JP2004521616A - 競合的選択による親和性成熟 - Google Patents
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Abstract
本発明は、参照結合対メンバーと比較して、同族の結合パートナーに対する増強された結合親和性を有する結合対メンバーを選択する方法を提供する。特に、本発明は、参照抗体と比較して抗原に対する増強された親和性を有する抗体を選択する方法を提供する。それにより、この「親和性成熟」プロセスは、優れた結合能を有する抗体を提供する。参照結合対メンバーよりも同族の結合パートナーに対して、より高い親和性を有する試験結合対メンバーを同定する競合的方法が提供される。
Description
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、本明細書において参考として援用される、米国仮出願番号60/245,039(2000年10月30日出願)の優先権の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、参照結合対メンバーと比較して、同族結合パートナーに対する増強された結合親和性を有する結合対メンバーを選択する方法を提供する。特に、本発明は、参照抗体と比較して抗原に対する増強された親和性を有する抗体を選択する方法を提供する。それにより、この「親和性成熟(affinity maturation)」プロセスは、優れた結合能を有する結合対メンバー(例えば、抗体)を提供する。
【0003】
(発明の背景)
レポーター分子の相補フラグメントが各々、結合対メンバーに連結されたレポーター系が、開発されている。結合対が相互作用する(すなわち、互いに結合する)場合、相補フラグメントは近位にもたらされ、その結果、レポーター活性が再構築される(例えば、WO00/71702を参照のこと)。レポーター活性(または阻害)が、レポーター系のメンバーに連結された結合対メンバーと、その同族結合パートナー(これは、レポーターのサブユニットまたはインヒビターに連結され得る)との間の結合相互作用に依存する、他のレポーター系もまた操作され得る。このような系は、多くの適用(例えば、サンプル中の分析物の同定、治療剤および造影剤の組織局在的な活性化、アゴニスト/アンタゴニストの高スループットスクリーニングにおけるセンサーとして、対を成すタンパク質−タンパク質相互作用の高スループットマッピング、目的のポリペプチドに特異的に結合する抗体フラグメントまたは他の結合タンパク質の迅速な選択、抗細胞抗体および抗組織抗体に対する迅速な抗原同定、抗体対する迅速なエピトープ同定、ならびにタンパク質−タンパク質相互作用のインヒビターの高スループット選択のための細胞ベースのスクリーニング)に有用である。これらの適用のいくつか、例えば、目的のポリペプチドに特異的に結合する抗体または他の結合タンパク質の同定において、高親和性の結合因子を選択することが所望される。しかし、この基本系は、相互作用因子の親和性に基づいてその識別する能力が限定されている。
【0004】
抗原特異的抗体は、種々の方法(ハイブリドーマ技術(例えば、KohlerおよびMilstein、Nature 256:495−497、1975)または、ファージもしくは酵母ディスプレイライブラリーを使用するインビトロでの選択(例えば、Hoogenboomら、Immunotechnology 4:1−20、1998;BoderおよびWittrup、Methods Enzymol 328:430−44、2000)を含む)によって生成され得る。しかし、これらの方法に由来する抗体は、しばしば、最適を下回る結合親和性を有する。同種抗体間のインビトロでの親和性識別は、抗体および抗原の両方の濃度が、標的の平衡解離定数より低く維持される条件下で、問題の抗体の変異原性ライブラリーを、可溶性同族抗原で平衡化することによって、達成され得る。競合は、豊富な低親和性改変体が、よりまれな高親和性改変体を排除することを防ぐために、回避されなければならない。操作上、2つのさらなる要件が存在する:(1)抗体ライブラリーは、そのコード配列に抗体を結合させる、バクテリオファージまたは細胞のようなビヒクルによってディスプレイされなければならない、そして(2)抗原は、非結合抗体からの、抗原結合抗体の定量的分離を可能にするタグと結合されなければならない。このような手順の主な欠点は、ほとんどの適用について、ナノモル濃度範囲のKdの親和性が所望され、そして、これらの抗体が、ナノモル濃度下の作業濃度で容易に失われるに十分まれであることである。
【0005】
このような困難は、より低い解離速度定数(Kd、オフ速度(off−rate))の選択を生じ、抗体親和性を改善している。より低いオフ速度の選択は、通常、標的のオフ速度に反比例する時間後にインタクトなままである抗原−抗体複合体が、解離した抗体から別々に回収され得る飽和条件下で実行される。しかし、これらの手順において、抗体のオフ速度が、1×10−4/秒の範囲(これは、約2時間の半減期に相当する)であることがしばしば所望される。多くの抗体および特に抗原は、周囲温度または生理学的温度で、このような時間規模での、インビトロでの有意な不可逆的変性を受ける。また、オン速度(on−rate)選択の非存在下のオフ速度選択(より低いKa)は、安定な複合体に再折り畳みされる改変体に向かう選択に偏向する傾向があり、従って、増大したオン速度を好まない傾向がある。
【0006】
ほとんどの抗体適用について、インビトロでの親和性成熟についての首尾よいプロトコールは、意図された抗原についての特異性を維持するかまたは増大しながら、オン速度およびオフ速度の両方における改善を生成するプロトコールである。本発明は、このような系を提供する。本発明は、参照結合対メンバーよりも高い親和性を有する試験結合対メンバー(すなわち、親和性成熟または改善した結合対メンバー)を同定するための、方法および系を提供する。1つの実施形態において、本発明は、選択基準として結合親和性を使用する、フラグメント相補系を含む方法を提供する。より高い親和性の改変体の、細胞ベースの競合的選択と同じ原理を、任意のレポーター系(これは、細胞に選択可能な表現型(例えば、色または限定条件下で増殖する能力)を付与し、そしてその活性化または阻害は、2つの結合対メンバーの相互作用に依存するようにされ得る)を用いて使用し得る。
【0007】
(発明の要旨)
一般に、この方法は、(a)試験結合対メンバーのライブラリー、(b)同族結合パートナー、(c)以下の特性:i)同族結合パートナーに対する結合について、参照結合対メンバーと競合する特性、およびii)参照結合対メンバーの親和性と少なくとも等しい、同族結合パートナーに対する親和性を有する特性、を有する競合因子、をコードする核酸配列を含む発現ベクターを、細菌細胞集団に導入する工程を包含する。このベクターはまた、レポーター系をコードし、このレポーター系は、1つ、2つまたは3つの分子からなり、そのうち少なくとも1つは、(a)試験結合対メンバー、(b)同族結合パートナー、または(c)競合因子に連結される。次いで、試験結合対メンバーが、参照結合対メンバーの親和性よりも高い親和性で、同族結合パートナーに結合する場合に、レポーターが活性になって、細胞に選択可能な表現型を付与する条件下で、細菌細胞を培養する。このようなより高い親和性の試験結合対メンバーは、参照結合対メンバーによって付与される表現型に関して、細胞の表現型によって同定される。
【0008】
1つの実施形態において、この方法は、細菌細胞集団に、マーカーのフラグメントAに連結された試験結合対メンバーのライブラリーをコードする核酸配列を含む発現ベクターを導入する工程、この細胞集団に、マーカーのフラグメントBに連結された同族結合パートナーをコードする核酸配列を含む発現ベクターを導入する工程(ここで、このマーカーは、フラグメントAとフラグメントBとが近位である場合に活性である);フラグメントAに連結された試験結合対メンバーのライブラリーおよびフラグメントBに連結された同族結合パートナーが、以下の特性:i)同族結合パートナーに対する結合について、参照結合対メンバーと競合する性質、およびii)参照結合対メンバーの親和性と少なくとも等しい、同族結合パートナーに対する親和性を有する特性(ここで、試験結合対メンバーは、フラグメントAに連結された同族結合パートナーに競合因子が結合する親和性より高い親和性を有する)、を有する競合因子の存在下で発現される条件下で、この細胞集団を培養する工程;ならびにこのマーカーが活性である細胞を選択する工程、を包含する。試験結合対メンバーの結合ドメインは、代表的には、参照結合対メンバーの結合ドメインと少なくとも90%同一である。多くの実施形態において、上記選択する工程は、マーカーが参照標準活性よりも活性である細胞を選択することを包含する。
【0009】
競合因子は、しばしば、参照結合対メンバーであるが、同族結合パートナーに同様に(すなわち、匹敵する親和性で)結合するアナログでもあり得る。しばしば、この参照結合対メンバーは、抗体、特に単鎖抗体である。このような実施形態において、フラグメントAに連結された試験結合対メンバーは、代表的に、単鎖抗体である。
【0010】
この参照結合対メンバーはまた、抗体以外のペプチドまたは結合ドメインであり得る。例えば、参照結合対メンバーは、レセプターのペプチドアゴニストまたはペプチドアンタゴニストであり得る。
【0011】
他の実施形態において、フラグメントBに連結された同族結合パートナーは、限定された濃度で発現され、競合因子は、この同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdと等価な濃度を上回る量で発現され、そして細胞集団において発現された、フラグメントAに連結された試験結合対メンバーの濃度は、フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度と実質的に同じである。しばしば、フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度は、競合因子の濃度の10分の1未満であり、そしてこの競合因子は、この同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdと等価な濃度を約10倍上回る量である。
【0012】
いくつかの実施形態において、この競合因子は、細胞集団に導入される競合因子をコードする核酸配列を含む発現ベクターから発現される。しばしば、この競合因子およびマーカーのフラグメントBに連結された同族結合パートナーは、1つの発現ベクターにコードされ、そして単一のプロモーター(例えば、trp−lacプロモーター)からジシストロン転写物として発現され得る。
【0013】
本発明の方法の実施において、細菌細胞集団は、しばしばグラム陰性細菌であり、そしてこのマーカーは、単一ペプチドを含む。
【0014】
別の局面において、本発明は、細菌細胞を提供し、この細菌細胞は、マーカーのフラグメントAに連結された試験結合対メンバーのライブラリーのメンバーをコードする核酸配列を含む発現ベクター;マーカーのフラグメントBに連結された同族結合パートナーをコードする核酸配列を含む発現ベクター(ここで、このマーカーは、フラグメントAとフラグメントBとが近位である場合に活性である);および同族結合パートナーに対する結合について参照結合対メンバーと競合し、そしてこの参照結合対メンバーの親和性と少なくとも等しい、同族結合パートナーについての親和性を有する競合因子、を含む。しばしば、この競合因子は、参照結合対メンバーである。
【0015】
細菌細胞のいくつかの実施形態において、この参照結合対メンバーは、抗体、特に単鎖抗体である。フラグメントAに連結された試験結合対メンバーもまた、単鎖抗体であり得る。
【0016】
さらに、フラグメントBに連結された同族結合対メンバーは、限定された濃度でこの細菌細胞において発現され得、競合因子は、同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdを上回る量で発現され得、そして細胞集団において発現されたフラグメントAに連結された試験結合対メンバーの濃度は、フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度と実質的に同じであり得る。しばしば、フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度は、競合因子の濃度の10分の1未満である。この競合因子はまた、この同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdを約10倍上回り得る。
【0017】
細菌細胞のいくつかの実施形態において、この競合因子は、この競合因子をコードする核酸配列を含む発現ベクターから発現される。しばしば、この競合因子およびマーカーのフラグメントBに連結された同族結合パートナーは、1つの発現ベクターにコードされ、そしてこの競合因子およびフラグメントBに連結された同族結合パートナーは、単一のプロモーター(例えば、trp−lacプロモーター)からジシストロン転写物として発現される。
【0018】
さらに、この細菌細胞は、グラム陰性細菌であり得、そしてこのマーカーは、単一ペプチドを含み得る。
【0019】
本発明は、細胞に選択可能な表現型(例えば、色、特定の抗生物質の存在下で増殖する能力、または増殖のために特定の栄養素前駆体を利用する能力)を付与する、任意のレポーター系を用いて使用され得る。これらの系において、レポーターシグナル生成は、異種の結合対パートナーの相互作用に依存してなされる。例えば、同族結合対メンバーに対する競合因子の結合が、レポーターの不活化を生じる様式で、1以上のサブユニットが、結合対メンバーおよび/または競合因子に連結される、マルチマーレポーターが使用され得る。試験結合対メンバーを、同族結合対メンバーに対する結合について競合し、それによってレポーターを活性化する能力によって同定する。
【0020】
親和性成熟のための細胞ベースの系は、インビトロの系(例えば、このような適用のためのバクテリオファージディスプレイ)を超える有意な利点を有する。インビトロでの系において、ファージ上にディスプレイされた、試験結合対メンバーの集団は、例えば、限定された量の固定同族結合パートナーに対する結合について、溶液中で競合し得る。同族結合パートナーに結合するこれらの試験結合対メンバーは、結合しない試験結合対メンバーからの、容易な物理的分離によって、回収され得る。しかし、親和性単独による競合は、インビトロでは不可能である。なぜなら、集団中の圧倒的に豊富な低親和性改変体が、必然的に限定された同族結合パートナーを飽和し、それによって、この集団においてまれな高親和性改変体が選択されるのを必然的に妨げるからである。細胞ベースの系のみが、親和性単独による真の競合を可能にし得る。なぜなら、これらは、試験結合対メンバーを互いに競合させず、競合因子とのみ競合させるからである。各試験結合対メンバーを発現する細胞は、選択について、互いに競合せず、他の細胞とも競合しない。これらは単に、その表現型(生存率または色などのいずれか)の強度に基づいて選択される。各試験結合対メンバーは、細胞内に同じ豊富さで存在するので、その表現型強度(すなわち、レポーター活性)は、その豊富さに依存し得ず、その親和性のみに依存する。従って、細胞ベースの系において、試験結合対メンバーは、その豊富さに基づいて選択され得ないが、親和性にのみ基づいて選択される。
【0021】
(定義)
「結合対メンバー」とは、結合パートナーとの特異的な結合相互作用に関与する分子をいい、これは、「第2の結合対メンバー」または「同属結合パートナー」ともいわれる。結合対としては、抗体/抗原、レポーター/リガンド、ビオチン/アビジンおよびロイシンジッパーなどのような相互作用タンパク質ドメインが挙げられる。本明細書中で使用される結合対メンバーは、結合ドメイン(すなわち、結合パートナーに特異的に結合するタンパク質の部分配列)であり得る。
【0022】
用語「相互作用」または「相互作用する」は結合対メンバーの相互作用を参照する場合、互いに特異的に結合することをいう。
【0023】
「参照結合対メンバー」は、実行者がより高い親和性結合アナログ(すなわち、「改善された」結合対メンバー)を獲得することを望む、公知の結合対メンバーである。
【0024】
「親和性の成熟した」または「改善された」結合対メンバーは、最初の参照結合対メンバーの同じ部位に結合する結合対メンバーであるが、その部位に対して高い親和性を有する。
【0025】
結合親和性は一般的に、平衡結合定数または解離定数(それぞれ、KaまたはKd)と表わされ、これは言い換えると、解離速度定数と結合速度定数(それぞれ、kaまたはkd)の相互比である。したがって、等価な親和性は速度定数の比が同じのままであるかぎり、異なる速度定数に一致し得る。
【0026】
「ドメイン」とは、タンパク質またはタンパク質複合体のユニットをいい、ポリペプチド配列、完全なポリペプチド配列またはそのユニットが既定された機能を有する複数のポリペプチド配列を含む。機能は広く特定され、触媒活性である結合パートナーに結合し得るか、タンパク質の構造に関して安定な効果を有し得ることが理解される。「ドメイン」はまた、1つ以上のポリペプチド配列を含むタンパク質またはタンパク質複合体の構造ユニットをいい、ここで、このユニットは、ネガティブタンパク質のより大きな構造中で認識可能な、規定された構造を有する。このドメイン構造は、これが自立性を形成する能力を有し得、そしてネイティブタンパク質の内容物の外側で安定なままである点で、半自立性であることが理解される。
【0027】
「相補フラグメント」とは、それ自身のレポーター活性を欠くレポーター分子フラグメントであるが、レポーター活性を回復するために、別の相補フラグメントに機能的と再会合し得る。しばしば、本発明の方法および系は、酵素レポーター分子を使用する。従って、相補フラグメント対は、酵素活性を再構成するために機能的に再会合し得る。
【0028】
レポーター系の「メンバー」または「構成要素」は、レポーター分子、レポーター分子のフラグメントまたは部分配列、レポーター分子のサブユニットまたは他のレポーター分子のアクチベーターもしくはインヒビターをいう。
【0029】
「連結(結合)(link)」または「結合(join)」とは、ペプチドを機能的に結合する(connect)任意の方法であり、以下が挙げられるが制限されない:組換え融合、共有結合(binding)、ジスルフィド結合、イオン結合、水素結合および静電結合。本発明の系において、結合対メンバーは、代表的に組換えDNA技術を用いてそのN末端もしくはC末端または対両方で、レポーター分子またはレポーター分子のアクチベーターもしくはインヒビターに融合される。このレポーター分子は完全なポリペプチドあるいはそのフラグメントまたは部分配列であり得る。例えば、結合対メンバーは、レポーター分子の相補フラグメントに結合され得る。結合対メンバーは、これに結合されるフラグメントに直接隣接し得るか、または間接的(例えば、リンカー配列を介して)に結合し得るかのいずれかである。
【0030】
「融合」とは、共有結合による結合をいう。
【0031】
「リンカー」または「スペーサー」とは、2つの分子(例えば、結合対メンバーおよびレポーター分子の相補フラグメント(例えば、酵素)に結合し、そして好ましい構造(例えば、その結果、レポーター分子のフラグメントが、結合対メンバーからの最小の立体障害で相補フラグメントと相互作用し得、そして結合対メンバーが、レポーターフラグメントから最小の立体傷害で結合パートナーに結合し得る)において2つの分子を配置するのに役立つ、2つの分子を結合する分子または分子の群をいう。
【0032】
タンパク質の一部分を言及して使用される場合、「異種」とは、タンパク質が自然状態で互いに同じ関係を見い出せない2つ以上のドメインを含むことを示す。このようなタンパク質(例えば、融合タンパク質または結合タンパク質)は、新しい機能タンパク質を作るために配列される関連のないタンパク質に由来する2つ以上のドメインを含む。
【0033】
「抗体」とは、抗原に特異的に結合しそして認識する免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメント由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドをいう。認識された免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμの定常領域遺伝子ならびに種々の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεに分類され、これらは順に免疫グロブリンクラス(それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE)と定義される。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造的ユニットは4量体含む。各4量体はポリペプチド鎖の2つの同一の対(各対は1つの「軽鎖」(約25kDa)および1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する)から構成される。各鎖のN末端は、約100〜110またはそれ以上のアミノ酸(抗原認識を主に担う)の可変領域を規定する。用語可変領域軽鎖(VL)および可変領域重鎖(VH)は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖の可変領域をいう。
【0034】
抗体は、例えば、インタクトな免疫グロブリンとしてか、または種々のペプチダーゼを用いる消化によって生成される十分に特徴付けられた多くのフラグメントとして存在する。したがって、例えばペプシンは、F(ab)’2を生成するヒンジ領域において、ジスルフィド結合(linkage)未満に抗体を消化する。これは、それ自身がジスルフィド結合によってVH−CH1に結合される軽鎖であるFabの2量体である。このF(ab)’2は、ヒンジ領域においてジスルフィド結合を破壊する穏やかな条件下で減少し得る。それによって、F(ab)’2 2量体はFab’単量体に転換する。Fab’単量体は本質的にヒンジ領域の一部分を有するFabである(Fundamental Immunology(Paul ed.,3d ed.1993を参照のこと)。種々の抗体フラグメントはインタクトな抗体の消化という点で規定され、当業者はこのようなフラグメントが、しばしば組換えDNA方法論を用いてデノボで合成され得ることを理解する。従って、用語抗体とは、本明細書中で使用される場合、抗体全体の改変によって生成される抗体フラグメント、組換えDNA方法論を用いてデノボで合成される抗体フラグメント(例えば、単鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを用いて同定される抗体フラグメント(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990)を参照のこと)のいずれかを含む。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「単鎖抗体」とは、ポリペプチド結合におけるVHドメインおよびVLドメインを含むポリペプチドをいい、一般的に、スペーサーペプチド(例えば、[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]x)を介して結合し、そしてこれは、アミノ末端および/またはカルボキシ末端でさらなるアミノ酸配列を含み得る。例えば、単鎖抗体はコードポリヌクレオチドに結合するためのデザーセグメントを含み得る。例として、scFvは単鎖抗体である。単鎖抗体は一般的に免疫グロブリンスーパーファミリーの遺伝子によって実質的にコードされる少なくとも10の連続したアミノ酸の1つ以上のポリペプチドセグメントからなるタンパク質であり(例えば、The Immunoglobulin Gene Superfamily,A.F.WilliamsおよびA.N.Barclay,Immunoglobulin Genes,T.Honjo,F.W.Alt,ならびにT.H.Rabbitts,eds.,(1989)Academic Press:San Diego,Calif.,pp.361−387を参照のこと、これらは参考として本明細書中に援用される)、最も頻繁には、げっ歯類、非ヒト霊長類、トリ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギまたはヒト重鎖もしくは軽鎖の遺伝子配列によってコードされる。機能的単鎖抗体は一般的に、特異的な標的分子、代表的にはレセプターまたは抗原(エピトープ)に結合する特性を保持するように、免疫グロブリンスーパーファミリー遺伝子産物の十分な部分を含む。単鎖抗体の生成のための技術(米国特許第4,946,778号)は、本発明の使用のための抗体を生成するために適用され得る。
【0036】
用語「選択系の成分を発現する(こと)」とは、選択系のメンバーをコードする発現ベクターによって含まれる核酸配列が発現される条件下で、細胞集団を培養することをいう。
【0037】
