JP2000510845A - ヒト髄膜炎菌血症のためのbpiタンパク質産物の治療用途 - Google Patents
ヒト髄膜炎菌血症のためのbpiタンパク質産物の治療用途Info
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Abstract
(57)【要約】
治療上有効な量のBPIタンパク質産物が投与される工程を含む、ヒト髄膜炎菌血症の処置ための方法及び物質が提供される。
Description
【発明の詳細な説明】
ヒト髄膜炎菌血症のためのBPIタンパク質産物の
治療用途
発明の背景
本発明は一般に、髄膜炎菌血症に罹患しているヒトを、殺菌性/透過性増強(
BPI)タンパク質産物の投与によって処置する方法及び物質に関する。
髄膜炎菌血症は、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)(
髄膜炎菌としても知られている)によって引き起こされる感染性疾患であり、こ
の疾患では細菌及びその産物が体循環中に認められる。その臨床経過は、比較的
穏やかなプロセスから、重篤且つ激症性の感染の突然の発症と極めて迅速な進行
(最初に発熱してから死亡に至るまでがわずか12時間程度の短時間である)の
ものまで、多岐にわたっている。後者の、激症型疾患は、ナイセリア・メニンギ
チジスに感染した患者の約10%で発症している。患者は正常の精神状態ならび
に発熱及び点状出血のみの症状を呈しうるが、速やかに血行動態の虚脱、気道の
喪失、及び昏睡に、重篤な凝固障害、脈管内血栓症及び臓器不全を併発して見舞
われることがある。あるいは、この疾患の後期の段階にあっては、患者は意識不
明となり表象時にも無応答となることがある。
急性髄膜炎菌性疾患に対する死亡率は、抗生物質及び集中治療施設における技
術的進歩にも関わらずここ数十年にわたり有意に変化していない。一つの既往の
研究によって、疾患の重篤さを調整した後でも、髄膜炎菌感染による死亡率は3
0年にわたって変化していなかったことが確認された[Havensら、Pedi
atr.Infect.Dis.J,8巻、8〜11頁(1989)]。1986年から1991年に至るまでの、
髄膜炎菌感染についての別の予見的研究[Powarsら、Clin.Infect.Dis.,17巻、
254〜261頁(1993)]では、ナイセリア・メニンギチジスへの感染が細菌学的に立
証された113名の患者の観察が行われ、このうち15名(13%)が死亡した
ことが報告された。かかる13%の死亡率は、チリの流行病(Chilean epidemic
)において50年前に報告されていた16%の死亡率と明瞭には変化していなか
った。
「流行病」は、一集団にわたり伝播する単一細菌クローンに起因する疾患の発
生率の増加として定義される。髄膜炎菌血症の流行病は、発展途上国において蔓
延しているが、米国では、1940年代以来国家的な流行病は発生していない。
しかしながら、髄膜炎菌血症の地方病的発生の有意な増加が、局地的な流行病と
併せて1990年中期から起こっている。この疾患は常に季節性であり、発生率
のピークは冬季終盤から春季の初旬に認められる。すべての症例の60%から9
0%までが小児に起こり、2歳以下の小児に発生のピークが認められる。
ナイセリア・メニンギチジスは、被包性のグラム陰性球菌であり、典型的には
対をなして存在し(双球菌)これは髄膜炎菌血症を含む重篤な疾患のスペクトル
に対応するものである。髄膜炎菌は、それらの被包の多糖に基づいて9つの血清
群(serogroup)に分けられ、血清群A、B、C、Y、及びW135が臨床性疾患の
主要なものの原因となる。これらの血清群はさらに、外膜タンパク質の発現に基
づき抗原性の異なる血清型に細分されている。各血清群に属する特異的なクロー
ンはさらに、タンパク質電気泳動のパターンによって線引きすることができる。
髄膜炎菌の外膜はリポ多糖(LPS)の一つの型、すなわち「リポオリゴ糖(LOS)
」も含み、これはグラム陰性細菌の外膜共通成
分である。
髄膜炎菌は、個体の5〜15%の鼻咽頭にコロニー形成しているが、それらコ
ロニー形成したもののうちのわずか小分画のみが侵襲性の疾患に関わるのである
。コロニー形成から侵襲性疾患への移行には、多くの因子が関係しており、完全
に理解されてはいない。ウイルスの上気道感染の存在は、これも冬季終盤から春
季の間にピークを迎えるが、鼻咽頭の上皮を損傷し、変化を起こした障壁を通過
する細菌の移動を許容することがある。2歳未満の小児では、髄膜炎菌の多糖被
包に対して生産された抗体の発生が不充分であることが、この世代における高い
侵襲率の原因となっていると考えられる。
髄膜炎菌によって引き起こされる疾患のスペクトルには、髄膜炎、関節炎、心
膜炎、心内膜炎、結膜炎、眼内炎、気管感染、腹部及び骨盤感染、尿道炎、及び
慢性菌血症症候群が含まれる。小児科の集中治療室(PIUC)への入院を要する主
な臨床的症候群は、髄膜炎及び髄膜炎菌血症(髄膜炎を併発するかまたは併発し
ない)である。臨床的表象は、感染及び炎症性の後遺症が主に局在している身体
の区画に依存する。
髄膜炎菌血症とは対照的に、髄膜炎は細菌が髄膜の区画に局在した疾患であり
、髄膜の刺激状態(irritation)に一致した兆候を伴うものである。臨床的に、
髄膜炎菌性の髄膜炎は髄膜炎菌血症と劇的に相違するが、他の髄膜炎の型と判別
可能であり、培養または免疫学的アッセイによってのみ区別化されうる。全身性
の血行動態的兆候、重篤な凝固障害及び脈管内血栓症は、顕著には現れない。適
正に処置されれば、死に至ることは希であり、そして知覚神経性の聴力障害を含
めた神経性の後遺症も一般的ではない。髄膜炎菌性の髄膜炎の診断及び処置への
アプローチは、細菌性髄膜炎の他の型のものと同様である。
点状出血及び全身症状のみが顕在する場合に、疾患経過の初期の間に患者を調
べると、例えば、エンテロ・ウイルス、ロータ・ウイルス、RS(respiratory
syncytial)ウイルス,ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenza
e)、もしくはストレプトコッカス・ニューモニエによる感染;連鎖球菌咽頭炎
;ロッキー山斑点熱、ヘーノホ・シェーンライン紫斑病;または悪性腫瘍を含む
、小児において発熱及び点状出血が表れる数多くの疾患によって、髄膜炎菌血症
の診断は困難を極めることがある。しかしながら、髄膜炎菌性疾患の予後は迅速
な診断と抗生物質の設定に負うところが大きいので、髄膜炎菌血症の疑いに際し
ては、積極的に追跡し、処置を設定する必要がある。これは、特にヘモフィルス
・インフルエンザによる髄膜炎が、この細菌に対するワクチンの使用に起因して
米国で激減していることによる。
他のグラム陰性細菌感染と同様に、重篤な髄膜炎菌血症の病因は、細菌上の、
細菌に会合した、または細菌から遊離される内毒素によって開始される。この細
菌性内毒素は、プロ炎症性のサイトカインカスケードを活性化する。重篤な髄膜
炎菌血症において、LALアッセイにより循環内に検出される細菌性内毒素のレベ
ルは、他のグラム陰性細菌感染にて発表されているレベルよりも50〜100倍
ほどの高さであることが発表されている。細菌ならびに、早期低血圧及び毛細血
管漏出を媒介しうるアナフィラトキシンを生産している、体循環内のそれらの内
毒素によって、補体のカスケードも活性化される。
これまでの研究において、内毒素[Brandtzaegら、J.Infec.Dis.159巻、195
〜204頁(1989)]、TNF[Van Deurenら、J.Infect.Dis.172巻、433〜439頁(19
95)]、IL-6[Van Deurenら、前出]、及びフィブリノゲンの血漿レベルは、プ
ロトロンビン
時間(PTT)[McManusら、Critical Care Med.21巻、706〜711頁(1993)]と同
様に、髄膜炎菌血症患者で疾患の重篤さ及び予後に関連するものであるが、その
相関性は不明確である。内毒素、TNF、IL-1及びIL-6に対するランク付値をまと
めて、患者の予後を正確に反映する評点が得られることが示唆されている[Bone
