JP2001003126A - Ti−Zr系合金からなる医療器具 - Google Patents

Ti−Zr系合金からなる医療器具

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 X線透視下で用いられるヒトの脈管経に直接
挿通されるガイドワイヤーやヒト体内に長期間留置され
るステント等の医療用具を提供する。 【構成】 Ti 25〜50質量%、Zr 25〜60
質量%、Nb 5〜30質量%及びTa 5〜40質量
%からなり、かつTiに対するZrの質量比が0.5〜
1.5であり、かつTaに対するNbの質量比が0.1
25〜1.5あるTi−Zr系合金からなる部分を有す
る医療器具。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、放射線科、循環器内科
及び外科などの医療分野において経皮的血管形成術(P
TA)等に代表されるX線透視下の治療行為に用いられ
るガイドワイヤー、ステント、心室補助装置やカテーテ
ル等の医療器具に関するものである。さらに詳しくは、
本発明は、生体内での十分な耐腐食性を有し、かつ構造
材として必要な強度や加工性を有し、生体適合性及び適
度な造影性、ならびにMRI対応をも兼ね備えたTi−
Zr系合金からなる医療器具に関するものである。
【0002】本発明のTi−Zr系合金は、Ti、Z
r、Nb及びTa、ならびに必要であればSnやPd、
Pt及びAuの生体適合性元素からなり、毒性が懸念さ
れている金属元素を含まず、したがって、移植材料とし
ても安全性を本質的に兼ね備えているTi系合金群に関
するものである。
【0003】このような医療器具の特に好ましい用途と
して、ステント、ガイドワイヤー、心室補助装置を例に
解説する。ただし、上記合金類は、その物理科学的特性
から見て、医療用途および一般用途において、他にも有
用性があることが理解されるべきであり、本明細書の例
示により限定されるものではない。
【0004】
【従来の技術】ステントは、狭窄した体内脈管を拡張す
ることを目的として血管をはじめとして尿路、胆管路、
食道路や腎路内に適用される中空の管状物であり、長期
間体内に留置されるステントの素材としては、ステンレ
ス鋼のSUS316L、純金属のTa、Ni−Ti系の
超弾性合金等が実用化されている。
【0005】一方、人工関節の用途を中心に、インプラ
ント用Ti基合金が種々検討されてきた。代表的には、
純Ti,Ti−6Al−4V合金等(以下、一般的な合
金の表記に従って、特に断りがない組成はすべて質量%
とし、残部はTi及び不可避的不純物の質量%とする)
が挙げられる。しかしながら、種々開発されたβ−Ti
基合金を中心としたTi基合金は耐腐食性や含有元素の
問題を完全にはクリアできていない。このような問題点
に鑑みて、元素単体で生体に為害性のないとされるT
i,Zr,Sn,Nb,Taを構成成分とするチタン合
金をつくる試みがなされ、最近Ti基合金の改良が進ん
できている。例えば、特開平6−233811号公報で
はTi−13Zr−13Nb合金を用いた人工心臓・人
工関節等が、特開平9−215753号公報では前記T
i−13Zr−13Nb合金を用いたTi合金製自己拡
張型ステントが提案されている。加えて、特公平8−1
6256号公報では長期埋め込み材料を意図したTi−
15Zr−4Nb−4Ta−0.2Pd合金、Ti−1
5Sn−4Nb−2Ta−0.2Pd合金が、特開平8
−299428号公報ではインプラント用材料としてT
i−29Nb−13Ta−4.6Zr合金などが提案さ
れている。これらの合金は、質量比で50質量%以上の
Tiを含むことを特徴としている。また、合金設計にお
いて構造材料として考えられているため、X線の不透過
性については何ら考慮されていない。ステントについて
はX線造影性が重視され貴金属のラジオパークマーカー
を有するもの(特許第2825452号公報)や貴金属
とステンレスとのクラッド材(特表平7−505319
号公報)等が提案されているが、精密加工性と強度の問
題で素材はステンレス鋼のSUS316Lを中心として
おり、ステンレス自体の耐食性の問題やメツキのピンホ
ール腐食さらには異種金属との組み合わせによるガルバ
ニック腐食等の問題が解決されていないので、長期埋め
込み材としての安全性迄は考慮しきれていないと言え
る。
【0006】Ti基合金に加えて、Zrの合金も生体適
合性の高い合金として医療器具への応用が検討されてい
る。例えば、特開平5−269192号公報では酸化ジ
ルコニュウムの血液適合性に着目したZrを主成分とし
た人工心臓弁などが開示されている。最近の研究や特開
平7−188876号公報では、Zr基金属ガラスのZ
r30Ti20Al25Pd25合金(原子量%)、特
開平10−211184号公報のZr60Al15Ni
15Cu5Co5合金(原子量%)等がある。これらは
Zrをベースとしたアモルファス合金であり、アモルフ
ァス合金の耐腐食性と非磁性を利用しているが、アモル
ファス合金とするためには、液体急冷法や粉末成形等の
特殊な製造方法を用いなければならないと言う制約があ
る。
【0007】さらに、チタン合金やジルコニア合金は、
上述したように、それぞれTiまたはZrを主成分とし
て50質量%以上含むものであり、これらの合金は耐腐
食性に優れることから生体適合性素材として重視され、
開発が進められている合金ではあるが、一般的なステン
レス鋼に比べ加工性が悪いことや切削加工性が悪いこと
は周知の事実である。また、人工関節や人工心臓の材料
として合金設計されたため、適度なX線造影性の点まで
は考慮されていない。さらに近年の医療器具への要求と
して、核磁気共鳴(MRI)の画像に影響を与えないこ
とが、MRI装置の普及により要望されるようになって
きている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
先行技術の問題点に鑑みてなされたものであり、上記課
題を克服することにある。
【0009】したがって、本発明の目的は、生体内で用
いられ直接体液に触れることを想定し、ヒトの身体上ま
たは体内における長期間の留置にも耐えられる高い安全
性を有する、新しい改良合金からなる医療器具を提供す
ることにある。
【0010】本発明の他の目的は、Ti,Zr,Nb,
Ta等の生体適合性元素からなり、毒性が懸念される金
属元素を含まず、ゆえに、移植材料としての安全性を本
質的に兼ね備えており、かつ高強度で、かつ加工が容易
であり、生体適合性に優れる新しい改良合金からなる医
療器具を提供することにある。
【0011】本発明の別の目的は、上記利点に加えて、
X線透視下において適度なX線造影性を有する新規Ti
−Zr系合金からなる医療器具、特に適度な造影性が付
加価値として要求されるガイドワイヤー、カテーテル、
ステント、ステントグラフト、静脈フィルター、人工血
管等の医療器具を提供することにある。
【0012】本発明のさらなる別の目的は、上記利点に
加えて、核磁気共鳴の画像診断において、映像に影響を
与えない医療器具を提供することにある。また、特に左
室補助装置においては非磁性でかつ血液適合性に優れた
血液流路を形成する必要があり、加工性に優れた金属素
材が要望されており、このような要求を満足する金属素
材、およびこのような金属素材からなる医療器具を提供
することを目的とする。
【0013】
【課題を解決する手段】本発明者らは、上記課題を解決
するため、合金の基本設計より行った。最近の知見で
は、純Tiおよび純Zrは両者とも緻密な酸化皮膜を形
成することにより良好な耐腐食性を示す材料であり、ほ
とんどの化学薬品に対しても耐性を有することが知られ
ている。さらに詳細な検討結果から、純Tiと純Zrの
各種薬品に対する耐腐食性は相補的であることが分かっ
てきた。例えば、無機酸の沸騰塩酸・硫酸に対しては、
純Tiは腐食されるが純Zrはほとんど侵されない;お
よび無機塩化物の塩化第二鉄30質量%水溶液に対して
