【発明の詳細な説明】
生物学的に活性なFVフラグメント生産用発現分泌ベクター 発明の背景
Fvフラグメントは目下知られている最小の完全抗原結合部位である。このフラ
グメントは免疫グロブリン可変H(VH)および可変L(VL)鎖の可変領域より成るに
過ぎない。小さいサイズのFvフラグメントは抗体およびタンパク質工学の分野に
おいてイメージ、治療学、および構造研究におけるその可能性のある用途のため
に大いに関心を抱かれている。Fvを生産する最初の試験は全抗体をタンパク質分
解により切断して行われた。しかし、この方法は質および収量を制御する困難性
により妨げられた〔インバー(Inbar)等の「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」69、2659[
1972]〕。後に組換えDNA法が細菌細胞で天然Fvを発現させる試験に用いられた。
若干のグループは個々にVHおよびVL、鎖を発現させインビトロで鎖を再結合させ
る試験を行った。細胞内のこれらタンパク質の生産は結果として不溶性タンパク
質を生じ、これらを変性し復元して機能し得る抗体を生成させる必要があった。
変性剤にさらすことが天然抗体構造に何をするのかは明らかでなく従ってこれら
系は決して理想的でない。さらに最近、可溶性天然Fv〔スケラ(Skerra)およびプ
ラクサン(Pluckthun)の「Science」240、1038[1988]〕および他の関連するフ
ラグメント〔ベター(Better)等の「Science」240、1041[1988]〕の生産が報告さ
れている。しかし、これらの系で報告されている天然Fvの収量は種々の実際の用
途(例えば、3-D NMR分析のための同位体標識)にとって極めて低い。
生物学的に活性なFvフラグメントおよび単鎖Fv分子を生産するために発現分泌
系を開発することは有益である。
発明の開示
本発明は生物学的に活性なFvフラグメントおよび単鎖Fv分子を生産するための
発現分泌系に関する。
特に、本発明はT7プロモーターを暗号化するDNA配列、免疫グロブリンH鎖(VH
)の可変領域を暗号化するDNA配列、免疫グロブリンL鎖(VL)の可変領域を暗号
化するDNA配列、および1種以上のシグナルペプチド配列を暗号化する1種以上
のDNA配列を有する生物学的に活性なFvフラグメントを生産することができる発
現分泌ベクターに関する。
また本発明はT7プロモーターを暗号化するDNA配列、免疫グロブリンH鎖の可
変領域を暗号化するDNA配列、免疫グロブリンL鎖の可変領域を暗号化するDNA配
列、および1種以上のシグナルペプチド配列を暗号化する1種以上のDNA配列を
有する生物学的に活性なFvフラグメントを生産することができる発現分泌ベクタ
ーを含む宿主細胞に関する。
そのうえ本発明はT7プロモーターを暗号化するDNA配列、免疫グロブリンH鎖
の可変領域を暗号化するDNA配列、免疫グロブリンL鎖の可変領域を暗号化するD
NA配列、および1種以上のシグナルペプチド配列を暗号化する1種以上のDNA配
列を有する生物学的に活性なFvフラグメントを発現分泌し得る条件下に生物学的
に活性なFvフラグメントを生産することができる発現分泌ベクターを含む宿主細
胞を培養することから成る生物学的に活性なFvフラグメントを生産する方法に関
する。
さらに本発明はT7プロモーターを暗号化するDNA配列、単鎖
Fv分子を暗号化するDNA配列、およびシグナルペプチド配列を暗号化するDNA配列
を有する生物学的に活性な単鎖Fv(sFv)分子を生産することができる発現分泌ベ
クターに関する。
図面の簡単な説明
図1は抗ジゴキシンモノクローナル抗体26-10の(A)VH[SEQ.ID NO.1]および(B)
VL[SEQ.ID NO.2]部分のヌクレオチドと導き出されたアミノ酸配列を示す。制
限部位を示す。
図2はシグナルペプチド配列(A)ompA[SEQ.ID NO.3]および(B)phoA[SEQ.ID NO.
