JP2000509024A - 腫瘍疾患の治療用医薬組成物 - Google Patents

腫瘍疾患の治療用医薬組成物

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Abstract

(57)【要約】 上皮の非侵食状態から繊維芽細胞様侵食状態への細胞の可逆転移を特徴とする上皮の侵食性腫瘍疾患の治療のための、上皮起源の腫瘍細胞に対するTGF βの活性を抑制する物質を活性化合物として含む医薬組成物。医薬組成物は好ましくはRasインヒビターと組み合わせてTGF βインヒビターを含む。上皮の侵食性腫瘍疾患の治療用物質のスクリーニング方法。

Description

【発明の詳細な説明】 腫瘍疾患の治療用医薬組成物 本発明は腫瘍治療の分野に関する。 ヒトに生じる腫瘍の80%より多くは上皮起源のものである。上皮腫瘍(癌腫) の形成はヒト結腸癌(Powellら,1993)及びマウスの皮膚腫瘍(Wrightら,1994)の 進行に最も明らかに示される多段階プロセスである。癌腫は突然変異が起こった 個々の細胞または細胞の小さいグループから始まるものと推定される。これらの 細胞は良性の上皮の過形成領域または形成不全領域に発達する。in situの癌腫 (これらは次いで侵食性及び転移性を獲得し得る)へのこれらの過形成領域の進 行は腫瘍細胞中の幾つかの更なる突然変異を必要とする。特徴的に、これらの細 胞はそれらの基底膜をタンパク質分解して破壊して、静的分極細胞から組織中で 移動することができる非分極細胞に発達し、血流中に生存し、離れた部位で転移 を形成する能力を獲得する(Liottaら,1991;Liotta及びStetler-Stevenson,199 1)。 遺伝子発現の深部変化は悪性に形質転換した細胞の構築及び挙動の多くの変化 に関係しているが、これらの新たに獲得した性質のいずれもが侵食性腫瘍細胞中 のみで生じない。基底膜への付着、そのタンパク質分解並びに基底膜及びその下 にある間充織中の移動が通常のプロセス、例えば、栄養芽細胞の移植、胚の発達 中の構造の移動、乳腺の発達及び創傷治癒中の上皮の再組織化に重要な段階であ る(Aznavoorianら,1993)。 癌腫の発達及び進行を更に良く理解するために、これらの通常のプロセスの調 節解除(deregulation)が細胞侵食及び転移においてどのように起こるのかを理解 することが重要である。 近年の研究は正常な状況及び病的状況において上皮表現型のモジュレーション に関係する分子メカニズムの理解に貢献していた(Reichmannら,1992;Frisch,1 994)。更に、外在性ポリペプチド因子、例えば、スカッター(Scatter)因子(SF) /肝細胞成長因子(HGF)及び新レギュリン(New-Regulin)/HER-レギュリンが上皮 細胞の移動特性及び分化特性の変化に重要な役割を果たしている(Birchmeier ら,1993;Hartmannら,1994;Sorianoら,1995)。ごく最近、形質転換成長因子1 (TGF β1)が胸部上皮細胞の表現型の別の強力なモジュレーターとして同定され た(Miettinenら,1994;Zambrunoら,1995)。 TGF β1は多機能性ポリペプチド因子の大きいスーパーファミリーに属する。T GF βファミリーそれ自体は三つの遺伝子、TGF β1、TGF β2及びTGF β3からな り、これらは互いに極めて高い相同性を有する。哺乳類では、TGF βスーパーフ ァミリーは種々のTGF β遺伝子を含むだけでなく、胚モルフォゲン、例えば、ア クチビン、“ミュラー抑制物質”のファミリー、及びbmpファミリー(“骨誘導 因子”)を含み、これらは胚発達の調節及び上皮の再組織化の両方に重要な役割 を果たす(Roberts及びSporn,1992)。TGF β1は上皮細胞を含む多くの細胞型の 増殖を抑制するが、種々の型の間充織細胞の増殖を刺激する。加えて、TGF βは 細胞外マトリックスタンパク質の合成を誘発し、マトリックスプロテイナーゼ及 びプロテイナーゼインヒビターの発現を調節し、インテグリンの発現を変化する 。更に、TGF βは多くの腫瘍中で多量に発現される(Derynckら,1985;Keski-Oja ら,1987)。新生組織中のこの強い発生は、TGF βが転移カスケードの種々の段 階と関連する悪性に影響する戦略的成長/形態形成因子であることを示すことが できるであろう。TGF βは正常な上皮及び比較的分化した癌腫細胞の増殖を抑制 し、一方、多くの上皮特性を欠いている未分化腫瘍細胞は一般にTGF βによる増 殖抑制に耐性である(Hooseinら,1989;Murthyら,1989)。更に、TGF β1は乳腺 腫細胞系の侵食性かつ転移性ポテンシャルを強化することがあり(Welchら,1990 )、これは腫瘍進行におけるTGF β1の役割を示す。しかしながら、腫瘍細胞侵食 及び転移中のTGF βの効果の基礎となる分子メカニズムは更なる説明を必要とす る。 ヒトの乳癌の形成は(突然変異し、または、更にしばしば、突然変異しなかっ た)ras遺伝子の過剰発現(overexpression)及びレセプター−チロシンキナーゼ の過剰発現を伴い、これらはRas-シグナル伝達経路を活性化する(De Bortoliら ,1985;Kernら,1990;LeJeuneら,1993)。 本発明の目的は腫瘍治療用の新規な医薬組成物を提供することであった。 問題の解決は行われた試験から得られた下記の知見から開始した。 1.(i)癌遺伝子Rasの発現、(ii)正常なRasまたはRasシグナル伝達経路を活性化 するレセプターチロシンキナーゼの過剰発現または(iii)腫瘍細胞中で活性化さ れたその他の癌遺伝子と協力して、腫瘍細胞に対するTGF βの活性が侵食ポテン シャルを有する繊維芽細胞様細胞への上皮細胞の変換をもたらす。 2.変換された細胞によるTGF βのオートクリン産生が変性した侵食性細胞状態 の維持をもたらす。 3.TGF β−レセプターシグナルにより媒介された伝達の中断が“上皮−繊維芽 細胞様変換”(EFC)及び同時の侵食を阻止し、EFCを既に受けており、安定な侵食 様式で逆に上皮様細胞(これらは最早侵食的に増殖していない)に成長している 細胞を変化し得る(繊維芽細胞様−上皮変換;FEC)。 本発明の範囲内で、乳腺の正常な発達におけるTGF β1の役割がTGF β1インヒ ビターの可能な副作用を評価する観点で調べられた。 本発明の範囲内で、一方では、Ha-Ras形質転換した胸部上皮細胞(EpRas細胞) がマウスの腫瘍の形成において上皮から繊維芽細胞様(または間充織)状態への 転移(変換)を受けることが示された。この転移が以下EF転移またはEF変換(“ 上皮−繊維芽細胞様細胞変換”、EFC)と称される。また、このようなEF変換がin vitroで実証された。このために、EpRas細胞細胞が型Iコラーゲンゲル中で培 養された。血清の不在下で、これらの細胞が三次元の嚢胞中空構造に発達し、そ の壁が分極上皮細胞の単一の厚さの層(単層)からなっていた。TGF β1はこれ らの同じRas形質転換細胞を繊維芽細胞様性質を有するスピンドル形細胞からな る組織崩壊した(disorganised)ストランドに発達させた。非形質転換上皮細胞で は、TGF β1はこのような変化を生じることができなかった。変換された細胞は コラーゲンゲル及びニワトリ心臓侵食アッセイの両方で高度に侵食性であった。 驚くことに、繊維芽細胞様細胞が一旦その変換を受けると、それら自体が多量の TGF β1を産生することがわかった。この自己産生されたTGF β1がTGF β1中和 抗体により不活化された場合、細胞は逆に分極した上皮表現型に変化した。この 細胞挙動は、変換された繊維芽細胞様表現型がTGF β1により維持され、TGF β1 がオートクリンループにより作用することを示す。 また、本発明の範囲内で、in vitroで観察されたメカニズムがまたin vivoに 適用されることが示された。EF変換を受けた腫瘍細胞それ自体がTGF β1を産生 した。更に、TGF β1は実験で誘発された腫瘍中でHa-Ras-形質転換胸部上皮細胞 の侵食性表現型を誘発し、持続することができる。 更に、本発明の範囲内で、種々の起源のヒト腫瘍(腎臓細胞癌腫、乳癌)中に “上皮細胞-繊維芽細胞様細胞変換”(EFC)の発生の指示があることが示された( 研究した腎臓細胞癌腫の75%及び乳癌の25-60%が一般的な上皮マーカーサイト ケラチン及び間充織マーカービメンチンを同時発現した)。また、全てのこれら の腫瘍それ自体がTGF β1を産生することが示された。これは、本発明に使用さ れたモデル系で得られた結果がまたヒト腫瘍にも適用されるという指示である。 第四に、本発明の範囲内で、TGF βレセプターにより誘発されたシグナル伝達 の完全な抑制が優性-陰性TGF β−レセプター鎖II(TβRII-dn)を使用して達成 し得ることが示された。このようなTβRII-dnの発現はRas形質転換マウス胸部上 皮細胞中でけでなく、ヒト及びマウス中の幾つかの既に間充織の侵食的に増殖し ている癌腫細胞系中で悪性の侵食性表現型の排除並びに実験動物中でこれらの細 胞系により得られる腫瘍または転移の形成の完全な抑制をもたらした。 こうして、本発明は下記の知見に基いている。 プロトオンコジーン及び腫瘍サプレッサー遺伝子中の多数の突然変異が発癌に 関与する(Vogelstein及びKinzler,1993)。しかしながら、特定の癌遺伝子突然 変異が細胞の表現型の特定の変化とどのように関連するのか、またこれらの変化 がその後に腫瘍細胞侵食及び転移に寄与する様式について、殆ど知られていない 。本発明の範囲内で、モデル系を使用して、Ras-オンコプロテインがコラーゲン ゲル及び発達している腫瘍の両方中でTGF β1に対する胸部上皮細胞の細胞反応 を著しく変化することが最初に実証された。細胞のこの変更された反応性がTGF β1にEFCを誘発させる。一旦変換されると、これらの繊維芽細胞様細胞それ自体 は高濃度のTGF β1を産生し、こうしてそれら自体の間充織特性及び侵食性を保 持した。 次いでこの原理の理論的な有効性がヒト及びマウスの幾つかの無関係の腫瘍モ デルで実証することができた。これらの腫瘍細胞中で、その他の癌遺伝子はおそ らくHa-Rasの機能を呈する。全てのこれらの細胞中で、TGF β1及びTGF β1に よる既存のオートクリン刺激の中断の両方が腫瘍細胞表現型に著しく影響するこ とが示された。また、TGF βはこれらの細胞中で侵食的増殖の増加をもたらし、 一方、TGF β−レセプターまたはそれにより活性化されたシグナル伝達経路のス イッチオフはEFCの再形成、即ち、繊維芽細胞様細胞−上皮変換(FEC)及び/また は侵食性の腫瘍生産細胞表現型の損失をもたらした。 本発明の範囲内で行われた実験は当初にはRas形質転換マウス胸部上皮細胞が 腫瘍形成中に侵食性スピンドル細胞に変換するという観察から開始した。同様の スピンドル細胞腫瘍がヒト及び動物モデルの両方で脳、皮膚、結腸及び胸部にお いて記載されていた(Buchmannら,1991;Guldberg,1923;Sandfordら,1961;Sonn enbergら,1986;Stolerら,1993)。これらのスピンドル細胞癌腫の起源は未だに 明らかではないが、幾人かの研究者らはこれらのしばしば高度に侵食性の腫瘍が 繊維芽細胞様起源の腫瘍の別のクラスを構成すると考えており、一方、その他の 著者らはこれらの腫瘍が上皮起源のものであると推定する。 本発明の範囲内で使用されたモデル系において、最初に使用したスピンドル細 胞腫瘍は動物に注射された上皮ドナー細胞に明らかに由来した。その腫瘍に由来 するスピンドル細胞はG418中の選択を克服し、細胞特異性かつ組織特異性のサイ トケラチンを発現し、それらのドナー細胞状態及びそれらの上皮起源を確認した 。更に、行われた試験は、注射された上皮細胞及び変換された繊維芽細胞様腫瘍 細胞が同じ細胞クローンから生じ、そのゲノムのその他の部位へのレトロウイル スベクターの再組込みが変化の可能な原因として除外し得ることを示した。殆ど 更に重要なことは、変換された細胞の繊維芽細胞様表現型が通常の培養条件で全 く安定であることであり、かつ細胞がTGF β1活性の中和後に分極した上皮細胞 に有効に逆に変化することであった。これは細胞変換の原因である遺伝子変化ま たは後成学的変化を除外する。in vivoの表現型の劇的な変化に関する最も可能 な説明は、Ras形質転換細胞とそれらの周囲の間充織細胞の間の相互作用が繊維 芽細胞様細胞への上皮細胞の変換をもたらすことである。本発明の範囲内で、EF Cが或る腫瘍中で発癌に関係するメカニズムであることがこうして示された。 また、本発明の範囲内で、TGF β1がコラーゲンゲル中及び腫瘍発達中の両方 でEFCを誘発することが示された。最初に使用した細胞モデルにおいて、この TGF β1誘発変換は活性化Rasタンパク質の協力を著しく必要とする。原発性胸部 上皮細胞または親EpH4細胞のいずれもがTGF β1誘発EFCを受けなかった。これか ら、EFCは種々のシグナル伝達経路(これらは一方でTGF β1により、他方でHa-R asにより活性化される)の相乗作用により誘発されるものと結論し得る。この仮 定は、活性化Rasタンパク質がTGF βファミリーの員に対し細胞に関する同様の 効果を有することを示すその他の知見により支持される。これは、例えば、筋原 分化(Payneら,1987)及び中胚葉の形成(Whitman及びMelton,1992)に適用される 。心筋中で、TGF βは血流力学的負荷により調節された胚心臓の成長と関連する 遺伝子を高度に調節する。これらの作用は活性化Rasにより少なくとも部分的に 模擬され(Parkerら,1990;Thorburnら,1993)、Ras及びTGF βが少なくとも或る 生物系で相乗作用し得ると推測させる。 これに関連して、正常なRas及び突然変異Rasの過剰発現が乳癌を含むかなりの 数のヒト癌腫で観察された(DeBortoliら,1985;Handら,1984;Slamonら,1984) ことが重要である。更に、リガンドのオートクリン生成並びにc-Rasを含むシグ ナル伝達経路の開始時に生じるレセプター−チロシンキナーゼ(例えば、HER-1 、HER-2)の過剰発現及び/または構成的活性化が乳癌中の頻繁な変化である(Ker nら,1990;LeJeuneら,1993)。TGF β1はまた多くのヒト腫瘍中に多く存在する ので(Derynckら,1985;Keski-Ojaら,1987;Thompsonら,1991)、本発明の範囲内 で得られた結果に基いて、Ras誘発シグナル及びTGF β1誘発シグナルはヒト腫瘍 中で相乗作用すると結論し得る。本発明の範囲内で行われた実験の結果により実 証されるように、TGF β−レセプターはまたRas以外の癌遺伝子により形質転換 された腫瘍細胞中でEFC及び侵食性を調節し得る。こうして、本発明の範囲内の 別の重大な知見は、TGF βが分極上皮表現型の可変性(plasticity)を調節する 際にRas、及びチロシンキナーゼを含む種々のオンコプロテインと協力すること である。 再生コラーゲンゲル中の無血清(かつ無水TGF β)細胞培養後に、EpRas細胞 は発癌に関する大きな能力及び高度の上皮分極を示した。しかしながら、EpRas 細胞は親EpH4細胞または原発性胸部上皮細胞により形成された狭い分枝管とは対 照的に幅広の管並びに肺胞腔を主として形成した。これは、Rasオンコプロテイ ンそれ自体がTGF βの不在下で上皮細胞の形態形成挙動を或る程度変更すること ができることを示す。その他の系では、活性化Rasが上皮分極に関して更に強力 な効果を有すると記載されていた(Eaton及びSimons,1995)。ここで、Rasによる 形質転換は先端タンパク質の極性発現の分断をもたらし、一方、基底外側マーカ ータンパク質の発現は影響されないままであった(Schoenenbergerら,1994)。し かしながら、上記実験はFCS(それ自体がTGF β1を含む)の存在下で行われたの で、それらを本発明の範囲内で得られた結果(このような明らかな分極欠陥が観 察し得なかった)と比較することは難しい。外在性TGF β1は細胞極性を完全に 破壊したので、上記Ras形質転換細胞系の極性の部分破壊が血清中に存在するTGF β1濃度に起因し得ることが可能である。