【発明の詳細な説明】
EA−ウィルス ゲノム配列を含んだ組換えDNAベクター
本発明は、EA-ウィルスゲノム(馬動脈炎ウィルス:equine arteritis virus)
の少なくとも一部と相補的なDNA配列(DNA sequence)(-DNA)を含有する
組換えDNAベクターに関するものである。このDNAベクターは、DNA配列
(-DNA)の3'末端(3'end)に隣接して、非-EAウィルス特異RNAポリメラー
ゼ(non-EA virus-specific RNA polymerase)に対する非-EAウィルス特異
プロモータ(non-EA-virus-specific promotor)を有するものであり、このベク
ターをリニア化(linearization)した後に非-EAウィルス特異RNAポリメラー
ゼにてDNA(-DNA)に転写(transcription)すると、ウイルス寄主細胞(virus
host cell)に感染性(infectious)のある+RNAになる。このDNA(-DNA)
は、前記ゲノムの一部と相補的なDNA(+DNA)配列を含有するDNAあり、
この相補DNA配列(+DNA)は、第1配列(first sequence)と、第1配列の5'
末端に隣接した第2配列(second sequence)とを含有している。第1配列は、S
EQ nr.1で表される配列であるか、あるいは遺伝子工学にて(genetically eng
ineered)得られるその誘導体(infectious derivative)であり、第2配列はSE
Q nr.2で表される配列か、あるいはその機能的な誘導体(functional derivativ
e)である。SEQ nr.1とSEQ nr.2からなる相補DNA(+DNA)を含有する
DNAベクターは、E コリ K12PC2495株(ファバゲンコレクション(Phabag
en Collection)、ウトレヒト大学、私書箱80.056,3508号 TB ウトレヒト、
オランダ)をベクター寄主細胞として維持が可能である。分離(isolation)した後
、非-EAウィルス特異プロモータであるT7プロモーター(SEQ nr.3))と非
-EAウィルス特異RNAポリメラーゼであるT7ポリメラーゼとによってイン
ビトロで転写されると(in vitro transcription reaction)、寄主細胞であるハ
ムスター胎児腎細胞 BHK-21(C13)株(ATCC CCL10)に感染性を有す
る+RNAを製造できて、ウイルス粒子(virusparticles)と、このベクターの遺
伝子工学的に製造された誘導体を生成できる。この誘導体は、成熟核において複
製(replication)することができるRNA転写生成物である。
馬動脈炎ウィルス(EAウィルス)は、現在知られている限りにあっては馬と驢
馬にのみ
見られる天然のウイルスであるが、他の哺乳動物由来の培養細胞株で複製するこ
とができる。EAウィルス染色体(genome)は、RNA鎖(RNA strand)である
。このRNAは、1本の、ポジティブ(+)鎖(single,positive strand)である。
よって、このRNAは、ウィルス寄主細胞に導入されると直ちに翻訳(translati
on)できる。すなわち、寄主細胞のリボゾームはこのRNAに基づいて複数の蛋
白質を製造することができる。このRNA鎖がコードする第1番目の蛋白質は、
EΛウイルスレプリカーゼ(replicase)であり、ポジティブRNA鎖からネガテ
ィブコピー鎖(negatively stranded copy)を生成することができるRNAポリメ
ラーゼである。ポジティブRNA鎖の場合と全く同様に、このネガティブコピー
鎖は、その3'末端に、レプリカーゼに対して非常に選択的な作用ポイント(poin
t of action)として機能するヌクレオチド配列を含有している。EAウィルスの
ポジティブ染色体RNAは、キャプシド(capsids)と膜とによって囲まれている
。他のウィルスにあっては、RNA鎖の末端がウィルス粒子の形成過程において
非常に重要であることが知られている。
EAウィルスのヌクレオチド配列のおよその全貌は、公知である(デブーン、J
.A.他、,ジェイ.ビロル(J.Virol.)、1991年、65巻,2910-2920ページに"SEQ
nr.1"として記載)。この配列は、逆転写酵素(reverse transcriptase)にて得