は、純Tiは侵されないが、純Zrは侵されるなどで挙
げられる。つまり、TiとZrの両者を組み合わせるこ
とにより最強の耐腐食性を持った合金が得られることが
期待される。また、TiまたはZrのどちらかを合金の
母相とした場合、どちらかの性質が優先的に出てしまう
のは容易に理解される。
【0014】したがって、相溶性の良いTiとZrをほ
ぼ等質量用いた母合金を出発点として、Nb,Ta等の
生体適合性元素を適宜添加したTi−Zr系合金を作製
し、これらについてX線造影性等それぞれの医療器具が
要求する物性や特性を吟味して、上記諸目的を達成でき
る新規なTi−Zr系合金群を発見するに至った。
【0015】上記知見に加えて、本発明者らは、Zrと
SnはTiとの組み合わせにおいて適宜置換が可能であ
ることをも見出し、すなわち、Ti,Zr,Nb,Ta
を基本組成とする合金において、Zrの一部をSnで置
換した組成を有するTi−Zr系合金群が同様にして医
療器具の素材として好適であることをも発見した。な
お、当然のことながら、原料の純Ti,純Zrから不可
避的に不純物として入り得るH,O,N,Fe,C,P
d,Ru,Ni等の元素は、所望の特性を阻害しない範
囲内であればある程度含まれることは許容される。具体
的には、原料として用いられる工業品純Tiにはグレー
ドにもよるが0.5質量%以下の量のこれら元素が含ま
れているのが普通である。ただし、これらの元素のうち
C,N及びO等の、毒性のない格子間元素は積極的に含
有させても良い。この場合、合金の物性を損なわない範
囲としてこれらの格子間元素及び不純物の含有量は各々
合金の0.5質量%を越えないことが好ましい。実際に
は、本発明のTi−Zr系合金は基本的にTi,Zr,
Nb,Ta,Sn等の非磁性材料を用いているので、作
製されるTi−Zr系合金も非磁性であり、核磁気共鳴
の映像に影響を与えない医療器具となる。この磁石につ
かない性質は駆動力に磁力を用いるような左室補助装置
においては重要な特性を付与することになる。
【0016】すなわち、本発明の上記諸目的は、下記
(1)〜(10)によって達成される。
【0017】(1)Ti 25〜50質量%、Zr 2
5〜60質量%、Nb 5〜30質量%及びTa 5〜
40質量%からなり、かつTiに対するZrの質量比が
0.5〜1.5であり、かつTaに対するNbの質量比
が0.125〜1.5あるTi−Zr系合金からなる部
分を有する医療器具。
【0018】(2)Tiに対するZrの質量比が0.8
〜1.2である、前記(1)に記載のTi−Zr系合
金。
【0019】(3)前記(1)または(2)に記載のT
i−Zr系合金におけるZrの一部がSnで置換され、
かつ該Snの含有率が合金組成の5〜10質量%である
Ti−Zr系合金からなる部分を有する医療器具。
【0020】(4)前記(1)または(2)に記載のT
i−Zr系合金におけるNbまたはTaの少なくともい
ずれか一方がPd、Pt及びAuからなる群より選ばれ
る少なくとも一種の置換元素で置換されるTi−Zr系
合金からなる医療器具。
【0021】(5)さらに構成元素の全質量に対して、
0.01〜5質量%のPd、Pt及びAuからなる群よ
り選ばれる少なくとも一種の添加元素を含む前記(1)
または(2)に記載のTi−Zr系合金からなる部分を
有する医療器具。
【0022】(6)前記(1)から(5)のいずれかに
記載のTi−Zr系合金からなる金属製の機能性本体部
分を有するガイドワイヤー。
【0023】(7)前記(1)から(5)のいずれかに
記載のTi−Zr系合金からなる金属製の機能性本体部
分を有するステント。
【0024】(8)前記(1)から(5)のいずれかに
記載のTi−Zr系合金からなる金属製の機能性本体部
分を有する心室補助装置。
【0025】(9)血液と接触する医療器具であって、
該医療器具は前記(1)から(5)のいずれかに記載の
Ti−Zr系合金からなる機能性本体部を有し、かつ血
液と接触する合金表面にヘパリンが共有結合されている
事を特徴とする医療器具。
【0026】(10)該医療器具はガイドワイヤー、ス
テントまたは心室補助装置である前記(9)に記載の医
療器具。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】第一の概念によると、本発明は、Ti 2
5〜50質量%、Zr 25〜60質量%、Nb 5〜
30質量%及びTa 5〜40質量%からなり、かつT
iに対するZrの質量比が0.5〜1.5であり、かつ
Taに対するNbの質量比が0.125〜1.5あるT
i−Zr系合金からなる部分を有する医療器具を提供す
るものである。上記概念において、各構成元素の含有量
(質量%)は、合金の構成元素の和が、不純物や5質量
%以下の添加物を除いて、100質量%となるようにそ
れぞれ選定される。このような基本組成とすることによ
り、耐腐食性に優れ、有害なイオンを生じない。また、
加工性と強度を両立した生体適合性合金を提供できる。
また、TiまたはZrの性質のどちらかが支配的になら
ないことを考慮すると、Tiに対するZrの質量比を
0.5〜1.5の範囲内にする必要がある。なお、Ti
に対するZrの質量比が上記範囲を逸脱すると、母相は
どちらかの性質が色濃く現れ、冷間加工性を失う。
【0029】上記概念の合金を構成する構成元素のう
ち、Tiは、常温では六方最密格子構造(α相)をと
り、大きな延性が期待できないが、882℃以上では体
心立方格子構造(β相)に変わり、α相より大きな延性
が現れることが知られている。また、純Ti(グレード
2)のヤング率は106GPaであり、610℃以上で
表面にTiO2の緻密な酸化被膜を形成し、このTiO2
膜は常温の空気中では変化せず、強度に優れ、耐食性を
も有し、また、300℃以上ではTiCl4を生じる。
なお、Tiは、比強度(引張強度を比重で割った商)に
優れるため、この特性を利用して、Tiをベースとした
合金として多用されているが、しかしながら、Tiをベ
ースとしたTi基合金は合金化すると固溶体になり、延
性に大きな影響をおよぼす。もし延性が失われると、少
なくとも鋳造組織を改善する重要な手段としての鍛造が
できなくなる。したがって、優れたTi基合金の条件と
しては、塑性が有ることが条件である。現在、残念なが
らTi基合金に目的の元素を添加しても脆くて加工性が
非常に悪く使用できない例が多い。これに対して、本発
明によるように、所定の組成でTi−Zr−Nb−Ta
からなる四元合金を用いることにより、上記欠点を克服
できることを見出したのである。
【0030】上記概念において、Tiの含有量は、Zr
の含有量と以下に示す関係を満たすと同時に、構成元素
の全質量に対して、通常、25〜50質量%、好ましく
は30〜40質量%、より好ましくは30〜35質量%
である。この際、Tiの含有量が50質量%を超える
と、Tiの含有量が高くなりすぎ、Ti本来の欠点であ
る塑性及び加工性の悪さが顕著に現れてしまい、従来の
Ti基合金と同様に常温での加工ができず熱処理等の工
程が増え、好ましくない。逆に、Tiの含有量が25質
量%未満であると、Ti量が少なく過ぎて、やはりTi
を用いることの利点である優れた強度、比強度、耐食性
及び安定性が充分でなく、Tiの持つ優れた性質が現わ
れず、もはやTiベースの合金とは呼べず、やはり好ま
しくない。
【0031】また、本発明の合金の構成元素であるZr
は、常温では六方最密格子構造(α相)をとり、862
℃以上で体心立方構造(β相)に変わる。また、Zr
は、空気中で緻密な酸化被膜を生じ、耐食性に優れ、特
に高温の水中での耐食性は他金属に比べて著しく高く、
融解アルカリ中でも反応しにくいという性質を有する。
このようにZrは優れた耐食及び耐酸性を有するため、
各種機械用途に用いられる。なお、純Zrのヤング率
は、94.5GPaである。
【0032】上記概念において、Zrは、Zrの含有量
が、構成元素の全質量に対して、25〜60質量%の範
囲でありかつTiに対するZrの質量比が0.5〜1.