4]を暗号化する修飾したDNA配列およびその導き出されたアミノ酸配列を示す。
矢印は所望の制限酵素認識部位を生成させるためにこれら特定の位置でヌクレオ
チドを変化させたことを示す。
図3はプラスミドFvpD生成において生産される種々のプラスミド:(A)プラス
ミドVH pDの作製;(B)プラスミドVL pDの作製;(C)プラスミドVL pD-Xbalの作製
;(D)プラスミドFvpDの作製を示す。
図4は26-10のFvフラグメントの生成を示すドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリ
アクリルアミドゲルである。レーン1〜4:ウワバインカラムから溶出した画分
番号3〜6。Fvのピークは画分3である。レーン5:タンパク質サイズ標準16.9
、14.4、8.2kd。レーン6:予め染色したタンパク質サイズ標準110、84、47、33
、24、16kd。レーン7:カラム精製前のFvペリプラズム画分。
図5はプラスミドpT7PhoA26-10sFvの作製を示す。
図6は26-10の単鎖Fv分子を暗号化するDNA配列およびそのアミノ酸配列を示す
。制限部位および若干の5’および3’非
コーディング配列を示す。
発明の詳細な説明
本発明はT7プロモーターを暗号化するDNA配列、免疫グロブリンH鎖の可変領
域を暗号化するDNA配列、免疫グロブリンL鎖の可変領域を暗号化するDNA配列、
および1種以上のシグナルペプチド配列を暗号化する1種以上のDNA配列を有す
る生物学的に活性なFvフラグメントを生産することができる発現分泌ベクターに
関する。また本発明はT7プロモーターを暗号化するDNA配列、単鎖Fv分子を暗号
化するDNA配列、およびシグナルペプチド配列を暗号化するDNA配列を有する生物
学的に活性な単鎖Fv(sFv)分子を生産することができる発現分泌ベクターに関す
る。生物学的に活性なFvフラグメントまたはsFv分子は真正のN末端を有するの
が好ましい(すなわち、成熟FvフラグメントまたはsFv分子はシグナルペプチド
配列のカルボキシ末端と免疫グロブリンのHまたはL鎖の可変領域のアミノ末端
間でペプチド結合を切断することにより生じる)。さらにシグナルペプチド配列
がompAおよびphoAである発現分泌ベクターが好ましい。そのうえシグナルペプチ
ド配列を暗号化するDNA配列を修飾してシグナルペプチド配列のアミノ酸配列を
変えることなく他の制限酵素部位を生じた発現分泌ベクターが好ましい。また免
疫グロブリンH鎖の可変領域を暗号化するDNA配列に機能的に結合させたT7プロ
モーターを暗号化するDNA配列、免疫グロブリンL鎖の可変領域を暗号化するDNA
配列、および1種以上のシグナルペプチド配列を暗号化する1種以上のDNA配列
を有する生物学的に活性なFvフラグメントを生産することができる発現分泌ベク
ターが好ましい。
このような関係において用いた、「機能的に結合させる」とはT7プロモーター
が免疫グロブリンHまたはL鎖の可変領域を暗号化するDNA配列の転写を指示す
ることができることを意味する。
ここで用いた、「Fvフラグメント」とは抗原と結合し得るが免疫グロブリンH
またはL鎖の不変部のエフェクター機能を欠いた免疫グロブリンHまたはL鎮の
非共有結合可変領域(non-covalently associated variable domains)を意味する
。
ここで用いた、「単鎖Fv分子」とは抗原と結合し得るが免疫グロブリンHまた
はL鎖の不変部のエフェクター機能を欠いた免疫グロブリンHまたはL鎖の可変
領域がアミノ酸リンカーを用いて連結される分子を意味する。
ここで用いた、「生物学的に活性なFvフラグメント」または「生物学的に活性
なsFv分子」とはFvフラグメントまたはsFv分子が抗原から誘導された完全な長さ
の抗体と同様の抗原の1種以上を特異的に結合することができることを意味する
。
本発明で役に立つ発現分泌ベクターは多くの場合「プラスミド」の形態であり
、ベクターの形態で、染色体に結合しない環状二本鎖DNAである。しかし、本発
明には同等に機能を果たし次いでこれに関して業界で知られるようになるかかる
他の形態の発現分泌ベクターが含まれる。
本発明の生物学的に活性なFvフラグメントを最低限生産することができる発現
分泌ベクターはT7プロモーターを暗号化するDNA配列、免疫グロブリンH鎮の可
変領域を暗号化するDNA配列、免疫グロブリンL鎖の可変領域を暗号化するDNA配
列、1種以上のシグナルペプチド配列を暗号化する1種以上のDNA配列(例えば
、ompA、phoA、pelB)および残りのベクター部分が
含まれる。本発明の生物学的に活性なsFv分子を最低限生産することができる発
現分泌ベクターはT7プロモーターを暗号化するDNA配列、単鎖Fv分子を暗号化す
るDNA配列、およびシグナルペプチド配列を暗号化するDNA配列および残りのベク
ター部分が含まれる。ompAおよびphoAは大腸菌(E.coli)のompAおよびphoA座に一
致するかまたはそれらから誘導されたDNA配列により暗号化されたシグナルペプ
チド配列である。ompA座は大腸菌外膜タンパク質の構造遺伝子であり、phoA座は
大腸菌アルカリホスファターゼの構造遺伝子である。もちろん、残りのベクター
部分は複製の開始点、例えば複製のcolEI開始点を含む必要がある。また発現分
泌ベクターはこの業界において既知の他のDNA配列、例えば、プラスミドに安定
性を提供する安定性先導配列(stability leader sequence)、転写終結配列、調
節されるべき(例えば、栄養素または増殖培地中の他の誘導物質の存在あるいは
欠損により)構造遺伝子の発現分泌を可能にする調節配列、形質転換宿主細胞で
表現型選択を提供することができるマーカー配列(例えば、アンピシリンおよび
カナマイシン耐性のための)、および制限エンドヌクレアーゼによる切断のため
の部位を提供する配列を含む場合がある。用いられる実際の発現分泌ベクターの
