JP2001050284A - 潤滑剤供給部材を備えた転がり軸受 - Google Patents

潤滑剤供給部材を備えた転がり軸受

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JP2001050284A
JP2001050284A JP11218739A JP21873999A JP2001050284A JP 2001050284 A JP2001050284 A JP 2001050284A JP 11218739 A JP11218739 A JP 11218739A JP 21873999 A JP21873999 A JP 21873999A JP 2001050284 A JP2001050284 A JP 2001050284A
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Shigeaki Aihara
成明 相原
Shunichi Yabe
俊一 矢部
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 潤滑剤の供給量を調整する装置等を用いるこ
となく、潤滑剤供給量の調整が可能で、適度な量の潤滑
剤を長期間にわたって安定して供給することができる潤
滑剤供給部材を備えた転がり軸受を提供する。 【解決手段】 潤滑剤含有樹脂から構成される潤滑剤供
給部材20を備え、該潤滑剤供給部材20が含有する潤
滑剤が被潤滑部に供給されるアンギュラ玉軸受1におい
て、潤滑剤供給部材20は、その内部よりも前記潤滑剤
の含有率が低い表面部分を有する構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スピンドル等の高
速回転機械に使用される転がり軸受に係り、特に、被潤
滑部に対して長期間にわたり、適度な量の潤滑剤を自動
的に供給する潤滑剤供給部材を備えた転がり軸受に関す
る。
【0002】
【従来の技術】潤滑剤を被潤滑部材に自動的に供給する
潤滑剤供給部材としては種々の従来例が知られており、
例えば、実開平7−4952号マイクロフィルム(以
下、第1従来例と記す)や、特開平6−346919号
公報(以下、第2従来例と記す)等に開示されているも
のがある。
【0003】第1従来例においては、潤滑油含有ポリマ
部材を備えたボールねじが開示されている。潤滑油含有
ポリマ部材が、ボールねじのナットの端部に、ねじ軸の
ねじ溝と摺接可能に、シール部材を兼ねて装着されてい
て、前記潤滑油含有ポリマ部材から経時的に徐々に滲み
出した潤滑油が、ねじ溝を経てボールへと自動的に供給
されることにより、長期間にわたってボールねじの潤滑
作用が行われるようになっている。
【0004】また、第2従来例においては、潤滑剤含有
のゴム又は合成樹脂により形成したシールリップ部を有
するリニアガイドのシール装置が記載されている。リニ
アガイドのスライダに装着するサイドシール等のシール
装置が、前記のようなシールリップ部を有していて、シ
ールリップ部が接触している案内レールの側面の転動体
転動溝面に、潤滑剤が常時連続的に滲み出すことによ
り、転動体へと供給されるので、長期間にわたって潤滑
作用が発現されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来の潤滑剤供給部材には、以下のような問題点
があった。 (1)潤滑剤が潤滑剤供給部材からしみ出す量は経時的
に変化し、使用初期においては非常に多く、使用時間が
経過するにつれて減少して行くというものであった。こ
のように、使用初期において過剰な潤滑剤が被潤滑部へ
供給されると、被潤滑部の発熱を引き起こすことがあ
る。例えば、工作機械のスピンドル用軸受等の、高速で
回転する転がり軸受の場合等である。 (2)潤滑剤が潤滑剤供給部材からしみ出す速度(単位
時間あたりにしみ出す潤滑剤の量)は、潤滑剤含有樹脂
に使用する原料樹脂の種類や組成により調節可能である
が、一般的に潤滑剤含有量に大きく依存している。した
