JP2001039810A - マンゴー炭そ病の防除法 - Google Patents

マンゴー炭そ病の防除法

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JP2001039810A
JP2001039810A JP11216488A JP21648899A JP2001039810A JP 2001039810 A JP2001039810 A JP 2001039810A JP 11216488 A JP11216488 A JP 11216488A JP 21648899 A JP21648899 A JP 21648899A JP 2001039810 A JP2001039810 A JP 2001039810A
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Zenichi Moromizato
善一 諸見里
Tetsuya Sawaji
哲也 澤岻
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 マンゴー炭そ病に対して拮抗作用を有する微
生物を用いた効果的な生物防除法及び化学薬剤を併用し
た総合防除法を提供する。 【解決手段】 マンゴー葉上に生息する糸状菌でペニシ
リウム属のペニシリウムエクスパンサム(P. expansu
m)を分離培養し、この培養菌体をマンゴーの地上部、
及び収穫後の果実に散布することにより、炭そ病菌の防
除を可能としたものである。また、上記のペニシリウム
エクスパンサム(P. expansum)の培養菌体と、マン
ゴー炭そ病に対して防除作用のある殺菌剤とを併用して
マンゴーの地上部及び収穫後の果実に散布する、生物防
除と化学防除を組み合わせた新しい総合防除法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、熱帯果樹である
マンゴーの炭そ病の防除法に関するものであり、詳しく
は、ペニシリウム エクスパンサム(Penicillium expa
nsum)を用いた生物防除法及び化学薬剤を併用した総合
防除法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】マンゴーは、熱帯果樹として沖縄県など
を中心として、近年、その出荷量が急速に伸びており、
果実の中でもミネラルやビタミンAが多く含まれている
として注目を集めている。
【0003】特に沖縄県においては、温暖な気候が栽培
に適しており、ここ5年間で100トン程度から100
0トン超にも出荷量が伸びており、パイナップルなどと
ともに沖縄県を代表する果実として、今後の基幹産物と
して期待されている。
【0004】しかしながら、毎年、梅雨時期における炭
そ病の多発により、収量の減収および品質の劣化が大き
な問題となっている。
【0005】炭そ病(Anthracnose)は、宿主植物の葉、
茎、枝、果実などに病斑を生じ、組織の壊死、枝枯れお
よび果実の劣化を起こす病害として知られている。
【0006】沖縄県では3属22種の炭そ病菌が確認さ
れ、マンゴ一をはじめとする多くの果樹、野菜、特用作
物、食用作物において被害が報告されている。
【0007】これらの炭そ病の対策としては、現在のと
ころ、殺菌剤として、ジネブ剤、ベノミル剤、ボルドー
液などが使用されている。
【0008】また、梅雨時期に多発するため、感染を予
防するためにビ二一ルなどを用いた雨避け対策などが行
われている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の対策による効果は必ずしも期待どおりとはなっていな
いのが現状である。
【0010】殺菌剤による防除については、散布後、
1、2週間程度は炭そ病菌を駆除できるが、持続性がな
い。また、梅雨の時期においては、露地栽培では、殺菌
剤が降雨で洗い流されてしまうため、防除効果が発揮さ
れにくい。
【0011】さらに、殺菌剤により他の葉上微生物も死
滅させてしまうため、散布処理が終了した後において
は、処理前よりも炭そ病菌が繁殖しやすい条件となって
しまうことが多い。
【0012】また、近年、農薬の発達、普及に伴い、各
地域で農薬の過剰施用が懸念されるようになり、残留農
薬の問題も出ている。
【0013】また、ビニールなどによる雨避け対策につ
いては、殺菌剤が洗い流されることを防止したり、雨に
よる炭そ病菌の感染を防止するためのものであり、根本