特徴は使用されるべき宿主細胞と和合性である必要がある。例えば細菌系におけ
るクローニングの際、発現分泌ベクターはその系で機能することができるDNA配
列(例えば、T7プロモーター)を含む必要がある。本発明により意図されたよう
な発現分泌ベクターは複製および免疫グロブリンHおよびL鎖の可変領域または
単鎖Fv分子を暗号化するDNA配列の複製ならびに発現を指示することができる。
FvpDもしくはpT7PhoA26-10sFvと称され、次に記載した発現
分泌ベクター、またはFvpDもしくはpT7PhoA26-10sFvの同一の特性(identifying
characteristic)を有する発現分泌ベクターが特に好ましい。
所望の暗号および制御配列を含む適当な発現分泌ベクターをこの業界で既知の
標準組換えDNA技術を用いて作製することができ、これらの多くはマニアティス
,ティー(Maniatis,T)等の「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、米国
ニューヨーク州コールドスプリングハーバー所在のコールドスプリングハーバー
研究所(1982)に記載されている。
もちろん、本発明の発現分泌ベクターの必須成分は免疫グロブリンのVHおよび
VL鎖または単鎖Fv分子の遣伝暗号を指定するDNA配列である。かかるDNA配列は種
々の方法で作成することができる。1つの方法として、免疫グロブリンのVHおよ
びVL鎖または単鎖Fv分子の遺伝暗号を指定する本発明のDNA配列を化学的に合成
することができる。例えば、免疫グロブリンのVHおよびVL鎖または単鎖Fv分子の
遺伝暗号を指定するDNA配列を連続した100塩基オリゴヌクレオチドとして合成す
ることができその際オリゴヌクレオチドは連続して連結され(適当な末端制限部
位を介して)ヌクレオチドの正確な直線配列を形成する(VMおよびVL鎖または単
鎖Fv分子のヌクレオチド配列が知られている条件で)。
第2の方法として、免疫グロブリンのVHおよびVL鎖または単鎖Fv分子の遺伝暗
号を指定するDNA配列をポリメラーゼ鎖成長反応(PCR)を用いて作成することがで
きる。簡単には、標的(鋳型)DNA配列の反対の鎖にハイブリッダイゼーション
する少なくとも15塩基の長さの一組の合成DNAオリゴヌクレオチド(PCRプライマ
ー)を用いて標的配列上のDNAの介在領域を酵
素により増幅する。適当な鋳型DNA配列を、例えば、興味のあるハイブリドーマ
からmRNAを単離しこのmRNAを逆転写することにより作成することができる。適当
なPCRプライマーは化学的に合成することができ、興味あるハイブリドーマから
のmRNAをシークエンシング(sequencing)することにより、抗体分子自体をシーク
エンシングし縮重した(degenerate)プライマーを作成することにより、または一
般的なプライマーを用いること〔オルランジ(Orlandi)等の「Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA」86、3833(1989);サストリー(Sastry)等の「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」8
6、5728(1989)を参照〕により設計することができる。適当な5’プライマーは
、例えば、免疫グロブリンのVHおよびVL、鎖の成熟末端に基づくものを含み、適
当な3’プライマーは、例えば、H鎖およびL鎖のJ領域に基づくものを含む。
鋳型の熱変性の繰り返しサイクル、プライマーのアニーリングおよびDNAポリメ
ラーゼを用いたアニール化プライマーの3’末端の伸長はPCRプライマーの5’
末端により決定されるセグメントを増幅させる。米国特許第4,683,195号および
第4,683,202号を参照。
さらに本発明はT7プロモーターを暗号化するDNA配列、免疫グロブリンH鎖の
可変領域を暗号化するDNA配列、免疫グロブリンL鎖の可変領域を暗号化するDNA
配列、および1種以上のシグナルペプチド配列を暗号化する1種以上のDNA配列
を有する生物学的に活性なFvフラグメントを生産することができる発現分泌ベク
ターを含む宿主細胞に関する。また本発明はT7プロモーターを暗号化するDNA配
列、単鎖Fv分子を暗号化するDNA配列およびシグナルペプチド配列を暗号化するD
NA配列を有する生物学的に活性な単鎖Fv分子を生産することができる発現分
泌ベクターを含む宿主細胞に関する。生物学的に活性なFvフラグメントまたは単
鎖Fv分子は真正のN末端を有するのが好ましい(すなわち、成熟Fvフラグメント
または単鎖Fv分子はシグナルペプチド配列のカルボキシ末端と免疫グロブリンの
HまたはL鎖の可変領域のアミノ末端間でペプチド結合を切断することにより生
じる)。さらにシグナルペプチド配列がompAおよびphoAである発現分泌ベクター
が好ましい。そのうえシグナルペプチド配列を暗号化するDNA配列が修飾されて
シグナルペプチド配列のアミノ酸配列を変えることなく他の制限酵素部位を生じ
た発現分泌ベクターが好ましい。また免疫グロブリンH鎖の可変領域を暗号化す
るDNA配列、免疫グロブリンL鎖の可変領域を暗号化するDNA配列、および1種以
上のシグナルペプチド配列を暗号化する1種以上のDNA配列に機能的に結合させ
たT7プロモーターを暗号化するDNA配列を有する生物学的に活性なFvフラグメン
トを生産することができる発現分泌ベクターが好ましい。
適当な宿主細胞には、E.coli MC1061細胞のような大腸菌細胞が含まれる。他
の適当なE.coli株はGM-1、SG-935および1023が含まれる。T7 RNAポリメラーゼ遺
伝子の組み込みコピーを含む、例えばE.coli株JM109/DE3およびBL21/DE3/pLysS
が特に好ましい。
本発明の発現分泌ベクターをこの業界で既知の種々の方法により宿主細胞に導
