【発明の詳細な説明】
ベーキングにおける脱アミノ化オキシダーゼの使用
発明の分野
本発明は、酵素を含むパン改質又はドー改質組成物に、並びに該組成物の使用
によりドー及び/又はベークト製品を調製する方法に関する。
発明の背景
パン製造工程において、その機能がとりわけ、パンのきめ、容量、味及び新鮮
さ並びにドーの機械加工性を改善するパンのドーにパン改質及び/又はドー改質
添加物を加えることが知られている。
近年、ドー及び/又は改質剤として、いくつかの酵素、特にドー内に大量に存
在する構成物に作用する酵素が用いられている。このような酵素の例は、アミラ
ーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ及びセルラーゼ、例えばペントサ
ナーゼのグループ内で見い出される。
EP 321811及びEP 338452は、グルコースオキシダーゼの、他の酵素(スルフ
ヒドリルオキシダーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ)と組み合わせてのベーキ
ングにおける使用を開示する。グルコースオキシダーゼは酵素でのβ−D−グル
コースの酸化を触媒し、それによりD−グルコノ−1,5−ラクトン及び過酸化
水素が形成される。
脱アミノ化酵素、即ち特定のアミン含有基質からアミン基を除去することがで
きる酵素は、天然に広く発生し、そして動物、植物及び微生物を含む多くの型の
生物によって生産されることが見い出さ
れている。その酵素に、アミン含有基質、水及び酸素間の反応を触媒して、その
基質を脱アミノ化して同時に過酸化水素を形成する。脱アミノ化酵素は銅又はFA
Dを含み得る。従来から最も広く記載されている群の脱アミノ化酵素はアミンオ
キシダーゼ及びアミノ酸オキシダーゼである。
脱アミノ化オキシダーゼのベーキングにおける作用はまだ示唆されていない。
本発明の目的は、脱アミノ化オキシダーゼ酵素の使用によりドー及び/又はパ
ン製品の特性を改善することである。
発明の簡単な記載
従って、本発明の第1の態様は、脱アミノ化オキシダーゼ酵素を含むパン改質
及び/又はドー改質組成物に関する。
本文脈において、用語“パン改質組成物”及び“ドー改質組成物”は、酵素成
分に加えて、ドー及び/又はベークト製品の特性を改良するためにベーキングに
おいて慣用的に用いられる他の物質も含み得る組成物を示すことを意図する。こ
のような成分の例は以下に示される。用語“脱アミノ化オキシダーゼ”は、同時
に過酸化水素を形成しながらアミン含有基質からのアミン基の酸化的除去を触媒
することができるいずれかの酵素を示すことを意図する。
いずれかの理論に限定することなく、有効量の脱アミノ化オキシダーゼ酵素が
ベークト製品の調製に用いることを意図したドーに加えられた時、それがドー構
成物に酸化効果を発揮し、それによりドー及び/又はベークト製品におけるグル
テン構造の強度を改善し、並びにドーの強度、レオロジー及び取扱い特性を改善
し得ると現在考えられる。
より詳しくは、その酸化効果は、その酵素が過酸化水素の形成と
同時に、フラワー又は他のドー構成物中に存在するアミン含有化合物の脱アミノ
化を触媒する時に得られると信じられる。フラワーは、多数の第1級アミン基を
含む。
本文脈において、用語“改善された特性”とは、有効量の脱アミノ化オキシダ
ーゼ酵素の作用により改善され得るいずれかの特性を示すことを意図する。上述
のグルテン強化効果に加えて又はその結果として、脱アミノ化オキシダーゼの使
用はベークト製品の体積を増加させ(後の実施例を参照のこと)、その安定性を