的な炭そ病菌の防除対策ではない。
【0014】以上のような問題を考慮して、病害防除の
農薬依存度の軽減をはかり、環境保全の見方から、より
合理的な方向を目指した新しい病害防除の考え方が注目
されつつあり、植物病原菌に対抗する能力をもち、宿主
植物に悪影響を与えない、環境に優しい微生物を利用し
た植物病害の防除法が試みられている。
【0015】これらの生物防除法としては、これまでTr
ichoderma lignorumによるタバコ白絹病の防除や、Pseu
domonas fluorescensによるワタ立枯病の防除などの実
用例が報告されているが、これらはすべて土壌病害に対
するもので、地上部の病害に適用された例はほとんどな
い。
【0016】本発明は、上記のような問題点に鑑みてな
されたものであり、マンゴー炭そ病に対して効果的な生
物防除法を提供することを課題とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は、マンゴー炭そ
病の防除法において、従来の各種の殺菌剤による化学薬
剤に代えて、マンゴー炭そ病菌に対して拮抗作用のある
微生物により防除を可能にしようとするものであり、マ
ンゴーの葉上微生物について鋭意研究を重ねた結果、ペ
ニシリウム属の糸状菌が有効な拮抗作用を有することを
見出し、その微生物の分離に成功し本発明を完成させ
た。
【0018】マンゴー炭そ病菌に対して有効な拮抗作用
を持つ微生物を探索するにあたり、植物葉上に生息する
微生物の調査を詳細に行った。
【0019】一般に、植物葉上では、細菌が最も多く生
息していることが報告されているが、本発明者らは、細
菌だけではなく、糸状菌にも着目し、詳細に調査、研究
を行った。
【0020】その結果、糸状菌の中のペニシリウム エ
クスパンサム(P. expansum)という微生物がマンゴー
炭そ病菌に対して効果的な拮抗作用を示すことがわかっ
た。
【0021】すなわち、本発明は、マンゴー葉上に生息
する糸状菌でペニシリウム属のペニシリウム エクスパ
ンサム(P. expansum)を分離培養し、この培養菌体を
マンゴーの地上部、及び収穫後の果実に散布することに
より、炭そ病菌の防除を可能としたものである。
【0022】また、上記のペニシリウム エクスパンサ
ム(P. expansum)の培養菌体と、マンゴー炭そ病に対
して防除作用のある殺菌剤とを併用してマンゴーの地上
部及び収穫後の果実に散布することにより、より確実で
安定した防除を実現しようというものであり、生物防除
と化学防除を組み合わせた新しい総合防除法である。
【0023】散布方法については、マンゴーの地上部全
体に噴霧器などの散布装置を用いて散布しても良く、
枝、葉、果実などにハケなどで直接塗付しても良く、培
養菌体を付着できものならばいずれでも良く、展着剤を
混合して散布しても良い。
【0024】マンゴーの地上部とは、樹木の幹、枝、
葉、花、実などを示しており、樹木の各表面に生息する
病原菌に対して直接施用するものであり、土壌への施用
の場合のように、樹木の根に吸収させたり、土壌に菌を
増殖させるものではない。
【0025】また、総合防除に使用される化学薬剤は、
ペニシリウム エクスパンサム(P.expansum)に対して
影響を与えないものが用いられる。例えば、ベノミル剤
やチオファメートメチル剤などが良い。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を説明
する。
【0027】マンゴー炭そ病に対して拮抗作用を有する
微生物(ペニシリウム エクスパンサム(P. expansu
m))は以下のようにしてマンゴーの葉面より分離、培
養することができる。
【0028】(1)ペニシリウム エクスパンサム(P.
expansum)の葉上からの分離 マンゴーの葉を5cm四方に切り取り、これをさらに細
かい葉片に切り、Tween20(0.1cc)の入っ
た試験管内の滅菌水10mlに加え、10分間撹拌す
る。
【0029】この懸濁液から1ccをピペットでとり、
あらかじめ試験管に用意した9ccの滅菌水に注入し、
ミキサーで撹搾後、10−1区希釈液を作成する。
【0030】同様な操作で希釈を行い10−2区、10
−3区、10−4区まで作成し、それぞれの希釈液より
1ccをとり、あらかじめ溶解した糸状菌用ローズベン
ガル培地(KHPO:1.1g,MgSO7H
O:0.6g,ペプトン:5.7g,ブドウ糖:13.