がって、潤滑剤含有量を多くした上、且つ潤滑剤がしみ
出す速度を低下させて(特に使用初期)、潤滑剤供給部
材を長寿命化(長期間にわたって潤滑剤がしみ出す)す
ることは困難である。
【0006】このように、従来の潤滑剤供給部材は上記
のような問題点を有しているため、工作機械スピンドル
のような高速回転機械等に使用される転がり軸受に適用
しても、使用初期に発熱を引き起こすことがあり問題で
あった。また、該転がり軸受の寿命を大きく長寿命化す
ることは難しかった。そこで、潤滑剤供給部材からしみ
出した潤滑剤を被潤滑部に供給する量を調節する方法も
提案されている。そのような方法としては、潤滑剤を被
潤滑部に供給するための微小流路の大きさで調整する方
法や、潤滑剤の供給量を調節する装置を設ける方法等が
ある。しかし、前者の方法では、被潤滑部の使用条件に
合わせて数種類もの微小流路が必要となり、製作上の管
理や検査に工数がかかるという問題があった。また、後
者の方法では、被潤滑部の周辺に前記のような潤滑剤供
給量調整装置を設ける必要があるため、被潤滑部の周辺
の構造が複雑となり、メンテナンス等が煩雑となる。さ
らに、前記装置の設置,加工,維持等のために高コスト
となるという問題点も有していた。
【0007】本発明は、上記のような従来技術の問題点
を解決し、潤滑剤の供給量を調整する装置等を用いるこ
となく、潤滑剤供給量の調整が可能で、適度な量の潤滑
剤を長期間にわたって安定して供給することができる潤
滑剤供給部材を備えた転がり軸受を提供することを課題
とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は次のような構成からなる。すなわち本発明
の潤滑剤供給部材を備えた転がり軸受は、潤滑剤含有樹
脂から構成される潤滑剤供給部材を備え、該潤滑剤供給
部材が含有する潤滑剤が被潤滑部に供給される転がり軸
受において、前記潤滑剤供給部材は、その内部よりも前
記潤滑剤の含有率が低い表面部分を有することを特徴と
する。
【0009】このような構成から、本発明の潤滑剤供給
部材を備えた転がり軸受は、使用初期に多量の潤滑剤が
被潤滑部に供給されるという不都合がなく、常に適度な
量の潤滑剤が供給されるので、被潤滑部の発熱を引き起
こすことがない。また、長期間にわたって安定して潤滑
剤が供給されるので、転がり軸受の寿命が長い。特に、
高速回転機械に好適に使用可能で、dm n値(軸受の内
径と外径との平均値(mm)×軸受の許容回転数(rp
m))が100万以上の厳しい条件において使用される
高速回転機械においても長寿命である。
【0010】本発明の潤滑剤供給部材を備える転がり軸
受においては、前記潤滑剤供給部材は、その表面部分の
潤滑剤の含有率が、その内部の潤滑剤の含有率よりも低
い。このような構成の潤滑剤供給部材は、潤滑剤含有樹
脂の表面部分から潤滑剤を抽出して(以下、表面脱脂処
理と記す)、その内部の潤滑剤含有率を変えることな
く、表面の潤滑剤含有率を低下させることにより得るこ
とができる。
【0011】表面部分の潤滑剤の含有率が低いことか
ら、前記のように使用初期に過剰な潤滑剤が潤滑剤供給
部材からしみ出すことがなく、使用初期に被潤滑部に供
給される潤滑剤のしみ出す量が適度な量となる。また、
潤滑剤を含有することにより広がった潤滑剤含有樹脂の
ポリマー分子同士の網目が、潤滑剤が抽出されること
(表面脱脂処理)により収縮して、潤滑剤がしみ出すこ
とが抑制されるので、潤滑剤供給部材の表面部分から潤
滑剤がしみ出す速度を調整することが可能である。
【0012】表面脱脂処理を行う方法としては、潤滑剤
含有樹脂の表面に溶剤を接触させる方法等があげられ
る。例えば、潤滑剤含有樹脂を溶剤中に一定時間浸漬さ
せる方法である。上記のような表面脱脂処理に使用され
る溶剤としては、潤滑剤含有樹脂の表面付近の潤滑剤を
抽出できること、揮発性が高いこと、及び潤滑剤含有樹
脂中の原料樹脂を劣化,変性させないこと、の条件を満
たせば、どのような溶剤でも使用できる。
