JP2001057883A - 新規なβ−溶菌プロテアーゼ - Google Patents

新規なβ−溶菌プロテアーゼ

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JP2001057883A
JP2001057883A JP23342399A JP23342399A JP2001057883A JP 2001057883 A JP2001057883 A JP 2001057883A JP 23342399 A JP23342399 A JP 23342399A JP 23342399 A JP23342399 A JP 23342399A JP 2001057883 A JP2001057883 A JP 2001057883A
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blp
xan
lytic
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amino acid
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Takeji Masaki
武治 正木
文夫 ▲崎▼山
Fumio Sakiyama
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Fujifilm Wako Pure Chemical Corp
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Wako Pure Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 単一で、安価に、効率よく取得することが可
能な新規なβ−溶菌プロテアーゼ及びその取得方法を提
供すること。 【解決手段】 以下のa〜fの性状を有する新規なβ−
溶菌プロテアーゼ及びその取得方法。 a.至適pH及び安定pH範囲:至適pH;8.0、安定pH範囲;6.0〜12.0 b.作用適温の範囲:65℃〜70℃ c.熱安定性:40℃までは安定 d.分子量:19,287(エレクトロスプレーMS法より算出) :約20,000(SDS-PAGE法) e.N末端アミノ酸からの20残基の配列: SPNGLLQFPFPRGASWHVGG f.C末端アミノ酸:Asn

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なβ−溶菌プ
ロテアーゼ並びにそのβ−溶菌プロテアーゼの産生方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】溶菌酵素は微生物細胞壁に作用する加水
分解酵素で、卵白からリゾチームが単離されて以来、多
数の微生物からその酵素が見出されている。そして、そ
の分解を通じて細胞の代謝回転、細胞分解、鞭毛や胞子
の形成などの重要な生物的プロセスに関与していると考
えられる。またその特性を利用してプロトプラストの調
製、食品用殺菌剤、抗感染作用剤として利用されてい
る。
【0003】また、溶菌酵素は作用機構から、以下の3
つグループに分類されている。グリコシダーゼ; 細胞
壁中のN-アセチルグルコサミンとN-アセチルムラミン酸
のβ-1,4-結合を加水分解する酵素、N-アセチルムラ
ミル-L-アラニンアミダーゼ;N-アセチルムラモイル残基
とL-アラニン残基間のアミド結合を加水分解する酵素、
エンドペプチダーゼ; ペプチド架橋のペプチド結合を
加水分解する酵素。
【0004】こののエンドペプチダーゼに属するβ−
溶菌プロテアーゼは、例えば、アクロモバクターリティ
カス M497-1の培養により産生されている。しかし、ア
クロモバクターリティカス M497-1は、β−溶菌プロテ
アーゼ産生時に、α−溶菌プロテアーゼも産生するた
め、β−溶菌プロテアーゼのみを取得するためには多大
な努力を要し、且つ、この方法に於ける、該β−溶菌プ
ロテアーゼの溶菌活性値から求められた回収率は、約3
%と低い。そのため、単一で、安価に、効率よく取得す
ることが可能な新規なβ−溶菌プロテアーゼが求められ
ている。
【0005】
【発明が解決すべき課題】上記した如き状況に鑑み、本
発明が解決すべき課題は、新規なβ−溶菌プロテアーゼ
及びその取得方法を提供することにある。
【0006】
【課題が解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決する目的でなされたものであり、以下のa〜fの性状
を有する新規なβ−溶菌プロテアーゼの発明である。 a.至適pH及び安定pH範囲:至適pH;8.0、安定pH範囲;6.0〜12.0 b.作用適温の範囲:65℃〜70℃ c.熱安定性:40℃までは安定 d.分子量:19,287(エレクトロスプレーMS法より算出) :約20,000(SDS-PAGE法) e.N末端アミノ酸からの20残基の配列: SPNGLLQFPFPRGASWHVGG f.C末端アミノ酸:Asn
【0007】また、本発明は、以下のa〜lの性状を有
し、且つ生育にメチオニン及びグルタミン酸を必要とし
ない微生物を培養し、該培養物から採取することを特徴
とするβ−溶菌プロテアーゼの製造方法の発明である。 a.形態:桿菌 b.大きさ:0.7〜0.8×2.0〜3.0μm c.グラム染色性:陰性 d.胞子:陰性 e.運動性:陰性 f.酸素に対する態度:好気性 g.オキシダーゼ:陽性 h.カタラーゼ:陽性 i.O−Fテスト:陰性 j.集落の色調:特徴的色素有せず又は薄い黄色系 k.キノン系:Q−8 l.菌体内DNAのGC含量:70 mol% さらにまた、本発明は、β−溶菌プロテアーゼ含有液を
強塩基性陰イオン交換体で処理することを特徴とする、
β−溶菌プロテアーゼの精製方法の発明である。
【0008】即ち、本発明者らは、本発明者らが初めて
見出した微生物について鋭意研究を重ねた結果、これを
培養することによって新規なβ−溶菌プロテアーゼを取
得することに成功し、本発明を完成するに至った。本発
明者らが初めて見出した微生物とは、本発明者らにより
新たに土壌から単離され、同定されたものであり、本発
明者らにより、Xanthomonas sp IB-9374(以下、キサン
トモナス属IB-9374と略記する)と命名されており、ブ
ダペスト条約の国際寄託機関である工業技術院生命工学
工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に
受託されている(受託番号 FERM P-16928)。
【0009】本発明のβ−溶菌プロテアーゼは、キサン
トモナス属IB-9374を培養することにより採取されたも
のであり、当該キサントモナス属IB-9374は以下のa〜
lの性状を有し、且つ生育にメチオニン及びグルタミン
酸を必要としない微生物である。 a.形態:桿菌 b.大きさ:0.7〜0.8×2.0〜3.0μm c.グラム染色性:陰性 d.胞子:陰性 e.運動性:陰性 f.酸素に対する態度:好気性 g.オキシダーゼ:陽性 h.カタラーゼ:陽性 i.O−Fテスト:陰性 j.集落の色調:特徴的色素有せず又は薄い黄色系 k.キノン系:Q−8 l.菌体内DNAのGC含量:70 mol%
【0010】本発明のβ−溶菌プロテアーゼをキサント
モナス属IB-9374を用いて取得する具体的な方法は、以
下の通りである。即ち、キサントモナス属IB-9374を培
養し、培養液中のβ−溶菌プロテアーゼ活性が高値とな
った時点で培養液を濾過し、得られた培養濾液を、硫
安分画(50〜90%)、例えば、QAE-トヨパール550C
(東ソー(株)商品名)等の4級アミノ基をイオン交換基
として有する強塩基性陰イオン交換体処理、ブチル-
トヨパールクロマトグラフィー650M(東ソー(株)商品
名)、セファデックスG-50カラムクロマトグラフィー
(アマシャム・ファルマシアバイオテック社商品名)等
の処理に付すことにより得られる。尚、これらの処理
は、〜の順に逐次行うのが好ましく、更にはセファ
デックスG-50 カラムクロマトグラフィー(アマシャム
・ファルマシアバイオテック社商品名)を3回行い、6
段階の精製を行うことがより好ましい。即ち、硫安分画
(50〜90%)、QAE-トヨパール550C(東ソー(株)商品
名)処理、ブチル-トヨパールクロマトグラフィー650M
(東ソー(株)商品名)、セファデックスG-50 カラムク
ロマトグラフィー(アマシャム・ファルマシアバイオテ
ック社商品名)×3回を、この順番で行うのがより好ま
しい。
【0011】β−溶菌プロテアーゼの精製に、4級アミ
ノ基をイオン交換基として有する強塩基性陰イオン交換
体を用いたのは、本発明者らが初めてであり、この処理
を行うことにより、β−溶菌プロテアーゼの回収率が著
