【発明の詳細な説明】
組み換え蛋白質のエクスポート系
本発明は、ベクター、宿主−べクター組み合わせ、及び担体蛋白質とパッセン
ジャー蛋白質から成る安定な融合蛋白質の製法に関し、この際、融合蛋白質の発
現は、細菌細胞、殊にエセリキア・コリ細胞の表面上にパッセンジャードメイン
を露出させる。必要ならば、このパッセンジャードメインはプロテアーゼにより
、例えば選択された宿主因子、例えばOmpTにより媒体中に遊離させることが
できる。
更に、本発明は、アミノ酸配列としてデータバンク又はファイル中に存在し、
その特性に相応してオートトランスポーターと称される天然の蛋白質からの担体
蛋白質又は担体蛋白質部分の使用に関する。
本発明は、少なくとも1個のパッセンジャー蛋白質が結合パートナーに対する
特定の親和性を有するその表面上に発現する細菌の同定及び選択の方法、並びに
診断の目的でのその使用を可能にする。殊に、本発明の方法は、それを用いて、
例えば抗体、MHC−分子又は免疫系の他の成分における最大親和性を有するリ
ガンドの測定が可能である細菌細胞の表面上でのペプチドーライブラリイの発現
を可能にする。
更に、本発明の方法は、重い又は軽い抗体ドメイン
の部分及びオートトランスポーターを組成とする融合蛋白質の生産及び細菌細胞
外膜を通るその移送を可能とする。最後に、特異的な1実施形では、結合活性な
組み換え抗体の目標とする分散及びエセリキア・コリの細胞表面上でのその機能
的提示が可能になる。
一般に、本発明の方法は、その細菌表面上でのレセプタ-又はリガンドであっ
てよい組み換え蛋白質の発現並びに結合パートナーへの結合親和性に基づく選択
を可能にし、これに伴ないクローン生成体の有効な選択が可能になる。
本発明は、表面−露出蛋白質ドメインに対する親和性を示す結合パートナーの
目的とする富化又は精製のために、細胞表面上の蛋白質融合を発現し、担体物質
に結合して又は溶液中に存在する細菌を使用することにも関する。更に、本発明
は、酵素又は他の生物学的、化学的又は工業的に重要な特性を有する蛋白質の表
面発現及び、必要な場合には、周辺媒体中への目的とするその放出に関する。
細菌細胞上での組み換え蛋白質の表面露出は、可能な微生物学的、分子生物学
的、免疫学的又は工業的な多くで使用される方法である。この方法での組み換え
蛋白質の製造により、その特性、例えば結合親和性又は酵素活性(Francisco et
al.,Bio.Technology 11(1993)491-495)を得ることができ、更なる工程、例
えば生産体細胞の崩壊を必要としない。自然では、限
られた数の因子のみが細菌表面上で発現されるので、付加的に、細胞単独生産に
比べて組み換え蛋白質の特異的な富化が与えられる。もう一つの主要な利点は、
所望の組み換え蛋白質を選択すると同じ方法で、この蛋白質の生産体、細菌細胞
も単離でき、これにより長時間貯蔵でき、安定に再生でき、大規模に増殖するこ
とのできるクローン性生産体が得られる。
細胞表面上での組み換え蛋白質の提示のために、従来は、例外なく、かつ当然
に、細胞表面蛋白質の移送又は分泌のために役立っている種々の系が使用された
(Little et al.,TIBTECH 11(1993),3-5)。
この場合には有意義に、当然、移送すべき蛋白質、パッセンジャーをコードす
るDNA−領域が、所望の組み換え蛋白質のコード性DNA−領域により置換又
は補充されたが、この際に、移送に応答する蛋白質ドメインのコード性範囲、担
体蛋白質は、通常不変のまま残る。このことから、その中でパッセンジャー成分
及び担体成分が直接隣接しているか、または1遺伝子中にコードされて存在する
系、いわゆる1成分−系は、複数の無関係な成分を有する系(Gentschev et al,
.Behring Inst.Mitt.95(1994)57-66)に比べて、殊に安定な複製のための特性
と並んで、1以上の選択マーカー、移送のために必要な蛋白質ドメイン、パッセ
ンジャーをコードするDNA−フラグメントの挿入位置をも有すべきであるユニ
バーサルに使用可能なベ
クターの製造時に著しい利点を有することが明らかである。従来使用されていた
多くの1成分−系中のトランスポーター蛋白質として、E.コリの外膜の蛋白質
が使用されていた。これには、特にLamB(Charbit et al.,Gene 70(1988)
,181-189)、PhoE(Agterberg et al.,Gene 59(1987)145-150)又はOmp
A(Franscisco et al.,Proc.Natl.Acad.Sci(1992),2713-2717)が属するが、そ