【0013】例えば、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、ア
セトン,メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノ
ール,エタノール,プロパノール等のアルコール系溶
剤、ジエチルエーテル,イソプロピルエーテル等のエー
テル系溶剤等である。また、表面脱脂処理の程度は、処
理時間だけでなく処理深さ、すなわち、表面脱脂処理を
受けて潤滑剤の含有率が低下した表面部分の表面からの
深さ、によっても管理することが可能である。処理深さ
は、顕微鏡等を用いて処理表面の断面を観察することに
より確認できる。
【0014】本発明においては、表面脱脂処理の程度に
かかわらず潤滑剤がしみ出す量(供給量)の調整効果が
得られるが、処理深さは40〜130μm(処理時間1
〜6分程度)とすることが好ましい。処理深さが40μ
m未満(処理時間1分未満)であると、表面脱脂処理の
程度が十分でないために、使用初期の潤滑剤供給量が多
量となってしまい、潤滑剤供給量の調整効果が低い。一
方、処理深さが130μmを越えると(処理時間6分超
過)、潤滑剤が抽出される量が大きくなりすぎて、潤滑
剤供給部材全体の潤滑剤含有量が低くなり、潤滑剤供給
部材の寿命に悪影響を与えることがある。加えて、潤滑
剤の抽出に伴う潤滑剤供給部材の寸法収縮が大きくな
り、一定レベル以上の寸法精度が要求される用途に適さ
ない場合が生じる。
【0015】また、本発明の転がり軸受が備える潤滑剤
供給部材は、上記のような表面脱脂処理による方法の
他、潤滑剤含有率の低い潤滑剤含有樹脂の内部に空間を
設け、その空間に潤滑剤含有率の高い潤滑剤含有樹脂を
充填する方法や、潤滑剤含有率の高い潤滑剤含有樹脂
に、潤滑剤含有率の低い潤滑剤含有樹脂を被覆する方法
によっても得ることが可能である。これらの方法の場合
は、潤滑剤供給部材の表面部分及び内部の潤滑剤含有率
と、表面部分の潤滑剤含有樹脂の厚みとにより、潤滑剤
供給量を調整することが可能である。
【0016】次に、本発明における潤滑剤含有樹脂につ
いて説明する。前記潤滑剤含有樹脂に使用される原料樹
脂としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブチ
レン,ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂が
最も好ましい。ただし、他の樹脂であっても、潤滑剤を
含有する能力(以下、保油性と記す)に優れた樹脂であ
れば使用可能であり、このような樹脂としては、例え
ば、ポリエステル系エラストマー等があげられる。
【0017】上記のような原料樹脂に潤滑剤を混合し、
該原料樹脂の融点以上で加熱して可塑化した後、冷却固
化することにより潤滑剤含有樹脂が得られる。好ましく
使用される潤滑剤としては、ポリα−オレフィン油のよ
うなパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、
鉱油、ジアルキルジフェニルエーテルのようなエーテル
油、フタル酸エステルのようなエステル油等があげら
れ、これらは単独又は2種以上混合して用いることがで
きる。
【0018】潤滑剤には、予め酸化防止剤,錆止め剤,
摩耗防止剤,あわ消し剤,極圧剤等の各種添加剤を加え
て使用してもよい。潤滑剤含有樹脂における原料樹脂と
潤滑剤との組成比は、原料樹脂を10〜90重量%、潤
滑剤を90〜10重量%とすることが好ましい。原料樹
脂が10重量%未満の場合は、潤滑剤含有樹脂に十分な
硬さ,強度等を与えることができず、実用的でない。ま
た、原料樹脂が90重量%を越えると、潤滑剤の含有量
が少なくなり、被潤滑部への潤滑剤の供給を長期間にわ
たって継続することが困難になる。
【0019】通常、樹脂には種々の平均分子量のものが
あり(基本構造は同じ)、その平均分子量によって、そ
の物性が異なる場合がある。よって、必要に応じて種々
の平均分子量の樹脂を混合して、所望の物性を有する原
料樹脂を調整することができる。例えば、ポリオレフィ