しく向上することも本発明者らにより初めて見出された
ことである。また、この精製方法は、本発明のβ−溶菌
プロテアーゼのみならず、その他のものを精製するのに
も有用である。本発明に係る強塩基性陰イオン交換体が
有する4級アミノ基としては、通常この分野で使用され
るものであれば特に限定されないが、例えば下記の一般
式[1]で示されるものが挙げられる。
【0012】
【化1】
【0013】(式中、R1〜R3は夫々独立して、アルキ
ル基、アリール基又はヒドロキシアルキル基を表し、X
は酸素原子又は/及び水酸基を有していてもよい二価の
炭化水素基を表し、Eは酸素原子又は直接結合を表す。
但し、Xが、窒素原子と結合する末端に酸素原子を有す
る構造である場合を除く。) R1〜R3で示されるアルキル基としては、通常炭素数1
〜6、好ましくは1〜3の直鎖状、分枝状、又は環状
の、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イ
ソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブ
チル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチ
ル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキ
シル基等が挙げられ、アリール基としては、単環でも多
環でもよく、また上記した如きアルキル基を置換基とし
て有していてもよく、具体的には、例えばフェニル基、
o−トリル基、m-トリル基、p-トリル基、4-ニトロ-o-
トリル基、2,3−キシリル基、3,5−キシリル基、メシ
チル基、m-クメニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、
1-アントリル基、2-アントリル基、1-フェナントリル
基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェ
ナントリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基等が
挙げられ、ヒドロキシアルキル基としては上記した如き
アルキル基の水素原子の一部が水酸基に置き換わった、
例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒ
ドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシ
ペンチル基、ヒドロキシヘキシル基等が挙げられる。
【0014】Xで示される二価の炭化水素残基として
は、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン
基、プロピレン基、テトラメチレン基、2−メチルプロ
ピレン基、ペンタメチレン基、2−メチルブチレン基、
2-エチルプロピレン基、ヘキサメチレン基、2-エチルブ
チレン基、ヘプタメチレン基、2-エチルペンチル基、2-
メチルへキシレン基、オクタメチレン基、2-エチルへキ
シレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカ
メチレン基、ドデカメチレン基、テトラデカメチレン
基、ヘキサデカメチレン基、オクタデカメチレン基、2-
エチルオクタデセン基、イコセン基等の直鎖状若しくは
分枝状のアルキレン基、例えば、上記アルキレン基の鎖
中に酸素原子を有してなる例えば、−CH2−O−CH2
CH2−、−CH2CH2−O−CH2CH2−、−CH2
O−CH2CH(CH3)CH2−等、これら二価の炭化
水素残基の水素原子の一部が水酸基に置き換わった、例
えば、−CH2−CH(OH)−CH2−,−CH2−C
H(OH)−CH2−O−CH2−CH(OH)−CH2
−等、例えばシクロプロピレン基、1,3-シクロペンチ
レン基、1,4-シクロへキシレン基、1,2-シクロへキシ
レン基、1,3-シクロへキシレン基、3-シクロヘキセン-
1,2-イレン基、2,5-シクロヘキサジエン-1,4-イレン
基、1,4-シクロへプチレン基、1,4-シクロオクチレン
基、2,7-スピロ[3,4]オクチレン基、3,9-スピロ
[4,5]デカ−1,6-ジエニレン基等の、単環又は多環
の、二重結合を有してもよい脂環式炭化水素残基等が挙
げられる。
【0015】当該強塩基性陰イオン交換体の具体例とし
ては、例えば、−O−CH2−CH2−N+(C252
CH2−CHOH−CH3、等の4級アミノエチル基、−
O−CH2−CHOH−CH2−O−CH2−CHOH−
CH2−N+(CH33等の4級アンモニウム基等をイオ
ン交換基として持つものが挙げられ、入手可能な市販品
としては、例えば、Mono Q HR、RESOURCE Q(アマシャ
ム・ファルマシアバイオテック社商品名)、QA 52(ワ
ットマン社製)、QAE-トヨパール550C(東ソー(株)商品
名)等が挙げられるが、中でも、QAE-トヨパール550C
(東ソー(株)商品名)等が好ましく挙げられる。
【0016】本発明のβ−溶菌プロテアーゼの精製に4
級アミノ基をイオン交換基として有する強塩基性陰イオ
ン交換体を用いる方法を採用することにより、マイクロ
コッカスルーテウス(Micrococcus luteus)に対する溶
菌活性値から算出された回収率は、約8%となり、従来
行われていた、アクロモバクターリティカス M497-1培
養液からβ−溶菌プロテアーゼ(Achromobactor lyticu
s β-lytic protease;以下Ac.blpと略記する)を精製
する方法に於けるAc.blpの回収率が約3%であることと
比較して、収率を2倍以上とすることが可能となった。
即ち、同等の活性のβ−溶菌プロテアーゼを得るために
必要な菌の培養量が半分以下で済むので、その取得コス
トを大幅に削減することができる。
【0017】本発明の新規なβ−溶菌プロテアーゼとA
c.blp及びリゾバクターエンティモジェネス産生のβ−
溶菌プロテアーゼ(以下、Lyso.blpと略記する)の性状
を比較すると、その至適pH及び溶菌スペクトラムの範囲
で差異が認められる。即ち、本発明のβ−溶菌プロテア
ーゼの至適pHは8.0であるが、Ac.blpのそれは8.5〜9.0
及び10であり、Lyso.blpのそれは9.0である。また、溶
菌スペクトラムの範囲では、本発明のβ−溶菌プロテア
ーゼは、コリネバクテリウムアクアチクム(corynebact
erium aquaticum)に対して溶菌作用を示さないが、Ac.
blpはそれに対して溶菌作用を示す等の違いが認められ
ており、本発明のβ−溶菌プロテアーゼは、本発明者ら
により発見された新規な酵素である。
【0018】即ち、本発明の新規なβ−溶菌プロテアー
ゼは以下のa〜fの性状を有する。 a.至適pH及び安定pH範囲:至適pH;8.0、安定pH範囲;6.0〜12.0 b.作用適温の範囲:65℃〜70℃ c.熱安定性:40℃までは安定 d.分子量:19,287(エレクトロスプレーMS法より算出) :約20,000(SDS-PAGE法) e.N末端アミノ酸からの20残基の配列: SPNGLLQFPFPRGASWHVGG f.C末端アミノ酸:Asn また、キサントモナス属IB-9374の培養は慣用の方法で
行うことができるが、培養温度は通常20〜35℃、好
ましくは25〜35℃であり、培地のpHは通常は6〜
8、好ましくは6.5〜7.5である。また、培養は、振
とう或いは通気撹拌などの手段により好気的条件下で行
うのが好ましく、培養時間は通常150〜250時間で
ある。
【0019】キサントモナス属IB-9374の培地組成とし
ては、通常この微生物が生育し得るものであれば天然培
地及び合成培地の何れでもよく、培地は固体又は液体培
地の何れでもよい。これらの培地には、例えば、炭素源
としての、グルコース、マルトース、マンノース等の糖
類、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸類、エタノール、グ
リセロール等のアルコール類など、窒素源としてのペプ
トン、肉エキス、酵母エキス、タンパク質加水分解物、
アミノ酸などの一般天然窒素源の他に、各種無機、有機
アンモニウム塩などが含まれ、その他、カリウム塩、マ
グネシウム塩、鉄塩、カルシウム塩などの無機塩類など
が必要に応じて適宜添加される。
【0020】以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に
説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるもの
ではない。
【0021】
【実施例】実施例1 キサントモナス属IB-9374の培養液
からのβ−溶菌プロテアーゼ(Xanthomonas β-lytic p
