JP2001066251A - 多成分有機溶液の分析方法 - Google Patents
多成分有機溶液の分析方法Info
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Abstract
液との混合液中に含まれる各成分の濃度をそれぞれ分離
して非接触で求めることのできる多成分有機溶液の分析
方法を提供すること。 【解決手段】 所望の波長間を反復走査させた単色光を
被検液としての多成分有機溶液および標準液に透過させ
て前記多成分有機溶液の吸収スペクトルを測定し、その
吸収スペクトルの多変量データから前記多成分有機溶液
中の各成分の濃度値を求めるにあたり、前記多成分有機
溶液が、水溶性であり、かつ、一部水を含むものであっ
て、更に、前記吸収スペクトルとして、1800〜26
00nmの波長範囲での近赤外吸収スペクトルA、B、
a,b,c,d、e,f,gを測定するようにする。
Description
分析方法に係り、詳しくは多成分有機溶液として、水溶
性の有機溶液と酸・アルカリなどの水溶液との混合液を
用い、測定で得られた近赤外吸収スペクトルの多変量デ
ータから各成分の濃度を求めるための分析方法に関す
る。
性の有機溶液と酸・アルカリなどの水溶液との混合液中
に含まれる各成分の濃度を求めるのに、従来では屈折率
法や導電率法が採用されていたけれども、各成分のそれ
ぞれの濃度を分離して測定することが難しい上に、導電
率法のように混合液に電極を接触させないと測定できな
いなどの問題があった。また、特開平6−66718号
公報には、200nm〜2500nmの波長範囲での吸
収スペクトルを測定するとともに、主成分回帰法の多変
量解析法を化学計量のために応用した手法により混合液
中に含まれる各成分の濃度を求めることが開示されてい
るけれども、この混合液の主要成分、つまり溶媒は水で
あるから、用いるフローセルの厚みが薄く、そのため、
溶液の粘性で混合液がフローセル中を流れ難いという問
題や、フローセルの汚れや詰まりおよびクリーニングの
観点から不都合が生じる。
たもので、その目的は、水溶性の有機溶液と酸・アルカ
リなどの水溶液との混合液中に含まれる各成分の濃度を
それぞれ分離して非接触で求めることのできる多成分有
機溶液の分析方法を提供することである。
め、この発明は、所望の波長間を反復走査させた単色光
を被検液としての多成分有機溶液および標準液に透過さ
せて前記多成分有機溶液の吸収スペクトルを測定し、そ
の吸収スペクトルの多変量データから前記多成分有機溶
液中の各成分の濃度値を求めるにあたり、前記多成分有
機溶液が、水溶性であり、かつ、一部水を含むものであ
って、更に、前記吸収スペクトルとして、1800nm
〜2600nmの波長範囲での近赤外吸収スペクトルを
測定することを特徴とする。
の分析方法の好ましい実施形態について説明する。な
お、この実施形態で用いる多成分有機溶液として、例え
ばエチレングリコール溶液(水溶性の有機溶液)とフッ
化水素酸との混合液を採用している。すなわち、この実
施形態では、混合液の組成を、エチレングリコール(以
下、EGという)、フッ化水素(HF)、水(以下、w
atという)としている。
いて、符号1は光源で、例えばハロゲン・タングステン
光源である。2はレンズ、3は入射スリット、4は第1
凹球面鏡、5は回動操作される回折格子、6は第2凹球
面鏡、7は出射スリット、8は回動操作される平面鏡、
9は固定平面鏡、10はフローセル、12は補償板、1
3は組み合わせレンズ、15は検出器で、これらで近赤
外分光・検出手段100が構成されている。なお、前記
フローセル10の厚みD(図1参照)は0.5mm〜
1.0mmである。そのため、上述した特開平6−66
718号公報の場合のような不都合は起こらない。すな
わち、この発明の多成分有機溶液は、前記特開平6−6
6718号公報のように、水をメインとするものではな
く、多成分有機溶液中の水の濃度を50[wt%]以下
としていることから、特開平6−66718号公報の発