改善することが見い出されている。また、ベークト製品の改善されたクラム構造
及び柔らかさ、並びに強度、安定性の増加及び粘着性の減少並びにそれによるド
ーの機械加工性の改善は、有効量の脱アミノ化オキシダーゼの使用によって得る
ことができる。少量のフラワーが用いられる時、ドーへの効果が特に優れている
。機械加工性の改善は、特に工業的に処理されるドーに関して特に重要である。
脱アミノ化酵素の投与量に関して用いられる用語“有効量”とは、改善された特
性が得られる量であることが理解されよう。
改善された特性は、本発明による脱アミノ化オキシダーゼの添加なしに調製さ
れたドー及び/又はベークト製品と比較することにより評価される。
第2の態様において、本発明は、ドーから調製されるドー及び/又はベークト
製品を調製する方法であって、パン改質又はドー改質組成物中に任意に存在する
、脱アミノ化オキシダーゼ酵素を、ドー及び/又は該ドーのいずれかの成分及び
/又は該ドーの成分のいずれかの混合物に加えることを含む方法に関する。
更なる態様において、本発明は、各々本方法により生産されたドー及びベーク
ト製品並びに脱アミノ化オキシダーゼ酵素を含むプレ混合物に関する。本文脈に
おいて、用語“プレ混合物”とは、その
慣用的な意味において、即ち工業的なパンベーキングプラント/設備ばかりでな
く小売りの製パン所に用いることができる通常フラワーを含むベーキング剤の混
合物として理解されることを意図する。
最後の態様において、本発明は、ドー及び/又はベークト製品の調製のための
脱アミノ化オキシダーゼ酵素の使用に関する。
発明の詳細な記載
発明の背景のセクションに言及されるように、上述の脱アミノ化オキシダーゼ
は、動物、植物及び微生物、例えば真菌(糸状菌又はイースト)又はバクテリア
を含むいくつかの異なる生物において見い出されている。本発明に用いられる脱
アミノ化オキシダーゼの起源はドー及び/又はベークト製品改質特性を発揮する
点において重要でないと考えられる。従って、本発明のドー及び/又はパン−改
質組成物の脱アミノ化オキシダーゼ酵素は、上述の起源のいずれかのものであり
得る。
本発明に用いられる脱アミノ化酵素はアミンオキシダーゼ、即ち酸素及び水の
消費並びに過酸化水素の発生と同時にアミン含有基質の酸化的脱アミノ化を触媒
することができる酵素であり得る。本目的のためにいずれかの型のアミノオキシ
ダーゼを用いることができると現在確信される。アミンオキシダーゼは哺乳動物
又は微生物源、例えばバクテリア又は真菌源のものであり得、そして組換えDNA
技術によって生産され得る。アミンオキシダーゼは、例えば書籍“Oxidative En
zymes in Foods”(Eds D.S.Robinson and N.A.M.Eskin,Elsevier Science Publ
isher Ltd,1991)のpp.94〜97の表2に言及されるいずれかのソース又はいずれ
かの型由来のもの、例えばメチルアミンオキシダーゼ、モノアミンオキシダーゼ
等であり得る。
アミンオキシダーゼはリシルオキシダーゼ、即ちリシルの酸化物脱アミノ化を
行うことができる酵素であり得る。
アミンオキシダーゼは、ベンジルアミンオキシダーゼ、例えば微生物源のもの
、例えば真菌(糸状菌又はイースト)源のものであり得る。ベンジルアミンオキ
シダーゼは、ピキア(Pichia)属、例えばピキア・パストリス(Pichia pastor is
)から得ることができ、例えばTur,S.S及びLerch,K.(FEBS letters,Vol.
