JP2001063422A - 乗員保護用シート - Google Patents

乗員保護用シート

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JP2001063422A
JP2001063422A JP23966099A JP23966099A JP2001063422A JP 2001063422 A JP2001063422 A JP 2001063422A JP 23966099 A JP23966099 A JP 23966099A JP 23966099 A JP23966099 A JP 23966099A JP 2001063422 A JP2001063422 A JP 2001063422A
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義勝 木佐貫
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茂 佐久間
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 後突時に頸部を含む身体上部へ継続して作用
する力を低減する。 【解決手段】 乗員保護用シート10は、シートクッシ
ョン12、シートバック14及びヘッドレスト16など
からなる各シート構成部材と、シートバック14に内蔵
された衝突力検出手段18と乗員保持手段20とから構
成されている。また、衝突力検出手段18は、受圧部材
22及び変形量検出部材24から構成されており、乗員
保持手段20は、保持プレート26、保持位置変更部材
30から構成されている。この結果、後突時の乗員34
の頸部34C近傍に作用する力を背中34A及び腰部3
4Bでも負担でき、頸部34Cを含む身体上部に作用す
る力が軽減されることになる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乗員保護用シート
に係り、より詳しくは、後突時に乗員に作用するエネル
ギを吸収し、後突時の乗員のリバウンド現象を低減でき
る乗員保護用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、車両衝突時に乗員を保護するため
の乗員保護用シートとしては、特開平10−30996
8号公報及び特開平11−48841号公報などの開示
がある。
【0003】これらの開示例は、シートにより後突時に
乗員に作用するエネルギを吸収し、後突時の乗員のリバ
ウンド現象を低減しようとするものである。このため、
特開平10−309968号公報ではシートバックフレ
ームを最大変形位置で保持するための、リバウンド抑制
素子が設けられている。一方、特開平11−48841
号公報では、後突時のシートバックの後方移動を許容す
ることにより、衝突エネルギを吸収しようとするもので
あり受圧部材と連結部材が配設されている。
【0004】即ち、この様な従来技術においては、シー
トバックフレームの位置を可動可能とし、所定の最大変
形位置で保持してエネルギを吸収することを目的として
いる。そして、シートバックフレームの変形によるエネ
ルギ吸収により乗員のリバウンド現象を抑制しようとし
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の従来装置を用いたとしても、後突時に生じる乗員のリ
バウンド現象による頸部を含む身体上部に作用する力を
低減することは困難である。これは、シートバックフレ
ームを最大変形(後傾)位置で保持したとしても、シー
トバックのクッション特性や身体上部と身体下部の移動
タイミングの違いなどにより少なからずリバウンド現象
が生じるためである。
【0006】リバウンド現象時には、頸部を含む身体上
部に作用する力の継続時間が腰部に作用する力に比べ大
きく、従来技術で示されているように乗員の挙動を考慮
せずにシートバックフレームの後傾のみで頸部を含む身
体上部に継続作用する力を低減することは困難である。
【0007】本発明は上記問題点を解消するために成さ
れたものであり、後突時に頸部を含む身体上部へ継続し
て作用する力を低減できる乗員保護用シートを提供する
ことを目的とする。
【0008】次に、衝突時のシート上における乗員の挙
動について述べる。
【0009】図6は後突時の乗員の挙動を示した概略図