られるcDNAを含有する多数のクローン(clone)を配列することにより決定さ
れた。cDNAの様々なフラグメント(fragments)がオーバーラップしており、
これにより、ほぼ完全な配列として決定された。。
逆転写酵素は、相補DNAを合成過程で比較的多くのエラーを起こすので、結
果として得られる配列は、必ずしも最初に使用したRNAに対応していない。逆
転写酵素作用は、ポジティブ EAウィルスRNAの5'末端に至る前に、終結
する傾向がある。よって、cDNA(-DNA)は3'末端で不完全な状態となり、
このヌクレオチドの配列決定は非常に困難である。上述したように、RNA鎖の
末端部は非常に重要である。
EAVレプリカーゼもまた、ポジティブ鎖及びネガティブRNA鎖を複製する
過程でエラーを発生させることがあり、そのために、非感染性のウィルスミュー
タント(non-infectious virus mutant)ができることがある。これらのものを、
周知手法にてベクター寄主細胞を形質変換(transform)するために使用されるc
DNA製造時に使用すると、転写された+RNA
が感染性ではないベクターが得られる。
原理的には、cDNAフラグメントのすべてをウィルス+RNA配列に対応さ
せて正確に配置するという遺伝子工学な過程を介してクローンを製造することは
可能であるが、非常に面倒である。事実、現在までのところ実現はしていない。
まず、ヌクレオチドの欠失に関する情報が不足しているからである。第2に、得
られたクローンを+RNAの製造に使用すると、得られた+RNAが感染性を失う
ことがある、という上述したような危険性を有しているからである。第3に、得
られたクローンが、選択したベクター寄主細胞の中で安定に存在するという保証
が全くないからである。例えば、cDNAが発現して得られる蛋白質が、当該ベ
クター寄主細胞に対して有害であるかも知れない。例えば、EAウィルスのゲノ
ムは3つのプロテアーゼをコードしており、これら蛋白質は、ベクター寄主細胞
の新陳代謝を阻害する可能性を持つている。
cDNAフラグメントを段階的に組合せすることは、必ずしも解決策とはなら
ない。例えば、第1遺伝子が存在し第2遺伝子が存在していないと有害(毒性)と
なる旨記載する文献がある。有害である場合には、有害となる遺伝子が活性を消
失するようにクローンを選択し、得られるRNAは感染性を消失する可能性が極
めて高くなる傾向がある。要約すれば、cDNAを組合せすることは、膨大な作
業を必要とするにもかかわらず、成功する見込みは極めて少ない。
本発明の出願人は、E.コリ K12PC2495株(ファバゲンコレクション、ウト
レヒト大学、私書箱第80,056号、3508 TBウトレヒト、オランダ)のSEQ nr
.1に隣接して連続するSEQ nr.2を有し、且つ非-EAウィルス特異プロモー
タを有するヌクレオチド配列を含む組換えDNAベクターは、ベクター寄生細胞
に安定して維持することができ、得られた+RNAはハムスター胎児腎臓由来B
HK-21(C13)株(ATCC CCL10)に感染させることができることを見い出
した。
本出願人は、周知の方法によりDNAの簡便な遺伝子工学な技術的な可能性を
提供するものであり、この方法にて組換えRNAを製造することができる。
SEQ nr.2を使用する配列の代わりに、機能性の誘導体(functional deriva
tive)が使用することができるであろう。機能性の誘導体とは、欠失、付加、若
しくは他のヌクレオチドにて置換された配列を有するものであってウィルス粒子
の形成能を保持しているもの、と理解することができる。
第1番目の配列は、例えば、非-EAウィルス特異遺伝子を導入して、ウィル
ス寄生細胞に新規な蛋白質を発現させるように適応することができるかもしれな
い。また、ウィルスの有害性を改善したり、寄生特異性(host specificity)を改
変することも可能である。
本発明によると、簡単な方法で組換えDNAベクター及び組換えRNAを製造
することができるようになるが、この分野の専門家であれば、新規遺伝子を導入
する際に、感染ウィルス粒子を複製する及び/又は形成する能力が、例えばRN
A複製に必須配列のような、ウイルスが必須とする遺伝子若しくはウィルスゲノ
ムの他の機能部を不能(knock out)にすることによって消失する可能性があると
いう事実を理解しているであろう。