5の範囲内となる条件を満たすことを必須とする。好ま
しくは、Zrの含有量は、構成元素の全質量に対して、
25〜45質量%、より好ましくは30〜35質量%で
ある。また、Tiに対するZrの質量比は、好ましくは
0.5〜1.5、より好ましくは0.8〜1.2であ
る。この際、Zrの含有量が25質量%未満であるまた
はTiに対するZrの質量比が0.5未満であると、合
金中にTiのα相が析出して、塑性及び加工性が著しく
低下し、ヤング率が上昇し、生体組織との親和性も悪く
なり好ましくない。これに対して、Zrの含有量が60
質量%を超えるまたはTiに対するZrの質量比が1.
5を超えると、耐食性の改善は見られず、得られる合金
の比重が増加するだけであり、やはりヤング率が上昇
し、塑性及び加工性が低下し、やはり好ましくない。こ
のようにしてZrの含有量を上記したような特定の範囲
内に設定することによって、Tiを常温空気中で変化さ
せずに、かつZrは緻密な酸化被膜を形成して、両者の
特徴が相乗して良好な耐食性・耐酸性を示すことができ
る。
【0033】また、上記概念において、Ti−Zr系合
金におけるZrの一部がSnで置換されてもよい。Sn
は、X線造影における造影性を向上することができるの
で、Zrの一部がSnで置換されたTi−Zr系合金
は、X線造影における造影性がよくなり、部品の薄肉化
が計れる。この際、Snの含有率は、合金全体の、5〜
10質量%、好ましくは6〜9質量%である。Snの含
有率を合金全体の5質量%以上とすることによって、X
線造影性の改善が認められる。これに対して、Snの含
有率が10質量%を超えると、得られる合金の耐腐食性
と冷間加工性が低下し、加工可能な圧延率が低下するの
で、やはり好ましくない。
【0034】さらに、本発明の合金の構成元素であるN
bは、展延性を示し、そのヤング率は105GPaであ
り、その硬さは錬鉄と同程度で、他の構成元素であるT
aより柔らかい金属である。したがって、Nbを添加す
ることにより、得られる合金にしなやかさ(低弾性)を
付与することができる。また、Nbは、空気中で酸化被
膜を生成して耐食性を示す金属であり、フッ化水素酸以
外の酸には不溶であり、アルカリ水溶液にも溶けず、各
種合金(例えば、耐熱合金)の添加元素として広く用い
られている。このため、Nbを本発明のTi−Zr系合
金の構成成分とすることによって、Zrと協働して耐食
性・耐酸性を向上させることができる。
【0035】上記概念において、Nbは、Nbの含有量
は、構成元素の全質量に対して、5〜30質量%の範囲
でありかつTaに対するNbの質量比が0.125〜
1.5の範囲内となる条件を満たすことを必須とする。
好ましくは、Nbの含有量は、構成元素の全質量に対し
て、10〜20質量%、より好ましくは10〜15質量
%である。また、Taに対するNbの質量比は、好まし
くは0.3〜1.5、より好ましくは0.5〜1.0で
ある。この際、Nbの含有量が5質量%未満であるまた
はTaに対するNbの質量比が0.125未満である
と、得られる合金のしなやかさが充分でなく、塑性が低
下し、ヤング率が上昇していくという問題が生じる。逆
に、Nbを30質量%を超えて添加するとまたはTaに
対するNbの質量比が1.5を超えると、耐食性の向上
もしなやかさの向上も望むことができず、また、耐食性
の改善は見られず、比重が増加するだけとなり、生体組
織との親和性においても改善が見られず、やはり好まし
くない。
【0036】さらにまた、本発明の合金の構成元素であ
るTaは、Nbと同様にして、展延性に富み、弾力性が
ある。また、Taは、Nbより硬い金属で、そのヤング
率は187GPaである。したがって、Taを添加する
ことによって、合金の弾性を高めることはできるもの
の、しなやかさを付与することはできない。また、Ta
は、空気中で酸化被膜を生成して耐食性を示す金属であ
り、極めて耐食性が強いという特徴を有する。このた
め、Taを本発明のTi−Zr系合金の構成成分とする
ことによって、Zrと協働してその耐食性を向上させる
ことができる。
【0037】上記概念において、Taの含有量は、Nb
の含有量と上記関係を満たすと同時に、構成元素の全質
量に対して、通常、5〜40質量%、好ましくは10〜
30質量%、より好ましくは15〜25質量%である。
この際、Taの含有量が5質量%未満であると、得られ
る合金のヤング率が上昇し、展延性が低下し、耐力性も
劣り、好ましくない。これに対して、Taを40質量%
を超えて添加しても、耐食性の向上を望むことができな
いだけでなく、比重が増加するだけとなり、また、しな
やかさを次第に失うことになり、また、得られる合金が
脆くなり加工しにくくなるため、やはり好ましくない。
【0038】または、本発明において、上記Ti−Zr
系合金の構成成分であるNbおよび/またはTaがP
d、Pt及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一
種の置換元素で置換されてもよい。この際、少なくとも
一種の置換元素の含有量は、置換元素の種類及び含有量
によって決定される。これらの置換元素はすべて耐食性
に優れた元素であり、これらの元素でNbおよび/また
はTaを置換することで母材の耐食性の向上を図ること
ができる上、生体組織に悪影響を与えず、生体親和性に
も優れているので、本発明の合金を医療用用途に使用す
る際には、特に好適に使用される。
【0039】上記態様による合金の組成の具体例として
は、上記組成条件を満たすものであれば特に制限される
ものではないが、例えば、下記が挙げられる。
【0040】 Tia1Zrb1Nbc1(Pd、Pt及び
Auからなる群より選ばれる少なくとも一種の置換元
素)d1の多元合金(この際、a1は、Tiの含有量(質
量%)を表わし、25〜50の範囲であり、b1は、Z
rの含有量(質量%)を表わし、25〜60の範囲であ
り、c1は、Nbの含有量(質量%)を表わし、5〜3
0の範囲であり、及びd1は、置換元素の合計含有量
(質量%)を表わし、5〜40の範囲であり、かつb1
/a1が0.5〜1.5であり、かつc1/d1が0.