それにもかかわらず、EpRas細胞中の 形態形成挙動は、おそらく増大されたプロテアーゼ活性の結果として、わずかに 変化される。 TGF βは上皮細胞の極性を完全に破壊し、細胞をスピンドル形かつ侵食性にし た。これらの変化はTGF β1の一定の存在に依存した。何となれば、TGF β1中和 抗体が添加された時に、スピンドル細胞は迅速に分極上皮細胞に逆に変化したか らである。これらの結果からの最も重要な結論は、Ras形質転換細胞が擬似正常 表現型と高度に催腫瘍性の表現型の間でTGF β1により前後にスイッチし得るこ とである。この強い表現型可変性は一般に侵食的に増殖している細胞の特徴であ るかもしれず、また侵食性腫瘍細胞が繊維芽細胞の移動特性をしばしば示す理由 を説明するかもしれない。溢出後に、これらの繊維芽細胞様移動細胞は離れて位 置された組織により与えられる新しい環境中で良く分化した二次腫瘍に逆に発達 することができるべきである(以下を参照のこと)。こうして、増大された表現 型可変性は侵食性腫瘍細胞の特徴である。 本発明の範囲内で到達した別の必須の知見は、EpRas細胞がin vitro及びin vi voの両方でかなりの量のTGF β1を産生するためにEFCを受ける必要があることで ある。腫瘍細胞はTGF β1のオートクリン産生によりそれらの繊維芽細胞様表現 型を維持することができること、及び産生細胞に関するオートクリンTGF β1産 生及び効果(オートクリンループ)が細胞の表現型再変換を可能にするために中 断される必要があることが示された。EFCを誘発し、次いで侵食性表現型 を有効に維持するTGF β1の能力はまた初期に上皮Ras形質転換細胞が腫瘍増殖中 に漸次かつ一様にスピンドル細胞に変化した理由を説明し得る。 マウスへのそれらの注射の直後に、分極Ras形質転換上皮細胞はかなりの量のT GF β1を発現しなかったし、また放出しなかった。しかしながら、in situハイ ブリダイゼーション及び免疫組織化学により実証されたように、微小腫瘍の周囲 のストローマ細胞はサイトカインを発現した。これらのストローマ細胞は繊維細 胞及び内皮細胞として同定し得るが、その他の細胞型、例えば、マクロファージ 及びリンパ球がおそらくまた存在したことが椎定される必要がある。全てのこれ らの細胞型はTGF β1を産生し、放出することが知られている。最も可能な結諭 は、TGF β1の効果が主としてそれらのタンパク質分解活性化のレベルで調節さ れることである。TGF βの主な調節は生物活性分子への潜在物のプロセシングを 調節する因子により行われる。しかしながら、in vivoのTGF β活性化について は実際に何も知られていない。プロテアーゼプラスミンは同時培養系中で潜在的 TGF β1の二つの細胞型を活性化し得るが、二つの異なる細胞型が直接接触して いるか、または一緒に接近している場合に限られる(Antonelli-Orlidgeら,1989 ;Satoら,1990)。異なる細胞型のこの密接な接触は、ストローマによる腫瘍の 封入後に、かつドナー腫瘍細胞が腫瘍発達中に受容動物のストローマ細胞と混合 される場合には更に大きな程度で本発明の範囲内で使用された系中で起こるべき である(図2B)。更に、細胞外マトリックスタンパク質であるトロンボスポンジ ン(TSP)が潜在的TGF βを活性化する。この場合、活性化は可溶相中で起こり、 タンパク質分解活性を必要としない(Schultz-Cherryら,1994)。実際に、癌の発 達を支持する際のトロンボスポンジンの役割及び悪性乳癌中の増大されたトロン ボスポンジン濃度が簡潔に報告されていた(Castleら,1991;Wongら,1992)。こ うして、オンコプロテインHa-Rasと協力して、TGF β1のオートクリン産生が繊 維芽細胞様表現型を維持することが本発明の範囲内で示された。 本発明の範囲内で到達した知見及び結論は図9に示される仮説モデルをもたら いた。腫瘍形成に関係するTGF β1は主として腫瘍ストローマの浸潤細胞、例え ば、繊維細胞、内皮細胞、リンパ球及びマクロファージにより産生されるものと 仮定される。腫瘍細胞と異なる細胞型の腫瘍ストローマの相互作用がTGF β1の 有効な産生及び/または活性化を誘発すべきである。これは順に上皮腫瘍細胞を 繊維芽細胞様かつ侵食性の表現型に変化させるべきである。次いでこれらの繊維 芽細胞様細胞それ自体がオートクリンループでそれらに作用し、こうして繊維芽 細胞様表現型を維持するとともにまたその他の上皮細胞をEFCに動員することを 更に容易にするTGF β1を産生し始める。更なる突然変異または選択メカニズム がこれらの侵食的に増殖している細胞の幾つかを血管に移動させ、再度そこから 出て離れた部位で二次腫瘍を形成させるべきである。このモデルは、増大された TGF β1発現がまたマウス前立腺癌モデル(Thompsonら,1992;1993)で悪性への進 行に関係することを示す知見と一致する。 従来記載された知見は、Ras形質転換マウス胸部上皮細胞を使用して組み合わ されたin vitro/in vivoモデル系で得られた。その他の試験の範囲内で、この モデルの重要な局面(EFC、腫瘍中のTGF β1産生)が腎臓及び胸部の多数の原発 性ヒト癌腫中に検出された。こうして、研究した全ての腎臓細胞癌腫の大半並び に悪性の程度に依存する研究した胸部腫瘍の%において、EFCの発生はサイトケ ラチン(一般的な上皮マーカー)及びビメンチン(間充織マーカー)の同時発現 により実証される。更に、研究した全ての腫瘍において、腫瘍細胞それ自体によ るTGF β1の産生が抗TGF β抗体による組織化学染色によりタンパク質レベルで 、そしてまたin situハイブリダイゼーション及びRT-PCRによりmRNAレベル で両方で実証された。 本発明の範囲内で行われた別の一連の試験により、TGF β−レセプターは一般 にEMTの調節及び侵食的腫瘍細胞増殖に重要な位置を占めることが示された。Ha- Ras形質転換胸部上皮細胞中だけでなく、その他の上皮型に由来し、どの癌遺伝 子がHa-Ras機能を受け継ぐのかが知られていない幾つかのその他の腫瘍中で、TG F β−レセプターが上皮可変性並びに腫瘍細胞の侵食的増殖の重要なレギュレー ターとして同定された。こうして、コラーゲンゲル中の2種のヒト癌腫細胞系( 腎臓癌腫系MZ 1795、鼻咽頭癌腫系KB)(おそらく分泌TGF β1により生じた)の侵 食的増殖を中和抗TGF β1抗体により完全に抑制することが可能であった。 上記仮説の証明が最後に優性−陰性TGF βレセプター(TβRII-dn)により提供 された。このTβRII-dnは型Iの内在性レセプターに結合するが、それらをリン 酸化することができないレセプター鎖IIの所謂“キナーゼーデッド”突然変異体 を構成する。このようにして、型Iの全てのTβRII-dn結合TGF β−レセプター 鎖が不活化される。何となれば、これに必要とされるレセプター鎖IIによるリン 酸化が不在であるので、それらがリガンド(TGF β1)の結合後でさえもシグナル 伝達を活性化することができないからである。この種の優性−陰性TGF β−レセ プターが腫瘍細胞中で過剰発現される場合、TGF β−レセプターから進行する完 全なシグナル伝達がこれらの細胞中で抑制し得る。こうして、TβRIIの発現はTG F βを抑制し、またはTGF β−レセプターの活性化により誘発されるシグナル伝 達経路を抑制する活性を刺激するのに適している。 最初にTβRII-dnがHa-Ras形質転換マウス胸部上皮細胞(EpRas)中で過剰発現さ れた。得られた全てのクローンがヌードマウス中の大きく遅延された腫瘍増殖を 示した。更に、このような腫瘍から分離された細胞は上皮表現型を有し、上皮マ ーカー(E−カドヘリン、ZO-1)を発現したが、間充織マーカー(ビメンチン) を発現しなかった。これは、TβRII-dnの発現が腫瘍形成中にEFCを抑制したこと を示す。 これらの結果を得た後に、TGF β−レセプターのシグナル伝達のスイッチオフ がまた既にEFCを受け、こうして安定な間充織の侵食性表現型を有する腫瘍細胞 中で作用するか否かをチェックすることが有益であった。マウスの結腸癌系CT26 がこのような細胞系の例として選ばれた。この腫瘍細胞系はマウスの皮下注射後 に直ちに肺転移を形成するという非常に顕著な傾向を有し、その結果、原発性腫 瘍が良い時期に手術で除去された後でさえも動物が肺転移により死亡する。この 細胞は間充織形態を示し、コラーゲンゲル中でスピンドル形細胞の不規則な鎖及 びストリングに成長し、基底サイトケラチンとは別の上皮マーカーを発現しない 。その代わり、これらの細胞は高いビメンチン発現を有する。優性−陰性TGF β −レセプター(TβRII-dn)がこれらの細胞中で過剰発現される場合、細胞はコラ ーゲンゲル中で大小の緻密な塊を形成し、半嚢胞(ドーム)を形成し、多量のE −カドヘリン及びZO-1を発現する上皮様(epitheloid)細胞としてプラスチック上 で増殖する。こうして、細胞がTβRII-dnにより上皮表現型を有する細胞に逆に 変化された(繊維芽細胞様−上皮変換、FEC)。 また、優性−陰性TGF β−レセプター(TβRII-dn)の相当する活性がin vivoで 観察された。CT26細胞の異なるTβRII-dn発現クローンがマウスに注射された時 、腫瘍形成がクローンに応じて異なる量だけ遅延された。多くのクローンでは、 腫瘍形成はTβRII-dnを含まない対照CT26細胞で注射された動物の場合の1−2 週とは反対に6−8週後にのみ起こった。しかしながら、TβRII-dnの活性は、 原発性腫瘍が或るサイズでマウスから除去され、転移の形成が予想される時に一 層顕著であった。この実験において、転移はTβRII-dn発現CT26細胞で注射され たマウスのいずれにも発生せず(18週以上の後でさえも)、一方、対照動物は腫 瘍の切除後の2−4週以内に肺転移のために死亡した。 本発明に関するこれらの実験からの決定的な結論は、TGF β−レセプターによ り媒介されるシグナル伝達の抑制がEFCの発生及び得られる侵食性の獲得を阻止 することができるだけでなく、既存の侵食的に増殖している腫瘍細胞をそれらが 最早侵食性ではない良性状態に逆に変化することができることである。 要約すると、本発明の範囲内で得られた知見は、細胞の増大された感受性及び 変化された反応性が、上皮表現型を変更するTGF βの能力と較べて、一般に上皮 腫瘍細胞の特徴に相当することを示す。この変化された反応性はRas-(オンコ) プロテインによりもたらされるが、またRasを活性化するチロシンキナーゼ、並 びに未だ知られていないオンコプロテインのようなその他の物質によりもたらさ れ得る。通常の環境シグナル、例えば、TGF β1により誘発されるシグナルに対 するこの変化された癌遺伝子誘発反応様式は、腫瘍細胞中の変化された遺伝子発 現そしてまた腫瘍とストローマ細胞の間のシグナルの不正確な伝達または解釈を もたらすべきである。腫瘍細胞とそれらの隣接環境の間のこの異常な“クロスト ーク”は腫瘍進行と普通に知られているものについて駆動力であることが明らか であろう。 更に、実験の結果は、その他のおそらく知られていない癌遺伝子と同様にRas シグナル伝達経路を活性化するレセプター−チロシンキナーゼを過剰発現する活 性化RasがTGF β1−レセプターと正常な発達そしてまた発癌の両方で協力するこ とを示す。これは上皮細胞及び間充織細胞の相互作用によるストローマTGF β1 の誘発/活性化並びにTGF β1により誘発され、維持されたEF変換の如きプロ セスを伴うことが明らかであろう。 それ故、正常な細胞と癌遺伝子形質転換腫瘍細胞の主たる相違は以下のとおり であるべきである。TGF β1は正常な細胞の形態形成中に生理学的な厳密に調節 された機能を有する。腫瘍細胞中では、癌遺伝子による形質転換はTGF β1の機 能の変性を生じ、即ち、構成的な高度に異常な形態形成変化が細胞中で誘発され る。 こうして、本発明は、上皮の非侵食的状態から侵食的状態への細胞の可逆的転 移を特徴とする上皮の侵食的腫瘍疾患の治療のための、上皮起源の腫瘍細胞に対 するTGF βの活性を抑制する物質を活性化合物として含む医薬組成物に関する。 本発明の一実施態様において、医薬組成物はまた癌遺伝子Rasの発現及び/ま たは正常なRasの過剰発現または細胞中のRas活性化レセプターチロシンキナーゼ の活性を抑制する物質を含む。 上皮の侵食性腫瘍疾患では、腫瘍細胞が増大された表現型可変性を有し、即ち 、それらは上皮の非侵食的状態から繊維芽細胞様の侵食的状態への転移(EF変換) 及びその逆(FE変換)を受けることができる。 細胞に対するTGF βの活性またはTGF β−レセプターの活性化により媒介され るシグナル伝達を抑制する物質が以下“TGF βインヒビター”と称される。 TGF βは、多機能性ポリペプチド因子のTGF βスーパーファミリーのその他の 肩、例えば、アクチビン、骨誘導因子(bmp類)等のように、特定の細胞表面レセ プターに結合することによりそれらの作用を与える。型I及び型IIのTGF βレセ プターはリガンドの結合後にヘテロダイマー複合体を形成し、それによりシグナ ル伝達を開始する。型IIレセプター(これらはそれらの活性に関してレセプター セリン/スレオニンキナーゼのグループに帰属される)はリガンドを結合するが 、リガンドから得られたシグナルを先に進めることができるためにセリン−スレ オニン−キナーゼを構成する型Iレセプターとの会合を必要とする。型IIレセプ ターはリガンド特異性の原因となるが、機能上異なる型Iレセプターは幾つかの 型IIレセプターとヘテロ二量化する。このリガンド誘導ヘテロ二量化において、 型IIレセプター鎖はセリン/スレオニン基で型Iレセプターをリン酸化し、それ によりそれらを活性化する。特別な型Iレセプターとの型IIレセプターのこの協 力 が特定のシグナル伝達経路の活性化を生じ、その結果として、リガンドにより細 胞に伝達されたシグナルに対する転写応答をもたらす。 TGF βインヒビターの活性は、それがレセプター活性化により誘発される細胞 応答を阻止し、即ち、それがTGF β−レセプター系を活性化されることから阻止 し、それ故、細胞シグナル伝達経路を始動されることから阻止するという事実に 基いている。 型IIレセプター、そして型Iレセプターへのリガンドの結合後に繊維芽細胞様 表現型を最終的に生じる特定の転写応答の原因となるのは型Iレセプターである ので、型IレセプターはTGF βインヒビターの標的分子の一つに相当する。型II レセプターによる型Iレセプターのリン酸化の必要性のために(そしてセリンキ ナーゼ活性が突然変異により破壊された優性陰性型IIレセプターで得られた結果 に基いて)、型IIレセプターはまたインヒビターの可能な標的分子である。 こうして、TGF βインヒビターの活性に関するその他のメカニズムはリガンド TGF βと型IIレセプターの間の相互作用を阻止し、型Iレセプターの活性化をも たらす型IIレセプターから型Iレセプターに伝達されるシグナルを阻止すること に基いている。最後に、型IレセプターへのTGF βの結合の阻止、型Iレセプタ ーの活性の抑制または型Iレセプターにより活性化されるシグナル伝達経路のエ フェクター分子の抑制は全てインヒビターの可能な攻撃方法である。 インヒビターの例はTGF βを中和する抗体、特にモノクローナル抗体、TGF β アンチセンスRNA分子(Fakhraiら,1996)または型Iもしくは型IIの優性−陰 性TGF βレセプターである。 本発明は、更に別の局面によれば、上皮の非侵食的状態から侵食的状態への細 胞の可逆的転移を特徴とする上皮の侵食性腫瘍疾患を治療するための薬理活性物 質を同定するためのスクリーニング方法に関する。 好適な、特に低分子のインヒビターを見出す一つの方法は、第一工程で型Iレ セプターのどれが細胞の上皮状態から繊維芽細胞様状態への転移の原因であるの かを測定することを含む。これを行うために、本発明の範囲内で使用されるEpRa s細胞系(またはEF変換をもたらすことができるか、または既にそれを受けてい るその他の細胞系の一種)が調べられて、それがどのTGF β一型I/IIを発現する の かを見る。この取調べは、関係するレセプター−DNAをEpRas-DNAから増幅し 、こうしてこれらの細胞中で発現されたTGF β−型Iまたは型IIレセプターを同 定するためにPCRプライマーとして既知のTGF β−型Iまたは型IIレセプターに 由来するオリゴヌクレオチドを使用するRT-PCR(“逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖 反応”)により行われてもよい。