3g,ローズベンガル:0.04g,寒天:22.7
g,クロラムフェニコール:1ml,蒸留水:1000
ml,pH6.8)の試験管に注入し、撹拌後シャーレ
内へ流し込み、25℃下で培養を行った。
【0031】数日後、形成される糸状菌コロニーをカウ
ントし、PDA斜面培地に50本ずつ移植し25℃下で
培養した。
【0032】マンゴー葉の細断は、はさみや包丁などで
切りきざんでも良く、また、ワーリングブレンダーやグ
ランダーミルなどの破砕機により、破砕しても良い。
【0033】(2)ペニシリウム エクスパンサム(P.
expansum)の同定 PDA斜面培地上で、2週間培養した糸状菌の末端を、
白金線を用いて寒天ごと少量とり、蒸留水を数滴垂らし
たスライドグラス上に置き、カバーグラスをかけ光学顕
微鏡を用いて検鏡を行い、形態的特徴の違いからペニシ
リウム エクスパンサム(P. expansum)の分類を行っ
た。
【0034】(3)散布用培養液(胞子懸濁液)の作成
例 PDA斜面培地で生育させたペニシリウム エクスパン
サム(P. expansum)の培養菌体に水を加えて懸濁す
る。懸濁用の水としては水道水、脱イオン水、蒸留水な
どを用いる。特に滅菌蒸留水が良い。
【0035】加える水の量は、胞子濃度が6×10 c
ells per ml程度となるよう調整する。測定には、血球
計算盤(エルマ光学株式会社)などを用いて測定する。
【0036】懸濁方法は、振盪機、撹拌機等により振
盪、または撹拌させて懸濁させ、水と均等に混ざった状
態とする。
【0037】得られた懸濁水溶液は、2重、または3重
のガーゼを用い、夾雑物を取り除いて散布用培養液とす
る。
【0038】なお、散布時に希釈して使用できるよう
に、胞子濃度を数倍に調整し、濃縮原液としても良い。
【0039】(4)ペニシリウム エクスパンサム(P.
expansum)培養菌体の散布方法 マンゴーの地上部に均一になるように噴霧器などを用い
て上記の散布用培養液を散布する。また、培養菌体がマ
ンゴーの枝や葉、果実などに展着しやすくなるように、
展着剤を混合して散布しても良い。
【0040】散布時期については、P. expansumの拮抗
作用が十分に発揮できるように、マンゴーの果実形成初
期段階から成熟段階までに数回行うことが好ましい。
【0041】ペニシリウム エクスパンサム(P. expan
sum)を展着させるためには、少なくとも果実が成熟す
る3か月以上前から散布することが好ましい。
【0042】一般農薬のように、マンゴーに対する薬害
や残留農薬の問題はないので、散布回数を増やすことが
でき、梅雨時期やその直前に集中して散布することもで
きる。
【0043】また、収穫後の果実への散布においては、
地上部への散布用培養液を菌濃度が1/10程度となる
ように希釈して使用すると良い。
【0044】
【実験例1】マンゴーの果実に、ペニシリウム エクス
パンサム(P. expansum)および化学薬剤(ベンレート
水和剤)とを接種し、その後炭そ病菌を接種して感染状
況を調べた。
【0045】胞子懸濁液の作成 PDA斜面培地で2週間生育させたマンゴー炭そ病菌、
ペニシリウム エクスパンサム(P. expansum)のコロ
ニーに10ml滅菌水を加え、滅菌済みの毛筆で培地表
面を軽くなで、胞子を浮遊懸濁させた後、2重にしたガ
ーゼを通して胞子懸濁液を作成した。
【0046】各胞子濃度は血球計算盤(エルマ光学株式
会社)を用いて測定し、マンゴー炭そ病菌(2×10
cells per ml)、P. expansum(9×10 ce11s per
ml)にそれぞれ調整した。
【0047】マンゴー果実への接種 マンゴー果実はアーウィン種を使用し、果実表面に5c
m四方の枠を決め、その枠内に滅菌した毛筆を用いてそ
れぞれの胞子懸濁液を接種した。
【0048】接種区は炭そ病菌単独区、ペニシリウム
エクスパンサム(P. expansum)菌+炭そ病菌同時処理
