酸素ガス及び水
素ガスを燃料として、電気分解反応の逆反応により、起
電力が得られるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、気体不透過
性炭素(ガラス状炭素や樹脂含浸炭素材等)からなる従
来のセパレータは、凸部としての多数のリブを片面また
は両面に備えている。各リブの上面は電極に接触した状
態で配置される。また、酸素ガス、水素ガス、水分等の
流体は、リブ間の領域を流通するようになっている。
【0007】従来においてこのようなリブは、金型を用
いた従来公知のプレス成形法等によりセパレータと同時
に形成されたり、気体不透過性炭素材を機械加工するこ
とにより形成されるのが一般的であった。しかしなが
ら、高精度かつファインなリブを得ようとすると、必然
的に高価な金型が必要になったり、長時間の機械加工が
必要となる。ゆえに、このことがセパレータの生産性低
下の原因となっていた。
【0008】本発明は上記の課題に鑑みてなされたもの
であり、その目的は、比較的安価であっても高精度なセ
パレータ及び固体高分子型燃料電池を提供することにあ
る。また、本発明の別の目的は、上記の優れたセパレー
タの製造に好適な方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、請求項1に記載の発明では、基材と、その基材の
少なくとも片面に対し導電性材料を付着させることによ
り形成された凸部とを備え、前記凸部同士の間の領域が
流体流路になっている固体高分子型燃料電池のセパレー
タをその要旨とする。
【0010】請求項2に記載の発明は、導電基材に導電
性材料を印刷することにより形成された複数のリブを備
えるとしている。請求項3に記載の発明は、請求項1に
おいて、絶縁基材の両面に対し、導電性材料を印刷する
ことにより形成された複数のリブを備え、かつ前記両面
のリブ同士が前記絶縁基材に設けられた導通部を介して
電気的に接続されているとしている。
【0011】請求項4に記載の発明は、請求項3におい
て、前記リブは前記導通部の開口部を覆うように形成し
ている。請求項5に記載の発明は、請求項1において、
基材片面に対する導電性材料の印刷により形成された複
数の第1リブと、前記第1リブと電気的に接続された導
通部とを備える第1絶縁基材と、基材片面に対する導電
性材料の印刷により形成された複数の第2リブと、前記
第2リブと電気的に接続された導通部とを備える第2絶
縁基材と、前記両絶縁基材の間に配置された導電体とか
らなる積層体を構成するとともに、前記第1絶縁基材の
導通部と前記第2絶縁基材の導通部とを、前記導電体を
介して互いに電気的に接続している。
【0012】請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5
のいずれか1項において、前記導通部は導電性材料が充
填された導通部であり、その導通部の内壁面には凹凸が
形成されているとしている。
【0013】請求項7に記載の発明は、請求項3乃至5
のいずれか1項において、前記導通部は導電性材料が充
填されためっきスルーホールであり、そのめっきスルー
ホールの内壁面にあるめっき層には凹凸が形成されてい
るとしている。
【0014】請求項8に記載の発明は、請求項3乃至5
のいずれか1項において、前記導通部は絶縁樹脂材料が
充填されためっきスルーホールであり、そのめっきスル
ーホールの内壁面にあるめっき層には凹凸が形成されて
いるとしている。
【0015】請求項9に記載の発明では、固体高分子型
燃料電池のセパレータを製造する方法であって、炭素を
主成分とする成形体を成形した後、その表面に凸部形成
用の導電性材料を印刷することにより凸部を形成するこ
とを特徴とする固体高分子型燃料電池のセパレータの製
造方法をその要旨とする。
【0016】請求項10に記載の発明では、プロトン交
換膜と、電極と、請求項1乃至8のいずれか1項に記載
のセパレータとを備える固体高分子型燃料電池をその要
旨とする。
【0017】以下、本発明の「作用」について説明す
る。請求項1〜8に記載の発明によると、酸素ガス、水
素ガス、水等の流体が基材を透過することがないので、
流体流路に前記流体を無駄なく確実に流すことができ
る。また、導電性材料の付着により形成された凸部であ
れば、その形成に際して高価なプレス成形用金型や長時
間の機械加工が不要となるため、高精度のセパレータを
得ることができる。
【0018】請求項2に記載の発明によると、基材自体
に導電性があることから、基材両面に印刷形成されたリ
ブ同士が、その導電基材を介して電気的に接続される。
また、導電性材料の印刷により形成されたリブであるた
め、高価なプレス成形用金型や長時間の機械加工によっ
て形成されたリブに比べ、高精度かつファインなものと
なる。
【0019】請求項3に記載の発明によると、基材自体
に導電性がなくても基材に導通部が設けられていること
から、基材両面に印刷形成されたリブ同士が、その導通
部を介して電気的に接続される。また、導電性材料の印
刷により形成されたリブであるため、高価なプレス成形
用金型や長時間の機械加工によって形成されたリブに比
べ、高精度かつファインなものとなる。
【0020】請求項4に記載の発明によると、導通部の
開口部がリブによって覆われることにより、流体流路を
流れる流体が導通部の形成箇所に直接触れなくなり、イ
オン交換膜の被毒化が防止される。
【0021】請求項5に記載の発明によると、両絶縁基
材の間に配置された導電体を介して、第1絶縁基材の導
通部と第2絶縁基材の導通部とを互いに電気的に接続し
た構造であるため、導通部の形成位置に制約を受けにく
くなる。即ち、導通部の形成自由度が大きくなる。
【0022】請求項6に記載の発明によると、凹凸層が
形成された導通部の内壁面に導電性材料を充填すれば、
凹凸のもたらすアンカー効果によって、内壁面に対する
導電性材料の密着性が向上する。その結果、信頼性の向
上が図られる。
【0023】請求項7に記載の発明によると、凹凸層が
形成されためっき層を持つめっきスルーホールに導電性
材料を充填すれば、凹凸のもたらすアンカー効果によっ