図1は、EAウイルスの公知遺伝子を示している。この図によると、当該遺伝
子がORF1とORF2との間に導入されていることが解る。しかしながら、本出
願人は、ORF2とオーバーラップしている未知の遺伝子、仮にORF2aとする
、を見いだした(SEQ nr.1,ヌクレオチド9734から9937、参照)。換言すれば
、この部位(site)は、本発明に準じたベクター若しくは相補的(complementation
)であることを目的とする別のベクターにORF2a配列が完全提供されていない
限り、挿入には適していない。これらは表現(expression)可能である。
非構造蛋白質1(non-structural protein:NSP1、スニジュデル E.J.他、
ジェイ.ビロル、66巻、7040-7048ページ、1992年刊)をコードするヌクレオチド2
11から987(SEQ1 nr.1)の部位を除去すると、複製能を有するが感染性ウィル
ス粒子の形成能に欠ける組換えRNAをコードする組換えDNAベクターが製造
できる。ここに示したヌクレオチド配列に代えて、新規な遺伝子を挿入すること
ができる。望むならば、インタクトなNSP1遺伝子を新規遺伝子に隣接させて
導入することもできる。好適な実施例によれば、この新規
の遺伝子がNSP1としてヌクレオチド990の後に隣接して挿入されており、ヌク
レオチド985から990にコードされた2つのグリシン残基(residue)(SEQ nr.1
参照)間で、発現蛋白質を切断(cut)する。好適には、ヌクレオチド配列は、新
規遺伝子のヌクレオチド配列の後に提供され、この位置において、発現蛋白質は
、好適にはベアクターのウィルスcDNAに既にコードしているセリンプロテア
ーゼ(serin protease)にて切断される。好適なヌクレオチド配列は、例えば5209
から5268に位置するものである(SEQ nr.1参照)。
本発明によれば、第1遺伝子と第2遺伝子がオーバーラップしたオープンリー
ディングフレーム(overlapping open reading frame)は、ヌクレオチド配列の挿
入によって解かれる(unbraid)であろう。i)オーバーラップ部が複製される、ii)
第1遺伝子中に存在し第2遺伝子の開始コドンATG(ATG start codon)の少
なくとも1つのヌクレオチドが、他のヌクレオチドで置換され、結果とし、a)第
1遺伝子のATGトリプレット(triplet)が第2遺伝子の開始コドンとして作用
しなくなる。及び、b)前記他のヌクレオチドは第1遺伝子の遺伝子発現物が機能
を維持するように選択される。この目的に向かって好適には、コード遺伝子の宿
退(degeneracy)を活用することによって、ヌクレオチド配列の変化がアミノ酸配
列に変化をもたらさないように当該ヌクレオチドが選択される。第1遺伝子と第
2遺伝子を解く(unbraid)ことにより、新規遺伝子を含有する配列が挿入できる
ようになる。新規遺伝子と第2遺伝子とが遺伝子融合(gene fusion product)し
て融合体とならないようにするためは、公知のごとぐ、新規遺伝子と第2遺伝子
との間にストップコドン(stop codon)を挿入する、若しくは内部リボゾームエン
トリーサイト(Internal Ribosomal Entry Site;IRES)に挿入することができ
る。必要であれば、このようなプロモータ配列あるいはIRESを第1遺伝子と
新規遺伝子との間に挿入することもできる。
2つの遺伝子間のオーバーラップの解除は、これら遺伝子がほとんどオーバー
ラップしていない遺伝子間で実施されると、ベクターの全長の伸びを比較的小さ
くできるから、好適である。
加えて、本出願人は、ORF1とORF2aとがインタクトであり、そして、O
RF2内のヌクレオチド10,035からORF7内のヌクレオチド12,545までが除去さ
れているベクターは、複
製能をもったRNA製造物を生成することを見いだした。除去された配列部は、
サブゲノム(sub-genomic)mRNAから発現(expression)可能な新規遺伝子によ
って、部分的または完全に置換される。
遺伝子が機能的に不能化された(knocked out)全ての場合において、その遺伝
子の機能を継承させるため、この遺伝子のインタクトなコピーは本発明のベクタ
ー或いはウィルス寄主細胞内に提供される他のべクターに提供されているかもし
れない。