区、ペニシリウム エクスパンサム(P. expansum)菌
前処理区、ペニシリウム エクスパンサム(P. expansu
m)菌単独区、ベンレート(農薬)処理区を設定した。
【0049】P. expansum菌前処理区では接種してから
3日後に炭そ病菌を接種した。またベンレート水和剤
(タケダ園芸)は1000倍希釈液(滅菌水:500m
lあたリ薬剤:0.5g)を作成し、果実に接種後、1
5分間乾燥させてから炭そ病菌を接種した。
【0050】それぞれの処理区につき3個のマンゴー果
実を用い、接種後は感染パット内に移し加湿状態で保存
した。
【0051】マンゴー炭そ病菌による果実の被害度調
査 接種後、7日目と10日目の果実表面に形成される黒色
病斑の多少を肉眼で観察し、0〜7段階の段階値(図
3)に分類し、被害度指数(%)を算出した。
【0052】各処理区の被害度指数は階級値から次式に
より算出した。 被害度指数=(Σ(階級値別株数×階級値)/調査総株
数)×100
【0053】実験結果 実験結果をまとめたグラフを図1に示す。接種後7日の
ペニシリウム エクスパンサム(P. expansum)+炭そ
病菌同時処理区では71.4%の被害度指数を示し、対
照区である炭そ病菌単独区の52.4%を上回ってい
た。
【0054】さらに、接種後10日で95.2%と高い
指数値を示し、果実全体に黒色病斑が形成され、炭そ病
菌感染の抑制効果はほとんど認められなかった。
【0055】しかし、ペニシリウム エクスパンサム
P. expansum)前処理区では、接種後7日の被害度指
数が19.0%、接種後10日が61.9%と比較的低
い値を示し、炭そ病菌の感染進展に対する抑制効果が認
められた。
【0056】また、ベンレート薬剤処理区においては、
接種7日では33.3%と比較的低い被害度指数を示し
たが、接種10日になると、81.0%と高い値を示
し、炭そ病菌抑制効果の持続性が低いことが認められ
た。
【0057】ペニシリウム エクスパンサム(P. expan
sum)単独区では、接種後7日、および接種後10日の
いずれにおいても、病斑形成はまったく認められなかっ
た。
【0058】
【実験例2】マンゴー葉に
【実験例1】と同様に、ペニシリウム エクスパンサム
P. expansum)および化学薬剤(ベンレート水和剤)
とを接種し、その後炭そ病菌を接種して感染状況を調べ
た。
【0059】胞子懸濁液の作成 PDA斜面培地で2週間生育させたマンゴー炭そ病菌お
よびペニシリウム エクスパンサム(P. expansum)の
コロニーに10ml滅菌水を加え、滅菌済みの毛筆で培
地表面を軽くなで、胞子を浮遊懸濁させた後、2重にし
たガーゼを通して胞子懸濁液を作成した。
【0060】各胞子濃度は血球計算盤(エルマ光学株式
会社)を用いて測定し、炭そ病菌(4×10 cells p
er m1)、P. expansum(6×10 cells per ml)に
それぞれ調整した。
【0061】マンゴー葉への接種 マンゴー葉はアーウィン種を使用し、葉全体に均一にな
るように噴霧器を用いてそれぞれの胞子懸濁液を接種し
た。
【0062】接種区は炭そ病菌単独区、P. expansum
+炭そ病菌同時処理区、P. expansum菌前処理区、P. ex
pansum菌単独区、ベンレート(農薬)処理区、滅菌水単
独区を設定した。
【0063】マンゴー炭そ病菌による葉の被害度調査 ペニシリウム エクスパンサム(P. expansum)前処理
区では、P. expansumを接種してから3日後に炭そ病菌
を接種した。
【0064】また、ベンレート水和剤(タケダ園芸)
は、1000倍希釈液に調整して葉に接種し、15分間
乾燥させた後に炭そ病菌を接種した。また、滅菌水は、
噴霧器で葉全体に均一に散布した。
【0065】それぞれの処理葉につき5枚の葉を使用
し、接種後は感染バット内に移し、加湿状態で保存し
た。
【0066】接種40日後の葉面に形成される褐色病斑