て、めっき層に対する導電性材料の密着性が向上する。
その結果、信頼性の向上が図られる。また、導通部の低
抵抗化が図られる結果、ロスが少なくて効率のよい発電
を行うことができる。
【0024】請求項8に記載の発明によると、凹凸層が
形成されためっき層を持つめっきスルーホールに絶縁樹
脂材料を充填すれば、凹凸のもたらすアンカー効果によ
って、めっき層に対する導電性材料の密着性が向上す
る。その結果、信頼性の向上が図られる。
【0025】請求項9に記載の発明によると、成形及び
印刷という一連の工程によって、連続的にセパレータを
製造することが可能である。従って、高価なプレス成形
用金型や長時間の機械加工を必要とする従来方法とは異
なり、安価なセパレータを確実にかつ効率よく製造する
ことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】[第1の実施形態]以下、本発明
を具体化した第1実施形態の固体高分子型燃料電池1を
図1〜図5に基づき詳細に説明する。
【0027】図1,図2には、この燃料電池1は、膜・
電極積層体L1とセパレータ2とを備えている。膜・電
極積層体L1は、プロトン交換膜3の両側に電極4A,
4Bを貼り付けた構造となっている。一方のものは水素
極4Aであり、他方のものは酸素極4Bである。プロト
ン交換膜3は、水素イオンを通過させることができる。
本実施形態では、例えばパーフルオロカーボンスルフォ
ン酸からなる膜をプロトン交換膜3として用いている。
水素極4A及び酸素極4Bは、炭素繊維等を主成分とす
る好通気性のマット状物であり、ここでは矩形状に加工
されている。このマット状物には、白金及びパラジウム
が触媒として担持されている。なお、マット状物には撥
水処理のためフッ素樹脂等が添加されていてもよい。
【0028】膜・電極積層体L1の両側には、一対のセ
パレータ2が配置されている。本実施形態のセパレータ
2は矩形状かつ板状の充実体であって、水素極4A及び
酸素極4Bよりも一回り大きく形成されている。そし
て、プロトン交換膜3の外縁に設けられた肉厚フランジ
部3aは、両セパレータ2の内面外周部によって挟持さ
れている。フランジ部3aとセパレータ2との間には、
外部への流体漏れを防止するために、シール部材として
のゴムパッキング5が介在されている。その結果、両セ
パレータ2間に膜・電極積層体L1が位置ずれ不能に固
定されている。
【0029】図1,図2に示されるように、本実施形態
のセパレータ2は、流体不透過性(Heガス透過におい
て、1×10-4〜1×10-12cc/cm2・sec)の基材とし
ての導電基材11と、その導電基材11の両面に形成さ
れた凸部としての複数のリブ12とを備えている。
【0030】この燃料電池1では、導電基材11とし
て、炭素粉末及び熱硬化性樹脂をその主成分とする板状
成形体15が用いられている。このような板状成形体1
5は、例えば従来公知の押出成形法、シート成形法、ロ
ール成形法、ドクターブレード法等により得ることがで
きる。
【0031】板状成形体15における炭素粉末の役割
は、電気比抵抗を低減してセパレータ2の導電性を向上
させることである。使用可能な炭素粉末としては、天然
黒鉛粉末があるほか、例えば人造黒鉛粉末、ガラス状カ
ーボン、メソカーボン、カーボンブラック等がある。勿
論、これらの混合物を用いることもできる。この場合、
極力、不純物含有量の少ない高純度炭素粉末を用いるこ
とが望ましい。具体的にいうと、本実施形態では、不純
物濃度が200ppm〜300ppm程度の鱗片状炭素
粉末を用いている。
【0032】板状成形体15における熱硬化性樹脂の役
割は、ガス等の流体を透過させない性質をセパレータ2
(特には導電基材11)に与えること、及び好適なシー
ト成形性を与えることである。使用可能な熱硬化性樹脂
としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェ
ノール樹脂などがある。これらのなかでも、特にフェノ
ール樹脂を選択することが好ましい。フェノール樹脂
は、成形性及び流体不透過性に優れるばかりでなく、耐
酸性、耐熱性、コスト性にも優れるからである。なお、
フェノール樹脂には、ノボラック系のものやレゾール系
のもの等がある。ノボラック系フェノール樹脂及びレゾ
ール系フェノール樹脂の混合物を用いても勿論構わな
い。
【0033】図1,図2に示されるように、導電基材1
1の両面には、等断面形状をした複数のリブ12が、基
材外周部を除く箇所において平行に形成されている。膜
・電極積層体L1をセパレータ2で挟持した場合、各リ
ブ12の上端面はプロトン交換膜3に対して当接するよ
うになっている。そして、リブ12同士の間に形成され
る溝状の領域が、酸素ガス、水素ガス、水等の流体を流
通させるための流体流路13となる。
【0034】リブ12の高さは1μm〜500μm程度
に、より好ましくは100μm〜300μm程度に設定さ
れていることがよい。リブ12が高すぎると、セパレー
タ2全体の厚さが増してしまい、燃料電池スタックを構
成したときに大型化するおそれがある。リブ12が低す
ぎると、流体流路13の流路断面積が小さくなり、流体
をスムーズに流通させることができなくなるおそれがあ
る。
【0035】リブ12の幅は1μm〜1000μm程度
に、より好ましくは100μm〜700μm程度に設定さ
れていることがよい。リブ12の幅が大きすぎると、流
体流路13が幅狭となって流路断面積が小さくなるおそ
れがある。リブ12の幅が小さすぎると、印刷法であっ
ても精度よく形成することが困難となるばかりでなく、
構造的に十分な高さが確保されにくくなる。
【0036】このようなリブ12は、導電基材11の両
面に対し、導電性ペーストのような導電性材料を付着さ
せることにより形成される。具体的にいうと本実施形態
のリブ12は、導電性粒子である炭素粉末を主成分とし
て含むカーボンペーストP1の印刷により形成されたも
のとなっている。カーボンペーストP1を選択した第1
の理由は、カーボンは、金属のように陽イオン溶出によ
りプロトン交換膜3を被毒化する危険性がないからであ
る。また、第2の理由は、カーボンからなるリブ12で