用語「作動可能に結合される」とは、核酸に対して言及される場合、機能的関係においてポリヌクレオチドエレメントの結合をいう。核酸が別の核酸配列と機能的関係に配置される場合、核酸は「作動可能に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響する場合、コード配列に作動可能に連結される。作動可能に連結されるとは、連結しているDNA配列が代表的に連続していることを意味し、ここで2つのタンパク質コード領域を連続して、かつリーディングフレームで結合することが必要である。
【0038】
(発明の詳細な説明)
(序文)
本発明は、改善された結合対メンバー(すなわち、参照結合対メンバーの親和性よりも、同族の結合対メンバーに対してより高い親和性を有する結合対メンバー)を選択するための検出系を提供する。本明細書中に開示される方法および系において、4つの構成要素を含む系が、改善された結合対メンバーを検出するために使用される。この系は代表的に以下を含む:宿主細胞(通常には細菌)、試験結合対メンバーのライブラリー(これらの各々はレポーター系のメンバー(例えば、レポーター分子の相補フラグメントの1つ)に融合される);レポーター系の別のメンバーに融合した同族の結合パートナー(例えば、レポーター分子の他の相補フラグメント);および結合の「競合因子」(これは親和性についての選択のストリンジェンシーを高めるために融合タンパク質として同じ細胞において発現される)。競合因子は、結合パートナーに対する結合について結合対メンバーと競合する任意の分子であり得るが、好ましくはタンパク質であり、そして代表的には、抗体または改善することが望ましい他の結合タンパク質である。
【0039】
競合因子は、細胞において、同族の結合パートナー融合分子のほとんどに結合するようなレベルで発現される。それによって、同じかまたはより低い親和性である試験結合対メンバーの結合を防ぐ。競合因子よりもより高い親和性の試験結合対メンバーが存在する場合、レポーター分子の活性は再構成される。例えば、レポーターメンバーとして相補フラグメントを使用する系において、親和性のより高い試験結合対メンバーは、同族の結合パートナーに結合し、それによって、レポーター活性を生じる相補フラグメントを提供する。
【0040】
(結合対)
多くの結合対が本発明に有用である。しばしば、結合対は、別個の結合部位で互いに特異的に相互作用するポリペプチドである。結合対の1つのメンバーは、レポーター分子の相補フラグメントの1つを有する融合タンパク質に組み込まれ得る。結合対の他のメンバーは、他のフラグメントを有する融合タンパク質に組み込まれ得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、結合対は代表的に抗体および抗原であるが、特異的結合パートナーを有する他のタンパク質(例えば、相互作用する酵素サブユニット、レポーターおよびそのリガンド、細胞内シグナル伝達および遺伝子調節に相互作用するタンパク質(例えば、転写因子c−fosおよびc−junなど))でもあり得る。
【0042】
タンパク質ではないメンバーを含む結合パートナーもまた使用され得る。例えば、低分子結合因子は、ビオチンのような化学的タグにこれらを結合体化することによって使用され得る。このような結合体は、代表的に、細菌ペリプラズム中に自由に拡散し得、これらを、より高い親和性の試験結合パートナーについてスクリーニングするための同族の結合パートナーとして使用し得る。例えば、試験結合パートナーは、タグに結合するタンパク質(例えば、ビオチンタグに対するアビジンまたはストレプトアビジン)に連結され得る、フラグメントAおよびフラグメントBに結合され得る。試験結合対メンバーが低分子同族結合パートナーに結合し、そして連結されたタグがタグ−結合因子に結合する場合、フラグメントは近接され、そして酵素は活性化される。競合因子の存在において、生じる酵素活性および依存する表現型は、試験結合対メンバーの親和性に比例し、それによって、目的の低分子の高親和性結合因子の選択についての基礎を提供する。
【0043】
(レポーター系)
多くのレポーター系は本発明において使用され得る。一般的な型のレポーター系は、レポーターのフラグメントまたはサブユニットの相補に基づき、ここでレポーター活性は、再構成されたレポーターの相補的なフラグメントまたはサブユニットの相補性から生じる。レポーター活性とは、種々の任意の検出可能な表現型(例えば、スクリーニング可能かまたは選択可能な表現型(例えば、色、抗生物質に対する耐性、蛍光、特定の基質の存在または非存在における増殖など))をいう。レポーター系において使用され得るタンパク質フラグメントの例示は、WO00/71702に提供されている。このようなレポーター系において、フラグメント対は、検出可能なシグナルを有するマーカータンパク質に再会合する。
【0044】
相補フラグメント対レポーター系において、フラグメント対は、代表的に、マーカータンパク質のアミノ末端およびカルボキシ末端のフラグメントから構成される。フラグメントが、このフラグメントが連結されている結合対メンバーの相互作用によって近接される場合、レポーター活性が再構成される。選択またはスクリーニングのために使用され得る、多くの酵素媒介性の表現型変化が存在するように、酵素は、特に有用なマーカータンパク質であり得る。本発明において使用されるレポーター系のための、フラグメント対中に展開され得る酵素レポーターとしては、抗生物質耐性を提供する酵素(特にβ−ラクタマーゼ)が挙げられる。使用され得る他の抗生物質耐性酵素としては、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(例えば、ネオマイシン、ホスホトランスフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼおよびテトラサイクリン耐性タンパク質)が挙げられる。
【0045】
可視の表現型変化(例えば、色の変化または蛍光発光)を直接誘発する他のタンパク質もまた、相補フラグメントレポーター系の生成において使用され得る。このようなタンパク質の例としては、β−ガラクトシダーゼおよび緑色蛍光タンパク質または他の関連した蛍光タンパク質が挙げられる。
【0046】
抗生物質耐性タンパク質β−ラクタマーゼは、レポーター分子としてしばしば使用される。特にβ−ラクタマーゼフラグメント対は、α197/ω198対によって例示される。他のβ−ラクタマーゼもまた、WO/0071702に記載される技術を使用して誘導され得る。
【0047】
細菌細胞上に選択可能な表現型を与える他のレポーター系もまた、細胞ベースの競合的親和性成熟について適用され得る。例えば、酵素的または色素生産的な活性を有する多量体レポータータンパク質は、種々の構成において使用され得、ここでレポーターは、同族結合パートナーに対する競合因子の結合によって不活性化され、そして参照結合対メンバーの親和性よりも、同属結合対メンバーに対してより高い親和性を有する試験結合対メンバーの存在下で再び活性化される。例えば、β−ガラクトシダーゼはホモ4量体酵素であり、これは色素産生性または蛍光産生性の基質の存在下で、細胞において発現される場合、選択可能な色表現型を産生し得る。そのサブユニットに融合された異種ドメインの相互作用によって引き合わされた場合にのみ、活性酵素に会合するβ−ガラクトシダーゼの変異体サブユニットが記載されている(Rossi et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:8405−8410,1997.)。試験結合対メンバーライブラリーおよび同族結合パートナーに融合され、そして競合因子の存在下で同時発現させた場合、このβ−ガラクトシダーゼサブユニットレポーター系は、高親和性試験結合対メンバーを選択するために、β−ラクタマーゼフラグメント相補性系(本明細書中でまた記載されている)と同じ様式において使用され得る。
【0048】
コントロールにおいて観察されるレベルを超えて、活性が増強される場合、レポーターの活性化が生じる。しばしば、活性化は、その検出系において参照結合対メンバーを用いて規定されるネガティブコントロールに存在する参照レベルの活性と比較して決定される。以下にさらに詳細に記載するように、ネガティブコントロール系は、活性の参照レベルより高いレポーターの活性化が、参照結合対メンバーの親和性よりも、同族結合対パートナーに対してより高い結合親和性の結合対メンバーの存在を反映するように設計される。
【0049】
(競合因子)
本発明の系および方法は、親和性選択を行うための選択系における競合因子を含む。多くの実施形態において、競合因子は、参照結合対メンバー(すなわち、実行者が高い親和性結合アナログを獲得することを望む、既知の結合対メンバー)である。本明細書中で使用される場合、アナログは、その結合対メンバーと同じ、同族結合パートナー(例えば、抗原)の部位に結合するが、その結合部位に同一配列を有さない。
【0050】
当業者によって理解されるように、細胞ベースの競合的親和性成熟は、反復プロセスであり、ここで所定のラウンドで選択される最も高い親和性の試験結合対メンバーは、次のラウンドについての参照結合対メンバーになる。一般的に、次のラウンドの競合因子は、参照結合対メンバーと同一である。しかし、参照結合対メンバーは、競合因子として使用されるために改変され得る(例えば、参照結合対メンバーの正確な結合ドメインのみを保持し、そしてさらなる改変を伴うことなくそれを発現させることによるか、または競合因子に所望の特性(例えば、安定性)を与え得る他のドメインへの融合させてそれを発現させることによる)。
【0051】
競合因子は、親和性の成熟が生じる細胞集団に多くの方法において提供される。例えば、競合因子は、別個の発現ベクターにコードされ得るか、または同族結合融合タンパク質とともにジスシストロン(discistronic)の成分として含まれ得る。競合因子はまた、宿主細胞において構成的に存在するか、またはそうでなければ、例えば、誘導可能に発現され得る。
【0052】
(系成分をコードする発現系の生成)
本発明の系において発現されるポリペプチドをコードする核酸は、組換え遺伝子学の分野において日常的な技術を用いて得られ得る。本発明において使用される一般的な方法を開示する基礎的なテキストとしては、SambrookおよびRussell,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL(3rd ed.2001)ならびにCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Ausubel et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.1994−1997,2001version))が挙げられる。
【0053】
しばしば、相補レポーターフラグメントまたは結合対メンバー(または結合対メンバーの結合ドメイン)をコードする核酸配列は、cDNAライブラリーからプローブを用いるハイブリダイゼーションによってクローン化されるか、またはオリゴヌクレオチドプライマーを用いる増幅技術を用いて単離される。増幅技術はまた、配列を増幅および単離するために使用され得る(例えば、Dieffenfach & Dveksler,PCR Primers:A Laboratory Manual(1995)を参照のこと)。あるいは、重複したオリゴヌクレオチドが、1つ以上のドメインを生成するために合成的に生成され、そして連結され得る。
【0054】
インビトロでの増幅方法を当業者に導くに十分な技術の例は、以下に見出される:Berger,Sambrook,およびAusubel,ならびにMullis et al.,(1987)米国特許出願第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innis et al.,eds)Academic Press Inc.San Diego,CA(1990)(Innis);Arnheim & Levinson(October 1,1990)C & EN 36−47;The Journal Of NIH Research(1991)3:81−94;(Kwoh et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173;Guatelli et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,1874;Lomell et al.(1989)J.Clin.Chem.,35:1826;Landegren et al.,(1988)Science 241:1077−1080;Van Brunt(1990)Biotechnology 8:291−294;WuおよびWallace(1989)Gene 4:560;ならびにBarringer et al.(1990)Gene 89:117。
【0055】
(融合ポリペプチド、試験結合対メンバーおよび競合因子を発現させるための発現カセットおよび宿主細胞)
融合ポリペプチド、試験結合対メンバーおよび競合因子を生成するための多くの発現系が存在する。これらの系は当業者に周知である(例えば、GENE EXPRESSION SYSTEMS,Fernandez and Hoeffler,Eds.Academic Press,1999を参照のこと)。代表的に、発現されるべきポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、所望の宿主細胞において機能的であるプロモーターの制御下に配置される。種々のプロモーターが利用可能であり、特定の用途に依存して本発明の発現ベクターにおいて使用され得る。一般的に、プロモーターの選択は、そのプロモーターが活性である細胞に依存する。他の発現制御配列(例えば、リボソーム結合部位、転写終結部位など)もまた、必要に応じて含まれる。1つ以上のこれらの制御配列を含む構築物は、「発現カセット」と称される。したがって、連結されたポリペプチドをコードする核酸が、所望の宿主細胞において発現させるために組み込まれる。
【0056】
本発明の融合ポリペプチドは、種々の宿主細胞において発現され得る。しばしば、細菌宿主および発現系(特に、グラム陰性細菌(例えば、E.coli))が使用されるが、他の系(例えば、酵母、昆虫、真菌、植物、鳥類または哺乳動物の発現系)もまた使用され得る。特定の宿主細胞における使用に適切な発現制御配列は、当業者に周知である。一般的に使用される原核生物制御配列(これらは、リボソーム結合部位配列と共に、転写開始のためのプロモーター(必要に応じて、オペレーターを有する)を含むことが、本明細書中で定義される)としては、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プロモーター系(Changeら、Nature(1977)198:1056)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、Nucleic Acids Res.(1980)8:4057)、tacプロモーター(DeBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1983)80:21−25)、ハイブリッドtrp−lacプロモーター、バクテリオファージT7プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、ならびにλ由来PLプロモーターおよびN−遺伝子リボソーム結合部位(Shimatakeら、Nature(1981)292:128)のような、一般的に使用されるプロモーターが挙げられる。
【0057】
ファージミドベクターもまた、例えば、レポーター系の相補フラグメントの1つに融合される試験結合対メンバーのライブラリーを構築するために使用され得る。このようなベクターは、一本鎖線状バクテリオファージ(例えば、M13またはfl)のゲノム由来のDNA複製起点を含む。ファージミドは、従来のプラスミドベクターと同様に使用され得るが、DNAのクローン化セグメントの一本鎖コピーを含む線状バクテリオファージ粒子を生成するためにも使用され得る。
【0058】
原核生物において機能する任意の利用可能なプロモーターが、使用され得るが、特定のプロモーター系が、以下にさらに説明されるように、最適な発現のために選択され得る。標準的な細菌発現ベクターとしては、pBR322ベースのプラスミド(例えば、pBLUESCRIPTTM、pSKF、pET23D)のようなプラスミド、λファージ由来ベクター、および融合発現系(例えば、GSTおよびLacZ)が挙げられる。エピトープタグもまた、組換えタンパク質に付加され、簡便な単離方法を提供する(例えば、c−myc、HA−タグ、6−Hisタグ、マルトース結合タンパク質、VSV−Gタグ、抗−DYKDDDDKタグ、または任意のこのようなタグ(これらの多くは、当業者に周知である))。
【0059】
E.coli以外の原核生物細胞における融合ポリペプチドの発現のために、特定の原核生物種において機能するプロモーターが必要とされる。このようなプロモーターは、これらの種からクローニングされた遺伝子から得られ得るか、または異種プロモーターが使用され得る。例えば、ハイブリッドtrp−lacプロモーターは、E.coliに加え、Bacillusにおいて機能する。これらおよび他の適切な細菌プロモーターは、当該分野で周知であり、そして例えば、SambrookらおよびAusubelらにおいて記載される。本発明のタンパク質を発現させるための細菌発現系は、例えば、E.coli、Bacillus sp.およびSalmonellaにおいて利用可能である(Palvaら、Gene 22:229−235(1983);Mosbachら、Nature 302:543−545(1983))。このような発現系のためのキットは、市販されている。
【0060】
構成的プロモーターまたは調節性プロモーターのいずれかが、本発明において使用され得る。調節性プロモーターが有利である。なぜなら、宿主細胞が高密度にまで増殖され得、その後、融合ポリペプチドの発現が誘導されるからである。異種タンパク質の高レベルの発現は、いくつかの状況下で細胞増殖を遅らせる。誘導性プロモーターは、遺伝子の発現を指向するプロモーターであり、その発現のレベルが、環境的要因または発生的要因(例えば、温度、pH、嫌気条件または好気条件、光、転写因子および化学物質のような)によって変化し得る。
【0061】
E.coliおよび他の細菌宿主細胞について、誘導性プロモーターは、当業者に公知である。これらには、例えば、lacプロモーター、バクテリオファージλPLプロモーター、ハイブリッドtrp−lacプロモーター(Amannら(1983)Gene 25:167;de Boerら(1983)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 80:21)およびバクテリオファージT7プロモーター(Studierら(1986)J.Mol.Biol.;Taborら(1985)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 82:1074−8)が挙げられる。これらのプロモーターおよびこれらの使用は、Sambrookら(前出)において議論される。
【0062】
いくつかの適用において、真核生物発現系が、本発明の方法の実施において使用され得る。例えば、酵母発現系は、当該分野で周知であり、そしてこれらもまた、使用され得る。酵母において、ベクターとしては、酵母組み込みプラスミド(例えば、Ylp5)および酵母複製プラスミド(YRpシリーズプラスミド)およびpGPD−2が挙げられる。
【0063】
真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含む発現ベクターは、真核生物発現ベクターにおいて代表的に使用される(例えば、SV40ベクター、パピローマウイルスベクター、およびエプスタイン−バーウイルス由来のベクター)。他の例示的な真核生物ベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、以下のプロモーターの指向下でのタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが挙げられる:CMVプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核生物細胞における発現に効果的であることが示されている他のプロモーター。真核生物についての誘導性プロモーターもまた、当業者に周知である。これらとしては、例えば、メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーター、他多数が、挙げられる。
【0064】
翻訳連結(translational coupling)が、発現を増強するために使用され得る。このストラテジーは、その翻訳系に対してネイティブな高度に発現される遺伝子由来の短い上流オープンリーディングフレーム(これは、プロモーターの下流に配置される)、およびリボソーム結合部位、それに続く、数アミノ酸コドン後の終止コドン、を利用する。終止コドンの直前に、第2のリボソーム結合部位が存在し、その終止コドンの後に、翻訳開始の開始コドンが存在する。この系は、RNAの二次構造を解消し、これが、翻訳の効率的な開始を可能にする。Squiresら(1988)J.Biol.Chem.263:16297−16302を参照のこと。
【0065】
ポリペプチドは、細胞内で発現され得るか、あるいは細胞から分泌され得るか、またはペリプラズム空間内に分泌され得る。従って、発現構築物は、その発現されたタンパク質の分泌を可能にするための配列(例えば、リーダー配列またはシグナル配列)を含む。
【0066】
発現されたポリペプチドの精製を容易にするために、融合ポリペプチドをコードする核酸はまた、エピトープまたは「タグ」(これに対するアフィニティー結合試薬が利用可能である)のコード配列を含み得る。適切なエピトープの例としては、mycおよびV−5レポーター遺伝子が挙げられ;これらのエピトープを有する融合ポリペプチドの組換え産生に有用な発現ベクターが、市販されている(例えば、Invitrogen(Carlsbad CA)ベクターpcDNA3.1/Myc−HisおよびpcDNA3.1/V5−Hisは、哺乳動物細胞における発現に適切である)。本発明の融合タンパク質に対してタグを結合するために適切なさらなる発現ベクター、および対応する検出系は、当業者に公知であり、そしていくつかが、市販されている(例えば、FLAG”(Kodak、Rochester NY)。適切なタグの別の例は、ポリヒスチジン配列であり、これは、金属キレートアフィニティーリガンドに結合し得る。代表的には、6つの隣接ヒスチジンが使用されるが、6つより多いものまたは少ないものが使用され得る。ポリヒスチジンタグに対する結合部分として作用し得る適切な金属キレートアフィニティーリガンドとしては、ニトリロ−トリ−酢酸(NTA)(Hochuli,E.(1990)「Purification of recombinant proteins with metal chelating adsorbents」In Genetic Engineering:Principles and Methods,J.K.Setlow編、Plenum Press,NY;Qiagen(Santa Clarita,CA)から市販されている)が挙げられる。
【0067】
当業者は、発現されるポリペプチドのレポータードメインおよび結合ドメインに対して、それらのポリペプチドの生物学的活性を減少することなく、改変がなされ得ることを認識する。いくつかの改変が、クローニング、発現、または融合タンパク質へのドメインの組み込みを容易にするためになされ得る。このような改変は、当業者に周知であり、そしてこれらには、例えば、結合ドメインをコードするポリヌクレオチドのいずれかの末端でのコドンの付加(例えば、そのアミノ末端にメチオニンの付加を提供し、開始部位を提供するため)、またはいずれかの末端でのさらなるアミノ酸(例えば、ポリHis)の配置(都合よく配置された制限部位または終止コドンあるいは精製配列の作製のため)が挙げられる。
【0068】
(融合タンパク質の構築)
本明細書中に記載される融合タンパク質のレポーター系のメンバー(例えば、レポーター系の相補フラグメント)および結合ドメインは、直接的または間接的(しばしば、可撓性リンカーを介して)に連結され得る。特定の実施形態において、融合タンパク質の各ポリペプチドのコード配列は、ペプチド結合を介して、それらのアミノ末端またはカルボキシ末端で任意の順序で直接的に連結される。
【0069】