、Critical Care Med.22巻、S8〜S11(1994)]。
重篤な凝固障害及び脈管内血栓症は、進行が速く、そして髄膜炎菌血症患者で
四肢及び生命の維持に重要な器官の虚血障害を導く可能性がある。呼吸不全、腎
不全、副腎不全及び昏睡が発生するかもしれない。点状出血及び紫斑が広範囲に
生じて、集密となることがあり、この場合「電撃性紫斑病」なる語が適用されて
いる。重篤な疾患に罹患した髄膜炎菌血症患者において、凝固阻害剤であるアン
チトロンビンIII、活性型プロテインC、及びプロテインSの有意な減少もまた
、明らかにされている。これらの減少は、凝血促進剤に比較して抗凝固因子の相
対的な不均衡をもたらしうるものであるが、あらゆるクラスの因子の一般的な消
費ももたらすのかもしれない。また、量的な欠乏は、血液の希釈及び毛細血管の
漏出ももたらすかもしれない。
重篤な心機能障害が、しばしば入院時に認められるか、または24時間以内に
発症することがある。駆出率が20%以下になることが多い。心機能障害は、1
)剖検材料の大半に様々な程度で存在する心筋炎;2)心筋抑制物質;3)脈管
内血栓症及びそれに続く心筋虚血;4)不整状態の心室を結果的に引き起こす心
筋間質性浮腫;5)低酸素心筋障害;及び代謝異常を含む数多くの因子に追随す
るものであるのかもしれない。
低血圧及び循環不全は、多因子性であり、脈管内容積の減損、毛細血管漏出、
根深い血管拡張(アナフィラトキシン、酸化チッ素、ヒスタミン、及び他のメデ
ィエータに二次的なもの)、
ならびに心筋の性能の減衰からの重大なる寄与を受けている。低血圧、脈管内血
栓症、及び直接的な炎症性損傷、に二次的な臓器損傷が、表象次第明示されるこ
とがある。
激症性疾患は、副腎の出血、副腎皮質の壊死、そして速やかなる死亡を伴うこ
とがある(ウォーターハウス・フリーデリックセン(Waterhouse Friederickson
)症候群)。しかしながら、このような患者では正常またはむしろ上昇した全身
のコルチゾルレベルを呈することが報告されているので、大規模な副腎出血でも
、必ずしも副腎の機能不全が提示されるわけではない。迅速なる進行性疾患に罹
患した少数の患者においては、副腎の出血は、(レベルの上昇が予測される状態
にあって)正常または正常以下の血清コルチゾルレベルを伴う。代謝性アシドー
シス、低血糖症、低カルシウム血症、及び低マグネシウム血症などの、他の代謝
上の攪乱も、しばしば発生する。
重篤な疾患に罹患した患者は、高い死亡の危険性にさらされている。かかる患
者が生存した場合、創面切除及び/または切断とそれに続く皮膚移植法の施術を
必要とする、広範囲にわたり組織及び骨破壊を含む重篤な病的状態に見舞われる
ことが多い。ある研究[Powarsら、前出]では、電撃性紫斑病(重篤な髄膜炎菌
血症の著病)の28名の患者のうち、14名(50%)の患者が死亡した。生存
した14名の電撃性紫斑病患者のうち、10名は変形自己切断を伴う軟組織壊疽
に蝕まれていた。別の報告では[Genoffら、Plastic Reconstructive Surg.89
巻、878〜881頁(1992)]、髄膜炎菌血症とそれに続く電撃性紫斑病に罹患した6
名の患者のうち、4名の患者が高度の切断を必要としていた(手首もしくは上腕
、または足首もしくは下肢)。Genoffらは、生命を脅かす疾患の急性期を経た後
でさえ、余病が継続し、そしてもっと高いレベルで切断及び複数移植の施術
をやりなおす必要が生じていることを認めている。Sheridanら、Burns、22巻、5
3〜56頁(1996)は、電撃性紫斑病を伴う髄膜炎菌血症が50%の死亡率を記録し
、生存者に対して大切断術が高い割合で行われたことを確認している。生存患者
らの経験によれば、皮膚、皮下組織ならびに下部の筋肉及び骨に関わる創傷の完
全な肥厚が残ることが多く、生存患者の半分は、大切断術を必要とする。
髄膜炎菌性の疾患に罹患した患者はまた、神経性の後遺症も発症し、これには
脳波図(EEG)の異常、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンの異常、聴力障害
及び神経心理学的検査における欠損が含まれる。ある研究では、急性の、細菌学
的に確認された髄膜炎菌性疾患に罹患している99名の続発性小児及び成人患者
を追跡調査し、発病後1年間にわたり、神経性の後遺症について調べた。[Naes
sら、Acta Neuro.Scand.89巻、139〜142頁(1994)。]低血圧及び/または斑状
出血を伴うが髄膜炎の兆候は認められない髄膜炎菌血症に罹患した患者の範疇に
おいて、12名の患者中、神経性の後遺症が5名に観察された。低血圧及び/ま
たは斑状出血を伴い、そして髄膜炎の兆候が認められる髄膜炎菌血症に罹患した
患者の範疇において、13名の患者中、神経性の後遺症が7名に観察された。
臨床的予後は、髄膜炎菌血症患者の大きなコホート(cohort)で元来同定され
る危険因子の評点によって妥当な予測を下すことができる。1996年に、Stiehm及
びDamrosh、J.Pediatrics、68巻、457〜467頁(1966)は、髄膜炎菌感染の63例
を精査し、そして劣悪な予後を伴う臨床的特徴を認めた。劣悪な予後の因子には
、入院前12時間以内の点状出血の発症、髄膜炎がないこと(脳脊髄液(CSF)W
BC<20)、ショック(収縮期血圧<70)、正常値または低値の白血球数(WB
C<10,000)、及び正
常値又は低値の赤血球沈降速度(10mm/時間)が含まれる。これらの判定基準
に3つ以上入ることが、劣悪な予後に結びついていた。Niklassonら、Scand.J
.Infect.Dis.、3巻、17〜25頁(1971)は、1971年にこれらの危険因子を立証し
、そして劣悪な予後の因子のリストに40℃以上の熱と血小板減少症とを付け加
えた。Stiehm及びDamroshの判定基準とNiklassonの判定基準の特異的な予測能が
、1993年にMcManus[McManusら、前出]によって連続的に調べられた。この調査
によれば、初期の判定基準によって予測されるよりも死亡率は有意に低く、凝固
障害の有無に、より関連しているようであった。
最も広く使用されている髄膜炎菌敗血症の評点システムは、1987年にSinclair
ら、Lancet、2巻、38頁(1987)によって発表され、グラスゴー髄膜炎菌敗血症予
後スコア(Glasgow Meningococcal Septicemia Prognostic Score)として知ら
れているものである。その有用性は、簡易臨床指標への依存に由来し、これは野
外で、または搬送中の患者の仕分けを容易ならしめるものである。ポイント数は
、以下の7つのパラメータに対する定格の尺度にて与えられる。すなわち、
(1)年齢<4歳で収縮期血圧<75mmHg、または、年齢>4歳で収縮期血圧<
85mmHg(3ポイント);
(2)皮膚/直腸温度差>3℃(3ポイント);
(3)修正昏睡スケール<8、または1時間で3ポイント以上の悪化(3ポイン
ト);
(4)評点前時間での悪化(2ポイント);
(5)髄膜炎がないこと(2ポイント);
(6)紫斑の拡張または点状出血の蔓延(1ポイント);及び
(7)塩基欠乏(base deficit)>8(1ポイント)。従って、グラスゴースコ
アの最高点は15ポイントである。
髄膜炎菌血症は、迅速且つ激症性の悪化によって特徴づけられることが多いの
で、用心深く監視することが命じられる。大半の患者は直接集中治療室へ入院す
べきであり、ここでは観血的監視を設定し支持療法を提供することができる。監
視及び実験室での評価に特に加えられるものとして、CSF、血液培養、皮膚病変
部及び咽頭スワブ由来試料の取得を挙げることができる。しかしながら、CSFは
、患者の臨床的状態がその手技に耐えるに足るほど安定している場合に限ってし
か、取得すべきではない。血液培養も行うべきではあるが、未処置患者のわずか
50%でしか陽性とならない。グラム染色及び吸引された(バイオプシーで取ら
れた)出血皮膚病変部によって、症例の70%までにおいて細菌を検出すること
もできる。皮膚病変部の試験は、培養血を得るに先駆けて抗生物質が投与された