rotease;以下、Xan.blpと略記する)の精製 キサントモナス属IB-9374を培養後、該培養液から6段階
の精製操作を経て、Xan.blpを取得した。以下に、Xan.b
lpの培養方法及び精製方法を記述する。尚、精製操作
は、すべて4℃で行った。
【0022】また、Xan.blpの溶菌活性は、下記に示し
たSmolelis らの方法(A.N.Smolelis,and S.E.Hartsel
l.; J.Bacteriol.58,1731-1736,(1949))を用いて測定さ
れたものである。
【0023】即ち、600nmにおける吸光度が0.6になるよ
うに、マイクロコッカスルーテウス乾燥粉末(生化学工
業社製)9.0mgを10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し
て調製した溶液(以下、基質緩衝液と略記する。)3.0m
lを厚さ10mmの石英セルに加えて37℃で5分間保温後、Xa
n.blp溶液0.15mlを添加と同時に3秒間攪拌した後、対照
試料に10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を用い、600nmでの
吸光度の減少を、自記分光光度計(UV-250,島津社製)を
用いて測定した。この条件下で1分間に吸光度を0.001減
少させるXan.blp量を溶菌活性の1単位と定義し、酵素溶
液1mlの1単位は下記の式に従って算出した。 酵素単位(ユニット/ml)=(1分間で減少した吸光度/0.00
1)×3.15×1/0.15
【0024】(1)キサントモナス属IB-9374の培養 17種類の培地組成の溶菌活性に及ぼす影響を検討し、キ
サントモナス属IB-9374の溶菌活性が最大を示した表1の
培地組成で培養した。
【0025】
【表1】
【0026】即ち、表1の培地組成をもつ培養液をpH7.2
に調整し、予め加熱滅菌した500ml容坂口フラスコ6本に
100mlずつ分注し、120℃で20分間高圧殺菌した。この培
養液に、キサントモナス属IB-9374を接種し、該培養液
を30℃、24時間振盪培養したものを前培養液とした。こ
の前培養液20mlずつを、新たに調製した表1の培地組成
を持つ培養液(pH7.2)400mlを含む1000ml容坂口フラス
コ13本に分注し、30℃で、150時間培養した。尚、参考
までに所定時間培養後の培養液の吸光度(660nm)とXa
n.blpの溶菌活性を図1に示す。図1に於いて、−○−
は培養液の吸光度を、--●--は溶菌活性値を表す。培養
液の培養後、連続式冷却遠心機(日立製作所製 HIMAC
SCR20B型、連続遠心ローター;RPRC18-3)を用い、4
℃、31,000gで該培養物から菌体を除去し、その上清液
を粗酵素液(5000ml)とした。
【0027】(2)粗酵素液の硫安分画 粗酵素液5000mlに50%飽和度(温度0℃)となるように、
硫安を加えた。次に、バッチ式遠心分離(31,000g、20
分、4℃)を行い、得られた上清液5620mlに90%飽和度と
なるように硫安を加えて粗酵素を沈殿させた。続いて、
上記と同様に遠心分離して得られた粗酵素を、5%グリセ
ロールを含む10mM トリス塩酸緩衝液(pH 7.0;以下A緩
衝液と略記する)に溶解させた後、同緩衝液に対して4
℃で72時間透析した。
【0028】(3)QAE-トヨパール550C(東ソー(株)商
品名)による処理 透析して得られた酵素液615mlに、A緩衝液で平衡化した
QAE-トヨパール550C(東ソー(株)商品名)約210.50g
(含水重量)を加え、室温で穏やかに撹拌しながら色素
及び不純タンパク質を吸着させた。1時間後、ガラスフ
ィルター(直径11.5cm、26G-3)でQAE-トヨパール550C
樹脂を除去し、フィルター上の該樹脂をA緩衝液(pH 7.
0)1000mlで洗浄し、未吸着画分であるXan.blpを含む酵
素液1520mlを得た。
【0029】(4)ブチル-トヨパール カラムクロマト
グラフィー(東ソー(株)商品名)による処理 (3)で得られた酵素液1520mlに90%飽和度となるように
硫安を加えた後遠心分離(31,000g、20分、4℃)し、目的
酵素を沈殿させた。得られた沈殿物を適当量の1.33M (N
H4)2SO4を含む10mM トリス塩酸緩衝液(pH 7.0;以下B
緩衝液と略記する)に溶解させ、同緩衝液に対して4℃
で48時間透析した。透析して得られた酵素液300mlを、B
緩衝液で平衡化したブチル-トヨパールカラム(2.5×28
cm,東ソー(株)商品名)に吸着させ、該カラムを同緩衝
液で洗浄後、B緩衝液(pH 7.0)350ml及び10mMトリス塩
酸緩衝液(pH 7.0)350mlを用いて直線濃度勾配で目的
酵素を溶出させた。結果を図2に示す。尚、−●−はブ
チル-トヨパールカラムからの溶出液の吸光度を、--○-
-はその溶菌活性値を表す。その溶出液中の活性画分、
即ち、Xan.blpを含む画分を集め、そのXan.blp液190ml
を、限外濾過器(ダイヤフロールメンブレンYM-3 アミコ
ン社)で、5.35mlに濃縮した。
【0030】(5)セファデックス G-50カラムクロマト
グラフィー(アマシャム・ファルマシアバイオテック社
商品名)による処理(1回目) (4)で濃縮したXan.blp液のゲル濾過カラムクロマトグ
ラフィー処理(1回目)を行った。即ち、(4)で得られ
たXan.blp液5.35mlを、0.1M NaClを含むA緩衝液で平衡
化したセファデックス G-50カラム(2.5×98cm,アマシ
ャム・ファルマシアバイオテック社商品名)に添加し、
同緩衝液で溶出させ、Xan.blpの活性区分を集めた。溶
出させた各フラクションの吸光度及び溶菌活性を図3に
示す。尚、図3に於いて、−●−はセファデックス G-5
0カラムクロマトグラフィーからの各フラクションの吸
光度を、--○--はその溶菌活性値を表す。集めたXan.bl
p液173mlを、限外濾過器(ダイヤフロールメンブレンYM-
3 アミコン社)で、1.65mlに濃縮した。
【0031】(6)セファデックス G-50カラムクロマト
グラフィー(アマシャム・ファルマシアバイオテック社
商品名)による処理(2回目) (5)で濃縮したXan.blp液のゲル濾過カラムクロマトグ
ラフィー処理(2回目)を行った。即ち、(5)で得られ
たXan.blp液1.65mlを、0.1M NaClを含むA緩衝液で平衡
化したセファデックス G-50カラム(1.5×119cm,アマシ
ャム・ファルマシアバイオテック社商品名)に添加し、
同緩衝液で溶出させ、Xan.blpの活性区分を集めた。溶
出させた各フラクションの吸光度及び溶菌活性を図4に
示す。尚、図4に於いて、−●−はセファデックス G-5
0カラムクロマトグラフィーからの各フラクションの吸
光度を、--○--はその溶菌活性値を表す。集めたXan.bl
p液44.5mlを、限外濾過器(ダイヤフロールメンブレンYM
-3 アミコン社)で、1.20mlに濃縮した。
【0032】(7)セファデックス G-50カラムクロマト
グラフィー(アマシャム・ファルマシアバイオテック社
商品名)による処理(3回目) (6)で濃縮したXan.blp液のゲル濾過カラムクロマトグ
ラフィー処理(3回目)を行った。即ち、(6)で得られ
たXan.blp液1.20mlを、0.1M NaClを含むA緩衝液で平衡
化したセファデックス G-50カラム(1.5×119cm,アマシ
ャム・ファルマシアバイオテック社商品名)に添加し、
同緩衝液で溶出させ、Xan.blpの活性区分を集めた。溶
出させた各フラクションの吸光度及び溶菌活性を図5に
示す。尚、図5に於いて、−●−はセファデックス G-5
0カラムクロマトグラフィーからの各フラクションの吸
光度を、--○--はその溶菌活性値を表す。集めたXan.bl
p液38.5mlを、限外濾過器(ダイヤフロールメンブレンYM
-3 アミコン社)で、1.20mlに濃縮した。
【0033】以上の精製法の概要を図6に示す。また、
Xan.blpの各精製段階における活性収率、比活性等を表
2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】尚、回収率は、マイクロコッカスルーテウ
スに対する溶菌活性から算出した。表2の結果から、マ
イクロコッカスルーテウスに対する溶菌活性の回収率で
8.13%、比活性で約326倍に上昇した酵素標品を得るこ
とができたことが判る。
【0036】これに対して、崎山らはアクロモバクター
リティカス M497-1の培養液乾燥粉末からCM-セルロース
及びセファクリルS-100クロマトグラフィー(アマシャ
ム・ファルマシアバイオテック(株)商品名)によりXa
n.blpと同種類と考えられる溶菌酵素を精製したが、そ
の回収率は約3%と低い値であったと報告している(S.