であり、乗員100の脊柱100Aのうち太い実線で示
すのが衝突直後、間隔が狭いハッチングを付した線で示
すのが衝突中期、間隔が広いハッチングを付した線で示
すのが衝突後期、を示している。
【0010】図6に基づいて、乗員100の挙動を衝突
直後、衝突中期及び衝突後期に分けて比較すると、衝突
直後の乗員100の姿勢は前傾しており、頸部100B
とシート102のシートバック102Aとの間に隙間が
生じている。衝突中期においては腰部100C及び背中
100Dがシートバック102Aに沈み込み頸部100
Bとヘッドレスト102Bとの隙間も減少している。衝
突後期においては、腰部100Cは前方に大きく移動
し、背中100Dがシートバック102Aから浮き上が
る。しかし、衝突後期においては、頸部100Bがシー
トバック102Aの上部に密着する。この結果、後突時
の乗員100は、衝突初期の姿勢が前傾していることか
ら腰部100Cが頸部100Bに比べ早い時期からシー
トバック102Aからの力を受け、その後、頸部100
Bが慣性の影響によりシートバック102A方向に移動
することがわかる。
【0011】以上のように後突後の乗員100の挙動
は、シートバック102Aに対して腰部100Cの移動
が先に生じ、頭部100Eや頸部100Bの移動が遅れ
て生じる。
【0012】また、図7(A)は衝突時の頸部の回転角
であり、図7(B)は衝突時の腰部の回転角を示す。図
7(B)に示すように衝突後の腰部の回転角は一端大き
く変化し、再び衝突直前に近い状態に戻るが、図7
(A)に示すように頸部の回転角は一端大きく変化した
後は元に戻ることはない。これは、衝突中期以降におい
ては、図6の乗員挙動に示すように乗員100の頸部1
00Bを含む身体上部が回転中心となって腰部100C
などの身体下部が回転運動を行なっているためと考えら
れる。また、シートバック102Aヘの作用力を図8
(A)〜(C)に示す。
【0013】図8(A)〜(C)は衝突直前のシートバ
ック102Aヘの作用力を基準にした作用力の分布を示
している。図中白色部は変化が無い部分である。図8
(A)に示すように衝突直後は乗員の腰部の作用力F1
の変化が大きく、図8(B)に示すように衝突中期、図
8(C)に示すように衝突後期において、乗員の腰部の
作用力F1の変化に遅れて頸部の作用力F2の変化が生
じることがわかる。このような作用力F1、F2の変化
は、図6の乗員挙動と一致するものである。
【0014】また、図8(B)に示すように、衝突中期
以降においてリバウンド現象が始まると乗員の腰部の作
用力F1は小さくなるが、頸部の作用力F2は依然大き
な状態となっている。また、図8(C)に示すように、
衝突後期においても頸部への作用力F2は衝突開始時に
比べて大きく、衝突後、頸部に継続した力が作用する。
【0015】本発明は、このような頸部を含む身体上部
へ継続して作用する力の低減を図ることを目的としてい
る。このため、頸部を含む身体上部に力が継続して作用
するのを避けて、力を分散させることが必要である点に
着目した。即ち、頸部を含む身体上部に継続して力が作
用し続けるのは、後突後のリバウンド現象時に腰部がシ
ートバックから浮き上がり腰部とシートバックとの隙間
が生じることが理由として考えられる。このような隙間
が生じるとシートバックが乗員を十分に保持することが
できず、衝突によって乗員が受ける力が頸部を含む身体
上部の局所に作用することになる。同一の力が身体に作
用した場合、受圧面積を広くすることにより単位面積当
りの受圧力を小さくすることができることから、シート
バックは常に体に密着していることが望ましい。
【0016】また、シートバックが衝突後の乗員を十分
に保持できない理由として、従来、シートバックが一体
構造となっていることがある。すなわち、シートバック
は圧縮方向(シートバックが潰される方向)には変形可
能であるが、伸張方向(シートバックの厚みが増す方
向)に対しては初期形状以上に変形できない。よって、
リバウンド時のように乗員がシートバック前方に大きく
移動するような場合においては乗員を支持することはで
きない。
【0017】このようなことから、従来、一体構造とな
っていたシートバックの構造を少なくとも2つ以上に分
割し、さらにそれらの位置を衝突後のリバウンド現象を
考慮し乗員の腰部の変位に追従させることにより、衝突
後の乗員をシートバックによって常に保持できると考え