れらの使用は欠点を伴う。例えば、付加的な蛋白質配列は、表面露出されたルー
プ中にのみ組み込むことができ、これは一方で、固定すべきアミノー及びカルボ
キシ末端を枠に入る担体蛋白質配列の所にもたらし、他方で、限定的に取り込む
べき配列の長さに作用する。ペプチドグリカン会合したリポ蛋白質(PAL)の
担体蛋白質としての使用は、外膜への移送をもたらすが、それに伴いE.コリの
表面上の本来の蛋白質配列の提示は不可能である(Fuchs et al.,Bio.Technolo
gy 9(1991),1369-1372)。大きい蛋白質の表面発現は、担体蛋白質分としてのO
mpA及びLppからの融合の使用下に可能であり、それらのカルボキシル末端
の所にパッセンジャー蛋白質配列が付けられる(Franscisco et al.,Proc.Natl
.Acad.Sci(1992),2713-1717)。この場合には、パッセンジャーのN−末端の固
定が正しい折畳み又は機能を阻止しうる欠点を甘受しなければならない。
更に、いわゆるオートトランスポーターを含有する蛋白質、グラム陰性細菌中
に分泌された蛋白質の群が公知である。Jose 等の文献(Mol.Microbiol.18
(1995),377-382)には、このようなオートトランスポーター蛋白質のいくつかの
例が挙げられている。これらの蛋白質は、N−末端に付いている蛋白質ドメイン
のβ−折畳み板構造から構成されている孔構造を通る移送を、グラム陰性菌の外
膜中で可能にする蛋白質ドメインを含有する。オートトランスポーターを含有す
る蛋白質は、いわゆるポリ−蛋白質−先駆分子として合成される。このような先
駆蛋白質の典型的な構造は、3つに分けられている。N−末端には、宿主中に存
在するSec−移送装置の援助の下に内膜を通る移送のために応答し、その際に
分離されるシグナル配列が存在する。これに引き続き、分泌すべき蛋白質ドメイ
ンが続き、外膜中に孔を形成するC−末端ヘルパードメインがそれに続き、これ
により、N−末端に付いている分泌すべき蛋白質ドメインが表面に移送局在化さ
れる。そこで、それは、その発揮すべき機能に依存して、いまや膜アンカーとし
て役立つヘルパーと一緒に細菌表面に結合して残るか、又は蛋白質分解活性によ
り分離され、その際、分泌すべき蛋白質ドメインのこれら蛋白質分解活性は、内
在していてよいか又はその宿主から出る特性であってよいか又は外から目的に応
じて添加された活性(例えば、トロンビン、IgA
−プロテアーゼ)であってもよい。オートトランスポーターをベースとする表現
系の使用下での非相同ポリペプチド又は蛋白質の分泌は公知である。例えば、E
P−A0254090又はクラウザー(Klauser)等の文献(EMBO J.11(1992),2
327-2335)から、パッセンジャードメインとしてのN.ゴノロエアエ(gonorrho
eae)非相同ポリペプチドからのIgA−プロテアーゼのヘルパードメインが、
非相同細菌菌株E.コリ及びサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella Typhimuri
um)中で発現できることが公知である。
更に、シゲラ(Shige1la)からの蛋白質VirGの細胞外移送がスズキ等により
記載されている(J.Biol.Chem.270(1995),30874-30880)。この蛋白質は、同様
に、異種ポリペプチド、例えば、VirGのオートトランスポータードメインの
N−末端に共有結合したMalE及びPhoAを発現させることのできるIgA
−プロテアーゼー類似オートトランスポーターである。更に、シマダ等の論文(J
.Biochem.116(1994),327-334)には、S.マルセセンス(marcescens)のセリン
プロテアーゼのオートトランスポータードメインの使用下における、非相同ポリ
ペプチド、即ちE.コリ中のA.ファエカリス(faecales)からのプソイドアズ
リンの細胞外移送が記載されている。
しかしながら、オートトランスポーター系を用いる非相同パッセンジャー蛋白
質の発現を得るための技術
水準に記載の方法では、著しい欠点が確認された。例えば、宿主としてのE.コ
リ中のN.ゴノロエアエからのIgA−プロテアーゼのトランスポーター又はヘ
ルパードメインの使用の際に、屡々著しい和合性の問題が現れる。強すぎる発現
は、細胞−溶解をもたらすか又は細菌は中程度の発現の際にも減少した成長を示
し、このことは、双方の場合に、著しく減少された融合蛋白質収率をもたらし、
この系の安定性の低下を証明している。従って、本発明は、多くの理由から宿主