本発明は、遺伝子工学にて操作された組換えDNAベクターに関するものであ
る。特に、非-EAウィルス特異遺伝子の挿入によって改質されたものを含んで
いる。
本発明は、さらに請求項1において定義される組換えDNAベクターを含有す
るベクター寄主細胞に関し、特には、E.コリ K12PC2495株であって組換え
DNAベクターPEAV030を含有するベクター寄主細胞と、組換えDNAベク
ターpEAV030に関するものである。そして、このE.コリ K12PC2495株
であって組換えDNAベクターPEAV030を含有するベクター寄主細胞は、オ
ランダのバールン(Baarn)の寄託機関(Centra albureau voor Schimmelcultures)
に1996年7月11日に受託番号第760-96号として寄託されている。
さらに、本発明は、SEQ nr.2に従った若しくはその誘導体のDNA配列に
関するものもある。SEQ nr.1と、このSEQ nr.1に対してSEQ nr.2若し
くはその誘導体の5'末端が隣接して連結するDNA配列(+DNA)を含有したD
NAベクターが含まれと、ベクター寄主細胞内で維持することができる。そして
、非-EAウィルス特異RNAポリメラーゼをコードする非-EAウィルス-固有
プロモータと、非-EAウィルス特異NAポリメラーゼと相まって、ウィルス寄
主細胞に感染性を有するRNAとなり、そしてウィルス粒子となる。
少なくともウィルス寄主細胞内での複製のために重要なこのオリゴヌクレオチ
ドを改質することにより、例えばウィルス粒子内の+RNAのエンキャプシデー
ション(encapsidation)を妨害(impede)することができるであろう。
本発明は、SEQ nr.2を含むDNA配列と、これに相補的な配列、およびこ
れらのフラグメント配列から構成される群から選択されるオリゴヌクレオチドを
、鎖延長反応(chain extension reaction)のプライマー(primer)として使用する
ことに関するもでもある。
このようなプライマーは、ポリメラーゼチェインリアクションア法(=PCT
法:Polymerase Chain Reaction technique)によるウィルス検出に利用可能であ
り、そして、特にはウィルスゲノムの完全DNAコピーを作成することにも利用
可能である。
RNAは、本発明の組換えDNAベクターのDNA配列(-DNA)を転写する
ことより入手できるであろう。、この転写はインビボの系で実施されるが、好適
な実施例にあっては、インビトロの系でも実施できる。この場合には、適当な非
-EAウィルス特異プロモータを使用する。得られたRNAは、ウィルス粒子と
薬剤の製造に有益である。
したがって、本発明は、ウィルス粒子を得るための2つの優れた方法に関する
ものである。第1実施例の方法は、ウィルス寄主細胞にRNAを導入して細胞培
養し、ウィルス粒子を周知方法にて分離するものである。
第2の好適実施例は、組換えDNAベクターをウィルス寄主細胞に導入しつい
で細胞培養し、ウィルス粒子を周知方法にて分離するものである。好適には、こ
の組換えDNAベクターには、寄主細胞の非-EAウイルス特異ポリメラーゼが
認識する非-EAウイルス特異プロモータが組み込んである。これらの現象は、
ウイルス寄主細胞内で自然に発生するかもしれないしそうでないかもしれない。
本発明は、本発明となるRNA成いは上述した方法で得たウィルス粒子を感作
(transfect)したウイルス寄主細胞に関するものである。
最後に、本発明は、薬剤の製造のための2つの方法の提供に関するものである
。
組換えRNAを含有する薬剤組成物を調整するための第1の方法は、本発明と
なる組換
えDNAベクターをベクター寄主細胞内にて増幅(multiply)する。このDNAベ
クターの転写によって、組換えRNAを製造することができる。この組換えRN
Aをウイルス寄主細胞内に導入し、望むなら、分離できる組換えRNAを含有す
るウィルスを製造することができる。このようにして得られた組換えRNAを、
安全なキャリヤ(carrier)または賦形剤(excipient)とともに処理をして、薬物組
成物となす。
第2の製法は、本発明の組換えDNAベクターをベクター寄主細胞内で増幅し
、周知方法にて分離する。得られた組換えDNAを、薬学的に安全なキャリヤま
たは賦形剤にて処理して薬剤組成物となす。この場合、組換えDNAベクターに
、ウィルス寄主細胞の非-EAウイルス特異ポリメラーゼによって認識できる非-