あれば、炭素粉末を主成分として含む導電基材11との
熱膨張係数差がほぼ等しくなり、リブ12と導電基材1
1との接合強度も高くなるからである。なお、被毒化を
確実に防止するためには、極力、不純物濃度の低い(具
体的には不純物濃度が数百ppm以下の)カーボンペー
ストP1を用いることがよい。
【0037】次に、本実施形態のセパレータ2を製造す
る手順を図3,図4に基づいて説明する。まず、炭素粉
末及び熱硬化性樹脂を所定割合で配合し、混合物を得
る。この混合物をメタノール等の溶剤を添加して適度な
粘度に調整するとともに、混練機を用いてよく混練す
る。メタノールの代わりに、例えばアセトンや、高粘度
の高級アルコール類等を溶剤として用いてもよい。得ら
れたフレーク状混合物をミキサ等により粉砕し、シート
成形用原料とする。
【0038】次に、得られた原料を用いて押出シート成
形機14による成形を行うことにより、厚さ1mm〜1
0mm程度の板状成形体15を連続的に成形する。この
ような押出成形工程の後、搬送されてくる板状成形体1
5を、加圧機16を用いてその厚さ方向に連続的にプレ
スする。
【0039】プレス工程の後、ある程度締まった板状成
形体15をさらにキュアすべく、搬送されてくる板状成
形体15に対して所定温度・所定時間の加熱を行う。具
体的にいうと、ここでは従来公知のキュア装置17を用
いて、150℃〜250℃かつ5分〜30分の加熱を行
っている。その結果、これまで備えていた柔軟性が失わ
れ、板状成形体15が硬化する。
【0040】キュア工程の後、下記のような手順で印刷
工程を実施する。印刷工程の実施に先立ち、カーボンペ
ーストP1を調製しておく。本実施形態ではカーボンペ
ーストP1(藤倉化成株式会社製、商品名「ドータイ
ト」)を用いるとともに、印刷前にその粘度を2000
cpsに調節しておいた。ペーストP1におけるカーボン
の量は、約65重量%である。なお、カーボンペースト
P1には、分散剤、レベリング剤等が添加されている。
【0041】印刷機18に搬送されてくる図4(a)の
板状成形体15上に、所定のメタルマスク19を密着さ
せる(図4(b)参照)。メタルマスク19には、複数の
細長い開口部19aが形成されている。この状態でメタ
ルマスク19上にカーボンペーストP1を載せ、図4
(c)に示されるようにローラスキージ20を所定方向
に移動させる。すると、メタルマスク19の開口部19
aを介してカーボンペーストP1が刷り込まれる結果、
所定高さ・所定幅のリブ12が印刷形成される。印刷は
片面ずつ行われてもよく、両面同時に行われてもよい。
このようにして印刷が完了したら、メタルマスク19を
導電基材11から剥離する(図4(d)参照)。なお、上
記のようなメタルマスク19を用いた印刷の代わりに、
スクリーン印刷機によるスクリーン印刷を行ってもよ
い。
【0042】印刷工程の後、板状成形体15を切断機2
1に連続的に搬送し、板状成形体15を所定の長さで切
断する。この場合、打抜きプレスによって板状成形体1
5を所定形状に打ち抜いてもよい。上記一連の工程を経
ることによって、所望のセパレータ2が完成する。
【0043】このようにして製作されたセパレータ2
を、膜・電極積層体L1及びゴムパッキング5とともに
組み立てれば、図2等に示す所望の燃料電池1が完成す
る。十分大きな起電力を得るために、このような燃料電
池1を数十枚から数百枚ほど積層し、「燃料電池スタッ
ク」を構成しても勿論構わない。
【0044】次に、図5に基づいて、この燃料電池1に
おける発電原理を説明する。使用に際し、水素極4Aと
酸素極4Bとの間には、モータ等のような負荷が外部回
路として電気的に接続される。この状態で、水素極4A
側のセパレータ2側に、水分とともに水素ガスを連続的
に供給する。このとき、水分及び水素ガスは、リブ12
間に位置する流体流路13内を一定方向に向かって流れ
る。同様に、酸素極4B側のセパレータ2側に、水分と
ともに酸素ガスを連続的に供給する。このとき、水分及
び酸素ガスは、リブ12間に位置する流体流路13内を
一定方向に向かって流れる。
【0045】水素極4A側のセパレータ2を経由して供
給されてきた水素ガスは、水素極4Aにおける触媒反応
により水素イオンとなる。生成された水素イオンは、プ
ロトン交換膜3を通過しながら酸素極4Bに向かって移
動する。酸素極4B側に到った水素イオンは、酸素極4
Bにおける触媒反応によって酸素ガスと反応し、水を生
成させる。このような反応が起こる過程では、電子が外
部回路を通って水素極4Aから酸素極4Bへ移動する。
従って、電流は酸素極4Bから水素極4Aへ流れ、結果
として起電力を得ることができる。すると、外部回路に
直流電流が通電され、負荷であるモータ等が駆動され
る。
【0046】従って、本実施形態によれば以下のような
効果を得ることができる。 (1)本実施形態のセパレータ2は、流体不透過性の導
電基材11と、その導電基材11の両面に対しカーボン
ペーストP1の印刷により形成されたリブ12とを備え
ている。また、リブ12同士の間の領域は、酸素ガス、
水素ガス、水等の流体を循環させるための流体流路13
になっている。この構成であると、前記流体が導電基材
11を透過することがないので、流体流路13に沿って
流体を無駄なく確実に流すことができる。従って、同セ
パレータ2を用いて燃料電池1を構成すれば、安定した
起電力を得ることができる。また、導電性材料の付着に
より形成されるリブ12であれば、その形成に際して高
価なプレス成形用金型や長時間の機械加工を必要としな
い。よって、セパレータ2を比較的安価に得ることがで
き、ひいては燃料電池1の低コスト化が図られる。
【0047】(2)本実施形態のセパレータ2では、流
体不透過性の導電基材11の両面に対し、カーボンペー
ストP1を印刷して複数のリブ12を形成している。従
って、基材11自体に導電性があることから、その両面
に印刷形成されたリブ12同士が、その導電基材11を
介して電気的に接続される。従って、セパレータ2を積
層すれば、隣接するセパレータ2間の導通が図られるこ
とになり、よって比較的容易に燃料電池スタックを構成