明で用いるフローセルよりも厚みの大きなフローセル1
0を用いることができ、そのため、溶液の粘性で混合液
がフローセル中を流れ難いという問題は生じない。な
お、この発明の実施形態では、多成分有機溶液中の水の
濃度を10[wt%]以下としている(図2、図3、図
4参照)。
/mmの平面回折格子であり、回折格子5、第1凹球面
鏡4、第2凹球面鏡6から分光器が構成される。この分
光器は、焦点距離が例えば150mmの非対称ツェルニ
・ターナ型の分光器である。
る。前記フローセル10は例えば石英製である。
nm〜2600nmの波長範囲で高感度を呈する半導体
検出器が好ましく、例えばInGaAsまたはPbS検
出器を挙げることができる。
ローセル10中に取り入れた標準液、被検液と補償板1
2とに、所望の波長間(1800nm〜2600nm)
を反復走査させた単色光を選択的に透過させ、検出器1
5でその光強度を検出する。そして、その検出信号が信
号処理部に入る。この信号処理部は、増幅器20、AD
変換器25、演算手段(CPU)30よりなり、測光値
を吸光度〔実サンプル(未知のサンプル)の吸光度〕に
変換し、この吸光度と、予め作成してあるHF,EG,
watの各濃度回帰係数テーブル(校正係数テーブル)
(後述する)とからそれぞれEGの濃度[単位:wt
%]、HFの濃度[単位:wt%]およびwatの濃度
[単位:wt%]が求まる。この濃度はディスプレイ4
5より表示される。なお、回折格子5と平面鏡8はイン
ターフェイス35を介して演算手段30からの指令によ
って回動操作される。
料(既知濃度)を用意し、各標準試料について1800
nm〜2600nmにおける近赤外吸収スペクトルを測
定し、13個の近赤外吸収スペクトルAを得る(図2参
照)。用いた各標準試料の組成比(濃度比)は以下の通
りである。 標準試料(1) HF:EG:wat= 0:100: 0 標準試料(2) HF:EG:wat= 0: 90:10 標準試料(3) HF:EG:wat= 0: 95: 5 標準試料(4) HF:EG:wat= 0: 98: 2 標準試料(5) HF:EG:wat=10: 80:10 標準試料(6) HF:EG:wat= 5: 90: 5 標準試料(7) HF:EG:wat= 2: 96: 2 標準試料(8) HF:EG:wat= 5: 85:10 標準試料(9) HF:EG:wat= 2: 93: 5 標準試料(10) HF:EG:wat= 1: 97: 2 標準試料(11) HF:EG:wat= 2: 88:10 標準試料(12) HF:EG:wat= 1: 94: 5 標準試料(13) HF:EG:wat=0.5:98:1.5
外吸収スペクトルは符号Bで示されており、1950n
m付近に水の吸収が現れていることが分かる。また、標
準試料(1),(2),(3),(4)から得られる近
赤外吸収スペクトルは、後述する図3にも示されてい
る。
から2600nmまで測定波長λiを1nm毎に変化さ
せ、その都度、13個の近赤外吸収スペクトルAそれぞ
れにおいて測定した吸光度を含む多数の近赤外吸収スペ
クトルデータとHF、EG、watの検量線(後述す
る)に基づいてHF、EG、wat毎に濃度回帰係数テ
ーブル(校正係数テーブル)(後述する)を作成する。
要するに、この発明では、図2で測定した近赤外吸収ス
ペクトルAを用い、多変量解析法における例えばPLS
法(あるいはPCR法などの多変量解析法を化学計量の
ために応用した手法)により濃度回帰係数を求め、この
濃度回帰係数を用い、実サンプル(未知のサンプル)で
の近赤外吸収スペクトルから、濃度を算出する。
解析法の解明過程は以下の通りである。つまり、図2の
例えば標準試料(5)における近赤外吸収スペクトル
は、1800nm(=λ0 ),1801nm(=
λ1 ),1802nm(=λ2 ),…,2598nm,
2599nm(=λ799 ),2600nm(=λ800 )
の測定波長λi (i=0〜800)の数(=801)に
等しい個数の変数(変量)からなる多変量と捉える。そ
して、例えばHFの濃度Cを1つの特性とすると、この