場合について特に重要である。咽頭スワブも、注意深く採取して迅速に塗抹され
た場合に髄膜炎菌をもたらし、髄膜炎菌血症の推定診断を支持することができる
。あるいは、CSFが髄膜炎菌抗原の検出のために採取される場合がある。生物体
が採取されれば、それを血清型分別し、そしてさらに亜分類するために参考検査
室に送るとよい。免疫付与による流行病の制御は、疾患の原因たる特定の生物が
同定された場合に限り実施することができる。培養血が得られない特異な環境下
には、やはり抗生物質を遅滞なく投与すべきであり、微生物学的検査は、代替と
なる方法によって後から完遂することができる。
髄膜炎菌血症の小児の管理は、集中的、積極的監視及び治療が頼みにされる。
特に、初期の気道保護、積極的な容積補充、及び適切な血管作用薬(例えば、エ
ピネフリン、ドーパミン及びドブタミン)の設定が、組織の潅流及び酸素の輸送
を回復させるために重要である。抗生物質、ステロイド、新鮮凍結血漿
(FFP)交換、ヘパリン、及び種々の新規薬剤を用いた処置を含む、髄膜炎菌血
症の処置における特別な問題点のいくつかを以下に簡単に示す。
診断で疑いがあれば直ちに、または安定期に入った後のいずれに、抗生物質を
投与すべきかに関して、懸案の論議は継続している。無作為化した試験によって
解決されたものではないが、証拠の優越性によれば、他の支持療法が設定される
間に、直ちに抗生物質を投与すべきである。髄膜炎菌血症における細菌内毒素の
、抗生物質投与後の放出に関する推測は、ヒトのデータによっては立証されてい
ない。髄膜炎菌血症のヒトからの血漿試料中の細菌内毒素レベルの連続的な定量
では、血漿内毒素レベルの抗生物質投与後の急増を実証することはできていない
。
疑わしい症例の初期治療としては、現在のところ、ショックを伴う重篤な感染
性紫斑の他の原因(ヘモフィルス・インフルエンゼ、ストレプトコッカス・ニュ
ーモニエ、他のグラム陰性細菌)が除外されるまで、第3世代のセファロスポリ
ン(例えば、セフトリアキソン)が典型的に推奨される。治療は、ペニシリンま
たはアンピシリンの経口投与に切り替えることができる。
今日まで、髄膜炎菌血症の患者へのコルチコステロイドの日常的使用を支持す
るような、無作為化され、偽薬により制御された実験下でのデータはない。しか
しながら、重篤な疾患及び副腎の出血を伴う患者の少数で、(レベルの上昇が予
期される期間中の状態において)正常または正常以下の血漿コルチゾルレベルを
呈することがデータによって実証されている。データがないために肯定的または
否定的な推奨を行うことが妨げられるものの、流体及び筋収縮(inotrope)に無
応答である、迅速に進行しているショックの臨床状態では、医師は副腎補充ステ
ロイドの投与(ヒドロコルチゾン、1〜2mg/kg静脈内)を考慮すべきであ
る。
また、生化学的凝固障害をFFPで処置すべきかどうか、あるいはどの程度まで
生化学的凝固障害をFFPで処置すべきかを判定する、無作為化され、偽薬により
制御された実験も、今日まで存在していない。生化学的異常の是正は論理的であ
ると考えられるかもしれないが、FFPの投与は多くに、凝固障害の「火に油を注
ぐ」ものとして受け止められている。ノルウェーでの336名の患者についての
患者‐対照試験では、血漿または血液産物での処置(アルブミンまたは血漿交換
に対立するものとして)は、独立して、より劣悪な予後を伴っていた。髄膜炎菌
血症のための処置の際に、C6欠損のヒトで、FFPの投与に続く血漿内毒素の急増
も立証された。これらのデータは、FFPの投与が、ある状況においては有害であ
りうることを示すものであり、従って、やむをえない臨床的兆候がある場合に限
り、注意深く実施するべきである。
若干の既往の報告では、電撃性紫斑病に対する処置としてヘパリンの使用が提
唱されているが、データの優越性(少しの無作為化試験と大掛かりな患者‐対照
研究)は、ヘパリン療法の有益な効果を示唆するものでない。現在のところ、髄
膜炎菌血症の処置におけるヘパリンの日常的使用を支持する証拠はない。髄膜炎
菌血症での、モノクローナル抗リピドA抗体(HA-lA)の、大規模な二重盲検、
偽薬制御によるフェーズIII試験が、欧州で行われている。今日まで結果は公開
されていない。
加えて、他の数多くの生物学的物質が、重篤な凝固障害及び脈管内血栓症の処
置に対する候補である。これらの物質には、アンチトロンビンIII、プロテイン
C、及び組織因子経路阻害剤が含まれる。プロテインC及びアンチトロンビンII
Iを用いた場
合の事例経験が、確定試験の結果が出るまでにすでに公開されている。他の臨床
的介入が報告されているが、体系的に研究されてはいない。これには、血漿及び
全血交換、白血球除去血漿輸血、下肢の虚血を軽減するための連続的仙骨ブロッ
ク、及び末梢血管床を血管拡張するためのニトログリセリンの局所投与が含まれ
る。
BPIは、侵入してくる微生物に対する防御において必須の血液細胞である、哺
乳動物の多形核白血球(PMNまたは好中球)の顆粒から単離されたタンパク質で
ある。ヒトBPIタンパク質は、イオン交換クロマトグラフィー[Elsbachら、J.Bi
ol.Chem.、254巻、11000頁(1979)]または大腸菌アフィニティークロマトグラフ
ィー[Weissら、Blood、69巻、652頁(1987)]のいずれかと、酸抽出とを併用し
てPMNから単離されている。このようにして得られたBPIを、本明細書中では天然
型BPIと称するが、これは広範囲にわたるグラム陰性細菌に対して強力な殺菌活
性を有することが示されている。ヒトBPIの分子量はおよそ55,000ダルトン(55k
D)である。ヒトBPIタンパク質全体のアミノ酸配列、及びかかるタンパク質をコ
ードするDNAの核酸配列は、Glayら、J.Biol.Chem.、264巻、9505頁(1989)の図1
にて報告されており、かかる文献を引用することにより、本明細書に組み入れる
こととする。Grayらのアミノ酸配列を、本明細書中では配列番号:1で示す。米
国特許第5,198,541号には、BPIホロタンパク質及びBPIの断片を含むBPIタンパク
質をコードする組換え遺伝子と、その発現のための方法を開示している。
BPIは、強い陽イオン性のタンパク質である。BPIのN−末端半分は、高い正の
実効電荷を担い、この分子のC−末端半分は、-3の実効電荷を有している[Elsb
ach及びWeiss(1981)、前出]。約25kDの分子量を有するBPIのタンパク質分解N
−末端断片は、
天然に由来する55kDのヒトBPIホロタンパク質の抗菌効力を本質的にすべて保有
している。[Ooiら、J.Biol.Chem.、262巻、14891〜14894頁(1987)]。N末端部
分とは対照的に、単離されたヒトBPIタンパク質のC末端領域は、グラム陰性生
物に対して、ほんのわずかに検出可能な抗細菌活性を呈するに過ぎない。[Ooi
ら、J.Exp.Med.、174巻、649頁(1991)]。「rBPI23」と称される、およそ23kDの
N−末端BPI断片が、組換え法によって製造されており、これもグラム陰性生物
に対する抗細菌活性を保有している。Gazzano-Santoroら、Infect.Immun.、60巻
、4754〜4761頁(1992)。
BPIの殺菌効果は、例えばElsbach及びWeiss、Inflammation:Basic Principle
s and Clinical Correlates、Gallinら編、30章、Raven Press,Ltd.(1992)に
おけるごとく、グラム陰性の種に特異性が高いとの報告がなされている。BPIが
グラム陰性細菌を殺傷する際の正確な機構はいまだ完全には解明されていないが
、まず、陽イオン性BPIタンパク質とLPS上の陰性に荷電した部位との間の静電気
的相互作用及び疎水性相互作用を通して、細菌の表面にBPIが結合しなければな
らないと考えられている。感受性のグラム陰性細菌において、BPIの結合はLPS構
造を崩壊させ、リン脂質及びペプチドグリカンを分解する細菌酵素の活性化を惹
起し、細胞外膜の透過性を変化せしめ、そして、最終的には細胞死へと導く事象