238,No.1,September 1988,pp74〜76)に記載される酵素であり得る。
好ましい実施形態において、脱アミノ化酵素はL−アミノ酸オキシダーゼ(E.C
.1.4.3.2)である。アミノ酸オキシダーゼは、1又は複数のアミノ酸、例えばL
−アルギニン、L−リシン、L−メチオニン、L−アスパラギン、L−フェニル
アラニン、及びL−ロイシン、L−セリン、L−システイン、L−グリシン、L
−グルタミン、L−ヒスチジン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリ
ン、L−トレオニン、L−プロリン、L−イソロイシン、L−アスパラギン酸、
L−グルタミン酸、及びL−アラニンに対する活性を示し得る。好ましくは、L
−アミノオキシダーゼは、コムギ中に存在する1又は複数のアミノ酸、好ましく
はコムギ中の遊離アミノ酸に対して活性を示す。
L−アミノ酸オキシダーゼは、例えば植物又は動物(このような酵素の例は、
書籍“Oxidative Enzymes in Foods”、前掲のpp.94〜97の表2に供されるもの
)由来であり得、又は微生物(真菌又はバクテリア)源由来であり得る。バクテ
リアのL−アミノ酸オキシダーゼの例は、Koyama H.(Agric.Biol.Chem.,1988
,52(3),743〜78)に記載されるコリネバクテリウム(Corynebacterium)L−ア
ミノ酸オキシダーゼ及び寄託された株DSM 2762から得ることができるクリプトコ
ッカス・ラウレンチイ(Cryptococcus laurentii)
L−アミノ酸オキシダーゼを含む。適切な真菌のL−アミノ酸オキシダーゼは、
例えば、ニューロスポラ(Neurospora)の株、例えばN.クラッサ(N .crassa
)の株からのもの、例えばNiedermannら(J.Biol.Chem.,1990,265(28),17240
〜17251)により記載される酵素であり得、又はトリコデルマ(Trichoderma)の
株、例えばWO 94/25574に記載されるT.ハルジアヌム(T .harzianum)から得
ることができる。
T.ハルジアヌムL−アミノ酸オキシダーゼ酵素は広範囲のアミノ酸、例えば
L−リシン、L−アルギニン、L−メチオニン、L−アスパラギン、L−フェニ
ルアラニン、及びL−ロイシンを酸化する。
脱アミノ化オキシダーゼは、いずれかの適切な技術を用いることにより、問題
の生物から得ることができる。例えば、脱アミノ化オキシダーゼ調製物は、当該
技術で周知である組換えDNA技術を用いることにより得ることができる。このよ
うな方法は、通常、問題の脱アミノ化オキシダーゼをコードするDNA配列を発現
し及びそれを有することができる組換えDNAベクターで形質転換された宿主細胞
を、その酵素の発現を許容する条件下で培養培地中で培養し、そしてその培養物
から酵素を回収することを含む。そのDNA配列は、ゲノム、cDNAもしくは合成源
又はこれらのいずれかの混合物であり得、そして当該技術で周知である方法に従
って合成され得る。脱アミノ化酵素は、天然においてそれにより生産される生物
又はその関連する一部から抽出することもできる。
本発明のパン改質及び/又はドー改質組成物内に含まれる脱アミノ化オキシダ
ーゼ酵素は、問題の使用に適したいずれかの形態、例えば乾燥粉末又は粒子の形
態、特に非ダスト性粒子、液体、特に安定化液、又は保護された酵素の形態であ
り得る。粒子は、例えばUS
4,106,991及びUS 4,661,452(両方ともNovo Industri A/S)に開示されるように
生産することができそして任意に、当該技術で周知である方法によりコートする
ことができる。液体酵素調製物は、例えば、栄養物として許容される安定剤、例
えば糖、糖アルコールもしくは他のポリオール、乳酸又は確立された方法に従う
他の有機酸を加えることにより安定化される。保護された酵素はEP 238,216に開
示される方法に従って調製することができる。
通常、プレ混合物又はフラワー内の含有物のために、脱アミノ化オキシダーゼ
酵素調製物は、乾燥製品、例えば非ダスト性粒子の形態であり、他方液体と一緒
の含有物のために、液体形態が有利である。
本発明のパン−及び/又はドー改質組成物は、1又は複数の他の酵素を更に含
み得る。他の酵素の例は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、例えば(ドーの伸張性
を増加させるペントサンの部分的加水分解のために役立つ)ペントサナーゼ、(
ドーを軟化させるためにドー又はドー構成物中に存在する液体の改質に役立つ)