特性により多変量データがいかに変化するかが分かれ
ば、新たに測定された多変量から、その原因となった特
性、すなわち、未知のサンプルのHF、EG、wat濃
度を求める(予測する)ことができる。
赤外吸収スペクトルAから得られる(13×801)個
のデータと、前記式とから、各濃度回帰係数f0 ,f
1 ,f2 〜f800 が求まる。
ら、未知のサンプルのHF濃度を求める(予測する)こ
とができる。
成立する。
た場合、EGに水(wat)を10[wt%]、5[w
t%]、2[wt%]のように添加したときの、180
0nmから2600nmにおける近赤外吸収スペクトル
a,b,c,dの変化を示している。ここで、近赤外吸
収スペクトルaは、0[wt%]のwatの標準試料
(1)から得られたスペクトルである。近赤外吸収スペ
クトルbは、2[wt%]のwatの標準試料(4)か
ら得られたスペクトルである。近赤外吸収スペクトルc
は、5[wt%]のwatの標準試料(3)から得られ
たスペクトルである。近赤外吸収スペクトルdは、10
[wt%]のwatの標準試料(2)から得られたスペ
クトルである。
る。 2.水(wat)が増えると、1950nm付近で吸収
ピークが上昇する。 3.EGは1950nm付近に吸収は無い。 4.2100nm付近より長波長側には、EGに起因す
る吸収が2300nm付近と2500nm付近に現れ、
2300nm付近の吸収が減少し、2500nm付近の
吸収が増加する。 5.2100nm付近より長波長側では、EGの吸収
は、水(wat)による干渉を受けている。よって、単
純に2300nm付近あるいは2500nm付近の吸光
度を測定するだけでは精度のよい測定ができない。
%]に固定し、HFとEGの濃度を変化させたときの、
1800nmから2600nmにおける近赤外吸収スペ
クトルの変化を示している。ここで、近赤外吸収スペク
トルeは、標準試料(11)から得られたスペクトルで
ある。近赤外吸収スペクトルfは、標準試料(8)から
得られたスペクトルである。近赤外吸収スペクトルg
は、標準試料(5)から得られたスペクトルである。
1800nmから2600nmにわたり吸収が増加して
いる。つまり、水溶性の有機溶液であるエチレングリコ
ール溶液中にHFが添加され、添加量が多くなる程ベー
スラインが上昇する。更に詳しくは、溶媒が水の場合、
HFの溶ける量に応じた水のエネルギの横シフトがある
だけで、水にHFが溶けてもHFによる近赤外吸収はな
く、そのため吸収ピークが現れない。このような現象
は、HF以外に、例えば、H2 O2 やH2 SO4 あるい
はHClの場合にも当てはまる。これは、HF、H2 O
2 、H 2 SO4 、HClなどは、近赤外で吸収のある結
合(基)、例えば、−NH,−CO,−CH,−OHを
持っていないからである。一方、EGは−OH基を持っ
ており近赤外吸収特性はあるが、8(=88−80)
[wt%]程度の少しの濃度変化では近赤外吸収スペク
トルe,f,gの変化は無いはずである。したがって、
ベースラインの上昇は、エチレングリコールのような有
機溶液へのHFの添加に起因するものと推測される。
意味で、この発明の測定波長として1800nm〜26
00nmの波長範囲の近赤外線を用いたのは理由につい
て以下に説明する。
波長範囲の近赤外線を用いたときよりも多いこと。 2.吸収ピークtがシャープであること。 3.吸収量が大であること。 4.他の物質の干渉が少ないこと。 以上のように、この発明では、目的とする物質の吸収が
明確な測定波長(1800nm〜2600nm)が選ば
れている。
を短くできるとともに、フローセル10中における混合
液の流れが水の粘性の影響を受けない程度にフローセル
10の厚みDを薄くできる。そのため、S/N比を上げ
ることができる上に、混合液の液量が少なくてすむ。
ら、有機溶液の粘性作用によりフローセル10に付着す
る有機物の量が少なくてすみ、フローセル10をパージ
する際に、有機物が洗い流しにくいという事態を回避で
きる。