を開始させると考えられる。[Elsbach及びWeiss(1992)、前出]。LPSは、それ
が刺激する強い炎症応答(すなわち、回復不能の内毒性ショックを最終的には引
き起こしうる宿主炎症細胞によるメディエータの放出)のゆえに、「内毒素」と
称されている。BPIはリピドAに結合するのであるが、これはLPSの最も毒性が強
く且つ最も生物学的活性を有する成分であると報告されている。
BPIはこれまでに、髄膜炎菌血症に罹患した被験者を含め、ナイセリア・メニ
ンギチジスに感染した患者の処置のために用いられたことはなかった。共有で係
属中の、1995年1月24日に出願せる米国特許出願第08/378,228号、1994年8月16
日に出願せる第08/291,112号、及び1994年1月24日に出願せる第08/188,221号(
引用することにより本明細書に組み入れる)には、循環中に内毒素を有するヒト
へのBPIタンパク質産物の投与が記載されている。[von der Mohlenら、J.Infe
ct.Dis.172巻、144〜151頁(1995);von der Mohlenら、Blood 85巻、3437〜34
43頁(1995);de Winterら、J.Inflam.45巻、193〜206頁(1995)も参照されたい
]。Thorntonら、FASEB J.、8巻4号、A137頁(1994);及びグラム陰性髄膜炎を
含む内毒素関連障害の処置方法に関する、1994年11月10日に公開された国際出願
公開第WO 94/25476号パンフレットの報告は、BPIが、2つのナイセリア種である
、ナイセリア・メニンギチジス及びナイセリア・ゴノロエエ(Neisseria gonorr
hea)に由来するLOSに応答した、ヒト炎症細胞によるTNFの遊離をインビトロで
阻害したことを報告している。
抗生物質及び到達水準技術による医療集中治療での療法を用いた処置にも関わ
らず、ヒト髄膜炎菌血症に伴う死亡及び病的状態は重大なる問題のままであり、
現行の療法によっては解決に至っていない。悪影響を減じることができ、そして
、例えば、死亡率、切断、移植法、長期神経障害を減じること及び小児予後スコ
アを向上させることを含む、ヒト髄膜炎菌血症の臨床的予後を改善することがで
きる新しい治療法が希求される。
発明の要約
本発明は、髄膜炎菌血症に罹患したヒトの処置のための新規
な方法を提供するものであり、この方法によって、かかるヒト疾患の悪影響や、
これに伴う合併症(死亡及び病的状態を含める)を臨床的に立証可能なまでに軽
減することができる。
本発明によれば、死亡を防ぎ、ならびに/または、切断、移植法及び/もしく
は長期神経障害を含む(これらに限定されることはない)数多くの病的状態の重
篤さを減じるのに充分な量にて、rBPI21などのBPIタンパク質産物が、髄膜炎菌
血症に罹患しているヒトに投与される。さらに企図されるのは、ヒトの髄膜炎菌
血症の処置用の医薬調製におけるBPIタンパク質産物の使用である。
現在のところ好ましい実施態様を記載した、以下の発明の詳細な説明を当業者
が考慮すれば、本発明の数多くのさらなる特徴及び利点が明らかになるであろう
。
図面の簡単な説明
図1、3及び5は、BPI試験に参入した最初の10名の患者について、時間に
対する内毒素、TNF及びIL-6のそれぞれの血漿レベルを示す図である。
図2、4及び6は、図1、3及び5に示される、内毒素、TNF及びIL-6のそれ
ぞれの血漿レベルの、抗生物質処置の開始とBPIタンパク質産物療法の開始との
間の時間による、各患者に対する補正値を示す図である。
発明の詳細な説明
ヒト髄膜炎菌血症は、漸増的に蔓延し、生命を脅かす消耗性疾患であり、これ
に対する旧来の抗生物質及び集中治療は有効とはいえない。特に、到達水準技術
の医療集中治療にも関わらず、有意な死亡及び重篤なる病的状態が現存している
。予期せ
ざるべきことに、髄膜炎菌血症に罹患したヒトにBPIタンパク質産物を投与する
と、効率的に死亡率を低下させ、そして切断、広範囲に及ぶ移植法後の死滅組織
の切除、及び/または神経機能の重大且つ長期にわたる障害を引き起こす長期神
経障害(例えば、脳血管性偶発症状、脳萎縮、または投薬を要する発作)を含む
罹患数及びその重篤さを減じることが見出された。髄膜炎菌血症に伴う及びこれ
に起因する、死亡及び病的状態に対するこれらの予期していなかった効果は、か
かるヒト疾患において劣悪な予後に導いている、あまり理解されていない数多く
の病理・生理学的プロセスをBPIタンパク質産物が有効に干渉または阻止するこ
とを立証するものである。
BPIタンパク質産物は、低血圧または心不整脈もしくは心停止の症状の減少、
補助換気及び筋収縮(血管作用性)療法の期間の短縮、併発する凝固障害の期間
及び重篤さの低減、ICUでの滞在期間の短縮、ならびに呼吸不全、腎不全、昏睡
、副腎壊死、心膜炎、心内膜炎、心筋症、眼内炎、及び関節炎などの合併症の発
生の減少などの、他の有益な効果を髄膜炎菌血症患者に提供することが期待され
る。
BPIタンパク質産物は、髄膜炎菌血症を引き起こすグラム陰性細菌の血清群A
、B、C及びW135、ナイセリア・メニンギチジスに対して、インビトロで殺菌
効果を有することが示されている。BPIタンパク質産物は、直接的な殺菌作用に
よって、または米国特許第5,523,288号(引用することにより明細書に組み入れ
る)に記載のごとき抗生物質療法の有効性を増強することによって、ヒト髄膜炎
菌血症においてそれらの効果を奏しうるのである。BPIタンパク質産物は、細菌
または細菌断片から遊離した、またはそれらに会合したままのLOS内毒素を中和
することによって、ヒト髄膜炎菌血症におけるそれらの効果を奏しうる。循環
中に内毒素を保有するヒトにおけるBPIタンパク質産物の効果は、TNF、IL-6及び
内毒素に対する効果も含めて、共有で係属中の、1995年1月24日に出願せる米国
特許出願第08/378,228号(この出願は1994年8月16日に出願せる米国特許出願第
08/291,112号の一部継続出願であり、そしてこの出願は1994年1月24日に出願せ
る第08/188,221号の一部継続出願であり、引用することによりこれらすべてを本
明細書に組み入れる)に記載されている。BPIタンパク質産物は本出願と同時に
出願された共有で係属中の米国特許出願第08/644,290号(引用することにより本
明細書に組み入れる)に記載のとおりに抗凝血及び線溶効果の双方を呈する。BP
Iタンパク質産物は、例えば凝固障害を含む、髄膜炎菌血症に伴う他の病理プロ
セスに対して作用しうる。
BPIタンパク質産物を含む治療用組成物は、全身に、あるいは局所に投与する
ことができる。全身投与の経路には、経口、静脈内、筋肉もしくは皮下注射(長
時間放出用のデポ剤に含有せしめられる)、眼内及び眼球後部、鞘内、腹膜組織
内(例えば腹腔組織内灌流による)、エアゾル化もしくは霧状にした薬物を用い
た経肺、または経皮経路が包含される。好ましい経路は静脈内投与である。非経
口的に投与される場合、BPIタンパク質産物組成物は一般に、1日当たり1μg/k
gから100mg/kgの範囲の量で、好ましくは1日当たり0.1mg/kgから20mg/kgの範囲
の量で、さらに好ましくは1から20mg/kg/日の範囲の量で、そして最も好ましく
は2から10mg/kg/日の範囲の量で注射される。処置は、継続的注入または間欠的
注射もしくは注入によって継続されるとよく、同時に、例えば1〜3日の間に、
1日当たりの用量を減少または増加してもよく、そしてさらに、処置担当の医師
が決定するとおりにするとよい。BPIタンパク質産物は、好ましくは、最初に丸
薬により、次いで継続的な注入によって
静脈内に投与される。好ましい投薬計画は、BPIタンパク質産物の静脈内用丸薬
で1〜20mg/kg、次いで1〜20mg/kg/日にて、静脈内注入を1週間まで継続する。
最も好ましい投薬計画は、最初の丸薬が2〜10mg/kgで、次に2〜10mg/kgの静脈内
注入を72時間まで継続することである。局所経路には、軟膏、眼用滴剤、耳用
滴剤、潅注液(例えば創傷潅注用)または医療用シャンプーの剤形での投与が包
含される。例えば、滴剤の剤形での局所投与については、約10〜200μLのBPIタ