することができる。
【0048】また、導電性材料であるカーボンペースト
P1の印刷により形成されたリブ12は、高価なプレス
成形用金型や長時間の機械加工によって形成されたリブ
に比べ、高精度かつファインなものとなるという利点が
ある。
【0049】(3)本実施形態のセパレータ2は、上述
した成形工程、プレス工程、キュア工程、印刷工程及び
切断工程という一連の工程によって、連続的に製造され
ることが可能である。従ってこの方法によれば、高価な
プレス成形用金型や長時間の機械加工を必要とする従来
方法とは異なり、高精度かつファインなリブ12を備え
るにもかかわらず安価なセパレータ2を、確実にかつ効
率よく製造することができる。 [第2の実施形態]次に、本発明を具体化した実施形態
2の燃料電池1におけるセパレータ31を図6〜図8に
基づいて説明する。ここでは実施形態1と相違する点を
主に述べ、共通する点については同一部材番号を付すの
みとしてその説明を省略する。
【0050】図6,図7に示されるように、本実施形態
のセパレータ31では、絶縁基材35が基材として用い
られている点で、実施形態1と異なっている。ここで使
用される好適な絶縁基材35の例としては、ガラスエポ
キシ基材、ポリイミド基材、ポリエステル基材、フッ素
系樹脂基材等といった一般的なプリント配線板用基材を
挙げることができる。この種の絶縁基材35は、加工性
や絶縁特性などに優れるという利点を有する。
【0051】絶縁基材35の両面には、凸部としての複
数のリブ12が導電性材料を用いて印刷形成されてい
る。ただし、これらのリブ12の形成にあたって、金、
銀、白金、パラジウム等から選択される少なくとも1種
の貴金属を含む貴金属ペーストP2を用いている点が、
実施形態1と異なる。貴金属ペーストP2を選択した理
由は、貴金属はイオン化傾向が小さいため、当該金属が
プロトン交換膜3に接触したとしても、プロトン交換膜
3を被毒化させる危険性がないからである。
【0052】また、絶縁基材35には、導通部としての
めっきスルーホール32が設けられている。めっきスル
ーホール32の開口部は、リブ12の底面と接触した状
態となっている。よって、各めっきスルーホール32
は、絶縁基材35の表裏両面のリブ12同士を互いに電
気的に接続させている。リブ12は、めっきスルーホー
ル32の開口部を覆う位置に形成されている。従って、
流体流路13内を流れる流体に対して、めっきスルーホ
ール32は直接触れることはない。このことを可能とす
るために、本実施形態ではめっきスルーホール32の開
口径をリブ12の幅よりも若干小さく設定している。導
通部であるめっきスルーホール32内には、導電性材料
が充填されていることが好ましい。ここで導電性材料
は、貴金属ペーストP2自身であってもよいほか、それ
以外の物質であってもよい。
【0053】次に、本実施形態のセパレータ31を製造
する手順を図8に基づいて説明する。まず、出発材料で
ある絶縁基材35を用意する。絶縁基材35は、すでに
所定長さに分断されたものでもよいほか、ロール状に巻
かれたものでもよい。ロール状のものを選択した場合に
は、後に所定長さで分断する工程が必要となる。
【0054】図8(a)に示される絶縁基材35の所定
箇所に、あらかじめスルーホール形成用孔33を透設す
る(図8(b)参照)。次いで、絶縁基材35に図示しな
いマスクを設けた後、触媒核付与及びその活性化を行
い、さらに無電解銅めっきを行う。その結果、図8
(c)に示されるめっきスルーホール32が形成され
る。
【0055】次に、下記のような手順で印刷工程を実施
する。印刷工程の実施に先立ち、貴金属ペーストP2を
調製しておく。本実施形態では銀ペースト(藤倉化成株
式会社製、商品名「ドータイト」)を用いるとともに、
印刷前にその粘度を2000cpsに調節しておいた。前
記銀ペーストには、分散剤、消泡剤等が添加されてい
る。
【0056】図8(d)に示されるように、印刷機に搬
送されてきた絶縁基材35上にメタルマスク19を密着
させ、かつ同メタルマスク19上に貴金属ペーストP2
を載せた状態で、ローラスキージ20を所定方向に移動
させる。すると、メタルマスク19の開口部19aを介
して貴金属ペーストP2が刷り込まれる結果、所定高さ
・所定幅のリブ12が印刷形成される。このようにして
印刷が完了したら、メタルマスク19を絶縁基材35か
ら剥離する(図8(e)参照)。なお、上記のようなメ
タルマスク19を用いた印刷の代わりに、スクリーン印
刷機によるスクリーン印刷を行ってもよい。
【0057】そして、上記一連の工程を経ることによっ
て、所望のセパレータ31が完成する。 このようにし
て製作されたセパレータ31を、膜・電極積層体L1及
びゴムパッキング5とともに組み立てれば、図7等に示
す所望の燃料電池1が完成する。
【0058】従って、本実施形態によれば、以下のよう
な効果を得ることができる。 (1)本実施形態では、貴金属ペーストP2の印刷によ
りリブ12を形成しているため、セパレータ31の形成
に際して高価なプレス成形用金型や長時間の機械加工が
不要となる。よって、比較的安価にセパレータ31を得
ることができ、ひいては燃料電池1の低コスト化を図る
ことができる。
【0059】(2)また、本実施形態のセパレータ31
では、導電性を有しない絶縁基材35を用いるととも
に、その絶縁基材35に導通部としてのめっきスルーホ
ール32を設けている。このため、絶縁基材35自体に
導電性がなくても、その両面に印刷形成されたリブ12
同士が、同めっきスルーホール32を介して電気的に接
続される。従って、セパレータ31を積層したときに、
隣接するセパレータ31間の導通が図られることにな
り、よって比較的容易に燃料電池スタックを構成するこ
とができる。
【0060】また、貴金属ペーストP2の印刷により形
成されたリブ12は、プレス成形用金型や長時間の機械
加工によって形成されたリブに比べ、高精度かつファイ
ンなものとなるという利点がある。
【0061】(3)このセパレータ31では、めっきス
ルーホール32の両端開口部がリブ12によって覆われ
ている。従って、流体流路13を流れる流体がめっきス