ヒト型IIレセプタ−TβR-IIの優性−陰性突然 変異体を用いる実施例に記載された実験(この鎖のみがTGF β1、2、3について 知られている全てのレセプター中に生じる;Wranaら,1992,Wranaら,1994)は 、このTGF β型IIレセプターサブタイプ(そのもの)がEF変換をもたらすシグナ ル伝達に直接または間接に必要であることを確認する。こうして、このTGF β型 IIレセプターサブタイプはTGF βインヒビターの標的分子の一つを構成する。こ れはこの標的分子を抑制する物質について特異的にスクリーンするのに使用し得 る細胞または生化学スクリーニングアッセイを確立するのに必須の前提条件を満 足する。 次に、研究がEF変換を受けている細胞またはEF変換がTGF βレセプターシグナ ル伝達を抑制することにより反転し得る細胞中で行われて、EF変換またはその反 転により細胞中で起こるプロセスのいずれがスクリーニングアッセイを確立する のに最適であるのかを測定する。適当に、実施例に使用されたEpRas細胞または 本発明の範囲内でまた良く特性決定されるCT26細胞が使用し得る。 予想される効果は二つのグループに分けられる。第一のグループは、例えば、 文献に記載された創傷治癒における正常な間充織細胞及び上皮細胞に関するTGF βの効果を含む。変化の第二のグループは特に形質転換細胞に関するTGF βの活 性により生じるものである(例えば、本発明の範囲内で記載された実験の場合) 。第一のグループのTGF β効果は一次HTSスクリーン(“高処理量のスクリーン ”)に引用し得るが、見出されたインヒビター候補は第二のグループのTGF β効 果に関するそれらの抑制活性について不合格とならずに試験される必要がある。 第一の型のTGF β効果として、i)細胞外マトリックスタンパク質、例えば、フ ィブロネクチン、ラミニン、エラスチンの誘導、ii)プロテアーゼインヒビター PAI(プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター)の誘導、ひいては細胞プロ テアーゼ活性の抑制、及びiii)或る種の細胞型における細胞増殖の抑制及びプロ グラムされた細胞死滅(アポトーシス)の誘導が挙げられる。これらは特に正常 な上皮細胞を含むだけでなく、ごくわずかに変性した、実質的に依然として上皮 様腫瘍細胞系を含む。PAI発現の誘導並びにTGF β誘導アポトーシスはTGF βレ セプターインヒビターとして作用し得る物質をスクリーニングするための細胞ア ッセイ系を設計するのに使用し得る可能な操作である。選ばれた効果は物質の抑 制活性を実証するための系として直接使用される。 TGF βレセプター系の活性化により誘発された本発明の範囲内で使用されるEp Ras細胞系中のEF変換が未形質転換細胞、例えば、正常な出発細胞系EpH4(また 本発明の範囲内で使用される)中のPAI(またはTGF βにより調節される別の分子 )の誘導と同じ型I/型IIレセプターにより伝達されるか否かを判明するために 、例えば、PAI(または別の分子)の誘導またはこの細胞系において非常に顕著で ある増殖抑制がEF変換をまた阻止する同じ型Iまたは型IIレセプターの優性−陰 性突然変異体により阻止されるか否かをチェックすることが可能である。優性− 陰性型IIレセプター(TβII-dn)を過剰発現するCT26細胞の場合、上皮細胞に反転 したTβII-dn発現CT26クローンにおいて、PAI-Iプロモーター調節リポーター遺 伝子の活性化がTGF β1により完全に抑制されることが示された。PAI-Iによるリ ポーター遺伝子発現の抑制のPAI-I抑制の程度は、動物中で腫瘍を形成する異な るクローンの能力と直接に相関関係があった。更に、特別なCT26クローン(これ はin vitroの長い継代後にPAI-1プロモーター−リポーター遺伝子構築物の完全 なTGF β1誘導性を回復していた)はまたマウス中で転移腫瘍を形成する能力を 回復した。 TβII-dn実験を使用するEFC、腫瘍形成及びTGF βレセプター型II機能の間 の相関関係の確認はPAI-1リポーター遺伝子試験細胞に基くスクリーニングアッ セイの前提条件を与える。この試験細胞(これはヒト細胞または動物細胞である )は、リポーター遺伝子、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子がPAI遺伝子(またはT GF βにより調節される別の分子、例えば、細胞外マトリックスタンパク質をコ ードする遺伝子)の調節配列の制御下にあるプラスミドで安定に形質転換される 。また、試験細胞はヒト型Iまたは型IIレセプターで形質転換され、これは更に 別の試験後にEF変換を誘発し、そしてまたPAIまたはTGF βにより調節された別 の 分子を誘導するのに両方に最も有効であることが示された。TβII-dnの構築に使 用されたヒトTGF β型IIレセプターはTGF βインヒビターに可能な標的分子の一 つである。使用された対照細胞は、PAI-1-プロモーター調節リポーター遺伝子が TGF βレセプターに無関係の別のレセプター(例えば、FGF(繊維芽細胞成長因子 )レセプター−チロシンキナーゼファミリーの員)により活性化される平行細胞 クローンであることが適当である。 TGF β誘導リポーター遺伝子発現を完全または部分的に抑制する物質がこの種 のスクリーニングアッセイで見出される場合、選択されたリガンド活性化型I/ 型IIレセプターまたはこのレセプターにより媒介されるシグナル伝達がこの物質 により阻止されると結論し得る。同物質は、リポーター遺伝子がTGF βによるの ではなく、FGFにより活性化された対照細胞中のわずかな基本リポーター遺伝子 発現に影響してはならない。リポーター遺伝子活性化が測定される試験系がロボ ット化高処理量スクリーン(HTS)方法に使用し得る。 試験物質によるTGF βレセプター機能の阻止を測定する第二の可能な方法はTG F βによりもたらされる増殖抑制及びアポトーシスの除去により容易に測定し得 る。TGF βは或る条件下で正常なEpH4細胞中でアポトーシスを有効に誘導するの で、TGF βレセプターの有効なインヒビターは生存または増殖刺激因子として作 用すべきである。別のアポトーシス誘導レセプターが発現されたEpH4細胞が対照 細胞として使用されてもよい。Fasレセプター(これは特別なFasリガンドの結合 後に実際に全ての細胞型中でアポトーシスを有効に誘導する)が特に好適である 。有効なTGF βレセプターインヒビターによるアポトーシス効果の除去は、それ が商業上入手し得る試験系(例えば、生きている代謝活性細胞の数を検出するMT Sアッセイの場合)で容易に測定でき、かつ毒性物質(これは細胞死滅を阻止す るのではなく生じる)がそのようなものとして容易に同定し得るという利点を有 する。こうして、この試験系がまたHTS一次スクリーンに適している。 物質がTGF βレセプター系の活性化により誘導されるEF変換に関するそれらの 抑制活性について試験し得る別の可能な細胞アッセイ系は、EF変換後に繊維芽細 胞様細胞型を特徴とし、こうしてEF変換の発生のインジケーターであるタンパク 質の発現に基いている。この一つの例がビメンチンである(Reichmannら,1992) 。 本発明の範囲内で、その発現はRasとTGF βの協力により誘発されたEF変換とは 切り離せないことが示された。繊維芽細胞様表現型のその他のマーカーのその他 の例はE−カドヘリンmRNAの発現並びにフィブロネクチン及び多様なプロテ アーゼ(UPA、TPA、Reichmannら,1992)のde-novo発現の損失である。Rasまたは 別の癌遺伝子により形質転換された好適な試験細胞は、リポーター遺伝子がビメ ンチン遺伝子プロモーターまたは記載されたその他の繊維芽細胞様マーカー遺伝 子の一つのプロモーターの制御下にあるプラスミドで形質転換される。次いで試 験物質によるリポーター遺伝子発現のモジュレーションは同インヒビターにより もたらされるEC変換のモジュレーションと相関関係があるべきである。 TGF βレセプター系の活性化を抑制する物質を見出す別の可能な方法は検出系 としてTGF βそれ自体の発現を使用する。このアッセイ原理は、リガンドTGF β による癌遺伝子発現細胞中のTGF βレセプター系の活性化がオートクリンループ で細胞に作用するTGF βのオートクリン産生を生じるという本発明の範囲内で到 達した知見に基いている。この種のアッセイ(これはTGF βレセプター系の活性 化そしてまたRasの発現によりもたらされるオートクリンTGF βループの誘導の 両方を検出することができる)(この種の試験でTGF β発現を抑制する物質の活 性はTGF βレセプター系の活性化に関するそれらの効果及びRasに関するそれら の効果に基いてこれを行う)において、細胞はTGF β遺伝子プロモーターの制御 下にあるリポーター遺伝子構築物を含む(Kimら,1989)。 TGF βインヒビターが同定される生化学アッセイ(その活性はそれらがTGF β シグナル伝達経路を抑制するという事実に基いている)は、例えば、以下のよう にして行われてもよい。アッセイフォーマットにおいて、TGF βレセプター型II またはキナーゼドメインを含むその細胞質ドメインの自己リン酸化が試験物質( 潜在的なTGF βインヒビター)の存在下そして不在下でセリン基またはスレオニ ン基についてin vitroで測定され、この種のアッセイは文献から知られている方 法、例えば、Linら,1992もしくはBraunwalderら,1996により記載された方法を 使用して、また例えば、E.coli中の組換え方法により調製されたレセプター(ま たはそのドメイン)を使用して行われる。別のアッセイフォーマットにおいて、 TGF βレセプター型Iまたはその所謂GSドメイン(Wranaら,1994)をリン酸 化するTGF βレセプター型IIの能力が、潜在的なインヒビターの存在下そして不 在下で再度キナーゼアッセイの既知の原理に従って測定される。高処理量フォー マットのためのこの種のアッセイの改良は、商業上利用できる技術、例えば、フ ィルタープレート、フラッシュプレート(アメーシャム)またはSPA(シンチレー ション近接アッセイ)−ビーズ(アメーシャム)を使用して行い得る。 記載された試験系の一つにおいて、一次スクリーンで見出されたTGF βレセプ ターのインヒビターが二次スクリーンでそれらの特異性について適当に試験され る。これはコラーゲンゲル中のEpRas細胞のTGF β依存性EF変換の直接の抑制に より特別に行い得る。別の可能性は見出されたTGF βレセプターのインヒビター と一緒にプラスチック皿に低密度で塗布された変換されたEpRas細胞(例えば、 マウス腫瘍からのもの)のインキュベーションである。有効な物質はTGF βの存 在下でさえも繊維芽細胞様細胞から上皮細胞への変換を誘発すべきである。同物 質はCT26細胞中で再上皮化(reepithelialisation)(FE変換)を生じるべきである 。最後に、CT26細胞で注射されたマウス中の特に好適な活性物質が試験されて、 それらが原発性腫瘍の増殖または原発性腫瘍の切除後の転移を遅くするか否かを 知ることができる。 癌遺伝子Rasの発現または機能及び/または正常なRasの過剰発現(またはこの 過剰発現の結果)及び/または細胞中のレセプターチロシンキナーゼによる正常 なRasの活性化を抑制する物質が以下“Rasインヒビター”と称される。 本発明の目的のためのRasインヒビターはRasそれ自体の活性化/機能を抑制す ることにより、またはRasシグナル伝達経路でRasの下で作用するRas-エフェクタ ー分子の活性化/機能を抑制することによりRasを直接抑制する。例はRafのイン ヒビター、例えば、Rafアンチセンス−オリゴヌクレオチド(Moniaら,1996)であ る。Rasの活性化がRasそれ自体の変化に起因し得ないが、それがRasの上で作用 するレセプター−チロシンキナーゼの構成的活性化のためである場合について、 Ras活性化の抑制がまたこれらのレセプターを抑制することによりもたらされる 。この種のレセプターの例はレセプター−チロシンキナーゼEGFレセプター(“ 上皮成長因子レセプター”)及び同族のレセプター、例えば、HER-2、HER-3また はHER-4である。EGFレセプターを抑制する化学化合物の例 がWO 96/07657に見られる。既知のRasインヒビターはモノクローナル抗体(Furth ら,1982)、優性−陰性突然変異体(Staceyら,1991;Quilliamら,1994)及びアン チセンスRNAである。低分子Rasインヒビターの例はRas-ファルネシルトラン スフェラーゼのインヒビターである(Kohlら,1993;Kohlら,1994;Kohlら,1995) 。 その他の低分子Rasインヒビターについてスクリーンするために、Rasタンパク 質H-Ras、K-RasまたはN-Rasの突然変異(これはRasの構成的活性化をもたらす) をコードする遺伝子が、例えば、レトロウイルスベクターにより咄乳類細胞に導 入され、ras形質転換細胞に対する試験物質の選択的細胞毒性活性が測定される 。rasインヒビターを同定する好適な方法が、例えば、EP-A 604 181に記載され ている。 Rasインヒビターの同定のための試験細胞として使用し得るRas形質転換細胞系 の例がまたAdrejauskas及びMoroni,1989並びにJenkinsら,1993により記載され ていた。 Rasインヒビターはまた本発明の範囲内で使用されたEpRas細胞系に基くアッセ イで同定し得る。このために、細胞は、リポーター遺伝子がTGF β遺伝子の調節 配列の制御下にあるリポーター遺伝子遺伝子構築物を含む。最初に、EF変換をも たらすために、TGF βが細胞に適用される。次いで細胞が試験物質で処理される 。リポーター遺伝子の活性を抑制することができる試験物質がRasインヒビター であると推定し得る。次いでこれは、物質が研究されてそれらがコラーゲンゲル 中でEpRas細胞のTGF β誘導EF変換を抑制でき、または既に起こったEFCを反転し 得るか否かを知る二次スクリーンで確認し得る。 本発明の医薬組成物は第一に細胞を繊維芽細胞様状態に変化し、侵食性になる ことから阻止し、こうしてそれらの催腫瘍性を阻止または軽減するのに使用し得 る。第二に、本発明の医薬組成物は既存の繊維芽細胞様かつ侵食的に増殖してい る腫瘍細胞から非悪性またはそれ程悪性ではない上皮細胞への変換をもたらすの に使用し得る。 本発明の医薬組成物は一方では上皮の非侵食的状態から繊維芽細胞様の侵食的 状態への細胞の形質転換を阻止するのに使用し得る。この一つの例が存在する腫 瘍細胞を侵食性になり、転移により更に腫瘍を生じることから阻止するための原 発性腫瘍の手術除去後のその投与である。更に、本発明の医薬組成物はまたTβR II-dn発現CT26細胞の助けによって示されたのと同じメカニズムにより腫瘍増殖 を遅くすることができる。 本発明の医薬組成物は、他方では、既に起こった細胞のEF変換を反転するのに 使用し得る。変換が一旦起こると、TGF βがオートクリンループにより繊維芽細 胞様状態を維持する。この場合のTGF βインヒビターそれ自体の投与はオートク リンループをスイッチオフし、こうして細胞の繊維芽細胞様の侵食的状態を正常 な上皮状態に反転する。しかしながら、この反転は一時的であり、Rasまたはそ の他の癌遺伝子によりもたらされる細胞の形質転換状態に基本的な変化がない。 これは、TGF βインヒビターが除去される時に、EF変換が再度開始し得ることを 意味する。一方で、癌遺伝子インヒビター、例えば、RasインヒビターまたはHER -1/2インヒビターがおそらくTGF βインヒビターに加えて投与される場合、細胞 の形質転換状態が取り消され、細胞が正常な上皮細胞のように挙動し、それ故、 TGF βに対し通常に反応し、即ち、細胞に対するTGF βの効果がEF変換をもたら すことができず、更に腫瘍細胞の増殖抑制をもたらす。 TGF β(レセプター)インヒビターが腫瘍増殖のスローダウンまたは更には抑 制を生じ得るという椎測は以下のことにより支持される。殆どの腫瘍は環境に放 出され、そこで免疫抑制効果を有し、即ち、免疫系の細胞毒性Tリンパ球及びそ の他の細胞の機能を抑制するTGF β(以下を参照のこと)を絶えず産生する。