ンパク質産物組成物が、処置担当の医師によって決定されるとおりに、1日当た
り1回以上適用されるとよい。当業者であれば、良好な医療実務及び個々の患者
の臨床状態によって判定されるとおり、BPIタンパク質産物を含む治療用組成物
に対する有効投与量及び投薬計画を難なく至適化できるはずである。
本明細書において用いられる「BPIタンパク質産物」なる語には、天然に、及
び組換えにより製造されるBPIタンパク質;天然、合成、及び組換えの、BPIタン
パク質の生物学的活性を有するポリペプチド断片;ハイブリッド融合タンパク質
及びダイマーを含む、BPIタンパク質の生物学的活性を有するポリペプチド変異
体またはその断片;システインで置換された類似体を含む、BPIタンパク質の生
物学的活性を有するポリペプチド類似体またはその断片または変異体;ならびに
BPI由来ペプチドが包含される。本発明に従って投与されるBPIタンパク質産物は
、当該技術分野において知られているいかなる手段によって生産及び/または単
離してもよい。引用することによりその開示が本明細書に含まれるものである、
米国特許第5,198,541号に、rBPI50(またはrBPI)と称される組換えBPIホロタン
パク質及びBPIの組換え断片を含むBPIタンパク質をコードする組換え遺伝子、及
びその発現のための方法が開示されている。共有であり係属中の米
国特許出願第07/885,5旧号及びその一部継続出願である1993年5月19日出願の米
国特許出願第08/072,063号及び1993年5月19日出願の対応国際出願第93/04752号
(すべて引用することによりその開示が本明細書に含まれるものである)は、培
養において遺伝的に形質転換した哺乳動物宿主細胞で発現され、そして当該細胞
から分泌される組換えBPIタンパク質産物の新規精製方法を開示しており、また
、安定で均質な医薬製剤に配合するのに好適な、大量の組換えBPI産物をどのよ
うに製造するかを開示している。
BPIの生物学的活性を有する断片(BPI断片)には、その断片分子が、ホロタン
パク質のアミノ末端アミノ酸、内部アミノ酸、及び/またはカルボキシ末端アミ
ノ酸を欠くことを除いては、天然のヒトBPIホロタンパク質と同じまたは類似の
アミノ酸配列を有する、生物学的活性を有する分子が包含される。このような断
片の例に、Ooiら、J.Exp.Med.、174巻、649頁(1991)に記載されるおよそ25kDの
天然ヒトBPIのN-末端断片、及びGazzano-Santoroら、Infect.Immun.60巻、475
4〜4761頁(1992)に記載され、rBPI23と称されている天然ヒトBPIの第1位よりお
よそ第193または199位までのN-末端アミノ酸をコードするDNAの組換え発現産物
が包含されるが、これらに限定されるものではない。かかる出版物において、Gr
ayら、前出の図1に示されるごとき、31残基のシグナル配列及び成熟ヒトBPIの
N-末端の最初の199アミノ酸を有する組換え発現産物(rBPI23)をコードするDN
A(第151位のバリンがGTCでなくGTGで特定され、第185位の残基がリジン
(AAGで特定される)でなくグルタミン酸(GAGで特定される)であるとい
う例外を含む)の供給源として、発現ベクターが用いられた。Grayら、前出の図
1に示される配列(配列番号:1及び2)(rBPI23について注解した例外、及
び第417位の残基がバリン(GTTで特定される)でなくアラニン(GCTで特
定される)であるという例外を含む)を有する組換えホロタンパク質(rBPI50)
も製造されている。他の例には、共有であり係属中の1994年3月11日出願の来国
特許出願第08/212,132号及び対応国際出願第PCT/US95/03125号(引用することに
よりその開示が本明細書に含まれるものである)に記載されるごとき、BPI断片
の二量体型が包含される。好ましい二量体産物には、その単量体がBPIホロタン
パク質の約1〜175位から、約1〜199位までのN−末端残基を有するアミノ末端BP
I断片である、二量体BPIタンパク質産物が包含される。特に好ましい二量体産物
は、rBPI42二量体と命名された、第1位から193位までのN−末端残基を有する、
BPI断片の二量体型である。
BPIの生物学的活性を有する変異体(BPI変異体)には、BPIホロタンパク質ま
たはその生物学的活性を有する断片、及び他のポリペプチドの少なくとも一部を
含む組換えハイブリッド融合タンパク質、ならびにBPI変異体の二量体型が包含
されるが、これらに限定されない。このようなハイブリッド融合タンパク質及び
二量体型の例は、共有であり係属中の米国特許出願第07/885,911号(Theofanら
による)及びその一部継続出願である1993年5月19日出願の米国特許出願第08/0
64,693号と1993年5月19日出願の対応国際出願第US93/04754号(引用することに
よりそれらのすべてが本明細書に含まれるものである)に記載されており、アミ
ノ末端端部でBPIタンパク質またはその生物学的活性を有する断片、及びカルボ
キシ末端端部で少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖の定常ドメインまたはその
対立変異体を含む、ハイブリッド融合タンパク質が包含される。リポ多糖結合タ
ンパク質(LBP)の一部またはすべてを含み、同様に構成されたハイブリッド融
合タンパク質もまた、本発明における使用が企図
されるものである。
BPIの生物学的活性を有する類似体(BPI類似体)には、1以上のアミノ酸残基
が異なるアミノ酸に置換されているBPIタンパク質産物が包含されるが、これら
に限定されない。例えば、共有で係属中の1993年2月2日に出願された米国特許
出願第08/013,801号及び1994年2月2日に出願された対応国際出願第US94/01235
号(引用することによりその開示が本明細書に含まれるものである)に、システ
イン残基が異なるアミノ酸で置換されたBPI及びBPI断片のポリペプチド類似体が
開示されている。この出願に記載された好ましいBPIタンパク質産物は、BPIホロ
タンパク質のN-末端アミノ酸の第1位からおよそ第193または199位までのアミノ
酸をコードするDNAの発現産物(但し、第132番目のシステイン残基がアラニンで
置換されており、rBPI21ΔcysまたはrBPI21と名付けられている)である。他の
例としては、BPI類似体の二量体型、例えば、1994年3月11日に出願された、共
有であり係属中の米国特許出願第08/212,132号及び対応国際出願第US95/03125号
(引用することによりその開示が本明細書に含まれるものである)が挙げられる
。
本発明の方法に有用な他のBPIタンパク質産物は、1995年7月20日出願の、共
有且つ係属中の米国特許出願第08/504,841号及び1994年9月15日出願の米国特許
出願第08/306,473号に対応する、1994年9月15日に出願された共有で係属中の国
際出願第US94/10427号、及び1994年3月11日に出願された米国特許出願第08/209
,762号に対応する、1994年3月11日出願の国際出願第US94/02465号、これは1994
年1月14日出願の米国特許出願第08/183,222号の一部継続出願であり、さらにこ
れは1993年7月15日出願の米国特許出願第08/093,202号の一部継続出願であって
、これに対応するのが、1994年3月11日に出願された国際出願第US94/02401号で
、
これは1993年3月12日出願の米国特許出願第08/030,644号の一部継続出願である
(これらはすべて、引用することによりその開示が本明細書に含まれるものであ
る)に記載されたものなどの、組換えもしくは合成手段によって生産されたBPI
に由来するか、またはかかるBPIに基づくペプチド(BPI由来ペプチド)である。
現在のところ好ましいBPIタンパク質産物には、組換えによって製造されるBPI
のN-末端断片、特にrBPI23もしくはrBPI21などの、およそ21から25kDのあいだ