L.Li,S.Norioka,and F.Sakiyama,;J.Biochem.122,772-7
78,(1997))。一方、本発明に於いては、酵素液から、色
素と不純タンパク質とを強塩基性陰イオン交換樹脂であ
るQAE-トヨパール550C(東ソー(株)商品名)で除去する
ことにより、Xan.blpを約8%回収することが可能とな
り、精製後の比活性が約326倍に上昇した精製酵素を得
ることができた。これらのことから、強塩基性陰イオン
交換樹脂による処理が、β−溶菌プロテアーゼを効率よ
く取得するために有効であることが示された。
【0037】実施例2.Xan.blpの性質の検討 (1)Xan.blpの溶菌活性への各種条件の影響 実施例1で得られた精製Xan.blpの溶菌活性へのpH、温
度、トリス濃度、各種化合物、及び金属イオンの溶菌作
用の影響を調べた。尚、溶菌活性測定は、実施例1で用
いたのと同様の方法で行った。
【0038】至適pHの検討 マイクロコッカスルーテウス乾燥粉末0.45mgを含む20mM
各種緩衝液(pH3.5-6.0;酢酸緩衝液、pH5.5-8.0; 20mM
リン酸緩衝液、pH7.0-9.0; 20mM トリス-塩酸緩衝液、p
H8.5-12.0; 20mMグリシン緩衝液)3.0mlにXan.blp溶液0.
15ml(5.25μg)を添加し、37℃で5分間反応させ、溶菌活
性を測定した。その結果を図7に示す。尚、図7に於い
て、縦軸は、各pHに於いて得られた溶菌活性のうち最も
高い溶菌活性を100%とした場合の相対活性(%)を示
し、−◆−は20mM酢酸緩衝液を用いたときのXan.blpの
相対活性を、--□--は20mMはリン酸緩衝液を用いたとき
のXan.blpの相対活性を、--△--はトリス塩酸緩衝液を
用いたときのXan.blpの相対活性を、−×−はグリシン
緩衝液を用いたときのXan.blpの相対活性をそれぞれ示
す。図7の結果から、溶菌酵素活性の至適pHは8.0であ
ることが判る。
【0039】pH安定性の検討 Xan.blp(5.25μg)を含む20mM 各種緩衝液(pH3.5-6.0;
酢酸緩衝液、pH5.5-8.0; 20mM リン酸緩衝液、pH7.0-9.
0; 20mM トリス-塩酸緩衝液、pH8.5-12.0; 20mMグリシ
ン緩衝液)3.0mlを4℃に24時間放置後、該緩衝液の溶菌
活性を測定した。結果を図8に示す。尚、図8に於い
て、縦軸は、調製直後の溶菌活性を100%とした場合の
溶菌活性残存率(以下、残存率と略記する)を示し、−
◆−は20mM酢酸緩衝液を用いたときのXan.blpの残存率
を、--□--は20mMはリン酸緩衝液を用いたときのXan.bl
pの残存率を、--△--はトリス塩酸緩衝液を用いたとき
のXan.blpの残存率を、−×−はグリシン緩衝液を用い
たときのXan.blpの残存率をそれぞれ示す。図8の結果
から、Xan.blpの安定領域はpH6.0-12.0であることが判
る。
【0040】至適温度の検討 マイクロコッカスルーテウス乾燥粉末0.45mgを含む10mM
トリス-塩酸緩衝液(pH8.0) 3.0mlを所定温度で5分間保
温後、該緩衝液に、Xan.blp溶液0.15ml(5.25μg)を添加
し、所定温度で5分間反応させ、溶菌活性を測定した。
結果を図9に示す。尚、図9に於いて、縦軸は、各温度
で得られた溶菌活性の最大値を100%とした場合の相対
活性(%)として示している。図9から、Xan.blpは、6
5〜70℃で最大溶菌活性を示すことが判る。
【0041】温度安定性の検討 Xan.blp5.25μg、0.1MNaCl及び5%グリセロールを含む
10mM トリス-塩酸緩衝液(pH7.0)を各種温度(25-80℃)
で10分間放置後、急冷し、溶菌活性を測定した。結果を
図10に示す。尚、図10に於いて、縦軸は、調製直後の溶
菌活性を100%とした場合の溶菌活性の残存率(%)を
示す。図10から、Xan.blpは40℃までは安定であるが、7
0℃で完全に失活することが判る。
【0042】イオン強度の影響 マイクロコッカスルーテウス乾燥粉末0.45mgを含む各種
濃度(10〜100mM)のトリス-塩酸緩衝液(pH8.0) 3.0mlにX
an.blp溶液0.15ml(5.25μg)を添加し、37℃で5分間反応
させ、溶菌活性に及ぼすトリス濃度の影響を検討した。
結果を図11に示す。尚、図11に於いて、縦軸は、調製直
後の溶菌活性を100%とした場合の溶菌活性の残存率
(%)を示す。図11から、20mM濃度で最大溶菌活性を示
し、それ以後100mMまで濃度が増加するに従って、溶菌
活性が低下することが判る。
【0043】各種化合物の溶菌活性への影響 Xan.blpの溶菌活性に対する金属キレート試薬、-SH試
薬、及び微生物プロテアーゼ阻害剤の影響を検討した。
即ち、Xan.blp(10.5μg)と所定濃度の各種化合物を含む
40mM トリス-塩酸緩衝液(pH 8.0) 0.15mlを25℃で30分
間処理した後、該緩衝液に、マイクロコッカスルーテウ
スを含む10mM トリス-塩酸緩衝液(pH 8.0)3.0mlを添加
して残存活性を測定した。その結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】表3から明らかなように、Xan.blpの溶菌
活性は、キレート試薬である1,10-フェナントロリン及
びEDTAのうち、1,10-フェナントロリンによって阻害さ
れた。また、セリンエンドペプチダーゼ阻害剤(DFP,PMS
F)、-SH基試薬(ヨードアセテート,N-エチルマレイミ
ド)、微生物産生阻害剤(キモスタチン、エラスチン、ロ
イペプチン、ペプスタチン)、及び微生物産生のメタロ
エンドペプチダーゼ阻害剤であるホスホラミドン(Phos
phoramidon)によってはそれほど阻害されなかったが、
還元剤であるメルカプトエタノール及びDTTによって阻
害された。
【0046】金属塩の影響 Xan.blpの溶菌活性に対する金属塩の影響を検討した。
即ち、Xan.blp(10.5μg)と各種濃度の金属塩を含む40mM
トリス-塩酸緩衝液(pH 8.0)0.15mlを25℃で30分間処理
した後、該緩衝液に、マイクロコッカスルーテウスを含
む10mM トリス-塩酸緩衝液(pH 8.0)3.0mlを添加し、37
℃で5分間反応させ、残存活性を測定した。その結果を
表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】表4から明らかなようにXan.blpの溶菌活
性は1mMのZn2+、Cd2+、Hg2+、及びCu 2+によって強く阻
害された。
【0049】(2)アミノ酸組成とN−末端及びC-末端ア
ミノ酸配列分析 酵素タンパク質のトリプトファンの含量はシンプソンの
方法(V.K.Laemmli.;Nature.227,630,(1970))によって
定量した。即ち、加水分解用試験管(1.0×12cm)に酵
素タンパク質176.82μgをとり、4Nメタンスルホン酸
(0.2% 3-(2-アミノメチル)インドールを含む)0.3mlを
加え、それを減圧封管し、110℃で24時間加水分解し
た。その後、3.5N NaOH 0.3mlを加えて中和した。トリ
プトファンの含量は加水分解物の定量値より求めた。
【0050】酵素タンパク質のシスチン及びシステイン
の合計含量は、Hirsの方法(P.Andrews; Biochem.J.91,
222,(1964))による過ギ酸化法を用いて定量した。即
ち、広口の共栓付スピッツ型試験管(1.3×10.5cm)に
酵素タンパク質505.33μgをとり、予め−10℃に冷却し
たギ酸0.125mlと無水メタノール0.025mlを加えて−10℃
で30分間放置した。つづいて過ギ酸0.75ml(共栓付スピ
ッツ型試験管に30%H2O2 0.075mlとギ酸 1.425mlを加え
て、25℃で、2時間放置し、その後−10℃で30分間冷却
して調製したもの)を添加し、−10℃で2時間30分反応
させた。次に、予め0℃で冷却した超純水8.8mlを加え
て、凍結乾燥した。この凍結乾燥の操作を3回繰り返
し、完全に過剰の過ギ酸を除去した。この乾燥試料を20
%塩酸(0.01%フェノールを含む)1mlに溶解し、パスツ
ールピペットで加水分解用試験管(1.0×12cm)に移
し、減圧封管した後、110℃で24時間加水分解した。シ
スチン及びシステインの合計含量は、この加水分解物量
の定量値より求めた。
【0051】トリプトファン、シスチン及びシステイン
以外のアミノ酸は以下のように分析した。
【0052】即ち、加水分解用試験管(1.0×12cm)に
酵素タンパク質176.82μgをとり、0.01%フェノールを含
む20%塩酸 0.5mlを加えた。これを減圧封管し、110℃で
一定時間(24、48、72、96時間)加水分解した後、−80
℃のトラップを取り付けた粒状の水酸化ナトリウムを含
むデシケーター内で減圧乾固した。その乾固物をアミノ
酸希釈液(0.02N HCl)で1.0mlに定容し、高速アミノ酸
分析計(L-8800型;日立製作所製)を用いて分析した。
スレオニン及びセリンの含量は48、72、96時間加水分解
物の定量値を0時間へ外挿して求めた。また、イソロイ
シン及びバリンの含量は72時間の定量値より求めた。そ
の他のアミノ酸は各時間の定量値を平均して求めた。
【0053】分子量を19287.16(エレクトロスプレーMS
法より算出)としてアミノ酸残基数を求めた結果を表5
に示す。尚、表5には、Lyso.blp及びAc.blpについての
文献値(JOURNAL OF BACTERIOLOGY,1990.p.6506-6511)