あるいは、アミノ酸リンカー配列を使用して、第1のポリペプチド成分および第2のポリペプチド成分を、各ポリペプチドがその二次構造および三次構造にフォールディングされるのを確実にするのに十分な距離、離れさせ得る。このようなアミノ酸リンカー配列は、当該分野で周知の標準的な技術を使用して、融合タンパク質に組み込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の要因に基づいて選択され得る:(1)それらが、可撓性の広がったコンフォメーションをとる能力を有すること;(2)それらが、第1のポリペプチド上および第2のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用し得る二次構造をとる能力を有さないこと;および(3)ポリペプチドの機能的エピトープと反応し得る疎水性残基または荷電残基の欠失。代表的なペプチドリンカー配列は、Gly、Ala、ValおよびThr残基を含む。他のほぼ中性のアミノ酸またはヘテロ原子を有する極性残基(例えば、SerおよびMet)もまた、使用され得る。リンカーとして有効に使用され得るアミノ酸配列としては、以下に開示されるアミノ酸配列が挙げられる:Marateaら(1985)Gene 40:39−46;Murphyら(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258−8262;米国特許第4,935,233号および同第4,751,180号。リンカー配列は、一般に、1〜約50アミノ酸長(例えば、3、4、5、6、または10、15、20、25、30、35、40、45)、またはそれ以上のアミノ酸長であり得る。しばしば、リンカーは、15アミノ酸長である。リンカー配列は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドが、非必須のN末端アミノ酸領域を有し、それらが、機能的ドメインを分離しそして立体障害を妨げるために使用され得る場合、必要としなくてよい。
【0070】
最も頻繁には、結合パートナーは、タンパク質であるが、結合パートナーは、タンパク質でなくてもよい。従って、他の融合方法もまた、使用され得る。ドメインを連結する他の方法としては、化学的結合体化、イオン結合などの方法(陰性および陽性のテールを発現させることによる)、および間接的結合体化(ストレプトアビジン−ビオチン相互作用のような手段を介する(例えば、Bioconjugate Techniques、前出を参照のこと))が挙げられる。例えば、小さい分子が、N結合型、O結合型またはS結合型のスペーサーを介してビオチンに対して化学的に結合体化され得、このような結合体が、培地からペリプラズム内に容易に拡散し得る。次いで、α197フラグメントに融合された結合タンパク質ライブラリーが、ω198フラグメントに融合されたアビジンと共発現され得、その結果、アビジン−ω198融合体に対する抗原上のビオチン部分の結合が、任意の結合因子−抗原相互作用を相補し、活性なβ−ラクタマーゼの再構成を駆動し、それによって、抗生物質の存在下での抗原結合因子を発現する細胞の増殖を可能にする。これらのドメインはまた、中間の配列を介して共に連結され得る。
【0071】
(試験結合対メンバーのライブラリー)
改善された結合対メンバーの選択に使用される、試験結合対メンバーのライブラリーは、当該分野で公知の多くのベクターおよび方法を使用して生成される。このライブラリーは、多くのベクター(例えば、上記のベクター)を使用して発現され得る。しばしば、このライブラリーベクターは、ファージミドである。
【0072】
試験結合対メンバー(これは、代表的には、レポーター系のメンバーの1つに融合される)(例えば、相補フラグメント)は、しばしば、抗体である。従って、発現ライブラリーは、免疫グロブリン(Ig)の重鎖および軽鎖可変領域のエピトープ結合部分をコードするDNA配列を含み得る:例えば、Marks、J.Biol.Chem.267:16007−10、1992;Griffiths、EMBO J.12:725−734,1993。あるいは、提示されるタンパク質は、単鎖(scFv)Igフラグメントであり得る(例えば、Pistillo Exp.Clin.Immunogenet.14:123−130、1997を参照のこと)。
【0073】
試験結合対メンバーのライブラリーの生成において、試験結合対メンバーの結合ドメインは、代表的には、参照結合対メンバーの結合ドメインと、数個より多い変異によって異ならない。さもなければ、試験結合対メンバーは、高い親和性を有することによるよりもむしろ、同族結合パートナーに対する非競合的結合によって選択され得る。従って、試験結合対メンバーの結合ドメイン(代表的には、80〜250アミノ酸長)は、しばしば、25アミノ酸(必要に応じて、約50〜100アミノ酸、または結合ドメインの全長)の比較ウィンドウに渡って、参照結合対メンバーの結合ドメインに対する90%より高い(例えば、95%、96%、97%、98%または99%)同一性を有する。
【0074】
配列は、比較ウィンドウにわたる最大の一致について、または以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用することによってか、または手動の整列化および目視検査によって測定した場合の指定された領域について、比較および整列され得る。配列比較のために、代表的には、1つの配列が、参照配列として作用し、それに対して、試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列は、コンピューターに入力され、部分配列の座標が指定され(必要な場合)、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが指定される。デフォルトプログラムパラメーターが使用され得るか、または代替的なパラメーターが指定され得る。次いで、配列比較アルゴリズムは、これらのプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性%を計算する。
【0075】
比較ウィンドウは、20〜600、通常には、約50〜約200、より通常には、約100〜約150からなる群より選択される任意の1つの連続する位置数のセグメントに対する言及を含み、このセグメントにおいて、配列が、同じ連続する位置数の参照配列に対して、その2つの配列が最適に整列された後に、比較され得る。比較のために配列を整列化する方法は、当該分野で周知である。比較のための配列の最適な整列は、例えば、以下によって行われ得る:Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性整列化アルゴリズム、Perason & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIの、GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または手動の整列化および目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1995)を参照のこと)。
【0076】
配列同一性%および配列類似性%を決定するために適切なアルゴリズムの別の例は、BLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschulら、Nuc.Acids Res.25:3389−3402(1977)およびAltschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載される。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationから公に入手可能である。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは、その整列化の感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に対する)は、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両鎖の比較を、デフォルトとして使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、3のワード長、および10の期待値(E)、ならびに50のBLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff & Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989))整列(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両鎖の比較を、デフォルトとして使用する。この特許の目的のために、アミノ酸同一性%は、BLASTのデフォルトパラメーターによって決定される。
【0077】
ライブラリーは、ランダムに生成された、試験結合対メンバーのライブラリーであり得る。しばしば、ライブラリーは、変異誘発されたライブラリーである。試験結合対メンバーのライブラリーは、例えば、以下を含む、種々の変異誘発方法を使用して生成され得る:誤りがちな(error−prone)PCR(CadwellおよびJoyce、PCR Primer、A Laboratory Manual、DieffenbachおよびDveksler編、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor NY、583−590頁、1995)、制限的(parsimonious)変異誘発(PM)(BalintおよびLarrick、Gene 137:109−118、1993)、DNAシャッフリング(Crameriら、Nature Biotechnol.14:315−19、1996)、ランダムプライミング組換え(RPR)(Shaoら、Nucleic Acids Res.26:681−683、1998)、またはスタッガード(staggered)伸長プロセス(StEO)(Zhaoら、Nature Biotechnol.16:258−261、1998)。これらの方法(PMを除く)について、代表的は、1クローンあたり1〜3個の変異の変異率を有し、所望でない変異を回避することが望ましい。PMについては、より高い変異率が使用され得る。なぜなら、結合因子のタンパク質結合部位のみが、変異されるからである。従って、PMは、より大きな親和性増分について評価するために有利であり得る。PMは、フォールディング変異体の回避、免疫原性の回避、および配列決定の容易性において、さらなる利点を有する。
【0078】
(親和性選択のための培養条件)
本明細書中に開示される親和性成熟手順は、細菌細胞、代表的には、グラム陰性細菌中で行う。選択は、望ましくは、最適化された条件下で実施される。最適化は、多くの要因(ネガティブコントロールの最適化を含む)を考慮して実施され得る。
【0079】
ネガティブコントロールが確立され、ネガティブコントロールは、代表的には、選択から排除することを所望する最大の親和性(すなわち、改善されるべき結合因子の親和性)である。従って、ネガティブコントロールについて、改善されるべき結合対メンバーは、競合因子として単独で発現されるだけでなく、試験結合対メンバーに代わって、参照結合対メンバーとして発現される。以下のいくつかの条件が、一般に、最適な選択のために考慮される:(1)同族結合パートナー−レポーターフラグメント融合体が制限され(好ましくは、競合因子の濃度の約10分の1未満)、競合因子と試験結合対メンバーとの間の競合を強化する;(2)競合因子は、そのKdと等しい濃度より過剰にあり(好ましくは、10倍)、その結果、同族結合パートナー/レポーターフラグメント融合体が、ネガティブコントロールにおいて少なくとも90%競合因子結合型である;および(3)試験結合対メンバー−レポーターフラグメント融合体の濃度は、同族結合対濃度に匹敵し(すなわち、競合因子の約10%濃度未満)、その結果、ネガティブコントロールが、最大のレポーター活性の約10%未満を有する。これは、約10倍の動的範囲を有する。
【0080】
(系成分の発現レベルの制御)
本発明の方法の実施において、発現のレベルは、代表的には、その系の成分の発現の所望の相対レベルを達成するために制御される。適切な条件は、例えば、図1に例示されるような、選択系の3つの成分を発現することによって達成され得る。競合因子および同族結合パートナー/レポーターフラグメント融合体(例えば、抗原−(β−ラクタマーゼの)αフラグメント融合体)は、強力なプロモーター(例えば、trp−lac融合プロモーター)から二シストロニック転写物で発現され得る。上流のシストロンの転写は、代表的には、下流のシストロンの転写よりも効率的である。このような条件下で、上流のシストロンによってコードされる競合因子は、過剰に存在し、同属の結合パートナー/レポーターフラグメント融合体は、制限される。次いで、相補レポーターフラグメント(例えば、β−ラクタマーゼのωフラグメント)に融合された結合対メンバー(例えば、抗体)が、弱いプロモーター(例えば、lacオペロンプロモーター)から、別の適合性のベクターから発現され得る。これは、同族結合パートナー/レポーターフラグメント融合体に匹敵する量で、結合対メンバー/相補レポーターフラグメント融合体を産生する。
【0081】
このような発現条件が、所定の抗原−抗体対について最適でない場合、さらなる操作が、1以上の成分の発現レベルをさらに制御するために利用可能である。例えば、競合因子発現が弱い場合、より強いプロモーター(例えば、バクテリオファージT7プロモーター)が利用可能である。あるいは、競合因子発現、および結合パートナーの発現もまた、他の手段(例えば、米国特許出願第09/510,097号に開示されるような、フォールド選択(Fold Selection)技術)を使用して、機能性を損なうことなく改善され得る。
【0082】
任意の成分の発現が強すぎる場合、または、その成分間の割合が不適切である場合、誘導性プロモーターが使用され得(例えば、アラビノースオペロンプロモーター)、これらが、任意の成分の発現レベルが適切なレベルに操作されるのを可能にする。例えば、抗原融合体またはscFV融合体の発現は、競合因子の0.1倍に減少され得るか、または競合因子の発現が、そのKdに等しい濃度の10倍に増加され得る。
【0083】
系の成分の発現の全体レベルを評価するために、それらの発現ベクターによって産生されるポリペプチドの量が、アッセイ(例えば、免疫ブロット)を使用して決定され得る。実際、系の成分の発現レベルは、上記の考慮に基づいて、ネガティブコントロールにおいて経験的に確立される。
【0084】
(親和性成熟のための抗体の選択および最適化)
抗体選択および親和性成熟のための本発明の使用の一般的な例を、図2に提供する。この一般的な例は、β−ラクタマーゼ相補フラグメントレポーター系を使用する。2つの融合タンパク質発現ベクターが、同じ細胞において共に発現される場合、抗原−抗体相互作用が、β−ラクタマーゼフラグメントを密接に近接させ、そしてこれが、これらのフラグメントの活性酵素へのリフォールディングを容易にする。この得られたβ−ラクタマーゼ活性は、結合していない抗体−抗原対を発現する細胞を定量的に殺傷する濃度のβ−ラクタマーゼ抗生物質の存在下で、それらの細胞が増殖するのを可能にする。第3の成分、競合因子は、親和性についての選択のストリンジェンシーを増加するために細胞に導入され得る。この競合因子は、抗原への結合について抗体と競合する任意の分子であり得るが、代表的には、改善されるべき抗体またはそのアナログである。
【0085】
この例において、α197(アミノ酸H26〜E197)およびω198(アミノ酸L198〜W288)と示されるβ−ラクタマーゼフラグメント対(これは、それぞれ、そのαおよびω分岐点で分岐点再封鎖ペプチドNGREおよびQGNを用いて増強される)を使用する。本発明の方法において使用され得るこのフラグメント対および他の対は、例えば、WO00/71702に記載される。
【0086】
単鎖Fvフラグメント(scFV)の形態の抗体(例えば、Marksら、Eur.J.Immunol.21:985−991、1991)は、例えば、介在(Gly4Ser)3リンカーを介して、ω198フラグメントのアミノ末端に対する融合体として発現される。抗原もまた、介在(Gly4Ser)3リンカーを介して、α197フラグメントのカルボキシ(分岐点)末端に対する融合体として発現され得る。このscFv−ω198融合体は、プラスミドベクター(例えば、pAO1(クロラムフェニコール耐性を発現し、そして挿入されたコード配列をlacオペロンプロモーターからω198融合体として発現するカセットを含む、pUCファージミドベクター))から発現され得る。α197−抗原融合体は、pAE1(カナマイシン耐性を発現し、そして挿入されたコード配列をtrp−lac融合プロモーター(Sambrook、前出)からα197融合体として発現するためのカセットを含む、p15Aレプリコン)のような、pUC適合性プラスミドベクターから発現され得る。抗体選択のためのこれらの発現構築物を、図3に示す。
【0087】
典型的には、試験結合対メンバーのライブラリー(例えば、scFvの多様な集団)をコードする配列は、ベクター(例えば、pAOlベクター)へとサブクローン化され、適切なE.coli宿主株(例えば、TG−1)へとトランスフェクトされ、そして、ヘルパーファージM13K07を用いた重複感染により、糸状バクテリオファージとしてレスキューされる(図3を参照のこと)。次いで、得られたファージ集団は、αI97融合物として目的の抗原を発現するpAE1ベクターを保有する細胞を定量的に感染するために使用される。
【0088】
感染した細胞の数は、通常は、完全なライブラリーのスクリーニングを確実にするために、scFvライブラリーのサイズの少なくとも10倍である。使用されるファージの数が、少なくとも細胞数の10倍である場合、そしてファージ濃度が、少なくとも1×1012形質転換単位/mlである場合、ほとんどの細胞は、1つより多いファージミドによって感染され、それはまた、抗原に対する抗体ライブラリーの全体的な暴露を提供する。
【0089】
これらの発現条件下で、E.coliペリプラズムにおけるβ−ラクタマーゼフラグメント融合タンパク質の濃度は、0.1〜10μMの範囲であると予想され、これは、細胞1個あたり、10〜1000分子に相当する。従って、マイクロモルのKd範囲における抗体アフィニティーは、β−ラクタマーゼのほぼ10〜90%活性化を生じるか、または1細胞あたり10〜90分子の範囲で活性β−ラクタマーゼを生成すべきである。溶解性タンパク質の免疫ブロット分析は、再構築されたβ−ラクタマーゼの細胞1個あたり10個ほどの少ない分子が、50μg/mlのアンピシリン上での定量プレーティングのために十分であることを示し、そして非相互作用融合タンパク質についてのプレーティング効率は、同じアンピシリン濃度で10−6未満であることを示した。このことは、マイクロモル濃度のアフィニティーが、容易に選択可能であるべきであるが、このシステムは、より高い濃度のアンピシリンが使用される場合であっても、より高いアフィニティー間を容易に識別することはできないことを意味する。というのは、最大のβ−ラクタマーゼ活性は、1〜100×10−8MのKdで生じるからである。E.coliのTG−1株がlacプロモーターリプレッサー(laclq)遺伝子を発現する場合、抗体と抗原融合物との両方の発現は、完全に誘導された状態と比較して、lacプロモーターの誘導因子IPTGの非存在下、少なくとも10の因子によって抑制され、その結果、IPTGの非存在下、選択可能なKdの上限は、1〜10×10−8Mの範囲であると予想される。
【0090】
ほとんどのヒト生殖系列重鎖可変領域(VH)遺伝子は、E.coli中で十分発現せず、細胞が、選択圧下、連続的に増殖する場合、特にそうである。しかし、いくつかの生殖系列VH遺伝子(例えば、DP47)は、十分天然に発現され、第3の相補性決定領域(CDR3)の配列がランダム化されている場合、多様な結合特異性のライブラリーのためのプラットホームとして使用され得、VHライブラリーは、適合性のVL生殖系列遺伝子(例えば、DPL3)またはVLレパートリーライブラリーに基づく軽鎖可変領域(VL)ライブラリーに結合する。それに加えて、他の生殖系列VHは、Fold Selector技術のような技術を用いて、通常は1つまたは2つの変異で安定化され得る(例えば、米国特許出願番号第09/510,097号を参照のこと)。
【0091】
DP47生殖系列VH遺伝子に基づく約108のヒトscFvのライブラリーおよびランダム配列の12〜16アミノ酸を含むVH CDR3を有するDPL3生殖系列VL遺伝子が、ω198フラグメントに融合され、IPTGの非存在下、TG−1細胞中のα197フラグメントのいずれかの末端に融合されたヒトB細胞抗原CD40の細胞外ドメインと定量的に同時発現される場合、全部で52のCD40特異的scFvが、種々のアンピシリン濃度で得られた。最大50μg/mlのアンピシリンに対する定量的な耐性を付与するscFvは、10×10−8M未満のKdを有し、200μg/mlを超えるアンピシリンに対する耐性を付与するscFvは、10×10−9M未満のKdを有するべきであることが推察され得る(図4)。
【0092】
β−ラクタマーゼを用いるアフィニティー成熟の例は、図2に提供される。
アフィニティー選択の前に、条件は、所望の選択ストリンジェンシーのために、確立される。このことは、ネガティブコントロールを発現する細胞についての非許容的なアンピシリン濃度を決定することを包含する。ネガティブコントロールは、選択から除外することが望まれる最大のアフィニティーであり、すなわち、改良されるべき抗体である。従って、ネガティブ(naegative)コントロールに関して、改良される結合因子は、競合因子としてだけではなく、同様に融合物としても発現する(図2における例を参照のこと)。例えば、上に記載される考察に従って、1μMのKdの競合因子が、μM抗原−α融合物およびμM結合因子−ω融合物と共に、細胞ペリプラズム中で10μM(細胞あたり約1000分子)である場合、約90%の抗原が、結合し、約10%の抗原が、結合因子−ω融合物によって結合され、活性化される。次いで、10倍高いアフィニティーを有する試験結合対メンバーは、β−ラクタマーゼ活性を約5倍あげて、最大の約50%に増加させ、アフィニティーにおける100倍の増加は、最大の約90%に活性を上げる。活性におけるこのような増加は、アンピシリンの存在下、増加したプレーティング効率によってを同定され得る。このことは、10倍高いアフィニティーを有する試験結合対メンバーの効率的な回収(この場合、固体培地上)のために、選択的なアンピシリン濃度は、ネガティブコントロールに関して10−3〜10−4のプレーティング効率を与えるのに必要とされる濃度未満でなければならない。一般的に、より高いアフィニティー抗体の効率的な捕捉を確実にするために、プレーティングされた形質転換細胞の数は、最小の予測されたプレーティング効率および予測された最小効率の積の逆数の約10倍に等しい。
【0093】
ライブラリーにおける10倍のアフィニティー変異体の頻度が、ネガティブコントロールのプレーティング効率より小さい場合、偽陽性が、真の陽性に勝り得、この場合、選択されたコロニーを再プレーティングして、偽陽性を排除する必要があり得る。一般的に、より高いアフィニティー抗体の効率的な補足のために、プレーティングされた形質転換細胞の数は、最小の予測されたプレーティング効率および最小の予測された頻度の積の逆数の10倍と等しくあるべきである。例えば、予測された頻度が、10−4であり、予測されたプレーティング効率が10%である場合、少なくとも106の細胞がプレーティングされる。
【0094】
当業者に理解されるように、より高いアフィニティー変異体の選択はまた、懸濁培養物における増殖によって達成され得る。上述のように、最適発現条件下で、固体培地上の複数の再プレーティングは、偽陽性を排除する必要があり得る。しかし、必要とされる濃縮は、懸濁培養物における競合増殖の単一の1〜2日間において達成され得、その最後で、よりストリンジェントなプレーティング条件(すなわち、より高い抗生物質濃度)が使用されて、偽陽性を排除し得る。というのは、定量的プレーティングは、濃縮されたより高いアフィニティー変異体の効率的な回収のために必要とされないからである。
【0095】
懸濁液における競合増殖による、より高いアフィニティー結合対メンバーの濃縮のために、アンピシリン濃度は、最初に調節され、ネガティブコントロールのゆっくりとした増殖のみを許容しうる。このことは、ストリンジェンシーが、小さなアフィニティー増分のためには高すぎないが、小さなアフィニティー増分は、迅速に濃縮することが可能であるべきであることを確実にする。一旦最適なストリンジェンシーが決定されると、抗原−結合タンパク質は、ωフラグメント融合物としての発現のために変異誘発される。結合因子コード配列は、種々の方法(前出)のいずれかによって変異誘発され得る。
【0096】
アフィニティー選択プロセスは、代表的には、ネガティブコントロールの平行懸濁培養物および標準的な培地(例えば、L Broth)における適切な E.coli株(例えば、TG−1)における変異原性ライブラリーで開始される。細胞濃度およびアンピシリン濃度は、ネガティブコントロールが一晩の期間で数倍より小さく倍加して、0.01〜0.1を超えないOD600に到達するのを可能にするように望ましく設定され得る。このような条件下、中程度のアフィニティー増分は、増殖速度においてより大きな増加を生じ、その結果、低い頻度であっても、ライブラリーの培養物密度は、一晩増殖した後に検出可能により高くあり得る。例えば、107の改変体クローンのライブラリーに関して、ネガティブコントロールが4時間ごとに倍加するのを可能にするアンピシリン濃度における、約106細胞/mlの出発培養物100mlが、選択を開始するために使用され得る。16時間後、コントロール培養物は、1mlあたり約1.6×107細胞の濃度(約0.016のOD600)を有し、一方、変異体培養物は、全ての変異体が、増殖速度において平均4倍の増加を生じ、ライブラリーにおいて少なくとも10−4の合わせた頻度を有する場合、1mlあたり約2.3x107細胞の濃度(約0.023OD600)を有する。