リパーゼ、他のオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、(ドーのコンシ
ステンシーを変えるのに役立つ)ペルオキシダーゼ、(特に強力コムギ粉を用い
る場合にグルテンを弱めるのに役立つ)プロテアーゼ、ペプチダーゼ及び/又は
アミラーゼ、例えば(イーストにより発酵され得る糖を供するのに役立つ)α−
アミラーゼである。他の酵素は、好ましくは、得られるドー及び/又はベークト
製品の要求される特性を生ずるのに有効な量で存在する。
他の酵素構成物は、好ましくは、微生物源のものであり、上述の技術に用いら
れる慣用的技術によって得ることができる。
ドー−改質及び/又はパン改質組成物は、問題の脱アミノ化酵素のための添加
された基質も含み得る。例えば、脱アミノ化酵素がL
−アミノ酸オキシダーゼである場合、ドー改質及び/又はパン改質組成物はL−
アミノ酸、例えば上述のL−アミノ酸のいずれか、好ましくは用いるL−アミノ
オキシダーゼの基質特異性により選択されたものを含むことが有利であり得る。
脱アミノ化酵素のための基質の投与量は、改良されたグルテン強化のような要求
される改良された特性を生ずるための酵素、との十分な反応を許容するのに十分
であるべきである。これにより、存在するなら、脱アミノ化酵素のための基質は
有効量で存在する。
他の酵素成物に加えて、又はそれのかわりに、ドー改質及び/又はパン改質組
成物は、慣用的に用いられるベーキング剤、例えば1又は複数の次の成分:(皮
の色を供する)ミルク粉末、(薄力フラワーの気体保持力を改善するための)グ
ルテン、(ドー伸張性及びある程度結果として生ずるパンのコンシステンシーを
改善するための)乳化剤、(ドーの軟化及びパンのコンシステンシーのための)
粒化脂肪、(グルテン構造を強化するために添加される)オキシダント(例えば
アスコルビン酸、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム又は過硫酸アンモニウム)
、アミノ酸(例えばシステイン)、糖、及び塩(例えばドー硬化剤(firmer)を
作るのに役立つ塩化ナトリウム、酢酸カルシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸カル
シウム)、フラワー又はデンプンを含む。
適切な乳化剤の例は、モノ又はジグリセリド、モノ又はジグリセリドのジアセ
チル酒石酸エステル、脂肪酸の糖エステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル
、モノグリセリドの乳酸エステル、モノグリセリドの酢酸エステル、ポリオキシ
エチレンステアレート、リン脂質及びレシチンである。
本発明のパン改質及び/又はドー改質組成物は、典型的には、0.01〜5%、特
に0.1〜3%に相当する量でドー内に含まれる。
ドー及び/又はベークト製品の調製のために脱アミノ化オキシダーゼを用いる
本発明の方法によれば、ドーが製造される混合物に酵素をそれだけ加えることが
できる。あるいは、脱アミノ化オキシダーゼ酵素は、上述のようにドー改質及び
/又はパン改質組成物の成分として加えることができる。
本発明の方法に用いられる脱アミノ化オキシダーゼ酵素の投与量は、問題のド
ーの性質及び組成、得られるべき要求される改善された特性の程度、及び用いら
れるべき脱アミノ化オキシダーゼ酵素の性質に適合されるべきである。通常、酵
素調製物は、フラワー1kg当り0.01〜1000mg、好ましくはフラワー1kg当り0.1
〜100mgの酵素タンパク質、より好ましくはフラワー1kg当り0.1〜10mgの酵素タ
ンパク質に相当する量で添加される。従って、本発明のパン改質又はドー改質組
成物において、ほとんどの場合上述のようなフラワー1kg当りの酵素タンパク質
の投与量に相当する有効量の脱アミノ化酵素が含まれる。
酵素活性に関して、ドー及び/又はベークト製品の要求される改善を引きおこ
すための所定の脱アミノ化オキシダーゼ酵素の適切な投与量は、問題の酵素及び
酵素基質によるであろう。適切な酵素1回投与量を決定するのに当業者の知識の
範囲内であろう。例えば、以下の実施例に用いられるトリコデルマ・ハルジアヌ
ム(Trichoderma harzianum)L−アミノ酸オキシダーゼのために、適切な投与
範囲はフラワー1kg当り1〜5000Units、例えばフラワー1kg当り10〜2000ユニッ
ト、より好ましくはフラワー1kg当り25〜1000ユニット、又はフラワー1kg当り
50〜1000ユニットである。