た。
【0018】図9(A)及び図10(A)は、前記考え
の確認である。これらは、乗員100とシート102か
らなるモデルを用いて、乗員頭部100Eの加速度及び
体上部100Fへの作用力を調べた。モデルは、シート
バック102Aを従来のように一体構造としたものと、
シートバック104Aを二分割構造としたものである。
シートバック102、104は、それぞれ弾性要素と減
衰要素により支持されており、弾性係数及びシートバッ
クの傾斜角などは市販車のシートを参考に設定した。ま
た、乗員100は体重70kgf相当とし、速度10k
m/h以下の低速での後突を想定した。図9(B)及び
図10(B)に後突時の乗員挙動の時間履歴を示す。図
9(B)に示す一体型シート102においては後突後、
腰部100Cとシートバック102Aの間に大きな隙間
106が生じているが、図10(B)に示す分割型シー
ト104においては腰部100Cとシートバック104
Aと間の隙間がほとんどなくシート104によってリバ
ウンド時も乗員100が保持されていることがわかる。
【0019】また、図11(A)、(B)に乗員の身体
各部に作用する力の時間履歴を示す。各図に実線で示す
分割型シート104と、一点鎖線で示す一体型シート1
02の頭部100Aの加速度を比較すると図11(B)
に示される如く、分割型シート104が小さくなってい
る。さらに、身体上部100Fに作用する力について
も、図11(A)に示される如く、分割型シート104
が一体型シート102に比べ作用する力が小さく、力が
作用する期間も短くなっている。
【0020】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の乗員保護
用シートは、シートバックの内部に配設され、後突時に
シートと乗員の相対運動により乗員がシートから受ける
衝突力を検出するための衝突力検出手段と、前記衝突力
検出手段により検出した衝突力に応じて、乗員の腰部に
対応する部位を乗員の腰部の変位に追従させる乗員保護
手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】従って、車両が後突した場合には、衝突力
検出手段により、シートと乗員の相対運動により乗員が
シートから受ける衝突力を検出すると共に、衝突力検出
手段により検出した衝突力に基づき乗員保護手段によ
り、乗員の腰部に対応するシートバックの部位を乗員の
腰部の変位に追従させる。この結果、後突時にシートと
乗員の腰部とが離間するのを防止でき、シートと乗員の
相対運動により乗員がシートから受ける衝突力を、腰部
を含む身体の広い部位に分散することができる。このた
め、後突時に乗員の頸部を含む身体上部へ継続して作用
する力を低減できる。
【0022】また、請求項2記載の発明は、請求項1記
載の乗員保護用シートにおいて、前記衝突力検出手段
は、後突時に乗員に押圧される受圧部材と、該受圧部材
の受けた衝突力を変形量に変える変形量検出部材と、か
らなり、前記乗員保持手段は、乗員の腰部を保持する保
持プレートと、前記変形量に応じて前記保持プレートを
乗員の腰部の変位に追従させる保持位置変更部材と、か
らなることを特徴とする。
【0023】従って、車両が後突した場合には、受圧部
材が乗員に押圧され、受圧部材の受けた衝突力を変形量
検出部材が変形量に変えると共に、この変形量に応じ
て、乗員の腰部を保持する保持プレートが保持位置変更
部材によって、乗員の腰部の変位に追従する。この結
果、後突時にシートと乗員の腰部とが離間するのを防止
でき、シートと乗員の相対運動により乗員がシートから
受ける衝突力を、腰部を含む身体の広い部位に分散する
ことができる。このため、後突時に乗員の頸部を含む身
体上部へ継続して作用する力を低減できる。
【0024】また、請求項3記載の発明は、請求項1記
載の乗員保護用シートにおいて、前記衝突力検出手段
は、後突時に乗員に押圧されると共に乗員の腰部を支持
する下部シートバックと、該下部シートバックの受けた
後突時の衝突力に応じて前記下部シートバックを揺動可
能とする揺動制御部材と、からなり、前記乗員保持手段
は、前記下部シートバックと、前記下部シートバックを
上部を回動中心にして前後方向へ回動し、乗員の腰部の
変位に追従させるための保持位置変更部材と、からなる
ことを特徴とする。
【0025】従って、車両が後突した場合には、下部シ