方法を実施する前記分析装置の目盛精度を示す。
実サンプル(未知のサンプル)での近赤外吸収スペクト
ルから算出された実際のHF濃度値(予測値)(wt
%)と、HF調製濃度(wt%)との相関を示す。ここ
で、実サンプルは、重量を測定することで調製する。図
5(B)はEGの相関を示す。図5(C)は水(wa
t)の相関を示す。
成分とも非常によい相関を示すことが分かる。すなわ
ち、この発明は、高い測定精度を有する。
の波長の光を吸収する性質を利用して、例えば13個の
サンプリングを行って、多数の多変量データから各成分
の濃度を計測するものである。光源を出射した光を分光
器で広い波長範囲にわたり分光した後、試料測定部に導
入する。この試料測定部に入射した光は、多成分有機溶
液(サンプル)側と標準液(レファレンス)側とに一定
周期で切り替えられ、それぞれの透過量を検出器で検出
する。これにより、安定した吸収スペクトルを得ること
ができ、得られた多変量データから各成分の濃度を求め
ることができる。
して、グリセリン、エタノールなどの水溶性アルコール
を含む。また、前記水溶性の有機溶液と混合させる水溶
性の溶液として、酸・アルカリなどの水溶液以外に水溶
性塩も含む。
であり、かつ、一部水を含む多成分有機溶液を1800
nm〜2600nmの波長範囲での近赤外吸収スペクト
ルを測定し、その吸収スペクトルの多変量データから前
記多成分有機溶液中の各成分の濃度値を算出したもので
ある。この場合、例えば多変量解析法を化学計量のため
に応用した手法による解析により濃度値を算出できる。
よって、水溶性の有機溶液と例えば酸・アルカリなどの
水溶液との混合液中に含まれる各成分の濃度をそれぞれ
分離して非接触で求めることができる。
構成説明図である。
を変えたときの1800nm〜2600nmの波長範囲
における近赤外吸収スペクトルを示す特性図である。
水を添加したときの1800nmから2600nmの波
長範囲における近赤外吸収スペクトルを示す特性図であ
る。
ッ化水素酸とエチレングリコールの濃度を変化させたと
きの、1800nmから2600nmの波長範囲におけ
る近赤外吸収スペクトルを示す特性図である。
の実際の濃度値(予測値)と、調製濃度との相関を示す
図である。(B)は、上記実施形態におけるエチレング
リコールの実際の濃度値(予測値)と、調製濃度との相
関を示す図である。(C)は、上記実施形態における水
の実際の濃度値(予測値)と、調製濃度との相関を示す
図である。
B…水の近赤外吸収スペクトル、a,b,c,d、e,
f,g…近赤外吸収スペクトル。
Claims (5)
- 【請求項1】 所望の波長間を反復走査させた単色光を
被検液としての多成分有機溶液および標準液に透過させ
て前記多成分有機溶液の吸収スペクトルを測定し、その
吸収スペクトルの多変量データから前記多成分有機溶液
中の各成分の濃度値を求めるにあたり、前記多成分有機
溶液が、水溶性であり、かつ、一部水を含むものであっ
て、更に、前記吸収スペクトルとして、1800nm〜
2600nmの波長範囲での近赤外吸収スペクトルを測
定することを特徴とする多成分有機溶液の分析方法。 - 【請求項2】 前記多成分有機溶液が、水溶性の有機溶
液と酸・アルカリなどの水溶液との混合液である請求項
1に記載の多成分有機溶液の分析方法。 - 【請求項3】 前記多成分有機溶液中の各成分の濃度値
を、温度補償型主成分回帰法(PCR)または温度補償
型偏最小二乗法(PLS)などの多変量解析法を化学計
量のために応用した手法による解析により算出する請求
項1または請求項2に記載の多成分有機溶液の分析方
法。 - 【請求項4】 分析に用いるフローセルが、0.5mm
〜1.0mmの厚みを有する請求項1ないし請求項3の
いずれかに記載の多成分有機溶液の分析方法。 - 【請求項5】 前記多成分有機溶液中の前記水の濃度が
50[wt%]以下である請求項1ないし請求項4のい
ずれかに記載の多成分有機溶液の分析方法。
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