JP2001041929A - 電気泳動素子 - Google Patents

電気泳動素子

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JP2001041929A JP11216576A JP21657699A JP2001041929A JP 2001041929 A JP2001041929 A JP 2001041929A JP 11216576 A JP11216576 A JP 11216576A JP 21657699 A JP21657699 A JP 21657699A JP 2001041929 A JP2001041929 A JP 2001041929A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高分離・高効率化が可能で、且つ小型化が可
能であり、また、耐久性の高い表面修飾内壁を有する機
器分析用電気泳動素子を提供する。 【解決手段】 電気泳動素子1は、注入用流路部と分離
カラム部とが交差し、分離カラム部内面の少なくとも一
部分が、注入用流路部内面のゼータ電位とは異なるゼー
タ電位の表面を有している。注入用流路部は電気浸透流
が速いため試薬導入が短時間で済み且つカラムに入れる
前に試薬の分離を防ぎ、分離カラム部のみ電気浸透流を
遅くして分離効率を上げることが可能となる。電気泳動
素子1は分離カラム部のみのゼータ電位の絶対値を小さ
くすることによって、高分離・高効率化が可能な機器分
析用流体流路を提供することができる。また、電気泳動
素子1は半導体プロセス技術を応用して作成することが
可能であり、微細な流路の小型化が可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気泳動素子に関
し、特に、機器分析用流体流路に適用して好適な機器分
析用電気泳動素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】機器分析用流体流路は、従来、ガラスや
ステンレスなどの細管を用いて行われている。該細管は
分析能力を向上させるために通常50cmの長さの細管
が用いられており、この長さの細管を円状に丸めて使用
しているため小型化が困難であった。また、従来の機器
分析用流体流路は分離能向上を目的として表面処理が行
われているが、一本の細管で構成されているため部分的
に表面処理を行うことは不可能であった。
【0003】上記課題を解決する手段として、半導体プ
ロセス技術によって、シリコンウェハやガラスなどに微
細な溝を構成する手段が報告されている。例えば、特開
平9−89840号公報(文献1)には、シリコンまた
はガラス基板に溝を加工して液流路を形成し、その流路
を所望物質で部分的に修飾して高感度な分析が効率よく
行えるようにした小型電気泳動装置が報告されている。
【0004】図18は、該電気泳動装置の槻略図を示
す。図中、符号101,102,103,105,10
8,109,110は、液流入、流出の用に供すること
のできる液路口を、また符号106は流路を表す。該電
気泳動装置は、エッチングによって一方の基板117に
溝(流路106)を形成し他方の基板(不図示)を接合
して素子を形成している。基板117の溝から成る液流
路106は、途中(参照符号107,112部分)に部
分的に液を流すための液の流入・流出口が設けられてお
り(図示例では流入・流出口101,109及び10
2,108の組が配置されている)、表面修飾剤を部分
的に流して流路内壁を部分的に表面修飾できるように構
成されている。
【0005】表面修飾剤としては種々のシランカップリ
ング剤が用いられており、シランカップリング剤が有す
る感応基の種類によって分離物質とのアフィニティを変
え分離効率を重畳させることができる。この表面修飾に
よって、より高感度な分析が効率よく行えると報告され
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記先行技術におい
て、部分的な表面修飾による高分離・高効率化の効果が
報告されているが、その内容は具体性に欠け、特に高効
率化についてはその具体的記載がされていない。
【0007】また、シランカップリング剤による表面修
飾は有機被膜を利用しているため、有機溶媒やアルカリ
による洗浄によって皮膜の劣化が生じ、耐久性に乏しい
という問題点を有する。
【0008】したがって、本発明は、上記問題を解決す
べくなされたもので、その目的は、高分離・高効率化が
可能であって、且つ小型化が可能な機器分析用電気泳動
素子を提供することにある。また、耐久性の高い表面修
飾内壁を有する機器分析用電気泳動素子を提供すること
にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によって、以下の
電気泳動素子が提供される。すなわち、溝加工した平板
を複数重ねて液流路を構成した電気泳動素子において、
少なくとも該電気泳動素子にて分離する試料を該分離素
子に注入する注入用流路部と、該試料を分離する分離カ
ラム部とが交差して成る電気泳動素子であって、該分離
カラム部内面の少なくとも一部分が、該注入用流路部内
面のゼータ電位とは異なるゼータ電位の表面を有してい
ることを特徴とする電気泳動素子が提供される(請求項
1)。
【0010】ここに、請求項1中の「溝加工した平板」
は、本発明の好ましい第1の実施の形態(第1の実施の
形態の変形、変更例を含む。以下同じ。)では、例えば
ホウケイ酸ガラス基板が該当するが、他の素材のガラス
基板やシリコンウエハ、また、プラスチック基板なども
含む。請求項1中の「溝加工した平板」を構成する溝
は、この第1の実施の形態では、例えばウエットエッチ
ングにより形成したが、ドライエッチングや機械加工な
ど、他の手法で形成することもできる。また、第1の実
施の形態の溝の形状は、該形状に限定する必要はなく、
他の形状であっても良い。また、第1の実施形態では、
一方の基板のみに溝を構成したが、他方の基板側にも同
様に溝を構成することも可能である。溝を構成する基板
の数は限定されず、複数枚重ねて溝を構成することも可
能である。また、貫通加工した基板と未加工の平板とを
重ねて構成することもできる。溝の深さまたは幅は電圧
を印加した際に電気浸透流が発生する範囲、具体的には
150μm以下であることが望ましい。請求項1中の
「分離する試料を該分離素子に注入する注入用流路部」
は、第1の実施の形態では試料注入口から試料排出口を
結ぶ流路が該当する。請求項1中の「該試料を分離する
分離カラム部」は、第1の実施の形態では支持液注入口
から支持液排出口を結ぶ流路が該当する。請求項1中の
「注入用流路部内面のゼータ電位」は、この第1の実施
の形態では、例えばホウケイ酸ガラス表面のゼータ電位
が該当する。請求項1中の「注入用流路部内面のゼータ
電位とは異なるゼータ電位の表面」は、この第1の実施
の形態では、例えばトリメチルクロロシランによって表
面処理された流路内壁が該当するが、他の一般的表面処
理剤、例えば、他のシランカップリング剤や、カルボキ
シメチルセルロースやポリアクリルアミドなどの親水性
高分子や界面活性剤等なども含む。
【0011】本発明に従う電気泳動素子の作用、効果
は、以下のように説明することができる。キヤピラリー
電気泳動においてはキヤピラリーに支持液として電解質
溶液を満たして分析を行うが、このことによりキヤピラ
リー内壁及びこれと接する電解質溶液の間に電気二重層
が形成される。ここに電圧が印加されると電解質溶液が
溶媒を伴って移動し、電気浸透流が生じる。電気浸透流
は分離された成分イオンを移動させる駆動力として利用
することができる。電気浸透流速υは電解質溶液の誘電
率εと粘性率η、ゼータ電位ξおよびキヤピラリーに沿
ってかけられる電場の強さEの関係として下記式で表さ
れる。ゼータ電位とはキヤピラリー内壁と電解質溶液管
の電位差のことである。
【数1】υ=−(εξ/η)E ・・・・(1)
【0012】ゼータ電位ξはキヤピラリー内壁の荷電状
態において正負いずれの符号をもとりうるが、通常用キ
ヤピラリーに用いられるガラス表面では負になるため、
υは正となり、従って電気浸透流は陽極から陰極へ向か
う。
【0013】ここに、本発明に従う電気泳動素子は、試
料導入部となる注入用流路部と分離カラムとして働く表
面処理された流路との流路内壁のゼータ電位が異なる。
注入用流路部の内壁はホウケイ酸ガラス表面であり、ゼ
ータ電位の符号は表面の荷電状態から負となる。一方、
分離カラムとして働く表面処理された流路の内壁は非イ
オン性の表面処理剤にて覆われているため表面の荷電は
弱くなり、ゼータ電位の絶対値は表面未処理の流路内壁
に比べ小さくなる。
【0014】ところで、上記(1)式から、電圧を印加
した際の電気浸透流の速さは、ゼータ電位の絶対値が大
きいほど速い。つまり、本発明の電気泳動素子の電気浸
透流は試薬の注入用流路部が速く分離カラム部が遅いこ
とになる。 電気浸透流が速いと分析時間が少なくて済む
反面、分離効率が悪い。表面処理により電気浸透流が抑
えられると分析時間が長くなるものの分離効率が向上す
る。この現象は、例えば「本田進、寺部茂:キヤピラリ
ー電気泳動,P26;講談社」(文献2)に説明されて
いる。従って、本発明の電気泳動素子は、注入用流路部
は電気浸透流が速いため試薬導入が短時間で済み且つカ
ラムに入れる前に試薬の分離を防ぎ、分離カラム部のみ
電気浸透流を遅くして分離効率を上げることが可能とな
る。つまり、本発明の電気泳動素子は分離カラム部のみ
のゼータ電位の絶対値を小さくすることによって、高分
離・高効率化が可能な機器分析用流体流路を提供するこ
とができる。また、第1の実施の形態の作成方法に記載
するように、本発明の電気泳動素子は半導体プロセス技
術を応用して作成することが可能であるため、微細な流
路の小型化が可能な機器分析用流体流路を提供すること
ができる。
【0015】本発明はまた、請求項1記載の電気泳動素
子において、該分離カラム部内面の少なくとも一部分の
ゼータ電位の値と該注入用流路部内面のゼータ電位の値
とが0または同一符号であり、該分離カラム部内面の少
なくとも一部分のゼータ電位の絶対値が、該注入用流路
部内面のゼータ電位の絶対値よりも小さいようにする構
成として、好適に実施でき(第1変形例)、同様にし
て、上記請求項1による場合と同様の作用効果を得るこ
とができる。この場合において、「分離カラム部内面の
少なくとも一部分のゼータ電位の値」とは、第1の実施
の形態では、トリメチルクロロシランによって表面処理