TG F βレセプターインヒビターが非侵食性の上皮細胞への侵食的腫瘍細胞の形質転 換を生じる場合、これらはTGF βの分泌をスイッチオフし、こうして細胞毒性T 細胞により更に容易に攻撃され、溶解されるべきである。 最適の活性を得るために、本発明の医薬組成物はTGF βインヒビターとRasイ ンヒビターの組み合わせを含むことが好ましい。 上皮細胞から繊維芽細胞様状態への転移において、繊維芽細胞様マーカータン パク質、例えば、ビメンチンが更に強く発現される。こうして、これらのマーカ ー(以下を参照のこと)の発現の増大は本発明の医薬組成物を使用して治療し得 る腫瘍疾患の診断パラメーターの一つである。 これらの腫瘍疾患として、胸部の腺癌(Heatleyら,1993)、腎臓細胞癌腫(Beha mら,1992)、胸部の癌肉腫(Wargotz及びNorris,1989)、食道の癌肉腫(Guarino ら,1993)または女性の生殖道の癌肉腫(de Britoら,1993)、上皮様肉腫並びに 種々の位置のスピンドル細胞癌腫、例えば、スピンドル細胞成分を含む肺癌腫(M atsuiら,1992)または胆嚢のスピンドル細胞癌腫(Nishiharaら,1993)が挙げら れる。 本発明の医薬組成物は胸部腫瘍及び腎臓細胞癌腫を治療するのに使用されるこ とが好ましい。 本発明の医薬組成物は体重1kg当たり0.01〜100mg、好ましくは0.1〜15mgの投 与量でヒトに投与される。活性化合物は別として、医薬組成物は通常の不活性担 体及び賦形剤を含む。当業者は適当な書籍、例えば、Remington's Pharmaceutic al Sciences,1980に医薬製剤の製剤化の方法を知るであろう。 図面の簡単な説明 図1: マウスにおける腫瘍形成中のEpRas細胞から繊維芽細胞様細胞への変換 図2: 腫瘍発達中の上皮/間充織変換(EFC):ドナー細胞及びレシーバー細胞の 時間スケール及び挙動 図3: 器官形成及び上皮極性が血清またはTGF β1により破壊される 図4: TGF β1がRas形質転換胸部上皮細胞中で細胞極性を破壊する 図5: 繊維芽細胞様EpRas細胞はニワトリ胚心臓侵食アッセイで高度に侵食性 である 図6: TGF β1がオートクリンループにより変換されたEpRas細胞の繊維芽細 胞様表現型を維持する 図7: 変換されたEpRas細胞が高濃度のTGF β1を産生する 図8: TGF β1が上皮状態から繊維芽細胞様状態への転移並びに実験により誘 導された腫瘍中の細胞の侵食を誘発する 図9: 腫瘍発達中のTGF β1の活性のモデル 図10: TGF β1がin vitroの形態形成及び正常な乳腺上皮細胞中のアポトーシ スを誘発する 図11: 正常な胸部の形成中のTGF β1のin vivo発現 図12: 離乳後の完全に発達した乳腺の損傷中のTGF β1のin vivo発現 図13: TGF β中和抗体によるヒト腫瘍細胞の侵食の抑制 図14: Ras形質転換胸部上皮細胞中の優性−陰性TGF βレセプター(TβRII-dn) の発現がEFC及び腫瘍増殖を抑制する 図15: マウス結腸癌細胞(CT26)中のTβRII-dnの発現がコラーゲンゲル中の増 殖及びin vitroの侵食を阻止する 図16: CT26細胞中のTβRII-dnの発現がin vivoの転移を抑制する 図17: TβRII-dn発現CT26細胞が静脈内注射後でさえも肺中で転移を形成する ことができない 図18: CT26細胞及びCT26-TβRII-dn細胞中のPAI-1-プロモーター-リポーター 構築物の発現 以下の実施例において、特にことわらない限り、下記の物質及び方法を使用し た。 a)細胞培養 親胸部上皮細胞系EpH4(分極表現型の強い印象のために選ばれた自然不死化胸 部上皮細胞系Ep1(Reichmannら,1992)のサブクローン)を無ヘルパーv-Has-Ra s発現レトロウイルスベクター(Redmondら,1988)で感染することによりEpRas細 胞を調製した。分極上皮クローンの選択及び膨張(expansion)をReichmannら,19 92により記載されたようにして行った。このために、細胞を10%のFCS(ベーリン ガー・マンハイム)及び20mMのHEPESを含む増殖培地(ダルベッコ改良イーグル培 地;(DMEM))中でプラスチック皿で培養し、1:3の比で週2回継代培養した。半嚢 胞(ドーム)形成の誘導のために、EpRas細胞及び親細胞系EpH4の細胞を継代培 養しないで1週間にわたって高密度で培養した。 ヒト腫瘍細胞系MZ1795(腎臓癌腫;Seligerら,1996)及びKB(鼻咽頭癌腫ATCC C CL17;Derynckら,1985)をATCCから入手した。それらをマウスEpH4細胞と同じ培 地で培養した。 マウス結腸癌細胞系CT26(その樹立がBrattainら,1980により記載された)を またマウスEpH4細胞と同じ培地で培養した。 ヒトの優性陰性TGF βレセプター型II(TβRII-dn、Wranaら,1992)をマウスEp H4細胞及びCT26細胞中で発現するために、相当するcDNA(Wranaら,1992)を 無ヘルパーレトロウイルスベクターpbabe-puro(Morgenstern及びLand,1990) に挿入した。そのレトロウイルスDNAをBOSCパッケージング細胞(Pearら,199 3)にトランスフェクトし、ウイルス生産、ミトマイシンC処理BOSC 23細胞をEp H4細胞またはCT26細胞と同時培養した。感染したクローンをG418で選択し、20% のFCS(ベーリンガー・マンハイム)及び20mMのHEPESを含むダルベッコ改良イーグ ル培地(DMEM)中で膨張させた。構築物中に存在する血球凝集素(HA)エピトープを 使用して、TβRII-dnタンパク質の発現をウエスタンブロットで検出した。 b)コラーゲンゲル中の臓器典型的(organotypical)細胞構造の増殖 分析すべき細胞の半集密培養物をトリプシン処理し、氷冷増殖培地で1ml当た り4x104の細胞の最終濃度に調節した。等容積の細胞懸濁液及びラットの尾部 コラーゲン型1(シグマ)の酸性にした溶液を4℃で混合し、35mmの組織培養皿 に適用し、溶液をゲルに硬化するために37℃で30分間インキュベートした。細胞 に臓器典型的構造を形成させるために、コラーゲンゲルをウシ脳下垂体(pituary )抽出物(BPE)、組換え表皮成長因子(EGF)、ヒドロコルチゾン及びインスリン( 製造業者により推奨された濃度)を含む無血清培地(MEGM;プロモセル)で覆った 。記載された場合、5もしくは10%のFCSまたは5ng/mlの組換えTGF β1(文献) を添加した。コラーゲンゲルを覆う培地を2日毎に交換した。細胞により産生さ れたTGF β1またはコラーゲンゲル中の細胞構造を中和するために、TGF β1のモ ノクローナル抗体(ゲンザイム)または対照抗体を50μg/mlまでの濃度で使用す る。 c)マウス中の腫瘍誘発及び腫瘍またはコラーゲンゲルからの細胞の再分離 集密EpRas細胞またはEpH4細胞をトリプシン処理し、カウントした。次いで PBS 0.1ml中に懸濁させた105の細胞を生後5週のBALB/cマウスまたはヌードマ ウスの皮下または乳腺に注射した。マウスを時間の異なる期間(3日〜28日)後 に殺し、腫瘍(または注射した細胞が含む組織ゾーン)を切除した。その後の組 織分析のために、組織を直ちに液体窒素中でフラッシュ凍結した。組織培養液中 の更なる増殖のための腫瘍細胞を分離するために、二つの対向メスを使用して組 織を無菌条件で小片に切断し、37℃で1時間にわたって2mg/mlのコラゲナーゼ 型1(シグマ)で消化した。ドナー細胞のレトロウイルスのネオマイシンまたは ヒグロマイシン耐性マーカーを欠いた残っている宿主細胞を除去するために、腫 瘍から得られた細胞をG418またはヒグロマイシンの存在下で最初の5日間にわた って増殖させた。その後の細胞培養のための細胞を分離するために、コラーゲン ゲルを同様の方法でコラゲナーゼで消化した。 CT26細胞またはCT26-TβRII-dn細胞による腫瘍誘発のために、動物当たり1x106 の細胞をヌードマウスに背中の皮膚の下に皮下注射した。検出可能な腫瘍のサ イズを3日毎に測定し、腫瘍が動物の良い健康状態に耐えられるサイズを越えた 時に動物を殺した。別の実験において、動物当たり1x106の細胞を同系マウス(Ba lb/C)に注射した。原発性腫瘍が4cm3のサイズに達した後、腫瘍を手術により除 去し、その結果、腫瘍組織は手術の部位に残っていなかった。次いでマウスを更 に監視し、それらの死亡後に、肺転移の存在を調べた。 循環から肺に定着するCT26細胞またはCT26-TβRII-dn細胞の能力を実証するた めの最後の実験において、5,000及び50,000の両方の型の細胞を同系Balb/Cマウ スの尾静脈にi.v.注射した。それらの死亡後に、マウスを肺転移の存在について 前記のように調べた。 d)抗体 サイトケラチンのウサギ抗血清がReichmannら,1992に記載されていた。E− カドヘリンのウサギ抗血清及びモノクローナルラット抗体をKemler,1993及びそ の中に引用された関連文献(Kemler,1993)に記載されたようにして調製した。ネ オマイシンホスホトランスフェラーゼをバクテリアで発現し、それを精製し、そ れをウサギに注射することにより、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼを認 識するウサギ抗血清を調製した。妥当な時間後に、ウサギ血清を得、免疫染色に ニートで使用した。ビメンチンV3Bのモノクローナルマウス抗体(ベーリンガー マンハイム)、ZO-1のモノクローナルラット抗体(ケミコン)、TGF β1-3のモ ノクローナルマウス抗体(ゲンザイム)、TGF β2,3-抗体(ゲンザイム)、活性 化TGF βのポリクローナル抗血清(プロメガ)、TGF β中和ポリクローナルウサ ギ抗体(R&D)、並びにモノクローナルTGF β抗体(ゲンザイム)を商業上入 手した。 e)選択及び免疫蛍光 切除した組織及びコラーゲンゲル中のRNA及びタンパク質から最適の生物活 性を得るために、腫瘍物質及び細胞構造を含むコラーゲン型Iゲルを分離直後に 液体窒素中でフラッシュ凍結した。凍結前に、氷結晶の形成の結果としての細胞 損傷を防止するために、コラーゲンゲルを5%のDMS0を含む培地中で2分間浸軟 した。プラスチック上で増殖した細胞または腫瘍もしくはコラーゲンゲルから調 製した凍結切片を固定し、比1/1で混合したアセトン/メタノールを使用して15 分間にわたって-20℃で透過性にし、空気乾燥させ、4℃で貯蔵した。非特異的 抗体染色を防止するために、第一抗体と一緒のインキュベーションを通常ゼラチ ン、BSA及びトゥイーン20(夫々0.2%)を含むPBS中で37℃で1時間行った。次 いで細胞または切片をモビオール1-88(ヘキスト)で覆い、ザイス・アキオフオ ト蛍光顕微鏡で調べた。写真を通常で、またはKf 1400 CCDカメラ(フォトメト リック)及びアドーブ・フォトショップ3.0写真現像プログラムを使用するコン ピュータ補助方法により作成した。 サイトケラチンを検出するために、凍結物質のヒト腫瘍組織連続切片中のビメ ンチン及びTGF βをABC方法により免疫組織化学分析した。免疫組織化学分析をH eiderら,1995に記載されたようにして行った。抗サイトケラチン(クローンMNF 116;DAKO、デンマーク)、抗ビメンチン(クローンV9;DAKO、デンマーク)及び 抗TGF β1とTGF β2の混合物(サンタ・クルズ、カリフォルニア)を一次抗体と して使用した。染色の結果をザイス・アキオスコープ顕微鏡で評価した。 組織切片中のビメンチン及びサイトケラチンの同時検出のために、二重蛍光分 析を行った。抗ビメンチン(クローンV9;DAKO、デンマーク)及び抗サイトケラ チンウサギ血清を一次抗体として使用し、一方、Cy3結合抗マウスIgGまたはFITC 結合抗ウサギIgG抗体を二次抗体として使用した。ライカ・クアンタイムドQ500 写真分析系の助けによりザイス・アキオフォト2顕微鏡を使用して、蛍光を評価 した。 f)RNA in situハイブリダイゼーション RNA in situハイブリダイゼーションのために、凍結切片をOftら,1993に記載 されたようにして固定し、抽出した。このために、切片をPBS中4%のパラホル ムアルデヒド中で固定し、PBS中で2回洗浄し、2時間にわたってプレハイブリ ダイゼーションを行い、一夜にわたって52℃で50%のホルムアルデヒド、0.6Mの NaCl中で適当なS35標識リポプローブでハイブリッドを形成した。ストリンジェ ント条件(Tm-20℃)で洗浄した後、切片をコダックNTB液体エマルション中に浸漬 し、2週間にわたって照射した。切片を有するスライドをヘマトキシリン/エオ シンで対比染色し、ザイス・アキオフォト顕微鏡を使用して明暗フィールド照明 のもとに分析した。 S35標識リボプローブを調製するために、hTGF β1-cDNA(R&D)及び好適な レトロウイルスベクター(Redmondら,1988)から切除されたネオマイシンホスホ トランスフェラーゼのcDNAをT3-T7発現プラスミド(ブルースクリプトIIKS ストラタケン)にクローン化し、アンチセンスリボプローブ及びセンス対照プロ ーブのためにS35-UTPの存在下でin vitroで転写した。 ヒト腫瘍組織の切片中のTGF βに関する非放射能in situハイブリダイゼーシ ョンをジゴキシゲニン標識プローブにより行った。プローブ(hTGF β1、前節を 参照のこと)を製造業者の指示に従ってベーリンガー・マンハイム製DIG-RNA標 識キットにより標識した。ハイブリダイゼーションのために、凍結切片(5-7μm )を10分間にわたって4%のパラホルムアルデヒド中で固定し、PBS中で2回洗浄 し、続いて10分間にわたって0.5%の無水酢酸中でアセチル化した。PBS中で2回 洗浄した後、切片を一連の上昇するアルコール中で脱水し、空気乾燥させ、続い て30分間にわたって52℃で保湿チャンバー中でインキュベートした。プローブと のハイブリダイゼーションを4〜6時間にわたって52℃で保湿チャンバー中で 行った。ハイブリダイゼーション後に、スライドを2x10分間にわたって2xSSC中 で52℃で洗浄し、続いて結合プローブをベーリンガー・マンハイムの指示に従っ て抗ジゴキシゲニン抗体により視覚化した。スライドをヘマトキシリンで素早く 対比染色し、覆い、ザイス・アキオスコープ顕微鏡で評価した。 g)電子顕微鏡検査 コラーゲンゲル中で増殖させた細胞を10分間にわたって0.2M HEPES pH7.3中3 %のパラホルムアルデヒド中で室温で前固定した。更に細胞を氷の上で0.2MHE-P ES pH7.3中8%のパラホルムアルデヒド中で30-60分間にわたって固定した。免 疫細胞化学のために、サンプルを更に低い温度でエタノール中で脱水し、ロウィ クリルHM20またはK4Mに埋め込み、-35℃で紫外線により重合させた(Schwarzら, 1993)。超微細構造を調べるために、細胞を氷の上で1時間にわたってPBS pH7.2 中1%の四酸化オスミウムで後固定し、1時間にわたって1%の酢酸ウラニル水 溶液で染色し、室温でエタノール中で脱水し、最後にエポンに埋め込んだ。免疫 細胞化学のために、超薄い切片をガラスに粘着させて覆った(Schwarz,1994)。 PBS中0.5%のウシ血清アルブミン及び0.2%のゼラチンによる非特異的抗体結合 部位のブロッキング後に、切片をウサギ抗カテニン抗体、続いてCy3標識ヤギ抗 ウサギIgGとともにインキュベートした。標識した切片を4’,6−ジアミノ− 2−フェニルインドール(DAPI)で染色して免疫蛍光顕微鏡のもとに核を視覚化し た。 h)サザンブロット分析 通常の方法(Maniatisら,1982)を使用して、細胞の全DNAまたは腫瘍物質を 分離し、処理した。注射前の細胞、新たに切除された腫瘍組織(注射15日後) 及び5日間にわたってG418の存在下でin vitroで再度培養された腫瘍組織から抽 出されたDNAを制限酵素EcoRI(これはレトロウイルスベクターを1回だけ切断 する)で消化し、ジーン・スクリーン・メンブランにブロットし、ネオマイシン ホスホトランスフェラーゼまたはv-Ha-ras遺伝子をコードするcDNAとハイブ リッドを形成した。 