本発明の方法に従って1又は複数の更なる酵素活性が加えられる場合、これら
の活性は別個に、又は任意に本発明のパン改質及び/又はドー改質組成物の成分
としての脱アミノ化オキシダーゼ調製物
と一緒に加えることができる。他の酵素活性は上述の酵素のいずれかであり得、
そして要求される効果を生ずるように確立されたベーキングの実行に従って投与
することができる。
同様に、脱アミノ化酵素のための基質が本発明の方法に従って添加される場合
、その基質は別個に、又は任意に本発明のパン改質及び/又はドー改質組成物の
成分としての脱アミド化オキシダーゼ調製物と一緒に添加される。
上述のように、脱アミノ化オキシダーゼ酵素はドー成分のいずれかの混合物に
、ドーに、又はドー内に含まれる成分のいずれかに添加され、換言すれば、脱ア
ミノ化オキシダーゼ酵素は、ドー調製のいずれかのステップにおいて添加するこ
とができ、そして適切なら、1,2又はそれ超のステップにおいて添加され得る
。
ドー及び/又はベーキングの取扱いは、問題のドー及び/又はベークト製品の
ためのいずれかの適切な方法で、典型的にはドーをこねて、そのドーを1又は複
数の加工処理にかけ、そして適切な条件下、即ち適切な温度及び十分な期間、そ
の生成物をベーキングするステップを含む方法で行われる。例えば、ドーは、通
常のストレートなドー工程、サワー(sour)ドー工程、一晩のドーの方法、低温
及び長時間発酵法、凍結ドー法、Chrleynood Bread工程、又はSponge and Dough
工程を用いることにより調製することができる。
本発明の方法により調製されたドー及び/又はベークト製品は、通常、コムギ
ミール又はフラワーに基づいて、他の型のミール又はフラワー、例えばコーンフ
ラワー、ライムギミール、ライムギフラワー、オートムギフラワーもしくはミー
ル、大豆フラワー、モロコシミールもしくはフラワー、又はポテトミールもしく
はフラワーとの組合せに基づく。
本文脈において、用語“ベークト製品”とは、やわらかい又はク
リスプな特徴のいずれかであるドーから調製されたいずれもの製品を含むことを
意図する。本発明により有利に製造され得る白色、明又は暗タイプのいずれかの
ベークト製品の例は、パン(特に精白粉製パン全粒小麦粉製パン又はライムギパ
ン)、典型的には、ローフ(loaves)又はロールの形態、フランスバゲット型パ
ン、ピータパン、タコス、ケーキ、パンケーキ、ビスケット、クリスプブレッド
等である。
本発明のドーは先に議論された型のいずれかのものであり得、そして新鮮なも
の又は凍結されたものであり得る。
先の開示から、本発明のドーは通常、発酵されたドー又はパン種にかけられた
ドーである。ドーは、種々の方法で、例えば重炭酸ナトリウム等を加えることに
より又はパン種(発酵性ドー)を加えることにより発酵され得るが、適切なイー
スト培養物、例えばサッカロマイセス セレビシアエ(Saccharomyces cerevisia e
)(ベーカーのイースト)の培養物を加えることによりドーを発酵させることが好
ましい。市販のS.セレビシアエ株のいずれかを用いることができる。
上述の通り、本発明は、脱アミノ化オキシダーゼ酵素を含む、ドー又はドーか
ら作られたベークト製品のためのプレ混合物、例えばフラワー組成物の形態のも
のに関する。プレ混合物は、フラワー、デンプン、糖又は塩のような適切な担体
に、脱アミノ化オキシダーゼを含む本発明の脱アミノ化オキシダーゼ調製物又は
パン改質及び/又はドー改質組成物を混合することにより調製することができる
。プレ混合物は、他のドー改質及び/又はパン改質添加物、例えば上述の酵素を
含む添加物のいずれかを含み得る。
更なる態様において、本発明は、ドー及び/又はそれから作られたベークト製
品の特性を改質するための脱アミノ化酵素、特に有効
量の脱アミノ化酵素、例えばアミンオキシダーゼ又はL−アミノ酸オキシダーゼ
の使用に関する。脱アミノ化オキシダーゼの型及びそれが用いられ得る方法は先
に詳細に記載される。
最後の態様において、本発明は、パスタドー、好ましくはデューラムフラワー
又は相当する質のフラワーから調製されたものの調製のための脱アミノ化オキシ
ダーゼの使用に関する。ドーは、慣用的な技術、及び上述の同様の投与量で用い
られる脱アミノ化オキシダーゼの使用によって調製することができる。脱アミノ
化オキシダーゼは、上述の型のいずれかであり得、好ましくはアミンオキシダー
ゼ又はL−アミノ酸オキシダーゼである。パスタの調製に用いる場合、脱アミノ
化オキシダーゼは、グルテン構造を強化し、これによりドーの粘着性を削減し、
ドー強度を増加させる。
図面の簡単な説明