ルーホール32の形成箇所に直接触れないようになって
いる。ゆえに、めっきスルーホール32を構成している
銅めっき層の銅がイオン化して流体中に混入するおそれ
がなく、プロトン交換膜3の被毒化が確実に防止され
る。その結果、長期にわたって安定した起電力を得るこ
とができる。 [第3の実施形態]次に、本発明を具体化した実施形態
3のセパレータ41を図9,図10に基づいて説明す
る。ここでは実施形態1,2と相違する点を主に述べ、
共通する点については同一部材番号を付すのみとしてそ
の説明を省略する。
【0062】本実施形態のセパレータ41では、単層構
造を採用していた実施形態1,2のものとは異なり、積
層構造が採用されている。セパレータ41を構成する積
層体は、第1絶縁基材35Aと、第2絶縁基材35B
と、両絶縁基材35A,35Bの間に配置された層状の
導電体42とからなる。絶縁基材35A,35Bとして
は、実施形態2にて示した一般的なプリント配線板用基
材が使用される。層状の導電体42としては、例えば、
銅めっき層、アルミニウムめっき層、金めっき層などに
代表される導電性金属のめっき層が形成される。このよ
うなめっき層のほか、導電性金属のスパッタ層、導電性
金属ペーストの印刷層、導電性金属からなる箔などを、
導電体42として採用することも可能である。
【0063】導電体42の厚さは1μm〜1000μm程
度、特には10μm〜100μm程度であることがよい。
導電体42が薄すぎると、電気抵抗が大きくなり、発熱
等を引き起こす原因となる。逆に、導電体42が厚すぎ
ると、電気抵抗の増大という問題は生じない反面、セパ
レータ41全体の厚さが増してしまう。従って、燃料電
池スタックを構成したときに、大型化したり重量が増加
してしまうおそれがある。
【0064】図9に示されるように、導電体42は、両
絶縁基材35A,35Bの外形寸法よりもひとまわり小
さい領域内に形成されていることがよい。別のいい方を
すると、導電体42は、両絶縁基材35A,35Bの外
周部のみを残した状態で形成されていることがよい。こ
のように形成しておくと、積層時に導電体42が積層体
の外表面から露出しなくなり、被毒化の確実な防止につ
ながるからである。
【0065】第1絶縁基材35Aの片面には、プロトン
交換膜3の貴金属ペーストP2の印刷によって複数の第
1リブ12Aが形成されている。第1絶縁基材35Aに
は、その表裏面を貫通するめっきスルーホール32Aが
設けられている。めっきスルーホール32Aは第1リブ
12Aと接触しており、それらは互いに電気的に接続し
ている。同様に、第2絶縁基材35Bの片面には、貴金
属ペーストP2の印刷によって複数の第2リブ12Bが
形成されている。第2絶縁基材35Bには、その表裏面
を貫通するめっきスルーホール32Bが設けられてい
る。めっきスルーホール32Bは第2リブ12Bと接触
しており、それらは互いに電気的に接続している。
【0066】第1絶縁基材35Aのめっきスルーホール
32Aと、第2絶縁基材35Bのめっきスルーホール3
2Bとは、導電体42を介して互いに電気的に接続され
ている。即ち、めっきスルーホール32A,32B及び
導電体42によって、積層体における表裏面の層間接続
が図られている。
【0067】従って、本実施形態によれば、以下のよう
な効果を得ることができる。 (1)本実施形態のセパレータ41によれば、実施形態
2にて列挙した作用効果と同様の作用効果を得ることが
できる。
【0068】(2)また、このセパレータ41は、両絶
縁基材35A,35Bの間に配置された導電体42を介
して、めっきスルーホール32A,32B同士が互いに
電気的に接続された構造を備えている。このため、実施
形態2のような構造を採用したときに比べ、めっきスル
ーホール32A,32Bの形成位置に制約を受けにくく
なる。即ち、めっきスルーホール32A,32Bの形成
自由度が大きくなる結果、セパレータ41の設計が容易
になるという利点がある。 [第4の実施形態]次に、本発明を具体化した実施形態
4のセパレータ51を説明する。ここでは前記各実施形
態と相違する点を主に述べ、共通する点については同一
部材番号を付すのみとしてその説明を省略する。
【0069】この実施形態では、図11(a)〜(d)
に示される手順でセパレータ51を製造している。ま
ず、絶縁基材35を用意するとともに、所定箇所に導通
部52を透設する。導通部52は孔状(即ち貫通孔)で
あっても溝状(即ち貫通溝)であってもよい。絶縁基材
35を印刷機にセットし、かつメタルマスク19を密着
させた状態で、ローラスキージ20にて貴金属ペースト
P2を印刷することにより、リブ12を形成する。この
とき、導電性材料である貴金属ペーストP2が導通部5
2内に充填されるように、粘度等を適宜設定する。この
ような方法によると、絶縁基材35の表裏面のリブ12
同士が、導通部52内に充填された貴金属ペーストP2
を介して導通される。
【0070】従って、本実施形態によれば、以下の効果
を奏する。即ち、実施形態2のようにめっきスルーホー
ル32を形成する必要がなくなるため、めっき層を持た
ない単なる導通部52で足りることとなる。ゆえに、そ
の分だけ製造に要する工数が少なくて済む。なお、貴金
属ペーストP2の代わりに実施形態1のカーボンペース
トP1を用いることもできる。 [第5の実施形態]次に、本発明を具体化した実施形態
5のセパレータ61を図12に基づいて説明する。ここ
では前記実施形態2と相違する点を主に述べ、共通する
点については同一部材番号を付すのみとしてその説明を
省略する。
【0071】本実施形態のセパレータ61では、導通部
であるめっきスルーホール32の内壁面には、めっき層
としての無電解銅めっき層62が設けられている。そし
て、この無電解銅めっき層62の表層には、微細な凹凸
からなる凹凸層63が形成されている。即ち、無電解銅
めっき層62の表面は粗化されている。めっきスルーホ
ール32のランド64の表層にも、同様に凹凸層63が
形成されている。なお、十分なアンカー効果を得るため
には、凹凸層63の表面粗さRaを1μm〜20μmに
設定することがよい。
【0072】本実施形態における凹凸層63は、無電解