を併せて示す。
【0054】
【表5】
【0055】Xan.blpのN-末端アミノ酸配列は、エドマ
ン分解による気相シーケンサー(パーキンエルマー社
製)、あるいはN & C末端プロテインシーケンサー(横河
アナリティカルシステム社製)を用いて、C-末端アミノ
酸はN & C末端プロテインシーケンサーを用いてそれぞ
れ測定した。
【0056】N-末端アミノ酸配列(1−20)を図12に示
す。尚、図12には、Lyso.blp及びAc.blpについての文献
値(JOURNAL OF BACTERIOLOGY,1990.p.6506-6511)も併
せて示す。その結果、N-末端アミノ酸は何れもセリンで
あり、C-末端アミノ酸は何れもアスパラギンであった。
【0057】(3)SDS-PAGEによる均一性(精製酵素の
純度検定)と分子量の測定 SDS-PAGEを用いて、精製Xan.blpの均一性及び分子量を
測定した。分子量の測定は、分離用ゲル15.0%、濃縮用
ゲル2.5%のアクリルアミドを用いる電気泳動法(Laemml
iの方法;V.K.Laemmli.; Nature.227,630,(1970))で測
定した。即ち、マーカーであるBPBが濃縮ゲル内に存在
する間は15mA定電流で、分離ゲル進入後は20mA定電流で
泳動を行い、BPBのラインがゲル末端から5mm上の位置に
来るまで、約2時間泳動を行った。泳動後、0.1%CBB R-2
50(w/v)、30%メタノール(v/v)、及び10%酢酸(v/
v)の混合液で染色した。脱色は、メタノール:酢酸:
水=3:1:6(v/v)を用いて行った。また、分子量推定
用マーカーとしてLMW エレクトロフォレシスキャリブレ
ーションキット E(ホスホリラーゼ b;94,000、血清ア
ルブミン;67,000、卵白アルブミン;43,000、カルボニ
ックアンヒドラーゼ;30,000、トリプシンインヒビタ
ー;20,100、α-ラクトアルブミン;14,400)を用い
た。尚、精製Xan.blpは10mMトリス塩酸緩衝液(pH6.8)に
透析した15.0μgを電気泳動した。結果を図13に示す。
尚、図13に於いて、ライン1は分子量推定用マーカーに
ついての結果を、又、ライン2は精製Xan.blpについて
の結果を夫々示す。図13の結果から、Xan.blpはSDS-PAG
Eによって単一バンドであると認められた。また、Xan.b
lpの分子量をSDS-PAGEの結果に基づいて求めたところ、
約20,000と算出された(図14参照)。
【0058】(4)ESI-MS(Electrospray ionigation m
ass spectrometry)法及びゲル濾過法による分子量の測
定 ESI-MS法によるXan.blpの分子量測定は、以下のように
行った。即ち、Xan.blpを0.1%ギ酸を含む50%アセトニト
リルで34.4μg/mlに調製し、その試料をノーマルイオン
スプレー装備のESI-MS(API 300,パーキンエルマー社
製)で分子量を測定した。
【0059】Xan.blpの分子量はESI-MS法によって測定
した結果、19,287と算出された(図15参照)。
【0060】また、Xan.blpのゲル濾過法による分子量
はAndrewsの方法(P.Andrews; Biochem.J.91,222,(196
4))で測定した。即ち、各標準タンパク質5mgを0.1M NaC
lを含む10mM トリス塩酸緩衝液(pH 7.0)1mlに溶解
し、同緩衝液で緩衝化したセファデックス G-50カラム
(1.5×119cm)に注入し、10ml/hrの流速で溶出し、そ
の溶出液2.0mlずつを集め、280nmの吸光度で測定した。
更に、標準タンパク質溶出後、Xan.blp溶液(3mg/ml)
を同じ流速で溶出した。同じ実験を2度繰り返し、各タ
ンパク質の溶出液量(Ve)の平均値を算出した。この平
均溶出液量と分子量の対数との関係からXan.blpの分子
量を測定した。標準タンパク質はアポチニン(Apotini
n)、チトクロムC(Cytochrome C)、キモトリプシノー
ゲンA(Chymotrypsinogen A)、卵白アルブミン( Albu
min Egg)を用い、それぞれの分子量を6,500、12,400、
25,600、45,000として算出した。
【0061】その結果、Xan.blpの分子量は5,500と算出
された(図16参照)。
【0062】(5) ペプチド結合に対する作用の検討 (a)ニューロメディンB(Neuromedin B)に対するXa
n.blpの作用の検討 グリシルペプチド結合がペプチド鎖の内部に2ヶ所存在
するニューロメディンB(10残基)に対するXan.blpの作
用を検討した。
【0063】ニューロメディンB 0.52mg(459.24nmol)
をMilli Q 処理超純水0.52mlで溶解し、その溶液0.1ml
(100μg、88.32nmol )をスピッツ型試験管(1.3×10.
5cm)に分取し、凍結乾燥した。この凍結乾燥物を10mM
トリス塩酸緩衝液 (pH8.0) 0.1mlに溶解し、該緩衝液に
Xan.blp溶液 10μl(Xan.blp;4.26μg、0.22nmol)を加
えて37℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を10
0℃の沸騰水で3分間加熱して反応を停止させ、-20℃で
凍結保存した。得られた酵素消化物100μg(88.32nmol)
に0.05% TFA 100μlを添加し溶解させ、その溶液70μl
(70.0μg、61.76nmol)を取り、下記条件のHPLCを用いて
酵素消化物(ペプチド)を分画し、精製した。精製した
各ペプチドは下記のアミノ酸組成分析、N末端アミ
ノ酸配列分析を行った。また、分子量は下記のESI-MS
法により測定した。HPLC条件 HPLC装置;日立L-6300型 固定相 ;TOSOH TSKgel Octyl-80Tsカラム4.6mmID×25cm 移動相 ;(A) 0.05% TFA (B) 2-プロパノール/アセトニトリル(7/3.容量比) 溶出条件;(A):(B)=100:0〜0:100(5〜60分)、 流速:0.5ml/min
【0064】精製ペプチドのアミノ酸組成分析法 上述したように、試料を加水分解用試験管(1.0×12.2c
m)に分取し、NaOHを含むデシケーター上で減圧乾固し
た。その乾固物に0.01% フェノールを含む 20%HCl 0.3m
lを添加し、それを減圧封管した後、110℃で、24時間酸
分解した。放冷後、NaOHのデシケーター上で再び減圧乾
固した。この乾固物に0.02N HCl 0.5mlを添加溶解した
後、日立L-8800形アミノ酸分析計を用いて同定した。
【0065】精製ペプチドのN末端アミノ酸配列分析 試料を、予め400℃に加熱したスピッツ型試験管(1.3×
10.5cm)に分取し、減圧乾固した後、1nmol/mlになるよ
うにMilli Q処理超純水で希釈し、プロテインシーケン
サー(アップライドバイオシステム社製)を用いてN末端
アミノ酸配列分析を行った。
【0066】ESI-MS法 試料を、予め400℃で加熱処理したスピッツ型試験管
(1.3×10.5cm)に分取し、減圧乾固した。その乾燥試
料を、0.1%ギ酸を含む50%アセトニトリル溶液で300μ
g/mlになるように希釈し、ノーマルイオンスプレーを装
備したESI-MS(パーキンエルマー社製)で分子量を測定し
た(B.Sundqvist,P.Roepstorff,J.Fohlman,P.Hakansso
n,M.Lindberg,J.Ishibashi,Kataoka,A.Isogai,A.Kawaka
mi,H.Saegusa,Y.Yagi,A.Mizoguchi,Ishizak and A.Suza
ki.; Biochemistry.33, 5912, (1994))。
【0067】ニューロメディンBのXan.blp分解物を、HP
LCで分離した結果を図17に示す。分画されたN−1、N−2
及びN−3のピークのアミノ酸組成、N-末端アミノ酸配
列、及び回収率を表6に示す。
【0068】
【表6】
【0069】その結果、N−1はニューロメディンBのHis
8-Met10、N−2はLeu3-Gly7、N−3はGly1-Gly7のペプチ
ドであることが認められた。更に、確認のため、これら
ペプチドの分子量をESI-MS法で測定した結果、それぞれ
415.5、529.4、699.5と算出され、理論値である415.3、
529.4、700.5 とよく一致した。この結果から、Xan.blp
によって、ニューロメディンB中のGly-His結合が切断さ
れること、並びに、Xan.blpはニューロメディンB中のA
sn-Leu結合に対しても作用することが判った。
【0070】(b)エレドイシンリレイティッドペプチ
ド(Eledoisin Related Peptide)に対するXan.blpの作
用の検討 グリシルペプチド結合がペプチド鎖の内部の位置に1ヶ
所存在するエレドイシンリレイティッドペプチド(6残
基)を用いてXan.blpの作用を検討した。
【0071】エレドイシンリレイティッドペプチド 0.5
8mg(820.43nmol)をMilli Q 処理超純水0.58mlで溶解
し、その溶液0.1ml(100μg、141.45nmol)をスピッツ
型試験管(1.3×10.5cm)に分取し、凍結乾燥した。こ
の凍結乾燥物100μgを10mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)
0.1mlに溶解し、該緩衝液にXan.blp 10μl(6.81μg、0.