本発明は、添付の図面により更に詳説される。
図1は、次の記号及び文字:
□(A):コンディショナーの添加のないドー(標準)。
◇(B):120ppmのl−アルギニンを含むドー。
▽(C):120ppmのl−アルギニン、及びフラワー1kg当り600Unitのトリコデ
ルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum)からのL−アミノ酸オキシダー
ゼを含むドー。
△(D):フラワー1kg当り60Unitのトリコデルマ・ハルジアヌムからのL−ア
ミノ酸オキシダーゼを含むドー。
で特徴づけられる4つの異なるドーからのグルテン中の動的ずれ貯蔵弾性率G
’を示す。
図2は、図1と同じ記号及び文字で特徴づけられる4つの異なるドーからのグ
ルテン中の粘弾位相角δを示す。
材料及び方法
L−アミノオキシダーゼ活性の測定
その酵素をpH8.5で室温で酸素の存在下でL−アルギニンとインキュベートす
る。それにより生じた過酸化水素を過剰のABTS(2,2’−アジノビス(3−エチ
ルベンゾチアゾリン−6−スルホネート))及びペルオキシダーゼと混合すること
により測定する。595nmで測定した全体の固定した反応の後の結果として生ずる
青緑がかった色は過酸化水素の濃度の関数である。そのユニットを過酸化水素標
準から計数する。1ユニットは標準条件下で分当り1μモルの過酸化水素を形成
する酵素の量である。
ドー及びパンのテスト
本発明によれば、脱アミノ化オキシダーゼを添加することの効果は、以下の方
法を用いることにより、ドー及びパンにおいてテストすることができる。
パンの調製
配合:
水 60%
コムギ粉 100%
イースト 4%
塩 1.5%
糖 1.5%
コムギ粉はMeneba 964型のものであった。
手順:
1.ドーの混合(スパイラルミキサー)
700RPMで3分
1400RPMで3.3分
混合時間は、用いたテスト条件下で最適なドーのコンシステンス
を得るように、パン技術者により決定し、調節した。
2.1回目のプルーフ:30℃〜80%RH、15分;
3.スケーリング及びシェイピング;
4.最後のプルーフ:32℃〜80%RH、ロールについて45分、ローフ(loaves)
について55分;
5.ベーキング:230℃、ロールについて22分、ローフについて35分。ドー及びベークト製品の評価
ドー及びベークト製品は以下のように評価することができる。
ローフ特定容量:4つのローフの容量の平均値を古典的な菜種法(rape seed
method)を用いて測定する。その特定体積は、パン1g当りの容量(ml)として
計算する。対照(酵素なし)の特定容量を100として定義する。相対的特定容量
示数を次のように計算する:
ロール特定容量:を、4つのローフのかわりに20のロールを用いることだけか
えて、ローフ特定容量と同様に決定する。
ドー粘着性及びクラム構造は、以下のスケールに従って視覚的に評価すること
ができる。
ドー粘着性:ほぼ液体 1
極めて粘着性 2
粘着性 3
通常 4
乾燥 5
クラム構造:極めて乏しい 1
乏しい 2
非均一 3
均一/良好 4
極めて良好 5
ドーのエクストラビリティー及びドーの弾性は、パン技術者により手で決定す
る。
パンの堅さ:パンクラムの柔らかさをSMS-Texture Analyzerにより測定する。
20mmの直径のプランジャーでパンの20mm厚スライスの中央を加圧する。2.0mm/
sの速度でクラム5mmを押し下げるためにプランジャーに必要とされる力を記録
し、クラムの堅さとして表現する。その値が低ければクラムはより柔らかい。各
々のパンの4つのスライスを測定し、平均値を用いる。
ショックテスト:2回目のプルーフの後、ドーを含む容器を20cmの高さから落
とす。ドーを焼いて結果として生ずるパンの容量を測定する。
実施例1
グルテン強化のためのT.ハルジアヌムからのL−アミノ酸オキシダーゼ
コムギ粉ドー又はグルテンドーへの所定のドーコンディショナーの強化効果は
、動的レオロジー測定によって測定することができる。これらの測定は、振動下
でのドーの強度を示すことができる。コムギ粉ドー及びグルテンドーの両方は粘
弾性材料である。振動測定において、コムギ粉ドー及びグルテンドーの粘弾特性
は、2つの成分、即ち動的ずれ貯蔵弾性率G’及び動的ずれ損失弾性率G’に分
けることができる。損失及び貯蔵弾性率の比は粘弾性位相角δのタンジェントに
数学的に等しい。貯蔵弾性率G’の増加及び位相角δの減少はより強くかつより
弾性あるドーを示す。
動的ずれ貯蔵弾性率G’及び粘弾性位相角δを、図1の凡例に示