i)ノーザンブロット分析 ノーザンブロット分析をChomczynski及びSacchi,1987;並びにReichmannら,1 992に記載されたようにして行った。全RNA(トラック当たり10μg)を変性 ホルムアルデヒド含有ゲルに入れ、ジーン・スクリーン・メンブランにブロット し、hTGF β1-cDNAの全コーディング領域とハイブリッドを形成し、これは全て の3種のマウスTGF βイソ型を認識するのに充分なmTGF β-1、2及び3との相 同性を有する。 j)半定量的PCR プラスチック上、コラーゲンゲル中で増殖された細胞または腫瘍からの全RN Aを半定量的PCRのために分離し、処理した。Leonardら,1993により記載された ようにして−アクチンプライマーを内部対照として使用して、TGF β1特異性フ ラグメントを半定量的条件下でRT-PCRにより増幅した。このために、DNAを94 ℃で1分間変性し、プライマーを65℃で1分間アニールし、ポリメラーゼ反応を 72℃で1分間続けた。増幅を20サイクル及び30サイクル続けた。TGF β1特異性 プライマーTGGACCGCAA CAACGCCATC TATGAGAAAA CC(フォワード)及びTGGAGCTGA A GCAATAGTTG GTATCCAGGG CT(リバース)(クロンテク社)を使用した。PCRの 結果をイメージ・クアント・ホスホーイメージャーで定量的に評価した。値を対 照産物(−アクチン)で標準化し、続いて対照-3T3-繊維芽細胞からの値と相関 関係付けた。 TGF β1を簡単に記載されたようにして(Heiderら,1996)RT-PCRにより腫瘍組 織中で検出した。TGF β1特異性オリゴヌクレオチドGCCCTGGACACCAACTATT GCTTC を5'-プライマーとして使用し、TGF β1特異性オリゴヌクレオチドTGCTCCACCTTG GGCTTGCを3'-プライマーとして使用した。増幅産物を2%の臭化エチジウム含有 アガロースゲルで分離し、ビデオカメラ(MWGバイオテク)により紫外線の下で評 価した。 k)PAI-1-プロモーター−リポーター遺伝子構築物の一時的トランスフェクション PAI-1-プロモーター−リポーター構築物(リポーター遺伝子はルシフェラーゼ であった:3TP-lux、Wranaら,1992)を製造業者の指示に従ってCT26細胞またはC T26-TβRII-dn細胞にリポフェクタミントランスフェクション(ギブコ)により トランスフェクトした。トランスフェクションの8時間後に、TGF β1を24時間 にわたって添加し、一方、対照をTGF βを含まないで残した。次いで細胞溶解産 物を調製し、ルシフェラーゼ活性をWranaら,1992により記載されたようにして ベートホルド・クリニルマット中で測定した。トランスフェクション効率を測定 するために、全ての細胞をCMV-β-Galリポーター遺伝子構築物で同時トランスフ ェクトし、得られたルシフェラーゼ活性をβ-Gal蛍光強さ及び抽出物のタンパク 質濃度により標準化した(ブラッドフォード)。 l)ELISAアッセイによる可溶性TGF βの定量的測定 TGF β濃度をELISAアッセイにより測定するために、EpH4細胞、分極EpRas細胞 及び腫瘍から分離され、またはin vitroでTGF βで変換された繊維芽細胞様EpRa s細胞をPBSで5回洗浄して外因性TGF βを除去し、続いて無血清DMEM中で48時間 にわたって増殖させた。次いで細胞培養上澄みを回収し、TGF β1濃度を製造業 者の指示に従って商業上入手し得るELISAキット(プロメガ;G1230)により測定し た。 m)イムノブロット 組織培養上澄み中のTGF β1を測定するために、無血清細胞上澄み2mlを限外濾 過(セントリコン10、アミコン)により0.1mlの最終容積まで濃縮した。濃縮上 澄みを5倍濃縮SDS-PAGEプローブ緩衝液(メルカプトエタノールを含まない)と 混合し、非還元条件下でSDS-PAGEにより分析した。タンパク質(50μg)の等しい アリコートをSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた。イムノブロットを Haymanら,1993により記載されたようにして行った。 n)ニワトリ胚心臓侵食アッセイ このアッセイをBehrensら,1993により記載されたようにして行った。侵食性 ドナー細胞をニワトリ胚心臓細胞から明らかに区別することができるために、試 験細胞に試験前に活性蛍光色素を入れた。このために、細胞を1時間にわたって 10mMの5,6−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフルオレセインジアセテート −スクシンイミジルエステル(モレキュラー・プローブズ)及び0.2x10-6Mのプ ルロニックF127を含むグルコース含有ハンクス食塩溶液中でインキュベートした 。このようにして、細胞の生存力または挙動に影響しないで、蛍光色素を細胞内 タンパク質に共有結合し、種々の分化アッセイ及び増殖アッセイにより測定する 。標識した細胞を高密度で24時間増殖させ、プラスチック皿から剥離し、軟質ア ガー層の表面で生後9日のニワトリ胚の前培養心臓断片と接触させた。7日の培 養後に、付着細胞を含む断片を回収し、液体窒素中でフラッシュ凍結し、凍結切 片を調製し、メタノール/アセトン中で固定し、蛍光細胞をエピフルオレセンス (epifluorescence)顕微鏡(アキオフォト、ザイス)により測定した。 o)マウス中のTGF β1入りの徐放性ペレットの移植 腫瘍発達中の非常に早期にRas形質転換胸部上皮細胞を活性化TGF β1に露出す るために、TGF β1入りの徐放性ペレット及びEpRas上皮細胞または正常なEpH4H 細胞をマウスに同時に皮下注射した。対照目的のために、BSAのみを入れたペレ ットを同時注射した。ペレットを製造業者の指示に従って調製し、装填した。 実施例1 Ras発現分極上皮細胞が腫瘍発達中にEF変換を受ける。 行った試験を、Ras形質転換マウス胸部上皮細胞(EpRas細胞)が2種の完全に 異なる細胞表現型を示すという観察により示唆した。それらをプラスチック基質 で増殖させる時、これらの細胞は規則的なドーム形成単層(半嚢胞)として増殖 し、分極上皮表現型を示す(図1A、B)。しかしながら、マウスに注射された 後、これらの同じ分極細胞は侵食的増殖の能力を有する脱分極スピンドル形細胞 からなる腫瘍を形成した(図1A、C)。この表現型の可変性の基礎となるメカ ニズムについて更なる知見を得るために、観察された細胞変換をin vivo及びin vitroの実験準備の組み合わせにより詳しく調べた。細胞クローンEpH4をこのた めに使用し、これは良く特性決定されたマウス胸部上皮細胞系(Reichmannら,19 89;Reichmannら,1992;Strangeら,1991)に由来する。これらの細胞は安定な分 極上皮表現型を示す(Reichmannら,1994)。 好適なレトロウイルスベクターを使用した場合、EpH4の催腫瘍性サブクローン をv-Ha-Ras癌遺伝子の安定な発現により形成した。ウェスタンブロット分析によ り確認してv-Ha-Rasの発現後に、11のクローン(EpRasクローンと称する)からの 細胞をBalb/cマウスの乳腺に皮下または直接に注射した。細胞の注射の5−7日 後に触診可能である腫瘍が規則的に形成された。 これらの変換された腫瘍細胞の表現型を最初の分化したクローンの細胞と比較 した。注射前に、全ての7種のEpRasクローンは予想された分極表現型を示した (図1B及び表1)。対照的に、細胞を腫瘍から切除し、G418の存在下で再度培養 した場合、変換された繊維芽細胞様細胞のみを得た(図1C、表1)。それらは依 然としてサイトケラチンを或る程度発現したが、これらの細胞はそれらの上皮特 性の多くを失い、繊維芽細胞マーカーの発現を獲得した(図1C、表1)。腫瘍細 胞が最初に注射されたEpH4ドナー細胞から生じることを実証するためだけでなく 、Rasを含むレトロウイルスの転移または再組込みが腫瘍形成及びその後のin vi troの培養中に起こらなかったことを示すために、レトロウイルス構築物の組込 みパターンをサザンブロット分析により測定した。注射前のこのEpRas細胞につ いて、15日目の腫瘍からの細胞及び30日目の腫瘍から再度分離された細胞を分析 した。ネオマイシン耐性遺伝子またはras遺伝子について特異性を有するプロー ブを使用した場合、同じ組込みパターンを全ての三つの細胞型で得た(図1D)。 マウス中の腫瘍形成中のEpRas細胞から繊維芽細胞様細胞への変換を図1に示 す。 図1Aはin vivoのRas細胞(7種の異なるv-Ha-Ras発現細胞クローンを使用した )のEFCを研究するために使用した戦略の原理を示す。 図1B:注射前に、クローンEp5の細胞はプラスチック上のドームの形成並びにE −カドヘリン(FITC、緑色の蛍光、黒色及び白色の表示中に暗色で現れる)、そ してまたサイトケラチン(テキサスレッド、赤色の蛍光)の両方についての染 色を示した。細胞の周辺における両方のタンパク質の普通の染色が注目されるべ きである(黄色の染色)。 図1C:細胞注射の28日後の腫瘍から分離されたEp5細胞。これらの細胞は繊維芽 細胞様外観を示し、E−カドヘリンではなくサイトケラチンを発現する。 図1D:サザンブロット分析。注射前(Ep5、可変性)のERasクローン(Ep5)、腫瘍 から除去されたERasクローン(Ep5、腫瘍)、腫瘍から除去され、G418中で5日間 にわたって再度培養されたERasクローン(Ep5、ex腫瘍)は同じレトロウイルス組 込みパターン(ネオマイシン−ホスホトランスフェラーゼ(NPT)プローブで検出 された)を示す。 実施例2 EF変換の時期並びにin vivoの腫瘍形成中の動物ドナー細胞及びレシーバー細 胞の挙動 次に、皮下注射した上皮EpRas細胞がEF変換を少しでも受ける腫瘍発達の段階 を調べた。注射の3日後に、EpRas細胞は細胞がビメンチンではなく特徴的なサ イトケラチンを発現した明らかに特定の小節を形成した(図2A)。これらの上皮 細胞小節は既にストローマ細胞により封入されていた(図2A)。プラスチック上 でG418の存在下でこれらの微小腫瘍から増殖した細胞は依然として上皮特性を示 した。注射の7日後に、Ep-Ras細胞の充実性細胞凝集が腫瘍の端部で分解し始め ており、上皮細胞が微小腫瘍の周辺でビメンチン陽性ストローマ細胞と混合され る(ストローマ細胞の内向きの移動またはドナー細胞の外向きの移動により)こ とが観察された。この瞬間に、ドナー細胞は、腫瘍中そしてまた分離及びG418中 のin vitro培養後の両方で、依然として上皮特性を示した。 注射の15日後に、3種の異なる細胞型を区別することができた(図2C)。腫瘍 細胞の約20%が緑色に染色されたビメンチン陽性ストローマ細胞であった。別の 20%がサイトケラチンのみを発現し、上皮表現型を保持したEpRas細胞を示した 。しかしながら、腫瘍塊の大半(50-60%)はサイトケラチン及びビメンチンを同 時発現した細胞からなった。これらの細胞はおそらく変換したEpRas細胞または 変換しているEpRas細胞である。また、上皮細胞そしてまた変換繊維芽細胞様細 胞の両方をG418選択後に得た。最後に、上皮部分は5週古い充分に発達した腫瘍 中でin situ、またはプラスチック上で最早検出できなかった。対照的に、親EpH 4細胞は腫瘍を形成しなかった。それらを皮下注射した場合、EpH4細胞は時折内 腔及びサイトケラチンを形成するが、ビメンチンを発現しない上皮細胞の層に発 達した(図2D)。かなり長い時間後に、これらの細胞は壊死し、周囲のストロー マにより再度吸収された。 三つの異なる腫瘍段階で最初に注射されたドナー細胞を明らかに同定するため に、in situハイブリダイゼーションをネオマイシン耐性遺伝子について行った 。これらの実験は、全てのサイトケラチン発現細胞がドナー細胞に由来すること を示した。レシーバー動物のストローマ細胞に対するドナー細胞の頻度は腫瘍の サ イズにつれて増大し、充分に発達した腫瘍中で最大であった(図2E、F、G、 H)。 概して、これらのデータは、Ras発現細胞そしてまた上皮対照細胞の両方がin vivoで最初に上皮表現型を有することを示す。Ras細胞腫瘍の発達が進行するに つれて、Ras形質転換細胞は繊維芽細胞様特性を次第に獲得する。対照的に、非 催腫瘍性親細胞は、それらが死滅するまでそれらの上皮特性を安定に保持する。 図2は腫瘍発達中の上皮/間充織変換(EFC)の時期を示し、このプロセス中の ドナー細胞及びレシーバー細胞の運命を示す。 EpRas腫瘍(クローンEp2)の異なって処理された凍結切片が示され、これらは 注射後の3日目(図2A、E)、7日目(図2B、F)、15日目(図2C、G)、及び28日目( 図2H)に調製された。注射の15日後に非催腫瘍性EpH4細胞により形成された細胞 構造を図2Dに示す。切片を免疫蛍光(図2A-D)及びin situハイブリダイゼーショ ン(図2E-H)により調べた。切片を46 kDaサイトケラチン(テキサスレッド、赤 色の蛍光)及びビメンチン(FITC、緑色の蛍光)の抗体で二重染色した。生後3日 目の腫瘍では、注射された上皮細胞(赤色に染色)及び宿主の間充織細胞(緑色 に染色)が明らかに分離していることが注目された。生後15日目の腫瘍では、多 数のサイトケラチン/ビメンチン二重陽性細胞が見られる(黄色に染色された細 胞)。これらの細胞はEFCを受けていた。ネオマイシン−ホスホトランスフェラ ーゼプローブを使用するRNA-in situハイブリダイゼーションは腫瘍細胞のドナ ー起源を確認し、EFC後の腫瘍細胞の次第に増加する密度を示す(図2E-H)。 実施例3 TGF β1はRas発現細胞中でin vitro EF変換を誘発するが、正常な上皮細胞中 では誘発しない。 EF変換の基礎となるメカニズムを同定するために、EF変換が特定かつ生理学上 妥当な条件下でin vitroで誘発し得る実験系を使用した。この目的のために、無 血清培地を使用して、正常なEpH4細胞またはこれらの細胞のRas形質転換サブク ローン(Ep-Rasクローン)を再生コラーゲン型Iゲル中で増殖させた。これらの 条件は上皮表現型のモジュレーションに関係することが知られている特定のポリ ペプチド成長因子及びホルモンを添加することを可能にした。この種のゲル中で は、正常なEpH4細胞が頻繁にクラブ形中空膨潤物中で終端する臓器様腺チャネル (細管)に発達した。これらの構造はコラーゲンゲル中そしてまたin vivo中の 両方で原発性胸部上皮細胞により形成される発達している乳腺の末端芽に非常に 似ている外観であった(図3A)。これらの構造は泌乳刺激ホルモンの添加により ミルクタンパク質を有効に生じるように誘導し得る。これらの細胞をゲルから分 離し、組織培養プラスチック上で増殖させた場合、それらは予想された規則的な 上皮単層を形成し、これらはこれらの細胞が有効に分極することができるという 指示である認識可能なドームを形成した(図3、右側の表)。 驚くことに、これらの無血清コラーゲンゲル中のEpRasクローンはまたかなり の管腔形成を示した。管腔は播種の2-3日後のように早期に目視できた。その後 これらの構造の95%より多くが比較的大きい嚢胞腔に発達し(図3B、左側かつ中 央の表)、これらはミルクを生じる充分に発達した乳腺の胞に似ていた。プラス チック上で、これらの細胞は順にドームを有する規則的な上皮単層を形成し、こ うして非催腫瘍性出発細胞と同じ上皮特性を示した(図3B、右側の表)。 しかしながら、同EpRas細胞は、それらが10%のウシ胎児血清(FCS)中で培養さ れた時に完全に異なって挙動した。これらの条件下で、それらは管腔形成を示さ ない細胞の細長い多細胞かつ侵食的に増殖しているストリングを形成した。これ らのストリングは多くの上皮特性を失い(図3C及び図4)、かつex vivo繊維芽 細胞様腫瘍細胞に著しく似た様式で挙動する非分極細胞からなった。これらの知 見は、FCS中に含まれた因子が、活性化Ha-Ras-オンコプロテインと協力して、上 皮EpRas細胞から繊維芽細胞様細胞への変換をもたらすことを示した。 この因子またはこれらの因子を同定するために、幾つかの成長因子(TGF β、 ヘレギュリン、スカッター因子/肝細胞成長因子、酸性及び塩基性FGF、PDGF及 びTGF β1)をコラーゲンゲル中で増殖されたRas形質転換細胞に添加した。