35nmol)を加えて37℃で10時間反応させた。反応終了
後、反応液を100℃の沸騰水で3分間加熱して反応を停止
させ、凍結乾燥した。得られた酵素消化物100μg(141.4
5nmol)に0.05% TFA 100μlを添加し溶解させ、その溶
液70μl(70.0、98.92nmol)を取り、下記条件のHPLCを用
いて各種ペプチドを分画し、精製した。精製した各ペプ
チドは(a)と同様の方法で、アミノ酸組成分析、N末
端アミノ酸配列分析、及び分子量の測定を行った。 HPLC条件 HPLC装置;日立L-6300型 固定相 ;TOSOH TSKgel Octyl-80Tsカラム4.6mmID×25cm 移動相 ;(A) 0.05% TFA (B) 2-プロパノール/アセトニトリル(7/3.容量比) 溶出条件;(A):(B)=100:0〜0:100(5〜60分)、 流速 ;0.5ml/min 加水分解物のHPLCによる分離を図18に示す。分画された
2つのピーク、E−1及びE−2のアミノ酸組成、N-末端ア
ミノ酸配列、及び回収率を表7に示す。
【0072】
【表7】
【0073】その結果、E−1、E−2はLeu5-Met6、及びL
ys1-Gly4に相当するペプチドであることが認められた。
また、それぞれの分子量をESI-MS 法で測定した結果、2
44.0及び446.5と算出され、理論値である244.2及び446.
3とよく一致した。この結果から、Xan.blpによって、エ
レドイシンリレイティッドペプチド中に存在する1ヶ所
のグリシルペプチド結合である Gly4-Leu5結合が完全に
切断されることが示された。
【0074】(c)ラナテンシン(Ranatensin)に対す
るXan.blpの作用 グリシルペプチド結合がペプチド鎖中に1ヶ所存在する
ラナテンシン (11残基)を用いてXan.blpの作用を検討
した。
【0075】ラナテンシン 1.0mg(780.34nmol)をMilli
Q 処理超純水1.0mlに溶解した溶液0.1ml(100μg、78.0
3nmol )をスピッツ型試験管(1.3×10.5cm)に分取
し、凍結乾燥した。この凍結乾燥物100μgを10mM トリ
ス塩酸緩衝液(pH8.0) 0.1mlに溶解し、該緩衝液にXan.b
lp 10μl(3.76μg、0.19nmol)を加えて37℃で10時間反
応させた。反応終了後、反応液を100℃の沸騰水で3分間
加熱して反応を停止させ、凍結乾燥した。得られた酵素
消化物100μg(78.03nmol)に0.05% TFA 100μlを添加し
溶解させ、その溶液70μl(70.0μg、54.57nmol)を取
り、下記条件のHPLCを用いて各種ペプチドを分画し、精
製した。精製した各ペプチドは(a)と同様の方法で、
アミノ酸組成分析、N末端アミノ酸配列分析、及び分子
量の測定を行った。 HPLC条件 HPLC装置;日立L-6300型 固定相 ;TOSOH TSKgel Octyl-80Tsカラム4.6mmID×25cm 移動相 ;(A) 0.05% TFA (B) 2-プロパノール/アセトニトリル(7/3.容量比) 溶出条件;(A):(B)=100:0〜0:100(5〜60分)、 流速 ;0.5ml/min HPLCによる分離を図19に示す。分画された2つのピー
ク、R−1及びR−2のアミノ酸組成、N-末端アミノ酸配
列、及び回収率を表8に示す。
【0076】
【表8】
【0077】その結果、R−1、R−2はHis9-Met11、及び
Pyr1-Gly8に相当するペプチドであることが認められ
た。また、それぞれの分子量をESI-MS 法で測定した結
果、415.5及び872.0と算出され、理論値である415.3及
び866.7とよく一致した。この結果から、Xan.blpによっ
て、ラナテンシン中に存在する1ヶ所のグリシルペプチ
ド結合である Gly8-His9結合が完全に切断されることが
示された。
【0078】(6)Xan.blpの酵素的諸性質についての
考察 以上の結果から、至適pHは8.0であり、pHによる安定領
域は6.0〜12.0であり、至適温度は65〜75℃であり、温
度安定性の面では、40℃まで完全に溶菌活性を維持し、
70℃で完全に失活した。この至適pHは、Lyso.blpの至適
pH9.0に近い値を示したが、pH8.5〜9.0とpH10の2つ
の至適pHを示すAc.blpとは異なっていた(D.C.Gillespi
e and F.D.Cook, ; Can.J.Microbiol.,11,109,(196
5))、S.L.Li, S.Norioka and F.Sakiyama)。
【0079】Xan.blpの溶菌活性は、トリスイオン濃度
が20mMで最大の活性を示し、20mMより濃度が高くなるに
従って、その活性は著しく低下した。これにより、活性
測定に使用したトリス濃度のイオン強度が溶菌活性に影
響を及ぼしていることがわかる。また、Ac.blpもトリス
イオン濃度が20mM 濃度の時最大活性を示し、それ以
後、濃度が増加するにつれて活性が低下することが報告
されており(S.L.Li, S.Norioka and F.Sakiyama)、Xa
n.blpの結果はそれと同様のものであった。
【0080】Xan.blpの溶菌活性は、セリンエンドペプ
チダーゼ阻害剤、-SH基試薬、及び微生物産生阻害剤に
よってはほとんど阻害されなかったことから、セリンエ
ンドペプチダーゼ及びシステインエンドペプチダーゼで
はないとみなされた。一方、キレート試薬である1,10-
フェナントロリンによってXan.blpの溶菌活性が阻害さ
れたことから、Lyso.blp及びAc.blpと同様に、Xan.blp
がメタロエンドペプチダーゼに属するβ-溶菌酵素であ
り、溶菌活性発現にZn2+等の金属が必要であることが示
唆された。また、還元剤によってXan.blpの溶菌活性が
阻害されたことから、還元剤自身が金属キレート剤とし
て作用しているか、あるいはXan.blpタンパク質内の-S-
S-結合がその溶菌活性発現の3次構造形成に必須となっ
ていることが示唆されている。
【0081】Xan.blpの組成、配列、分子量を調べた結
果、Xan.blpの分子量、NとC−末端アミノ酸及びN−末端
アミノ酸から20残基までのアミノ酸残基が、Lyso.blpと
Ac.blpと同一であり、アミノ酸組成もフェニルアラニン
残基以外はLyso.blp及びAc.blpと非常に似ていることか
ら、Xan.blpの1次構造はLyso.blp及びAc.blpのそれと相
同性が著しく高く、活性中心部位を含む立体構造は同じ
ものと予想される。Xan.blpの分子量をSDS-PAGE、ESI-M
S法で測定した結果の約20kDaは、Lyso.blp及びAc.blpの
一次構造によって算出された分子量19.1kDa,及び19.2kD
aとほぼ同じであった(A.P.Damaglou, L.C.Alleu and
D.R.Whitaker, ; Atlas of Protein Sequence and Stru
cture.,5,198,(1976)、S.L.Li, S.Norioka and F.Sakiy
ama,; Bacteriol.172,6506(1990))。しかし、Lyso.blp
の分子量をセファデックスG-75のゲル濾過法で測定する
と一次構造により算出された19.1kDa の値が9.5kDaと低
い値で算出されると報告されている(L.Jurasek and D.