入することができる。例えば、発現分泌ベクターを用いた宿主細胞の形質転換は
Maniatis等の前記に記載されているように実施することができる。しかし、また
発現分泌ベクターを宿主細胞に導入する他の方法では、例えば、エレクトロポレ
ーション、リポソーム融合(liposomal fusion)、また
はウイルスもしくはファージ感染を用いることができる。
活性のあるFvフラグメントまたは単鎖Fv分子を生産しT7プロモーターを暗号化
するDNA配列、免疫グロブリンH鎖の可変領域を暗号化するDNA配列、免疫グロブ
リンL鎖の可変領域を暗号化するDNA配列、および1種以上のシグナルペプチド
配列を暗号化する1種以上のDNA配列を有する発現分泌ベクターを含み、あるい
はT7プロモーターを暗号化するDNA配列、単鎖Fv分子を暗号化するDNA配列、およ
びシグナルペプチド配列を暗号化するDNA配列を有する発現分泌ベクターを含む
宿主細胞は4種の一般的方法:(a)DNA-DNAハイブリダイゼーション;(b)マーカ
ー遺伝子機能の存在または欠損;(c)宿主細胞における免疫グロブリンのVHもし
くはVL鎖または単鎖Fv分子mRNAの写し(transcript)により測定されるような転写
のレベルの評価;および(d)遺伝子産物の生物学的検出の1種以上により確認す
ることができる。
第1の方法において、免疫グロブリンのVHもしくはVL鎖または単鎖Fv分子の遺
伝暗号を指定するDNA配列の存在はこのDNA配列に相補的なプローブを用いるDNA-
DNAまたはRNA-DNAハイブリダイゼーションにより検出され得る。
第2の方法において、組換え発現分泌ベクター宿主系を確認し特定のマーカー
遺伝子機能(例えば、抗生物質アンピシリンおよびカナマイシン耐性)の存在ま
たは欠損に基づき選択することができる。マーカー遺伝子を同様または異なるプ
ロモーターの調節下に免疫グロブリンのVHもしくはVL鎖または単鎖Fv分子の遺伝
暗号を指定するDNA配列が用いられ免疫グロブリンのVHおよびVL鎖または単鎖Fv
分子の暗号配列を調節するのと同様なプラスミド中に配置することができる。マ
ーカー遺
伝子の発現を用いて免疫グロブリンのVHもしくはVL鎖または単鎖Fv分子の遺伝暗
号を指定するDNA配列を有するプラスミドが含まれる細胞を選択することができ
る。
第3の方法において、免疫グロブリンのVHもしくはVL鎖または単鎖Fv分子mRNA
の写しの生産をハイブリダイゼーションアッセイにより評価することができる。
例えば、すべてのRNAを単離しRNA配列に相補的なプローブを用いるノザンブロッ
ティングまたはヌクレアーゼ保護アッセイ(nuclease protectionassay)により
分析することができる。
第4の方法において、免疫グロブリンのVHもしくはVL鎖または単鎖Fv分子の発
現は生物学的に、例えば、ウェスターンブロッティングもしくは抗原に対する結
合により、またはタンパク質産物のシークエンシングにより評価され得る。
発現分泌ベクターが適当な宿主細胞に導入されると、宿主細胞は多量のFvフラ
グメントまたは単鎖Fv分子を発現し得る条件下に培養され得る。かかるFvフラグ
メントまたは単鎖Fv分子は誘導される完全な長さの抗体分子と同様の方法で用い
られ得る。例えば、これらをインビボおよびインビトロの免疫学的な診断法に用
いることができ、治療上単独であるいは薬物および毒素に結合させて用いること
ができる。またこれらは、例えば、核磁気共鳴(NMR)およびX線結晶学を利用し
た構造研究に用いることができる。
所望の場合、この方法で生産したFvフラグメントまたは単鎖Fv分子を単離し種
々のタンパク質精製方法を用いて若干の程度精製することができる。例えば、イ
オン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーおよびイムノアフィ
ニティクロマトグラフィーのようなクロマトグラフィー法を用いること
ができる。
本発明の発現分泌ベクターのDNA配列、ブラスミドまたはDNA分子をこの業界で
既知の種々の方法により決定することができる。例えば、サンガー(Sanger)等の
「Proc.Nat1.Acad.Sci.USA」74、5463〜5467(1977)に記載されているようなジデ
オキシ鎖成長停止法、または「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」74、560〜564(1977)に
記載されているようなマクサムギルバート法を用いることができる。
ここに記載した原理体系を用いてマウス以外の種の動物から誘導したFvフラグ
メントまたは単鎖Fv分子、および広範な種類の異種抗原、例えば、ジゴキシンお
よびフィブリンに対するFvフラグメントまたは単鎖Fv分子を調製することができ
ることを認識する必要がある。またここに記載した原理体系を修飾したFvフラグ
メントまたは単鎖Fv分子の生産に用いることができる。この場合、免疫グロブリ
ンH鎖の可変領域、もしくは免疫グロブリンL鎖の可変領域、または両者、ある
いは単鎖Fv分子の遺伝暗号を指定するDNA配列を修飾し(すなわち、突然変異さ
せて)突然変異したコドンにより暗号化されたアミノ酸配列が変化する種々の突
然変異体を作成することができる。これら修飾したDNA配列を、例えば、免疫グ
ロブリンH鎖の可変領域、もしくは免疫グロブリンL鎖の可変領域、または両者
、あるいは単鎖Fv分子の遺伝暗号を指定するDNA配列を突然変異させることによ
り作成することができ、その結果この突然変異がこの業界で既知の種々の方法を
用いる暗号化ポリペプチド中の1種以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入または付
加を起こす。例えば、テイラー,ジェイ.ダブリュー.(Taylor,J.W.)等の「Nucl
.Acids.Res.」13、8749〜8764(1985)およびクンケル,ジェー.