EAウイルス特異プロモータが備えてあると、好適である。これらの現象は、ウ
イルス寄主細胞内で自然に発生するかもしれないしそうでないかもしれない。
本発明を添付の図面を利用して説明する。この図は、本発明に従った組換えD
NAベクターのうちEAウイルスに固有な部分と、その構築を示した略図である
。
この図は、アビアンミエロブラストシスウィルス逆転写酵素(Avian Myeloblas
tosis Virus reverse transcriptase)で得た12個のcDNAクローンを使用して
、EAウィルスのGenomicRNAのcDNAコピーのほぼ完全な配列を構築した
ことを示している。図面の上方に図示されたクローンと遺伝子(オープンリーデ
ィングフレーム(open reading frames))は、デンブーン、J.A.他によって詳細に
説明されている(ジェイ ビロル誌、1991年、65巻,2910-2920ページ)。制限マ
ップ(restriction map)が、クローンがオーバーラップしているcDNA部分を
切り出すために用いた制限酵素(restriction enzyme)を示している。図面の右側
に示されているクローン108は、SEQ nr.1から得られる140個のヌクレオチド
でそのうちの25個からなるポリ-A-テール(poly-A-tail)を含み、周知の様式で
伸びている。
5'末端において、未知数のヌクレオチドが逆転写酵素の早期終結(premature
termination)によって脱落抜け落ちていた。RNA配列の直接決定法(direct R
NA sequence determination)より、16のヌクレオチドが決定できた。デューマ
ス J.B.他により記述された
方法(核酸研究、1991年版、19巻、5227-5232ページ)によると、ヌクレオチド17
が得られた。この配列を、5'末端部の配列の一部と共に合成し、公知の方法に
てクローンに付加された。
このように得られたEAウイルスのcDNA(SEQ nr.2+1)と、T7プロモ
ータ配列(SEQ nr.3)を、(5')SEQ nr.3−SEQ nr.2-SEQ nr.1(
3')となるようにPCR法(polymerase chain reaction)によって貼りつけた。
この反応中に、5'末端に、NdeIとNotIの特異制限部位(unique restriction sit
e)を含むヌクレオチド配列15,491-15,511(参照:SEQ nr.4)を貼りつけた。
3'末端には、XhoIの特異制限部位をコードしているヌクレオチド配列12,845-12
,851を付加した。
この構造体(construct)を、ベクターpUC18(EMBLデータベースアクセッ
ション(database accession)L08752)の、EcoRI特異制限部位とHindIIIの特異制
限部位間に導入した。切断してこれらの制限部位をブラント状態(blunt)にし、
当該構造物を貼りつけ(ligation)することにより、環状ベクターpEAV030(S
EQ nr.4)を得た。
SEQ nr.1の配列番号7491のTがCに置換されたシングルポイントの変異(s
ingle point mutation)が起きていると、RNAは非感染性になる。この事実は
、安定した組換えDNAベクターが得られたとしても、感染性のRNAとして得
ることができない危険性が非常に高いこと示している。
本発明を、以下の2つの実施例を利用して説明する、これらの実施例に制限さ
れるものではない。分子生物学用試薬(molecular biology products)と細胞培養
用試薬類(cell culture products)は、いずれもライフテクノロジー社(Life Tec
hnology)(ブレダ、オランダ)の標準的なものを使用した。
例1
pEAウイルス030(pEAV30)+RNAの細胞株感作
a)pEAV030プラズミドDNAのリニア化(linearization)
3'末端にポリAテールを持つRNA鎖を製造するため、前記プラズミドをXho
I制限酵素部位を用いて直鎖状にした(Iiniarized)。pEAV030プラズミドDN
Aを、本発明に従って大腸菌 PC2495株を公知の方法で分離し(アルカリ加水
分解法:シャムブルック、J.、フリッチ、E.F.、マニアチス、T.、1989年、
分子クローン技術、実験マニュアル、コールドスプリングハーバーラボラトリー