125〜1.5である); Tia2Zrb2(Pd、Pt及びAuからなる群より
選ばれる少なくとも一種の置換元素)c2Tad2の多元合
金(この際、a2は、Tiの含有量(質量%)を表わ
し、25〜50の範囲であり、b2は、Zrの含有量
(質量%)を表わし、25〜60の範囲であり、c2
は、置換元素の合計含有量(質量%)を表わし、5〜3
0の範囲であり、及びd2は、Taの含有量(質量%)
を表わし、5〜40の範囲であり、かつb2/a2が
0.5〜1.5であり、かつc2/d2が0.125〜
1.5である);および Tia3Zrb3(Pd、Pt及びAuからなる群より
選ばれる少なくとも一種の置換元素)c3+d3の多元合金
(この際、a3は、Tiの含有量(質量%)を表わし、
25〜60の範囲であり、b3は、Zrの含有量(質量
%)を表わし、25〜60の範囲であり、及びc3+d
3は、置換元素の合計含有量(質量%)を表わし、10
〜50の範囲であり、かつb3/a3が0.5〜1.5
である)。
【0041】本発明において、置換元素は、上記特性を
考慮しつつ、使用する用途や所望の性質により適宜選択
される。
【0042】または、本発明において、上記Ti−Zr
系合金に、構成元素の全質量に対して、0.01〜5質
量%のPd、Pt及びAuからなる群より選ばれる少な
くとも一種の添加元素を添加してもよい。これらの添加
元素(Pt、Au及びPd)すべては耐食性に優れた元
素であり、添加元素を所定の割合で添加することによっ
て母材の機械的強度や耐食性の向上を図ることができる
上、生体組織に悪影響を与えず、生体親和性にも優れて
いるので、本発明の医療器具に好適に使用できる。
【0043】添加元素を使用する際の添加元素の含有量
は、構成元素の全質量に対して、0.01〜5質量%で
あることが好ましく、より好ましくは1〜4質量%、最
も好ましくは2〜3質量%である。この際、添加元素の
含有量が0.01重量%未満であると、添加元素の添加
効果があまり認められず、残存微量元素と変わらず雑質
の範囲であり、好ましくなく、これに対して、添加元素
の含有量が5質量%を超えると、所望の性質とは異なっ
た性質が現われ、やはり好ましくない。
【0044】本発明のTi−Zr系合金の製造方法は、
上述したような特定の組成を有する合金を製造できる方
法であれば特に制限されないが、例えば、所望の元素
(例えば、Tiでは、スポンジチタン、純チタン グレ
ード1〜4など;Zrでは、スポンジジルコニウム、純
ジルコニウムなど;Nbでは、純ニオブ、およびTaで
は、純タンタルを、形を制限せず、純度は性質に影響を
およぼさない程度のものを、所定の組成(質量%)とな
るように秤量し、これを水冷銅ハース内でアーク溶解
し、合金化し、インゴットとする方法;るつぼで溶解
し、合金化し、アトマイズにより粉末とする方法;同様
の溶解で鋳造する方法;浮遊溶解し合金化し、インゴッ
トとする方法;およびメカニカルアロイング法、スパッ
タ法、プラズマ法など、通常工業的に行なわれている方
法、ならびに各種研究機関や文献等で発表されている方
法などが挙げられる。また、Sn、置換または添加元素
を使用する場合には、これらの元素の形態は、特に制限
されずに公知の方法における場合と同様であるが、例え
ば、純金属の状態でそれぞれ使用される。
【0045】このように、前記範囲で規定された本発明
のTi−Zr系四元合金は、Ti及びZrを主成分とす
る合金であるにもかかわらず、その金属組織は、特別な
熱処理を施さなくても、常温でβ相を示すので、圧延・
鍛造或いは機械加工などを常温で行うことができ、非常
に優れた加工性を示す。このため、このようなTi−Z
r系合金からなる部分を有する医療器具もまた、複雑な
形状や構造を有していても、容易に圧延・鍛造或いは機
械加工を施すことが可能である。
【0046】本発明はまた、生体適合性・加工性・物性
面で従来技術のTi基合金より優れた新規なTi−Zr
系合金を用いることが特徴であるため、従来の生体材料
を意識した医療器具がすべて上記Ti−Zr系合金から
なる部分を有する本発明の医療器具として応用が可能で
ある。本発明の医療器具としては、例えば、特開平6−
233811号公報に記載される人工心臓、人工弁、ペ
ースメーカー等;特開平5−73475号公報に記載さ
れる人工関節、骨ネジ、骨プレート等;さらには、ガイ
ドワイヤー、カテーテル、ステント、ステントグラフ
ト、静脈フィルター、人工血管、心室補助装置、および
歯科用インプラントなどが挙げられる。これらのうち、
好ましくは、ステント、ガイドワイヤー、心室補助装
置、及びペースメーカーのハウジング、特にステント、
ガイドワイヤー、心室補助装置である。
【0047】したがって、本発明の他の概念によると、
本発明によるTi−Zr系合金からなる金属製の機能性
本体部分を有するガイドワイヤー、ステント、および心
室補助装置が提供される。
【0048】また、本発明のさらなる他の概念による
と、血液と接触する医療器具であって、該医療器具は本
発明によるTi−Zr系合金からなる機能性本体部を有
し、かつ血液と接触する合金表面にヘパリンが共有結合
されていることを特徴とする医療器具、好ましくはガイ
ドワイヤー、ステント及び心室補助装置が提供される。
上記概念による発明は、本発明による合金がTi,Zr
等、易酸化性金属が多く含まれることを利用して、ヘパ
リンを共有結合でき、抗血栓性を付与できるという本発
明者らによる知見に基づいてなされたものである。
【0049】上記概念において、Ti−Zr系合金か
ら、ガイドワイヤー、ステント、および心室補助装置用
の機能性本体部分を成形する方法は、公知の方法が同様
にして使用できるが、例えば、伸線加工、引抜加工、エ
ッチング、レーザー加工、鋳造、鍛造、プレス加工、切
削およびMIMなどが挙げられる。また、成形される形
状や構造は公知のものと同様のものを成形可能である。
【0050】上記概念において、血液と接触する合金表
面にヘパリンを結合させる方法としては、公知の方法が
同様にして使用できるが、例えば、合金表面をオゾン酸
化後、ポリエチレンイミンを反応させ固定化し、グルタ
ールアルデヒドを介してヘパリンを固定化する方法が利
用できる。このようにして合金表面にヘパリンを固定化
することにより、血液と直接触れる医療器具に非常に好
適な性質が付与される。また、本発明の医療器具は、ヘ
パリン以外にも抗血栓処理として汎用される材料である
DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングや
化学蒸着法によるパリレンコート等の被覆やテフロンや
エステル類の表面潤滑化等の修飾処理をしても良い。ま
た、既存のコーティング技術はほとんど併用することが
できる。加えて、薬剤を含む組成物によって被覆するこ
とも、医療器具によって任意に選択できる。例えば、本
発明のTi−Zr系合金の外表面に酸素拡散硬化、窒素
硬化、物理蒸着、化学蒸着、イオン注入、ドーピング等
の処理を施し表面硬化や表面改質することが可能であ
る。
【0051】以下、本発明の医療器具の実施態様を図を
参照しながら具体的に説明する。なお、下記表1は、本
発明で用いられる合金の組成例と従来技術の合金の組成
例との比較を示す。下記表1から、本発明の合金の組成
は従来に比べTiとZrがほぼ同質量含まれ、Zrが相
対的に多いのが特徴である新規な組成であることが分か
る。
【0052】
【表1】
【0053】また、下記表2は、上記で作製された本発
明の実施合金例の室温での圧延試験結果(冷間加工性の
適否)とX線造影性の試験結果を示す。この際、圧延試
験は、各合金のキャスト板を作製し、その後室温でロー
ル圧延可能か否かを調べた。ひび割れを生じず冷間加工
できたものを○とした。
【0054】下記表2からも分かるとおり、従来のTi
基合金は、その金属組成が常温では硬くて脆いα相であ
るため圧延・鍛造或いは切削などの機械加工は難しく、
唯一、高温領域で析出する機械加工可能なβ相領域でし