の分子量を有するもの、または、これらN-末端断片の二量体型(例えば、rBPI4 2
二量体)が包含される。加うるに、好ましいBPIタンパク質産物には、rBPI50及
びBPI由来ペプチドが包含される。
BPIタンパク質産物の投与は、好ましくは、BPIタンパク質産物と、医薬上容認
されうる賦形剤、佐剤、または担体とを含む医薬組成物を用いて成し遂げられる
。BPIタンパク質産物は、既知の界面活性剤、他の化学療法剤もしくはさらなる
既知の抗微生物剤と組み合わせて、またはそれらと組み合わせることなく投与さ
れるとよい。BPIタンパク質産物(例えば、rBPI50、rBPI23)を含有する医薬組
成物の一つは、0.1重量%のポロキサマー188(Pluronic F-68、BASF Wyandotte
、Parsippany、ニュージャージー州)及び0.002重量%ポリソルベート80(Tween
80、ICI Americans Inc.、Wilmington、デラウェア州)を含むクエン酸緩衝性
生理食塩水(5または20mMクエン酸塩、150mM NaCl、pH5.0)中に、1mg/mlの濃
度でBPIタンパク質産物を含むものである。BPIタンパク質産物(例えばrBPI21)
を含有する他の医薬組成物は、5mMクエン酸塩、150mM NaCl、0.2%ポロキサマ
ー188及び0.002%ポリソルベート80中に2mg/mlの濃度でBPIタンパク質産物を含
むものである。このような組合せが、1994年2月2日出願の米国特許出願第08/1
90,869号及び1993年2月2日
出願の米国特許出願第08/012,360号に対応する、共有で係属中の、1994年2月2
日出願の国際出願第US94/01239号に記載されており、これらはすべて引用するこ
とによりその開示が本明細書に含まれるものである。
本発明の他の特徴及び利点は、以下の実施例を考慮することで明らかになるで
あろう。実施例1では、髄膜炎菌血症に伴う死亡率に対するBPIタンパク質産物
投与の効果を示す。実施例2には、髄膜炎菌血症に伴う病的状態に対するBPIタ
ンパク質産物投与の効果を示す。実施例3に及び4には、2名の特定の患者にお
ける髄膜炎菌血症の経過に対するBPIタンパク質産物投与の効果を記載する。
実施例1
臨床試験のプロトコル−
死亡率に対するBPIタンパク質産物の効果
重篤な全身性髄膜炎菌性疾患に罹患している小児患者における臨床的予後に対
する、BPIタンパク質産物の1例としてのrBPI21の効果を調べるために、ヒト臨
床試験を設計した。臨床的予後(死亡、切断、移植、長期神経障害)は、第28
日または退院の日の、いずれか早い方の日までにわたって評価した。加えて、BP
Iタンパク質産物の安全性、薬物動態的及び血行動態的効果を評価した。
かくして、標準的な治療を受けている、重篤な髄膜炎菌血症の小児患者に対す
るBPIタンパク質産物の効果についての、オープン・ラベルの、複数医療[研究]
センターにまたがったフェーズI試験を履行した。親または法定後見人へのイン
フォームド・コンセントの後に、適格基準に適合した患者に参入してもらった。
適格基準は、参入患者が、死亡、発作、切断、または皮
膚移植などとして定義される重篤な不良予後の予測率90%を有していたことで
あった。すべての患者は、通常の治療基準に合致する総合小児集中治療を受け、
且つBPIタンパク質産物投与開始に先駆けた、最初の抗生物質の投薬を8時間以
上は受けていなかった。
第一の4名の患者は、30分にわたる0.5mg/kg rBPI21の注入と、その直後よ
り引き続き、24時間にわたり、0.5mg/kg/日の割合でrBPI21。,の継続的注入を
受けた。次の6名の患者は、30分にわたる1.0mg/kg rBPI21の注入と、その直
後より引き続き、24時間にわたり、1.0mg/kg/日の割合でrBPI21の継続的注入
を受けた。残りの患者は、30分にわたる2.0mg/kg rBPI21の注入と、その直後
より引き続き、24時間にわたり、2.0mg/kg/日の割合でrBPI21の継続的注入を
受けた。すべての試験センターで、同時に高投与量へレベルを増大した。
BPIタンパク質産物の薬物動態及び循環中の内毒素レベルを、リムルス・アメ
ーバ様細胞溶解物(LAL)アッセイによって、rBPI21及び内毒素につき血漿を連
続的にモニターすることで評価した。rBPI21の投与に伴う急性の血行動態的効果
はすべて、標準的な血行動態パラメータ(心拍数、観血的全身系動脈血圧、心電
図、酸素飽和度、及び肺動脈カテーテルより得られた観血的血行動態測定を含む
)を記録することによって追跡した。試験を目的として新たに設置された侵入的
器具はなく、医療器具の設置は、担当の医師及びそのスタッフに一任される自由
裁量によるもので、それは通常の治療基準に見合う、患者の監視を目的としたも
のに限られていた。
安全性は、生命兆候及び血行動態の継続的な測定、身体検査ならびに処置前及
び処置後の安全性の実験室評価によつて監視した。患者は死亡、退院または28
日の試験期間のいずれか最
も早い時期に至るまで、安全性について追認された。
重篤な髄膜炎菌血症に罹患した患者を、その患者が以下の包含及び除外基準に
見合うか否かで、試験への参入について選択した。包含基準は、
(1)1歳から18歳までの年齢を包含;
(2)以下の項目のいずれかまたはすべてに基づく髄膜炎菌血症の推定診断:(
a)点状出血もしくは紫斑、発熱、及び、髄膜炎菌血症の診断に符合した臨床状
況における血行動態的不安定性、(b)髄膜炎菌血症の診断に符合した臨床状況
における、血液、脳脊髄液、もしくは皮膚病変部でのグラム陰性双球菌の立証、
ならびに/または(c)髄膜炎菌血症の診断に一致した臨床状況における、免疫
学的判定による髄膜炎菌抗原の立証;
(3)8以上のグラスゴー髄膜炎菌敗血症予後スコア[Sinclairら、前出];
(4)BPIタンパク質産物投与開始に先駆けて、最初の抗生物質の投薬を8時間
以上は受けていない既往歴;
(5)思春期または思春期後の女性については妊娠テストが陰性であること;
(6)親または法定代理人から得られたインフォームド・コンセント書面がある
こと;ならびに
(7)信頼のおける患者の追従情報を収集できること
であった。除外基準は、
(1)通常のICUでの治療を損なうことなくBPIタンパク質産物を投与するための
血管進入路が不充分であること;
(2)試験に入る前30日以内の間に治験薬に曝されたこと;ならびに
(3)死亡が急迫していることを含め、試験への関与が患者にとって適切でない
と担当医師が判定するような、あらゆる状況
であった。
試験に取りかかる前の24時間以内に、以下の項目を実施した。
(1)病歴;(2)完全な身体検査;(3)胸部X線撮影;(4)実験室評価:
(血液学的検査:鑑別を伴うCBC(全血球細胞)血液像;凝血:PT、PTT、フィブ
リノゲン、D-ダイマー;微生物学的検査:培養、グラム染色、示唆のされる血清
学的検査;化学的検査:ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸塩、グルコース
、BUN、クレアチニン、イオン化カルシウム、リン、マグネシウム、ビリルビン
、AST、ALT,.CPK(イソ酵素を含む)、LDH;動脈血液ガス検査;尿検査;化学
的及び顕微鏡検査;ならびに(5)インフォームド・コンセント書面及び信頼の
おける追従情報の収集の調達。
rBPI21は、清澄、無色、滅菌済みの、発熱物質を含まない溶液として、10mLの
使い捨てガラス製バイアルの中に、0.2%ポロキサマー188及び0.002%ポリソル
ベート80を含み、防腐剤を含有しない5mMクエン酸ナトリウム/0.15M塩化ナト
リウム緩衝液、pH5.0中に2mg/mlの濃度で供給された。投与前には常時、保存の
ためにrBPI21のバイアルは2〜8℃に冷却された。この産物は、注入前に室温に
戻し、そして中心静脈または他の好適な静脈から投与した。静脈からの進入の好
適性は、進入部位から血液が簡単に引き出せること、さらに、浸潤することなく
静注液を容易に注入できることによって判定した。注入プロトコル実施中に選択
口に投与された唯一の薬剤がrBPI21であった。静脈進入口はヘパリン処理されな