ートバックの受けた後突時の衝突力に応じて揺動制御部
材が、下部シートバックを揺動可能とする。このため、
保持位置変更部材により、下部シートバックは上部を回
動中心にして前後方向へ回動し、乗員の腰部の変位に追
従する。この結果、後突時にシートと乗員の腰部とが離
間するのを防止でき、シートと乗員の相対運動により乗
員がシートから受ける衝突力を、腰部を含む身体の広い
部位に分散することができる。このため、後突時に乗員
の頸部を含む身体上部へ継続して作用する力を低減でき
る。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の乗員保護用シートの第1
実施形態を図1及び図2に従って説明する。
【0027】なお、図中矢印FRは車両前方方向を、矢
印UPは車両上方方向を示す。
【0028】図1に示される如く、本実施形態における
乗員保護用シート10は、シートクッション12、シー
トバック14及びヘッドレスト16などからなる各シー
ト構成部材と、シートバック14に内蔵された衝突力検
出手段18と乗員保持手段20とから構成されている。
また、衝突力検出手段18は、受圧部材22及び変形量
検出部材24から構成されており、乗員保持手段20
は、保持プレート26、弾性部材28を有する保持位置
変更部材30から構成されている。
【0029】衝突力検出手段18の受圧部材22は、衝
突時にシートバック14に作用する力を検出するための
ものであり、衝突直後においては、乗員34の背中34
A、腰部34Bによるシートバック14への作用力が他
の部位に先だって変化することから、このような変化が
早期に生じる位置、例えば乗員34の背中34Aに対向
する部位に配設する。
【0030】また、衝突力検出手段18の変形量検出部
材24は、上下方向に延設されており、上下方向中間部
に設けた回転軸23を中心に回転可能となっており、受
圧部材22で得られた作用力による変形量を、例えばリ
ンク機構25によって変位に変換する。なお、シートバ
ック14には、乗り心地を良くするため、ばねなどの弾
性部材が内蔵されており、変形量検出部材24は衝突時
にシートバック14が乗員34を押す力と弾性部材28
の特性によって決まる変形量を検出するようになってい
る。
【0031】なお、シートバック14が乗員34に及ぼ
す力は衝突速度に応じたものであり、衝突速度が高い時
の衝突力は衝突速度が低い場合に比べ大きく、変形量検
出部材24は衝突速度すなわち衝突力に応じた変形量を
検出できるようになっている。更に乗員保持手段20の
保持プレート26は、上部が回転軸27によってシート
バックフレーム(図示上略)に回転可能に支持されてお
り、変形量検出部材24で検出した衝突力に応じて乗員
34を保持する際の保持位置を変更するようになってい
る。
【0032】図2に示される如く、保持位置変更部材3
0は、変形量検出部材24の下部に固定された複数のロ
ック用の爪36、保持プレート26側に軸38によって
回動可能に支持された複数のロック用の爪40、及び弾
性部材28とからなっている。弾性部材28はシートバ
ック14に配設された弾性部材固定部42と保持プレー
ト26とを連結すており、定常時は、所定の長さだけ圧
縮した状態で保持プレート26を爪36と爪40との係
合によって所定の位置に固定している。また、衝突によ
り変形量検出部材24が、図2に実線で示す位置から図
2に二点鎖線で示す位置へ回転すると爪36と爪40と
の係合が下方より順次外れ、保持プレート26が弾性部
材28により乗員側に回動するようになっている。その
後、保持プレート26は、外れた爪36と爪40の数に
応じた弾性部材28で保持されることになる。外れた爪
36と爪40の数は、変形量検出部材24の回転角、す
なわち衝突力に応じた数であることから保持プレート2
6の保持位置が衝突力に応じて変更されることになる。
なお、保持プレート26を保持するための弾性部材28
の荷重−変形特性は固定である必要はなく、個々に変更
することも可能である。また、保持プレート26内にも
乗り心地を考え、図示しないクッションばねを内蔵する
ことから弾性部材の荷重−変形特性はこれらの影響も考
慮して決める必要がある。
【0033】次に、本実施形態の作用について説明す
る。
【0034】車両が後突した場合、乗員34は慣性の影
響によりシートバック14に押し付けられる。乗員34