された流路内璧のゼータ電位の値が該当する。「注入用
流路部内面のゼータ電位の値」とは、第1の実施の形態
では、ホウケイ酸ガラス基板のゼータ電位の値が該当す
る。
【0016】また、請求項1(または第1変形例)記載
の電気泳動素子において、少なくとも該電気泳動素子に
て試料を分離する分離カラム部と、分離した該試料を分
取する分取用流路部とが交差して成る電気泳動素子であ
って、該分離カラム部内面の少なくとも一部分が、該分
取用流路内面のゼータ電位とは異なるゼータ電位の表面
を有していることを特徴とする電気泳動素子が、本発明
により提供される(請求項2)。
【0017】ここに、請求項2中の「試料を分離する分
離カラム部」とは、後述の第2の実施の形態(第2の実
施の形態の変形、変更例を含む)では支持液注入口から
支持液排出口を結ぶ流路が該当する。請求項2中の「分
離した該試料を分取する分取用流路部」とは、この第2
の実施形態では、二つの分取口を結ぶ流路が該当する。
請求項2中の「分取用流路内面のゼータ電位」とは、こ
の第2の実施形態では、例えばホウケイ酸ガラス表面の
ゼータ電位が該当する。請求項2中の「分取用流路内面
のゼータ電位とは異なるゼータ電位の表面」とは、この
第2の実施形態では、例えばトリメチルクロロシランに
よって表面処理された流路内壁が該当する。
【0018】請求項2の場合、本発明の電気泳動素子
は、請求項1記載の電気泳動素子の作用・効果に加え、
下記作用・効果を有する。本発明の電気泳動素子は、分
離カラムとして働く表面処理された流路と、分離物質の
分取に用いる分取用流路部との流路内壁のゼータ電位が
異なる。分取用流路部の内壁はホウケイ酸ガラス表面で
あり、ゼータ電位の符号は表面の荷電状態から負とな
る。一方、分離カラムとして働く表面処理された流路の
内壁は非イオン性の表面処理剤にて覆われているため表
面の荷電は弱くなり、ゼータ電位の絶対値は表面未処理
の流路内壁に比べ小さくなる。
【0019】ここで、前記(1)式から、電圧を印加し
た際の電気浸透流の速さは、ゼータ電位の絶対値が大き
いほど速い。つまり、本発明の電気泳動素子は分取用流
路部が速く分離カラム部が遅いことになる。電気浸透流
が速いと分析時間が少なくて済む反面、分離効率が悪
い。表面処理により電気浸透流が抑えられると分析時間
が長くなるものの分離効率が向上する。従って、本発明
の電気泳動素子は、分離カラム部のみ電気浸透流を遅く
して分離効率を上げ、分取用流路部は電気浸透流が速い
ため分取を短時間で行うことができ且つ分取前に試薬の
分離を防ぐことが可能となる。つまり、本発明の電気泳
動素子は分離カラム部のみのゼータ電位の絶対値を小さ
くすることによって、高分離・高効率化が可能な機器分
析用流体流路を提供することができる。また、本発明の
電気泳動素子は半導体プロセス技術を応用して作成する
ことが可能であるため、微細な流路の小型化が可能な機
器分析用流体流路を提供することができる。
【0020】本発明はまた、請求項2記載の電気泳動素
子において、該分離カラム部内面の少なくとも一部分の
ゼータ電位の値と該分取用流路部内面のゼータ電位の値
とが0または同一符号であり、該分離カラム部内面の少
なくとも一部分のゼータ電位の絶対値が、該分取用流路
部内面のゼータ電位の絶対値よりも小さいようにする構
成として、好適に実施でき(第2変形例)、同様にし
て、上記請求項2による場合と同様の作用効果を得るこ
とができる。この場合において、「分離カラム部内面の
少なくとも一部分のゼータ電位の値」とは、第2の実施
の形態ではトリメチルクロロシランによって表面処理さ
れた流路内壁のゼータ電位の値が該当する。「分取用流
路部内面のゼータ電位の値」とは、第2の実施の形態で
はホウケイ酸ガラス基板のゼータ電位の値が該当する。
【0021】また、請求項2記載の電気泳動素子におい
て、該分取用流路部を複数有する電気泳動素子であっ
て、少なくとも一つの該分取用流路部が該分離カラム部
の任意の位置に構成され、該分取用流蕗部を境に両端の
分離カラム部内面の少なくとも一部分のゼータ電位が、
該分取用流路内面のゼータ電位とは異なるゼータ電位の
表面を有していることを特徴とする電気泳動素子が、本
発明により提供される(請求項3)。
【0022】ここに、請求項3中の「分離カラム部の任
意の位置に構成された少なくとも一つの分取用流路部」
とは、後述の第3の実施の形態(第3の実施の形態の変
形、変更例を含む)では、分離カラム部の中央を交差す
る分取用流路部が該当するが、交差する位置は分離カラ
ム部の位置は限定されず任意の位置に構成することがで
きる。また、分離カラム部の任意の位置に構成された分
取用流路部の数も限定されない。請求項3中の「分取用
流路内面のゼータ電位」は、この第3の実施の形態で
は、例えばホウケイ酸ガラス表面のゼータ電位が該当す
る。請求項3中の「分取用流路内面のゼータ電位とは異
なるゼータ電位の表面」は、この第3の実施の形態で
は、例えばトリメチルクロロシランによって表面処理さ
れた流路内壁が該当する。また、該分取用流路部を境に
両端の分離カラムはそれぞれが異なる表面処理を施し異
なるゼータ電位とすることが可能であり、また同じ表面
処理を施すことも可能である。
【0023】請求項3の場合、本発明の電気泳動素子
は、請求項1、請求項2記載の電気泳動素子の作用・効
果に加え、下記作用・効果を有する。本発明の電気泳動
素子は、分離カラム部の中央を交差する第1の分取用流
路部を境に、分離カラムとして働く表面処理された第1
の流路と第2の流路を有し、さらに分離物質の泳動末端
となる支持液排出口側に分離物質の分取に用いる第2の
分取用流路部が構成されている。2つの分取用流路部の
内壁はホウケイ酸ガラス表面であり、ゼータ電位の符号
は表面の荷電状態から負となる。表面処理された2つの
流路の内壁は非イオン性の表面処理剤にて覆われている
ため表面の荷電は弱くなり、ゼータ電位の絶対値は表面
未処理の流路内壁に比べ小さくなる。表面処理された2
つの流路は、同一の表面処理剤によって処理されてお
り、流路内璧のゼータ電位は等しい。
【0024】ここで、前記(1)式から、電圧を印加し
た際の電気浸透流の速さは、ゼータ電位の絶対値が大き
いほど速い。つまり、本発明の電気泳動素子の電気浸透
流は2つの分取用流路部が速く2つの分離カラム部が遅
いことになる。電気浸透流が速いと分析時間が少なくて
済む反面、分離効率が悪い。表面処理により電気浸透流
が抑えられると分析時間が長くなるものの分灘効率が向
上する。注入口側に位置する表面処理された第 1の流路
にて目的の分離が生じた場合は、その時点で第1の分取
用流路部にて分取目的の分離物質を分取できるため、分
離から分取までが速くなる。また、注入口側に位置する
表面処理された流路では分離不十分だった場合は、さら
に第2の流路にて分離させ第2の分取用流路部から分取
目的の分離物質を分取できる。このように、本発明の電
気泳動素子は試料の分離過程において、分離に応じて分
取することが可能となり、効率良く分離・分取を進める
ことができる。つまり、本発明の電気泳動素子はゼータ
電位の絶対値の小さい2つの分離カラム部の間と泳動末
端部にゼータ電位の絶対値の大きい分取用流路部を設け
ることによって、高分離・高効率化が可能な機器分析用
流体流路を提供することができる。また、半導体プロセ
ス技術を応用して作成することが可能であるため、微細
な流路の小型化が可能な機器分析用流体流路を提供する
ことができる。
【0025】本発明はまた、請求項3記載の電気泳動素
子において、該分離カラム部内面の少なくとも一部分の
ゼータ電位の値と該分取用流路部内面のゼータ電位の値
とが0または同一符号であり、該分離カラム部内面の少
なくとも一部分のゼータ電位の絶対値が、該分取用流路
部内面のゼータ電位の絶対値よりも小さいようにする構
成として、好適に実施でき(第3変形例)、同様にし
て、上記請求項3による場合と同様の作用効果を得るこ
とができる。この場合において、「分離カラム部内面の
少なくとも一部分のゼータ電位の値」とは、第3の実施
の形態ではトリメチルクロロシランによって表面処理さ
れた流路内壁のゼータ電位の値が該当する。「分取用流
路部内面のゼータ電位の値」とは、第3の実施の形態で
はホウケイ酸ガラス基板のゼータ電位の値が該当する。
【0026】また、請求項3(または第3変形例)記載
の電気泳動素子において、複数の分取用流路部に挟まれ
た分離カラム部の注入用流路部側に電圧印加用流路部が
設けられていることを特徴とする電気泳動素子が、本発
明により提供される(請求項4)。
【0027】ここに、請求項4中の「複数の分取用流路
部」とは、後述の第4の実施の形態(第4の実施の形態
の変形、変更を含む)では、分離カラム部のほば中央を
交差する第1の分取用流蕗部と、分離物質の泳動末端と
なる支持液排出口側に構成された第2の分取用流路部の
2つが該当する。請求項4中の「複数の分取用流路部に
挟まれた分離カラム部」とは、この第4の実施の形態で
は、第1の分取用流路部と第2の分取用流路部との間に
位置する第2の分離カラム部が該当する。請求項4中の
「電圧印加用流路部」とは、この第4の実施の形態で
は、第1の分取用流路部と第2の分離カラム部との間に
構成された電圧印加用流路口ヘの分岐流路が該当する。
【0028】請求項4の場合、本発明の電気泳動素子
は、請求項1〜3記載の電気泳動素子の作用・効果に加
え、下記作用・効果を有する。本発明の電気泳動素子
は、分離カラムとして働く表面処理された第1の流路と
第2の流路を有し、2つの流路の間に分離物質の分取に
用いる第1の分取用流路部と電圧印加ポイントを切り換
えるために用いる電圧印加用流路口が構成され、さらに
分離物質の泳動末端となる支持液排出口側に分離物質の
分取に用いる第2の分取用流路部が構成されている。第
1の流路、第2の流路及び2つの分取用流路部は、流路
内壁のゼータ電位が異なる。2つの分取用流路部の内壁
はホウケイ酸ガラス表面であり、ゼータ電位の符号は表
面の荷電状態から負となる。表面処理された第1の流路
と第2の流路の内壁は非イオン性の表面処理剤にて覆わ
れているため表面の荷電は弱くなり、ゼータ電位の絶対
値は表面未処理の分取用流路部内壁に比べ小さくなる。
また、表面処理された第1の流路と第2の流路とは異な
る表面処理剤で覆われているため、流路内壁のゼータ電
位が異なる。第2の流路は第1の流路よりも疎水性の強
い表面処理剤で覆われているため、表面の電荷は弱くな
り、ゼータ電位の絶対値は第1の流路に比べさらに小さ
くなる。
【0029】ここで、前記(1)式から、電圧を印加し