驚く ことに、TGF β1がEpRas細胞に対し顕著かつ長く持続する効果を示す唯一の因子 であった。TGF β1を添加した時、これらの細胞はFCSにより誘発されたのと同様 の細胞の細長い分枝ストリングに成長した。組織培養プラスチック上で、こ れらの細胞は明らかな繊維芽細胞様表現型を示した(図3D)。対照的に、EpH4対 照細胞及びその他の非催腫瘍性胸部上皮細胞クローン中で、TGF β1はEF変換を 誘発することができなかった。 EF変換を促進する血清中の活性が実際にTGF β1であるか否かを調べるために 、5%のFCSを含む培養物をTGF β1中和抗体とともにインキュベートした。これ らの条件下で、EpRas細胞は順に図3Bに示された嚢胞腔に非常に似た嚢胞腔を形 成した。こうして、FCS中に存在する細胞変換活性をTGF β1と同定し、TGF β1 がEF変換を誘発し得るFCS中の唯一の活性または少なくとも優性の活性であるこ とが示された。 その他の超微細構造分析及び免疫組織化学分析は、嚢胞構造の殆どが分極細胞 の単層からなることを示した(図4A)。これらの細胞はそれらの先端ドメイン( 管腔に面するもの)で微小柔突起を多量に形成し、細胞の分極編制を示した(図 4A)。更に、タンパク質ZO-1、デスモゾーム(図4A)及び所謂“接着結合”の典 型的な細胞付着分子E−カドヘレン(図4B)を特徴とする、異なる型の上皮細胞 に典型的な細胞間接触構造、即ち、タイトな結合をそれらの典型的な外側または 基底外側の位置により検出することができた。同様に、E−カドヘリンと会合し たプロテインβ−カテニンが細胞の殆ど中で基底外側の局在化を示した(図4C) 。 対照的に、TGF β1により誘導されたストリング状細胞構造はゆるく付着した スピンドル形細胞からなった(図4D、差し込み写真)。記載された上皮マーカー タンパク質及び超微細構造の認識可能な接触構造のいずれもが、E−カドヘレン の低い非分極発現(図4E)を除いて、検出できなかった(図4D及び表1)。β− カテニンの発現が大きく減少され、主として細胞質中に位置された(図4F)。更 に、これらの細胞は予想された間充織マーカーを発現した(表1)。 これらの結果は、Ras形質転換マウス胸部上皮細胞が表現型中で格別の可変性 を示し、これは規則的な上皮に編制された上皮分極細胞から繊維芽細胞様の移動 性かつ侵食的に増殖している細胞までの範囲であることを示す。 図3は血清及びTGF β1による管腔形成及び上皮極性の破壊を示す。 非催腫瘍性EpH4細胞(図3A)または催腫瘍性EpRas細胞(クローンEp5、図3B -D)をコラーゲン型Iマトリックス中で増殖させた。巨視的構造を塗布の8日後 に低倍率及び高倍率で写真撮影した(左側及び中央の表)。ゲルから分離され、 組織培養プラスチック上で増殖された細胞を右側の表に示す。 図3A:Ep4H細胞は無血清コラーゲンゲル中で末端芽に似ているチャネル及び膨 潤物を形成する。プラスチック上で、これらの細胞は規則的な上皮単層及びドー ム(半嚢胞)を形成した。 図3B:無血清コラーゲンゲル中で、幅広のチャネル及び胞状嚢胞がEpRas細胞に より形成される。 図3C:10%のFCSの添加が細胞に管腔を含まない細胞の侵食的に増殖している不 規則なストリングを形成させる。プラスチック上で、これらの細胞は繊維芽細胞 に似ており、スピンドル形である。 図3D:TGF β1それ自体(5ng/ml)はEpRas細胞をFCSにより誘導されたものに似た 細胞の侵食性ストリングに成長させる。 図4はTGF β1とのインキュベーション後のRas形質転換胸部上皮細胞中の上皮 細胞極性の破壊を示す。 無血清コラーゲンゲル中でEpRas細胞(クローンEp6)により形成された胞状嚢 胞(図4A-C)、及びTGF β1による処理後に同細胞により形成された細胞の不規 則なストリング(図4D-F)をそれらの上皮編制及び細胞極性の形成について分析 した。個々の構造中の切片を高倍率または低倍率で写真撮影した(差し込み写真 )。 図4A:透過電子顕微鏡は、TGF β1の不在下で得られた細胞が管腔(図4D)に面 するそれらの先端ドメイン中に微小柔突起を最終的に含む形態上分極した細胞の 単層からなることを示した。差し込み写真は低倍率でこの種の単層嚢胞を示す。 対照的に、TGF β1の存在下で誘導された細胞のストリングは微小柔突起、デス モゾームまたはタイトな結合を含まないゆるく付着している細胞からなる。 図4B、E:細胞付着分子E−カドヘリンの抗体で免疫染色された胞状嚢胞中の凍 結切片は細胞の殆ど中でE−カドヘリンの明らかな基底外側の局在化を示した。 細胞のTGF β1誘導ストリング中で、E−カドヘリンはその発現を低下され、繊 維芽細胞様細胞の全表面にわたって発現される。 図4C、F:これらは抗β−カテニン抗体で免疫染色された、図4B及びEに示さ れた構造と同様の構造中のロウィクリル切片を示す。嚢胞の細胞の殆ど中のβ− カテニンの基底外側の発現(図4C)及び今や主として細胞質中に局在化されるか なり減少されたβ−カテニン発現が注目されるべきである(図4F)。 実施例4 繊維芽細胞様EpRas細胞は侵食性である。 EFCを受けたEpRas細胞はコラーゲンゲル中で侵食挙動の兆候を示した。この侵 食性の明確な証明を得るために、ニワトリ胚心臓侵食アッセイを使用し、in viv o転移についてのその妥当性が既に詳細に実証されていた(Mareelら,1979;Maree l,1983)。このアッセイにおいて、胚心臓断片への細胞の移動を調べた(図5A) 。侵入細胞を明らかに同定するために、それらを蛍光色素(カルボキシ−ジクロ ロ−フルオレセイン−ジアセテート)で標識した。7日のインキュベーション期 間中に、親EpH4細胞はニワトリ心臓組織に移動しなかった(図5A、B)。3種の異 なる充分に分極したEp-Rasクローンでは、なくなりそうな小さい割合の細胞のみ が心臓組織に移動することができた(図5C)。移動した二三の細胞がビメンチン 抗体で強く染色されたが、抗E−カドヘレン抗体では染色されなかった。これは 繊維芽細胞様表現型へのそれらの変換を確認し、これは同時培養物が血清を含ん だので驚くことではない。上皮細胞とは対照的に、腫瘍から得られた繊維芽細胞 様細胞(“ex-Tu細胞”)、またはin vitroのTGF β1の使用によりEFCに誘導さ れた細胞は多数かつ比較的速く心筋組織に移動した(図5D)。これらの結果は、 EpRas細胞がEFCを受けた後に高度に侵食性であるが、一方、非変換上皮細胞はご くわずかな侵食性を示すことを示す。 図5はニワトリ胚心臓侵食アッセイにおける繊維芽細胞様EpRas細胞の高侵食 性を示す。 in vivoの蛍光標識した細胞をニワトリ胚心臓断片と同時培養してそれらの侵 食性を試験し、断片中の切片を7日後に組織検査した。非催腫瘍性上皮出発細胞 (EpH4細胞)は心臓断片に移動せず(図5A、B)、非変換上皮EpRas細胞はごくわず かの侵食性を示した(図5C)。対照的に、TGF β1処理後に得られた変換された 繊維芽細胞様細胞は心臓断片に有効に移動することができた(図5D)。 実施例5 TGF β1はオートクリンループにより変換EpRas細胞の繊維芽細胞様表現型を維 持する。 TGF β1がRas形質転換上皮細胞を繊維芽細胞様細胞に変換することが示された 後、TGF β1がまたこの表現型を維持するのに関与するのか否かについて疑問が 生じた。繊維芽細胞様表現型の相対的安定性(例えば、プラスチック上の培養物 中)についての可能な説明は変換細胞それ自体によるかなり多量のTGF β1のオ ートクリン産生であった。この疑問を解決するために、繊維芽細胞様EpRas細胞 を1%のFCS中の極めて低い濃度で培養した(培地中のTGF β1濃度を最小にする ため)。これらの条件下で、個々の細胞は明らかに空間上分離したクローンに成 長する。図6A及びBに示されるように、塗布後まもなく得られ、最初に二三の細 胞からなるクローンは最初に繊維芽細胞様形態を有していた。細胞クローンの数 が増加するにつれて、クローンの圧倒的大半中の細胞は上皮表現型を有する細胞 に次第に変化した(図6A-D)。この反転は塗布の10日後に実質的に完結した(図 6D)。 オートクリン産生されたTGF β1の効果を完全に抑制し、それによりTGF β1が EF変換を維持するのに実際に必要であることを明確に実証するために、腫瘍から 分離した繊維芽細胞様細胞(ex-腫瘍細胞)をコラーゲンゲル中でTGF β1中和抗 体の存在下または不在下で増殖させた。抗体の不在下では、繊維芽細胞様腫瘍細 胞は予想された細胞の薄い侵食的に増殖しているストリングを形成した(図6E) 。しかしながら、同細胞は、それらが8日間にわたって中和抗体で処理された時 に最早侵食的に増殖せず、上皮単層からなる嚢胞構造に発達した(図6F)。 最後に、細胞中で発現されたTGF β1-mRNAの量及び培地に放出されたTGF β1- タンパク質を測定した。3種の異なるEpRasクローン並びに親EpH4クローンをコ ラーゲンゲル中で5日間にわたって増殖させた。それらを5ng/mlのTGF β1で処 理した場合、EpRasクローンはEFCを受け、一方、同様に処理された非形質転換Ep H4細胞はそれらの上皮表現型を保持した。半定量的PCR(図7A)またはイムノブ ロット(図7B)によるこれらの細胞の分析は、TGF β1により誘導された繊維芽 細胞様細胞が対照繊維芽細胞の量と匹敵するTGF β1-mRNAの量を生じること を示した(図7A)。また、これは腫瘍中で繊維芽細胞様細胞に変化されたEpRas 細胞に適用された。対照的に、親EpH4細胞及び上皮EpRas細胞はTGF β1-mRNAを 生じず、またはごく少量を生じた(図7A)。タンパク質レベルでは、無血清培養 上澄みをELISA及びウェスタンブロットにより分析した時、実質的に同じ結果が 得られた(図7B)。 図6はTGF β1がオートクリンループにより変換EpRas細胞の繊維芽細胞様表現 型を維持することを示す。 図6A-D:腫瘍から分離された繊維芽細胞様細胞(ex-腫瘍細胞)からのクローン は上皮細胞からなるクローンに次第に変化する。クローンを生産するために、10 0mmの皿当たり500の細胞を1%のFCSを含む培地に接種した。培地を毎日交換し てオートクリン因子を希釈した。同じ型の細胞クローンを塗布後1日目(A)、3 日目(B)、5日目(C)及び10日目(D)に写真撮影した。繊維芽細胞様細胞から上皮 形態を有する細胞への徐々の形質転換が明らかに見られる。 図6E、F:腫瘍から分離された繊維芽細胞様EpRas細胞をG418中で5日間にわた って選択し(レシーバー動物に由来する細胞を排除するため)、続いて無血清コ ラーゲンゲルに接種した。これをTGF β1中和抗体の不在下(E)または存在下(F) で行った。TGF β1中和抗体の存在下で、腫瘍細胞は管腔形構造に発達し、一方 、その抗体の不在下で、それらは予想された細胞の不規則なストリングを形成す ることがわかる。 図7は変換EpRas細胞が高濃度のTGF β1を産生することを示す。 図7A:非変換(上皮)EpRas細胞及び変換(繊維芽細胞様)EpRas細胞(クローン Ep5)そしてまた非催腫瘍性EpH4細胞及びNIH-3T3-繊維芽細胞(ATCC CRL1658)から のRNAを半定量的PCR分析に使用した。繊維芽細胞様細胞中のTGF β1-mRNAの かなりの増加が注目されるべきである。TGF β1発現をNIH-3T3細胞で得られた値 の%として記録する。 図7B:細胞培養上澄み中のTGF β1濃度をウェスタンブロット及びELISAにより 分析した時に、同様の結果を得た(ウェスタンブロットゲル痕跡量よりも上の数 はELISAで測定されたTGF β1の量(ng TGF β1/ml)を示す)。図7Bに示された データを2種のその他のEpRasクローン(Ep2及びEp6)で確認した。 全部で、これらの結果はEFCを誘発するだけでなく、繊維芽細胞様表現型を維 持する際のTGF β1の主要な役割を示す。 実施例6 最後に、試験を行って、TGF β1が実際にEpRas腫瘍中で発現されるか否か、及 び実験でin vivoで添加されたTGF β1がまたEFC及び細胞の侵食性をもたらすこ とができるか否かを測定した。注射したEpRas細胞から増殖する腫瘍を細胞の注 射の4日後及び15日後にRNA in situハイブリダイゼーション及び免疫組織化学 によりTGF β1の発現について調べた。細胞の注射の丁度4日後にTGF β1-mRNA の増大された濃度をEpRas細胞により形成された結節の外端で検出した(図8A) 。二重免疫蛍光により示されたTGF β1及びネオマイシンホスホトランスフェラ ーゼ(NPT、これはRas形質転換ドナー細胞により専ら発現される)の同時発現は、 ドナー細胞(NPTに関する赤色の染色により特性決定される)の大半が腫瘍発達 のこの段階でTGF β1(緑色の染色)を産生しないことを示した。一方、レシーバ ー動物に由来する周囲の腫瘍ストローマの細胞及び非上皮起源の細胞はTGFβ1に ついて明らかに陽性であった(図8B)。対照的に、注射の28日後に除去された腫 瘍は全腫瘍領域にわたってTGF β1-mRNAの比較的高くかつ一様な発現を示した( 図8C)。これらの腫瘍中で、注射されたEpRas細胞それ自体がTGF β1を産生する ことがわかった。何となれば、それらがNPT及びTGF β1の両方の抗体で染色し得 たからである。それらは黄色の染色を示した(図8D)。顕著なことに、TGF β1 を産生した細胞の殆どがサイトケラチンの減少された発現を示したが、高いサイ トケラチン発現を有する細胞の大半がTGF β1の抗体で染色し得なかった。これ は、変換細胞が実際には腫瘍の進行段階で動物中にTGF βをまた産生するもので あるという更なる証明である。 これらの結果は、腫瘍組織を囲む宿主細胞が細胞変換を開始することができる ことを示す。変換腫瘍細胞が順にそれ自体でTGF βを産生し、こうして細胞変換 続いて侵食プロセスを加速する。 これを直接探査するために、組換えヒトTGF β1を入れた徐放性ペレットを注 射されたEpRas細胞の近くに適用した。非催腫瘍性EpH4細胞と組み合わされた同 TGF β1ペレットを対照として使用した。驚くことに、TGF β1ペレットの近くに 配置されたEpRas細胞は注射の丁度4日後に不規則な形状の細胞に変換され、周 囲の宿主組織への広範囲の移動を示した。驚くことに、この早期段階でさえも、 これらの細胞の多くはビメンチンについて陽性であった(図8F)。対照的に、外 在性TGF β1の不在下で注射された同じEpRas細胞は密接な細胞接触を形成するビ メンチン陰性細胞の平滑な均一な節を形成した(図8E)。予想されたように、Ep H4細胞の近くに配置されたTGF β1ペレットはこれらの非催腫瘍性細胞の表現型 に著しく影響しなかった。これらのin vivoデータはin vitroで得られた結果と 合致し、TGF β1が腫瘍細胞の可変性及び侵食性を調節する際に重要な役割を有 するものと結論させる。 図8は実験で誘発された腫瘍中のTGF β1がどのようにして上皮から繊維芽細 胞様状態への転移並びに細胞の侵食性を誘発するのかを示す。 図8A-D:4日目(A、B)及び15日目(C、D)の腫瘍段階の凍結切片。RNA i n situハイブリダイゼーションは、4日目にTGF β1発現が腫瘍(A)の外周辺 で起こっているが、15日目にそれは腫瘍中で起こっていることを示す。矢じり形 部分は腫瘍と周囲のストローマの間の境界を示す。 図8B,D:凍結切片を抗TGF β1抗体(緑色の蛍光)及び抗ネオマイシンホスホト ランスフェラーゼ抗体(これはドナー細胞を認識する)(赤色の蛍光)で染色し た。小さい線図は抽出物を高倍率で示す。腫瘍の早期段階では、TGF β1が専ら 腫瘍(B)のまわりのストローマにより産生されることが指摘されるべきである 。対照的に、生後15日の腫瘍では、TGF βがまた腫瘍組織(D、黄色の蛍光)中 の多くのドナー細胞中で発現される。 図8E,F:上皮EpRas細胞を組換え(活性)TGF β1入りの3-エルバックス徐放性 ペレット(F)を用いずに、またはそれと一緒にヌードマウスに皮下注射した。生 後4日の腫瘍から得られた凍結切片をサイトケラチン(赤色)及びビメンチン( 緑色)の抗体で二重染色した。認められるものはTGF β1放出ペレット(白色の 円形)の付近に誘発された周囲組織への細胞の劇的な移動である。 