エー.(Kunkel,J.A.)の「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」82、482〜492(1985)に記載さ
れた部位特異的突然変異誘発の方法を用いることができる。さらに、部位特異的
突然変異誘発のためのキットは商業上の提供者から入手することができる。例え
ば、部位特異的突然変異誘発を実施するためのキットはアマシャム社(Amersham
Corp.)〔米国イリノイ州アーリントンハイツ(Arlington Hights)所在〕から入
手することができる。意図した改変には、例えば、マウスから誘導したFvフラグ
メントの人間化(humanization)が含まれる。ジョーンズ(Jones)等の「Nature」3
21、522(1986)を参照。すべてのかかる変更は本発明の範囲内に含まれる。
前記および本明細書の他の所に用いた、「修飾した」とは、ヌクレオチドまた
はポリペプチド配列に関する場合に、天然に見出される野性型配列とは異なるヌ
クレオチドまたはポリペプチド配列を意味する。
さらに次の実施例は本発明の実例となる。これら実施例は本発明の範囲を制限
するものではなく、本発明の理解を一層深める。
実施例1 抗体フラグメントを暗号化する遺伝子のクローニング
抗ジゴキシンモノクローナル抗体26-10はウシ血清アルブミンに結合させたジ
ゴキシンに対し生成した高親和性(5×109M-1)抗体である〔マドゲット−ハンタ
ー(Mudgett-Hunter)等の「Mol.Immunol.」22、477(1985)〕。26-10抗体のVHおよ
びVL部分を暗号化する遺伝子のcDNAクローンを2610ハイブリドーマから単離した
mRNAの逆転写で生じたcDNAをPCR増幅させ
て作成しジデオキシ鎖成長停止法により配列決定した(図1-A[SEQ.ID N0.1]お
よび1-B[SEQ.ID N0.2])。DNA配列をゲノム2610配列〔ニアー,アール.アイ
.(Near,R.I.)等の「Mol.Immunol.」27、901〜909(1990)を参照〕と比較し26-1
0を暗号化する真正の遺伝子がクローニングされたことを証明した。
実施例2 発現分泌ベクターの基礎を形成するT7プロモーターの作製
発現分泌ベクターの基礎を形成するT7プロモーターをテイバー,エス.(Tabor,
S.)等の「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」82、1074(1985)に記載されたpT7-7プラスミ
ドの修飾を介して作成した。pT7-7のポリリンカー領域中の制限部位は人工オペ
ロンと同様のプラスミド上で通常の制限部位が26-10VHおよびVLならびにこれら
各々のシグナル配列(図2[SEQ.ID NO.3およびSE0.ID NO.4])を含むDNAフラグ
メントをクローニングするために有効であるような同様の方法で変化させた。シ
グナル配列、ompA〔モバ(Movva)等の「J.Biol.Chem.」255、27(1980)〕およびph
oA〔イノウエ(Inoue)等の「J.Bacteriol.」149、434(1982)〕をシグナルペプチ
ドのアミノ酸配列を変化させることなく新規な制限部位を生ずるように操作した
。従って、正しい処理は両鎖の真正のN末端配列を生じることおよびタンパク質
に対してペリプラズム間隙に分泌されることが期待される。鋳型としてE.coli染
色体DNAを用いるPCRによりこれら修飾したシグナル配列を作成した。ompAに対し
て、次のオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして用いた:
修飾シグナル配列を図2[SEQ.ID N0.3およびSEQ.ID NO.4]に示す。両場合に
、さらにすべてのPCR方法に対して、PCR法をGeneAmpキット〔米国コネティカッ
ト州ノーウォーク所在のパーキン−エルマー シータス(Perkin-Elmer Cetus)〕
を用いて製造業者が推薦するように実施した。
発現分泌ベクターの作製における最初の段階はpT7-7ポリリンカー領域の前述
した修飾であった。
26-10VH領域(図3Aを参照)を含むプラスミドを作成するために、pT7-7プラス
ミドをBamH1およびSal1で切断し、次いでクレノウで満たしpT7-7ポリリンカー中
のBamH1、Sal1およびXba1部位を効果的に破壊した。次いで得られたベクターをX
ba1で切断しクレノウで満たしリボソーム結合部位の上流のXba1部位を破壊した
。次いでこのプラスミドをSma1で切断しT4 DNAリガーゼを用いてXba1リンカーと
連結してpT7-11ベクターを作成した。pT7-11プラスミドをNdelおよびEcoR1で切
断しT4 DNAリガーゼを用いてompAシグナル配列を含むNdel/EcoR1フラグメントと