か加工ができないことが知られている。また、Zr系合
金はZr自体に発火性があり、加工が難しいことはよく
知られている。これらTi合金やZr合金は室温で機械
加工を行うとクラックが入り易く、機械加工が難しいこ
とは衆知の事実である。従って、本発明に用いる素材が
冷間加工可能であるという事実は生体用合金に一般的な
機械加工技術が適応できると言う点で画期的と言える。
【0055】一方、下記表2において、X線透視下での
X線造影性については、各合金キャスト後の板を耐水ペ
ーパーと研磨剤を併用したバフ研磨して、厚みを80ミ
クロンに合わせて測定した。X線造影性の測定方法はA
STM F640−79記載の方法により、厚さ15m
mのAl遮蔽板上で測定した。装置は実際の病院のX線
撮影装置(HITACHI DHF−158CX)を用
いた。得られたX線画像をスキャナーでパーソナルコン
ピューターに読み込み、デンシトメトリーで陰影を数値
化する方法を採用した。数値は陰影度をグレースケール
で表現し、数字が大きいほど陰が濃い、即ち、X線画像
上よく見えることを意味する。感覚的に数字の意味を分
かりやすく表現するため、評価合金の肉厚を80ミクロ
ンとしたとき金の厚みでは何ミクロン相当になるか同時
に測定した金の検量線を用いて換算した。
【0056】
【表2】
【0057】さらに、実際の医療現場でのX線造影性を
数値化するため、通常行われている冠状動脈の造影剤検
査(CAG,Coronary angiography)のX線条件(73
kV/500mA)で、厚みを20〜120ミクロンと
した純金の検量線を人体の上に置いたときの様子を図1
に示す。図1は検量線のX線画像であり、5mm角の純
金板11を20,40,60,80,100,120ミ
クロン(画像上11a〜11fである)の厚みに調整し
て並べて、検量線系列は心臓の真上位置にしておかれて
いる。X線は背中側から照射されており背骨12と肋骨
13が観察されている。この時の検量線は図2に示すも
のが得られた。これから、金の厚みとグレースケールの
値は良い相関性を示していることが分かる。また、図2
から、X線造影性はある程度グレースケールの加成性が
成り立つが、人体の場合バックグラウンド消去が難しく
原点は通らなかった。言い換えると、金の厚みが10ミ
クロン以下になると骨とのコントラストがほとんどない
ので実質上区別できなく見えなくなる。このため金の検
量線と同時にサンプルを測定することにより数値化を試
みる必要があることが分かった。なお、図1中、人間の
背骨12はX線画像上、造影性は金の厚み20ミクロン
相当であり、肋骨13は12ミクロン相当程度であるこ
とが分かった。
【0058】さらに、血管造影においては造影剤をカテ
ーテルを通して血管内に注入し血管を図3に示すが、こ
の画像から先ほどの図2検量線を用いて液体の造影剤を
注入した場合の造影剤は、場所による濃淡の差はある
が、冠状動脈の左冠動脈の#6、即ち、図3中14の近
辺で平均50ミクロン相当のX線造影性を示すことが分
かった。つまり、金の50ミクロンレベルが医師が日常
診断に用いている画像レベルであり、くっきり良く見え
る造影性レベルと言える。これに対して、一般の造影用
ガイドワイヤー(0.035インチ)は金の厚み33ミ
クロン相当であり、造影性ガイドワイヤーは医師や放射
線科技士によれば視認性が良いとされており、X線透視
下の視認性は従来汎用されている血管造影用の太いガイ
ドワイヤー(外径0.035インチ)程度あれば良く視
認でき、このX線造影性が一つの目標数値となり得る。
実際には、金の20ミクロンの厚みの板11aは背骨1
3と区別が可能であり、肋骨13と背骨12は重なって
も識別できることから、金の20ミクロン相当のX線造
影性を目標数値とすれば良いことが分かった。今回のX
線造影性の実験結果から、X線造影性の最低レベルは金
の10ミクロン程度であり、11d,11e,11fの
画像から金の80ミクロン以上は必要ない事も分かっ
た。このため、金換算のX線造影性の数値で表わした際
に、肋骨12ミクロンと造影剤50ミクロンの間の造影
性が適度なX線造影性であると考えることができ、より
好ましくは金の厚みで20〜40ミクロンが適度なX線
造影性の範囲であると考えられる。具体的には、サンプ
ルのトータルの肉厚を厚さ80〜100ミクロンとした
とき、X線造影性は純金の20〜40ミクロン相当であ
ることが目標となる。この点に関しては、上記表2から
本発明のTi−Zr系合金がその条件を好適に満たすこ
とが分かる。また、上記表1及び2中の本発明の合金例
5に示されるように、Ta,Sn等の含有量で造影性を
コントロールできることも分かった。したがって、本発
明では、X線造影性は試料の厚みに依存するので、製品
の設計時に厚み・機械強度を設定し、合金組成を調整す
ることにより造影性を適度にコントロールして適度な造
影性を有する医療器具の提供が可能である。上記表1及
び2中の本発明の合金例4に示されるように、貴金属
(Au)を添加元素として加えて造影性をコントロール
することも可能である。なお、一部、Ti合金の高Nb
合金やZr単体がこの範囲に含まれるが、冷間加工性が
不可能であり加工性が悪いので実用的ではない。
【0059】さらに、下記表3に本発明の合金例の機械
的特性値として引張試験結果、曲げ試験結果及び硬度の
測定結果を示す。ただし、曲げ試験結果は室温で圧延が
可能でクラックのない板材についてのみ行ったため、従
来技術の合金例は測定できなかった。文献および特許記
載の数値から、従来のTi合金は引張強度で1000M
Paより低く、ステンレス鋼のSUS316Lは940
MPa程度であることが知られており、これから、引張
強度は本発明のTi−Zr系合金例の方が高く製品の設
計上有利であることが考察される。
【0060】
【表3】
【0061】本発明のTi−Zr系合金では、厚み80
ミクロンでX線造影性は金20ミクロン相当以上とな
り、肋骨・背骨との織別が可能で、造影剤より薄く識別
が可能である。従って、適度なX線造影性を有すること
が分かった。また、従来材料より加工性と機械強度も優
れることが分かった。この性質は血管系ステントやマイ
クロガイドワイヤーにとっては重要な特性であるので、
下記実施例の項でさらに詳細に説明する。
【0062】図5及び6は、本発明の合金を直径0.5
mmの線材にしたときの核磁気共鳴診断装置(本明細書
では、単に「MRI」とも称する)の画像である。ま
た、図4は、試料の配置に関する斜視図であり、直径
0.5mm、長さ6cmの線材を生理食塩水を満たした
パットにならべた様子を示している。図4中、符号4は
プラスチック製容器であり、符号40は生理食塩水であ
る。符号41〜47は試料の金属線材である。符号41
は市販のステンレス鋼の316L材であり(以下、「S
US316L」と略記する)、符号42は市販のステン
レス鋼の3041材であり(以下、「SUS304」と
略記する)、符号43は市販のβチタン鋼のTi−6A
l−4V材であり(以下、「64Ti」と略記する)、
符号44は本発明の合金例−1のTi−34.8Zr−
11.8Nb−23.0Ta合金(組成は質量%)から
作製されたTi−Zr合金線であり(以下、「Ti−Z
R合金」と略記する)、符号45は市販のJIS二種の
純Ti線であり(以下、「Ti」と略記する)、符号4
6は市販のNi−Tiの超弾性線であり(以下、「Ni
−Ti」と略記する)、符号47はステンレス鋼の63
1材である(以下、「SUS631」と略記する)。実
際の装置:HITACHI MRP7000(磁場強度
0.3テスラ)を用いて線材試料の長手方向に垂直な断
面のMR画像(図5)と試料の長手方向に平行に試料断
面のMR画像(図6)を得た。図5は、縦断面を観察し
たときの画像例であるが、従来から問題とされる符号4
2のSUS304及び符号47のSUS631等は非常
に大きなアーチファクトを生じることが分かる。また、
0.5mmの線材が棒のように拡大されており診断画像