【0097】
増殖速度は、代表的にアフィニティーに関して非直線的に比例し、その結果、増殖速度における4倍の増加は、アフィニティーにおける4倍未満の増加に対応する。従って、16時間の増殖後、変異体培養物における細胞の25%を超える細胞は、競合因子よりも高い平均倍率のアフィニティーを有する。この時点で、等数の細胞が、コントロール培養物バックグラウンドがゼロである(例えば、104の細胞が、アンピシリン濃縮物上にプレーティングされ、その上で、ネガティブコントロールが、10−4のプレーティング効率を有する)条件下で、固体培地上の両培養物からプレーティングされる。変異体培養物からの同数の細胞は、変異の多様性を有する多くのコロニーを生成する。ついで、各々のこれらのクローンは、より高い濃度の抗生物質上で試験され、どのクローンが最も高いアフィニティーを有するかが決定される。最適条件下、このような改変体が存在する場合、動的範囲は、β−ラクタマーゼ活性における10倍までの増分を生じる、アフィニティーにおける100倍までの増加の識別を可能にするべきである。
【0098】
第1のアリコートを取り出した後、細胞を遠心分離し、新鮮な抗生物質を含む新鮮な培地中に再懸濁する。次いで、アリコートを所望な頻度でとり、上述のようにプレーティングし得る。この実施例における変異体培養物は、インキュベーション7〜8時間後に、定常状態(1mlあたり約109細胞)に到達し、この時点で、コントロール培養物は、1mlあたり約3×107までさらに約2回だけ倍加して到達した。従って、変異体ライブラリーの定常状態培養物において約3%の細胞のみが、改良されていない抗体を発現している。
【0099】
定常状態の培養物における最も高いアフィニティー変異体の多様性は、上述のようにゼロバックグラウンドのための第1のプレーティングによって、次いで、首尾よいより高い抗生物質濃度で回収されたクローンの再プレーティンによって決定され得る。次いで、ほとんどの抗生物質耐性クローンの遺伝的多様性は、配列決定によって決定される。1つ以上のこれらの多様性は、次のラウンドの変異誘発および選択において競合因子として使用され得る。それに続く多様化のラウンドは、変異誘発によってか、または以前の選択ラウンドにおける任意の時点で選択された組換え変異によって達成され得る。このプロセスは、代表的に、新しい変異体が単離されなくなるまで(すなわち、最も高いアフィニティー改変体が、競合因子として使用され、他の改変体の間の選択を支配し続ける場合)、繰り返される。
【0100】
より高いアフィニティー抗体の選択は、安定な表現型の復帰変異体(すなわち、抗体のアフィニティーを増加させることなく抗生物質耐性を付与する変異を獲得した細胞)の選択によって潜在的に損なわれ得る。通常は、機能獲得変異を含む復帰頻度は、単純な選択系(例えば、β−ラクタマーゼフラグメント相補系)について重要な問題を生じないように、所望の変異頻度に対して十分低い。しかし、競合アフィニティー選択系は、競合因子遺伝子における機能損失変異によってより容易に覆され得る。競合因子が、抗体ライブラリー(これは、ファージミド上にある)からの別個のプラスミド上にあるので、復帰変異体は、ヘルパーファージを用いて選択された変異体抗体ファージミドをレスキューし、新たな競合因子/抗原発現細胞を再感染させることによって容易に排除され得る。競合因子の損失によって本来選択された抗体は、新しい競合因子の存在下、再選択されないが、一方、真により高いアフィニティー変異体は、効率よく再選択されるべきである。可能な非アフィニティー復帰変異体はまた、第2の時期の選択の前に、選択された抗体のコード配列のサブクローニングによって排除され得る。
【0101】
理論によって束縛されないが、選択は、抗原−抗体複合体の寿命が、細胞倍加時間に比較して長くなるまで、アフィニティーによって駆動されると予想され、この時点で、選択は、抗体−抗原複合体の会合速度、オンレート(on−rate)によって主に駆動されるようになる。異種タンパク質リッチな環境(例えば、細菌ペリプラズム)におけるオンレート選択は、CDRによる硬直化に向かって選択が偏っており、それによって結合のエントロピーコストが減少し、CDR−エピトープ表面相補性が増加する方向に向かい、それによって、産生的接近の比率が増加する。後者の効果はまた、近位により誘導されるファンデルワールス相互作用を増加することによって結合エネルギーを増加させると予想され、増加した表面相補性は、結合エネルギーの有意な成分になり得る。この効果は、同様にオフレート(off−rate)を増加させ、従って、アフィニティーにおける平衡した増加を生成する。従って、識別され、それによって選択され得るアフィニティーの上限は、細菌ペリプラズム中の約50kDaのサイズ範囲の球状タンパク質に関しては、拡散制限によって決定される。このような限定は、約107M−1秒−1以上であり、関連するオフレートは、10−5秒−1程度に低いと推定され、ナノモル濃度からピコモル濃度のKdにおいてアフィニティーを有する抗体は、この方法によって得られ得る。
【0102】
(本発明の方法および系の使用)
アフィニティー成熟は、より高いアフィニティーの結合対メンバーを生成するための多くの適用において使用され得る。例えば、本発明の方法および系が使用され、マウス対応物に対応する優れた抗体またはヒト抗体を生成し得る。この技術はまた、より高い結合アフィニティーを有するペプチド(例えば、レセプターのための改良されたアゴニストまたはアンタゴニストであるペプチド)を同定するため、または高められたアフィニティーを有する結合ペプチドが望ましい任意の他の適用のために使用され得る。上述のように、標的に対する高められた結合アフィニティーを有する低分子もまた、例えば、ビオチンタグ系を用いて同定され得る。
【0103】
(治療用抗体の開発)
1つの適用において、本発明の系および方法が、治療用抗体を開発するために使用され得る。アフィニティー成熟は、低アフィニティー抗体結合部位を、エピトープ表面に対する高い相補性を有する剛性の形状に成型し得る。それゆえ、出発ライブラリーは、特に大きくも多様である必要もない。例えば、ライブラリーは、一本鎖Fvプラットホーム上に構築され得、このプラットホームは、VHおよびVLのCD3へと挿入されるランダム配列を有する、十分に発現するヒト生殖系列VHおよびVL領域の単一の対を含む。このようなライブラリーは、ランダム配列を含む合成オリゴヌクレオチドを、抗体コード配列内に設計された適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に連結させることによって効率的に生製され得る。約108のこのような配列のライブラリーは、代表的に、本発明の方法において、マイクロモル濃度のアフィニティーの抗体を産生するために十分な多様性を有する。
【0104】
単一のプラットホームライブラリーのさらなる利点は、抗体発現レベルが代表的には均一であることである。抗体の間の構造的多様性は、タンパク質表面に限定され、それゆえ、抗体の安定性のフォールディング動力学のいずれにもほとんど衝撃を与えない。さらに、例えば、変異誘発のためのPM方法において、変異は、CDRに限定され、それゆえ、発現レベルに影響を与えそうもない。
【0105】
治療の適用に関して、抗体に関する重要な性能パラメータとしては、特異性、安定性、免疫原性の欠如、およびオンレートが挙げられる。ほとんどの抗体標的について、インビボのオフレート(これは、11分〜2時間の半減期に対応する)は、10−3〜10−4sec−1より低くある必要はない。ほとんどの表面結合抗体は、エンドサイトーシスを受けるか、またはエフェクター機能(例えば、食作用またはこの時間フレーム内の相補体固定)に携わるかのいずれかである)。しかし、オンレートにおけるさらなる増加を下回る同定された上限が存在しないことは、治療上の利点ではない。従って、本明細書中で記載される本発明は、治療の適用のために優れた抗体を提供し得る。それが、治療の適用のための特異的アイソタイプの全長の抗体を使用するための利点である場合、成熟したアフィニティー抗体において存在するリンカーは、除去され、必要な定常領域が、scFvに付加され得る。
【0106】
(実施例)
(実施例1。ヒトCD40を結合するチオレドキシン足場ペプチドの間の相補グループの競合的決定)
抗体に加えて、ドメインを結合するための他の型のタンパク質の足場は、特に、細胞内に発現され得、また使用され得る。例えば、20アミノ酸までのランダムペプチドは、細菌チオレドキシン(trxpepes)の活性部位へと挿入され得、抗原結合分子は、このようなライブラリーから選択され得る(例えば、Colasら,Nature 380:548−550,1996を参照のこと)。この例は、β−ラクタマーゼαl97/ωl98フラグメント相補系を使用して、細胞表面抗原(E.coliペリプラズムにおいて発現され得るヒトB−細胞活性化抗原CD40の細胞外ドメイン)に結合するための12アミノ酸のtrxpepsのパネルを選択する(例えば、Noelleら,Immunol.Today 13:431−433,1992およびBajorath & Aruffo,Proteins:Struct,Funct.,Genet.27:59−70,1997を参照のこと)。
【0107】
細胞外ドメイン(CD40ED)の成熟形態のコード配列を、成熟タンパク質のN末端および約190残基の細胞外ドメインのC末端に相同性のプライマーを用いて、PCRによって増幅した(Genbank登録番号X60592)。このPCR産物を、介在する(Gly4Ser)3リンカーを有するβ−ラクタマーゼω198フラグメントに対するC−末端融合としての、lacプロモーターからの発現のために、pAOlファージミドベクター(図5A)へとサブクローン化した。正しい産物の発現を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって確認し、次いで、CD40融合ベクターをファージとしてレスキューし、Trxpepライブラリー構築物を有するTG−1細胞へとトランスフェクトした。市販のTrxpepライブラリーを得て、E.coliチオレドキシンのN−末端およびC−末端に対して特異的なプライマーを用いてPCRにより増幅した(Genbank登録番号M54881)。この産物を、trp−lac融合プロモーターからのαl97フラグメントのC−末端に対する融合物の発現のために、pl5Aレプリコンへとサブクローン化した(Rose,Nucleic Acids Res.16:355,1988)(pAE1、図5A)。約107の同時形質転換体を、カナマイシンおよびクロラムフェニコールでの二重選択によって収集し、次いで、25μg/mlのアンピシリン上でプレーティングした。
【0108】
13の固有のtrxpepをコードするアンピシリン耐性クローンを回収した。全ての場合において、アンピシリン耐性は、CD40EDの存在およびtrxpepのペプチド部分の存在に厳密に依存した。CD40EDが無関係なタンパク質によって交換される場合、またはtrxpepが野生型チオレドキシンによって交換される場合、活性は見られなかった。trxpep間の競合は、pAO1ファージミドベクターにおける第2のシストロン(CD40−ω198融合物から下流)由来の「競合因子」として、5つの選択されたCD40−結合trxpepの各々を発現させることによって試験した(図5A)。次いで、これらの構築体の各々を、各々同じ5つと、3つのさらなる選択されたαl97−trxpep融合構築物を用いて、TG1株中で同時発現させ、25μg/mlのアンピシリン上で増殖に関してスコアされた。結果は、図5Bに示される。
【0109】
試験された各々の場合において、CD40とtrxpepとの間の結合相互作用によるβ−ラクタマーゼの活性化は、競合因子としての同じtrexpepの存在下、強力に阻害された。従って、CD40に関するアフィニティーを増加させたα197融合化trxpepの代替は、競合因子の効果を中和し、失われたβ−ラクタマーゼ活性の少なくともいくらかを選択的に回復することが可能であるべきである。8つのtrxpep(これは約5の異なるエピトープにほぼ対応する)が5つの相補性グループに分類される。trxpep p58−12−9Al、BW10−4、およびBW10−8は、1つのグループを構成し、これらのグループは、お互いに強力に競合し、同様の競合プロフィールを有する。従って、これら3つのtrxpepが、CD40上の同じエピトープについて競合したと結論付けた。
【0110】
α197融合物として3つのtrxpepの各々を発現する細胞が、25μg/mlのアンピシリンの存在下、懸濁培養物中で増殖した場合、対数期の増殖の間、すべての3つの細胞は、ほぼ同じ速度で倍加した。しかし、各々のtrxpepが、α197−trxpep融合物の各々と共に、遊離の競合因子として同時発現された場合、25μg/mlアンピシリン中での懸濁液の増殖速度は、異なる程度阻害されたが、パターンはいつも同じであった。α197−BW10−8融合物を発現する細胞は、競合因子にかかわらず、いつも最も早く増殖し、その後に、αl97−p58−12−9Al融合物、その後に、α197−BW10−4融合物の順であった。3つ全てのα197−trxpep融合物の発現レベルは匹敵したので、可溶性抽出物の免疫ブロットによって判断されるように、競合条件下での増殖速度は、CD40に対するアフィニティーと相関関係にある。従って、BW10−8は、CD40に対して最も高いアフィニティーを有し、その後に、p58−12−9Al、その後にBW10−4の順である。
【0111】
各々の3つのαl97−trxpep融合物および競合因子としてのBW10−4を発現する細胞を、同じ数で混合し、25μg/mlのアンピシリンの存在下、懸濁培養物中で一晩増殖させた。得られた培養物からランダムで選択された20のクローンのうち、20全てがp58−12−9Al trxpepをαl97融合物として発現した。従って、最も高いアフィニティー改変体は、懸濁培養物中の競合増殖によって選択され得る。
【0112】
(実施例2。抗CD40抗体と、抗CD40抗体のより高いアフィニティー変異体との間のアフィニティー競合)
この実施例は、ナノモル濃度の範囲におけるアフィニティー(Kd)を有する、密接に関連する抗体間を識別する、競合アフィニティー選択系の能力を示す。
【0113】
5D12抗体は、ヒトCD40に対して特異的なマウスモノクローナル抗体である。この抗体のFabフラグメントは、7.6nMのKdを有する。VHのCDR3において2つの変異を有するこの抗体の改変体(5D12−6D)は、0.64nMのKdを有する。競合条件下および非競合条件下での、これら2つの抗体のプレーティング効率を、表Iに列挙する。
【0114】
5D12のscFvが、CD40細胞外ドメイン(CD40ED)のα197融合物として、同じ細胞においてω198融合物として発現した場合、細胞は、10μg/mlのアンピシリンにのみ定量的に耐性であった。しかし、5D12−6D変異体が同じシステム中で発現された場合、細胞は、25〜50μg/mlを超えて定量的にプレーティングされた。このシステムが、これら2つの抗体間を識別し得るという事実は、抗体が、不安定であり、Fabのアフィニティーよりもかなり低い明らかなアフィニティーを有することを示す。通常は、このシステムは、ナノモル濃度のアフィニティーを識別することはできない。というのは、識別することは、融合物のナノモル濃度下の濃度を必要とし、そして、細菌ペリプラズムにおけるこのような濃度は1細胞あたり1分子未満と等しいからである。
【0115】
5D12Fabの5D12scFvに対するアフィニティーを回復するために、細菌ペリプラズムにおける発現を安定化させることが必要であった。この不安定性の主な原因は、代表的には、凝集を受けやすいフォールディング中間体および/または可撓性のリンカーの長さに起因するVHおよびVLのゆるい会合であった。この両方の欠点は、フォールディング中間体を不安定化し、それによって、フォールディングを促進する変異を選択することによって修復され得る。同じ変異がまた、通常は、scFvの2つの鎖間のアフィニティーを増加させる。5D12scFvの安定性が、変異的に回復される場合、安定化されたscFv(s5D12)は、100〜200μg/mlのアンピシリンでの定量的なプレーティングを付与した(表Iを参照のこと)。しかし、5D12−6Dへと同じ安定化変異を導入した場合、プレーティング効率は、s5D12のレベルを顕著に下回って増加しなかった。これはおそらく、ペリプラズムにおける両抗体の2つの安定状態の濃度が、アフィニティー(Kd)よりもずっと高く、その結果、後者における差異は、検出されなかったという事実に起因する。すなわち、この濃度が、Kdより非常に大きい場合、アフィニティーは、もはや活性についで制限しない。
【0116】
次いで、2つの安定化された抗体−ω融合物を、遊離競合因子としてのs5D12の存在下、α抗原融合物をと同時発現させた。表Iに示されるように、競合因子の存在は、約200μg/mlのアンピシリン上での約50%から25ug/ml上での約50%まで、s5D12のプレーティング効率を減少させた。200μg/mlのアンピシリン上で、競合因子は、s5D12プレーティング効率を10−5未満まで減少させた(示さない)。同じ競合因子は、6D変異体のプレーティング効率を、200ug/ml上の約70%から100μg/ml上の約40%まで減少させた。重要な観察は、競合因子の存在下、100μg/mlのアンピシリン上で、s5D12−6D変異体は、その親抗体s5D12よりも少なくとも1000倍高い効率でプレーティングされ、一方、競合因子の非存在下、これら2つの変異体は、同じ濃度で明らかに識別され得る。従って、競合因子の使用によって、アフィニティーにおける12倍の増加が、選択性において少なくとも1000倍の増分を付与した。従って、100μg/mlのアンピシリン上のプレーティングの各ラウンドの後、変異体の頻度は、親と比較して、少なくとも1000倍濃縮されるはずである。それゆえに、この実験は、ナノモル濃度のKdレベルでのアフィニティー間を識別するための競合アフィニティー選択技術の能力を実証する。
【0117】
(表I ナノモル濃度のKdを有する2つの抗CD40抗体に関する、増殖とアフィニティーとの間の相関関係)
【0118】
【表1】
a.5D12、抗CD40抗体;s5D12、安定化された抗CD40抗体;s5D12−6D、5D12抗CD40抗体の安定化されたより高いアフィニティー変異体(2つの変異)。
b.Amp10、Amp25、Amp50などは、10、25、50μg/mlなどのアンピシリンでのプレーティング効率をいう。このプレーティング効率は、コロニーを形成する二重形質変換された細胞の割合と等しい。
【0119】
本明細書中に引用される全ての刊行物および特許出願は、各々個々の刊行物または特許明細書が参考として具体的に、個々に援用されるかのように、参考として本明細書中で援用される。
【0120】
上記の発明は、理解を明確にする目的で図示および実施例を用いていくらか詳細に記載されてきたが、本発明の教示に鑑みて、特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなく本発明になされ得ることは、当業者には容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、scFvの競合的親和性の成熟についての発現構築物を示す。
【図2】
図2は、競合的選択によるscFvの親和性の成熟を示す。レパートリーライブラリーまたはランダムCDRライブラリーから選択される「低親和性」scFvが、最初に抗原および同一のscFvに融合したβ−ラクタマーゼフラグメントを有する自由な「競合因子」として同時発現されたことを示す。これは改善されていないscFvを発現する細胞の増殖を防ぐために必要とされる抗生物質の量の決定を可能にする。このω198フラグメントに融合されたscFvは、制限的な抗生物質濃度で増殖について変異誘発され、そして選択される。
【図3】
図3は、レパートリーライブラリーまたはランダムCDRライブラリーから選択される単鎖Fv抗体フラグメント(scFv)選択についての発現構築物を示す。scFvライブラリーは、可撓性リンカー((G4S)3)を介してβ−ラクタマーゼωフラグメントに対してC末端融合として発現するファージミドプラスミドにコードされる。レプリコン(fl ori)のファージ起源はscFvライブラリーがバクテリオファージストックして保存されることを可能にする。これはβ−ラクタマーゼαフラグメントのいずれかの末端に(G4S)3を介して融合される抗原を発現する細胞を、定量的に感染させる(感染の多重度(m.o.i.))ために使用され得る。pUC ori、pl5A ori(適合可能プラスミドのレプリコンの供給源);lac prom(lacオペロン転写プロモーター);trc prom(trp−lac融合プロモーター;SP(ペリプラズム中に分泌されるシグナルペプチド);cat(クロラムフェニコール耐性遺伝子;kan(カナマイシン耐性遺伝子)。
【図4】
図4は、ヒトCD40(CD40ED)の細胞外ドメインに特異的なscFvが、ランダム配列の12〜16アミノ酸を含むVH CDR3を有するDP47生殖細胞系VH遺伝子およびDPL3生殖細胞系VI遺伝子に基づくヒトscFvを発現する約198の独立クローンのライブラリーから選択されることを示す。二重のブレークポイント融合は、抗原がC末端のα197フラグメントに融合されたことを意味し;二重のN末端融合は、抗原がsα197フラグメントのN末端に融合されたことを意味する。
【図5】
図5は、抗CD40 Trxpep競合を示す。図5Aは、競合によるCD40結合trxpepのうちで相補性群の決定のための発現構築物を示す。図5Bは、7つのCD40結合trxpepのうちで競合関係についての表を示す。
(関連出願の相互参照)
本出願は、本明細書において参考として援用される、米国仮出願番号60/245,039(2000年10月30日出願)の優先権の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、参照結合対メンバーと比較して、同族結合パートナーに対する増強された結合親和性を有する結合対メンバーを選択する方法を提供する。特に、本発明は、参照抗体と比較して抗原に対する増強された親和性を有する抗体を選択する方法を提供する。それにより、この「親和性成熟(affinity maturation)」プロセスは、優れた結合能を有する結合対メンバー(例えば、抗体)を提供する。
【0003】
(発明の背景)
レポーター分子の相補フラグメントが各々、結合対メンバーに連結されたレポーター系が、開発されている。結合対が相互作用する(すなわち、互いに結合する)場合、相補フラグメントは近位にもたらされ、その結果、レポーター活性が再構築される(例えば、WO00/71702を参照のこと)。レポーター活性(または阻害)が、レポーター系のメンバーに連結された結合対メンバーと、その同族結合パートナー(これは、レポーターのサブユニットまたはインヒビターに連結され得る)との間の結合相互作用に依存する、他のレポーター系もまた操作され得る。このような系は、多くの適用(例えば、サンプル中の分析物の同定、治療剤および造影剤の組織局在的な活性化、アゴニスト/アンタゴニストの高スループットスクリーニングにおけるセンサーとして、対を成すタンパク質−タンパク質相互作用の高スループットマッピング、目的のポリペプチドに特異的に結合する抗体フラグメントまたは他の結合タンパク質の迅速な選択、抗細胞抗体および抗組織抗体に対する迅速な抗原同定、抗体対する迅速なエピトープ同定、ならびにタンパク質−タンパク質相互作用のインヒビターの高スループット選択のための細胞ベースのスクリーニング)に有用である。これらの適用のいくつか、例えば、目的のポリペプチドに特異的に結合する抗体または他の結合タンパク質の同定において、高親和性の結合因子を選択することが所望される。しかし、この基本系は、相互作用因子の親和性に基づいてその識別する能力が限定されている。
【0004】
抗原特異的抗体は、種々の方法(ハイブリドーマ技術(例えば、KohlerおよびMilstein、Nature 256:495−497、1975)または、ファージもしくは酵母ディスプレイライブラリーを使用するインビトロでの選択(例えば、Hoogenboomら、Immunotechnology 4:1−20、1998;BoderおよびWittrup、Methods Enzymol 328:430−44、2000)を含む)によって生成され得る。しかし、これらの方法に由来する抗体は、しばしば、最適を下回る結合親和性を有する。同種抗体間のインビトロでの親和性識別は、抗体および抗原の両方の濃度が、標的の平衡解離定数より低く維持される条件下で、問題の抗体の変異原性ライブラリーを、可溶性同族抗原で平衡化することによって、達成され得る。競合は、豊富な低親和性改変体が、よりまれな高親和性改変体を排除することを防ぐために、回避されなければならない。操作上、2つのさらなる要件が存在する:(1)抗体ライブラリーは、そのコード配列に抗体を結合させる、バクテリオファージまたは細胞のようなビヒクルによってディスプレイされなければならない、そして(2)抗原は、非結合抗体からの、抗原結合抗体の定量的分離を可能にするタグと結合されなければならない。このような手順の主な欠点は、ほとんどの適用について、ナノモル濃度範囲のKdの親和性が所望され、そして、これらの抗体が、ナノモル濃度下の作業濃度で容易に失われるに十分まれであることである。