ン系樹脂の場合には、平均分子量700〜1×104
ワックス(例えば、ポリエチレンワックス)に分類され
るものと、平均分子量1×104 〜1×106 の比較的
低分子量のものと、平均分子量1×106 〜5×106
の超高分子量のものと、がある。
【0020】比較的低分子量のものと潤滑剤との組合せ
によって、ある程度の機械的強度,潤滑剤供給能力,保
油性を有する潤滑剤含有樹脂が得られる。この中の比較
的低分子量のものの一部をワックスに分類されるものに
置き換えると、ワックスに分類されるものと潤滑油との
分子量の差が小さいために、潤滑油との親和性が高くな
り、結果として潤滑剤含有樹脂の保油性が向上し、より
長期間にわたって潤滑剤の供給が可能となる。ただし、
その反面、機械的強度は低下する。なお、ワックスとし
ては、ポリエチレンワックスのようなポリオレフィン系
樹脂の他、融点が100〜130℃以上の範囲にある炭
化水素系のワックス(例えばパラフィン系合成ワック
ス)も使用できる。
【0021】それに対して、比較的低分子量のものの一
部を超高分子量のものに置き換えると、超高分子量のも
のと潤滑剤との分子量の差が大きいために、潤滑剤との
親和性が低くなり、結果として保油性が低下する方向と
なる。その結果、潤滑剤含有樹脂から潤滑剤がしみ出す
速度を調整する効果が低下する方向となる(潤滑剤が速
くしみ出してしまう)。ただし、機械的強度は向上す
る。
【0022】成形性,機械的強度,保油性,潤滑剤供給
量のバランスを考慮すると、潤滑剤含有樹脂の組成比
は、ワックスに分類されるものが0〜5重量%、比較的
低分子量のものが8〜70重量%、超高分子量のものが
2〜15重量%で、前記3種の合計が10〜90重量%
(残部は潤滑剤)とすることが好適である。本発明の潤
滑剤供給部材を備えた転がり軸受においては、本発明の
目的を損なわない範囲で各種添加剤を添加した潤滑剤含
有樹脂により、潤滑剤供給部材を構成しても差し支えな
い。
【0023】例えば、潤滑剤含有樹脂の機械的強度を向
上させるため、上述の原料樹脂に、以下のような熱可塑
性樹脂や熱硬化性樹脂を添加してもよい。熱可塑性樹脂
としては、例えば、ポリアミド,ポリカーボネート,ポ
リブチレンテレフタレート,ポリフェニレンサルファイ
ド,ポリエーテルスルホン,ポリエーテルエーテルケト
ン,ポリアミドイミド,ポリスチレン,ABS樹脂等が
あげられる。
【0024】熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポ
リエステル樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,フェノール
樹脂,ポリイミド樹脂,エポキシ樹脂等があげられる。
これらの樹脂は、単独または2種以上混合して用いても
よい。さらに、ポリオレフィン系樹脂等の原料樹脂とそ
れ以外の樹脂とを、より均一な状態で分散させるため
に、必要に応じて適当な相溶化剤を加えてもよい。
【0025】また、機械的強度を向上させるために、充
填剤を添加してもよい。例えば、炭酸カルシウム、炭酸
マグネシウム、チタン酸カリウムウィスカーやホウ酸ア
ルミニウムウィスカー等の無機ウィスカー類、ガラス繊
維や金属繊維等の無機繊維類及びこれらを布状に編組し
たもの、カーボンブラック、黒鉛粉末、カーボン繊維、
アラミド繊維、ポリエステル繊維等があげられる。
【0026】さらに、ポリオレフィン系樹脂等の原料樹
脂の熱による劣化を防止する目的で、N,N' −ジフェ
ニル−p−フェニレンジアミン、2,2' −メチレンビ
ス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等の老化
防止剤、また光による劣化を防止する目的で、2−ヒド
ロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−
(2' −ヒドロキシ−3' −t−ブチル−5' −メチル
フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線