がシートバック14に押し付けられる力は衝突速度に対
応したものであり概ね衝突速度が高いほど大きくなる。
シートバック14には乗り心地を考え、クッション、ば
ねなどの弾性部材28が内蔵されていることから、乗員
34は、これらの弾性部材の荷重−変形特性に応じた量
だけシートバック14に沈み込み、この沈み込み量は後
突時は通常の運転使用時に比べ大きい。
【0035】一方、受圧部材22は通常運転使用時より
乗員34のシートバック14ヘの沈み込み量が大きくな
った時にこれを検出する。すなわち、受圧部材22は通
常運転使用時では作用しない位置に取り付けられてい
る。受圧部材22で検出した衝突力は、衝突力検出手段
18のリンク機構25により変形量に変換される。変形
量検出部材24は変換された変形量に応じた量だけ回転
軸23を中心に回転する。
【0036】変形量検出部材24の回転により、変形量
検出部材24に固定されたロック用の爪36と保持プレ
ート38に軸支されたロック用の爪40との係合が外れ
保持プレート26が乗員側に弾性部材28によって回動
される。ロック用の爪36と爪40との係合が外れるタ
イミングはリバウンド現象時に保持プレート26により
乗員が保持されるように決める。保持プレート26は、
リバウンド現象時の乗員34の腰部34Bび背中34A
を保持し、衝突時に作用する力の一部を分担受圧する。
なお、保持プレート38に軸支されたロック用の爪40
は、爪36との係合が外れた後は自重により下方に回動
し、後方への移動によって保持プレート26が再び初動
位置に戻った際に再び爪36と爪40とが係合されるこ
とはない。
【0037】以上の一連の作用により、後突時の乗員3
4の頸部34C近傍に作用する力を背中34A及び腰部
34Bでも負担するようにできる。これにより、後突時
に頸部34Cを含む身体上部に作用する力が軽減される
という優れた効果が得られる。
【0038】次に、本発明の乗員保護用シートの第2実
施形態を図3〜図5に従って説明する。
【0039】なお、第1実施形態と同一部材については
同一符号を付してその説明を省略する。
【0040】図3に示される如く、シート50のシート
バック50Aはヘッドレスト52、シートバックサイド
フレーム54、上部シートバック56、衝突力検出手段
及び乗員保持手段を構成する下部シートバック58及び
シートクッション60等から構成されている。下部シー
トバック58は揺動制御部材及び保持位置変更部材を構
成する回動レール部62と、保持位置変更部材を構成す
る回動支持ピン64によってシートバックサイドフレー
ム54に対して回動可能に支持されている。
【0041】図4に示される如く、下部シートバック5
8はシートバックフレーム66とも保持位置変更部材を
構成する弾性部材68、減衰部材70によって支持され
ている。回動レール部62は、レール本体74、下部シ
ートバック58に一方の端部76Aが取り付けられたト
ーションバー76、押し付けばね78及び可動ボール8
0等から構成されている。なお、トーションバー76の
他方の端部76Bの内部に、押し付けばね78と可動ボ
ール80が挿入されており、可動ボール80は押し付け
ばね78の付勢力によって、レール本体74の上部に形
成された通常時レール82の前後方向中央部に形成され
た凹部82Aに保持されている。
【0042】図5に示される如く、レール本体74はシ
ートバックサイドフレーム54に固定ねじ72で固定さ
れており、レール本体74における通常時レール82の
下方には、下方へ膨らんだ円弧状の回動レール86が形
成されている。通常時レール82と可動レール86は、
平板状のレール本体74に溝を彫り込んだ構造となって
おり、可動ボール80が滑らかに移動可能なように溝の
表面が仕上げられている。なお、通常時レール82の前
端部は、傾斜レール88によって、回動レール86の前
後方向略中央部に連結されており、通常時レール82の
後端部は、傾斜レール90によって、回動レール86の
後端部に連結されている。
【0043】従って、車両が後突した場合、乗員の腰部
が弾性部材68と減衰部材70を押し付けながら、下部
シートバック58をシート後方に押圧し、その押圧力が
所定値を越えると、通常時レール82の凹部82Aに押
し付け保持されていた可動ボール80が、凹部82Aか
ら出て通常時レール82から傾斜レール88を通って回
動レール86内(図5に二点鎖線で示す位置から、例え