の多少を肉眼で観察し、0〜7段階の段階値(図3)に
分類し、発病率(%)と被害度指数(%)を算出した。
【0067】各処理区の発病率及び被害度指数は、階級
値から次式により算出した。 発病率(%)=(発病株数/調査総株数)×100 被害度指数=(Σ(階級値別株数×階級値)/調査総株
数)×100
【0068】実験結果 実験結果をまとめたグラフを図2に示す。対照区の炭そ
病菌単独区では処理葉全てにおいて発病が認められ、被
害度指数も74.3%と高い値を示した。
【0069】これに対しP. expansum+炭そ病菌同時処
理区および前処理区では、対照区と比較して発病率およ
び被害度指数ともに低い値を示し、特に前処理区では被
害度指数8.6%と強い病原菌感染の抑制が認められ
た。
【0070】ベンレート処理区では、発病率および被害
度指数ともにさらに低い値が認められたことから、前処
理区よりも強い感染抑制効果が示された。
【0071】また、滅菌水単独区では、炭そ病菌を接種
していないにもかかわらず発病が認められた。
【0072】これらの実験結果が示すように、ペニシリ
ウム エクスパンサム(P. expansum)菌が炭そ病菌に
対して効果的な拮抗作用を有することは明らかであり、
ベンレート処理よりも高い抑制効果が期待できる。
【0073】次に、ペニシリウム エクスパンサム(P.
expansum)と化学薬剤を併用した総合防除法について
説明する。
【0074】発明者らは、ペニシリウム エクスパンサ
ム(P. expansum)菌と炭そ病菌の菌糸育成に及ぼす温
度の影響や、化学薬剤に対する耐性についても詳細に研
究を重ねており、炭そ病菌の最適育成温度がペニシリウ
ム エクスパンサム(P. expansum)の最適育成温度よ
りも高いこと、また、ペニシリウム エクスパンサム
P. expansum)が非常に強い薬剤耐性をもっており、
炭そ病菌に対しては強い殺菌効果があるが、P. expansu
mに対してはほとんど影響のない殺菌剤を見出し、最適
な総合防除法を完成させた。
【0075】マンゴー葉上には、常在菌としてさまざま
な細菌、糸状菌、酵母菌などが住み家として存在してい
る。炭そ病菌もその中の一つの菌としてわずかながら存
在している。環境条件により、この菌が増殖することに
より、発病し炭そ病斑が発生する。
【0076】この増殖を抑制するのがペニシリウム エ
クスパンサム(P. expansum)の拮抗作用であり、死滅
させるのが殺菌剤である。
【0077】マンゴー果実の商品価値を高め、品質を確
保するためには、炭そ病を抑えることと、残留農薬の問
題をなくすことが重要である。
【0078】P. expansum単独でも十分に防除効果はあ
るが、以下に示す総合防除法によって、より確実で安定
した病害防除が可能となる。
【0079】すなわち、炭そ病菌に対して最も効果的な
防除法は、上記の拮抗菌と殺菌剤とを併用して、化学薬
剤を最小限の使用に抑え、拮抗菌の拮抗作用を最大限に
増幅させることが望ましい。
【0080】ペニシリウム エクスパンサム(P. expan
sum)菌は、炭そ病菌に対して菌糸育成が遅いため、両
方の菌が同時に存在した場合には、炭そ病が早く育成す
るため、P. expansumの拮抗作用は、十分に発揮されな
い。
【0081】しかし、最適育成温度は、P. expansum
方が低いので、炭そ病菌が活発に育成する時期(梅雨時
期)よりも気温が低い時期に、P. expansumをマンゴー
に展着させることで炭そ病の発病を抑えることができ
る。
【0082】また、P. expansumが活発に育成する時期
に、P. expansumに影響を与えない殺菌剤を併用するこ
とにより、よりP. expansumの増殖が活発となり、炭そ
病菌に対する拮抗作用が最大限に発揮されることとな
る。
【0083】上記に示すように、炭そ病の生物防除と化
学防除を組合わせた総合防除法においては、炭そ病が多