連結して、pT7-11 OmpAベクターを作成した。次いでpT7-
11 OmpAプラスミドをNru1およびEcoR1で切断し鋳型として2610ハイブリドーマか
ら単離したmRNAおよび次のオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCR法により
作成した2610のVH 鎖を暗号化するフラグメントとフレーム中でT4 DNAリガーゼ
を用いて連結した: 増幅のために用いたオリゴヌクレオチドは増幅VHフラグメントの、5’および
3’末端それぞれに、Nru1およびEcoR1部位を生じた。得られたプラスミドをVH
pDとした。
26-10VL領域(図3Bを参照)を含むプラスミドを作成するために、phoAシグナ
ル配列をPCR増幅し未修飾pT7-7中にNdel/EcoR1フラグメントとしてクローニング
した。26-10VL DNAを以下に示したオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCR法
により増幅し発現分泌ベクターをpT7phoA中にクローニングするのに適当なフラ
グメントを生成した:
増幅した26-10VLフラグメントをSty1で切断しsty1およびSma1
で切断したpT7phoAプラスミドとT4 DNAリガーゼを用いて連結し、結果的にsty1/
平滑末端フラグメントとして26-10VLの連結を生じた。得られたプラスミドをVL
pDとした。
次いでVL pDプラスミドをBamH1およびSal1で切断し、クレノウで満たしT4 DNA
リガーゼで連結してプラスミドVL pD-XbaI(図3C)を作成した。
次いでVH pDおよびVL、pD-Xba1プラスミドを用いFvpD発現分泌ベクターを作製
した。VL pD-Xba1プラスミドをXba1およびHind111で切断してシグナル配列は含
むがT7プロモーター配列を欠いたL鎖を放出した。次いでこのフラグメントをT4
DNAリガーゼを用いてXba1/Hind111切断VH pDと連結してFvpDを作成した(図3D
)。
最終的構成体(FvpD)ならびに中間構成体をジデオキシDNAシークエンシングに
より配列決定してこれらの作製/増幅の間に発生したアミノ酸配列に影響を与え
る変化のないことを確実にした。
実施例3 プラスミドFvpDからの26-10Fvの発現
FvpDからの26-10Fvを発現させるために、Gp1-2と称する第2の和合性プラスミ
ド(Tabor等の前記)、これは温度感受性ラムダcIリプレッサーの制御下のT7 RN
Aポリメラーゼ遺伝子およびカナマイシン耐性遺伝子を含む、をManiatis等の前
記に記載されたようにMC1061 E.coli細胞中にFvpDを用いて共形質転換し(co-tra
nsform)アンピシリンおよびカナマイシン耐性形質転換細胞について選択した。M
C1061細胞はクロンテク(Clontech)(米国カリフォルニア州パロアルト所在)ま
たはアメリカンタ
イプカルチャーコレクション(米国メリーランド州ロックビル所在)から入手す
ることができる。形質転換細胞を20μg/mlのカナマイシンおよび50μg/mlのアン
ピシリンを含む2×YT培地に接種し、26-10Fvの誘導前に25℃でOD600=2.0まで増
殖させた。Gp1-2プラスミドを含む細胞を30分間42℃にシフトさせた際これは温
度感受性リプレッサータンパク質を不活化してT7 RNAポリメラーゼ遺伝子を発現
させる。その後T7 RNAポリメラーゼタンパク質は26-10VHおよびVL遺伝子の上流
に存在するT7プロモーターを利用してこれら遺伝子の転写を増進させることがで
きる。次いで細胞を30分間25℃にシフトさせてVHおよびVLポリペプチドの適当な
プロセッシングおよびアッセンブリーを促進した。図4(レーン7)に示すよう
に、Gp1-2およびFvpDプラスミドを含む温度誘導細胞は12kdおよび15kdの明確な
分子量を示して移動した2種のポリペプチドを発現した。12kdポリペプチドのサ
イズは26-10VL DNA配列により暗号化されたポリペプチドから予想された26-10VL
鎖(12.2kd)のサイズと本質的に一致した。15kdポリペプチドは26-10VH DNA配列
により暗号化されたポリペプチドの予想されたサイズ(13.2kd)よりゆっくり移動
したことが明白であった。またこれら2種のポリペプチドはペリプラズム画分に
著しく豊富であることが見出されたので適当に配置されていると思われた。26-1
0Fvはペリプラズム画分をウワバインセファロースアフィニティカラム(ウワバ
インはジゴキシン同族体である)のアフィニティクロマトグラフィーにより精製
された。ペリプラズム画分をスケラ(Skerra)等の「Science」240、1038(1988)に
記載されたように浸透圧衝撃により収集した。すべての段階を氷上または4℃で