銅−ニッケル−リンめっき等によって得られる針状合金
層になっている。この他、銅の酸化処理によって得られ
る黒化層、銅の酸化処理および還元処理によって得られ
る黒化還元層、ブラウン還元層などを選択してもよい。
これらの層のなかでも、とりわけ無電解銅−ニッケル−
リンめっき等によって得られる針状合金層を選択するこ
とが望ましい。その理由は、このような針状合金層は、
1)充填された材料との密着性に優れる、2)強靱性が
あるため硬質でクラックが生じにくい、3)ヒートサイ
クル特性に優れる、等の好適な性質を有するからであ
る。
【0073】針状合金層を形成するための無電解銅めっ
き浴の組成の例を以下に示す。 硫酸銅: 1〜40g/リットル、 硫酸ニッケル: 0.1〜6.0g/リットル、 クエン酸: 10〜20g/リットル、 次亜リン酸塩: 10〜100g/リットル、 ほう酸: 10〜20g/リットル、 界面活性剤: 0.01〜10g/リットル。
【0074】また、このときにおける好適な無電解めっ
きの条件を以下に示す。 めっき浴の温度: 60〜80℃、 pH: 8.5〜10程度、 浴比: 0.01〜1.0dm2 /リットル、 析出速度: 1〜3μm/10分、 めっき時間: 5〜20分。
【0075】針状合金層における凹凸層63の厚さ(め
っきスルーホール内壁の平滑な導体表面から針状合金の
頂部までの距離を指す。)は、0.5μm〜7.0μ
m、好ましくは1.0μm〜5.0μm、より好ましく
は1.5μm〜3.0μmの範囲内にて設定されること
が望ましい。その理由は、凹凸層63が厚くなりすぎる
と、めっき時間の長期化に起因してコスト高になるほ
か、針状皮膜自体が脆くなって充填材料との間に隙間が
生じやすくなるからである。一方、凹凸層63が薄くな
りすぎると、凹凸によるアンカー効果が不充分となり、
充填材料との間に隙間が生じやすくなるからである。
【0076】前記針状合金層における凹凸層63は、ス
ズ層によって保護されていることが望ましい。その理由
を以下に列挙する。1)前記合金めっきは酸や酸化剤に
溶解しやすい。従って、スズ層によって合金めっきを保
護しておけば溶解が防止され、凹凸層63を構成する凹
凸の好適な形状が維持されるためである。2)スズ層
は、凹凸層63と充填材料との間における空隙の発生を
防止し、密着性を向上させることができるからである。
3)スズは、工業的に安価で毒性が少ない金属だからで
ある。4)スズは、銅との置換反応によって析出する金
属であるため、銅−ニッケル−リン層の針状合金を破壊
することなく被覆することができるからである。
【0077】本実施形態において、めっきスルーホール
32内に充填される材料としては、例えば樹脂絶縁材料
や導電性材料などがある。前記樹脂絶縁材料としては、
マトリクス樹脂中にフィラーを含ませたものを使用する
ことが好ましい。このようなフィラーが含まれていると
熱膨張係数が小さくなり、ヒートサイクル特性が改善さ
れるからである。マトリクス樹脂としては、エポキシ樹
脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂等が挙
げられる。これらのなかでもエポキシ樹脂を用いること
が望ましい。フィラーとしては、エポキシ樹脂やポリイ
ミド樹脂等の有機フィラー、シリカやアルミナ等の無機
フィラー等を用いることができる。フィラーの平均粒径
は0.1μm〜10μmであることが望ましい。その理
由は、平均粒径が小さすぎると、硬化時において膨張・
収縮を緩和する効果が得られにくくなるからである。逆
に、平均粒径が大きすぎると、フィラーが前記針状合金
層の針状形状よりも大きくなる結果、フィラーの針状合
金層への追従性が悪くなるおそれがあるからである。
【0078】また、前記導電性材料としては、実施形態
2においても述べたように、金、銀、白金、パラジウム
等から選択される少なくとも1種の貴金属を含むリブ形
成用の貴金属ペーストP2が用いられることがよい。勿
論、貴金属の代わりに銅等の卑金属を含むペーストを用
いることもできる。特に銅を選択した場合、低抵抗化及
び低コスト化が図られる。なお、金属を含むペーストの
代わりに実施形態1のカーボンペーストP1を用いるこ
ともできる。
【0079】従って、本実施形態によれば、以下のよう
な効果を得ることができる。 (1)めっきスルーホール32に樹脂絶縁材料または導
電性材料を充填した場合、凹凸層63を構成する凹凸の
もたらすアンカー効果によって、無電解銅めっき層62
に対する前記材料の密着性が向上する。しかも、めっき
スルーホール32内にボイドが存在しなくなる。従っ
て、ヒートサイクル特性が向上し、めっきスルーホール
32部分にクラック等が発生しにくくなる。その結果、
信頼性に優れたセパレータ61、ひいては信頼性に優れ
た燃料電池1を実現することができる。
【0080】(2)特に、めっきスルーホール32内に
導電性材料を充填することにより、めっきスルーホール
32の低抵抗化を図ることができる。その結果、ロスが
少なくて効率のよい発電を行うことが可能な優れた燃料
電池1を実現することができる。 [第6の実施形態]次に、本発明を具体化した実施形態
6のセパレータ71を図13に基づいて説明する。ここ
では前記実施形態4と相違する点を主に述べ、共通する
点については同一部材番号を付すのみとしてその説明を
省略する。
【0081】本実施形態のセパレータ71は、導通部5
2の内壁面及び絶縁基材35の表裏面に微細な凹凸から
なる凹凸層72が形成されている点で、実施形態4と異
なっている。
【0082】このような凹凸層72は、例えば導通部5
2の透設後に絶縁基材35に対して下記の樹脂材料を塗
布しておき、この状態で酸化処理を行って前記樹脂材料
からなる層を粗化することなどにより、得ることが可能
である。
【0083】ここで、前記樹脂材料としては、酸あるい
は酸化剤に対して可溶性でありかつあらかじめ硬化処理
された耐熱性樹脂微粒子(フィラー樹脂)と、硬化処理
することにより酸あるいは酸化剤に対して難溶性になる
耐熱性樹脂液(マトリクス樹脂)とを含むものが挙げら
れる。なお、前記マトリクス樹脂は、感光性であっても