た際の電気浸透流の速さは、ゼータ電位の絶対値が大き
いほど速い。つまり、本発明の電気泳動素子の電気浸透
流は表面処理された第2の流路が最も遅く、表面処理さ
れた第 1の流路、2つの分取用流路部の順で速くなる。
電気浸透流が速いと分析時間が少なくて済む反面、分離
効率が悪い。表面処理により電気浸透流が抑えられると
分析時間が長くなるものの分離効率が向上する。従っ
て、表面処理された第1の流路は第2の流路に比べ分離
効率は劣るものの分析時間は短い。表面処理された第1
の流路にて目的の分離が生じた場合は、その時点で第1
の分取用流路部にて分取目的の分離物質を分取できるた
め、分離から分取までが速くなる。また、表面処理され
た第1の流路では分離不十分だった場合は、さらに分離
効率の高い表面処理された第2の流路にて分離させ第2
の分取用流路部から分取目的の分離物質を分取できる。
また、表面処理された第1の流路と第2の流路への電圧
印加ポイントを切り換えて電圧印可することにより、表
面処理の効果を反映した電気浸透流を実現することがで
きる。つまり、本発明の電気泳動素子は、上記に説明し
たように、高分離・高効率化が可能な機器分析用流体流
路を提供することができる。また、本発明の電気泳動素
子は半導体プロセス技術を応用して作成することが可能
であるため、微細な流路の小型化が可能な機器分析用流
体流路を提供することができる。
【0030】本発明はまた、請求項4記載の電気泳動素
子において、該分離カラム部の任意の位置に構成された
該分取用流路部を境に、該分離カラム部内面のゼータ電
位の値が異なるよう構成して、好適に実施でき(第4−
1変形例)、同様にして、上記請求項4による場合と同
様の作用効果を得ることができる。この場合において、
「分離カラム部の任意の位置に構成された該分取用流路
部」とは、第4の実施の形態では分離カラム部のほぼ中
央を交差する分取用流路部が該当するが、交差する位置
は分離カラム部の位置は限定されず任意の位置に構成す
ることができる。「分離カラム部内面のゼータ電位の
値」とは、第4の実施の形態ではトリメチルクロロシラ
ンによって表面処理された流路内壁とジメチルアロビル
クロロシランによって表面処理された流路内壁のゼータ
電位の値が該当する。さらにはまた、上記(第4−1変
形例)記載の電気泳動素子において、該分取用流路部を
境に異なる分離カラム部内面のゼータ電位の値が0また
は同一符号であり、該注入用流路部側に位置する分離カ
ラム部内面のゼータ電位の絶対値が該注入用流路部側と
は反対側に位置する分離カラム部内面のゼータ電位の絶
対値よりも大きいようにする構成として、本発明は好適
に実施でき(第4−2変形例)、同様にして、上記請求
項4による場合と同様の作用効果を得ることができる。
この場合において、「注入用流路部側に位置する分離カ
ラム部」とは、第4の実施の形態ではトリメチルクロロ
シランによって表面処理された流路が該当する。「注入
用流路部側とは反対側に位置する分離カラム部」とは、
第4の実施の形態ではジメチルプロピルクロロシランに
よって表面処理された流路が該当する。
【0031】また、本発明によると、溝加工した平板を
複数重ねて液流路を構成した電気泳動素子において、少
なくとも該電気泳動素子にて分離する試料を該分離素子
に注入する注入用流路部と、該試料を分離する分離カラ
ム部とが交差して成る電気泳動素子であって、該分離カ
ラム部内面の少なくとも一部分が、溝加工した基板流路
内面のゼータ電位とは異なるゼータ電位の表面を有して
おり、その溝加工した基板のゼータ電位とは異なるゼー
タ電位の表面が、絶縁性の無機材料によって構成されて
いることを特徴とする電気泳動素子が、提供される(請
求項5)。
【0032】ここに、請求項5中の「溝加工した平板」
は、後述の第5の実施の形態(第5の実施の形態の変
形、変更例を含む)では、例えばホウケイ酸ガラス基板
が該当するが、他の素材のガラス基板やシリコンウエ
ハ、また、プラスチック基板なども含む。請求項5中の
「溝加工した平板」を構成する溝は、この第5の実施の
形態ではウエットエッチングにより形成したが、ドライ
エッチングや機械加工など、他の手法で形成することも
できる。また、第5の実施の形態の溝の形状は、該形状
に限定する必要はなく、他の形状であっても良い。ま
た、第5の実施形態では、一方の基板のみに溝を構成し
たが、他方の基板側にも同様に溝を構成することも可能
である。溝を構成する基板の数は限定されず、複数枚重
ねて溝を構成することも可能である。溝の深さまたは幅
は電圧を印加した際に電気浸透流が発生する範囲、具体
的には150μm以下であることが望ましい。請求項5
中の「分離する試料を該分離素子に注入する注入用流路
部」は、第5の実施の形態では試料注入口から試料排出
口を結ぶ流路が該当する。請求項5中の「該試料を分離
する分離カラム部」は、第5の実施の形態では支持液注
入口から支持液排出口を結ぶ流路が該当する。請求項5
中の「溝加工した基板流路内面のゼータ電位」は、この
第5の実施の形態では、例えばホウケイ酸ガラス基板表
面のゼータ電位が該当する。請求項5中の「絶縁性の無
機材料」は、この第5の実施の形態では、二酸化けい素
ガラスによってコートされた流路内壁が該当するが、絶
縁性の無機材料であれば他の無機皮膜材料に変更が可能
である。例えば、他のガラス材料、窒化シリコン、アル
ミナ、ダイヤモンド、五酸化タンタル等に変更すること
ができる。また、二酸化けい素ガラスのコートはスパッ
クリングによって行ったが、他の成膜方法、例えば、ケ
ミカルヴエーパーデポジッション法や真空蒸着法などを
用いることもできる。
【0033】請求項5の場合にあっては、本発明に従う
電気泳動素子の作用、効果は、以下のように説明するこ
とができる。本発明の電気泳動素子は、試料導入部とな
る注入用流路部と分離カラムとして働く表面コートされ
た流路との流路内壁のゼータ電位が異なる。注入用流路
部の内壁はホウケイ酸ガラス表面であり、ゼータ電位の
符号は表面の荷電状態から負となる。一方、分離カラム
として働く表面コートされた流路の内壁は二酸化けい素
ガラスにて覆われているため、ゼータ電位の絶対値はホ
ウケイ酸ガラス表面に比べ小さくなる。
【0034】ところで、前記(1)式から、電圧を印加
した際の電気浸透流の速さは、ゼータ電位の絶対値が大
きいほど速い。つまり、本発明の電気泳動素子の電気浸
透流は試薬の注入用流路部が速く分離カラム部が遅いこ
とになる。電気浸透流が速いと分析時間が少なくて済む
反面、分離効率が悪い。表面処理により電気浸透流が抑
えられると分析時間が長くなるものの分離効率が向上す
る。従って、本発明の電気泳動素子は、注入用流路部は
電気浸透流が速いため試薬導入が短時間で済み且つカラ
ムに入れる前に試薬の分離を防ぎ、分離カラム部のみ電
気浸透流を遅くして分離効率を上げることが可能とな
る。つまり、本発明の電気泳動素子は分離カラム部のみ
のゼータ電位の絶対値を小さくすることによって、高分
離・高効率化が可能な機器分析用流体流路を提供するこ
とができる。また、本発明の電気泳動素子は、表面コー
トされた流路内壁が無機皮膜であるため、耐久性が高
く、アルカリなどによる洗浄を行っても有機被膜のよう
に劣化しない。このため、耐久性の高い、繰り返し使用
可能な電気泳動素子となる。また、本発明の電気泳動素
子は半導体プロセス技術を応用して作成することが可能
であるため、微細な流路の小型化が可能な機器分析用流
体流路を提供することができる。
【0035】本発明はまた、請求項5記載の電気泳動素
子において、該絶縁性の無機材料が、石英硝子やホウケ
イ酸硝子などの硝子材料、または窒化シリコン、五酸化
タンタル、アルミナ、ダイヤモンドからなる構成とし
て、好適に実施でき(第5変形例)、同様にして、上記
請求項5による場合と同様の作用効果を得ることができ
る。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づき説明する。図1〜図3は、本発明の電気泳動素
子の第1の実施の形態を示す。図1は、この第1の実施
の形態における電気泳動素子の斜視図、図2は、同第1
実施形態の電気泳動素子における溝加工した基板を溝加
工面から見た図、図3は、同第1実施形態の電気泳動素
子の作製方法の一例の説明に供する図である。
【0037】〔第1の実施の形態の構成〕図中、1は電
気泳動素子を示し、この電気泳動素子1は、例えば、ホ
ウケイ酸ガラス基板2と溝加工したホウケイ酸ガラス基
板3とを接合して構成されている。基板2と溝(図3
中、参照符号14)を有する基板3とによって囲まれた
空間によって、流路4が形成されている。流路4は、こ
こでは、6個の枝別れを有する流路であって、支持液注
入口5、支持液排出口6、試料注入口7、試料排出口
8、及び2個の表面処理用試薬導入口9を構成する。
【0038】各口にはチューブとのコネクター(図3中
(g),(h)参照)が設けられており、ここでは、支
持液注入口5、支持液排出口6、試料注入口7、及び試
料排出口8の4個所には管状の白金から成る電極10が
接続されている。また、試料注入口7から試料排出口8
を結ぶ注入用流路部と支持液注入口5から支持液排出口
6を結ぶ分離カラム部は、交差部11にて交差してい
る。また、支持液注入口5から支持液排出口6を結ぶ分
離カラム部は、交差部11と支持液排出口6の間で蛇行
した形状を有する。2個の表面処理用試薬導入口9は、
交差部11と支持液排出口6の間の分岐部に構成されて
いる。
【0039】図2は、溝加工した上記基板3を溝加工面
から見た図であり、流路4の2個の表面処理用試薬導入
口9は、参照符号9a,9bを付した導入口から成る。
導入口9a〜9bの間の流路は、トリメチルクロロシラ
ンによって表面処理された流路12を有する。この流路
12の部分が主に分離カラムとして働く。
【0040】ここに、電気泳動素子1の作製方法を図3
を参照にしながら説明する。まず、図3(a)に示すよ
うに、光学研磨した平板のホウケイ酸ガラス基板3を用
意する。次に、図3(b)に示すように、ホウケイ酸ガ
ラス基板3の表面にフォトレジストをスピンコートし、
レジスト薄膜13,13を成膜する。次に、図3(c)
に示すように、フォトリソグラフィー技術によってレジ
スト薄膜13をパターニングする。次に、図3(d)に
示すように、フッ酸とフッ化アンモニウムを混合した溶
液に基板を浸積し、パターニングしたレジスト薄膜13
をマスクとしてホウケイ酸ガラス基板3をウェットエッ
チングし、溝14を有するホウケイ酸ガラス基板3とす