吸収剤を添加してもよい。
【0027】以上の全ての添加剤(原料樹脂及び潤滑剤
以外)の添加量としては、全体の20重量%以下である
ことが、潤滑剤供給部材の潤滑剤の供給能力を維持する
上で好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明に係る潤滑剤供給部材を備
えた転がり軸受の実施の形態を、図面を参照して説明す
る。図1は、内輪2と外輪3との間に、保持器5に保持
された玉4を円周等配位置に配置したアンギュラ玉軸受
1に、潤滑剤含有樹脂から構成される潤滑剤供給部材2
0を装着したものである。
【0029】潤滑剤含有樹脂の組成は、超高分子量ポリ
エチレン9重量%、高密度ポリエチレン21重量%、潤
滑剤(ポリα−オレフィン油)70重量%である。そし
て、これらを射出成形機を用いて一度可塑化(溶解)さ
せた後、所定の金型に注入し加圧しつつ冷却して、リン
グ状の潤滑剤供給部材20を成形した。リング状の潤滑
剤供給部材20に表面脱脂処理を施した後、内輪2の一
側面2aに開口させて設けたリング状の溝10に装着し
た。
【0030】内輪2には、溝10の底面10aから内輪
2の軌道面2bに連通する連通孔11が設けられてお
り、内輪2が回転した際に発生する遠心力により潤滑剤
供給部材20からしみ出した潤滑剤が、連通孔11を通
って軌道面2bに供給されるような構造となっている。
また、溝10の平行な両側面10b,10bは、内輪2
の軸方向中央部に向かって外方に傾斜する傾斜面となっ
ていて、潤滑剤供給部材20からしみ出した潤滑剤を、
軌道面2bに導かれ易くするとともに、溝10の開口部
から前記潤滑剤が飛散しにくくしている。
【0031】図2は、図1のアンギュラ玉軸受1を工作
機械用スピンドルの軸受に適用したものである。図2に
示すように、工作機械用スピンドルは、回転軸の軸受と
して図1のようなアンギュラ玉軸受1を備えており、潤
滑剤を長期間にわたって安定して軌道面に供給すること
ができるので、工作機械を長期間良好に作動させること
ができる。
【0032】次に、潤滑剤供給部材に関する実施例につ
いて説明する。後述する種々の潤滑剤供給部材に遠心分
離機により遠心力をかけて、その組成や表面脱脂処理の
有無による潤滑剤の流出量の変化(初期からの重量減少
率)を測定した。本実験に使用した潤滑剤含有樹脂は下
記の組成のものである。 (組成1)超高分子量ポリエチレン15重量%と高密度
ポリエチレン35重量%とからなるポリエチレンに、潤
滑剤としてのポリα−オレフィン油50重量%を含有さ
せたもの。
【0033】(組成2)超高分子量ポリエチレン12重
量%と高密度ポリエチレン28重量%とからなるポリエ
チレンに、潤滑剤としてのポリα−オレフィン油60重
量%を含有させたもの。 (組成3)超高分子量ポリエチレン9重量%と高密度ポ
リエチレン21重量%とからなるポリエチレンに、潤滑
剤としてのポリα−オレフィン油70重量%を含有させ
たもの。
【0034】上記組成1,2,3の潤滑剤含有樹脂を射
出成形機により射出成形して、直径30mm,厚さ5m
mの円盤を得た。この円盤状の潤滑剤供給部材30をヘ
キサン中に所定時間浸漬することにより表面脱脂処理を
施したものを、上記の潤滑剤流出実験に用いた。図3
は、実験装置の概略図である。円盤状の潤滑剤供給部材
30を、円盤平面に対して垂直方向に遠心力がかかるよ
うに、遠心分離機31のロータ33に装着した遠心沈殿
管32に、保持治具34を用いて固定した。
【0035】実験条件は、雰囲気温度10℃、遠心力は
約22500Gである。なお、Gは重力加速度で9.8
m/sec2 である。遠心力をかけた時間と潤滑剤の流
出量との関係を、図4〜6に示す。図4は、組成1の潤
滑剤含有樹脂から構成される潤滑剤供給部材30につい
て、表面脱脂処理を施したもの(処理時間5分間)と未
処理のものとを比較した結果である。表面脱脂処理を施
したものは未処理のものとを比較して、初期における潤
滑剤の流出量が著しく減少した。また、未処理のもの
は、潤滑剤の流出量が徐々に減少していくのに対して、