、ニューヨーク、アメリカ:以下、"マニアチス他"という)、DNA濃度を分光学
的にて算定した。
pEAV030プラズミドDNA2μgを、10ユニットの制限酵素XhoI(このベク
ターを1度だけ切断する)で消化(digestion)することにより直鎖化(開環)した。
(全容量:20マイクロリットル;バッファー条件:10mMトリス-HCl(Tris-HCl)緩衝
液(pH7.9)、10mMMgCl2、1mMジチオスレイトール(dithiothreitol)(DT
T)、100マイクログラム/ml牛血清アルブミン(BSA);インキュベーション:3
7℃、2時間)。
反応液1μlを用いて、消化が完全であることをチェックした(DNAのアガ
ロースゲル電気泳動法(agarose gel electrophoresls)、マニアチス他参照)。残
り19μlにアクアビデストト(aqua bidest)80μlを加え、そして20mg/mlプ
ロテイナーゼK溶液、1μlを加えた(インキュベーション:37℃、1時間)。
リニア化されたプラズミドDNAは、フェノール/クロロホルム/イソアミルア
ルコール混合液100μlにて2回抽出し、公知のメタノール沈殿法にて濃縮した(
マニアチス他参照)。遠心分離(15分、15,000xg)で得たDNAペレットを70%エ
タノール500μlで洗浄した後、得られるプラズミドDNAを全量15μlの水け
ん濁液とした。
b) インビトロ系での転写(in vitro transcription)
インビトロ系において、T7RNAポリメラーゼを用い、直鎖化したDNAか
らRNAを転写するために、以下の成分をまとめて加えられた。
-XhoI-リニア化pEAV030DNA(前記参照)、15μl
-1mg/mlBSA(ライフテクノロジー社)、5μl
-50mMDTT、5μl
-リボヌクレオチド混合物(ATP、CTP、GTP、及びUTP、それぞれ10
mM)、5μl
-10mMキャッピング アナローグ(capping analogon)(m7G(5')ppp(5')
G)(ライフテ
クノロジー社)、5μl
-5倍濃縮T7転写緩衝液(transcription buffer):(200mMトリス-HCl緩衝液
(pH8.0)、40mMMgCl2、10mMスペルミジン(spermidine)、125mMNaCl)
(ライフテクノロジー社)、10μ
-8units/μlRNAse インヒビター(RNA-ガード;ファーマシア(Pharmac
ia)、ベルゲン・オプ・ズーム(Bergen op Zoom)、オランダ)、2.5μl
-8units/μl T7-RNA-ポリメラーゼ(ライフテクノロジー社)、2.5μ
l
転写反応液量(transcription volume);50μl
反応条件:37℃、1時間。
転写反応液1μlを用い、公知の方法で転写反応が完結していることを確認し
た(DNAのアガロースゲル電気泳動法、マニアチス他参照)。本反応で得られた
RNA量は、10μgと推定された。
c)細胞培養
BHK-21培養細胞株(ハムスター、ATCC CCL10)、HeLa株(ヒト、AT
CC CCL-2.1)及びL株(マウス、ATCC CCL10)を、10の胎児牛血
清(foetal calf serum)、常量の抗生物質バンコマイシン(vancomycin)と常量の
ゲンタマイシン(gentamycin)を加えたDMEM培地を用いて37℃で培養した。こ
の細胞培養法自体は公知である。
転写反応は、細胞密度が60-80%となるように注意した。
d)エレクトロポレーション(electroporation)とウィルスハーベスト(virus harv
est)
イクイバイオイージージェクトプラスタイプ(EquiBio Easy-Ject Plus)のエレ
クトロポレーション装置(ユーロジェンテック社、セライング、ベルギー)及び付
属セル(cuvette)(直径0.4cm)を使用して、成熟細胞の核にRNAを導入した
。
細胞をPBS(137mMNaCl,27mMKCl、8mMNa2HPO4、1.5mMKH2PO4、p
H7.2)で洗浄し、トリプシン溶液を添加(ライフテクノロジー、1ml/75cm
2培養ディッシュ表面積)、37℃、3〜5時間インキュベートして、培養皿(cultu
re dish)から細胞を分離させた。この方法自体は公知である。
細胞懸濁液1ml当たり、上記DMEM培地9mlを加え、細胞を完全に懸濁