る。溝14は、溝の深さが150μm以下であることが
望ましい。次に、図3(e)に示すように、プラズマア
ッシャーを用いてエッチングマスクとして利用したレジ
スト薄膜13を除去する。次に、図3(f)に示すよう
に、溝加工したホウケイ酸ガラス基板3と穴(2a)あ
け加工済みのホウケイ酸ガラス基板2を重ね、ヒーター
15にて加熱して熱溶着法にて接合する。加熱温度は5
00〜800℃が望ましい。次に、図3(g)に示すよ
うに、接着剤にてコネクター16を接合する。次に、図
3(h)に示すように、チューブ17を介して管状の白
金から成る電極10を接続し、電気泳動素子1を完成し
た。
【0041】次に,表面処理方法について説明する。電
気泳動素子1の支持液注入口5、支持液排出口6、試料
注入口7、及び試料排出口8をすべて密閉する。次に、
表面処理用試薬導入口9bにペリスターポンプを接続
し、吸引によって表面処理用試薬導入口9aから10%
トリメチルクロロシランのジクロロメタン溶液を注入さ
せる。注入後約10分間放置することにより、表面処理
された流路12得た。
【0042】次に,電気泳動素子1を用いた分離実験に
ついて説明する。まず、4個の電極10に高圧電源を接
続する。支持液注入口5と試料注入口7の電極10には
陽極を、支持液排出口6と試料排出口8の電極10には
陰極を接続する。流路4には予め全体に泳動バッファー
を満たしておく。次に、試料注入口7に分離するための
試料を注入する。試料注入口7、及び試料排出口8の間
に電圧を印加し、電気浸透流によって試料注入口7から
試料排出口8に向かって試料を導入する。次に、支持液
注入口5と支持液排出口6の間に電圧を印加し、交差部
11に存在する試料を電気浸透流によって支持液排出口
6に向かって泳動させる。泳動試料は、途中に表面処理
された流路12を有する流路を経て分離しながら支持液
排出口6に向かって泳動する。
【0043】〔第1の実施の形態の作用・効果〕次に、
この第1の実施の形態の作用及び効果を説明する。キャ
ピラリー電気泳動においてはキャピラリーに支持液とし
て電解質溶液を満たして分析を行うが、このことにより
キャピラリー内壁及びこれと接する電解質溶液の間に電
気二重層が形成される。ここに、電圧が印加されると電
解質溶液が溶媒を伴って移動し、電気浸透流が生じる。
電気凌透流は分離された成分イオンを移動させる駆動力
として利用することができる。電気浸透流速υは電解質
溶液の誘電率εと粘性率η、ゼータ電位ξおよびキャピ
ラリーに沿ってかけられる電場の強さEの関係として下
記式で表される。ゼータ電位とはキャピラリー内壁と電
解質溶液管の電位差のことである。
【数2】υ=−(εξ/η)E ・・・・(1)
【0044】ゼータ電位ξはキャピラリー内壁の荷電状
態において正負いずれの符号をもとりうるが、通常用キ
ャピラリーに用いられるガラス表面では負になるため、
υは正となり、従って電気浸透流は陽極から陰極へ向か
う。
【0045】ここに、本実施の形態に従う電気泳動素子
1は、試料注入口7から試料排出口8を結ぶ注入用流路
部と支持液注入口5から支持液排出口6を結ぶ分離カラ
ム部は、交差部11にて交差しているとともに、分離カ
ラム部内面の少なくとも一部分が、注入用流路部内面の
ゼータ電位とは異なるゼータ電位の表面を有している。
【0046】すなわち、上記電気泳動素子1は、試料導
入部となる試料注入口7から試料排出口8を結ぶ注入用
流路部と分離カラムとして働く表面処理された流路12
との流路内壁のゼータ電位が異なる。試料注入口7から
試料排出口8を結ぶ流路の内壁はホウケイ酸ガラス表面
であり、ゼータ電位の符号は表面の荷電状態から負とな
る。一方、分離カラムとして働く表面処理された流路1
2の内壁は非イオン性の表面処理剤にて覆われているた
め表面の荷電は弱くなり、ゼータ電位の絶対値は表面未
処理の流路内壁に比べ小さくなる。
【0047】(1)式から、電圧を印加した際の電気浸
透流の速さは、ゼータ電位の絶対値が大きいほど速い。
つまり、上記電気泳動素子1の電気浸透流は試薬の注入
用流路部が速く分離カラム部が遅いことになる。電気浸
透流が速いと分析時間が少なくて済む反面、分離効率が
悪い。表面処理により電気浸透流が抑えられると分析時
間が長くなるものの分離効率が向上する。従って、上記
電気泳動素子1は、注入用流路部は電気浸透流が速いた
め試薬導入が短時間で済み且つカラムに入れる前に試薬
の分離を防ぎ、分離カラム部のみ電気浸透流を遅くして
分離効率を上げることが可能となる。つまり、電気泳動
素子1は分離カラム部のみのゼータ電位の絶対値を小さ
くすることによって、高分離・高効率化が可能な機器分
析用流体流路を提供することができる。また、上記作成
方法(図3)に記載したように、電気泳動素子1は半導
体プロセス技術を応用して作成することが可能であるた
め、微細な流路の小型化が可能な機器分析用流体流路を
提供することができる。かくして、本実施の形態の構成
に従えば、高分離・高効率化が可能であって、且つ小型
化が可能な機器分析用電気泳動素子が実現される。
【0048】〔第1の実施の形態の変形、変更〕なお、
この第1の実施の形態の各構成は、当然、各種変形、変
更が可能である。 〔1−1〕例えば、ホウケイ酸ガラス基板2とホウケイ
酸ガラス基板3は、他の素材のガラス基板やシリコンウ
ェハヘの変更が可能である。また、プラスチック基板へ
の変更も可能である。 〔1−2〕基板2と溝を有する基板3とによって囲まれ
た空間によって構成された流路4は、基板2が溝を有す
る構成に変更することも可能であり、基板2,3共に溝
を有する構成にすることも可能である。
【0049】〔1−3〕2個の表面処理用試薬導入口9
は、2個以上であればその数に限定されず、複数の表面
処理用試薬導入口を構成して複数の表面処理剤にて部分
的な表面処理をすることも可能である。 〔1−4〕また、支持液注入口5から支持液排出口6を
結ぶ分離カラム部は、交差部11と支持液排出口6の間
で蛇行した形状を有するが、形状は限定されず、直線形
状等への変更が可能である。 〔1−5〕白金から成る電極10の素材は白金に限定さ
れず、金等の他の導電性物質に変更が可能である。ま
た、電極が接続されている部位は、支持液注入口5、支
持液排出口6、試料注入口7、及び試料排出口8の4個
所に限定されず、2個の表面処理用試薬導入口9に接続
して電圧印加ポイントを可変することも可能である。
【0050】〔1−6〕また、接続された電極の正負は
特に限定されず、目的に応じて可変することも可能であ
る。例えば、ゼータ電位の値の符号が正の表面の場合
は、電気浸透流は正極に流れるため、接続する電極の正
負は本実施形態と反対にすることで同様な泳動が可能と
なる。 〔1−7〕表面処理に用いたトリメチルクロロシラン
は、他の一般的表面処理剤に変更することができる。例
えば、他のシランカップリング剤に変更することができ
る。また、カルボキシメチルセルロースやポリアクリル
アミドなどの親水性高分子や界面活性剤等に変更するこ
ともできる。これらの点は、以下の例における変形、変
更の場合にも準ずる。
【0051】〔第2の実施の形態の構成〕次に、本発明
の電気泳動素子の第2の実施の形態を示す。本実施形態
は、試料を分離する分離カラム部と、分離した試料を分
取する分取用流路部とが交差して成る電気泳動素子であ
って、分離カラム部内面の少なくとも一部分が、分取用
流路内面のゼータ電位とは異なるゼータ電位の表面を有
するようにしようというものである。本実施の形態は、
前記第1の実施の形態の変形例とも捉えることもでき
る。図4は、この第2の実施の形態における電気泳動素
子20の斜視図、図5は、その電気泳動素子20におけ
る溝加工した基板を溝加工面から見た図である。
【0052】基本的な構成は第1実施形態で例示したの
と同様であってよく、この電気泳動素子20は、ホウケ
イ酸ガラス基板21と溝加工したホウケイ酸ガラス基板
22とを接合して構成されている。基板21と溝を有す
る基板22とによって囲まれた空間によって、流路23
が形成されている。
【0053】流路23は、ここでは、8個の枝別れを有
する流路であって、支持液注入口5、支持液排出口6、
試料注入口7、試料排出口8、2個の試料分取口24
(24a,24b)、及び2個の表面処理用試薬導入口
9を構成する。各口にはチューブとのコネクターが設け
られており、支持液注入口5、支持液排出口6、試料注
入口7、試料排出口8及び試料分取口24には管状の白
金から成る電極10が接続されている。また、試料注入
口7から試料排出口8を結ぶ注入用流路部と支持液注入
口5から支持液排出口6を結ぶ分離カラム部は、交差部
11にて交差している。また、支持液注入口5から支持
液排出口6を結ぶ分離カラム部と分取口24aから分取
口24bを結ぶ分取用流路部は、交差部25にて交差し
ている。また、支持液注入口5から支持液排出口6を結
ぶ分離カラム部は、交差部11と交差部25の間で蛇行
した形状を有する。2個の表面処理用試薬導入口9は、
交差部11と交差部25の間の分岐部に構成されてい
る。
【0054】図5は、溝加工した上記基板22を溝加工
面から見た図であり、流路23の2個の表面処理用試薬
導入口9は、導入口9a,9bから成る。導入口9a〜
9bの間の流路はトリメチルクロロシランによって表面
処理された流路内壁12を有する。この流路内璧12の
部分が主に分離カラムとして働く。
【0055】この電気泳動素子20の作製方法は、第1
実施形態に示した電気泳動素子1の作製方法(図3)と
同様であり、フォトリソグラーフィーに用いるマスクパ
ターンを電気泳動素子20用に設計して作製を行う。
【0056】表面処理方法は、第1実施形態に示した電
気泳動素子1の表面処理方法と同様である。つまり、電
気泳動素子20の支持液注入口5、支持液排出口6、試
料注入口7、試料排出口8、及び2個の試料分取口24
をすべて密閉する。次に、表面処理用試薬導入口9bに
ペリスターポンプを接続し、吸引によって表面処理用試
薬導入口9aから10%トリメチルクロロシランのジク
ロロメタン溶液を注入させる。注入後約10分間放置す
ることにより、表面処理された流路12を得た。
【0057】次に、この電気泳動素子20を用いた分離
・分取実験について説明する。まず、6個の電極10に
高圧電源を接続する。支持液注入口5、試料注入口7、
分取口24aの電極には陽極を、支持液排出口6、試料
排出口8、分取口24bの電極には陰極を接続する。流
路23には予め全体に泳動バッファーを満たしておく。
次に、試料注入口7に分離するための試料を注入する。
試料注入口7、及び試料排出口8の間に電圧を印加し、