実施例7 正常な胸部上皮細胞に対するTGF β1の効果:細胞増殖、細胞分極及びアポトー シスを調節することによる乳管形態形成の調節 ポリペプチド因子のTGF βスーパーファミリーは主として胚発達中に形態形成 プロセスに関与するので、正常な乳腺発達におけるTGF β1の役割をまた本発明 の範囲内で調べた。この目的のために、細胞系EpH4の正常な胸部上皮細胞を無血 清コラーゲンゲルに接種した。実施例3における実験と違って、コラーゲンゲル を硬化させるために接種中に必要とされ、1日後にウォッシュアウトされる血清 を低含量のTGF β1のために特別に選んだ。これらの条件下で、in vitro器官形 成が完全に抑制され、管状構造が形成されなかった(図10A)。低濃度のTGF β1( 0.1ng/ml)を添加した場合、細胞は増殖して一般に管腔を欠いた異型構造を形成 することができた(図10B)。しかしながら、更なる研究は、これらの構造が内側 でタイトな結合タンパク質であるZO-1を発現することを示した。こうして、これ らの構造は発達している乳腺の末端芽に或る種の類似性を示した。 対照的に、高濃度(>0.25ng/ml)のTGF β1は正常な細胞に増殖を停止させ、プ ログラムされた細胞死滅(アポトーシス)により死滅させた(図5C)。これは正 常な上皮細胞とHa-Rasを含む細胞の重要な相違である。後者は20倍高いTGF β1 の濃度(5ng/ml)でさえも例外なくアポトーシスに誘導されず、EFCを受けるが、 正常な胸部上皮細胞中で形態形成プロセスを調節するTGF β1濃度が厳密に下げ られる。おそらく、過度に高いTGF β1濃度により生じる異常な形態形成は増殖 抑制及びアポトーシスがその代わりに細胞中で誘導されるという事実により阻止 される。 低濃度のTGF β1を含む分極細胞からなる充分に分化した管状構造を誘導する ことが可能ではなかったという事実は、最適以下の培養条件のためであるかもし れなかった。一方、管状構造の完全な器官形成は器官発達の或る期中に存在する TGF β1のみに依存し得る。これを調べるために、構造が形成するまで、細胞を 上記のように0.1ng/mlのTGF β1で処理し、次いでTGF β1をコラーゲンゲルから ウォッシュアウトした。驚くことに、異型構造はその後に管腔を含まないでそれ 自体で再度組織化し、典型的な管腔を含む良く成形された管状構造を形成した( 図10D、一時的なTGF β1)。これらの結果は、(i)TGF β1がin vitro器官 形成に絶対に必要であり、(ii)濃度が重要であり、高濃度がアポトーシスをもた らし、かつ(iii)TGF β1のみが器官発達の或る期中に細胞に作用する必要がある と結論させる。胸部上皮細胞の発達中のTGF β1のこの通常の機能がRas形質転換 細胞中で完全に変化され、ここでTGF βが広範囲の濃度にわたって上皮から繊維 芽細胞様状態への転移(EFC)を生じる組織再編制の極めて異常な形態を生じる。 次いで次の工程は、TGF β1がin vitro知見におけるこれらと同様にまたin vi voで乳腺上皮の形態形成及びプログラムされた細胞死滅を調節するという指示を 探究することであった。このために、春機発動期のマウスの乳腺をTGF β1のプ ローブを使用するin situハイブリダイゼーションと組み合わせた組織分析にか けた。この期中に、バージンの乳腺が周囲の脂肪組織(脂肪パッド)に成長する 。生じた乳腺の成長、分化及び形態形成は末端芽と称され、未分化の未だに充分 に分極していない上皮細胞を含む構造から開始する。末端芽(そこで、増殖及び その後の器官形成、例えば、乳管の分枝が起こる)中の切片を乳腺の充分に分化 した管中の切片と比較した(図11中央の略図を参照のこと)。TGF β1は成長し ている末端芽を囲む間充織ストローマ中で産生されるが(図11、左側の表)、TG F β1のこのような産生は既に分化した乳腺管を囲むストローマ細胞中には見ら れなかった(右側の表)。これらの知見は、TGF β1による胸部上皮細胞の一時 的なパルス化処理が管形態形成に必要であったin vitroデータと殆ど一致する。 同様に、TGF βはまたin vivoの胸部上皮細胞のプログラムされた細胞死滅( アポトーシス)を調節するという指示があった。離乳後の乳腺の反転中に、胞状 細胞が塊アポトーシスを受け、一方、乳腺管中の細胞が生存し、保持される。別 の妊娠中の乳腺の新たな成長がこれらの細胞から開始する。このプロセス中のTG F β1の可能な関与を調べるために、乳腺の死んでいる胞状ゾーン及び隣接乳腺 管領域中の凍結切片を泌乳の終了の3日後に調製した(図12、中央の図)。アポ トーシスを丁度受けた領域では、死んでいる胞を囲む間充織細胞が高濃度のTGF β1を発現し(図12、左側の表)、一方、生存している管状構造を囲む間充織細 胞はTGF β1を発現しなかった(図12、右側の表)。両方の場合、おそらくクロ ストークが上皮細胞と間充織中で誘導されたTGF β1産生の間で起こる。 図10は、特に因子が一時的に投与される場合に、低濃度のTGF β1が正常な乳 腺上皮細胞のin vitro形態形成を調節することを示す。高濃度のTGF β1は同細 胞中でアポトーシスを生じる。 接種中の特に低いTGF β1含量について選ばれたウシ胎児血清を使用して、正 常なEpRas細胞をコラーゲンゲル中で接種した。これらの条件下で、細胞は管状 構造を形成しない(図10A)。0.1ng/mlのTGF β1の存在下で、細胞は分枝構造を形 成するが、これらは管腔を欠いている(図10B)。TGF β1が洗浄により7日目にこ のような構造を有する培養物から除去される場合、細胞は明らかな中空構造を形 成する(図10D)。高濃度のTGF β1は細胞死滅を生じる(アポトーシス、図10C、 左には低倍率、右には高倍率)。 図11は春機発動期中(25日目)の正常な乳腺の形成中のTGF β1のin vivo発現 を示す。 バージンの乳腺の末端芽(左側のパネル)または既に形成された乳腺管(右側 のパネル)中の凍結切片を中央の線図に示されたようにして調製した。一連の切 片中の連続切片をTGF β1mRNAに関するRNA in situハイブリダイゼーションにか け、または組織染色した。末端芽を囲む間充織細胞はTGF β1を強く発現し(左 側のパネル)、一方、分化した乳腺管の周囲の細胞中では、TGF β1発現が検出 されないことが明らかである。 図12は離乳後の充分に発達した乳腺の損傷中のTGF β1のin vivo発現を示す。 若いマウスをそれらのほ乳している母から奪い、こうして充分に発達した乳腺 の反転を誘発した。3日後に、凍結切片を乳腺の死滅領域(左側のパネル)並び にアポトーシスにより影響されなかった乳腺管(右側のパネル)中で採取した( その図の中央の線図を参照のこと)。次いで切片を図11の脚注に記載されたよう にしてTGF β1発現について調べた。TGF β1産生細胞が死滅胞の周囲の領域中で 明らかに検出し得るが(左側のパネル)、生存している乳腺管のまわりにはない 。 実施例8 ヒト腫瘍組織中のビメンチン及びサイトケラチンの同時発現。ヒト原発性腫瘍 によるTGF βの発現。 先の実施例では、良く特性決定された細胞モデル、即ち、マウスからのRas形 質転換胸部上皮細胞を使用した。こうして、表現型可変性及び上皮腫瘍細胞の侵 食性に関するTGF βの活性についてこのモデル形態で得られた結果がどの程度ま でヒト癌腫に適用されるのかを評価することが非常に重要であった。この目的の ために、悪性の異なる程度の31の腎臓細胞癌腫及び64の胸部腫瘍を免疫組織化学 により調べた。第一に、このような腫瘍中の相当する組織切片を一般的な上皮サ イトケラチンの抗体及び間充織マーカービメンチンの抗体で二重標識した。両方 のマーカーを同時発現する腫瘍細胞はおそらくEFCを受けていた。第二に、胸部 腫瘍からの隣接切片をヒトTGF β1及びTGF β2の抗体で標識して、腫瘍細胞がま たTGF βを産生するか否かを判明した。 下記の表に示されるように、腎臓細胞癌腫の74%が変性上皮腫瘍細胞中でサイ トケラチンそしてまたビメンチンの両方を発現した。予想されたように、腫瘍ス トローマの繊維芽細胞様細胞はビメンチンのみを発現したが、サイトケラチンを 発現しなかった。乳癌細胞では、サイトケラチン及びビメンチンを同時発現する 腫瘍の%は小さく、即ち、24〜27%であった。 TGF βの発現に関する同胸部腫瘍の組織化学分析の結果は更に明らかであった 。ここで、試験した全ての腫瘍がTGF βに関して腫瘍細胞の明らかな染色を示し た(表)。腫瘍ストローマは腫瘍の殆どについて弱く染色され、または全く染色 されなかった。また、染色の特異性は正常な組織の染色から明らかであった。例 えば、皮膚では、予想されたように、ケラチノサイトの基底細胞層のみが陽性で あった。また、表に示されるように、組織化学染色の結果がまたTGF βに関する in-situハイブリダイゼーション並びにRT-PCRにより充分に確認された。 これらの結果は、調べたヒト腫瘍のかなりの部分について、図9中のモデルに 相当する腫瘍細胞が両方ともEFCを受け、そしてまたTGF βの産生を高度に調節 したという二つの点で明らかな指示があった。 表は、ヒト腎臓細胞及び乳癌がサイトケラチン及びビメンチンを同時発現する ことを示す。これは、EFCが起こったという明らかな指示である。同様に、調べ た全ての腫瘍がTGF βを産生する。 表(A)の上部は特定の腫瘍の型の凍結切片に関するサイトケラチン及びビメン チンの染色の結果を示す。下部(B)は同胸部腫瘍中の切片に関するTGF βの染色 の結果を示す。脚注はTGF β発現(RT-PCRによる)及び腫瘍ストローマ中のTGF βの発現に関する対照実験の結果を示す。 A ビメンチン及び基底サイトケラチンの同時発現 腫瘍の サブタイプ 分析した ビメンチン/サイトケ 型 腫瘍の数 ラチンを同時発現する 腫瘍の数 腎臓細胞 31 23/31(74%) 癌腫(RCC) 胸部 腫瘍 64 18/64(28%) 繊維腺腫(FA) 3 2/3 (66%) 侵食性腺管癌(IDC) 34 8/34(24%) 侵食性小葉癌(ILC) 26 7/26(27%) 侵食性腺管小葉癌(IDLC) 1 1/1 B TGF β-1/2の発現 腫瘍の型 サブタイプ 抗体染色 in situ ハイブリダイゼーション 胸部腫瘍 繊維腺腫(FA) 3/3 (100%) 侵食性腺管癌(IDC) 33/33(100%) 13/13(100%) 侵食性小葉癌(ILC) 23/23(100%) 9/9 (100%) 侵食性腺管小葉癌(IDLC) 1/1 (100%) 追加の分析 1.IDC及びILCのRT-PCR:Abで陽性の11の症例がまたRT-PCRで陽性である。 2.腫瘍ストローマ中の発現: 抗体:35/61の症例で、わずかな染色 in situハイブリダイゼーション:3/22の症例にて 実施例9 TGF βの中和抗体がコラーゲンゲル中でヒト腫瘍細胞系の侵食的増殖を阻止す る。 実施例8では、腫瘍組織中の切片の組織化学試験は、TGF β誘導EFC及びその 後のTGF βのオートクリン産生に関するモデル系で到達した仮説が多くのヒト腫 瘍にも適用されるという証拠を与えた。これの更に直接の証拠を得るために、実 験を行って、コラーゲンゲル中で侵食的に増殖するヒト腫瘍細胞がTGF β中和抗 体の投与により非侵食的に増殖する細胞に変換し得るか否かを測定した。腎臓癌 細胞系MZ 1795及び鼻咽頭癌細胞系KBを使用した。両方の細胞系の細胞はTGF β 抗体を使用しないで、またはTGF βの添加後に5%のFCSを含むコラーゲンゲル 中で増殖して繊維芽細胞様細胞の網状構造及びストリングを形成した(図13、右 側のパネル)。他方で、TGF β中和抗体(実施例5、図6を参照のこと)の存在 下では、細胞は侵食的増殖に関係なく緻密な塊を形成した(図13、左側のパネル )。 図13は、TGF β中和抗体がコラーゲンゲル中でヒト腫瘍細胞系の侵食的増殖を 阻止することを示す。 MZ 1795細胞及びKB細胞を無血清コラーゲンゲルに接種し、これに2%の血清 もしくは5ng/mlのTGF β(+TGF β、右側のパネル)を添加し、またはこれにTG F βの異なる抗体の混合物(-TGF β、左側のパネル;実施例5、図6を参照の こと)を添加した。10日後に、コラーゲンゲル中の細胞の顕微鏡写真を作成した 。TGF βが存在する場合(右側のパネル)、MZ 1795細胞(上部パネル、高倍率 、下部パネル;要約、低倍率)そしてまたKB細胞(下部パネル)の両方がコラー ゲンゲル中で一緒に増殖するが、同細胞はTGF β中和抗体の存在下で細胞増殖し ないで緻密な塊を形成する(左側のパネル)。 実施例10 優性−陰性TGF βレセプターの発現がEF変換を阻止し、Ras形質転換胸部上皮 細胞の腫瘍増殖を遅くする。 腫瘍進行を抑制する際のTGF βレセプターインヒビターの活性に関する活性の 推定されたメカニズムの最も直接の証明(原理の証明)は腫瘍を有する動物中で この活性を直接実証することにある。これはin vitroで使用されるTGF β中和抗 体を用いるこれらの実施例の範囲内では可能ではなかった。何となれば、この種 のin vivo試験に必要とされる多量の抗体が入手できなかったからである。それ 故、別のアプローチを採用した。 ヒトTGF βレセプター型II(TβRII-dn)の“キナーゼ−デッド”突然変異体が あり、これがまた優性−陰性レセプター(即ち、野生型レセプターの機能をスイ ッチオフするレセプター)として作用する。このTβRII-dnのcDNAをレトロ ウイルスベクターの助けによりRas形質転換EpH4細胞(Ep-Ras)中で発現した。得 られたクローンは非常に遅く増殖し、膨張することができるために高い(20%)血 清含量を有する培地を必要とした。ヌードマウスへの注射後に、これらの細胞は 対照細胞(Ep-Ras)で注射されたマウスがそれらの過度に大きい腫瘍のために殺さ れる時点まで腫瘍を全く形成しないか、またはごく小さい腫瘍を形成した(図14 、上部)。 腫瘍細胞を最も遅く増殖しているEp-Ras-TβRII-dn腫瘍並びにEp-Ras細胞によ り誘導された対照腫瘍から分離し、培養した(実施例1を参照のこと)。対照腫 瘍の細胞は予想された繊維芽細胞様形態を示し(図14の下部、左側の表)、一方 、遅く増殖しているEp-Ras-TβRII-dnから分離された腫瘍細胞は明らかに上皮様 形態を示した(図14の下部、右側の表)。これは、Ep-Ras細胞により腫瘍形成中 に起こるEF変換がTβRII-dnの発現により抑制され、これが腫瘍増殖のスローダ ウンをもたらすことを示す。 図14はTβRII-dnを発現するRas形質転換胸部上皮細胞(Ep-Ras-TβRII-dn)が動 物中で遅い増殖を示し、これらの腫瘍から分離された細胞がEF変換を受けなかっ たことを示す。 Ep-Ras-TβRII-dn細胞の4種の異なるクローン並びにEp-Ras対照クローンを夫 々3匹のヌードマウスに皮下注射した(1x 106の細胞/動物)。3週後に、腫瘍 を切除し、計量した。図14の上部の線図は得られた腫瘍重量の平均値を示す。最 も遅く腫瘍を形成するEp-Ras-TβRII-dnクローンから得られたEp-Ras-TβRII-dn 腫瘍からの腫瘍細胞、及びEp-Ras対照腫瘍を培養し、G418(実施例1を参照のこ と)中で選択し、10日後に相コントラストのもとに写真撮影した。下部左側パネ ルはEp-Ras腫瘍から増殖した繊維芽細胞様細胞を示し、一方、右側パネルはEp-R as-TβRII-dn腫瘍から増殖した上皮様細胞を示す。 実施例11 繊維芽細胞様の高度に転移する結腸癌細胞(CT26)中のTβRII-dnの発現:腫瘍 形成を遅延する、in vitroのこれらの細胞の侵食的増殖の抑制及びマウス中の肺 転移の形成の抑制 優性−陰性TGF βレセプター(TβRII-dn)がEpRas細胞のEF変換を阻止できると ともにまたこれらの細胞の腫瘍増殖を著しく遅くすることが一旦示されると、既 に安定にEF変換を受け、既に高度に転移性である腫瘍細胞中のこのTβRII-dnの 効力を調べることは有益であった。原発性腫瘍からの肺転移形成について確立さ れたマウスモデルであるマウス結腸癌細胞系CT26(Brattainら,1980)を選んだ 。これらの細胞をTβRII-dn発現レトロウイルス(実施例10を参照のこと)で感 染させ、TβRII-dn発現クローンを選択し、種々のクローンをin vitro及びin vi voの分析にかけた。 