(resuspen
ded)させた。遠心分離処理(10分、3000xg)して細胞をペレット状とし、オリジナ
ルの細胞懸濁液1ml当たり10mlのPBSを加えて懸濁した。遠心分離処理に
て細胞を再びペレット状とし、107細胞/mlPBSに調整した。この時点から先
は氷保存した。
前記細胞懸濁液0.6mlと転写反応剤(transcription reaction)49μlとの
混合物を、エレクロロポレーションのセル内に入れた。前記のエレクトロポレー
ション装置を使用して85OV、2310オームで25マイクロファラットの2つの連続
的なパルスを与えた。ついで、細胞懸濁液をDMEM培地と混合し、培養ディシ
ュ内にて39.5℃でインキュベートし、様々な公知のウィルス分析に使用した。
前記各培養細胞系をエレクトロポレーション処理した後、20-30時間転写処理
した細胞培地を栄養培地として保存することにより、それぞれ感染性ウィルスを
得ることができた。
最後に、本発明となるベクターの転写物は、自然界でウィルス寄主細胞として
作用しない細胞株にて複製することができ、天然ウィルス寄主細胞株に対して感
染性を持つウィルスとして製造されることが解った。
例2
組換え表現ベクターの構築(construction of a recombinant expression vect
or)
緑蛍光蛋白質(Green Fluorescent Protein:GFP)の遺伝子を、適切な配向性
(orientation)を持たせ(すなわち、GFP遺伝子の+ストランドがDNAべクタ
ーのEAV部分の+DNAに存在するように)、pEAV030の一部であるSEQ
nr.4のヌクレオチド12303-12398上のHindIII制限部位に挿入した。制限部位は
、ORF7の直前に存在する(図1参照)。
この挿入により、ORF6(EAVの膜蛋白質(membrane protein)のリーディ
ングフレーム(reading frame))は妨害をうけ、ORF7(EAVのヌクレオキャ
プシド(nucleocapsid)蛋白質をコード化)の翻訳を阻止される。遺伝子的に変異
したベクター(pEAVGFP7)は、転写能と複製能を具有している(GFP表
現を含む)、2つの重要な構造蛋白質が製造できないために、ウィルス製造能と
ウイルス増殖能を持っていない。
a)中間構造物(intermediate construct)pM115128の構築(construction)
pEAV030内にはいくつかのHindIII制限部位が存在するため、SEQ nr.4
の12303-12308部にあるHindIII制限部位に、GFP遺伝子を直接挿入することは
不可能であった。よって、前記HindIII制限部位に特異的な中間構造物(プラズミ
ド)として製造された。この構造物(pM115128)は、EcoRI(SEQ nr.4の11488
-11493部)と、XhoI(SEQ nr.4のヌクレオチド12,845-12,851部)を使用してp
EAV030を切断することにより、製造した。これらはともに特異制限部位ある
。得られたDNAフラグメントは、ウィルスゲノムの3'末端に対応しており、
且つSEQ nr.4の12303-12308部にある前記HindIII制限部位を含有している。
EcoRI-XhoIのDNAフラグメントは、pEAV030プラズミドDNA1μを,制限
酵素EcoRIとXhoIのそれぞれ10ユニットで消化することにより得られた(全容積:2
0μl;バッファー条件:10mMトリス-HCl緩衝液(pH7.9)、10mMMgCl2、1m
Mジチオスレイトール(DTT)、100μg/ml牛血清アルブミン(BSA)、;イ
ンキュベーション:37℃、2時間)。
消化反応液を公知の方法で分析し(DNAのアガロースゲル電気泳動、マニア
チス他参照)、そして、DNAフラグメントの必要量を公知のアガロースゲルよ
り純粋し、アクアビデスト10μlとした。
pM115128の基本ベクター(basic vector)は、プラズミドpブルースクリプト
SK-pBluescript SK)(pSK、ストラタゲン(Stratagene)、ラホーラ、アメ
リカ)であり、この1μgをEcoRIとXhoIで(前述のように)切断し、アガロースゲ
ルから純化し、全量10μlのアクアビデストにした。
前記pEAV030から得られたEcoRI-XhoI DNAフラグメント、及びEcoRI-X