電気浸透流によって試料注入口7から試料排出口8に向
かって試料を導入する。次に、支持液注入口5と支持液
排出口6の間に電圧を印加し、交差部11に存在する試
料を電気浸透流によって支持液排出口6に向かって泳動
させる。泳動試料は、途中に表面処理された流路12を
有する流路を経て分離しながら支持液排出口6に向かっ
て泳動する。
【0058】ここで、交差部25または交差部25の支
持液注入口5側にて、図示しない分離物質の検出系を用
い分離状態を検出する。分取目的の分離物質が交差部2
5を通過する際、分取口24aと分取口24bの間に電
圧を印加し、該分離物質のみを分取口24bに向かって
泳動させ分取する。
【0059】〔第2の実施の形態の作用・効果〕次に、
この第2の実施の形態の作用及び効果を説明する。本実
施の形態に従う電気泳動素子20は、第1実施形態と同
様の作用・効果を奏すると共に、これに加えて、下記作
用・効果を有する。
【0060】上記電気泳動素子20は、分離カラムとし
て働く表面処理された流路12と、分離物質の分取に用
いる分取口24aから分取口24bを結ぶ分取用流路部
との流路内壁のゼータ電位が異なる。分取口24aから
分取口24bを結ぶ流路の内壁はホウケイ酸ガラス表面
であり、ゼータ電位の符号は表面の荷電状態から負とな
る。一方、分離カラムとして働く表面処理された流路1
2の内壁は非イオン性の表面処理剤にて覆われているた
め表面の荷電は弱くなり、ゼータ電位の絶対値は表面未
処理の流路内壁に比べ小さくなる。
【0061】ここで、第1実施形態記載の(1)式か
ら、電圧を印加した際の電気浸透流の速さは、ゼータ電
位の絶対値が大きいほど速い。つまり、上記電気泳動素
子20の電気浸透流は分取用流路部が速く分離カラム部
が遅いことになる。電気浸透流が速いと分析時間が少な
くて済む反面、分離効率が悪い。表面処理により電気浸
透流が抑えられると分析時間が長くなるものの分離効率
が向上する。従って、上記電気泳動素子20は、分離カ
ラム部のみ電気浸透流を遅くして分離効率を上げ、分取
用流路部は電気浸透流が速いため分取を短時間で行うこ
とができ、且つ分取前に試薬の分離を防ぐことが可能と
なる。
【0062】つまり、電気泳動素子20は分離カラム部
のみのゼータ電位の絶対値を小さくすることによって、
高分離・高効率化が可能な機器分析用流体流路を提供す
ることができる。また、上記作成方法に記載したよう
に、第1実施形態の場合と同様、電気泳動素子20は半
導体プロセス技術を応用して作成することが可能である
ため、微細な流路の小型化が可能な機器分析用流体流路
を提供することができる。本発明は、このようにして実
施することもできる。
【0063】〔第2の実施の形態の変形、変更〕なお、
この第2の実施の形態の各構成も、第1実施形態と同
様、当然、各種変形、変更(〔第1の実施の形態の変
形、変更〕を含む)が可能である。
【0064】〔2−1〕特に、図6に4個の表面処理用
試薬導入口を構成した場合の変更例である電気泳動素子
30を示す。この電気泳動素子30は、ホウケイ酸ガラ
ス基板31と溝加工したホウケイ酸ガラス基板32とを
接合して構成されている。電気泳動素子30は、4個の
表面処理用試薬導入口9(9a,9b,9c,9d)を
有している。これら4個の表面処理用試薬導入口9は、
交差部11と交差部25の間の分岐部に構成されてい
る。図7は、溝加工した上記基板32を溝加工表面から
見た図である。流路33は、表面処理用試薬導入口9a
と9bから表面処理剤を注入・排出して処理した流路内
壁34と、表面処理用試薬導入口9cと9dから表面処
理剤を注入・排出して処理した流路内壁35とを有す
る。このように、表面処理用試薬導入口9を多数設ける
ことによって、多種の表面処理が可能となる。本発明
は、このようにして実施してもよい。
【0065】〔第3の実施の形態の構成〕次に、本発明
の電気泳動素子の第3の実施の形態を示す。本実施形態
は、分取用流路部を複数有する電気泳動素子であって、
少なくとも一つの分取用流路部が分離カラム部の任意の
位置に構成され、該分取用流路部を境に両端の分離カラ
ム部内面の少なくとも一部分のゼー夕電位が、該分取用
流路内面のゼー夕電位とは異なるゼータ電位の表面を有
するようにしようというものである。本実施の形態は、
前記第1の実施の形態の変形例と捉えることもできるも
のであり、前記第2の実施の形態(第2の実施の形態の
変形、変更の例を含む)の変形例と捉えることもでき
る。図8は、この第3の実施の形態における電気泳動素
子40の斜視図、図9は、その電気泳動素子40におけ
る溝加工した基板を溝加工面から見た図である。
【0066】基本的な構成は第1、第2実施形態で例示
したのと同様であってよく、この電気泳動素子40は、
ホウケイ酸ガラス基板41と溝加工したホウケイ酸ガラ
ス基板42とを接合して構成されている。基板41と溝
を有する基板42とによって囲まれた空間によって、流
路43が形成されている。
【0067】流路43は、ここでは、12個の枝別れを
有する流路であって、支持液注入口5、支持液排出口
6、試料注入口7、試料排出口8、2個で1対の試料分
取口24(24a,24b)と44(44a,44
b)、及び4個の表面処理用試薬導入口9を構成する。
各口にはチューブとのコネクターが設けられており、支
持液注入口5、支持液排出口6、試料注入口7、試料排
出口 8、試料分取口24び試料分取口44には管状の白
金から成る電極10が接続されている。
【0068】また、試料注入口 7から試料排出口8を結
ぶ注入用流路部と支持液注入口5から支持液排出口6を
結ぶ分離カラム部は、交差部11にて交差している。ま
た、支持液注入口5から支持液梯出口6を結ぶ分離カラ
ム部と分取口24aから分取口24bを結ぶ分取用流路
部は、交差部25にて交差している。また、支持液注入
口5から支持液排出口6を結ぶ分離カラム部と分取口4
4aから分取口44bを結ぶ分取用流路部は、分離カラ
ム部の中央に位置する交差部45にて交差している。ま
た、支持液注入口5から支持液排出口6を結ぶ分離カラ
ム部は、交差部11と交差部45の間、及び交差部45
と交差部25の間で蛇行した形状を有する。4個の表面
処理用試薬導入口9は、交差部11と交差部45の間の
分岐部に2個、交差部45と交差部25の間に2個構成
されている。
【0069】図9は,溝加工した上記基板42を溝加工
面から見た図である。流路43の4個の表面処理用試薬
導入口9は、導入口9a〜9dの各導入口から成る。導
入口9a〜9bの間の流路はトリメチルクロロシランに
よって表面処理された流路内壁46を、導入口9c〜9
dの間の流路はトリメチルクロロシランによって表面処
理された流路内壁47を有する。この流路内璧46,4
7の部分が主に分離カラムとして働く。
【0070】この電気泳動素子40の作製方法は、第1
実施形態に示した電気泳動素子1の作製方法(図3)と
同様であり、フォトリソグラーフィーに用いるマスクパ
ターンを電気泳動素子40用に設計して作製を行う。
【0071】表面処理方法は、第1実施形態に示した電
気泳動素子1の表面処理方法と同様である。つまり、ま
ず、表面処理用試薬導入口9aと9b以外の液の出入口
をすべて密閉する。次に、表面処理用試薬導入口9bに
ペリスターポンプを接続し、吸引によって表面処理用試
薬導入口9aから10%トリメチルクロロシランのジク
ロロメタン溶液を注入させる。注入後約10分間放置す
ることにより、表面処理された流路46を得た。次に、
表面処理用試薬導入口9cと9d以外の液の出入口をす
べて密閉する。次に、表面処理用試薬専入口9dにペリ
スターポンプを接続し、吸引によって表面処理用試薬導
入口9cから10%トリメチルクロロシランのジクロロ
メタン溶液を注入させる。注入後約10分間放置するこ
とにより、表面処理された流路47を得た。
【0072】次に、この電気泳動素子40を用いた分離
・分取実験について説明する。まず、8個の電極10に
高圧電源を接続する。支持液注入口5、試料注入口7、
分取口24a、分取口44aの電極には陽極を、支持液
排出口6、試料排出口8、分取口24b、分取口44b
の電極には陰極を接続する。流路43には予め全体に泳
動バッファーを満たしておく。
【0073】次に、試料注入口7に分離するための試料
を注入する。試料注入口7、及び試料排出口8の間に電
圧を印加し、電気浸透流によって試料注入口7から試料
排出口8に向かって試料を導入する。次に、支持液注入
口5と支持液排出口6の間に電圧を印加し、交差部11
に存在する試料を電気浸透流によって支持液排出口6に
向かって泳動させる。泳動試料は、途中に表面処理され
た流路46を有する流路を経て分離しながら支持液排出
口6に向かって泳動する。
【0074】ここで、交差部45または交差部45の支
持液注入口5側にて、図示しない分離物質の検出系を用
い分離状態を検出する。この検出点にて目的とする分離
が生じていた場合、分取目的の分離物質が交差部45を
通過する際、分取口44aと分取口44bの間に電圧を
印加し、該分離物質のみを分取口24bに向かって泳動
させ分取する。交差部45の検出点にて目的とする分離
が不十分だった場合、支持液注入口5と支持液排出口6
の間への電圧印加を続ける。泳動試料は、途中に表面処
理された流路47を有する流路を経て分離しながら支持
液排出口6に向かって泳動する。
【0075】さらに、交差部25または交差部25の支
持液注入口5側にて、図示しない分離物質の検出系を用
い分離状態を検出する。分取目的の分離物質が交差部2
5を通過する際、分取口24aと分取口24bの間に電
圧を印加し、該分離物質のみを分取口24bに向かって
泳動させ分取する。
【0076】〔第3の実施の形態の作用・効果〕次に、
この第3の実施の形態の作用及び効果を説明する。本実
施の形態に従う電気泳動素子40は、第1及び第2実施
形態と同様の作用・効果を奏すると共に、これに加え
て、下記作用・効果を有する。
【0077】上記電気泳動素子40は、分離カラムとし
て働く表面処理された2つの流路46と47を有し、流
路46と47の間に分離物質の分取に用いる分取口44
aから分取口44bを結ぶ分取用流路部が構成され、さ
らに分離物質の泳動末端となる支持液排出口6側に分離
物質の分取に用いる分取口24aから分取口24bを結
ぶ分取用流路部が構成されている。2つの分取用流路部
の内壁はホウケイ酸ガラス表面であり、ゼータ電位の符
号は表面の荷電状態から負となる。表面処理された流路
46と47の内璧は非イオン性の表面処理剤にて覆われ