ば、図5に一点鎖線で示す位置)へ移動するようになっ
ている。この時、可動ボール80はトーションバー76
の付勢力によって、傾斜レール88を通って回動レール
86に移動する。
【0044】なお、回動レール86に移動した可動ボー
ル80は回動レール86に沿って前後方向へ移動可能と
なっており、これによって、下部シートバック58は可
動支持ピン64を回転中心として前後方向へ回動可能と
なる。また、通常時、下部シートバック58は上部シー
トバック56と各シート面58A、56Aが互いに一致
するように弾性部材68と減衰部材70を圧縮した状態
で取り付けられているが、可動ボール80が回動レール
86に位置したことにより、下部シートバック58のシ
ート面58Aは通常時よりシート前方方向に移動するよ
うになっている。また、弾性部材68を圧縮した際の反
発力は、可動ボール80と通常時レール82に設けられ
た凹部82Aとによる摩擦力によって釣り合っている。
【0045】次に、本実施形態の作用について説明す
る。
【0046】車両が後突した場合、乗員34は慣性の影
響によりシートバック50Aに押し付けられる。乗員3
4がシートバック50Aに押し付けられる力は衝突速度
に対応したものであり概ね衝突速度が高いほど大きくな
る。シートバック50Aには乗り心地を考え、クッショ
ン、ばねなどの弾性部材が内蔵されていることから、乗
員34は、これらの弾性部材の荷重−変形特性に応じた
量だけシートバック50Aに沈み込み、この沈み込み量
は後突時は通常の運転使用時に比べ大きい。
【0047】一方、下部シートバック58は通常運転使
用時より乗員34の下部シートバック58ヘの沈み込み
量が大きくなった時にこれを検出する。すなわち、乗員
34の腰部34Bが弾性部材68と減衰部材70を押し
付けながら、下部シートバック58をシート後方に押圧
し、その押圧力が所定値を越えると、通常時レール82
の凹部82Aに押し付け保持されていた可動ボール80
が、凹部82Aから出て通常時レール82から傾斜レー
ル88を通って回動レール86内へ移動する。また、回
動レール86に移動した可動ボール80は回動レール8
6に沿って前後方向へ移動可能となる。この結果、下部
シートバック58は、リバウンド現象時の乗員34の腰
部34Bに追従し、これを保持することで、衝突時に作
用する力の一部を分担受圧する。
【0048】なお、上記下部シートバック58のシート
面58Aの移動は、後突により乗員34がシート後方に
移動した際に行われ、リバウンド現象により乗員34が
シート前方に移動する際も下部シートバック58が乗員
34の腰部34Bを保持するように回動する。これによ
り、後突時の乗員34はシート50によって常時保持さ
れる。
【0049】以上の一連の作用により、後突時の乗員3
4の頸部34C近傍に作用する力を背中34A及び腰部
34Bでも負担するようにできる。これにより、後突時
に頸部34Cを含む身体上部に作用する力が軽減される
という優れた効果が得られる。
【0050】なお、トーションバー76に外部から付勢
力を加えことで、回動レール86内の可動ボール80
を、回動レール86から傾斜レール90を通って通常時
レール82内に戻すことができる。
【0051】なお、本発明はかかる実施形態に限定され
るものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形
態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【0052】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
れば、後突時に頸部を含む身体上部へ継続して作用する
力を低減できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の乗員保護用シートの要
部を示す概略側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の乗員保護用シートにお
ける乗員保護手段を示す拡大側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態の乗員保護用シートの要
部を示す概略側面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の乗員保護用シートにお