よく熱硬化性であってもよい。
【0084】好適な耐熱性樹脂微粒子としては、1)平
均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末を凝縮させて平均
粒径2μm〜10μmの大きさとした凝集粒子、2)平
均粒径2μm〜10μmの耐熱性樹脂粉末と、平均粒径
が2μm以下の耐熱性樹脂粉末との粒子混合物、3)平
均粒径2μm〜10μmの耐熱性樹脂粉末の表面に平均
粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末または無機微粉末を
付着させてなる疑似粒子、等が挙げられる。これらのな
かでも、特に2)の粒子混合物を用いることが好適であ
る。その理由は、この樹脂を粗化することによって凹凸
層72を形成した場合、より確実なアンカー効果を確保
することができるからである。
【0085】前記フィラー樹脂となる耐熱性樹脂微粒子
としては、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビ
スマレイミド−トリアジン樹脂等の粉末を使用すること
が好適である。そのような樹脂微粒子の大きさは、0.
1μm〜10μmの範囲内であることが望ましい。前記
マトリクス樹脂となる耐熱性樹脂としては、エポキシ樹
脂、エポキシ変成ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フ
ェノール樹脂等を使用することが可能である。また、こ
れらの樹脂に対して感光性を付与させてもよい。この樹
脂液に対して上記の樹脂微粒子を所定量配合した後に、
ブチルセルソルブ等の溶剤を加えて攪拌することによっ
て、前記樹脂微粒子が均一に分散されたワニスを得るこ
とができる。このようにして得られたワニスは、絶縁基
材35に対して均一に塗布する。このとき、絶縁基材3
5の表裏面のみならず、導通部52の内壁面もワニスに
よって覆われるようにする。その後、硬化処理を行い、
図示しない樹脂層を形成する。
【0086】前記酸化処理に用いられる酸化剤として
は、例えばクロム酸、クロム酸塩、過マンガン酸塩、オ
ゾン等が挙げられる。このような酸化剤により酸化処理
を行うと、フィラー樹脂部分のみが選択的に溶解され、
マトリクス樹脂表面にアンカーとしての無数の微細な凹
凸が形成される。即ち、前記樹脂層の表面が粗化され、
凹凸層72が形成される。なお、凹凸層72の表面粗度
(Rmax)は、1μm〜20μmの範囲内に設定され
ることが望ましい。この範囲内であると、好適なアンカ
ー効果が得られるからである。
【0087】従って、本実施形態によれば、以下の効果
を奏する。導通部52に導電性材料である貴金属ペース
トP2を充填した場合、凹凸層72を構成する凹凸のも
たらすアンカー効果によって、導通部52の内壁面の樹
脂層に対する前記導電性材料の密着性が向上する。従っ
て、ヒートサイクル特性が向上し、導通部52にクラッ
ク等が発生しにくくなる。その結果、信頼性に優れたセ
パレータ71、ひいては信頼性に優れた燃料電池1を実
現することができる。なお、導通部52の内壁面に樹脂
層を形成することなく、当該導通部52の内壁面に直接
的に凹凸層72を形成するようにしても勿論よい。
【0088】なお、本発明の実施形態は以下のように変
更してもよい。 ・ リブ12,12A,12Bのレイアウトは、任意に
変更することが可能である。また、細長い形状のリブ1
2,12A,12B以外のもの、例えば突起などを凸部
として形成してもよい。
【0089】・ 実施形態1にて示した製造方法におけ
るプレス工程やキュア工程は、特に必要でなければ省略
されても構わない。 ・ 実施形態1にて示したカーボンペーストP1や、実
施形態2等にて示した貴金属ペーストP2等の代わり
に、ウレタン系、ゴム系、エラストマー系のインクを印
刷用導電性材料として用いることもできる。
【0090】・ 導電基材は、実施形態1のような板状
成形体15に限定されることはなく、例えば熱可塑性樹
脂フィルムを加熱処理等によって炭化させたもの等であ
ってもよい。
【0091】・ 前記実施形態に示したような印刷法に
代えて、例えば、塗布法、めっき法、貼り付け法などの
他の手法によって、凸部としてのリブ12,12A,1
2Bの付着形成を行うことも可能である。
【0092】次に、特許請求の範囲に記載された技術的
思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技
術的思想をその効果とともに以下に列挙する。 (1) 請求項1乃至9のいずれか1つにおいて、前記
導電性材料は低不純物濃度であること。従って、この技
術的思想1に記載の発明によれば、プロトン交換膜の被
毒化を確実に防止できる。
【0093】(2) 請求項1乃至9のいずれか1つに
おいて、前記導電性材料は低不純物濃度のカーボンペー
ストであること。従って、この技術的思想2に記載の発
明によれば、プロトン交換膜の被毒化を確実に防止でき
る。
【0094】(3) 請求項1,2,6、技術的思想
1,2のいずれか1つにおいて、前記導電基材は炭素粉
末を含むシート成形体であること。 (4) 請求項3,4,5のいずれか1つにおいて、前
記導通部はめっきスルーホールであること。従って、こ
の技術的思想4に記載の発明によれば、基材両面のリブ
同士を確実に導通できる。
【0095】(5) 技術的思想4において、前記導通
部は前記めっきスルーホール内に導電性材料を充填した
ものであること。従って、この技術的思想5に記載の発
明によれば、基材両面のリブ同士をより確実にかつ低抵
抗で導通できる。
【0096】(6) 請求項3,4,5、技術的思想
4,5のいずれか1つにおいて、前記絶縁基材はプリン
ト配線板用基材であること。従って、この技術的思想6
に記載の発明によれば、前記基材は加工性や絶縁特性な
どに優れるため、性能のよいセパレータを比較的安価に
得ることができる。
【0097】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1〜8に記
載の発明によれば、比較的安価であっても高精度な固体