【0005】
このような困難は、より低い解離速度定数(Kd、オフ速度(off−rate))の選択を生じ、抗体親和性を改善している。より低いオフ速度の選択は、通常、標的のオフ速度に反比例する時間後にインタクトなままである抗原−抗体複合体が、解離した抗体から別々に回収され得る飽和条件下で実行される。しかし、これらの手順において、抗体のオフ速度が、1×10−4/秒の範囲(これは、約2時間の半減期に相当する)であることがしばしば所望される。多くの抗体および特に抗原は、周囲温度または生理学的温度で、このような時間規模での、インビトロでの有意な不可逆的変性を受ける。また、オン速度(on−rate)選択の非存在下のオフ速度選択(より低いKa)は、安定な複合体に再折り畳みされる改変体に向かう選択に偏向する傾向があり、従って、増大したオン速度を好まない傾向がある。
【0006】
ほとんどの抗体適用について、インビトロでの親和性成熟についての首尾よいプロトコールは、意図された抗原についての特異性を維持するかまたは増大しながら、オン速度およびオフ速度の両方における改善を生成するプロトコールである。本発明は、このような系を提供する。本発明は、参照結合対メンバーよりも高い親和性を有する試験結合対メンバー(すなわち、親和性成熟または改善した結合対メンバー)を同定するための、方法および系を提供する。1つの実施形態において、本発明は、選択基準として結合親和性を使用する、フラグメント相補系を含む方法を提供する。より高い親和性の改変体の、細胞ベースの競合的選択と同じ原理を、任意のレポーター系(これは、細胞に選択可能な表現型(例えば、色または限定条件下で増殖する能力)を付与し、そしてその活性化または阻害は、2つの結合対メンバーの相互作用に依存するようにされ得る)を用いて使用し得る。
【0007】
(発明の要旨)
一般に、この方法は、(a)試験結合対メンバーのライブラリー、(b)同族結合パートナー、(c)以下の特性:i)同族結合パートナーに対する結合について、参照結合対メンバーと競合する特性、およびii)参照結合対メンバーの親和性と少なくとも等しい、同族結合パートナーに対する親和性を有する特性、を有する競合因子、をコードする核酸配列を含む発現ベクターを、細菌細胞集団に導入する工程を包含する。このベクターはまた、レポーター系をコードし、このレポーター系は、1つ、2つまたは3つの分子からなり、そのうち少なくとも1つは、(a)試験結合対メンバー、(b)同族結合パートナー、または(c)競合因子に連結される。次いで、試験結合対メンバーが、参照結合対メンバーの親和性よりも高い親和性で、同族結合パートナーに結合する場合に、レポーターが活性になって、細胞に選択可能な表現型を付与する条件下で、細菌細胞を培養する。このようなより高い親和性の試験結合対メンバーは、参照結合対メンバーによって付与される表現型に関して、細胞の表現型によって同定される。
【0008】
1つの実施形態において、この方法は、細菌細胞集団に、マーカーのフラグメントAに連結された試験結合対メンバーのライブラリーをコードする核酸配列を含む発現ベクターを導入する工程、この細胞集団に、マーカーのフラグメントBに連結された同族結合パートナーをコードする核酸配列を含む発現ベクターを導入する工程(ここで、このマーカーは、フラグメントAとフラグメントBとが近位である場合に活性である);フラグメントAに連結された試験結合対メンバーのライブラリーおよびフラグメントBに連結された同族結合パートナーが、以下の特性:i)同族結合パートナーに対する結合について、参照結合対メンバーと競合する性質、およびii)参照結合対メンバーの親和性と少なくとも等しい、同族結合パートナーに対する親和性を有する特性(ここで、試験結合対メンバーは、フラグメントAに連結された同族結合パートナーに競合因子が結合する親和性より高い親和性を有する)、を有する競合因子の存在下で発現される条件下で、この細胞集団を培養する工程;ならびにこのマーカーが活性である細胞を選択する工程、を包含する。試験結合対メンバーの結合ドメインは、代表的には、参照結合対メンバーの結合ドメインと少なくとも90%同一である。多くの実施形態において、上記選択する工程は、マーカーが参照標準活性よりも活性である細胞を選択することを包含する。
【0009】
競合因子は、しばしば、参照結合対メンバーであるが、同族結合パートナーに同様に(すなわち、匹敵する親和性で)結合するアナログでもあり得る。しばしば、この参照結合対メンバーは、抗体、特に単鎖抗体である。このような実施形態において、フラグメントAに連結された試験結合対メンバーは、代表的に、単鎖抗体である。
【0010】
この参照結合対メンバーはまた、抗体以外のペプチドまたは結合ドメインであり得る。例えば、参照結合対メンバーは、レセプターのペプチドアゴニストまたはペプチドアンタゴニストであり得る。
【0011】
他の実施形態において、フラグメントBに連結された同族結合パートナーは、限定された濃度で発現され、競合因子は、この同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdと等価な濃度を上回る量で発現され、そして細胞集団において発現された、フラグメントAに連結された試験結合対メンバーの濃度は、フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度と実質的に同じである。しばしば、フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度は、競合因子の濃度の10分の1未満であり、そしてこの競合因子は、この同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdと等価な濃度を約10倍上回る量である。
【0012】
いくつかの実施形態において、この競合因子は、細胞集団に導入される競合因子をコードする核酸配列を含む発現ベクターから発現される。しばしば、この競合因子およびマーカーのフラグメントBに連結された同族結合パートナーは、1つの発現ベクターにコードされ、そして単一のプロモーター(例えば、trp−lacプロモーター)からジシストロン転写物として発現され得る。
【0013】
本発明の方法の実施において、細菌細胞集団は、しばしばグラム陰性細菌であり、そしてこのマーカーは、単一ペプチドを含む。
【0014】
別の局面において、本発明は、細菌細胞を提供し、この細菌細胞は、マーカーのフラグメントAに連結された試験結合対メンバーのライブラリーのメンバーをコードする核酸配列を含む発現ベクター;マーカーのフラグメントBに連結された同族結合パートナーをコードする核酸配列を含む発現ベクター(ここで、このマーカーは、フラグメントAとフラグメントBとが近位である場合に活性である);および同族結合パートナーに対する結合について参照結合対メンバーと競合し、そしてこの参照結合対メンバーの親和性と少なくとも等しい、同族結合パートナーについての親和性を有する競合因子、を含む。しばしば、この競合因子は、参照結合対メンバーである。
【0015】
細菌細胞のいくつかの実施形態において、この参照結合対メンバーは、抗体、特に単鎖抗体である。フラグメントAに連結された試験結合対メンバーもまた、単鎖抗体であり得る。
【0016】
さらに、フラグメントBに連結された同族結合対メンバーは、限定された濃度でこの細菌細胞において発現され得、競合因子は、同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdを上回る量で発現され得、そして細胞集団において発現されたフラグメントAに連結された試験結合対メンバーの濃度は、フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度と実質的に同じであり得る。しばしば、フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度は、競合因子の濃度の10分の1未満である。この競合因子はまた、この同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdを約10倍上回り得る。
【0017】
細菌細胞のいくつかの実施形態において、この競合因子は、この競合因子をコードする核酸配列を含む発現ベクターから発現される。しばしば、この競合因子およびマーカーのフラグメントBに連結された同族結合パートナーは、1つの発現ベクターにコードされ、そしてこの競合因子およびフラグメントBに連結された同族結合パートナーは、単一のプロモーター(例えば、trp−lacプロモーター)からジシストロン転写物として発現される。
【0018】
さらに、この細菌細胞は、グラム陰性細菌であり得、そしてこのマーカーは、単一ペプチドを含み得る。
【0019】
本発明は、細胞に選択可能な表現型(例えば、色、特定の抗生物質の存在下で増殖する能力、または増殖のために特定の栄養素前駆体を利用する能力)を付与する、任意のレポーター系を用いて使用され得る。これらの系において、レポーターシグナル生成は、異種の結合対パートナーの相互作用に依存してなされる。例えば、同族結合対メンバーに対する競合因子の結合が、レポーターの不活化を生じる様式で、1以上のサブユニットが、結合対メンバーおよび/または競合因子に連結される、マルチマーレポーターが使用され得る。試験結合対メンバーを、同族結合対メンバーに対する結合について競合し、それによってレポーターを活性化する能力によって同定する。
【0020】
親和性成熟のための細胞ベースの系は、インビトロの系(例えば、このような適用のためのバクテリオファージディスプレイ)を超える有意な利点を有する。インビトロでの系において、ファージ上にディスプレイされた、試験結合対メンバーの集団は、例えば、限定された量の固定同族結合パートナーに対する結合について、溶液中で競合し得る。同族結合パートナーに結合するこれらの試験結合対メンバーは、結合しない試験結合対メンバーからの、容易な物理的分離によって、回収され得る。しかし、親和性単独による競合は、インビトロでは不可能である。なぜなら、集団中の圧倒的に豊富な低親和性改変体が、必然的に限定された同族結合パートナーを飽和し、それによって、この集団においてまれな高親和性改変体が選択されるのを必然的に妨げるからである。細胞ベースの系のみが、親和性単独による真の競合を可能にし得る。なぜなら、これらは、試験結合対メンバーを互いに競合させず、競合因子とのみ競合させるからである。各試験結合対メンバーを発現する細胞は、選択について、互いに競合せず、他の細胞とも競合しない。これらは単に、その表現型(生存率または色などのいずれか)の強度に基づいて選択される。各試験結合対メンバーは、細胞内に同じ豊富さで存在するので、その表現型強度(すなわち、レポーター活性)は、その豊富さに依存し得ず、その親和性のみに依存する。従って、細胞ベースの系において、試験結合対メンバーは、その豊富さに基づいて選択され得ないが、親和性にのみ基づいて選択される。
【0021】
(定義)
「結合対メンバー」とは、結合パートナーとの特異的な結合相互作用に関与する分子をいい、これは、「第2の結合対メンバー」または「同属結合パートナー」ともいわれる。結合対としては、抗体/抗原、レポーター/リガンド、ビオチン/アビジンおよびロイシンジッパーなどのような相互作用タンパク質ドメインが挙げられる。本明細書中で使用される結合対メンバーは、結合ドメイン(すなわち、結合パートナーに特異的に結合するタンパク質の部分配列)であり得る。
【0022】
用語「相互作用」または「相互作用する」は結合対メンバーの相互作用を参照する場合、互いに特異的に結合することをいう。
【0023】
「参照結合対メンバー」は、実行者がより高い親和性結合アナログ(すなわち、「改善された」結合対メンバー)を獲得することを望む、公知の結合対メンバーである。
【0024】
「親和性の成熟した」または「改善された」結合対メンバーは、最初の参照結合対メンバーの同じ部位に結合する結合対メンバーであるが、その部位に対して高い親和性を有する。
【0025】
結合親和性は一般的に、平衡結合定数または解離定数(それぞれ、KaまたはKd)と表わされ、これは言い換えると、解離速度定数と結合速度定数(それぞれ、kaまたはkd)の相互比である。したがって、等価な親和性は速度定数の比が同じのままであるかぎり、異なる速度定数に一致し得る。
【0026】
「ドメイン」とは、タンパク質またはタンパク質複合体のユニットをいい、ポリペプチド配列、完全なポリペプチド配列またはそのユニットが既定された機能を有する複数のポリペプチド配列を含む。機能は広く特定され、触媒活性である結合パートナーに結合し得るか、タンパク質の構造に関して安定な効果を有し得ることが理解される。「ドメイン」はまた、1つ以上のポリペプチド配列を含むタンパク質またはタンパク質複合体の構造ユニットをいい、ここで、このユニットは、ネガティブタンパク質のより大きな構造中で認識可能な、規定された構造を有する。このドメイン構造は、これが自立性を形成する能力を有し得、そしてネイティブタンパク質の内容物の外側で安定なままである点で、半自立性であることが理解される。
【0027】
「相補フラグメント」とは、それ自身のレポーター活性を欠くレポーター分子フラグメントであるが、レポーター活性を回復するために、別の相補フラグメントに機能的と再会合し得る。しばしば、本発明の方法および系は、酵素レポーター分子を使用する。従って、相補フラグメント対は、酵素活性を再構成するために機能的に再会合し得る。
【0028】
レポーター系の「メンバー」または「構成要素」は、レポーター分子、レポーター分子のフラグメントまたは部分配列、レポーター分子のサブユニットまたは他のレポーター分子のアクチベーターもしくはインヒビターをいう。
【0029】
「連結(結合)(link)」または「結合(join)」とは、ペプチドを機能的に結合する(connect)任意の方法であり、以下が挙げられるが制限されない:組換え融合、共有結合(binding)、ジスルフィド結合、イオン結合、水素結合および静電結合。本発明の系において、結合対メンバーは、代表的に組換えDNA技術を用いてそのN末端もしくはC末端または対両方で、レポーター分子またはレポーター分子のアクチベーターもしくはインヒビターに融合される。このレポーター分子は完全なポリペプチドあるいはそのフラグメントまたは部分配列であり得る。例えば、結合対メンバーは、レポーター分子の相補フラグメントに結合され得る。結合対メンバーは、これに結合されるフラグメントに直接隣接し得るか、または間接的(例えば、リンカー配列を介して)に結合し得るかのいずれかである。
【0030】
「融合」とは、共有結合による結合をいう。
【0031】
「リンカー」または「スペーサー」とは、2つの分子(例えば、結合対メンバーおよびレポーター分子の相補フラグメント(例えば、酵素)に結合し、そして好ましい構造(例えば、その結果、レポーター分子のフラグメントが、結合対メンバーからの最小の立体障害で相補フラグメントと相互作用し得、そして結合対メンバーが、レポーターフラグメントから最小の立体傷害で結合パートナーに結合し得る)において2つの分子を配置するのに役立つ、2つの分子を結合する分子または分子の群をいう。
【0032】
タンパク質の一部分を言及して使用される場合、「異種」とは、タンパク質が自然状態で互いに同じ関係を見い出せない2つ以上のドメインを含むことを示す。このようなタンパク質(例えば、融合タンパク質または結合タンパク質)は、新しい機能タンパク質を作るために配列される関連のないタンパク質に由来する2つ以上のドメインを含む。
【0033】
「抗体」とは、抗原に特異的に結合しそして認識する免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメント由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドをいう。認識された免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμの定常領域遺伝子ならびに種々の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεに分類され、これらは順に免疫グロブリンクラス(それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE)と定義される。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造的ユニットは4量体含む。各4量体はポリペプチド鎖の2つの同一の対(各対は1つの「軽鎖」(約25kDa)および1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する)から構成される。各鎖のN末端は、約100〜110またはそれ以上のアミノ酸(抗原認識を主に担う)の可変領域を規定する。用語可変領域軽鎖(VL)および可変領域重鎖(VH)は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖の可変領域をいう。
【0034】
抗体は、例えば、インタクトな免疫グロブリンとしてか、または種々のペプチダーゼを用いる消化によって生成される十分に特徴付けられた多くのフラグメントとして存在する。したがって、例えばペプシンは、F(ab)’2を生成するヒンジ領域において、ジスルフィド結合(linkage)未満に抗体を消化する。これは、それ自身がジスルフィド結合によってVH−CH1に結合される軽鎖であるFabの2量体である。このF(ab)’2は、ヒンジ領域においてジスルフィド結合を破壊する穏やかな条件下で減少し得る。それによって、F(ab)’2 2量体はFab’単量体に転換する。Fab’単量体は本質的にヒンジ領域の一部分を有するFabである(Fundamental Immunology(Paul ed.,3d ed.1993を参照のこと)。種々の抗体フラグメントはインタクトな抗体の消化という点で規定され、当業者はこのようなフラグメントが、しばしば組換えDNA方法論を用いてデノボで合成され得ることを理解する。従って、用語抗体とは、本明細書中で使用される場合、抗体全体の改変によって生成される抗体フラグメント、組換えDNA方法論を用いてデノボで合成される抗体フラグメント(例えば、単鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを用いて同定される抗体フラグメント(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990)を参照のこと)のいずれかを含む。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「単鎖抗体」とは、ポリペプチド結合におけるVHドメインおよびVLドメインを含むポリペプチドをいい、一般的に、スペーサーペプチド(例えば、[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]x)を介して結合し、そしてこれは、アミノ末端および/またはカルボキシ末端でさらなるアミノ酸配列を含み得る。例えば、単鎖抗体はコードポリヌクレオチドに結合するためのデザーセグメントを含み得る。例として、scFvは単鎖抗体である。単鎖抗体は一般的に免疫グロブリンスーパーファミリーの遺伝子によって実質的にコードされる少なくとも10の連続したアミノ酸の1つ以上のポリペプチドセグメントからなるタンパク質であり(例えば、The Immunoglobulin Gene Superfamily,A.F.WilliamsおよびA.N.Barclay,Immunoglobulin Genes,T.Honjo,F.W.Alt,ならびにT.H.Rabbitts,eds.,(1989)Academic Press:San Diego,Calif.,pp.361−387を参照のこと、これらは参考として本明細書中に援用される)、最も頻繁には、げっ歯類、非ヒト霊長類、トリ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギまたはヒト重鎖もしくは軽鎖の遺伝子配列によってコードされる。機能的単鎖抗体は一般的に、特異的な標的分子、代表的にはレセプターまたは抗原(エピトープ)に結合する特性を保持するように、免疫グロブリンスーパーファミリー遺伝子産物の十分な部分を含む。単鎖抗体の生成のための技術(米国特許第4,946,778号)は、本発明の使用のための抗体を生成するために適用され得る。
【0036】
用語「選択系の成分を発現する(こと)」とは、選択系のメンバーをコードする発現ベクターによって含まれる核酸配列が発現される条件下で、細胞集団を培養することをいう。
【0037】
用語「作動可能に結合される」とは、核酸に対して言及される場合、機能的関係においてポリヌクレオチドエレメントの結合をいう。核酸が別の核酸配列と機能的関係に配置される場合、核酸は「作動可能に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響する場合、コード配列に作動可能に連結される。作動可能に連結されるとは、連結しているDNA配列が代表的に連続していることを意味し、ここで2つのタンパク質コード領域を連続して、かつリーディングフレームで結合することが必要である。
【0038】
(発明の詳細な説明)
(序文)
本発明は、改善された結合対メンバー(すなわち、参照結合対メンバーの親和性よりも、同族の結合対メンバーに対してより高い親和性を有する結合対メンバー)を選択するための検出系を提供する。本明細書中に開示される方法および系において、4つの構成要素を含む系が、改善された結合対メンバーを検出するために使用される。この系は代表的に以下を含む:宿主細胞(通常には細菌)、試験結合対メンバーのライブラリー(これらの各々はレポーター系のメンバー(例えば、レポーター分子の相補フラグメントの1つ)に融合される);レポーター系の別のメンバーに融合した同族の結合パートナー(例えば、レポーター分子の他の相補フラグメント);および結合の「競合因子」(これは親和性についての選択のストリンジェンシーを高めるために融合タンパク質として同じ細胞において発現される)。競合因子は、結合パートナーに対する結合について結合対メンバーと競合する任意の分子であり得るが、好ましくはタンパク質であり、そして代表的には、抗体または改善することが望ましい他の結合タンパク質である。
【0039】
競合因子は、細胞において、同族の結合パートナー融合分子のほとんどに結合するようなレベルで発現される。それによって、同じかまたはより低い親和性である試験結合対メンバーの結合を防ぐ。競合因子よりもより高い親和性の試験結合対メンバーが存在する場合、レポーター分子の活性は再構成される。例えば、レポーターメンバーとして相補フラグメントを使用する系において、親和性のより高い試験結合対メンバーは、同族の結合パートナーに結合し、それによって、レポーター活性を生じる相補フラグメントを提供する。
【0040】
(結合対)
多くの結合対が本発明に有用である。しばしば、結合対は、別個の結合部位で互いに特異的に相互作用するポリペプチドである。結合対の1つのメンバーは、レポーター分子の相補フラグメントの1つを有する融合タンパク質に組み込まれ得る。結合対の他のメンバーは、他のフラグメントを有する融合タンパク質に組み込まれ得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、結合対は代表的に抗体および抗原であるが、特異的結合パートナーを有する他のタンパク質(例えば、相互作用する酵素サブユニット、レポーターおよびそのリガンド、細胞内シグナル伝達および遺伝子調節に相互作用するタンパク質(例えば、転写因子c−fosおよびc−junなど))でもあり得る。
【0042】
タンパク質ではないメンバーを含む結合パートナーもまた使用され得る。例えば、低分子結合因子は、ビオチンのような化学的タグにこれらを結合体化することによって使用され得る。このような結合体は、代表的に、細菌ペリプラズム中に自由に拡散し得、これらを、より高い親和性の試験結合パートナーについてスクリーニングするための同族の結合パートナーとして使用し得る。例えば、試験結合パートナーは、タグに結合するタンパク質(例えば、ビオチンタグに対するアビジンまたはストレプトアビジン)に連結され得る、フラグメントAおよびフラグメントBに結合され得る。試験結合対メンバーが低分子同族結合パートナーに結合し、そして連結されたタグがタグ−結合因子に結合する場合、フラグメントは近接され、そして酵素は活性化される。競合因子の存在において、生じる酵素活性および依存する表現型は、試験結合対メンバーの親和性に比例し、それによって、目的の低分子の高親和性結合因子の選択についての基礎を提供する。
【0043】
(レポーター系)
多くのレポーター系は本発明において使用され得る。一般的な型のレポーター系は、レポーターのフラグメントまたはサブユニットの相補に基づき、ここでレポーター活性は、再構成されたレポーターの相補的なフラグメントまたはサブユニットの相補性から生じる。レポーター活性とは、種々の任意の検出可能な表現型(例えば、スクリーニング可能かまたは選択可能な表現型(例えば、色、抗生物質に対する耐性、蛍光、特定の基質の存在または非存在における増殖など))をいう。レポーター系において使用され得るタンパク質フラグメントの例示は、WO00/71702に提供されている。このようなレポーター系において、フラグメント対は、検出可能なシグナルを有するマーカータンパク質に再会合する。