菌株としてのE.コリが例えばナイセリア・ゴノロエアエ(Neisseria gonorrho
eae)に比べて有利であるので、殊に宿主菌株としてのE.コリの使用の際に、
これらの欠点をもたらさない担体蛋白質を提供することの技術的課題に基づいて
いる。一つには、組み換えDNAを有するE.コリ菌株は既に安全度1の簡単な
実験室中で培養することができる。更に、既に市販製品中のE.コリ菌株を用い
て組み換え蛋白質が操作される。このことは、組み換えE.コリ菌株の取り扱い
及び操作において、他の宿主菌株に比べて著しい利点であることを意味する。更
に、E.コリからは既に、所望の用途に依存して宿主菌株の選択を可能にする多
数の正確に特徴付けられた突然変異株が生じている。
この課題は、
(a)1個のプロモータを用いるオペラテイブ結合で融合された
(i)シグナルペプチド−コード性核酸断片
(ii)提示すべきパッセンジャーペプチド又は/及びパッセンジャーポリペプ
チドをコードする核酸断片
(iii)場合により、プロテアーゼ認識部位をコードする核酸断片
(iv)トランスメンブランリンカーをコードする核酸断片及び
(v)オートトランスポーターのトランスポータードメインをコードする核酸断
片
を含有する1核酸配列がその上に局在しているベクターを用いて形質転換された
宿主細菌を準備し:かつ
(b)この宿主細菌を、融合された核酸配列の発現及び核酸断片(ii)でコー
ドされたペプチド又はポリペプチドの提示を宿主細菌の表面で行わせる条件下に
培養することにより、グラム陰性宿主細菌の表面上でペプチド及び/又はポリペ
プチドを提示させる方法により解決され、これは、核酸断片(ii)がトランス
ポータードメイン(v)をコードする核酸断片に対して非相同であり、この宿主
細菌はトランスポータードメイン(v)をコードする核酸断片に対して相同であ
ることを特徴とする。
トランスポータードメインをコードする核酸断片に対して相同である宿主細菌
の使用により、意外にも、技術水準に比べて明らかに改善されたペプチド又はポ
リペプチドの、殊に好ましくは4〜50アミノ酸の長
さを有する短い合成ペプチドの又は真核性ポリペプチドの表面提示が達成できる
。
本発明による方法では、1以上の和合性組み換えベクターを用いて形質転換さ
れている宿主細菌を準備する。このようなベクターは、1個のプロモータ及び場
合によっては更なるこの発現のために必要である配列とオペラチブに結合して融
合された1核酸配列を有する。この融合された核酸配列は、(i)シグナルペプ
チド−コード性断片、好ましくは、ペリプラズムまでの内膜内の通過を可能にす
るグラム陰性シグナルペプチドをコードする断片を有する。更に、融合された核
酸配列(ii)は、提示すべきパッセンジャーペプチド又はポリペプチドをコー
ドする断片を有する。場合によっては、断片(iii)の3’−側に、プロテア
ーゼ認識部位をコードする核酸断片が存在する。好適なプロテアーゼ認識部位の
例は、固有の、即ち本来宿主細胞中に存在するか又は外から導入されたプロテア
ーゼの認識部位である。外から導入されたプロテアーゼの例は、IgA−プロテ
アーゼ(例えばEP−A−0254090参照)、トロンビン又はX因子である
。固有のプロテアーゼの例は、OmpT、OmpK又はプロテアーゼXである。
この断片の3’−側には、(iv)トランスメンブランリンカーをコードする核
酸断片が存在し、これは断片(iii)でコードされたペプチド又はポリペプチ
ドの宿主細菌の外膜の外側
上に提示させることができる。この断片の3’−側は、オートトランスポーター
のトランスポータードメインをコードする核酸断片である。
オートトランスポーターに関して相同であるトランスメンブランリンカードメ
インを使用することが特に有利である、即ちトランスメンブランリンカードメイ
ンは、核酸断片により直接、オートトランスポータードメインの5’−側でコー
ドされる。このトランスメンブランリンカーの長さは、好ましくは30〜160
アミノ酸である。
トランスポータードメインは、宿主細菌の外膜中でいわゆるβ−樽を形成する
ことができる。このβ−樽は、偶数個の非平行の両親媒性のβ−折畳み板より成
る。この構造は、グラム陰性菌の外膜の他の蛋白質と同様に、C−末端に芳香族
アミノ酸、例えばフェニルアラニン又はトリプトファンを有する。これに、交互
に、帯電された(極性の)及び帯電されていない(疎水性の)アミノ酸、折畳み
時にこの膜と一緒に1つの役割を演じる構造が続く。両親媒性のβ−折畳み板の
数及び位置は、適当なコンピュータプログラムを用いて同定でき、外膜ポリン(