高分子型燃料電池のセパレータを提供することができ
る。
【0098】請求項2,3に記載の発明によれば、高精
度かつファインなリブを備えたセパレータを提供するこ
とができる。請求項4に記載の発明によれば、プロトン
交換膜の被毒化を防止することができる。
【0099】請求項5に記載の発明によれば、導通部の
形成自由度が大きくなるため、セパレータの設計が容易
になる。請求項6,7,8に記載の発明によれば、信頼
性の向上が図られる。
【0100】請求項9に記載の発明によれば、上記の優
れたセパレータの製造に好適な方法を提供することがで
きる。請求項10に記載の発明によれば、比較的安価で
あっても高精度な固体高分子型燃料電池を提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態の固体高分子
型燃料電池の分解斜視図。
【図2】第1実施形態の燃料電池の概略断面図。
【図3】第1実施形態の燃料電池の製造手順を示す概略
図。
【図4】(a)〜(d)は、第1実施形態の燃料電池の
製造手順を示す概略図。
【図5】第1実施形態の燃料電池の原理説明図。
【図6】第2実施形態の固体高分子型燃料電池のセパレ
ータの一部分解斜視図。
【図7】第2実施形態の燃料電池の概略断面図。
【図8】(a)〜(e)は、第2実施形態の燃料電池の
製造手順を示す概略図。
【図9】第3実施形態の固体高分子型燃料電池のセパレ
ータの一部分解斜視図。
【図10】第3実施形態の燃料電池の概略断面図。
【図11】(a)〜(d)は、別例のセパレータの製造
手順を示す概略図。
【図12】(a)は別例のセパレータを示す要部拡大概
略断面図、(b)はめっきスルーホールの内壁面の拡大
断面図。
【図13】別例のセパレータを示す要部拡大概略断面
図。
【符号の説明】
1…固体高分子型燃料電池、2,31,41,51,6
1,71…セパレータ、3…プロトン交換膜、4A,4
B…電極、11…基材としての導電基材、12…凸部と
してのリブ、12A…凸部としての第1リブ、12B…
凸部としての第2リブ、13…流体流路、15…成形体
としてのシート成形体、32…導通部としてのめっきス
ルーホール、35…基材としての絶縁基材、35A…基
材としての第1絶縁基材、35B…基材としての第2絶
縁基材、42…導電体、L1…膜・電極積層体、P1…
導電性材料としてのカーボンペースト、P2…導電性材
料としての貴金属ペースト。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材と、その基材の少なくとも片面に対し
    導電性材料を付着させることにより形成された凸部とを
    備え、前記凸部同士の間の領域が流体流路になっている
    固体高分子型燃料電池のセパレータ。
  2. 【請求項2】導電基材に導電性材料を印刷することによ
    り形成された複数のリブを備えることを特徴とする請求
    項1に記載の固体高分子型燃料電池のセパレータ。
  3. 【請求項3】絶縁基材の両面に対し、導電性材料を印刷
    することにより形成された複数のリブを備え、かつ前記
    両面のリブ同士が前記絶縁基材に設けられた導通部を介
    して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1
    に記載の固体高分子型燃料電池のセパレータ。
  4. 【請求項4】前記リブは前記導通部の開口部を覆うよう
    に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の固
    体高分子型燃料電池のセパレータ。
  5. 【請求項5】基材片面に対する導電性材料の印刷により
    形成された複数の第1リブと、前記第1リブと電気的に
    接続された導通部とを備える第1絶縁基材と、 基材片面に対する導電性材料の印刷により形成された複
    数の第2リブと、前記第2リブと電気的に接続された導
    通部とを備える第2絶縁基材と、 前記両絶縁基材の間に配置された導電体とからなる積層
    体を構成するとともに、 前記第1絶縁基材の導通部と前記第2絶縁基材の導通部
    とを、前記導電体を介して互いに電気的に接続したこと
    を特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池の
    セパレータ。
  6. 【請求項6】前記導通部は導電性材料が充填された導通
    部であり、その導通部の内壁面には凹凸層が形成されて
    いることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に
    記載の固体高分子型燃料電池のセパレータ。
  7. 【請求項7】前記導通部は導電性材料が充填されためっ
    きスルーホールであり、そのめっきスルーホールの内壁
    面にあるめっき層には凹凸層が形成されていることを特
    徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の固体高
    分子型燃料電池のセパレータ。
  8. 【請求項8】前記導通部は絶縁樹脂材料が充填されため
    っきスルーホールであり、そのめっきスルーホールの内
    壁面にあるめっき層には凹凸層が形成されていることを
    特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の固体
    高分子型燃料電池のセパレータ。
  9. 【請求項9】固体高分子型燃料電池のセパレータを製造
    する方法であって、炭素を主成分とする成形体を成形し
    た後、その表面に凸部形成用の導電性材料を印刷するこ
    とにより凸部を形成することを特徴とする固体高分子型
    燃料電池のセパレータの製造方法。
  10. 【請求項10】プロトン交換膜と、電極と、請求項1乃
    至8のいずれか1項に記載のセパレータとを備える固体
    高分子型燃料電池。
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