【0044】
相補フラグメント対レポーター系において、フラグメント対は、代表的に、マーカータンパク質のアミノ末端およびカルボキシ末端のフラグメントから構成される。フラグメントが、このフラグメントが連結されている結合対メンバーの相互作用によって近接される場合、レポーター活性が再構成される。選択またはスクリーニングのために使用され得る、多くの酵素媒介性の表現型変化が存在するように、酵素は、特に有用なマーカータンパク質であり得る。本発明において使用されるレポーター系のための、フラグメント対中に展開され得る酵素レポーターとしては、抗生物質耐性を提供する酵素(特にβ−ラクタマーゼ)が挙げられる。使用され得る他の抗生物質耐性酵素としては、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(例えば、ネオマイシン、ホスホトランスフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼおよびテトラサイクリン耐性タンパク質)が挙げられる。
【0045】
可視の表現型変化(例えば、色の変化または蛍光発光)を直接誘発する他のタンパク質もまた、相補フラグメントレポーター系の生成において使用され得る。このようなタンパク質の例としては、β−ガラクトシダーゼおよび緑色蛍光タンパク質または他の関連した蛍光タンパク質が挙げられる。
【0046】
抗生物質耐性タンパク質β−ラクタマーゼは、レポーター分子としてしばしば使用される。特にβ−ラクタマーゼフラグメント対は、α197/ω198対によって例示される。他のβ−ラクタマーゼもまた、WO/0071702に記載される技術を使用して誘導され得る。
【0047】
細菌細胞上に選択可能な表現型を与える他のレポーター系もまた、細胞ベースの競合的親和性成熟について適用され得る。例えば、酵素的または色素生産的な活性を有する多量体レポータータンパク質は、種々の構成において使用され得、ここでレポーターは、同族結合パートナーに対する競合因子の結合によって不活性化され、そして参照結合対メンバーの親和性よりも、同属結合対メンバーに対してより高い親和性を有する試験結合対メンバーの存在下で再び活性化される。例えば、β−ガラクトシダーゼはホモ4量体酵素であり、これは色素産生性または蛍光産生性の基質の存在下で、細胞において発現される場合、選択可能な色表現型を産生し得る。そのサブユニットに融合された異種ドメインの相互作用によって引き合わされた場合にのみ、活性酵素に会合するβ−ガラクトシダーゼの変異体サブユニットが記載されている(Rossi et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:8405−8410,1997.)。試験結合対メンバーライブラリーおよび同族結合パートナーに融合され、そして競合因子の存在下で同時発現させた場合、このβ−ガラクトシダーゼサブユニットレポーター系は、高親和性試験結合対メンバーを選択するために、β−ラクタマーゼフラグメント相補性系(本明細書中でまた記載されている)と同じ様式において使用され得る。
【0048】
コントロールにおいて観察されるレベルを超えて、活性が増強される場合、レポーターの活性化が生じる。しばしば、活性化は、その検出系において参照結合対メンバーを用いて規定されるネガティブコントロールに存在する参照レベルの活性と比較して決定される。以下にさらに詳細に記載するように、ネガティブコントロール系は、活性の参照レベルより高いレポーターの活性化が、参照結合対メンバーの親和性よりも、同族結合対パートナーに対してより高い結合親和性の結合対メンバーの存在を反映するように設計される。
【0049】
(競合因子)
本発明の系および方法は、親和性選択を行うための選択系における競合因子を含む。多くの実施形態において、競合因子は、参照結合対メンバー(すなわち、実行者が高い親和性結合アナログを獲得することを望む、既知の結合対メンバー)である。本明細書中で使用される場合、アナログは、その結合対メンバーと同じ、同族結合パートナー(例えば、抗原)の部位に結合するが、その結合部位に同一配列を有さない。
【0050】
当業者によって理解されるように、細胞ベースの競合的親和性成熟は、反復プロセスであり、ここで所定のラウンドで選択される最も高い親和性の試験結合対メンバーは、次のラウンドについての参照結合対メンバーになる。一般的に、次のラウンドの競合因子は、参照結合対メンバーと同一である。しかし、参照結合対メンバーは、競合因子として使用されるために改変され得る(例えば、参照結合対メンバーの正確な結合ドメインのみを保持し、そしてさらなる改変を伴うことなくそれを発現させることによるか、または競合因子に所望の特性(例えば、安定性)を与え得る他のドメインへの融合させてそれを発現させることによる)。
【0051】
競合因子は、親和性の成熟が生じる細胞集団に多くの方法において提供される。例えば、競合因子は、別個の発現ベクターにコードされ得るか、または同族結合融合タンパク質とともにジスシストロン(discistronic)の成分として含まれ得る。競合因子はまた、宿主細胞において構成的に存在するか、またはそうでなければ、例えば、誘導可能に発現され得る。
【0052】
(系成分をコードする発現系の生成)
本発明の系において発現されるポリペプチドをコードする核酸は、組換え遺伝子学の分野において日常的な技術を用いて得られ得る。本発明において使用される一般的な方法を開示する基礎的なテキストとしては、SambrookおよびRussell,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL(3rd ed.2001)ならびにCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Ausubel et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.1994−1997,2001version))が挙げられる。
【0053】
しばしば、相補レポーターフラグメントまたは結合対メンバー(または結合対メンバーの結合ドメイン)をコードする核酸配列は、cDNAライブラリーからプローブを用いるハイブリダイゼーションによってクローン化されるか、またはオリゴヌクレオチドプライマーを用いる増幅技術を用いて単離される。増幅技術はまた、配列を増幅および単離するために使用され得る(例えば、Dieffenfach & Dveksler,PCR Primers:A Laboratory Manual(1995)を参照のこと)。あるいは、重複したオリゴヌクレオチドが、1つ以上のドメインを生成するために合成的に生成され、そして連結され得る。
【0054】
インビトロでの増幅方法を当業者に導くに十分な技術の例は、以下に見出される:Berger,Sambrook,およびAusubel,ならびにMullis et al.,(1987)米国特許出願第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innis et al.,eds)Academic Press Inc.San Diego,CA(1990)(Innis);Arnheim & Levinson(October 1,1990)C & EN 36−47;The Journal Of NIH Research(1991)3:81−94;(Kwoh et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173;Guatelli et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,1874;Lomell et al.(1989)J.Clin.Chem.,35:1826;Landegren et al.,(1988)Science 241:1077−1080;Van Brunt(1990)Biotechnology 8:291−294;WuおよびWallace(1989)Gene 4:560;ならびにBarringer et al.(1990)Gene 89:117。
【0055】
(融合ポリペプチド、試験結合対メンバーおよび競合因子を発現させるための発現カセットおよび宿主細胞)
融合ポリペプチド、試験結合対メンバーおよび競合因子を生成するための多くの発現系が存在する。これらの系は当業者に周知である(例えば、GENE EXPRESSION SYSTEMS,Fernandez and Hoeffler,Eds.Academic Press,1999を参照のこと)。代表的に、発現されるべきポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、所望の宿主細胞において機能的であるプロモーターの制御下に配置される。種々のプロモーターが利用可能であり、特定の用途に依存して本発明の発現ベクターにおいて使用され得る。一般的に、プロモーターの選択は、そのプロモーターが活性である細胞に依存する。他の発現制御配列(例えば、リボソーム結合部位、転写終結部位など)もまた、必要に応じて含まれる。1つ以上のこれらの制御配列を含む構築物は、「発現カセット」と称される。したがって、連結されたポリペプチドをコードする核酸が、所望の宿主細胞において発現させるために組み込まれる。
【0056】
本発明の融合ポリペプチドは、種々の宿主細胞において発現され得る。しばしば、細菌宿主および発現系(特に、グラム陰性細菌(例えば、E.coli))が使用されるが、他の系(例えば、酵母、昆虫、真菌、植物、鳥類または哺乳動物の発現系)もまた使用され得る。特定の宿主細胞における使用に適切な発現制御配列は、当業者に周知である。一般的に使用される原核生物制御配列(これらは、リボソーム結合部位配列と共に、転写開始のためのプロモーター(必要に応じて、オペレーターを有する)を含むことが、本明細書中で定義される)としては、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プロモーター系(Changeら、Nature(1977)198:1056)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、Nucleic Acids Res.(1980)8:4057)、tacプロモーター(DeBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1983)80:21−25)、ハイブリッドtrp−lacプロモーター、バクテリオファージT7プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、ならびにλ由来PLプロモーターおよびN−遺伝子リボソーム結合部位(Shimatakeら、Nature(1981)292:128)のような、一般的に使用されるプロモーターが挙げられる。
【0057】
ファージミドベクターもまた、例えば、レポーター系の相補フラグメントの1つに融合される試験結合対メンバーのライブラリーを構築するために使用され得る。このようなベクターは、一本鎖線状バクテリオファージ(例えば、M13またはfl)のゲノム由来のDNA複製起点を含む。ファージミドは、従来のプラスミドベクターと同様に使用され得るが、DNAのクローン化セグメントの一本鎖コピーを含む線状バクテリオファージ粒子を生成するためにも使用され得る。
【0058】
原核生物において機能する任意の利用可能なプロモーターが、使用され得るが、特定のプロモーター系が、以下にさらに説明されるように、最適な発現のために選択され得る。標準的な細菌発現ベクターとしては、pBR322ベースのプラスミド(例えば、pBLUESCRIPTTM、pSKF、pET23D)のようなプラスミド、λファージ由来ベクター、および融合発現系(例えば、GSTおよびLacZ)が挙げられる。エピトープタグもまた、組換えタンパク質に付加され、簡便な単離方法を提供する(例えば、c−myc、HA−タグ、6−Hisタグ、マルトース結合タンパク質、VSV−Gタグ、抗−DYKDDDDKタグ、または任意のこのようなタグ(これらの多くは、当業者に周知である))。
【0059】
E.coli以外の原核生物細胞における融合ポリペプチドの発現のために、特定の原核生物種において機能するプロモーターが必要とされる。このようなプロモーターは、これらの種からクローニングされた遺伝子から得られ得るか、または異種プロモーターが使用され得る。例えば、ハイブリッドtrp−lacプロモーターは、E.coliに加え、Bacillusにおいて機能する。これらおよび他の適切な細菌プロモーターは、当該分野で周知であり、そして例えば、SambrookらおよびAusubelらにおいて記載される。本発明のタンパク質を発現させるための細菌発現系は、例えば、E.coli、Bacillus sp.およびSalmonellaにおいて利用可能である(Palvaら、Gene 22:229−235(1983);Mosbachら、Nature 302:543−545(1983))。このような発現系のためのキットは、市販されている。
【0060】
構成的プロモーターまたは調節性プロモーターのいずれかが、本発明において使用され得る。調節性プロモーターが有利である。なぜなら、宿主細胞が高密度にまで増殖され得、その後、融合ポリペプチドの発現が誘導されるからである。異種タンパク質の高レベルの発現は、いくつかの状況下で細胞増殖を遅らせる。誘導性プロモーターは、遺伝子の発現を指向するプロモーターであり、その発現のレベルが、環境的要因または発生的要因(例えば、温度、pH、嫌気条件または好気条件、光、転写因子および化学物質のような)によって変化し得る。
【0061】
E.coliおよび他の細菌宿主細胞について、誘導性プロモーターは、当業者に公知である。これらには、例えば、lacプロモーター、バクテリオファージλPLプロモーター、ハイブリッドtrp−lacプロモーター(Amannら(1983)Gene 25:167;de Boerら(1983)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 80:21)およびバクテリオファージT7プロモーター(Studierら(1986)J.Mol.Biol.;Taborら(1985)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 82:1074−8)が挙げられる。これらのプロモーターおよびこれらの使用は、Sambrookら(前出)において議論される。
【0062】
いくつかの適用において、真核生物発現系が、本発明の方法の実施において使用され得る。例えば、酵母発現系は、当該分野で周知であり、そしてこれらもまた、使用され得る。酵母において、ベクターとしては、酵母組み込みプラスミド(例えば、Ylp5)および酵母複製プラスミド(YRpシリーズプラスミド)およびpGPD−2が挙げられる。
【0063】
真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含む発現ベクターは、真核生物発現ベクターにおいて代表的に使用される(例えば、SV40ベクター、パピローマウイルスベクター、およびエプスタイン−バーウイルス由来のベクター)。他の例示的な真核生物ベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、以下のプロモーターの指向下でのタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが挙げられる:CMVプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核生物細胞における発現に効果的であることが示されている他のプロモーター。真核生物についての誘導性プロモーターもまた、当業者に周知である。これらとしては、例えば、メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーター、他多数が、挙げられる。
【0064】
翻訳連結(translational coupling)が、発現を増強するために使用され得る。このストラテジーは、その翻訳系に対してネイティブな高度に発現される遺伝子由来の短い上流オープンリーディングフレーム(これは、プロモーターの下流に配置される)、およびリボソーム結合部位、それに続く、数アミノ酸コドン後の終止コドン、を利用する。終止コドンの直前に、第2のリボソーム結合部位が存在し、その終止コドンの後に、翻訳開始の開始コドンが存在する。この系は、RNAの二次構造を解消し、これが、翻訳の効率的な開始を可能にする。Squiresら(1988)J.Biol.Chem.263:16297−16302を参照のこと。
【0065】
ポリペプチドは、細胞内で発現され得るか、あるいは細胞から分泌され得るか、またはペリプラズム空間内に分泌され得る。従って、発現構築物は、その発現されたタンパク質の分泌を可能にするための配列(例えば、リーダー配列またはシグナル配列)を含む。
【0066】
発現されたポリペプチドの精製を容易にするために、融合ポリペプチドをコードする核酸はまた、エピトープまたは「タグ」(これに対するアフィニティー結合試薬が利用可能である)のコード配列を含み得る。適切なエピトープの例としては、mycおよびV−5レポーター遺伝子が挙げられ;これらのエピトープを有する融合ポリペプチドの組換え産生に有用な発現ベクターが、市販されている(例えば、Invitrogen(Carlsbad CA)ベクターpcDNA3.1/Myc−HisおよびpcDNA3.1/V5−Hisは、哺乳動物細胞における発現に適切である)。本発明の融合タンパク質に対してタグを結合するために適切なさらなる発現ベクター、および対応する検出系は、当業者に公知であり、そしていくつかが、市販されている(例えば、FLAG”(Kodak、Rochester NY)。適切なタグの別の例は、ポリヒスチジン配列であり、これは、金属キレートアフィニティーリガンドに結合し得る。代表的には、6つの隣接ヒスチジンが使用されるが、6つより多いものまたは少ないものが使用され得る。ポリヒスチジンタグに対する結合部分として作用し得る適切な金属キレートアフィニティーリガンドとしては、ニトリロ−トリ−酢酸(NTA)(Hochuli,E.(1990)「Purification of recombinant proteins with metal chelating adsorbents」In Genetic Engineering:Principles and Methods,J.K.Setlow編、Plenum Press,NY;Qiagen(Santa Clarita,CA)から市販されている)が挙げられる。
【0067】
当業者は、発現されるポリペプチドのレポータードメインおよび結合ドメインに対して、それらのポリペプチドの生物学的活性を減少することなく、改変がなされ得ることを認識する。いくつかの改変が、クローニング、発現、または融合タンパク質へのドメインの組み込みを容易にするためになされ得る。このような改変は、当業者に周知であり、そしてこれらには、例えば、結合ドメインをコードするポリヌクレオチドのいずれかの末端でのコドンの付加(例えば、そのアミノ末端にメチオニンの付加を提供し、開始部位を提供するため)、またはいずれかの末端でのさらなるアミノ酸(例えば、ポリHis)の配置(都合よく配置された制限部位または終止コドンあるいは精製配列の作製のため)が挙げられる。
【0068】
(融合タンパク質の構築)
本明細書中に記載される融合タンパク質のレポーター系のメンバー(例えば、レポーター系の相補フラグメント)および結合ドメインは、直接的または間接的(しばしば、可撓性リンカーを介して)に連結され得る。特定の実施形態において、融合タンパク質の各ポリペプチドのコード配列は、ペプチド結合を介して、それらのアミノ末端またはカルボキシ末端で任意の順序で直接的に連結される。
【0069】
あるいは、アミノ酸リンカー配列を使用して、第1のポリペプチド成分および第2のポリペプチド成分を、各ポリペプチドがその二次構造および三次構造にフォールディングされるのを確実にするのに十分な距離、離れさせ得る。このようなアミノ酸リンカー配列は、当該分野で周知の標準的な技術を使用して、融合タンパク質に組み込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の要因に基づいて選択され得る:(1)それらが、可撓性の広がったコンフォメーションをとる能力を有すること;(2)それらが、第1のポリペプチド上および第2のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用し得る二次構造をとる能力を有さないこと;および(3)ポリペプチドの機能的エピトープと反応し得る疎水性残基または荷電残基の欠失。代表的なペプチドリンカー配列は、Gly、Ala、ValおよびThr残基を含む。他のほぼ中性のアミノ酸またはヘテロ原子を有する極性残基(例えば、SerおよびMet)もまた、使用され得る。リンカーとして有効に使用され得るアミノ酸配列としては、以下に開示されるアミノ酸配列が挙げられる:Marateaら(1985)Gene 40:39−46;Murphyら(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258−8262;米国特許第4,935,233号および同第4,751,180号。リンカー配列は、一般に、1〜約50アミノ酸長(例えば、3、4、5、6、または10、15、20、25、30、35、40、45)、またはそれ以上のアミノ酸長であり得る。しばしば、リンカーは、15アミノ酸長である。リンカー配列は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドが、非必須のN末端アミノ酸領域を有し、それらが、機能的ドメインを分離しそして立体障害を妨げるために使用され得る場合、必要としなくてよい。
【0070】
最も頻繁には、結合パートナーは、タンパク質であるが、結合パートナーは、タンパク質でなくてもよい。従って、他の融合方法もまた、使用され得る。ドメインを連結する他の方法としては、化学的結合体化、イオン結合などの方法(陰性および陽性のテールを発現させることによる)、および間接的結合体化(ストレプトアビジン−ビオチン相互作用のような手段を介する(例えば、Bioconjugate Techniques、前出を参照のこと))が挙げられる。例えば、小さい分子が、N結合型、O結合型またはS結合型のスペーサーを介してビオチンに対して化学的に結合体化され得、このような結合体が、培地からペリプラズム内に容易に拡散し得る。次いで、α197フラグメントに融合された結合タンパク質ライブラリーが、ω198フラグメントに融合されたアビジンと共発現され得、その結果、アビジン−ω198融合体に対する抗原上のビオチン部分の結合が、任意の結合因子−抗原相互作用を相補し、活性なβ−ラクタマーゼの再構成を駆動し、それによって、抗生物質の存在下での抗原結合因子を発現する細胞の増殖を可能にする。これらのドメインはまた、中間の配列を介して共に連結され得る。
【0071】
(試験結合対メンバーのライブラリー)
改善された結合対メンバーの選択に使用される、試験結合対メンバーのライブラリーは、当該分野で公知の多くのベクターおよび方法を使用して生成される。このライブラリーは、多くのベクター(例えば、上記のベクター)を使用して発現され得る。しばしば、このライブラリーベクターは、ファージミドである。
【0072】
試験結合対メンバー(これは、代表的には、レポーター系のメンバーの1つに融合される)(例えば、相補フラグメント)は、しばしば、抗体である。従って、発現ライブラリーは、免疫グロブリン(Ig)の重鎖および軽鎖可変領域のエピトープ結合部分をコードするDNA配列を含み得る:例えば、Marks、J.Biol.Chem.267:16007−10、1992;Griffiths、EMBO J.12:725−734,1993。あるいは、提示されるタンパク質は、単鎖(scFv)Igフラグメントであり得る(例えば、Pistillo Exp.Clin.Immunogenet.14:123−130、1997を参照のこと)。
【0073】
試験結合対メンバーのライブラリーの生成において、試験結合対メンバーの結合ドメインは、代表的には、参照結合対メンバーの結合ドメインと、数個より多い変異によって異ならない。さもなければ、試験結合対メンバーは、高い親和性を有することによるよりもむしろ、同族結合パートナーに対する非競合的結合によって選択され得る。従って、試験結合対メンバーの結合ドメイン(代表的には、80〜250アミノ酸長)は、しばしば、25アミノ酸(必要に応じて、約50〜100アミノ酸、または結合ドメインの全長)の比較ウィンドウに渡って、参照結合対メンバーの結合ドメインに対する90%より高い(例えば、95%、96%、97%、98%または99%)同一性を有する。
【0074】