に影響を与えてしまう。例えば、図5の画像で41の3
16Lは42のSUS304の大きなアーチファクトの
影響で画像が流れていることが観察され、43の64T
iは所在が確認できなくなってしまっている。これに対
して、44,45,46のTi系線材は画像にほとんど
影響を与えずほぼ等倍の画像が得られた。次に、図5の
縦断面の観察後、42,47はアーチファクトが大きす
ぎる試料であることが分かったので、42のSUS30
4及び47のSUS631を測定試料から除き、横断面
を観察し、その結果を図6に示す。41のSUS316
LはMR観測上画像に若干のアーチファクトを生じるこ
とが知られている材料である。41のSUS316Lと
の比較で本発明の合金例のTi−Zr合金線材44がア
ーチファクトを生じずMRI観察できることが分かる。
このことは同時に観察した43のβ−Ti合金の64T
i線、46のNi−Ti線や45の純Ti線と同等であ
った。なお、46のNi−Ti超弾性合金や45の純T
iがMRI下でアーチファクトを生じないことは既に公
知である。
【0063】さらにまた、図7は、本発明に用いるTi
−Zr系合金の1N塩酸中でのアノード分極試験の結果
を純Tiとの比較を示す。この実験は、胃の中での留置
を想定したもので、合金や純Tiが胃酸という非常に過
酷な条件で腐食されないかどうかを調べる試験である。
純Ti(JIS二種)はSUS316Lや生体用コバル
ト合金やTi−6Al−4V,ELI合金などのβ−T
i合金より、耐腐食性に優れることが既に知られている
が、本発明で用いるTi系合金は、電流値が純Tiより
さらに低く、格段に耐腐食性が良いと言える。即ち、本
発明で用いるTi系合金は、最高レベルの耐腐食性をも
った合金であると言え、生体材料として好適であること
が分かった。
【0064】上述したように、本発明で用いるTi系合
金は医療器具素材、生体用材料として好適な新規なTi
−Zr系合金であることが十分理解されるが、この合金
の更に具体的な医療器具への適応例を下記実施例におい
て説明する。本発明は、生体適合性・加工性・物性面で
従来技術のTi合金より優れた新規なTi−Zr系合金
を用いることが特徴であり、従来の生体材料を意識した
医療器具にはすべて応用が可能である。例えば、例え
ば、特開平6−233811号公報に記載される人工心
臓、人工弁、ペースメーカー等;特開平5−73475
号公報に記載される人工関節、骨ネジ、骨プレート等;
さらには、ガイドワイヤー、カテーテル、ステント、ス
テントグラフト、静脈フィルター、人工血管、心室補助
装置、および歯科用インプラントなどが挙げられる。こ
れらのうち、好ましくは、ステント、ガイドワイヤー、
心室補助装置及びペースメーカーのハウジング、特にス
テント、ガイドワイヤー、心室補助装置に好適に用いる
ことができる。
【0065】
【実施例】以下、本発明を下記実施例を参照しながらよ
り詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定される
ものではない。
【0066】実施例1:ステント 表1の合金例−5であるTi−36.2Zr−12.3
Nb−12.0Ta−7.9Sn合金(質量%)のパイ
プを作製した。ステントの製造方法と構造デザインの詳
細は特開平9−299486号公報に開示されるのと同
様である。概略は外径1.4mm、肉厚0.10mmの
パイプを長さ50mmにカットして、パイプ上にYAG
レーザーで図9の展開図で示されるステントのパターン
を形成した。バリ取りと表面研磨を施し、図8の部分省
略断面図で示される形状のステント80を作製した。ス
テントストラット81の幅は0.15mm、肉厚は0.
08mmに仕上げた。ステントのデザインは他に種々の
ものが適応でき、様々な形状デザイン・製造方法が好適
に利用できる。例えば、ステンレスの平板にステントパ
ターンを打ち抜いた後、管にして溶接して作製する方法
での製造も可能である。ステントパターンの打ち抜きに
は、フォトアプリケーションと呼ばれるマスキングと化
学薬品を用いたエッチング方法、型による放電加工法、
機械的な切削加工法が利用できる。また、スロッティド
タイプ以外にもワイヤーを用いたメッシュタイプやコイ
ルタイプのステントも本発明の素材で容易に作製でき
る。本発明のTi−Zr合金は冷間加工が可能な為、従
来のステンレス素材やTaを前提としたステントデザイ
ン・加工法を容易に適応でき、種々のステントに応用可
能である。
【0067】本発明で表1の合金例−5を用いて、スト
ラットの厚みを80ミクロンとしたステント80を作製
し、バルーン101上にマウントし、図10に示される
ように、豚冠状動脈の左冠状動脈(LAD#6)にステ
ント80を運搬し、バルーン101を拡張することによ
り、ステントを所定の位置に留置した。なお、血管10
0および血管の狭窄部102に予めガイドワイヤー10
3を通過させ、ガイドワイヤー103に沿ってステント
システム104を挿入する。図10はステント手技の説
明図である。
【0068】本発明のステント80は従来の同デザイン
のステンレス製のステントに比べ素材の弾性率が4分の
1と低いため、ステント80自体の柔軟性も向上し、デ
リバリーバルーン+ステントのステントシステム104
の拡張バルーン部全体105の柔軟性が向上し、屈曲の
強いトーチャスな血管にもデリバリーがさらに容易とな
った。すなわち、本発明のステント80は、柔軟性に優
れるため、曲がった血管であっても血管に沿って、所定
の部位にまでステントを運搬・留置することが可能であ
った。また、本発明のステント80の弾性率は、従来の
材料のステンレス鋼SUS316Lに比べ格段に低いの
で、血管形状に馴染みやすくコンフォーマビリティー優
れるステントとなった。さらに、機械強度はステンレス
SUS316Lと同等以上であり拡張保持力等に影響は
なかった。X線透視下の視認性は期待通りで、数値とし
て純金の24ミクロン程度の厚みがあり、肋骨の2倍の
造影性があり背骨とも明瞭に区別でき、ステント80の
ストラット81が目視確認できた。この点については、
従来、ステンレス製のステントはX線造影上全く見えな
いことが臨床上指摘されており、ステントの留置位置の
決定に支障をきたしていたため、非常に好ましいといえ
る。なお、ステンレス製のステントでも肉厚を極端に厚
くすれば視認できるようになるが、その分ステントの柔
軟性が損なわれ、デリバリー性能が損なわれることは自
明である。本発明のステント80は、背骨の上でも金の
24ミクロンのX線造影性を有することから人体の組織
と識別でき、確認造影で造影剤を流すと造影剤通過の様
子が観察された。ステント80は金の24ミクロン程度
のX線造影性であり透けて見える程度のX線造影性を有
している。従って、金の50ミクロン程度のよりコント
ラストの強い造影剤の通過ははっきりと観察できること
が予想できる。逆に、X線造影性の強い所に、より薄い
造影性のものを流しても確認しづらくなる。従来のTa
を素材としたステントは強度保持のためストラットの直
径が130ミクロン程度の太さがあり、厚みもあるので
金の100ミクロン程度のX線造影性を有する。つまり
必要以上にはっきり見えすぎてコントラストが強くステ
ント内腔が分からないと言う問題を有する。従って、よ
りX線造影性の低い造影剤の通過の様子は事実上観察で
きなかった。また、拡張後のステント内径の測定は内部
が透けず分からないため不可能であったり、ステントが
再狭窄してきているかどうかも造影剤を流して確認しづ
らいと言う問題があった。このため、骨との識別が可能
でかつ造影剤の通過が観察できるような適度な造影性を
持ったステントが望まれていた訳であるが、本発明のス
テント80は造影剤と明確にX線造影性が異なり、透け
て見える適度な造影性を有することが確認できた。さら
に本発明のTi−Zr系合金製ステント80は長期の生
体適合性と加工性と高強度と柔軟性を兼ね備えており、