表面脱脂処理を施したものは、初期からほぼ一定の割合
で潤滑剤が流出した。
【0036】また、図5は、組成2の潤滑剤含有樹脂か
ら構成される潤滑剤供給部材30に表面脱脂処理を施し
たもの(処理時間5分間)と、組成1の潤滑剤含有樹脂
から構成される潤滑剤供給部材30に表面脱脂処理を施
していないものとを比較した結果である。組成2の潤滑
剤含有樹脂は、組成1の潤滑剤含有樹脂よりも、潤滑剤
の含有量が多量であるにもかかわらず、潤滑剤の流出量
が少ない。この結果は、表面脱脂処理を施すことによ
り、潤滑剤の流出量が調整可能であり、したがって、潤
滑剤含有量を高く保ちながら流出量を低く抑えて(且つ
一定の割合で流出させて)、寿命の長い潤滑剤供給部材
を製造可能であることを示している。
【0037】図6は、組成3の潤滑剤含有樹脂から構成
される潤滑剤供給部材30について、表面脱脂処理時間
を変化させて、潤滑剤の流出量を測定したものである。
処理時間が長いものほど潤滑剤の流出量が低下してお
り、この結果は、潤滑剤の流出量は、表面脱脂処理時間
によって制御できることを示している。次に、上記組成
3の潤滑剤供給部材30をヘキサンに所定時間浸漬し表
面脱脂処理を施した後、円盤平面に対して垂直方向に切
断し、その切断面を顕微鏡で観察することにより、表面
脱脂処理深さを測定した。その結果を図7に示す。表面
脱脂処理時間を長くすることにより、表面脱脂処理を受
けた処理深さが深くなっている。したがって、潤滑剤の
流出量は、表面脱脂処理時間だけでなく表面脱脂処理深
さによっても制御することが可能である。つまり、表面
脱脂処理の方法や使用溶剤を変えても、表面脱脂処理深
さを測定することによって、潤滑剤の流出量を推定する
ことができる。
【0038】さらに、上記観察後の潤滑剤供給部材30
の表面を約0.2mm程度削り取り、潤滑剤供給部材3
0の内部の潤滑剤含有率を測定した結果を図8に示す。
表面脱脂処理時間を長くすることで、潤滑剤供給部材3
0の内部の潤滑剤含有率が低下していることがわかる。
この結果は、必要以上に表面脱脂処理時間を長くする
と、潤滑剤供給部材全体の潤滑剤含有量が低下してしま
い好ましくないことを示している。
【0039】続いて、このような潤滑剤供給部材の性能
を評価するため、図1と同様に内輪側面の溝と連通孔と
を設けたアンギュラ玉軸受(40BNC10TP4)
に、潤滑剤供給部材を装着して、軸受の寿命試験を行っ
た。該試験に使用した軸受は以下の通りである。 (軸受A)軸受内に潤滑グリース0.1gを封入し、内
輪側面に設けた溝には何も装着していないもの。
【0040】(軸受B)軸受内に潤滑グリース0.1g
を封入し、内輪側面に設けた溝に、前記組成3の潤滑剤
含有樹脂から構成される潤滑剤供給部材を、表面脱脂処
理を施さずに装着したもの。 (軸受C)軸受内に潤滑グリース0.1gを封入し、内
輪側面に設けた溝に、前記組成3の潤滑剤含有樹脂から
構成される潤滑剤供給部材を、ヘキサン中に5分間浸漬
して表面脱脂処理を施した後に装着したもの。
【0041】(軸受D)軸受内に潤滑グリース0.1g
を封入し、内輪側面に設けた溝に、前記組成3の潤滑剤
含有樹脂から構成される潤滑剤供給部材を、ヘキサン中
に30分間浸漬して表面脱脂処理を施した後に装着した
もの。試験条件は、雰囲気温度20℃、軸受回転数は2
0000rpmである。この条件では、潤滑剤供給部材
にかかる遠心力は約12300Gである。なお、使用し
た潤滑グリースはLiコンプレックス/ポリα−オレフ
ィン油系の潤滑グリースである。
【0042】寿命試験の結果を図9及び図10に示す。
図9は試験初期の軸受外輪の温度変化を示したグラフで
ある。軸受Aでは、試験開始後約1時間で温度が安定し
たのに対し、軸受B,C,Dでは試験開始後約1時間で
温度は極大となり、その後徐々に下がりながら安定し
た。しかし、軸受D,C,Bの順番に温度上昇は抑えら
れていて、特に、軸受C,Dの温度上昇はさほど大きく
なく、軸受Aとほぼ同レベルであった。この結果から、
表面脱脂処理によって潤滑剤の供給量が低く抑えられ、