配列は、比較ウィンドウにわたる最大の一致について、または以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用することによってか、または手動の整列化および目視検査によって測定した場合の指定された領域について、比較および整列され得る。配列比較のために、代表的には、1つの配列が、参照配列として作用し、それに対して、試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列は、コンピューターに入力され、部分配列の座標が指定され(必要な場合)、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが指定される。デフォルトプログラムパラメーターが使用され得るか、または代替的なパラメーターが指定され得る。次いで、配列比較アルゴリズムは、これらのプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性%を計算する。
【0075】
比較ウィンドウは、20〜600、通常には、約50〜約200、より通常には、約100〜約150からなる群より選択される任意の1つの連続する位置数のセグメントに対する言及を含み、このセグメントにおいて、配列が、同じ連続する位置数の参照配列に対して、その2つの配列が最適に整列された後に、比較され得る。比較のために配列を整列化する方法は、当該分野で周知である。比較のための配列の最適な整列は、例えば、以下によって行われ得る:Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性整列化アルゴリズム、Perason & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIの、GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または手動の整列化および目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1995)を参照のこと)。
【0076】
配列同一性%および配列類似性%を決定するために適切なアルゴリズムの別の例は、BLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschulら、Nuc.Acids Res.25:3389−3402(1977)およびAltschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載される。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationから公に入手可能である。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは、その整列化の感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に対する)は、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両鎖の比較を、デフォルトとして使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、3のワード長、および10の期待値(E)、ならびに50のBLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff & Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989))整列(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両鎖の比較を、デフォルトとして使用する。この特許の目的のために、アミノ酸同一性%は、BLASTのデフォルトパラメーターによって決定される。
【0077】
ライブラリーは、ランダムに生成された、試験結合対メンバーのライブラリーであり得る。しばしば、ライブラリーは、変異誘発されたライブラリーである。試験結合対メンバーのライブラリーは、例えば、以下を含む、種々の変異誘発方法を使用して生成され得る:誤りがちな(error−prone)PCR(CadwellおよびJoyce、PCR Primer、A Laboratory Manual、DieffenbachおよびDveksler編、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor NY、583−590頁、1995)、制限的(parsimonious)変異誘発(PM)(BalintおよびLarrick、Gene 137:109−118、1993)、DNAシャッフリング(Crameriら、Nature Biotechnol.14:315−19、1996)、ランダムプライミング組換え(RPR)(Shaoら、Nucleic Acids Res.26:681−683、1998)、またはスタッガード(staggered)伸長プロセス(StEO)(Zhaoら、Nature Biotechnol.16:258−261、1998)。これらの方法(PMを除く)について、代表的は、1クローンあたり1〜3個の変異の変異率を有し、所望でない変異を回避することが望ましい。PMについては、より高い変異率が使用され得る。なぜなら、結合因子のタンパク質結合部位のみが、変異されるからである。従って、PMは、より大きな親和性増分について評価するために有利であり得る。PMは、フォールディング変異体の回避、免疫原性の回避、および配列決定の容易性において、さらなる利点を有する。
【0078】
(親和性選択のための培養条件)
本明細書中に開示される親和性成熟手順は、細菌細胞、代表的には、グラム陰性細菌中で行う。選択は、望ましくは、最適化された条件下で実施される。最適化は、多くの要因(ネガティブコントロールの最適化を含む)を考慮して実施され得る。
【0079】
ネガティブコントロールが確立され、ネガティブコントロールは、代表的には、選択から排除することを所望する最大の親和性(すなわち、改善されるべき結合因子の親和性)である。従って、ネガティブコントロールについて、改善されるべき結合対メンバーは、競合因子として単独で発現されるだけでなく、試験結合対メンバーに代わって、参照結合対メンバーとして発現される。以下のいくつかの条件が、一般に、最適な選択のために考慮される:(1)同族結合パートナー−レポーターフラグメント融合体が制限され(好ましくは、競合因子の濃度の約10分の1未満)、競合因子と試験結合対メンバーとの間の競合を強化する;(2)競合因子は、そのKdと等しい濃度より過剰にあり(好ましくは、10倍)、その結果、同族結合パートナー/レポーターフラグメント融合体が、ネガティブコントロールにおいて少なくとも90%競合因子結合型である;および(3)試験結合対メンバー−レポーターフラグメント融合体の濃度は、同族結合対濃度に匹敵し(すなわち、競合因子の約10%濃度未満)、その結果、ネガティブコントロールが、最大のレポーター活性の約10%未満を有する。これは、約10倍の動的範囲を有する。
【0080】
(系成分の発現レベルの制御)
本発明の方法の実施において、発現のレベルは、代表的には、その系の成分の発現の所望の相対レベルを達成するために制御される。適切な条件は、例えば、図1に例示されるような、選択系の3つの成分を発現することによって達成され得る。競合因子および同族結合パートナー/レポーターフラグメント融合体(例えば、抗原−(β−ラクタマーゼの)αフラグメント融合体)は、強力なプロモーター(例えば、trp−lac融合プロモーター)から二シストロニック転写物で発現され得る。上流のシストロンの転写は、代表的には、下流のシストロンの転写よりも効率的である。このような条件下で、上流のシストロンによってコードされる競合因子は、過剰に存在し、同属の結合パートナー/レポーターフラグメント融合体は、制限される。次いで、相補レポーターフラグメント(例えば、β−ラクタマーゼのωフラグメント)に融合された結合対メンバー(例えば、抗体)が、弱いプロモーター(例えば、lacオペロンプロモーター)から、別の適合性のベクターから発現され得る。これは、同族結合パートナー/レポーターフラグメント融合体に匹敵する量で、結合対メンバー/相補レポーターフラグメント融合体を産生する。
【0081】
このような発現条件が、所定の抗原−抗体対について最適でない場合、さらなる操作が、1以上の成分の発現レベルをさらに制御するために利用可能である。例えば、競合因子発現が弱い場合、より強いプロモーター(例えば、バクテリオファージT7プロモーター)が利用可能である。あるいは、競合因子発現、および結合パートナーの発現もまた、他の手段(例えば、米国特許出願第09/510,097号に開示されるような、フォールド選択(Fold Selection)技術)を使用して、機能性を損なうことなく改善され得る。
【0082】
任意の成分の発現が強すぎる場合、または、その成分間の割合が不適切である場合、誘導性プロモーターが使用され得(例えば、アラビノースオペロンプロモーター)、これらが、任意の成分の発現レベルが適切なレベルに操作されるのを可能にする。例えば、抗原融合体またはscFV融合体の発現は、競合因子の0.1倍に減少され得るか、または競合因子の発現が、そのKdに等しい濃度の10倍に増加され得る。
【0083】
系の成分の発現の全体レベルを評価するために、それらの発現ベクターによって産生されるポリペプチドの量が、アッセイ(例えば、免疫ブロット)を使用して決定され得る。実際、系の成分の発現レベルは、上記の考慮に基づいて、ネガティブコントロールにおいて経験的に確立される。
【0084】
(親和性成熟のための抗体の選択および最適化)
抗体選択および親和性成熟のための本発明の使用の一般的な例を、図2に提供する。この一般的な例は、β−ラクタマーゼ相補フラグメントレポーター系を使用する。2つの融合タンパク質発現ベクターが、同じ細胞において共に発現される場合、抗原−抗体相互作用が、β−ラクタマーゼフラグメントを密接に近接させ、そしてこれが、これらのフラグメントの活性酵素へのリフォールディングを容易にする。この得られたβ−ラクタマーゼ活性は、結合していない抗体−抗原対を発現する細胞を定量的に殺傷する濃度のβ−ラクタマーゼ抗生物質の存在下で、それらの細胞が増殖するのを可能にする。第3の成分、競合因子は、親和性についての選択のストリンジェンシーを増加するために細胞に導入され得る。この競合因子は、抗原への結合について抗体と競合する任意の分子であり得るが、代表的には、改善されるべき抗体またはそのアナログである。
【0085】
この例において、α197(アミノ酸H26〜E197)およびω198(アミノ酸L198〜W288)と示されるβ−ラクタマーゼフラグメント対(これは、それぞれ、そのαおよびω分岐点で分岐点再封鎖ペプチドNGREおよびQGNを用いて増強される)を使用する。本発明の方法において使用され得るこのフラグメント対および他の対は、例えば、WO00/71702に記載される。
【0086】
単鎖Fvフラグメント(scFV)の形態の抗体(例えば、Marksら、Eur.J.Immunol.21:985−991、1991)は、例えば、介在(Gly4Ser)3リンカーを介して、ω198フラグメントのアミノ末端に対する融合体として発現される。抗原もまた、介在(Gly4Ser)3リンカーを介して、α197フラグメントのカルボキシ(分岐点)末端に対する融合体として発現され得る。このscFv−ω198融合体は、プラスミドベクター(例えば、pAO1(クロラムフェニコール耐性を発現し、そして挿入されたコード配列をlacオペロンプロモーターからω198融合体として発現するカセットを含む、pUCファージミドベクター))から発現され得る。α197−抗原融合体は、pAE1(カナマイシン耐性を発現し、そして挿入されたコード配列をtrp−lac融合プロモーター(Sambrook、前出)からα197融合体として発現するためのカセットを含む、p15Aレプリコン)のような、pUC適合性プラスミドベクターから発現され得る。抗体選択のためのこれらの発現構築物を、図3に示す。
【0087】
典型的には、試験結合対メンバーのライブラリー(例えば、scFvの多様な集団)をコードする配列は、ベクター(例えば、pAOlベクター)へとサブクローン化され、適切なE.coli宿主株(例えば、TG−1)へとトランスフェクトされ、そして、ヘルパーファージM13K07を用いた重複感染により、糸状バクテリオファージとしてレスキューされる(図3を参照のこと)。次いで、得られたファージ集団は、αI97融合物として目的の抗原を発現するpAE1ベクターを保有する細胞を定量的に感染するために使用される。
【0088】
感染した細胞の数は、通常は、完全なライブラリーのスクリーニングを確実にするために、scFvライブラリーのサイズの少なくとも10倍である。使用されるファージの数が、少なくとも細胞数の10倍である場合、そしてファージ濃度が、少なくとも1×1012形質転換単位/mlである場合、ほとんどの細胞は、1つより多いファージミドによって感染され、それはまた、抗原に対する抗体ライブラリーの全体的な暴露を提供する。
【0089】
これらの発現条件下で、E.coliペリプラズムにおけるβ−ラクタマーゼフラグメント融合タンパク質の濃度は、0.1〜10μMの範囲であると予想され、これは、細胞1個あたり、10〜1000分子に相当する。従って、マイクロモルのKd範囲における抗体アフィニティーは、β−ラクタマーゼのほぼ10〜90%活性化を生じるか、または1細胞あたり10〜90分子の範囲で活性β−ラクタマーゼを生成すべきである。溶解性タンパク質の免疫ブロット分析は、再構築されたβ−ラクタマーゼの細胞1個あたり10個ほどの少ない分子が、50μg/mlのアンピシリン上での定量プレーティングのために十分であることを示し、そして非相互作用融合タンパク質についてのプレーティング効率は、同じアンピシリン濃度で10−6未満であることを示した。このことは、マイクロモル濃度のアフィニティーが、容易に選択可能であるべきであるが、このシステムは、より高い濃度のアンピシリンが使用される場合であっても、より高いアフィニティー間を容易に識別することはできないことを意味する。というのは、最大のβ−ラクタマーゼ活性は、1〜100×10−8MのKdで生じるからである。E.coliのTG−1株がlacプロモーターリプレッサー(laclq)遺伝子を発現する場合、抗体と抗原融合物との両方の発現は、完全に誘導された状態と比較して、lacプロモーターの誘導因子IPTGの非存在下、少なくとも10の因子によって抑制され、その結果、IPTGの非存在下、選択可能なKdの上限は、1〜10×10−8Mの範囲であると予想される。
【0090】
ほとんどのヒト生殖系列重鎖可変領域(VH)遺伝子は、E.coli中で十分発現せず、細胞が、選択圧下、連続的に増殖する場合、特にそうである。しかし、いくつかの生殖系列VH遺伝子(例えば、DP47)は、十分天然に発現され、第3の相補性決定領域(CDR3)の配列がランダム化されている場合、多様な結合特異性のライブラリーのためのプラットホームとして使用され得、VHライブラリーは、適合性のVL生殖系列遺伝子(例えば、DPL3)またはVLレパートリーライブラリーに基づく軽鎖可変領域(VL)ライブラリーに結合する。それに加えて、他の生殖系列VHは、Fold Selector技術のような技術を用いて、通常は1つまたは2つの変異で安定化され得る(例えば、米国特許出願番号第09/510,097号を参照のこと)。
【0091】
DP47生殖系列VH遺伝子に基づく約108のヒトscFvのライブラリーおよびランダム配列の12〜16アミノ酸を含むVH CDR3を有するDPL3生殖系列VL遺伝子が、ω198フラグメントに融合され、IPTGの非存在下、TG−1細胞中のα197フラグメントのいずれかの末端に融合されたヒトB細胞抗原CD40の細胞外ドメインと定量的に同時発現される場合、全部で52のCD40特異的scFvが、種々のアンピシリン濃度で得られた。最大50μg/mlのアンピシリンに対する定量的な耐性を付与するscFvは、10×10−8M未満のKdを有し、200μg/mlを超えるアンピシリンに対する耐性を付与するscFvは、10×10−9M未満のKdを有するべきであることが推察され得る(図4)。
【0092】
β−ラクタマーゼを用いるアフィニティー成熟の例は、図2に提供される。
アフィニティー選択の前に、条件は、所望の選択ストリンジェンシーのために、確立される。このことは、ネガティブコントロールを発現する細胞についての非許容的なアンピシリン濃度を決定することを包含する。ネガティブコントロールは、選択から除外することが望まれる最大のアフィニティーであり、すなわち、改良されるべき抗体である。従って、ネガティブ(naegative)コントロールに関して、改良される結合因子は、競合因子としてだけではなく、同様に融合物としても発現する(図2における例を参照のこと)。例えば、上に記載される考察に従って、1μMのKdの競合因子が、μM抗原−α融合物およびμM結合因子−ω融合物と共に、細胞ペリプラズム中で10μM(細胞あたり約1000分子)である場合、約90%の抗原が、結合し、約10%の抗原が、結合因子−ω融合物によって結合され、活性化される。次いで、10倍高いアフィニティーを有する試験結合対メンバーは、β−ラクタマーゼ活性を約5倍あげて、最大の約50%に増加させ、アフィニティーにおける100倍の増加は、最大の約90%に活性を上げる。活性におけるこのような増加は、アンピシリンの存在下、増加したプレーティング効率によってを同定され得る。このことは、10倍高いアフィニティーを有する試験結合対メンバーの効率的な回収(この場合、固体培地上)のために、選択的なアンピシリン濃度は、ネガティブコントロールに関して10−3〜10−4のプレーティング効率を与えるのに必要とされる濃度未満でなければならない。一般的に、より高いアフィニティー抗体の効率的な捕捉を確実にするために、プレーティングされた形質転換細胞の数は、最小の予測されたプレーティング効率および予測された最小効率の積の逆数の約10倍に等しい。
【0093】
ライブラリーにおける10倍のアフィニティー変異体の頻度が、ネガティブコントロールのプレーティング効率より小さい場合、偽陽性が、真の陽性に勝り得、この場合、選択されたコロニーを再プレーティングして、偽陽性を排除する必要があり得る。一般的に、より高いアフィニティー抗体の効率的な補足のために、プレーティングされた形質転換細胞の数は、最小の予測されたプレーティング効率および最小の予測された頻度の積の逆数の10倍と等しくあるべきである。例えば、予測された頻度が、10−4であり、予測されたプレーティング効率が10%である場合、少なくとも106の細胞がプレーティングされる。
【0094】
当業者に理解されるように、より高いアフィニティー変異体の選択はまた、懸濁培養物における増殖によって達成され得る。上述のように、最適発現条件下で、固体培地上の複数の再プレーティングは、偽陽性を排除する必要があり得る。しかし、必要とされる濃縮は、懸濁培養物における競合増殖の単一の1〜2日間において達成され得、その最後で、よりストリンジェントなプレーティング条件(すなわち、より高い抗生物質濃度)が使用されて、偽陽性を排除し得る。というのは、定量的プレーティングは、濃縮されたより高いアフィニティー変異体の効率的な回収のために必要とされないからである。
【0095】
懸濁液における競合増殖による、より高いアフィニティー結合対メンバーの濃縮のために、アンピシリン濃度は、最初に調節され、ネガティブコントロールのゆっくりとした増殖のみを許容しうる。このことは、ストリンジェンシーが、小さなアフィニティー増分のためには高すぎないが、小さなアフィニティー増分は、迅速に濃縮することが可能であるべきであることを確実にする。一旦最適なストリンジェンシーが決定されると、抗原−結合タンパク質は、ωフラグメント融合物としての発現のために変異誘発される。結合因子コード配列は、種々の方法(前出)のいずれかによって変異誘発され得る。
【0096】
アフィニティー選択プロセスは、代表的には、ネガティブコントロールの平行懸濁培養物および標準的な培地(例えば、L Broth)における適切な E.coli株(例えば、TG−1)における変異原性ライブラリーで開始される。細胞濃度およびアンピシリン濃度は、ネガティブコントロールが一晩の期間で数倍より小さく倍加して、0.01〜0.1を超えないOD600に到達するのを可能にするように望ましく設定され得る。このような条件下、中程度のアフィニティー増分は、増殖速度においてより大きな増加を生じ、その結果、低い頻度であっても、ライブラリーの培養物密度は、一晩増殖した後に検出可能により高くあり得る。例えば、107の改変体クローンのライブラリーに関して、ネガティブコントロールが4時間ごとに倍加するのを可能にするアンピシリン濃度における、約106細胞/mlの出発培養物100mlが、選択を開始するために使用され得る。16時間後、コントロール培養物は、1mlあたり約1.6×107細胞の濃度(約0.016のOD600)を有し、一方、変異体培養物は、全ての変異体が、増殖速度において平均4倍の増加を生じ、ライブラリーにおいて少なくとも10−4の合わせた頻度を有する場合、1mlあたり約2.3x107細胞の濃度(約0.023OD600)を有する。
【0097】
増殖速度は、代表的にアフィニティーに関して非直線的に比例し、その結果、増殖速度における4倍の増加は、アフィニティーにおける4倍未満の増加に対応する。従って、16時間の増殖後、変異体培養物における細胞の25%を超える細胞は、競合因子よりも高い平均倍率のアフィニティーを有する。この時点で、等数の細胞が、コントロール培養物バックグラウンドがゼロである(例えば、104の細胞が、アンピシリン濃縮物上にプレーティングされ、その上で、ネガティブコントロールが、10−4のプレーティング効率を有する)条件下で、固体培地上の両培養物からプレーティングされる。変異体培養物からの同数の細胞は、変異の多様性を有する多くのコロニーを生成する。ついで、各々のこれらのクローンは、より高い濃度の抗生物質上で試験され、どのクローンが最も高いアフィニティーを有するかが決定される。最適条件下、このような改変体が存在する場合、動的範囲は、β−ラクタマーゼ活性における10倍までの増分を生じる、アフィニティーにおける100倍までの増加の識別を可能にするべきである。
【0098】
第1のアリコートを取り出した後、細胞を遠心分離し、新鮮な抗生物質を含む新鮮な培地中に再懸濁する。次いで、アリコートを所望な頻度でとり、上述のようにプレーティングし得る。この実施例における変異体培養物は、インキュベーション7〜8時間後に、定常状態(1mlあたり約109細胞)に到達し、この時点で、コントロール培養物は、1mlあたり約3×107までさらに約2回だけ倍加して到達した。従って、変異体ライブラリーの定常状態培養物において約3%の細胞のみが、改良されていない抗体を発現している。
【0099】
定常状態の培養物における最も高いアフィニティー変異体の多様性は、上述のようにゼロバックグラウンドのための第1のプレーティングによって、次いで、首尾よいより高い抗生物質濃度で回収されたクローンの再プレーティンによって決定され得る。次いで、ほとんどの抗生物質耐性クローンの遺伝的多様性は、配列決定によって決定される。1つ以上のこれらの多様性は、次のラウンドの変異誘発および選択において競合因子として使用され得る。それに続く多様化のラウンドは、変異誘発によってか、または以前の選択ラウンドにおける任意の時点で選択された組換え変異によって達成され得る。このプロセスは、代表的に、新しい変異体が単離されなくなるまで(すなわち、最も高いアフィニティー改変体が、競合因子として使用され、他の改変体の間の選択を支配し続ける場合)、繰り返される。
【0100】
より高いアフィニティー抗体の選択は、安定な表現型の復帰変異体(すなわち、抗体のアフィニティーを増加させることなく抗生物質耐性を付与する変異を獲得した細胞)の選択によって潜在的に損なわれ得る。通常は、機能獲得変異を含む復帰頻度は、単純な選択系(例えば、β−ラクタマーゼフラグメント相補系)について重要な問題を生じないように、所望の変異頻度に対して十分低い。しかし、競合アフィニティー選択系は、競合因子遺伝子における機能損失変異によってより容易に覆され得る。競合因子が、抗体ライブラリー(これは、ファージミド上にある)からの別個のプラスミド上にあるので、復帰変異体は、ヘルパーファージを用いて選択された変異体抗体ファージミドをレスキューし、新たな競合因子/抗原発現細胞を再感染させることによって容易に排除され得る。競合因子の損失によって本来選択された抗体は、新しい競合因子の存在下、再選択されないが、一方、真により高いアフィニティー変異体は、効率よく再選択されるべきである。可能な非アフィニティー復帰変異体はまた、第2の時期の選択の前に、選択された抗体のコード配列のサブクローニングによって排除され得る。
【0101】