R.Whitaker ; Can.J.Biochem.,43,1955,(1965))。そし
て、この低い値は、タンパク質のゲル濾過担体に対する
弱い吸着に原因していると報告されている(E.Kessler,
; Methods Enzymol.,248,740-756,(1995))。従って、
Xan.blpの場合のセファデックスG-50(アマシャム・フ
ァルマシアバイオテック社商品名)によるゲル濾過法で
測定した5.5kDaという低い値は上記と同様の理由による
ものと考えられる。
【0082】ニューロメディンBに対するXan.blpの作用
を検討した結果、Xan.blpはGly7-His8及びAsn2-Leu3を
切断することが判ったが、N−1及びN−3の回収率が高
く、N−2の回収率が極めて低いことから、Xan.blpは、
第一にGly7-His8を切断し、次いでこれによって生成さ
れたGly1-Gly7ペプチド中のAsn2-Leu3を弱く切断したと
考えられる。また、エレドイシンリレイティッドペプチ
ド及びラナテンシンに対するXan.blpの作用の結果よ
り、Xan.blpよって、蛋白質中の-Gly-X-結合が切断され
ることが判明した。ニューロメディンBに対するXan.blp
の結果と併せ、Xan.blpは蛋白質中の-Gly-X-結合を主に
切断することが判明した。各蛋白質の切断部位及び切断
されたアミノ酸配列を図20にまとめた。これらの結果よ
り、Xan.blpは、微生物細胞壁ペプチドグルカン中のグ
リシル結合を切断して、溶菌作用を示すと考えられる。
【0083】実施例3.各種細菌に対する溶菌スペクト
ラムの測定 各種菌体に対するXan.blpの溶菌スペクトラムを調べ
た。
【0084】マイクロコッカスルーテウス(Micrococcu
s luteus)、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylo
coccus aureus)、スタフィロコッカスカセオリティク
ス(Staphylococcus caseolyticus)、エンテロコッカ
スファエカリス(Enterococcusfaecalis)、バシルスサ
ブティリス(Bacillus subtilis)、ラクトバシルスサ
ケ(Lactobacillus sake)、ペディオコッカスアシヂラ
クティス(Pediococcusacidilactici)及びコリネバク
テリウムアクアティクム(Corynebacterium aquaticu
m)の8種類のグラム陽性菌について、並びにマイクロバ
クテリウムアルボレセンス(Microbacterium arboresce
ns)、イーコリ(E.coli)、フラボバクテリウムフラベ
センス(Flavobacterium flavescens)、アクロモバク
ターリクイズム(Achromobacter liquidum)、ベイジェ
リンキアインディカ(Beijerinckia indica)及びエン
テロバクターアエロジェネス(Enterobacter aerogene
s)の6種類のグラム陰性菌について、Xan.blpの溶菌ス
ペクトラムを調べた。上記の菌体のうち、マイクロコッ
カスルーテウス(Micrococcus luteus)及びスタフィロ
コッカスカセオリティクス(Staphylococcus caseolyti
cus)は市販品の乾燥粉末を使用した。
【0085】その他の菌体の調製は以下のように行っ
た。
【0086】即ち、上記の陽性菌及び陰性菌それぞれ
を、細菌増殖曲線の対数増殖期後期、即ち、定常期初期
まで液体培養し、その各培養液を、遠心分離(6,000g、2
0分、4℃)した。得られた各菌体を、純水で3回洗浄し
た後、凍結乾燥し、使用した。尚、エンテロコッカスフ
ァエカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロバク
ターアエロジェネス(Enterobacter aerogenes)の細菌
増殖曲線を図21に示す。尚、図21に於いて、−●−はエ
ンテロコッカスファエカリスの、−○−はエンテロバク
ターアエロジェネス(Enterobacter aerogenes)の細菌
増殖曲線を夫々表す。各種菌体は、600nmにおける吸光
度が0.6になるように、10mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)6
0mlに溶解し、使用時に調製した。
【0087】各種菌体に対する溶菌スペクトラムの測定
は以下のように行った。即ち、600nmの吸光度が0.6にな
るように各種菌体を含む10mM トリス塩酸緩衝液(pH 8.
0)4mlを試験管(1.5×13cm)に加え、それを37℃の恒温槽
中で保温した。5分後、該緩衝液にXan.blp溶液0.1ml
(4.25μg)を加えて反応させ、10分間及び60分間経過後
の600nmにおける吸光度を、それぞれ測定した。対照試
料には、各菌体を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)4.0
mlに、Xan.blpを含まない0.1M NaClを含む10mMトリス塩
酸緩衝液(pH 7.0) 0.1mlを溶かし、10分間及び60分間反
応させたものを用いた。
【0088】上記の条件で、反応時間10分で濁度が80〜
100%減少した場合を+++と表し、以下、80〜100%、40
〜80%、40〜10%及び0〜10%減少した場合をそれぞれ+
+、+、±、−と表し、表9に示した。尚、表9にはリゾ
チームの上記各種菌体に対する溶菌スペクトラムを併せ
て示している。
【0089】
【表9】
【0090】Xan.blpによる溶菌作用を検討した結果、
試験した陽性菌に対してXan.blpは、マイクロコッカス
ルーテウス(Micrococcus luteus)、スタフィロコッカ
スカセオリティクス(Staphylococcus caseolyticus)
>エンテロコッカスファエカリス(Enterococcus faeca
lis)>スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcu
s aureus)>バシルスサブティリス(Bacillus subtili
s)>ラクトバシルスサケ(Lactobacillus sake)、ペ
ディオコッカスアシヂラクティス(Pediococcusacidila
ctici)の順に強い溶菌作用を示した。これらの中で、
スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureu
s)、スタフィロコッカスカセオリティクス(Staphyloc
occus caseolyticus)、エンテロコッカスファエカリス
(Enterococcus faecalis)は、リゾチームによって溶
解しにくい菌体であるが、Xan.blpには溶菌された。ま
た、グラム陰性菌に対して、Xan.blpは、マイクロバク
テリウムアルボレセンス(Microbacterium arborescen
s)に溶菌作用を示した。
【0091】一方、Ac.blpは今回の実験で使用した全て
のグラム陽性菌及びグラム陰性菌のマイクロバクテリウ
ムアルボレセンス(Microbacterium arborescens)を溶
菌することが報告されている(T.Takahashi,Y.Yamazaki
and M.Isono,; Proc.Ferm.Symp.252(1972))。しか
し、この結果は、Ac.blpのαとβの両酵素を含む酵素標
品について調べられているため、上記の結果と厳密に比
較することはできないが、コリネバクテリウムアクアチ
クム(corynebacterium aquaticum)に対する溶菌作用
の点で、Xan.blp及びAc.blpは、異なった溶菌スペクト
ラムを有していることが判る。
【0092】以上のことから、Xan.blpは、Lyso.blp及
びAc.blpと類似した性質を有しているものの、細かい性
質は異なっており、Xan.blpは新種のβ−溶菌プロテア
ーゼであることが判明した。
【0093】
【発明の効果】上述した如く、本発明は、有用な酵素で
ある新規なβ−溶菌プロテアーゼ及びその酵素の取得方
法を提供するものであり、本発明を用いることにより、
当該β−溶菌プロテアーゼを効率よく安価に取得するこ