使用初期に被潤滑部に潤滑剤が過剰に供給されることを
防止できることが示された。
【0043】図10は試験軸受の寿命を示したものであ
る。ここでの寿命とは、軸受内の潤滑剤が不足し、外輪
もしくは内輪の軌道面又は転動体表面に焼付きを生じた
結果、軸受が異常振動を起こすまでの時間である。図1
0では、各軸受けの寿命を軸受Aの寿命を1としたとき
の相対値で示している。潤滑剤供給部材を備えた軸受
は、寿命が顕著に長くなっており、特に、軸受B,Cは
試験終了時にも異常振動は認められず、この後も使用可
能であった。なお、軸受Dは、温度上昇は軸受Cよりも
低く抑えることができたが、過剰な表面脱脂処理によっ
て潤滑剤の供給量が不足し、焼付きを生じることとなっ
た。
【0044】すなわち、適度な表面脱脂処理を施すこと
で、より長期間にわたり潤滑剤を安定して供給できるも
のである。したがって、軸受の使用条件に合わせて、潤
滑剤含有樹脂の最適な組成及び表面脱脂処理時間あるい
は表面脱脂処理深さを選択して使用することにより、被
潤滑部に適度な量の潤滑剤を長期間にわたって安定して
供給することができる潤滑剤供給部材を備えた、長寿命
の転がり軸受を得ることができる。
【0045】なお、本実施形態においては、潤滑剤供給
部材をアンギュラ玉軸受に適用した場合を例示して説明
したが、深溝玉軸受等の他の種類の玉軸受やころ軸受
等、様々な種類の転がり軸受に適用可能であることは勿
論である。
【0046】
【発明の効果】以上のように、本発明の潤滑剤供給部材
を備えた転がり軸受は、使用初期に多量の潤滑剤が被潤
滑部に供給されるという不都合がなく、常に適度な量の
潤滑剤が自動的に供給されるので、被潤滑部の発熱を引
き起こすことがない。また、長期にわたって安定して潤
滑剤が供給されるので、転がり軸受の寿命が長い。
【0047】また、被潤滑部の周辺に潤滑剤供給量調整
のための装置を設ける必要がないため、被潤滑部の周辺
の構造が簡略化され、メンテナンスが容易である。さら
に、前記装置の設置,加工,維持等に要するコストの削
減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の潤滑剤供給部材を備えた転がり軸受の
一実施形態を示す部分縦断面図である。
【図2】本発明の潤滑剤供給部材を備えた転がり軸受を
適用したスピンドルの、上部半分を破断した断面図であ
る。
【図3】遠心分離機の概略図である。
【図4】組成1の潤滑剤含有樹脂の潤滑剤流出試験の結
果を示すグラフである。
【図5】組成1及び組成2の潤滑剤含有樹脂の潤滑剤流
出試験の結果を示すグラフである。
【図6】組成3の潤滑剤含有樹脂の潤滑剤流出試験の結
果を示すグラフである。
【図7】表面脱脂処理時間と処理深さとの相関を示すグ
ラフである。
【図8】表面脱脂処理時間と潤滑剤含有率との相関を示
すグラフである。
【図9】回転時間と外輪温度との相関を示すグラフであ
る。
【図10】軸受A,B,C,Dの寿命を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
1 アンギュラ玉軸受 2 内輪 3 外輪 4 玉 10 溝 11 連通孔 20 潤滑剤供給部材

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 潤滑剤含有樹脂から構成される潤滑剤供
    給部材を備え、該潤滑剤供給部材が含有する潤滑剤が被
    潤滑部に供給される転がり軸受において、前記潤滑剤供
    給部材は、その内部よりも前記潤滑剤の含有率が低い表
    面部分を有することを特徴とする潤滑剤供給部材を備え
    た転がり軸受。
JP11218739A 1999-08-02 1999-08-02 潤滑剤供給部材を備えた転がり軸受 Withdrawn JP2001050284A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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