実施した。誘導後、1L培養物からの細胞を4,000×gで10分間遠心分
離することにより収集した。細胞ペレットを10mlのTES緩衝液(0.2M トリス塩酸
pH8.0、0.5mM EDTA、0.5Mショ糖)に懸濁した。次いで懸濁細胞に15mlの希釈TES
(TESを水で1:4に希釈)の添加により浸透圧衝撃を与えてペリプラズム間隙に存
在するタンパク質を放出させた。氷上で30分間インキュベーションした後、細胞
を連続した遠心分離5,000×gで10分間および38,000gで15分間により除去した。
次いでペリプラズム画分を含む上清をアフィニティクロマトグラフィーにかけた
。20mMのウワバインと結合した物質を溶出した際、画分3および4(図4、レー
ン1および2)は選択的に精製された正確な(correct)サイズの2種のポリペプ
チドを現した。次の証拠はこれが26-10Fvであることを示した:(1)これが拮抗的
RIAアッセイにおいて125I-26-10のすべての抗体と競合した;(2)これが26-10の
すべての抗体に対してのKA=5×109M-1に比較してKAが1.3×109M-1である125I−
ジゴキシンに結合した;(3)VHおよびVL可変領域のN末端シークエンシングが正
しいプロセッシングおよび所望のN末端配列を示した。精製Fvの収量は1mg/Lで
あることが示された。さらに宿主としてプロテアーゼ欠損株を用いることにより
、発酵条件の至適化により、他のシグナル配列を用いることにより、ならびに酵
素および哺乳類細胞において免疫グロブリン鎖アッセンブリーのために通常用い
られるシャペローン(chaperones)(例えば、H鎖結合タンパク質[BIP])を共発
現させること(co-expressing)により収量を改善することが可能である。
この方法により作成された26-10FvはnM範囲のタンパク質濃度で4℃に貯蔵さ
れた場合、少なくとも2ヵ月間安定であり、おそらく一層長く安定である。実施例4 FvpD からの26-10Fvの他の発現
また第2の方法をFvpDからの26-10Fvの発現に用いた。この方法では、FvpDプ
ラスミドでE.coli株JM109/DE3〔プロメガ(Promega);またスタディア,エフ.ダ
ブリュー.(Studier,F.W.)等の「Methods in Enzymology」185、60〜88{ディー
.ブイ.ゴーデル(D.V.Goeddel)編}アカデミックプレス(1990)を参照〕に形質
転換を起こさせた。JM109/DE3はlacプロモーターの制御下にT7 RNAポリメラーゼ
の組み込みコピーを有する。FvpDプラスミドを含むJM109/DE3細胞を改変した2
×YT培地〔2%バクトトリプトン(bacto tryptone)、1%酵母抽出エキス、0.5
%塩化ナトリウム、0.2%グリセロール、50mMリン酸カリウムpH7.2〕およびグル
コース(0.4%)、アンピシリン(50mg/L)中37℃で細胞のA600nmが1.0〜2.4間にな
るまで増殖させた。次いで細胞を24℃に冷却した。次いで、イソプロピルβ-D−
チオガラクトシド(IPTG)を0.05mMの終濃度まで添加してT7 RNAポリメラーゼ遺伝
子の転写を誘導した。IPTGの添加後、細胞を24℃で16時聞インキュベーションし
、さらにペリプラズムタンパク質について選抜した。
浸透圧衝撃上清(FvpDプラスミドを含むIPTG処理JM109/DE3細胞からのペリプ
ラズム画分)が加熱処理したMC1061/Gp1-2細胞で見出されたタンパク質と共に泳
動する2種のタンパク質を含むことを見出した。これら2種のポリペプチドは浸
透圧衝撃上清に著しく豊富であった。26-10Fvを浸透圧衝撃上清からウワバイン
セファロースカラムを用いて精製した場合(実施例3参照)、26-10VHおよびVL
鎖(15および12kD)に対して予想された適当なサイズの2種のポリペプチドを単
離した。JM109/
DE3株からアフィニティで精製した26-10Fvの収量は14mg/Lであった。JM109/DE3
株において、最大レベルの26-10Fv蓄積は誘導後約16時間で観察され、一方MC106
1/Gp1-2(実施例3)において、最大レベルの26-10Fv蓄積は誘導開始後1時間で
生じた。SDS-PAGEにより分離したタンパク質画分のクーマシー染色はJM109/DE3
およびMC1061/Gp1-2(実施例3)において、ほとんどの26-10Fvタンパク質がペ
リプラズム中に見出されたことを示した。JM109/DE3が生産したタンパク質のN
末端タンパク質配列分析はVH(約15kD)およびVL(12kD)鎖が細菌の輸出系(exp
ort system)により正しく処理されたことを明らかにした。JM109/DE3およびMC10
61/Gp1-2(実施例3)株において、タンパク質誘導後に細胞を25℃に冷却する必
要があった。27℃を超えた温度でのインキュベーションはウワバインセファロー