かったが、必要に応じて生理食塩水を流した。
BPIタンパク質産物の注入開始後に、悪影響の発生の可能性について患者を観
察した。rBPI21レベルの定量用の血漿試料を、
注入開始直前(0時)と、注入開始後の以下の時間(30分、90分、240分
、720分、24時間30分の注入終了直前、24時間37分、24時間45分
、25時間、25時間30分、26時間30分、27時間30分、及び48時間
)に収集した。内毒素レベルの定量用の血漿試料は、注入開始直前(0時)と、
注入開始後の以下の時間(30分、90分、240分、720分、及び48時間
)に採取した。血清イオン化カルシウム濃度は、注入開始直前(0時)と、注入
開始後の以下の時間(30分、2時間、6時間、12時間及び24時間)に定量
した。イオン化カルシウム濃度の監視は髄膜炎菌血症における通常の治療基準と
なっており、普通は4時間おきに行われる。すべての試料は、BPIタンパク質産
物を注入するのに使用されていないラインを介して得られた。
以下の生命兆候は、注入開始前の30分間は5分おきに、投与負荷中の30分
間も5分おきに、そしてその後24時間は30分おきに記録した:(a)心拍数
;(b)全身系動脈血圧:収縮期、弛緩期、及び平均;ならびに(c)呼吸数(
患者が自発呼吸をしている場合)。以上に概説した手動での収集によるデータに
加えて、ICU滞在中にはベッドサイド・モニタに、データが毎分デジタル記録及
び保存された。患者がICUを離れた後は、退院まで毎日、生命兆候のデータを記
録した。
以下の観血的血行動態パラメータは、注入開始前の30分間は10分おきに、
投与負荷中の30分間も10分おきに、そしてその後24時間は2時間おきに記
録した:(a)混合静脈血酸素飽和度(酸素測定用カテーテルのみ);(b)肺
動脈楔入圧;(c)肺動脈圧:収縮期、弛緩期、及び平均;(d)心指数(CI)
;(e)全身系血管耐性指数(SVRI);(f)肺血管耐性指数(PVRI);ならび
に(g)1回拍出指数(SVI)。薬物
療法及び血管作動注入の完全なプロファイルを、退院までずっと記録した。以下
の項目は、重篤な髄膜炎菌性疾患の標準的な対処に合わせて、主たる担当医師に
よって定められた頻度で記録された:(a)動脈血液ガス、(b)静脈血液ガス
、(c)酸素運搬(DO2)、(d)酸素消費(VO2)、(e)血液学的数値、(f
)凝血、及び(g)血液化学的数値。PRISMスコア(小児死亡リスクのスコア)
も、入院初日の終わりに算定及び記録した。以下の表1に、PRISMスコア(Polla
ckら、「小児死亡リスク(PRISM)のスコア」Clitical Care Medicine 16巻、11
10頁、1988)を算定するために使用したポイントの対応数と共に、各因子を示す
。 試験の終了時(すなわち、試験第28日または退院時点のいずれか早い方)に
、生命兆候、及びなんらかの悪影響の精査を含めた身体検査を実施した。以下の
臨床的予後も評価した:
(a)死亡;(b)切断;(c)移植法;(d)長期神経障害(脳血管性偶発症
状、脳萎縮、及び神経機能障害として顕示される投薬を要する発作を含むがこれ
らに限定されない);ならびに(e)小児予後スコア(Fiserの「小児集中治療
の予後の評価」J.Pediatrics 121巻1号、68〜74頁(1992)に記載の、小児脳機能
カテゴリースケール(Pediatric Cerebral Performance Category Scale)及び
/または小児全機能カテゴリースケール(Pediatric Overall Performance Cate
gory Scale)に基づく)。
BPI試験の開始直前の2年間、臨床センターの試験センター(Study Center)
1に関係するところに入院していた患者の医療記録の精査を行った。これらの記
録から、14名の小児を、前記包含基準の最初の3点すなわち、年齢、髄膜炎菌
血症の推定診断及びグラスゴースコアに適合しているという理由で比較分析用に
選択した。これら14名の「来歴が制御された」小児のうち、6名が死亡した。
かかる高死亡率は、包含基準に8以上のグラスゴースコアを要していたことを考
慮すれば予期されたことである。8以上のグラスゴースコアは常に、重篤な疾患
を示唆しているのである。
これとはまったく対照的に、試験センター1でBPI試験を行った10名の患者
で死亡したものはいなかった。かように、BPIタンパク質産物の投与は、試験セ
ンター1で重篤な小児髄膜炎菌血症の死亡率を43%から0%へと劇的に減少さ
せた。関係臨床センターからのすべての結果を含めると、これまでにBPI試験に
参入した総数14名の患者のうち、1名の患者のみが死亡し、死亡率はわずか7
%であった。この低死亡率は、患者が試験に入る際に14名のうち12名が10
以上のグラスゴースコアを有していたことを考慮すると特に注目に値するもので
ある。様
々な試験において疾患の重篤性及び予後と関連することが示されている指標(内
毒素、TNF、IL-6及びフィブリノゲンのレベル、ならびにPTT)[Brandzaegら、前出
、Van Deuranら、前出、McManusら、前出、及びBone、前出]に基づいて、B
PI試験の14名の患者に対する予想死亡率を算定した複数分析では、この集団に
ついて、約20%から約50%の範囲に及ぶ死亡率が予測された。BPI試験を行
った最初の10名の患者についての内毒素、TNF及びIL-6レベルを図1〜6に示
す。
実施例2
病的状態に対するBPIタンパク質産物の効果
前記の実施例1に述べたBPIタンパク質産物試験のプロトコルに従って、処置
した患者の臨床的予後を以下の表2にまとめ、そしてこの試験の開始直前の2年
間に試験の包含基準に適合すると考えられる試験センター1の14名の「来歴制
御」小児の臨床的予後と比較する。髄膜炎菌血症の臨床経過の自然なままでの病
歴は概ね類似しているはずであり、それまでは健康であった小児が12〜24時
間インフルエンザ様の前駆症を呈し、紫斑を現し、次いで4〜6時間以内に死亡
または瀕死状態に陥る。典型的には、かかる髄膜炎菌血症患者は少なくとも最初
の12時間でPICUにてさらに重病になり続け、そして不可逆的な進行性のショッ
クに屈することになることが多い。BPIタンパク質産物の投与を除いて、試験セ
ンター1の14名のこれまで「来歴制御」された患者に比べてBPI試験に参入し
た患者に提供された標準的治療に差異はなかった。 *1名の患者は、重篤な切断及び長期神経障害の双方に見舞われた。
表2にまとめた結果により、BPIタンパク質産物の投与は試験センター1にお
ける死亡率を大幅に低減させたのみならず、試験センター1における重篤な病的
状態の発生率も50%から10%に減じたことが示される。すべての参加臨床セ
ンターからの結果を含めても、全体としての死亡率は低値のままで、8%であっ
た。この試験から得られた病的状態にかかるデータの解釈は、BPIタンパク質産
物処置がこの疾患に伴う死亡数を低減す
るうえで有意な効果を有しており、つまり、この処置を施さなければ死に追いや
られてしまったであろう重篤な病気に罹った多くの患者が救済されたという事実
により、ある程度複雑なものとなっている。死亡の可能性があって死に至らなか
った患者の病的状態を予測する分析は実施されなかった。この病的状態の予後分
析について、手首もしくはそれより上部、または足首もしくはそれより上部での
切断を、重篤な切断と考えた。運動、認知または感覚機能の有意且つ長期的な障
害を引き起こす神経異常を、長期神経障害と考えた。さらに4名のBPI試験患者
(すべて試験センター1にいる者)は、つま先または指の軽度の切断(そして1
名は部分足切断)を受けた。試験センター1のさらに4名の「来歴制御」患者は
、脳血管性偶発症状、発作、CTスキャンまたはEEGの異常、及び脳神経麻痺に見
舞われた。1名のBPI試験患者(試験センター1にいる者)が、神経障害に見舞
われた(実施例4を参照されたい)。
実施例3
BPI試験における1名の個体の臨床経過
本患者(BPI試験の第2号)は、それ以前には健常だった7歳の白人男性であ
った。小児集中治療施設(PICU)に入院する前の夜に、患者は発熱、嘔吐、及び