ているため表面の荷電は弱くなり、ゼータ電位の絶対値
は表面未処理の流路内璧に比べ小さくなる。流路46と
流路47は、同一の表面処理剤によって処理されてお
り、流路内璧のゼータ電位は等しい。
【0078】ここで、第1実施形態記載の(1)式か
ら、電圧を印加した際の電気浸透流の速さは、ゼータ電
位の絶対値が大きいほど速い。つまり、上記電気泳動素
子40の電気浸透流は2つの分取用流路部が速く2つの
分離カラム部が遅いことになる。電気浸透流が速いと分
析時間が少なくて済む反面、分離効率が悪い。表面処理
により電気浸透流が抑えられると分析時間が長くなるも
のの分離効率が向上する。流路46にて目的の分離が生
じた場合は、その時点で分取口44aから分取口44b
を結ぶ分取用流路部にて分取目的の分離物質を分取でき
るため、分離から分取までが速くなる。また、流路46
では分離不十分だった場合は、さらに流路47にて分離
させ分取口24aから分取口24bを結ぶ分取用流路部
から分取目的の分離物質を分取できる。このように、電
気泳動素子40は試料の分離過程において、分離に応じ
て分取することが可能となり、効率良く分離・分取を進
めることができる。
【0079】つまり、電気泳動素子40はゼータ電位の
絶対値の小さい2つの分離カラム部の問と泳動末端部に
ゼータ電位の絶対値の大きい分取用流路部を設けること
によって、高分離・高効率化が可能な機器分析用流体流
路を提供することができる。また、上記作成方法に記載
したように、第1実施形態の場合と同様、電気泳動素子
40は半導体プロセス技術を応用して作成することが可
能であるため、微細な流路の小型化が可能な機器分析用
流体流路を提供することができる。本発明は、このよう
にして実施することもできる。
【0080】〔第3の実施の形態の変形、変更〕なお、
この第3の実施の形態の各構成は、第1、第2実施形態
と同様、当然、各種変形、変更(〔第1の実施の形態の
変形、変更〕を含み、〔第2の実施の形態の変形、変
更〕を含む)が可能である。
【0081】〔3−1〕例えば、支持液注入口5から支
持液排出口6を結ぶ分離カラム部と分取口44aから分
取口44bを結ぶ分取用流路部は、分離カラム部の中央
に位置する交差部45にて交差しているが、該交差部の
位置は限定されず任意の位置に構成することができる。 〔3−2〕また、支持液注入口5から支持液排出口6を
結ぶ分離カラム部の任意の位置に構成された分取用流路
部の数も限定されない。 〔3−3〕また、該分取用流路部にて分割された分離カ
ラム部はそれぞれが異なる表面処理を施し異なるゼータ
電位とすることが可能であり、また同じ表面処理を施す
ことも可能である。 〔3−4〕さらに、後記図14,15に示すような変形
も可能である。本発明は、このようにして実施してもよ
い。
【0082】〔第4の実施の形態の構成〕次に、本発明
の電気泳動素子の第4の実施の形態を示す。本実施形態
は、分取用流路部を複数有すると共に、複数の分取用流
路部に挟まれた分離カラム部の注入用流路部側に電圧印
加用流路部を設けというものである。本実施の形態は、
前記第1の実施の形態の変形例と捉えることもできるも
のであり、また前記第2の実施の形態(第2の実施の形
態の変形、変更の例を含む)の変形例と捉えることもで
きるものであり、前記第3の実施の形態(第3の実施の
形態の変形、変更の例を含む)の変形例と捉えることも
できる。図10は、この第4の実施の形態における電気
泳動素子50の斜視図、図11は、その電気泳動素子5
0における溝加工した基板を溝加工面から見た図であ
る。
【0083】基本的な構成は第1、第2、第3実施形態
で例示したのと同様であってよく、この電気泳動素子5
0は、ホウケイ酸ガラス基板51と溝加工したホウケイ
酸ガラス基板52とを接合して構成されている。基板5
1と溝を有する基板52とによって囲まれた空間によっ
て、流路53が形成されている。
【0084】流路53は、ここでは、13個の枝別れを
有する流路であって、支持液注入口5、支持液排出口
6、試料注入口7、試料排出口8、2個で1対の試料分
取口24(24a,24b)と44(44a,44
b)、4個の表面処理用試薬導入口9、及び電圧印加用
流路口54を構成する。各口にはチューブとのコネクタ
ーが設けられており、支持液注入口5、支持液排出口
6、試料注入口7、試料排出口8、試料分取口24、試
料分取口44及び電圧印加用流路口54には管状の白金
から成る電極10が接続されている。電圧印加用流路口
54は、電圧印加ポイントを切り換えるのに用いること
ができる。
【0085】また、試料注入口7から試料排出口8を結
ぶ注入用流路部と支持液注入口5から支持液排出口6を
結ぶ分離カラム部は、交差部11にて交差している。ま
た、支持液注入口5から支持液排出口6を結ぶ分離カラ
ム部と分取口24aから分取口24bを結ぶ分取用流路
部は、交差部25にて交差している。また、支持液注入
口5から支持液排出口6を結ぶ分離カラム部と分取口4
4aから分取口44bを結ぶ分取用流路部は、分離カラ
ム部のほぼ中央に位置する交差部45にて交差してい
る。また、支持液注入口5から支持液排出口6を結ぶ分
離カラム部は、交差部11と交差部45の間、及び交差
部45と交差部25の間で蛇行した形状を有する。4個
の表面処理用試薬導入口9は、交差部11と交差部45
の間の分岐部に2個、交差部45と交差部25間に2個
構成されている。
【0086】図11は、溝加工した上記基板52を溝加
工面から見た図である。流路53の4個の表面処理用試
薬導入口9は、導入口9a〜9dの各導入口から成る。
導入口9a〜9bの間の流路はトリメチルクロロシラン
によって表面処理された流路内壁46を、9c〜9dの
間の流路はジメチルアロビルクロロシランによって表面
処理された流路内壁55を有する。この流路内壁46、
55の部分が主に分離カラムとして働く。電圧印加用流
路口54は、交差部45と流路内壁55の間の分岐流路
に構成されている。
【0087】この電気泳動素子50の作製方法は、第1
実施形態に示した電気泳動素子1の作製方法(図3)と
同様であり、フォトリソグラーフィーに用いるマスクパ
ターンを電気泳動素子50用に設計して作製を行う。
【0088】表面処理方法は、第1実施形態に示した電
気泳動素子1の表面処理方法と同様である。つまり、ま
ず表面処理用試薬導入口9aと9b以外の液の出入口を
すべて密閉する。次に、表面処理用試薬導入口9bにペ
リスターボンプを接続し、吸引によって表面処理用試薬
導入口9aから10%トリメチルクロロシランのジクロ
ロメタン溶液を注入させる。注入後約10分間放置する
ことにより、表面処理された流路46を得た。次に、表
面処理用試薬導入口9cと9d以外の液の出入口をすべ
て密閉する。次に、表面処理用試薬導入口9dにペリス
ターポンプを接続し、吸引によって表面処理用試薬導入
口9cから10%ジメチルプロピルクロロシランのジク
ロロメタン溶液を注入させる。注入後約10分間放置す
ることにより、表面処理された流路55を得た。
【0089】次に、この電気泳動素子50を用いた分離
・分取実験について説明する。まず、9個の電極10に
高圧電源を接続する。支持液注入口5、試料注入口7、
分取口24a、分取口44aの電極には陽極を、支持液
排出口6、支持液排出口6、試料排出口8、分取口24
b、分取口44b、電圧印加用流路口54の電極には陰
極を接続する。流路53には予め全体に泳動バッファー
を満たしておく。
【0090】次に、試料注入口7に分離するための試料
を注入する。試料注入口7、及び試料排出口8の間に電
圧を印加し、電気浸透流によって試料注入口7から試料
排出口8に向かって試料を導入する。次に、支持液注入
口5と電圧印加用流路口54の間に電圧を印加し、交差
部11に存在する試料を電気浸透流によって電圧印加用
流路口54に向かって泳動させる。泳動試料は、途中に
表面処理された流路46を有する流路を経て分離しなが
ら電圧印加用流路口54に向かって泳動する。
【0091】ここで、交差部45または交差部45の支
持液注入口5側にて、図示しない分離物質の検出系を用
い分離状態を検出する。この検出点にて目的とする分離
が生じていた場合、分取目的の分離物質が交差部45を
通過する際、分取口44aと分取口44bの間に電圧を
印加し、該分離物質のみを分取口24bに向かって泳動
させ分取する。交差部45の検出点にて目的とする分離
が不十分だった場合、試料が交差部45を通過した直後
に、分取口44aと支持液排出口6の間に電圧を印加す
る。泳動試料は、途中に表面処理された流路55を有す
る流路を経て分離しながら支持液排出口6に向かって泳
動する。
【0092】さらに、交差部25または交差部25の支
持液注入口5側にて、図示しない分離物質の検出系を用
い分離状態を検出する。分取目的の分離物質が交差部2
5を通過する際、分取口24aと分取口24bの間に電
圧を印加し、該分離物質のみを分取口24bに向かって
泳動させ分取する。
【0093】〔第4の実施の形態の作用、効果〕次に、
この第4の実施の形態の作用及び効果を説明する。本実
施形態に従う電気泳動素子50は、第1、 第2、 第3実
施形態と同様の作用・効果を奏すると共に、これに加え
て、下記作用・効果を有する。上記電気泳動素子50
は、分離カラムとして働く表面処理された2つの流路4
6と55を有し、流路46と55の間に分離物質の分取
に用いる分取口44aから分取口44bを結ぶ分取用流
路部と電圧印加ポイントを切り換えるために用いる電圧
印加用流路口54が構成され、さらに分離物質の泳動末
端となる支持液排出口6側に分離物質の分取に用いる分
取口24aから分取口24bを結ぶ分取用流路部が構成
されている。流路46、流路55及び2つの分取用流路
部は、流路内璧のゼータ電位が異なる。2つの分取用流
路部の内壁はホウケイ酸ガラス表面であり、ゼータ電位
の符号は表面の荷電状態から負となる。表面処理された
流路46と55の内壁は非イオン性の表面処理剤にて覆
われているため表面の荷電は弱くなり、ゼータ電位の絶
対値は表面未処理の流路内壁に比べ小さくなる。また、
流路46と流路55とは異なる表面処理剤で覆われてい
るため、 流路内壁のゼータ電位が異なる。流路55は流
路46よりも疎水性の強い表面処理剤で覆われているた
め、 表面の電荷は弱くなり、ゼータ電位の絶対値は流路
46に比べさらに小さくなる。
【0094】ここで、第1実施形態記載の(1)式か
ら、電圧を印加した際の電気浸透流の速さは、ゼータ電
位の絶対値が大きいほど速い。つまり、上記電気泳動素
子50の電気浸透流は流路55が最も遅く、流路46、