とが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表1に示される培地中で培養したときの、Xant
homonas sp IB-9374(以下、キサントモナス属IB-9374
と略記する)の生育曲線及び溶菌活性を表した図であ
る。
【図2】ブチルトヨパールクロマトグラフィー処理をし
たときの、各フラクションの吸光度及び溶菌活性を表し
た図である。
【図3】セファデックスG-50カラムクロマトグラフィー
処理(1回目)をしたときの、各フラクションの吸光度
及び溶菌活性を表した図である。
【図4】セファデックスG-50カラムクロマトグラフィー
処理(2回目)をしたときの、各フラクションの吸光度
及び溶菌活性を表した図である。
【図5】セファデックスG-50カラムクロマトグラフィー
処理(3回目)をしたときの、各フラクションの吸光度
及び溶菌活性を表した図である。
【図6】キサントモナス属IB-9374を培養して得られる
β−溶菌プロテアーゼ(Xanthomonas β-lytic proteas
e;以下、Xan.blpと略記する)の取得・精製方法の概要
を表した図である。
【図7】Xan.blpの至適pH曲線を表した図である。
【図8】Xan.blpのpH安定曲線を表した図である。
【図9】Xan.blpの至適温度曲線を表した図である。
【図10】Xan.blpの温度安定曲線を表した図である。
【図11】トリス濃度を変化させたときのXan.blpの溶
菌活性残存率を表した図である。
【図12】Xan.blp、アクロモバクターリティカス M497
-1を培養して得られるβ−溶菌プロテアーゼ(Ac.blp)
及びリゾバクターエンティモジェネスを培養して得られ
るβ−溶菌プロテアーゼ(Lyso.blp)のN-末端アミノ酸
配列(1-20)を表した図である。
【図13】SDS-PAGEを用いて、Xan.blp及び各種マーカ
ーを泳動した結果を表したものである。
【図14】SDS-PAGEを用いて、Xan.blp及び各種マーカ
ーを泳動した時の、移動度と分子量の関係を表した図で
ある。
【図15】Xan.blpのエレクトスプレーマスによるマス
スペクトルの測定結果を表した図である。
【図16】ゲル濾過法を用いたときの標準蛋白質及びXa
n.blpの平均溶出液量と、分子量との関係を表した図で
ある。
【図17】ニューロメディンBのXan.blp分解物を、HPL
Cで分離した結果、及び分離時の移動層中の溶液Bの濃
度を表した図である。
【図18】エレドイシンリレイティッドペプチドのXan.
blp分解物を、HPLCで分離した結果及び分離時の移動層
中の溶液Bの濃度を表した図である。
【図19】ラナテンシンのXan.blp分解物を、HPLCで分
離した結果及び分離時の移動層中の溶液Bの濃度を表し
た図である。
【図20】ニューロメディンB、エレドイシンリレイテ
ィッドペプチド及びラナテンシンのアミノ酸配列、及び
Xan.blpによって各蛋白質が切断された部位を表した図
である。
【図21】エンテロコッカスファエカリス及びエンテロ
バクターアエロジェネスの細菌増殖曲線である。
【符号の説明】
図1に於いて、−○−は、培養液の吸光度を、--●--は
溶菌活性値を表す。図2に於いて、−●−はブチル-ト
ヨパールカラムからの各フラクションの吸光度を、--○
--はその溶菌活性値を表す。図3に於いて、−●−はセ
ファデックス G-50カラムクロマトグラフィー(1回
目)からの各フラクションの吸光度を、--○--はその溶
菌活性値を表す。図4に於いて、−●−はセファデック
ス G-50カラムクロマトグラフィー(2回目)からの各
フラクションの吸光度を、--○--はその溶菌活性値を表
す。図5に於いて、−●−はセファデックス G-50カラ
ムクロマトグラフィー(3回目)からの各フラクション
の吸光度を、--○--はその溶菌活性値を表す。図7に於
いて、縦軸は、各pHに於いて得られた溶菌活性のうち最
も高い溶菌活性を100%とした場合の相対活性(%)を
示し、−◆−は20mM酢酸緩衝液を用いたときのXan.blp
の相対活性を、--□--は20mMはリン酸緩衝液を用いたと
きのXan.blpの相対活性を、--△--はトリス塩酸緩衝液
を用いたときのXan.blpの相対活性を、−×−はグリシ
ン緩衝液を用いたときのXan.blpの相対活性をそれぞれ
示す。図8に於いて、縦軸は、調製直後の溶菌活性を10
0%とした場合の溶菌活性残存率を示し、−◆−は20mM
酢酸緩衝液を用いたときのXan.blpの残存率を、--□--
は20mMはリン酸緩衝液を用いたときのXan.blpの残存率
を、--△--はトリス塩酸緩衝液を用いたときのXan.blp
の残存率を、−×−はグリシン緩衝液を用いたときのXa
n.blpの残存率をそれぞれ示す。図13に於いて、ライン
1は分子量推定用マーカーについての結果を、又、ライ
ン2は精製Xan.blpについての結果を夫々示す。図14に
於いて、1はα-ラクトアルブミン、2はトリプシンイ
ンヒビター、3はカルボニックアンヒドラーゼ、4は卵
白アルブミン、5は血清アルブミン、6はホスホリラー
ゼ、7はXan.blpを夫々表す。図16に於いて、1はアポ
チニン、2はチトクロムC、3はキモトリプシノーゲン
A、4は卵白アルブミン、5はXan.blpを夫々表す。図17
に於いて、直線はニューロメディンBのXan.blp分解物
をHPLCで分離したクロマトグラムを、点線は移動層中の
溶液Bの濃度を夫々表す。図18に於いて、直線はエレド
イシンリレイティッドペプチドのXan.blp分解物をHPLC
で分離したクロマトグラムを、点線は移動層中の溶液B
の濃度を夫々表す。図17に於いて、直線はラナテンシン
のXan.blp分解物をHPLCで分離したクロマトグラムを、
点線は移動層中の溶液Bの濃度を夫々表す。図21は、−
●−はエンテロコッカスファエカリスの、−○−はエン
テロバクターアエロジェネス(Enterobacter aerogene
s)の細菌増殖曲線を夫々表す。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下のa〜fの性状を有するβ−溶菌プロ
    テアーゼ。 a.至適pH及び安定pH範囲:至適pH;8.0、安定pH範囲;6.0〜12.0 b.作用適温の範囲:65℃〜70℃ c.熱安定性:40℃までは安定 d.分子量:19,287(エレクトロスプレーMS法より算出) 約20,000(SDS−PAGE法) e.N末端アミノ酸からの20残基の配列: SPNGLLQFPFPRGASWHVGG f.C末端アミノ酸:Asn
  2. 【請求項2】以下のa〜lの性状を有し、且つ生育にメ
    チオニン及びグルタミン酸を必要としない微生物を培養
    し、該培養物から採取することを特徴とするβ−溶菌プ
    ロテアーゼの製造方法。 a.形態:桿菌 b.大きさ:0.7〜0.8×2.0〜3.0μm c.グラム染色性:陰性 d.胞子:陰性 e.運動性:陰性 f.酸素に対する態度:好気性 g.オキシダーゼ:陽性 h.カタラーゼ:陽性 i.O−Fテスト:陰性 j.集落の色調:特徴的色素有せず又は薄い黄色系 k.キノン系:Q−8 l.菌体内DNAのGC含量:70 mol%
  3. 【請求項3】微生物がキサントモナス属に属する受託番
    号FERM P-16928のものである請求項2に記載の製造方
    法。
  4. 【請求項4】β−溶菌プロテアーゼ含有液を強塩基性陰
    イオン交換体で処理することを特徴とする、β−溶菌プ
    ロテアーゼの精製方法。
  5. 【請求項5】β−溶菌プロテアーゼ含有液が微生物培養
    液由来のものである請求項4に記載の精製方法。
  6. 【請求項6】強塩基性陰イオン交換体が、4級アミノ基
    をイオン交換基として持つものである、請求項4に記載
    の精製方法。
  7. 【請求項7】β−溶菌プロテアーゼが請求項1に記載の
    ものである、請求項4に記載の精製方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN118286142A (zh) * 2023-10-26 2024-07-05 中国农业大学 一种氧化还原酶活性药物载体制备及在关节炎中的应用

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