頭痛の症状で緊急治療室に入った。患者の白血球数(WBC)は17,500であったが
、検査の結果重大な疾患を示すものはなかったので帰宅させられた。患者は翌朝
、再度来院し、このときには広汎性溢血発疹が認められた。患者のWBCは6,300に
下がり、発熱と頭痛はもっとひどくなっていた。髄膜炎菌血症が疑われ、最初の
輸液と抗生物質投与の後、患者は試験センター1の小児集中治療施設(PICU)に
入院した。
患者は挿管及び機械的換気を受け、流体蘇生され、そしてエ
ピネフリン注入による筋収縮支持が開始された。患者は抗生物質のセフトリアキ
サゾンで処置された。BPI試験への参入前に、患者のグラスゴースコアは14/
15であり、PRISMスコアは17で、身体検査の結果によると体温は38.8℃
、心拍数は145、換気装置での呼吸数は16、そして血圧は107/46であ
ることが判った。患者のPTT値は25.2で、フィブリノゲンのレベルは480
であった。血液培養によりナイセリア・メニンギチジスの血清型Cが明らかにさ
れた。肺動脈カテーテルが監視用に設置され、そして前記実施例1に述べたBPI
プロトコルに対するインフォームド・コンセント書面が得られた。
PICUに入った日(第1日)の14時35分に、rBPI21の注入が開始された。患
者には、30分にわたって0.5mg/kgの用量のrBPI21が投与され、次いで24時間
にわたり0.5mg/kgのrBPI21が注入された。患者の注入処理に対する耐性は良好で
あり、血行動態上の変化または他の合併症を認めることはなかった。患者のPICU
での経過は比較的平穏なものであり、第4日目の夜には筋収縮支持が中断され、
その後速やかに換気装置が脱離(wean)されていった。第5日中に患者から換気
装置が外されたが、何の問題もなかった。患者は、第6日目の午後に一般小児病
棟へ移され、何の合併症もなく第9日に病院を退院した。
実施例4
BPI試験における別の個体の臨床経過
本患者(BPI試験の第6号)は、それ以前にはすこぶる健常だった18歳の白
人男性であった。入院の前、患者は2日間、咽頭炎及び嗜眠の来歴に見舞われて
いた。入院の日の夕方、患者の同室者が寮の部屋の片隅で、意識を失い紫色溢血
発疹で覆われた状態でいるのを見つけた。患者は救急車で病院に移送され、
このときには彼の体温は101Fで、激症性のショック状態にあった。患者は流
体蘇生、セフトリアキソン抗生物質、及び循環系改善のためドーパミン注入にて
処置された。患者は試験センター1にヘリコプターで移送された。
到着して、患者には挿管及び換気が施された。BPI試験への参入前には、患者
のグラスゴースコアは12/15であり、PRISMスコアは16であった。患者は
死に瀕していた。患者の身体検査で重大であったのは、速やかに拡張している瞳
孔、8秒以上の毛細管レフィル、及び検出最下限の脈拍であった。患者の足は青
色で冷たく、脈はなくこれは10指も同様であった。患者の体温は37℃で、心
拍数150、換気装置での呼吸数20、そして血圧は133/66であった。実
験室での患者の試験結果で重大であったのは、7,500のWBCで、73%のセグ(se
gs)及び14%のバンド(bands)の特異形態を伴っていた。患者のPTは26で
あり、PTTは114を上回り、フィブリノゲンのレベルは121であって、さら
にD-ダイマーは8を越えていた。脳脊髄液の培養により、ナイセリア・メニンギ
チジス血清型Cの存在が明らかになった。患者には、到着時に多臓器系不全の生
化学的兆候が認められた。流体蘇生を継続し、そしてエピネフリンの注入を開始
した。インフォームド・コンセントが得られ、前記実施例1に従うBPI試験に患
者を参入させた。
PICUに入った日(第1日)の7時15分に、30分にわたって1mg/kgの用量
でrBPI21の注入が開始され、次いで24時間にわたり1mg/kgの投与量で行われ
た。血行動態上の副作用もなく、rBPI21の注入は耐えられるものであった。患者
は、ドーパミン、ドブタミン及びエピネフリンを筋収縮のために注入(inotropi
c infusuion)することによる血行動態上の支持を必要としていた。患者は、第
3日目の朝にエピネフリン及びドーパミン投与
から脱離させ、そしてその後直ちにドブタミン投与を止めるようにした。Swan-G
anzカテーテルを用いた患者の血行力学的状態の観血的評価によれば、治療第2
日目に、かような重篤な病状の小児に典型的と考えられるような活力低下状態へ
の移行はなされていないことが明らかになった。患者の凝固障害は初めは重篤で
あり、新鮮凍結血漿、パック細胞(沈層赤血球)、及び血小板を何度も輸液する
必要があったが、入院後第3日目には凝固障害は速やかに消散した。やはり第3
日目に、患者の冷たく潅流していない足が、正常な血色に戻り、温もりと循環が
回復したことが顕著になった。バンコマイシン及びトブラマイシンを用いたさら
なる抗生物質療法が開始された。第4日目には、患者の換気装置を脱離すること
ができるまでに臨床状態が改善した。換気装置を1日かけて脱離していったが、
これは第5日目に一過性の肺水腫のために阻まれた。この肺水腫は、第3空隙流
体(third spaced fluid)の吸収及び血管漏出の治癒に起因するものと考えられ
た。患者の換気装置の脱離は第5日目の終盤に続けられた。患者の下肢の循環は
、第8日目にPICUから出るときには、組織の損傷が左の踵(ここは創面切除され
ていた)と左の第2足指(second toe、最終的には切断された)のみに明示され
るというまでに、顕著に改善されていた。病院での経過において、一過性の高血
圧症状の後、患者はCTスキャンを受け、これによってPICUに入った日がおよその
日付と思われる右側頭/頭頂の脳血管性偶発症状(CVA)が顕示された。CVAは神
経学的には無症状であり、運動、認知または感覚機能が損なわれることはまった
くなかった。PICUの後、小児病棟での患者の滞在に際して、主に理学療法、作業
療法、及び栄養強化が行われた。患者は第14日目に、さらに補強の努力を続け
、そして一般的なリハビリテーションを行うためにリハビリテーシ
ョン施設へと退院していった。
当業者であれば、如上の本発明の多くの修正及び変更が想起されると考えられ
る。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲における記載のみによってしか限
定を受けるべきではない。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
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O,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG
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US,UZ,VN
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.髄膜炎菌血症の処置方法であって、 治療上有効な量の殺菌性/透過性増強(BPI)タンパク質産物を、髄膜炎菌血 症に罹患しているヒトに投与する工程を含む方法。 2.前記BPIタンパク質産物が、約21kDから25kDの分子量を有するBPI タンパク質のアミノ末端断片である、請求の範囲第1項記載の方法。 3.前記BPIタンパク質産物が、rBPI23またはそのダイマーフォームである、 請求の範囲第1項記載の方法。 4.前記BPIタンパク質産物が、rBPI21である、請求の範囲第1項記載の方法 。 5.前記BPIタンパク質産物が、他の療法剤と同時に投与される請求の範囲第 1項記載の方法。 6.ヒトでの髄膜炎菌血症の処置用の医薬の調製における、BPIタンパク質産 物の用途。 7.前記BPIタンパク質産物が、約21kDから25kDの分子量を有するBPI タンパク質のアミノ末端断片、rBPI23またはそのダイマーフォーム、及びrBPI21 よりなる群から選択される請求の範囲第6項記載の用途。
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