理論によって束縛されないが、選択は、抗原−抗体複合体の寿命が、細胞倍加時間に比較して長くなるまで、アフィニティーによって駆動されると予想され、この時点で、選択は、抗体−抗原複合体の会合速度、オンレート(on−rate)によって主に駆動されるようになる。異種タンパク質リッチな環境(例えば、細菌ペリプラズム)におけるオンレート選択は、CDRによる硬直化に向かって選択が偏っており、それによって結合のエントロピーコストが減少し、CDR−エピトープ表面相補性が増加する方向に向かい、それによって、産生的接近の比率が増加する。後者の効果はまた、近位により誘導されるファンデルワールス相互作用を増加することによって結合エネルギーを増加させると予想され、増加した表面相補性は、結合エネルギーの有意な成分になり得る。この効果は、同様にオフレート(off−rate)を増加させ、従って、アフィニティーにおける平衡した増加を生成する。従って、識別され、それによって選択され得るアフィニティーの上限は、細菌ペリプラズム中の約50kDaのサイズ範囲の球状タンパク質に関しては、拡散制限によって決定される。このような限定は、約107M−1秒−1以上であり、関連するオフレートは、10−5秒−1程度に低いと推定され、ナノモル濃度からピコモル濃度のKdにおいてアフィニティーを有する抗体は、この方法によって得られ得る。
【0102】
(本発明の方法および系の使用)
アフィニティー成熟は、より高いアフィニティーの結合対メンバーを生成するための多くの適用において使用され得る。例えば、本発明の方法および系が使用され、マウス対応物に対応する優れた抗体またはヒト抗体を生成し得る。この技術はまた、より高い結合アフィニティーを有するペプチド(例えば、レセプターのための改良されたアゴニストまたはアンタゴニストであるペプチド)を同定するため、または高められたアフィニティーを有する結合ペプチドが望ましい任意の他の適用のために使用され得る。上述のように、標的に対する高められた結合アフィニティーを有する低分子もまた、例えば、ビオチンタグ系を用いて同定され得る。
【0103】
(治療用抗体の開発)
1つの適用において、本発明の系および方法が、治療用抗体を開発するために使用され得る。アフィニティー成熟は、低アフィニティー抗体結合部位を、エピトープ表面に対する高い相補性を有する剛性の形状に成型し得る。それゆえ、出発ライブラリーは、特に大きくも多様である必要もない。例えば、ライブラリーは、一本鎖Fvプラットホーム上に構築され得、このプラットホームは、VHおよびVLのCD3へと挿入されるランダム配列を有する、十分に発現するヒト生殖系列VHおよびVL領域の単一の対を含む。このようなライブラリーは、ランダム配列を含む合成オリゴヌクレオチドを、抗体コード配列内に設計された適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に連結させることによって効率的に生製され得る。約108のこのような配列のライブラリーは、代表的に、本発明の方法において、マイクロモル濃度のアフィニティーの抗体を産生するために十分な多様性を有する。
【0104】
単一のプラットホームライブラリーのさらなる利点は、抗体発現レベルが代表的には均一であることである。抗体の間の構造的多様性は、タンパク質表面に限定され、それゆえ、抗体の安定性のフォールディング動力学のいずれにもほとんど衝撃を与えない。さらに、例えば、変異誘発のためのPM方法において、変異は、CDRに限定され、それゆえ、発現レベルに影響を与えそうもない。
【0105】
治療の適用に関して、抗体に関する重要な性能パラメータとしては、特異性、安定性、免疫原性の欠如、およびオンレートが挙げられる。ほとんどの抗体標的について、インビボのオフレート(これは、11分〜2時間の半減期に対応する)は、10−3〜10−4sec−1より低くある必要はない。ほとんどの表面結合抗体は、エンドサイトーシスを受けるか、またはエフェクター機能(例えば、食作用またはこの時間フレーム内の相補体固定)に携わるかのいずれかである)。しかし、オンレートにおけるさらなる増加を下回る同定された上限が存在しないことは、治療上の利点ではない。従って、本明細書中で記載される本発明は、治療の適用のために優れた抗体を提供し得る。それが、治療の適用のための特異的アイソタイプの全長の抗体を使用するための利点である場合、成熟したアフィニティー抗体において存在するリンカーは、除去され、必要な定常領域が、scFvに付加され得る。
【0106】
(実施例)
(実施例1。ヒトCD40を結合するチオレドキシン足場ペプチドの間の相補グループの競合的決定)
抗体に加えて、ドメインを結合するための他の型のタンパク質の足場は、特に、細胞内に発現され得、また使用され得る。例えば、20アミノ酸までのランダムペプチドは、細菌チオレドキシン(trxpepes)の活性部位へと挿入され得、抗原結合分子は、このようなライブラリーから選択され得る(例えば、Colasら,Nature 380:548−550,1996を参照のこと)。この例は、β−ラクタマーゼαl97/ωl98フラグメント相補系を使用して、細胞表面抗原(E.coliペリプラズムにおいて発現され得るヒトB−細胞活性化抗原CD40の細胞外ドメイン)に結合するための12アミノ酸のtrxpepsのパネルを選択する(例えば、Noelleら,Immunol.Today 13:431−433,1992およびBajorath & Aruffo,Proteins:Struct,Funct.,Genet.27:59−70,1997を参照のこと)。
【0107】
細胞外ドメイン(CD40ED)の成熟形態のコード配列を、成熟タンパク質のN末端および約190残基の細胞外ドメインのC末端に相同性のプライマーを用いて、PCRによって増幅した(Genbank登録番号X60592)。このPCR産物を、介在する(Gly4Ser)3リンカーを有するβ−ラクタマーゼω198フラグメントに対するC−末端融合としての、lacプロモーターからの発現のために、pAOlファージミドベクター(図5A)へとサブクローン化した。正しい産物の発現を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって確認し、次いで、CD40融合ベクターをファージとしてレスキューし、Trxpepライブラリー構築物を有するTG−1細胞へとトランスフェクトした。市販のTrxpepライブラリーを得て、E.coliチオレドキシンのN−末端およびC−末端に対して特異的なプライマーを用いてPCRにより増幅した(Genbank登録番号M54881)。この産物を、trp−lac融合プロモーターからのαl97フラグメントのC−末端に対する融合物の発現のために、pl5Aレプリコンへとサブクローン化した(Rose,Nucleic Acids Res.16:355,1988)(pAE1、図5A)。約107の同時形質転換体を、カナマイシンおよびクロラムフェニコールでの二重選択によって収集し、次いで、25μg/mlのアンピシリン上でプレーティングした。
【0108】
13の固有のtrxpepをコードするアンピシリン耐性クローンを回収した。全ての場合において、アンピシリン耐性は、CD40EDの存在およびtrxpepのペプチド部分の存在に厳密に依存した。CD40EDが無関係なタンパク質によって交換される場合、またはtrxpepが野生型チオレドキシンによって交換される場合、活性は見られなかった。trxpep間の競合は、pAO1ファージミドベクターにおける第2のシストロン(CD40−ω198融合物から下流)由来の「競合因子」として、5つの選択されたCD40−結合trxpepの各々を発現させることによって試験した(図5A)。次いで、これらの構築体の各々を、各々同じ5つと、3つのさらなる選択されたαl97−trxpep融合構築物を用いて、TG1株中で同時発現させ、25μg/mlのアンピシリン上で増殖に関してスコアされた。結果は、図5Bに示される。
【0109】
試験された各々の場合において、CD40とtrxpepとの間の結合相互作用によるβ−ラクタマーゼの活性化は、競合因子としての同じtrexpepの存在下、強力に阻害された。従って、CD40に関するアフィニティーを増加させたα197融合化trxpepの代替は、競合因子の効果を中和し、失われたβ−ラクタマーゼ活性の少なくともいくらかを選択的に回復することが可能であるべきである。8つのtrxpep(これは約5の異なるエピトープにほぼ対応する)が5つの相補性グループに分類される。trxpep p58−12−9Al、BW10−4、およびBW10−8は、1つのグループを構成し、これらのグループは、お互いに強力に競合し、同様の競合プロフィールを有する。従って、これら3つのtrxpepが、CD40上の同じエピトープについて競合したと結論付けた。
【0110】
α197融合物として3つのtrxpepの各々を発現する細胞が、25μg/mlのアンピシリンの存在下、懸濁培養物中で増殖した場合、対数期の増殖の間、すべての3つの細胞は、ほぼ同じ速度で倍加した。しかし、各々のtrxpepが、α197−trxpep融合物の各々と共に、遊離の競合因子として同時発現された場合、25μg/mlアンピシリン中での懸濁液の増殖速度は、異なる程度阻害されたが、パターンはいつも同じであった。α197−BW10−8融合物を発現する細胞は、競合因子にかかわらず、いつも最も早く増殖し、その後に、αl97−p58−12−9Al融合物、その後に、α197−BW10−4融合物の順であった。3つ全てのα197−trxpep融合物の発現レベルは匹敵したので、可溶性抽出物の免疫ブロットによって判断されるように、競合条件下での増殖速度は、CD40に対するアフィニティーと相関関係にある。従って、BW10−8は、CD40に対して最も高いアフィニティーを有し、その後に、p58−12−9Al、その後にBW10−4の順である。
【0111】
各々の3つのαl97−trxpep融合物および競合因子としてのBW10−4を発現する細胞を、同じ数で混合し、25μg/mlのアンピシリンの存在下、懸濁培養物中で一晩増殖させた。得られた培養物からランダムで選択された20のクローンのうち、20全てがp58−12−9Al trxpepをαl97融合物として発現した。従って、最も高いアフィニティー改変体は、懸濁培養物中の競合増殖によって選択され得る。
【0112】
(実施例2。抗CD40抗体と、抗CD40抗体のより高いアフィニティー変異体との間のアフィニティー競合)
この実施例は、ナノモル濃度の範囲におけるアフィニティー(Kd)を有する、密接に関連する抗体間を識別する、競合アフィニティー選択系の能力を示す。
【0113】
5D12抗体は、ヒトCD40に対して特異的なマウスモノクローナル抗体である。この抗体のFabフラグメントは、7.6nMのKdを有する。VHのCDR3において2つの変異を有するこの抗体の改変体(5D12−6D)は、0.64nMのKdを有する。競合条件下および非競合条件下での、これら2つの抗体のプレーティング効率を、表Iに列挙する。
【0114】
5D12のscFvが、CD40細胞外ドメイン(CD40ED)のα197融合物として、同じ細胞においてω198融合物として発現した場合、細胞は、10μg/mlのアンピシリンにのみ定量的に耐性であった。しかし、5D12−6D変異体が同じシステム中で発現された場合、細胞は、25〜50μg/mlを超えて定量的にプレーティングされた。このシステムが、これら2つの抗体間を識別し得るという事実は、抗体が、不安定であり、Fabのアフィニティーよりもかなり低い明らかなアフィニティーを有することを示す。通常は、このシステムは、ナノモル濃度のアフィニティーを識別することはできない。というのは、識別することは、融合物のナノモル濃度下の濃度を必要とし、そして、細菌ペリプラズムにおけるこのような濃度は1細胞あたり1分子未満と等しいからである。
【0115】
5D12Fabの5D12scFvに対するアフィニティーを回復するために、細菌ペリプラズムにおける発現を安定化させることが必要であった。この不安定性の主な原因は、代表的には、凝集を受けやすいフォールディング中間体および/または可撓性のリンカーの長さに起因するVHおよびVLのゆるい会合であった。この両方の欠点は、フォールディング中間体を不安定化し、それによって、フォールディングを促進する変異を選択することによって修復され得る。同じ変異がまた、通常は、scFvの2つの鎖間のアフィニティーを増加させる。5D12scFvの安定性が、変異的に回復される場合、安定化されたscFv(s5D12)は、100〜200μg/mlのアンピシリンでの定量的なプレーティングを付与した(表Iを参照のこと)。しかし、5D12−6Dへと同じ安定化変異を導入した場合、プレーティング効率は、s5D12のレベルを顕著に下回って増加しなかった。これはおそらく、ペリプラズムにおける両抗体の2つの安定状態の濃度が、アフィニティー(Kd)よりもずっと高く、その結果、後者における差異は、検出されなかったという事実に起因する。すなわち、この濃度が、Kdより非常に大きい場合、アフィニティーは、もはや活性についで制限しない。
【0116】
次いで、2つの安定化された抗体−ω融合物を、遊離競合因子としてのs5D12の存在下、α抗原融合物をと同時発現させた。表Iに示されるように、競合因子の存在は、約200μg/mlのアンピシリン上での約50%から25ug/ml上での約50%まで、s5D12のプレーティング効率を減少させた。200μg/mlのアンピシリン上で、競合因子は、s5D12プレーティング効率を10−5未満まで減少させた(示さない)。同じ競合因子は、6D変異体のプレーティング効率を、200ug/ml上の約70%から100μg/ml上の約40%まで減少させた。重要な観察は、競合因子の存在下、100μg/mlのアンピシリン上で、s5D12−6D変異体は、その親抗体s5D12よりも少なくとも1000倍高い効率でプレーティングされ、一方、競合因子の非存在下、これら2つの変異体は、同じ濃度で明らかに識別され得る。従って、競合因子の使用によって、アフィニティーにおける12倍の増加が、選択性において少なくとも1000倍の増分を付与した。従って、100μg/mlのアンピシリン上のプレーティングの各ラウンドの後、変異体の頻度は、親と比較して、少なくとも1000倍濃縮されるはずである。それゆえに、この実験は、ナノモル濃度のKdレベルでのアフィニティー間を識別するための競合アフィニティー選択技術の能力を実証する。
【0117】
(表I ナノモル濃度のKdを有する2つの抗CD40抗体に関する、増殖とアフィニティーとの間の相関関係)
【0118】
【表1】
a.5D12、抗CD40抗体;s5D12、安定化された抗CD40抗体;s5D12−6D、5D12抗CD40抗体の安定化されたより高いアフィニティー変異体(2つの変異)。
b.Amp10、Amp25、Amp50などは、10、25、50μg/mlなどのアンピシリンでのプレーティング効率をいう。このプレーティング効率は、コロニーを形成する二重形質変換された細胞の割合と等しい。
【0119】
本明細書中に引用される全ての刊行物および特許出願は、各々個々の刊行物または特許明細書が参考として具体的に、個々に援用されるかのように、参考として本明細書中で援用される。
【0120】
上記の発明は、理解を明確にする目的で図示および実施例を用いていくらか詳細に記載されてきたが、本発明の教示に鑑みて、特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなく本発明になされ得ることは、当業者には容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、scFvの競合的親和性の成熟についての発現構築物を示す。
【図2】
図2は、競合的選択によるscFvの親和性の成熟を示す。レパートリーライブラリーまたはランダムCDRライブラリーから選択される「低親和性」scFvが、最初に抗原および同一のscFvに融合したβ−ラクタマーゼフラグメントを有する自由な「競合因子」として同時発現されたことを示す。これは改善されていないscFvを発現する細胞の増殖を防ぐために必要とされる抗生物質の量の決定を可能にする。このω198フラグメントに融合されたscFvは、制限的な抗生物質濃度で増殖について変異誘発され、そして選択される。
【図3】
図3は、レパートリーライブラリーまたはランダムCDRライブラリーから選択される単鎖Fv抗体フラグメント(scFv)選択についての発現構築物を示す。scFvライブラリーは、可撓性リンカー((G4S)3)を介してβ−ラクタマーゼωフラグメントに対してC末端融合として発現するファージミドプラスミドにコードされる。レプリコン(fl ori)のファージ起源はscFvライブラリーがバクテリオファージストックして保存されることを可能にする。これはβ−ラクタマーゼαフラグメントのいずれかの末端に(G4S)3を介して融合される抗原を発現する細胞を、定量的に感染させる(感染の多重度(m.o.i.))ために使用され得る。pUC ori、pl5A ori(適合可能プラスミドのレプリコンの供給源);lac prom(lacオペロン転写プロモーター);trc prom(trp−lac融合プロモーター;SP(ペリプラズム中に分泌されるシグナルペプチド);cat(クロラムフェニコール耐性遺伝子;kan(カナマイシン耐性遺伝子)。
【図4】
図4は、ヒトCD40(CD40ED)の細胞外ドメインに特異的なscFvが、ランダム配列の12〜16アミノ酸を含むVH CDR3を有するDP47生殖細胞系VH遺伝子およびDPL3生殖細胞系VI遺伝子に基づくヒトscFvを発現する約198の独立クローンのライブラリーから選択されることを示す。二重のブレークポイント融合は、抗原がC末端のα197フラグメントに融合されたことを意味し;二重のN末端融合は、抗原がsα197フラグメントのN末端に融合されたことを意味する。
【図5】
図5は、抗CD40 Trxpep競合を示す。図5Aは、競合によるCD40結合trxpepのうちで相補性群の決定のための発現構築物を示す。図5Bは、7つのCD40結合trxpepのうちで競合関係についての表を示す。
Claims (31)
- 参照結合対メンバーよりも同族の結合パートナーに対して、より高い親和性を有する試験結合対メンバーを同定する競合的方法であって、該方法は、以下:
(a)細菌細胞集団において、選択系成分を発現させる工程であって、該選択系は、以下:
1分子以上のレポーター系;
試験結合対メンバーのライブラリー;
同族結合パートナー;および
競合因子、を備え、
この競合因子は、以下:i)該同族結合パートナーに対する結合について、該参照結合対メンバーと競合する特性、およびii)該参照結合対メンバーの親和性と少なくとも等しい、該同族結合パートナーに対する親和性を有する特性、を有し、
ここで、該レポーター系の1以上の分子は、以下の成分:試験結合対メンバーのライブラリー、該同族結合パートナー、または該競合因子、の1以上と独自に連結される、工程;
(b)試験結合対メンバーが、該競合因子が該同族結合パートナーに結合する親和性よりも高い親和性を有する場合に、該レポーター系が達成される条件下で、該細胞集団を培養し、それによって該細胞に選択可能な表現型を付与する工程;ならびに
(c)該選択可能な表現型を示す細胞を選択する工程、
を包含する、方法。 - 参照結合対メンバーよりも同族の結合パートナーに対して、より高い親和性を有する試験結合対メンバーを同定する競合的方法であって、該方法は、以下:
(a)マーカーのフラグメントAに連結された試験結合対メンバーのライブラリーをコードする核酸配列を含む発現ベクターを、細菌細胞集団に導入する工程;
(b)マーカーのフラグメントBに連結された該同族結合パートナーをコードする核酸配列を含む発現ベクターを、該細胞集団に導入する工程であって、ここで、該マーカーは、該フラグメントAおよび該フラグメントBが近位にある場合に活性である、工程;
(c)該フラグメントAに連結された試験結合対メンバーのライブラリーおよび該フラグメントBに連結された同族結合パートナーが、以下の特性:
i)該同族結合パートナーに対する結合について、該参照結合対メンバーと競合する特性;および
ii)該参照結合対メンバーの親和性と少なくとも等しい、該同族結合パートナーに対する親和性を有する特性であって、ここで、試験結合対メンバーが、フラグメントAに連結された該同族結合パートナーに結合する該競合因子よりも、高い親和性を有する、特性、
を有する競合因子の存在下で発現される条件下で、該細胞集団を培養する工程:ならびに
(d)該マーカーが活性である細胞を選択する工程、
を包含する、方法。 - 請求項2に記載の方法であって、前記試験結合対メンバーの結合ドメインが、前記参照結合対メンバーの結合ドメインと90%同一である、方法。
- 請求項2に記載の方法であって、前記選択する工程が、前記マーカーが、参照標準活性よりもより活性である細胞を選択することを包含する、方法。
- 請求項2に記載の方法であって、前記競合因子が、前記参照結合対メンバーである、方法。
- 請求項2に記載の方法であって、前記参照結合対メンバーが抗体である、方法。
- 請求項6に記載の方法であって、前記抗体が単鎖抗体である、方法。
- 請求項7に記載の方法であって、さらに前記フラグメントAに連結された試験結合対メンバーが、単鎖抗体である、方法。
- 請求項2に記載の方法であって、前記フラグメントBに連結された同族結合パートナーが、限定された濃度で発現され、前記競合因子が、該同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdと等価な濃度を超える量で発現され、そして前記細胞集団において発現された、前記フラグメントAに連結された試験結合対メンバーの濃度が、該フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度と実質的に同じである、方法。
- 請求項9に記載の方法であって、前記フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度が、前記競合因子の濃度の10分の1未満である、方法。
- 請求項9に記載の方法であって、前記競合因子が、前記同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdと等価な濃度を、約10倍上回る、方法。
- 請求項2に記載の方法であって、前記競合因子が、前記細胞集団に導入される該競合因子をコードする核酸配列を含む発現ベクターから発現される、方法。
- 請求項12に記載の方法であって、前記競合因子と前記マーカーのフラグメントBに連結された同族結合パートナーとが、1つの発現ベクターにコードされる、方法。
- 請求項13に記載の方法であって、前記競合因子と前記フラグメントBに連結された同族結合パートナーとが、単一プロモーターから、ジシストロン転写物として発現される、方法。
- 請求項14に記載の方法であって、前記プロモーターが、trp−lacプロモーターである、方法。
- 請求項2に記載の方法であって、前記細菌細胞が、グラム陰性細菌である、方法。
- 請求項2に記載の方法であって、前記マーカーが、単一ペプチドを含む、方法。
- 細菌細胞であって、以下:
マーカーのフラグメントAに連結された試験結合対メンバーのライブラリーのメンバーをコードする核酸配列を含む発現ベクター;
マーカーのフラグメントBに連結された同族結合パートナーをコードする核酸配列を含む発現ベクター;
であって、ここで、該マーカーは、該フラグメントAおよび該フラグメントBが近位である場合に活性である、ベクター;ならびに
該同族結合パートナーに対する結合について、参照結合対メンバーと競合し、そして、該参照結合対メンバーの親和性と少なくとも等しい、該同族結合対パートナーに対する親和性を有する、競合因子、
を含む、細菌細胞。 - 請求項18に記載の細胞であって、前記競合因子が、前記参照結合対メンバーである、細胞。
- 請求項18に記載の細胞であって、前記参照結合対メンバーが抗体である、細胞。
- 請求項20に記載の細胞株であって、前記抗体が単鎖抗体である、細胞株。
- 請求項21に記載の細胞であって、さらに前記フラグメントAに連結された試験結合対メンバーが、単鎖抗体である、細胞。
- 請求項18に記載の細胞であって、前記フラグメントBに連結された同族結合パートナーが、限定された濃度で発現され、前記競合因子が、該同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdを超える量で発現され、そして前記細胞集団において発現された、前記フラグメントAに連結された試験結合対メンバーの濃度が、該フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度と実質的に同じである、細胞。
- 請求項18に記載の細胞であって、前記フラグメントBに連結された同族結合パートナーの濃度が、前記競合因子の濃度の10分の1未満である、細胞。
- 請求項18に記載の細胞であって、前記競合因子が、前記同族結合パートナーに対する結合についてのそのKdを、約10倍上回る、細胞。
- 請求項18に記載の細胞であって、前記競合因子が、該競合因子をコードする核酸配列を含む発現ベクターから発現される、細胞。
- 請求項26に記載の細胞であって、前記競合因子と前記マーカーのフラグメントBに連結された同族結合パートナーとが、1つの発現ベクターにコードされる、細胞。
- 請求項27に記載の細胞であって、前記競合因子と前記フラグメントBに連結された同族結合パートナーとが、単一プロモーターから、ジシストロン転写物として発現される、細胞。
- 請求項28に記載の細胞であって、前記プロモーターが、trp−lacプロモーターである、細胞。
- 請求項18に記載の細胞であって、前記細胞が、グラム陰性細菌である、細胞。
- 請求項18に記載の細胞であって、前記マーカーが、単一ペプチドを含む、細胞。
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