安心して埋め込める理想的なステントとなった。
【0069】実施例2:ヘパリンコーティングステント 実施例1と同様にして作製した本発明のステント80に
特開平10−1551190号公報に記載と同様の方法
でヘパリンコートを施した。特開平10−151190
号公報に記載の方法におけるヘパリンの共有結合は、本
ステント80の素材がTi,Zr,Nb,Ta等の易酸
化性の金属素材からなることから、オゾン酸化による表
面酸化が可能なため、容易にカップリング材を結合で
き、したがって、アミノ化ヘパリンの反応も可能であ
り、ヘパリンが共有結合できた。また、その効果は、特
開平10−155190号公報に記載のステンレス製ス
テントにヘパリンコートしたものと同等の抗血栓性効果
が動物実験で認められた。
【0070】実施例3:ガイドワイヤー カテーテルの案内具として用いられるガイドワイヤーの
素材に関する要求物性は特公平3−015914号公報
等に詳しく述べられている。Ni−Ti超弾性合金やア
モルファス合金がこれまでガイドワイヤーに好適な材料
として提案されてきたが、本発明の合金も低弾性率かつ
高強度かつバネ性を有するので適応可能である。
【0071】また、本発明のTi−Zr合金を用いるこ
とにより、従来合金に比べX線造影性が顕著に改善され
るので、特にマクロガイドワイヤーをつくることができ
る。当然ながら、通常の特公昭62−20827号公報
に記載のスプリングタイプのガイドワイヤーや特公平2
−24549号公報や特公平2−24550号公報に記
載の比較的低剛性の先端部を有するプラスチック被覆タ
イプのガイドワイヤーに用いることも可能である。
【0072】好適な一例として、下記マイクロワイヤへ
の適応例を解説する。非常に細いマイクロワイヤはNi
−Tiの超弾性合金をコアにしたものやステンレス鋼を
コアにしたものが従来代表的に用いられるが、コア素材
自体のX線造影性は乏しいので、外径が0.016イン
チ以下のワイヤーになるとX線透視下での視認性を補う
ため、造影フィラーを混練した樹脂で被覆するほかに造
影マーカーをプラスするなどの工夫がなされていた。し
かしながら、医療現場の要求は更に細い外径0.010
インチや0.007インチのガイドワイヤーを要求する
ようになってきている。この場合、造影マーカーや造影
層は極端に薄くならざるを得ない。その場合、ガイドワ
イヤーのコア自体に造影性がないとガイドワイヤー自体
が見えなくなる。また、ガイドワイヤーは曲がりくねっ
た血管内に挿入され、柔軟でかつバネ弾性を要求され
る。加えて、目的の血管を選択するため屈曲した状態
で、遠位端部へ手元からのトルクが伝達される必要があ
る。
【0073】本発明の合金例−4のTi−34.4Zr
−11.7Nb−22.7Ta−1.2Au(質量%)
は、合金例1の合金を母合金として1.2質量%の純金
を加えることにより、作製した合金である。この合金例
−4の合金をコア111に用いて、図11の部分断面斜
視図で示されるガイドワイヤー110を作製した。コア
111は造影剤を混練した被覆樹脂112で先端部から
30cm迄、部分的に樹脂被覆し、ガイドワイヤー11
0操作近位部は合金そのものを裸で用いた(図示せ
ず)。また、先端樹脂の表面には、特公平1−3318
1号公報に記載の湿潤時潤滑性を発現する親水性コート
樹脂を被覆した(図示せず)。本発明の合金例−4を用
いて作製された基部外径0.07インチで、先端部外径
0.07インチ、先端柔軟部コア径が0.05mmのガ
イドワイヤーは、コアの合金そのものに金の25ミクロ
ン程度のX線造影性を有するのでX線透視下で観察可能
であった。実際に観察された本発明のガイドワイヤーの
X線透視下での視認性はX線造影剤を含有した樹脂被覆
相を有するのでX線造影性は金の30ミクロン相当であ
った。従来、ガイドワイヤーの視認性の問題と細径化し
たときの引張強度が不足するため、先端部のコア径を細
径化するのは設計上限界があった。これに対して、本発
明の合金例−4は1500MPaもの引張強度であり、
安心して細径化に挑戦できた。さらに、ヤング率が6
5.2GPaと低弾性率でありながら、2500MPa
もの3点曲げ強度を有しており、しなやかで強いしかも
反発弾性を有するガイドワイヤーに最適な素材であり、
ガイドワイヤー110として使用した場合、トルク伝達
性、腰強度等について非常に好適な特性を示した。
【0074】実施例4:遠心式ポンプタイプの左室補助
装置 本発明の合金例−2のTi−29.8Zr−12.1N
b−23.6Ta(質量%)を用いて、特開平9−31
3600号公報に記載の遠心ポンプタイプの左室補助装
置120を作製した。図12は、本実施例の左室補助装
置をインペラ部分にて切断した断面図である。図12の
ハウジング121を本発明の合金例−2を用いて作製し
ている。ハウジング内部の血液と直接触れる流路121
aおよびインペラ122には、特開平10−15119
0号公報に記載されるのと同様にしてヘパリンコートを
施した。駆動原理に磁気浮上を用いるために、インペラ
122には永久磁石123が装着されている。ハウジン
グ部は外部電磁石(図示せず)により、永久磁石123
が反発浮上してインペラ122は接触軸なしに回転す
る。インペラ122の回転により、血液は流入ポート
(図示せず)より供給され、流出ポート124より排出
される。従って、ハウジングの部材は非磁性でかつ磁気
を良く通す必要がある。従来、ハウジング121の素材
は形状が複雑なため、非磁性のプラスチック材料が用い
られ検討が進められていた。しかしながら、長期の動物
実験においてプラスチックの経時劣化による流入または
流出ポート部の破損事故が認められた。血管との接続部
として繰り返し応力のかかるポート部の材質は長期の生
体内での使用を想定すると高分子材料では強度劣化の点
で不十分であり、複雑な形状を作製できる金属系素材が
求められた。生体適合性と非磁性の観点から純Ti材が
選ばれ、純Ti合金の切削加工による製作が試みられ
た。しかしながら、純Tiの切削加工性は非常に悪く超
高回転の加工装置を用いても加工に1週間近くの時間を
要し、生産性が悪く価格も相当高価なものになった。こ
れに対して、合金例−2のTi−Zr合金は圧延性及び
機械加工性に優れ板材のプレス加工の導入と切削加工の
組み合わせが可能となり大幅に加工時間の短縮が計られ
た。また、純Tiに比べ耐腐食性が同等以上であり、生
体適合性に優れるので長期の埋め込みにも純Ti以上に
安心である。本発明の左室補助装置120はハウジング
121の加工性が良く量産化とコストダウンにつながる
ことが期待される。なお、インペラ122その他の部品
を本発明のTi−Zr合金で作製することも可能であ
る。
【0075】
【発明の効果】本発明の医療器具は、生体に為害性のな
い金属であるTi,Zr,Nb,Taを主成分とした新
規Ti系合金からなるので、生体適合性に優れ長期の生
体埋め込み材料として用いることができる。さらにT
i,Zrの含量とTa,Nbの組成比を特定範囲に限定
することによって、史上最強の耐腐食性と従来合金にな
い低弾性率を有しつつ、高強度と加工性の確保が可能に
なった。従って、本発明の医療器具の設計自由度は格段
に向上した。これにより従来から生体適合性を主な理由
として、加工の難しいTi系材料が用いられてきた人工
関節、人工心臓、補てつ器具、人工血管、人工角膜、鼓
膜チューブ、ペースメーカー等の医療器具に関して生産
性向上とコストダウンに寄与できる。さらにTaやSn
等のX線透視性を付与する元素の含量を適宜調節するこ
とによって、X線透視下での適度なX線造影性の調節能
を本発明の合金は有しているので、X線透視下に用いら
れるカテーテル類、ステント、ステントグラフト、静脈
フィルター等に好適でかつ適度なX線造影性を付与で
き、改良された医療器具を提供できるので、インターベ
ンショナルラジオロジーと呼ばれるX線透視下の治療の
進歩に貢献できる。
【0076】上記利点に加えて、本発明の医療器具は非