スカラムに結合しない約17kDおよび12kDのタンパク質の蓄積を起こした。
実施例5 生物学的に活性な単鎖Fvの発現
また本発明の発現系を生物学的に活性な単鎖Fv(sFv)分子を発現するために使
用した。
26-10抗体のsFv形態は突然変異オリゴヌクレオチドを用いたPCR増幅により作
製されて新規な制限部位が形成された(さらに2種の鎖間にペプチドリンカーを
暗号化する配列が挿入された)。簡単に、図5に要約しているように、可変領域
のL(V L)およびH(VH)鎖を暗号化する遺伝子を実施例2に記載した条件下に鋳
型として26-10抗体のVHおよびVL部分(実施例1を参照)を暗号化する遺伝子のc
DNAクローンならびに次のオリ
ゴヌクレオチドプライマーを用いて別々にPCR増幅させた:これらオリゴヌクレオチドは相補的配列を有しており、さらにVLおよびVH鎖間に
設計されるペプチドリンカーを暗号化する配列を含み、その結果VLおよびVH配列
は、第2回のPCR増幅後に、次の配列:
-Gly-Gly-Ser-Gly-Ser-Gly-Gly-Ser-Gly-Ser-Gly-Gly-Ser-Gly-Ser
[SEQ.ID NO.17]
を有する15個のアミノ酸リンカーを含む単鎖Fv分子を暗号化する完全な2本鎖DN
A分子を後で形成することができた。
このDNA構成体をPCR増幅26-10sFvと称した。PCR増幅26
-10 FvおよびpT7PhoAと称するプラスミド(実施例2を参照)を共に制限酵素Bst
E2およびSal1で切断して連結しpT7PhoA26-10sFvと称するプラスミドを作成した
。このプラスミドは次の領域を有する単鎖タンパク質を暗号化する(N末端から
C末端に至る:PhoAリーダー−26-10可変L鎖−リンカー−26-10可変H鎖)(こ
の構成体のDNAおよび暗号化アミノ酸配列に対する図6[SEQ.ID NO.18]を参照)
。
pT7PhoA26-10sFvプラスミドは塩化カルシウム法(Maniatis等の前記を参照)
によりE.coli株BL21/DE3/pLysS〔Studier,F.W.等の「Methods in Enzymology」1
85、60〜88、D.V.Goeddel編アカデミックプレス(1990)を参照〕に形質転換を起
こさせた。pT7PhoA26-10sFvプラスミドを含む細胞は最少培地(7.6mMNH4SO4、11
.0mM酢酸ナトリウム、12.7mMコハク酸、60.3mM K2HPO4、68μM CaCl2.2H2O、35
μM ZnSO4.7H2O、59μM Mnso4.H2O、741μMチアミン、2032μMナイアシン、12
μMビオチン、40μM FeCl3.6H2O、3μmM Na2MoO4.2H2O、3μM CUSO4.5H2O、3μM
H3BO3、3μMビタミンB-12、4mM MgSO4、22mMグルコース、50μg/mlアンピシリ
ン、20μg/mlクロラムフェニコール)中37℃で一晩増殖させ、次いで37℃で2×
YT培地(実施例4に示すような)中で1:20に希釈して細胞のA600nmが0.5〜1.0の
間を示すまで増殖させた。次いで細胞を24℃に冷却した。次いでIPTGを0.2mMの
終濃度まで添加してT7 RNAポリメラーゼ遺伝子の転写を誘導した。IPTGの添加後
、細胞を24℃で16時間インキュベーションし、さらにペリプラズムタンパク質お
よび培養上清中のタンパク質について選抜した。これら条件下で、1Lの細胞培養
物当たりアフィニティで精製した26-10sFvタンパク質を3〜10mgの収量で得た。
アフィニティで精製した物質はSDS-
PAGEにより示されるように、約29kDの分子量を有していた。26-10sFvタンパク質
が生物学的に活性であるという事実をこれがウワバインセファロースアフィニテ
ィカラム(実施例3を参照)に結合しこれを用いて精製され得ることにより示し
た。
ここで言及したすべての出版物および特許文献は特別にまた個別に参考として
ここに組み入れる。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12R 1:19)
(C12P 21/02
C12R 1:19)
(71)出願人 ウォン スイ−ラム
カナダ国 アルバータ カルガリー エヌ
ダブリュー ランチ グレン ドライブ
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(72)発明者 ング シャイ チュン
アメリカ合衆国 ニュージャージ州
08648 ローレンスヴィル アンソニー
レイン 6
(72)発明者 アンソニー ジェイムズ ジー
アメリカ合衆国 ペンシルベニア州
18940 ニュートン チェサピーケ ドラ
イブ 102
(72)発明者 ウォン スイ−ラム
カナダ国 アルバータ カルガリー エヌ
ダブリュー ランチ グレン ドライブ
38