発する梅雨時期の前の3〜4月頃に、前記のペニシリウ
ムエクスパンサム(P. expansum)の培養菌体と、P. ex
pansum菌に影響を与えない殺菌剤とを、同時にマンゴー
の地上部に、均一となるように噴霧器などを用いて散布
する。
【0084】ペニシリウム エクスパンサム(P. expan
sum)の培養菌体は、前記に示したように、胞子濃度が
6×10 cells per ml程度に希釈された散布用培養
液を使用する。殺菌剤は、ベノミル剤、チオファメート
メチル剤が好ましく、これらを1000倍程度に希釈し
て使用すると良い。
【0085】P. expansum培養菌体と殺菌剤は、混合し
て散布しても、別々に同時に散布してもよい。
【0086】また、殺菌剤の散布については、最小限に
抑えるために、上記のP. expansumの最も活発な時期に
1〜2回程度が好ましい。
【0087】P. expansum培養菌体は、マンゴーの育成
初期の段階から使用しても良く、薬害の問題はないの
で、2週間〜1月に1回程度散布するのも良い。
【0088】
【発明の効果】本発明の防除法により、下記のような効
果が得られる。
【0089】1)マンゴー炭そ病の被害を大幅に減少さ
せることができる。
【0090】2)農薬散布作業による人体への影響が少
なくなり、環境に対する影響も少なくなる。
【0091】3)マンゴー果実の残留農薬などの問題が
なくなり、より安全な果実を提供できる。
【0092】4)地上部病害に対する新たな生物防除が
可能となる。
【0093】5)生物防除と化学防除を組合わせた総合
防除が可能となり、マンゴー炭そ病に対してより確実な
防除が可能となる。
【0094】6)マンゴー果実の品質及び商品価値が高
められ、安定した生産、出荷が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マンゴー果実における炭そ病の感染に及ぼすP.
expansum菌の影響を示すグラフである。
【図2】マンゴー葉における炭そ病の感染に及ぼすP. e
xpansum菌の影響を示すグラフである。
【図3】マンゴーの各病徴段階値を示す図である。
【符号の説明】
a 病斑

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マンゴーの炭そ病菌に対して拮抗作用の
    ある微生物を培養し、その培養菌体をマンゴーの地上部
    に散布することにより、病原菌の防除を可能とするマン
    ゴー炭そ病の防除法。
  2. 【請求項2】 マンゴーの葉上微生物群の中から、炭そ
    病菌に対して拮抗作用のある微生物を分離、培養し、そ
    の培養菌体をマンゴーの地上部に散布することにより、
    病原菌の防除を可能とするマンゴー炭そ病の防除法。
  3. 【請求項3】 マンゴーの炭そ病菌に対して拮抗作用の
    ある微生物の培養菌体と、マンゴーの炭そ病に対して防
    除作用のある化学薬剤とを、マンゴーの地上部に散布す
    ることにより、病原菌の防除を可能とするマンゴー炭そ
    病の総合防除法。
  4. 【請求項4】 前記の培養菌体、並びに化学薬剤を収穫
    後のマンゴー果実に散布することにより、病原菌の防除
    を可能とする請求項1から請求項3までのいずれかの項
    に記載のマンゴー炭そ病の防除法。
  5. 【請求項5】 マンゴーの炭そ病菌に対して拮抗作用の
    ある微生物がペニシリウム エクスパンサム(Penicill
    ium expansum)である請求項1から請求項4までのいず
    れかの項に記載のマンゴー炭そ病の防除法。
JP11216488A 1999-07-30 1999-07-30 マンゴー炭そ病の防除法 Withdrawn JP2001039810A (ja)

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