2つの分取用流路部の順で速くなる。電気浸透流が速い
と分析時間が少なくて済む反面、分離効率が悪い。表面
処理により電気浸透流が抑えられると分析時間が長くな
るものの分離効率が向上する。従って、流路46は流路
55に比べ分離効率は劣るものの分析時間は短い。流路
46にて目的の分離が生じた場合は、その時点で分取口
44aから分取口44bを結ぶ分取用流路部にて分取目
的の分離物質を分取できるため、分離から分取までが速
くなる。また、流路46では分離不十分だった場合は、
さらに分離効率の高い流路55にて分離させ分取口24
aから分取口24bを結ぶ分取用流路部から分取目的の
分離物質を分取できる。また、流路46と流路55への
電圧印加ポイントを切り換えて電圧印可することによ
り、表面処理の効果を反映した電気浸透流を実現するこ
とができる。
【0095】つまり、電気泳動素子50は、上記作用・
効果に説明したように、高分離・高効率化が可能な機器
分析用流体流路を提供することができる。また、上記作
成方法に記載したように、電気泳動素子50は半導体プ
ロセス技術を応用して作成することが可能であるため、
微細な流路の小型化が可能な機器分析用流体流路を提供
することができる。高分離・高効率化が可能で、且つ小
型化が可能な機器分析用電気泳動素子を実現せしめる本
発明は、このようにして実施することができる。
【0096】〔第4の実施の形態の変形、変更〕なお、
この第4の実施の形態の各構成は、第1、第2、第3実
施形態と同様、当然、各種変形、変更(〔第1の実施の
形態の変形、変更〕を含み、〔第2の実施の形態の変
形、変更〕を含み、〔第2の実施の形態の変形、変更〕
を含む)が可能である。 〔4−1〕従って、例えば、後記図16,17に示すよ
うな変形も可能である。本発明は、このようにして実施
してもよい。
【0097】〔第5の実施の形態の構成〕次に、本発明
の電気泳動素子の第5の実施の形態を示す。本実施形態
は、溝加工した平板を複数重ねて液流路を構成した電気
泳動素子において、少なくとも該電気泳動素子にて分離
する試料を該分離素子に注入する注入用流路部と、該試
料を分離する分離カラム部とが交差して成る電気泳動素
子であって、該分離カラム部内面の少なくとも一部分
が、溝加工した基板流路内面のゼータ電位とは異なるゼ
ータ電位の表面を有していて、さらに、その溝加工した
基板のゼータ電位とは異なるゼータ電位の表面が、絶縁
性の無機材料によって構成されるようにしようというも
のである。本実施の形態は、例えば、前記第1の実施の
形態の変形例と捉えることもできるものであり、また、
前記第2の実施の形態(第2の実施の形態の変形、変更
の例を含む)の変形例と捉えることもできる。図12
は、この第4の実施の形態に従った電気泳動素子60の
断面図、図13は、その電気泳動素子60における溝加
工した基板を溝加工面から見た図である。
【0098】以下、図示した例に基づいて説明すると、
この電気泳動素子69は、ここでは、第2実施形態に示
した電気泳動素子20とその構造は類似し、電気泳動素
子20における表面処理用試薬導入口9を持たない構成
となっている。同様にまた、電気泳動素子60は、ホウ
ケイ酸ガラス基板61と溝加工したホウケイ酸ガラス基
板62とを接合して構成されている。基板61と溝を有
する基板62とによって囲まれた空間によって、流路6
3が形成されている。
【0099】流路63は、ここでは、6個の枝別れを有
する流路であって、 支持液注入口5、支持液排出口6、
試料注入口7、試料排出口8、及び2個の試料分取口2
4(24a,24b)を構成する。各口にはチューブと
のコネクターが設けられており、管状の白金から成る電
極10が接続されている。また、 試料注入口7から試料
排出口8を結ぶ注入用流路部と支持液注入口5から支持
液排出口6を結ぶ分離カラム部は、交差部11にて交差
している。また、支持液注入口5から支持液排出口6を
結ぶ分離カラム部と分取口24aから分取口24bを結
ぶ分取用流路部は、交差部25にて交差している。ま
た、支持液注入口5から支持液排出口6を結ぶ分離カラ
ム部は、交差部11と交差部25の間で蛇行した形状を
有する。
【0100】図13は,溝加工した上記基板62を溝加
工面から見た図である。流路63は二酸化けい素ガラス
によってコートされた流路内壁64を有する。この流路
内壁64の部分が分離カラムとして働く。
【0101】上記電気泳動素子60の作成方法は、一般
のフォトリソグラフィー技術、エッチング技術、成膜技
術を利用した。流路内壁64の作成は、図3に示した作
製方法の同図(d)のウェットエッチングの後、二酸化
けい素をスパッタリングによって成膜することで得られ
る。また、溝加工したホウケイ酸ガラス基板62に重ね
るホウケイ酸ガラス基板61も、フォトリソグラフィー
技術、エッチング技術、成膜技術を利用して、流路内壁
64を構成する部分に二酸化けい素を成膜して構成す
る。
【0102】次に、この電気泳動素子60を用いた分離
・分取実験について説明する。まず、 6個の電極10に
高圧電源を接続する。支持液注入口5、試料注入口7、
分取口24aの電極には陽極を、支持液排出口6、試料
排出口8、 分取口24bの電極には陰極を接続する。流
路63には予め全体に泳動バッファーを満たしておく。
【0103】次に、試料注入口7に分離するための試料
を注入する。試料注入口7、及び試料排出口8の間に電
圧を印加し、電気浸透流によって試料注入口7から試料
排出口8に向かって試料を導入する。次に、支持液注入
口5と支持液排出口6の間に電圧を印加し、交差部11
に存在する試料を電気浸透流によって支持液排出口6に
向かって泳動させる。泳動試料は、途中に表面処理され
た流路64を有する流路を経て分離しながら支持液排出
口6に向かって泳動する。
【0104】ここで、交差部25または交差部25の支
持液注入口5側にて、図示しない分離物質の検出系を用
い分離状態を検出する。分取目的の分離物質が交差部2
5を通過する際、分取口24aと分取口24bの問に電
圧を印加し、該分離物質のみを分取口24bに向かって
泳動させ分取する。
【0105】〔第5の実施の形態の作用・効果〕次に、
この第5の実施の形態の作用及び効果を説明する。上記
電気泳動素子60は、試料導入部となる試料注入口7か
ら試料排出口8を結ぶ流路と分離カラム部となる表面コ
ートされた流路64の流路内壁のゼータ電位が異なる。
また、流路64と、分離物質の分取に用いる分取口24
aから分取口24bを結ぶ分取用流路部との流路内壁の
ゼータ電位が異なる。試料導入部と分取用流路部の内壁
はホウケイ酸ガラス表面であり、ゼータ電位の符号は表
面の荷電状態から負となる。 一方、分離カラムとして働
く流路64の内壁は、ゼータ電位の符号は表面の荷電状
態から負となるものの、 可動イオンを持たない二酸化け
い素ガラスにて覆われているため、ゼータ電位の絶対値
はホウケイ酸ガラス表面に比べ小さくなる。従って、上
記電気泳動素子60は、第1、第2実施形態に示した作
用・効果を有する。
【0106】また、上記電気泳動素子60は、第1、第
2実施形態に示した作用・効果に加え、下記作用・効果
を有する。表面コートされた流路64の内壁は無機皮膜
であるため、耐久性が高く、アルカリなどによる洗浄を
行っても有機被膜のように劣化しない。このため、耐久
性の高い、繰り返し使用可能な電気泳動素子となる。
【0107】また、上記作成方法に記載したように、電
気泳動素子60は半導体プロセス技術を応用して作成す
ることが可能であるため、徹細な流路の小型化が可能な
機器分析用流体流路を提供することができる。かくし
て、本実施の形態の構成に従えば、高分離・高効率化が
可能で、且つ小型化が可能であり、さらにはまた、耐久
性の高い表面修飾用内壁を有する機器分析用電気泳動素
子が実現される。本発明は、このようにして実施するこ
ともできる。
【0108】〔第5の実施の形態の変更、変形〕なお、
この第5の実施の形態の各構成は、当然、各種変形、変
更(〔第1の実施の形態の変更、変形〕を含む)が可能
である。 〔5−1〕また、例えば、流路64の表面を覆っている
二酸化けい素ガラスは、絶縁性の無機材料であれば他の
無機皮膜材料に変更が可能である。例えば、他のガラス
材料、窒化シリコン、アルミナ、ダイヤモンド、五酸化
タンタル等に変更することができる。 〔5−2〕また、電気泳動素子60は、第2実施形態に
示した電気泳動素子20における表面処理用試薬導入口
9を持たない構成となっているが、第1、第3、第4実
施形態に示した電気泳動素子1,30, 40, 50にお
ける表面処理用試薬導入口9を持たない構成とすること
もできる。
【0109】〔5−3〕例えば、図14に第3実施形態
の電気泳動素子40の変更例である電気泳動素子70の
斜視図を示す。この電気泳動素子70は、電気泳動素子
40における表面処理用試薬導入口9を持たない構成と
なっている。図15は、溝加工した上記電気泳動素子7
0における基板72を溝加工面から見た図である。流路
73は二酸化けい素ガラスによってコートされた流路内
璧74,75を有する。この流路内壁74,75の部分
が分離カラムとして働く。図14,15中、71は他方
の基板を示し、他の参照符号は、この第5の実施形態の
説明まで既に使用されてきた参照符号(図1〜図9を含
む)のものに準ずる。
【0110】〔5−4〕また、図16に第4実施形態の
電気泳動素子50の変更例である電気泳動素子80の斜
視図を示す。この電気泳動素子80は、電気泳動素子5
0における表面処理用試薬導入口9を持たない構成とな
っている。図17は、溝加工した上記電気泳動素子80
における基板82を溝加工面から見た図である。流路8
3は二酸化けい素ガラスによってコートされた流路内壁
84と窒化シリコンによってコートされた流路内壁85
を有する。この流路内壁84、85の部分が分離カラム
として働く。図16,17中、81は他方の基板を示
し、他の参照符号は、この第5の実施形態の説明まで既
に使用されてきた参照符号(図1〜図11を含む)のも
のに準ずる。
【0111】第5実施形態は、前記第3の実施の形態の
変形例、前記第4の実施の形態の変形例と捉えることも
できるものである。本発明は、このようにして実施して
もよい。
【0112】以上の各実施の形態、変形、変更例等に記
載された内容は、以下の発明として捉えることもでき
る。
【0113】〔付記項1〕 溝加工した平板を複数重ね
て液流路を構成した電気泳動素子において、少なくとも
該電気泳動素子にて分離する試料を該分離素子に注入す
る注入用流路部と、該試料を分離する分離カラム部とが