hoIで切断したベクターpSKを、T4DNAリガーゼ(ligase)を使用してpM1
15128に貼りつけた(ligate)。その反応条件をつぎに示す。
-EcoRI-XhoIで切断、精製した純pSKベクター,1μ
-pEAV030から精製した純EcoRI-XhoIDNAフラグメント,6μl
-5倍濃縮リゲートバッファー(250mMトリス-HCl(pH7.8)、50mMMgCl2
、50mMDTT、5mMATP、125μg/mlBSA)、2μl
-T4DNAリガーゼ(1unit/μl、ライフテクノロジー社),1μl
20℃で1時間インキュベートした後、反応混合を公知の方法でE.コリ PC249
5株にトランスフォームした。トランスフォームされたバクテリアを、抗生物質
であるアンピシリン(am
picillin)、及びその耐性遺伝子(resistance gene)を含有したベクターとともに
、培養した。ついで、公知の方法でバクテリアよりプラズミドを分離し、pEA
V030から得たEcoRI-XhoIDNAフラグメントに対して制限酵素でチェックした
。
b)中間構成物(intermediate construct)pM115128内へのGFP遺伝子の挿入
pM115128の特異的HindIII制限部位(SEQ nr.4の12303-12308部)に、GF
P遺伝子を含有するDNAフラグメントを挿入するため、制限酵素Asp718とEcoR
にてプラズミドpGFP,1μg(クロンテク社、パロアルト、アメリカ)を消化
し、GFP遺伝子を含有するDNAフラグメントを分離した。この方法は公知で
ある(上述した方法に類似するものである)。
ゲルよりDNAフラグメントを精製する前に、頑固な末端部を、E.コリ D
NAポリメラーゼIの大きな(または“クレノウ(Klenow)")フラグメントにて処
理してなまくらにした。この方法自体は公知である。アガローズゲルより精製し
た後、アクアビデスト10mlに再び混合した。
pGFPから得たAsp718-EcoRI DNAフラグメントと、HindIIIを含有する
ベクターpM115128を公知の方法に従いそしてT4DNAリガーゼを使用した貼
りつけ、pM115128/GFPとした。この反応混合物を、E.コリ PC2495株に
トランスフォームし、ついで、アンピシリン存在下で培養し、前記ベクターはア
ンピシリン耐性遺伝子を含む。プラズミドをバクテリアより分離し、制限酵素を
使用してGFP遺伝子の存在とその適切な配向性を確認した。
c)GFP遺伝子のpEAV030への逆クローニング
pM115128/GFPの遺伝子を、元のpEAV030に戻すため、EcoRIとXhoIの
上述した特異制限を使用した。これら酵素を使用して、pM115128/GFPから
、GFP遺伝子プラス側部(nanking)EAV配列のDNAフラグメントを得、こ
のグラグメントを前記pEAV030の特異制限部位と、前記EcoRIの特異制限部位
との間に逆に貼りつけた(back-ligated)。
例1の方法において(d)の条件を使用して、DNAベクターのRNA逆転写物
を、BHK-21細胞内に導入した。すると、RNA逆転写物が複製されて、GF
Pが表現した。ORF
6とORF7とを無効化処理すると、ウィルス粒子を形成することができなかった
。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12N 7/00 C12Q 1/68 A
C12Q 1/68 C12N 5/00 B
//(C12N 1/21
C12R 1:19)
(72)発明者 ブレーデンベーク ペトラス ジョアンネ
ス
オランダ国 エヌエル―2403 エイチゼッ
ト アルフェン アー/デー リヨン コ
ニングスマンテル 14
(72)発明者 デン ボン ジョアン アリー
アメリカ合衆国 53705 ウィスコン州
マディソン ブロディ ドライブ 5327
アパルトメント 104
(72)発明者 ヴァン ディンテン レオニー クリステ
ィーナ
オランダ国 エヌエル―2343 ティーダブ
リュー エグシュトゲスト リダースポー
ルラーン 69
(72)発明者 ヴァセナール アルフレッド レオナルド
マリア
オランダ国 エヌエル―2396 シーケー
クーデケルク アー/デー リヨン リダ
ーホフラーン 67
(72)発明者 シニョデール エリック ジョン
オランダ国 エヌエル―2411 ケイエス
ボデグラーベン ベセムシンゲル 9