TβRII-dn発現CT-26クローン(CT26-TβRII-dn)の二つの型を得た。第一の型は プラスチック上で明らかに上皮の依然として異常な形態を示し、少量の上皮マー カーE−カドヘリン及びZ0-1を発現した。他方で、プラスチック上のクローンの 第二の型は半嚢胞(ドーム)を形成する上皮形態を有する細胞のローンを形成し た。予想されたように、クローンのこの第二の型は上皮マーカーE−カドヘリン 及びZO-1の高い外側発現を示した。インサートなしでレトロウイルスで感染され た対照CT26細胞はプラスチック上で予想された繊維芽細胞様形態を示し、上皮マ ーカーを発現しなかった。こうして、TβRII-dnは繊維芽細胞様CT26細胞をin vi troで上皮細胞に変換することができ、こうしてFE変換に影響することがで きることが示された。 次に、両方の型の代表的なCT26-TβRII-dnクローン並びにCT26対照細胞を5% のFCSを含むコラーゲンゲルに接種する。図16は、対照細胞が予想された繊維芽 細胞様細胞の多数のストリング及び網状構造(図15、写真の上半分、左側パネル )に成長することを示す。対照的に、型1のCT26-T73RII-dnクローンは緻密な塊 を形成し、わずかに二三の単一細胞が成長し(図15、写真の上半分、中央パネル )、一方、型2のCT26-TβRII-dnクローンのみが細胞の小さい緻密なグループに 成長した(図15、写真の上半分、右側パネル)。これは、TβRII-dnがコラーゲ ンゲル中でCT26細胞の侵食的増殖を阻止することを示した。 次いで同細胞型をニワトリ心臓侵食アッセイ(実施例4、図5を参照のこと) により試験した。対照CT26細胞は予想されたようにこのアッセイで非常に侵食的 に増殖したが(図16、写真の下半分、左側パネル)、この試験で型1及び2のCT 26-TβRII-dnクローンはごく僅かに侵食性であり、または全く侵食性ではなかっ た(図16、写真の下半分、中央及び右側の表)。 これらの実験は、TβRII-dnがCT26細胞のFE変換を生じ、二つのアッセイ系で それらの侵食的増殖を完全に抑制することを示す。それ故、動物中のこれらの細 胞の挙動を調べることが大いに重要であった。それ故、CT26対照細胞並びに型1 及び2の6種のCT26-TβRII-dnクローンをヌードマウスに注射した。対照動物は それらの過度に大きい腫瘍のために2−3週後に殺されたが、マウスの腫瘍増殖 は型1のCT26-TβRII-dnクローンで約3−4週遅延され、一方、型2のCT26-Tβ RII-dnクローンによるマウスでは、それが6−10週遅延され、または24週(実験 の終了)にわたって完全に抑制された(3匹の動物、データは図に示されていな い)。これらの結果は、TβRII-dnがまた幾つかの場合にCT26原発性腫瘍の増殖 を著しく遅延し得ることを示す。 次に、原発性腫瘍から肺に定着し、転移を形成するCT26-TβRII-dn細胞の能力 を調べた。図17(下半分にある線図)に示されるように、マウスにCT26対照細胞 (3匹のマウス)または7種の異なるCT26-TβRII-dnクローン(型1及び型2、 クローン当たり3匹のマウス)を注射し、触診できる腫瘍の増殖を待った。或る 腫瘍耐性(4cm3)に達した後、原発性腫瘍を切除し、その結果、腫瘍細胞が注射 部位に残らなかった。こうして処理したマウスをそれらの死亡後に肺転移につい て調べた。 CT26腫瘍を有する全ての対照動物(3匹のマウス)が肺転移の2−4週後に死 亡した(図16、写真の上半分にある線図、点線)。対照的に、肺転移の形成が18 週後でさえもCT26-TβRII-dnクローンで注射された動物のいずれにも検出し得な かった(図16、写真の上半分にある線図、黒色の線)。原発性腫瘍の局所再発が あった5匹の動物は評価に含まれなかった。 これらのデータは、TβRII-dnがCT26原発性腫瘍の転移を充分に抑制すること を明らかに示す。最後に、TβRII-dnにより抑制される転移の段階をチェックし た。原発性腫瘍から血管へのCT26細胞の移動のみが抑制されることが可能である 。しかしながら、循環から、そして肺中の細胞の沈降がまた影響され得る。後者 が重要である。何となれば、例えば、腫瘍が手術により除去された時に、多くの 腫瘍細胞がヒトの循環系に入るかもしれないからである。これを試験するために 、異なる量のCT26対照細胞及び幾つかの型2のCT26-TβRII-dnクローンをマウス に静脈内注射した(細胞型当たり3匹の動物)。次いで動物を死亡後に肺転移に ついて調べた。予備試験は、動物当たり500にすぎないCT26細胞がこのように肺 転移を形成するのに充分であることを示した。それ故、その量の10倍及び100倍 の両方の細胞型を注射した。図17は、14日後(50,000の細胞)及び28日後(5,000 の細胞)に、CT26対照細胞が全ての動物で肺転移を形成したことを示す。対照的 に、40日後でさえも、CT26-TβRII-dnクローンで注射された全ての動物が依然と して生きており、この段階で殺した個々のマウスで確認されたように、肺転移を 未だ形成していなかった。こうして、TβRII-dnはまた既に循環系中にあるCT26 細胞を肺に沈降することから阻止し得る。 図15は、TβRII-dnがコラーゲンゲル中のCT26細胞の侵食的増殖を抑制すると ともに、またニワトリ心臓侵食試験で同細胞の侵食性を抑制することを示す。 最初の試験(コラーゲンゲルアッセイ、写真の上半分)について、CT26対照細 胞(CT26、左側パネル)並びに型I(中央パネル)及び型2(右側パネル)のCT 26-TβRII-dnクローンを5%の血清を含むコラーゲンゲルに接種し、10日後にコ ラーゲンゲルの顕微鏡写真を作成した。ゲルを二つの異なる倍率(低倍率、上 部パネル;高倍率、下部パネル)で写真撮影した。CT26対照細胞はスピンドル形 繊維芽細胞様細胞からなる大きな網状構造形状の構造及びストリング状構造に成 長したが(左側パネル)、CT26-TβRII-dn型1細胞は細胞の緻密な塊を形成し、 非常にわずかな細胞がゲルに成長した(中央パネル)。型2のCT26-TβRII-dnク ローンはコラーゲンゲル中に成長することができないで小さい緻密な細胞グルー プのみを形成する(右側パネル)。 ニワトリ心臓侵食アッセイ(写真の上半分)について、試験細胞に蛍光活性色 素を入れ、ニワトリ心臓断片と接触させ、7日後に組織試験した(方法及び実施 例4を参照のこと)。対照細胞はニワトリ心臓断片に有効に移動した(左側の表 、試験細胞とHと標識された点線により示されたニワトリ心臓断片の間の境界の 面の細胞及びストリングの明色のグループ)。対照的に、型1クローンはニワト リ心臓組織にごくわずかに移動し(中央パネル、Hとマークされた領域中の二三 の明色の細胞)、一方、型2のCT26-TβRII-dn細胞は全く侵食的に増殖しなかっ た(全ての明色の細胞がニワトリ心臓断片H(点線)の外部に留まった)。 図16は、CT26細胞中のTβRII-dnの発現が原発性腫瘍から肺転移を形成するそ れらの能力を阻止することを示す。 実験の進行を写真の下半分に図示する。7種の異なるCT26-TβRII-dnクローン (型1及び2、CT26+TβRII-dn)並びにCT26対照細胞を試験に使用した。同系Ba lb-Cマウス(細胞型当たり3匹)に動物当たり1x106の細胞を注射し、腫瘍の増 殖を待った。原発性腫瘍が4cm3のサイズに達した後、それらを手術により除去し 、それらが死亡した後、マウスを肺転移について調べた。結果を線図(写真の上 半分)に示す。3匹の対照動物は肺転移の4週以内に死亡したが(点線)、CT26 -TβRII-dn細胞で処理された全ての動物が18ケ月後に依然として生きており、肺 転移がなかった(黒色の線)。14週後に終了する線の場合(上の線図)、原発性 腫瘍は、18週が試験終了時まで経過しない程に遅く臨界サイズに達した。 図18は、CT26細胞中のTβRII-dnが血流から肺に沈降し、そこで転移を形成す るそれらの能力をまた抑制することを示す。 その図の上部中の線図は実験の進行を示す。同系Balb-Cマウス(細胞型及び細 胞量当たり3匹)にCT26対照細胞及び数種のCT26-TβRII-dnクローンを静脈内注 射した(尾静脈に)。図は、5,000または50,000の対照細胞(CT26)で処理された 全ての3匹のマウスが28日または14日後に肺転移のために死亡し(+)、一方、CT2 6-TβRII-dnクローンで注射された全ての動物が40日後に肺転移なしに依然とし て生きていた(-)。 実施例12 活性化TGF βレセプターがPAI-1-プロモーター-リポーター遺伝子構築物の一 時的転写を活性化し、そのプロセスがTβRII-dnにより抑制される。 高処理量のスクリーニング(HTS)で細胞アッセイによりTGF β-(レセプター)イ ンヒビターを発見することに鑑みて、試験細胞を以下のようにして調製する。PA I-1-プロモーター-リポーター遺伝子構築物を好適な細胞(Ep-RasまたはCT26)中 で安定に発現させる。同時に、スクリーニングに選ばれたヒトTGF βレセプター 鎖(例えば、TβRII)をこの細胞中で発現させる。対照的に、PAI-1転写をまた誘 導する無関係のレセプター、例えば、FGFレセプターをPAI-1-リポーター構築物 の他に対照細胞中で発現させる。 この種の試験細胞系の開発のための前提条件は、TGF β誘導PAI-I発現(イン ヒビターにより抑制される)が一時的トランスフェクション試験で相当する細胞 の腫瘍形成または転移と相関関係があることである。これをチェックするために 、CT26対照細胞及びマウスで既に試験した5種のCT26-TβRII-dnクローン(実施 例11、図16を参照のこと)を3TP-lux PAI-1-リポーター遺伝子構築物(Wranaら, 1992)でトランスフェクトし、TGF βで刺激し、または未処理で残し、PAI-I発現 について試験した(ルシフェラーゼ活性の測定)。陽性対照及び陰性対照として 、構成的活性TGF βR鎖(TβRI(T204D);Wranaら,1994)並びにTβRII-dnDNAをPAI -1-リポーター構築物と一緒に未処理のCT26細胞に同時トランスフェクトした。 図18は、TGF β処理しない未処理のCT26細胞(CT26対照)が陰性対照(TβRII-d nのコトランスフェクシヨョン)の活性に相当する基礎活性を有することを示す 。同対照細胞中で、TGF βはリポーター遺伝子転写を構成的活性TGF βレセプタ ーのコトランスフェクションにより陽性対照中で到達されるレベルに活性化する 。 異なるTβRII-dn発現CT26クローンはこの試験で異なって挙動した(図18、CT2 6-TβRII-dn1-5)。2種のクローン(CT26-TβRII-dn3及び4)では、細胞が注射前 または非常に遅く増殖している腫瘍からの分離後に試験されたにもかかわらず、 TGF β刺激後に得られたルシフェラーゼ活性は陰性対照で見られたレベル以下で あった。3種の残りのクローン(誘発された腫瘍が速く増殖した)では、ルシフ ェラーゼ活性は動物への注射前にのみ陰性対照のレベルであり、腫瘍からの分離 後に中間のレベルまたは陽性対照中の活性に匹敵する活性が見られた(図18)。 後者のクローンでは、TβRII-dnの発現がダウンレギュレーションされる細胞の 選択があったものと仮定される。この仮定は、プロマイシン中の腫瘍からの細胞 の更新された選択が再度多くの細胞を死滅し、生存しているプロマイシン耐性細 胞がTGF β刺激後に増大されたPAI-1転写を最早示さないという事実により支持 された。これらの実験の結果は、動物中の腫瘍形成/転移がPAI-1-プロモーター -リポーター遺伝子構築物のTGF β活性化能と明らかに相関関係があることを示 す。 図18は、CT26細胞中のTβRII-dnの発現がPAI-1-プロモーター-リポーター遺伝 子構築物のTGF β誘導転写を抑制することを示す。 CT26対照細胞(CT26対照)及びCT26-TβRII-dn細胞の5種のクローン(CT26-T βR II-dn 1-5)をPAI-1-プロモーター-リポーター遺伝子構築物(3TP-lux)でトラ ンスフエクトし、細胞をTGF βで刺激し(+TGF β)、または刺激しないで残し(- TGF β)、ルシフェラーゼ活性を細胞抽出物中で測定した。陽性対照として、構 成的活性TGF βレセプター鎖1(TβRI(T204D);Wranaら,1994)のcDNA並びに TβRII-dn-cDNAを3TP-luxと一緒に細胞に同時トランスフェクトした。この測定 を動物への注射前(腫瘍誘発前)並びに分離及び3日間の腫瘍細胞の培養後(分 離された腫瘍細胞)に細胞中で行った(脚注、右上のボックスを参照のこと)。 バーは同じタンパク質含量を有する抽出物からの標準化ルシフェラーゼ活性を示 す(方法を参照のこと)。 関連文献
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Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 上皮の侵食性腫瘍疾患の治療用の、上皮起源の腫瘍細胞に対するTGF βの活 性を抑制する物質を活性化合物として含む医薬組成物であって、これらの疾患 が上皮の非侵食状態から侵食状態への細胞の可逆転移を特徴とする医薬組成物 。 2. 癌遺伝子Rasの発現もしくは機能、及び/または正常なRasの過剰発現及び /または細胞中のレセプターチロシンキナーゼによる正常なRasの活性化を抑 制する物質を付加的な活性化合物として含む請求の範囲第1項に記載の医薬組 成物。 3. Rasの活性化を直接抑制する物質をRasインヒビターとして含む請求の範囲 第2項に記載の医薬組成物。 4. Rasの活性化を間接的に抑制する物質をRasインヒビターとして含む請求の 範囲第1項または第2項に記載の医薬組成物。 5. 物質がレセプターチロシンキナーゼのインヒビターであることを特徴とす る請求の範囲第4項に記載の医薬組成物。 6. 物質がEGFレセプターのインヒビターであることを特徴とする請求の範囲第 5項に記載の医薬組成物。 7. 既に樹立された侵食性腫瘍細胞を非侵食性上皮様状態に逆に変化することに より腫瘍疾患を治療するための請求の範囲第1項〜第6項のいずれか1項に記 載の医薬組成物。 8. 胸部腫瘍を治療するための請求の範囲第1項〜第7項のいずれか1項に記載 の医薬組成物。 9. 腎臓細胞癌腫を治療するための請求の範囲第1項〜第7項のいずれか1項に 記載の医薬組成物。 10.上皮の非侵食状態から侵食状態への細胞の可逆転移を特徴とする上皮の侵食 性腫瘍疾患の治療用の薬理活性物質のスクリーニング方法であって、 ヒト細胞中でTGF βにより開始されるシグナル伝達経路に対する試験物質の 活性を測定することを特徴とするスクリーニング方法。 11.a)TGF βにより調節される細胞タンパク質の調節配列の制御下にあるリポー ター遺伝子を含むプラスミド、 b)機能性ヒトTGF βレセプターをコードする配列を含むプラスミド で形質転換される哺乳類細胞を増殖し、TGF βレセプターリガンドを活性化し 、試験物質を細胞に適用し、試験物質により生じたリポーター遺伝子発現のモ ジュレーションを測定することを特徴とする請求の範囲第10項に記載の方法。 12.細胞をTGF βレセプター型IIで形質転換することを特徴とする請求の範囲第 11項に記載の方法。 13.リポーター遺伝子がプラスミノーゲンアクチベーターインヒビターの調節配 列の制御下にあることを特徴とする請求の範囲第11項または第12項に記載の方 法。 14.ヒト細胞中でTGF βにより開始されるシグナル伝達経路に対する試験物質の 活性が試験物質によるTGF βレセプター型IIまたはその細胞質ドメインの自然 リン酸化のモジユレーションを測定することにより測定されることを特徴とす る請求の範囲第10項に記載の方法。 15.ヒト細胞中でTGF βにより開始されるシグナル伝達経路に対する試験物質の 活性がTGF βレセプター型IまたはそのGSドメインをリン酸化するTGF βレセ プター型IIの能力の、試験物質によるモジュレーションを測定することにより 測定されることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の方法。
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