交差して成る電気泳動素子であって、該分離カラム部内
面の少なくとも一部分が、該注入用流路部内面のゼータ
電位とは異なるゼータ電位の表面を有していることを特
徴とする電気泳動素子(第1の実施の形態)。
【0114】〔付記項2〕 〔付記項1〕記載の電気泳
動素子において、該分離カラム部内面の少なくとも一部
分のゼータ電位の値と該注入用流路部内面のゼータ電位
の値とが0または同一符号であり、該分離カラム部内面
の少なくとも一部分のゼータ電位の絶対値が、該注入用
流路部内面のゼータ電位の絶対値よりも小さいことを特
徴とする電気泳動素子(第1の実施の形態)。
【0115】〔付記項3〕 〔付記項1〕〜〔付記項
2〕記載の電気泳動素子において、少なくとも該電気泳
動素子にて試料を分離する分離カラム部と、分離した該
試料を分取する分取用流路部とが交差して成る電気泳動
素子であって、該分離カラム部内面の少なくとも一部分
が、該分取用流路内面のゼータ電位とは異なるゼータ電
位の表面を有していることを特徴とする電気泳動素子
(第2の実施の形態)。
【0116】〔付記項4〕 〔付記項3〕記載の電気泳
動素子において、該分離カラム部内面の少なくとも一部
分のゼータ電位の値と該分取用流路部内面のゼータ電位
の値とが0または同一符号であり、該分離カラム部内面
の少なくとも一部分のゼータ電位の絶対値が、該分取用
流路部内面のゼータ電位の絶対値よりも小さいことを特
徴とする電気泳動素子(第2の実施の形態)。
【0117】〔付記項5〕 〔付記項3〕記載の電気泳
動素子において、該分取用流路部を複数有する電気泳動
素子であって、少なくとも一つの該分取用流路部が該分
離カラム部の任意の位置に構成され、該分取用流蕗部を
境に両端の分離カラム部内面の少なくとも一部分のゼー
タ電位が、該分取用流路内面のゼータ電位とは異なるゼ
ータ電位の表面を有していることを特徴とする電気泳動
素子(第3の実施の形態)。
【0118】〔付記項6〕 〔付記項3〕記載の電気泳
動素子において、該分離カラム部内面の少なくとも一部
分のゼータ電位の値と該分取用流路部内面のゼータ電位
の値とが0または同一符号であり、該分離カラム部内面
の少なくとも一部分のゼータ電位の絶対値が、該分取用
流路部内面のゼータ電位の絶対値よりも小さいことを特
徴とする電気泳動素子(第3の実施の形態)。
【0119】〔付記項7〕 〔付記項5〕,〔付記項
6〕記載の電気泳動素子において、複数の分取用流路部
に挟まれた分離カラム部の注入用流路部側に電圧印加用
流路部が設けられていることを特徴とする電気泳動素子
(第4の実施の形態)。
【0120】〔付記項8〕 〔付記項7〕記載の電気泳
動素子において、該分離カラム部の任意の位置に構成さ
れた該分取用流路部を境に、該分離カラム部内面のゼー
タ電位の値が異なることを特徴とする電気泳動素子(第
4の実施の形態)。
【0121】〔付記項9〕 〔付記項8〕記載の電気泳
動素子において、該分取用流路部を境に異なる分離カラ
ム部内面のゼータ電位の値が0または同一符号であり、
該注入用流路部側に位置する分離カラム部内面のゼータ
電位の絶対値が該注入用流路部側とは反対側に位置する
分離カラム部内面のゼータ電位の絶対値よりも大きいこ
とを特徴とする電気泳動素子(第4の実施の形態)。
【0122】〔付記項10〕 溝加工した平板を複数重
ねて液流路を構成した電気泳動素子において、少なくと
も該電気泳動素子にて分離する試料を該分離素子に注入
する注入用流路部と、該試料を分離する分離カラム部と
が交差して成る電気泳動素子であって、該分離カラム部
内面の少なくとも一部分が、溝加工した基板流路内面の
ゼータ電位とは異なるゼータ電位の表面を有しており、
その溝加工した基板のゼータ電位とは異なるゼータ電位
の表面が、絶縁性の無機材料によって構成されているこ
とを特徴とする電気泳動素子(第4の実施の形態)。
【0123】〔付記項11〕 〔付記項10〕記載の電
気泳動素子において、該絶縁性の無機材料が、石英硝子
やホウケイ酸硝子などの硝子材料、または窒化シリコ
ン、五酸化タンタル、アルミナ、ダイヤモンドからなる
ことを特徴とする電気泳動素子(第5の実施の形態)。
【0124】
【発明の効果】本発明によれば、高分離・高効率化が可
能であって、且つ小型化が可能な機器分析用電気泳動素
子を有利に実現することができる。また、耐久性の高い
表面修飾内壁を有する機器分析用電気泳動素子を有利に
実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る電気泳動素
子の斜視図である。
【図2】 同実施の形態での電気泳動素子における溝加
工した基板を溝加工面から見た図である。
【図3】 同実施の形態での電気泳動素子の作製方法の
一例の説明に供する図である。
【図4】 本発明の第2の実施の形態に係る電気泳動素
子の斜視図である。
【図5】 同実施の形態での電気泳動素子における溝加
工した基板を溝加工面から見た図である。
【図6】 同例での変更例に係る電気泳動素子を示す図
である。
【図7】 同変更例での電気泳動素子における溝加工し
た基板を溝加工面から見た図である。
【図8】 本発明の第3の実施の形態に係る電気泳動素
子の斜視図である。
【図9】 同実施の形態での電気泳動素子における溝加
工した基板を溝加工面から見た図である。
【図10】 本発明の第4の実施の形態に係る電気泳動
素子の斜視図である。
【図11】 同実施の形態での電気泳動素子における溝
加工した基板を溝加工面から見た図である。
【図12】 本発明の第5の実施の形態に係る電気泳動
素子の断面図である。
【図13】 同実施の形態での電気泳動素子における溝
加工した基板を溝加工面から見た図である。
【図14】 本発明の第3の実施の形態に係る電気泳動
素子の変更例による電気泳動素子の斜視図である。
【図15】 同じく、同変更例での電気泳動素子におけ
る溝加工した基板を溝加工面から見た図である。
【図16】 本発明の第4の実施の形態に係る電気泳動
素子の変更例による電気泳動素子の斜視図である。
【図17】 同じく、同変更例での電気泳動素子におけ
る溝加工した基板を溝加工面から見た図である。
【図18】 先行技術の説明に供する電気泳動装置の概
略図である。
【符号の説明】
1 電気泳動素子 2 ホウケイ酸ガラス基板 3 ホウケイ酸ガラス基板 4 流路 5 支持液注入口 6 支持液排出口 7 試料注入口 8 試料排出口 9,9a,9b,9c,9d 表面処理用試薬導入口 10 電極 11 交差部 12 流路(流路内壁) 13 レジスト薄膜 14 溝 15 ヒーター 16 コネクター 17 チューブ 20 電気泳動素子 21 ホウケイ酸ガラス基板 22 ホウケイ酸ガラス基板 23 流路 24,24a,24b 試料分取口 25 交差部 30 電気泳動素子 31 ホウケイ酸ガラス基板 32 ホウケイ酸ガラス基板 33 流路 34 流路(流路内壁) 35 流路(流路内壁) 40 電気泳動素子 41 ホウケイ酸ガラス基板 42 ホウケイ酸ガラス基板 43 流路 44,44a,44b 試料分取口 45 交差部 46 流路(流路内壁) 47 流路(流路内壁) 50 電気泳動素子 51 ホウケイ酸ガラス基板 52 ホウケイ酸ガラス基板 53 流路 54 電圧印加用流路口 55 流路(流路内壁) 60 電気泳動素子 61 ホウケイ酸ガラス基板 62 ホウケイ酸ガラス基板 63 流路 64 流路(流路内壁) 70 電気泳動素子 71 ホウケイ酸ガラス基板 72 ホウケイ酸ガラス基板 73 流路 74 流路(流路内壁) 75 流路(流路内壁) 80 電気泳動素子 81 ホウケイ酸ガラス基板 82 ホウケイ酸ガラス基板 83 流路 84 流路(流路内壁) 85 流路(流路内壁)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溝加工した平板を複数重ねて液流路を構
    成した電気泳動素子において、少なくとも該電気泳動素
    子にて分離する試料を該分離素子に注入する注入用流路
    部と、該試料を分離する分離カラム部とが交差して成る
    電気泳動素子であって、該分離カラム部内面の少なくと
    も一部分が、該注入用流路部内面のゼータ電位とは異な
    るゼータ電位の表面を有していることを特徴とする電気
    泳動素子。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の電気泳動素子において、
    少なくとも該電気泳動素子にて試料を分離する分離カラ
    ム部と、分離した該試料を分取する分取用流路部とが交
    差して成る電気泳動素子であって、該分離カラム部内面
    の少なくとも一部分が、該分取用流路内面のゼータ電位
    とは異なるゼータ電位の表面を有していることを特徴と
    する電気泳動素子。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の電気泳動素子において、
    該分取用流路部を複数有する電気泳動素子であって、少
    なくとも一つの該分取用流路部が該分離カラム部の任意
    の位置に構成され、該分取用流蕗部を境に両端の分離カ
    ラム部内面の少なくとも一部分のゼータ電位が、該分取
    用流路内面のゼータ電位とは異なるゼータ電位の表面を
    有していることを特徴とする電気泳動素子。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の電気泳動素子において、
    複数の分取用流路部に挟まれた分離カラム部の注入用流
    路部側に電圧印加用流路部が設けられていることを特徴
    とする電気泳動素子。
  5. 【請求項5】 溝加工した平板を複数重ねて液流路を構
    成した電気泳動素子において、少なくとも該電気泳動素
    子にて分離する試料を該分離素子に注入する注入用流路
    部と、該試料を分離する分離カラム部とが交差して成る
    電気泳動素子であって、該分離カラム部内面の少なくと
    も一部分が、溝加工した基板流路内面のゼータ電位とは
    異なるゼータ電位の表面を有しており、その溝加工した
    基板のゼータ電位とは異なるゼータ電位の表面が、絶縁
    性の無機材料によって構成されていることを特徴とする
    電気泳動素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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