この結晶構造は公知である)に対する類縁体(Cowan et al.,Nature 358(1992),
727-733)を用いて、樽構造のモデルの構成のために使用できる。樽構造は次のよ
うに構成するのが有利である:膜流路のための9〜14個、殊に約12個のア
ミノ酸(AS);β−折畳み板中には外側に向かって帯電されたASはないか又
は最小数を示す;内側に向かって、小さいループを示すか又はループはなく、場
合によっては大きい又は非常に大きいループが外側に向かって示す;β−樽は、
12、14、16又は18、殊に14個の非平行のβー折畳み板からなっている
。
この樽のモデルから出発して、今や外膜を通る自己移送のために必要である範
囲を決めることができ、1個のシグナルペプチド及び1個のパッセンジャードメ
インと共に遺伝子平面上に結合させることができる。次いで、この構成の発現は
パッセンジャー蛋白質を細菌表面上へ移送することを可能にし、この際、シグナ
ルペプチドは、本来パッセンジャー又は他の蛋白質から由来していてよい。この
場合に、β−樽に付加して、生じた孔を通りパッセンジャードメインを完全に表
面で露出するために役立つ長さ及び配列で好適なリンカー領域が結合されること
を考慮すべきである。
本発明の方法の主要な1特徴は、宿主細菌がトランスポータードメインをコー
ドする核酸断片に対して相同であること、即ち宿主細胞及びトランスポータード
メインが相同のファミリー、例えばエンテロバクターから、特に相同な属、例え
ばエセリキア、サルモネラ又はヘリコバクターからの、特に有利には相同な種、
例えばエセリキア・コリ、サルモネラ・チフィムリウ
ムから選択されることである。宿主細菌として、サルモネラ又はE.コリ及び同
様にサルモネラ又はE.コリに由来するトランスポータードメイン又はその変異
体を使用するのが特に有利である。
ここで、特に好適なE.コリ宿主菌株として、ompT-、dsbA-であり、
遺伝学的マーカーfptを有する菌株JK321(DSM8860)が挙げられ
、これは、Igaβ−ヘルパー蛋白質を用いて大きい蛋白質、例えば抗体のVh
−鎖の安定な表面発現をももたらす。
従って、有利な1実施形では、本発明は、オートトランスポーター機能を発揮
し、エセリキア・コリ中での組み換え蛋白質の表面露出を高い収率で可能とする
担体蛋白質に関する。ここで、典型的な1例では、これは、E.コリからの「ア
ドヘシン−インボルブド−イン−デフューズ−アドヒーレンス(AIDA−I)
」のオートトランスポーターである(Benz und Schmidt,Infect.Immun.57(198
9),1506-1511)。このAIDA−I−蛋白質のトランスポータードメインは、第
2図中に示されている。この特異的な配列と並んで、例えば膜流路に関与しない
ループ構造中でのアミノ酸配列の変更により得ることのできるその変異体も使用
できる。場合によっては、表面ループをコードする核酸断片は完全に欠失されて
いてもよい。
両親媒性β−折畳み板構造内でも、保守的なアミノ
酸交換、即ち1親水性アミノ酸を他の親水性アミノ酸で交換する又は/及び1疎
水性アミノ酸を他の疎水性アミノ酸で交換することもできる。1変異体は、第2
図に記載のAIDA−Iオートトランスポータードメインの配列に対して少なく
とも80%、殊に少なくとも90%の相同性を、少なくともβ−折畳み板構造の
範囲内に有するのが有利である。
もう一つの典型的な例では、使用オートトランスポーターは、シゲラ・フレッ
クスネリからのSepA−蛋白質のそれ(Benjellou-Touimi et al.,Mol.Micr
obiol 17(1995)123-135)又はその変異体である。もう一つの典型的な例では
、これは、シゲラ・フレックスネリからのIcsA−蛋白質のオートトランスポ
ーター(Goldberg et al.,J.Bacteriol.175(1993),2189-2196)又はE.コリ
からのTsh−蛋白質のオートトランスポーター(Provence et al.,Infect.I
mmun 62(1994),1369-1380)である。もう一つの典型的例では、これは、ヘリコ
バクター・ムステラエからのHsr−蛋白質のオートトランスポーター(O'Toole
et al.,Mol.Microbiol.11(1994),349-361)、ボルデテラ・sspからのPr
n−蛋白質のオートトランスポーター(Charles et al.,Proc.Natl.Acad.Sci
USA 86(1989),3554-3558;Li et al.,J.Gen.Microbiol.138(1992),1697-17