磁性の元素から構成されたTi−Zr系合金であるので
MRIの画像に影響を与えない。即ち、本発明の医療器
具はMRIと組み合わせて使える内視鏡用具、鉗子、手
術器具、医療用クリップ等の医療器具の提供が可能にな
る。現在、研究レベルであるが、MRIインターベンシ
ョンと呼ばれる手技があり、これは、X線の代わりにM
RIの画像をたよりに、MRI下でカテーテルや内視鏡
を用いた診断・治療を行う手技であり、術者のX線被爆
が低減できるメリットから近未来の治療手技として期待
されている。本発明によればMRIインターベンション
に用いられる医療器具を提供でき、医療の進歩に大いに
貢献することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、冠状動脈検査の撮影条件で撮影され
た純金のX線画像であり、X線造影性の数値化を説明す
るための写真である。
【図2】 図2は、図1をパーソナルコンピュータによ
り画像処理して得られた純金のX線造影性の検量線図で
ある。
【図3】 図3は、ヒト冠状動脈のX線造影検査時の左
冠動脈のX線画像であり、液体の造影剤が血液に注入さ
れ、血管が描出されている画像であり、造影剤のX線造
影性の数値化を説明するための写真である。
【図4】 図4は、本発明の実施合金例のMR画像を撮
影したものであり、測定サンプルの配置を示す斜視図で
ある。
【図5】 図5は、図3に示す配置のサンプル長手方向
に対する垂直断面のMR画像である。
【図6】 図6は、図3に示す配置のサンプル長手方向
に対する平行断面のMR画像である。
【図7】 図7は、本発明の実施合金例のアノード分極
試験結果を示す特性図である。
【図8】 図8は、本発明のステントの一実施例の部分
省略断面図である。
【図9】 図9は、図8に示したステントの拡張前の展
開図である。
【図10】 図10は、ステントを挿入状態を説明する
ための説明図である。
【図11】 図11は、本発明の一実施例のガイドワイ
ヤーの斜視部分断面図である。
【図12】 図12は、本発明の一実施例の左室補助装
置の本体遠心ポンプ部をインペラ部分にて切断した断面
図である。
【符号の説明】
4…プラスチック製容器、 11,11a〜11f…純金板、 12…ヒト背骨、 13…ヒト肋骨、 14…ヒト冠状動脈、 40…生理食塩水、 41…ステンレス鋼SUS316L線材、 42…ステンレス鋼SUS304線材、 43…Ti−6Al−4V合金線材、 44…本発明の合金例−1(Ti-34.8Zr-11.8Nb-23.0T
a:質量%)の線材、 45…純Ti線材、 46…Ni−Ti超弾性合金線材、 47…ステンレス鋼SUS631線材、 80…ステント、 81…ステントストラット、 100…血管、 101…バルーン、 102…血管狭窄部、 103…ガイドワイヤー、 104…ステントシステム、 105…ステントマウント部、 110…ガイドワイヤー、 111…コア、 112…被覆樹脂、 120…遠心ポンプ型左室補助装置、 121…ハウジング、 121a…ハウジング内面、血液流路、 122…インペラ、 123…永久磁石、 124…血液流出ポート。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年1月12日(2000.1.1
2)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正内容】
【図7】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正内容】
【図8】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正内容】
【図9】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正内容】
【図10】
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正内容】
【図11】
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図12
【補正方法】変更
【補正内容】
【図12】 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年2月4日(2000.2.4)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 張 濤 宮城県仙台市太白区金剛沢3丁目17番30号 (72)発明者 佐藤 和也 宮城県仙台市青葉区折立1丁目15番10号 日本素材株式会社内 (72)発明者 黒坂 敬 宮城県仙台市青葉区折立1丁目15番10号 日本素材株式会社内 (72)発明者 尾形 雄二 宮城県仙台市青葉区折立1丁目15番10号 日本素材株式会社内 (72)発明者 王 新敏 宮城県仙台市青葉区折立1丁目15番10号 日本素材株式会社内 (72)発明者 金子 隆 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内 (72)発明者 賀曽利 裕 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内 Fターム(参考) 4C059 AA08 4C081 AB13 AB34 AC06 CG03 CG06 CG07 DA01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ti 25〜50質量%、Zr 25〜
    60質量%、Nb5〜30質量%及びTa 5〜40質
    量%からなり、かつTiに対するZrの質量比が0.5
    〜1.5であり、かつTaに対するNbの質量比が0.
    125〜1.5あるTi−Zr系合金からなる部分を有
    する医療器具。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のTi−Zr系合金にお
    けるZrの一部がSnで置換され、かつ該Snの含有率
    が合金組成の5〜10質量%であるTi−Zr系合金か
    らなる部分を有する医療器具。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のTi−Zr系合金にお
    けるNbまたはTaの少なくともいずれか一方がPd、
    Pt及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の
    置換元素で置換されるTi−Zr系合金からなる医療器
    具。
  4. 【請求項4】 さらに構成元素の全質量に対して、0.
    01〜5質量%のPd、Pt及びAuからなる群より選
    ばれる少なくとも一種の添加元素を含む請求項1に記載
    のTi−Zr系合金からなる部分を有する医療器具。
  5. 【請求項5】 請求項1から4のいずれか1項に記載の
    Ti−Zr系合金からなる金属製の機能性本体部分を有
    するガイドワイヤー。
  6. 【請求項6】 請求項1から4のいずれか1項に記載の
    Ti−Zr系合金からなる金属製の機能性本体部分を有
    するステント。
  7. 【請求項7】 請求項1から4のいずれか1項に記載の
    Ti−Zr系合金からなる金属製の機能性本体部分を有
    する心室補助装置。
  8. 【請求項8】 血液と接触する医療器具であって、該医
    療器具は請求項1から4のいずれか1項に記載のTi−
    Zr系合金からなる機能性本体部を有し、かつ血液と接
    触する合金表面にヘパリンが共有結合されている事を特
    徴とする医療器具。
  9. 【請求項9】 該医療器具はガイドワイヤー、ステント
    または心室補助装置である請求項8に記載の医療器具。
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