した量の異なるコンディショナーで処理した4つのドーからのグルテンにおいて
測定した。T.ハルジアヌムL−アミノ酸オキシダーゼは、WO 94/25574に記載
されるように得た。コンディショナーは、ドーの混合の前にフラワーに加えた。
フラワードーを11/2時間、32℃でインキュベートした後、グルテンをコンディ
ショナーを含むフラワードーから洗い落とした。テストの結果を図1及び2に供
する。
図1に示すように、驚くことに酵素なしの対照と比較して、L−アミノ酸オキ
シダーゼがドー内に存在する場合に貯蔵弾性率G’はかなり高いことが見い出さ
れた。この効果は、L−アルギニンをドーに加える場合にも見られる。これは、
グルテンが、それによりドーも、酵素の作用によりかなり強化されることを示す
。
図2において、粘弾性位相角δは、L−アミノ酸オキシダーゼがドー内に存在
する場合、対象に対して低いことが示された。このことは、より弾性のあるグル
テンの粘弾特性、それによりドーが酵素の作用により達成されることを示す。
実施例2
L−アミノオキシダーゼで焼いたローフ及びロール
上述の材料及び方法セクションに記載される通り、ローフ及びロールを調製し
た。L−アミノ酸オキシダーゼは実施例1に記載されるものであった。
標準的な配合に加えて、以下の表に示す量においてL−アルギニン及びアスコ
ルビン酸を加えた。
次の結果を得た。
アスコルビン酸、ppm 15 15 15 15 15 15
L−アルギニン、ppm 15 15 0 0 50 50
L-AAオキシダーゼ、U/kg 0 60 0 60 0 60
粘着性 4 4.5 4 4.5 4 4.5
堅 さ 4 4 4 4 4 3
伸張性 3 2.5 3 2.5 3 2.5
弾 性 3 2.5 3 2.5 3 2
ロール特定容量 100 114 102 109 102 111
ローフ特定容量 100 111 100 114 99 112
ショックを与えたローフ 100 106 99 103 97 104
上述の結果は、要求されるドーの取扱い、例えば粘着性の減少、並びにショッ
クの有無にかかわらないロール及びローフのかなり大きな容量の増加への1−ア
ミノ酸オキシダーゼの効果を証明する。特に、酵素を加えない対照と比較したシ
ョック安定性の改善は著しい。
実施例3
本実施例1において、L−アミノ酸オキシダーゼを用いる効果をグルコースオ
キシダーゼの効果と比較した。L−アミノ酸オキシダーゼは実施例1に記載され
る。用いるグルコースオキシダーゼはNovo Nordisk A/Sから利用できるGluzyme
であった。
標準的配合に加えて、以下に示す量でL−アルギニン及びアスコルビン酸をド
ーに加えた。
以下の結果を得た:
アスコルビン酸、ppm 15 15 0 15 0
L−アルギニン、ppm 15 15 15 0 0
L-AAオキシダーゼ、U/kg 0 30 60 0 0
グルコースオキシダーゼ、U/kg 0 0 0 150 150
ローフ特定容量 100 111 102 106 89
ショックを与えたローフ 100 108 91 100 80
上述の結果から、ショックを与えていない及びショックを与えた
パンの容量に対して、L−アミノ酸オキシダーゼはグルコースオキシダーゼより
かなり優れた効果を示すことが明らかである。また、アスコルビン酸を添加しな
かった場合、l−アミノ酸オキシダーゼの効果はグルコースオキシダーゼで得ら
れた結果より優れている。
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,
CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,G
E,HU,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR
,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,
MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,P
L,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK
,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,
VN
(72)発明者 シィ,ヨーン キー
スイス国,ツェーハー―4243 ディッティ
ンゲン,ノイマット,ノボ ノルディスク
フェルメント リミティド アクチェン
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