ける要部を示す拡大側面図である。
【図6】後突時の乗員の挙動を示した概略図である。
【図7】(A)は衝突時の頸部の回転角であり、(B)
は衝突時の腰部の回転角である。
【図8】(A)は衝突直前のシートバックヘの作用力を
基準にした衝突直後の作用力の分布を示しており、
(B)は衝突直前のシートバックヘの作用力を基準にし
た衝突中期の作用力の分布を示しており、(C)は衝突
直前のシートバックヘの作用力を基準にした衝突後期の
作用力の分布を示している。
【図9】(A)は一体型シートバックモデルを示してお
り、(B)は一体型シートバックモデルにおける後突時
の乗員挙動の時間履歴を示している。
【図10】(A)は二分割シートバックモデルを示して
おり、(B)は二分割シートバックモデルにおける後突
時の乗員挙動の時間履歴を示している。
【図11】(A)は一体型シートバックモデルと二分割
シートバックモデルにおける体上部への作用力を示して
おり、(B)は一体型シートバックモデルと二分割シー
トバックモデルにおける頭部加速度の時間履歴を示して
いる。
【符号の説明】
10 乗員保護用シート 14 シートバック 18 衝突力検出手段 20 乗員保持手段 22 受圧部材 24 変形量検出部材 25 リンク機構 26 保持プレート 28 弾性部材 30 保持位置変更部材 34 乗員 36 ロック用の爪 38 軸 40 ロック用の爪 42 弾性部材 50 乗員保護用シート 50A シートバック 54 シートバックサイドフレーム 56 上部シートバック 58 下部シートバック(衝突力検出手段、乗員保持
手段) 62 回動レール部(揺動制御部材、保持位置変更部
材) 64 回動支持ピン 66 シートバックサイドフレーム 68 弾性部材 70 減衰部材 74 レール本体 76 トーションバー 78 押し付けばね 80 可動ボール 82 通常時レール 86 回動レール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三木 一生 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 Fターム(参考) 3B084 GA03 3B087 BD04 CD03 DE08

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シートバックの内部に配設され、後突時
    にシートと乗員の相対運動により乗員がシートから受け
    る衝突力を検出するための衝突力検出手段と、 前記衝突力検出手段により検出した衝突力に応じて、乗
    員の腰部に対応する部位を乗員の腰部の変位に追従させ
    る乗員保護手段と、 を備えたことを特徴とする乗員保護用シート。
  2. 【請求項2】前記衝突力検出手段は、後突時に乗員に押
    圧される受圧部材と、該受圧部材の受けた衝突力を変形
    量に変える変形量検出部材と、からなり、 前記乗員保持手段は、乗員の腰部を保持する保持プレー
    トと、前記変形量に応じて前記保持プレートを乗員の腰
    部の変位に追従させる保持位置変更部材と、からなるこ
    とを特徴とする請求項1記載の乗員保護用シート。
  3. 【請求項3】前記衝突力検出手段は、後突時に乗員に押
    圧されると共に乗員の腰部を支持する下部シートバック
    と、該下部シートバックの受けた後突時の衝突力に応じ
    て前記下部シートバックを揺動可能とする揺動制御部材
    と、からなり、 前記乗員保持手段は、前記下部シートバックと、前記下
    部シートバックを上部を回動中心にして前後方向へ回動
    し、乗員の腰部の変位に追従させるための保持位置変更
    部材と、からなることを特徴とする請求項1記載の乗員
    保護用シート。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009173190A (ja) * 2008-01-25 2009-08-06 Honda Motor Co Ltd 車両のシートベルト装置
JP2017137023A (ja) * 2016-02-05 2017-08-10 三菱自動車工業株式会社 車両用シートの沈込み制御装置

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