05)、セラテイア・マルセッセンスからのSsp−蛋白質のオートトランス
ポーター(例えば、Yanagida et al.,J.Bacteriol.166(1986),937-944又はGen
bank-Accessionnr.X 59719,D78380)、ヘモフィルス・インフルエンザエからのH
ap−蛋白質のオートトランスポーター(StGemeet al.,Mol.Microbiol.14(19
94),217-233)、ボルデテラ・ペルトウシスからのBrkA−蛋白質のオートトラ
ンスポーター(Fernandez und Weiss,Infect.Immunol.62(1994),4727-4738)
、ヘリコバクター・ピロリからのVacA−蛋白質のオートトランスポーター(S
chmitt und Haas,Mol.Microbiol.12(1994),307-319)又はリケッチアからの
種々の蛋白質のオートトランスポーター(例えば190KDa 細胞表面抗原、
Genank-Accessionnr.M31227;Spap、Carl et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
87(1990),8237-8241;rOmpB、Gilmore et al.,Mol.Microbiol.5(1991),23
61-2370 及びSlp T,Hahn et al.,Gene133(1993),129-133)又は前記の
ように定義されたその変異体である。
先に記載のオートトランスポーターのDNA−配列及びこれから誘導されたア
ミノ酸配列を第7図〜第24図に記載する。
細菌表面蛋白質中の又は分泌された細菌性蛋白質中の更なるオートトランスポ
ータードメインは、データバンク中に存在する蛋白質配列、データバンクで入手
可能なDNA−配列をベースとする蛋白質配列又は配
列分析により直接又は間接的にDNA−配列を介して特定された蛋白質配列から
誘導することができる。相応してコードする領域(遺伝子)は、グラム陰性菌、
殊にE.コリ中でのパッセンジャー蛋白質の有効な表面発現を可能とするベクタ
ー又は融合蛋白質遺伝子の製造のために使用することができる。
本発明において、表面提示又は−露出とは、融合蛋白質又はパッセンジャード
メインが細菌外膜の媒体に向いている側上に局在していることを意味する。表面
露出されたパッセンジャー蛋白質は、無傷のグラム陰性菌中で自由に結合パート
ナーに受け入れられる。
従って、有利な1実施形で、本発明は、ペプチドの表面提示又はもう一つの実
施形ではグラム陰性菌、殊にE.コリ中でのペプチドライブラリイの表面提示を
可能にし、抗体又は他のレセプターに対する親和性の測定のため又はエピトープ
マッピングのためのその使用を可能にする。エピトープマッピングとは、抗体又
は他のレセプターへの最大親和性を有するペプチドが生産菌株上で表面露出して
同定されることを意味する。この場合に、ペプチドライブラリイの発現のための
、従来使用されていたファージ系(Makowski,Gene 128(1993),5-11)に比べた本
発明の決定的な利点が明白になる。本発明による細菌系中では、所望の特性を有
する1ペプチドの同定と同時に、クローン生産体の選択を行う。これは、直接増
殖することができ、ファー
ジ系におけるような感染(ファージ増加)及び選択(ファージ選択)のコストの
かかるサイクルを必要とすることなく、所望のペプチドの大量生産のために使用
することができる。正しいペプチドを表面露出発現する菌株の増殖と同時に、そ
の配列分析がペプチドの明白な同定及び特徴付けを簡単かつ確立された技術を用
いて可能とする、相応してコードする遺伝子の増幅を行う。これらの本発明によ
る利点は、本発明で表面露出発現される全てのパッセンジャードメイン、即ちペ
プチド及びポリペプチド上で現れる。
従って、本発明により製造されたペプチドライブラリイは、特に有利なAID
Aオートトランスポーターからの変異体中のオートトランスポーター及びグラム
陰性菌、有利にE.コリ中で表面露出して生産されるペプチドから成る融合蛋白
質を含有する。種々に発現されたペプチドの高い分散は、典型的な例では縮重さ
れた合成オリゴヌクレオチドのクローニングにより、シグナルペプチドとオート
トランスポーターに関するコード性領域の間に生じる。
もう一つの有利な実施形では、本発明は、抗原としての作用をする蛋白質又は
蛋白質フラグメントのグラム陰性菌、特にE.コリの表面上での発現を可能とす
る。このような融合蛋白質の構築は、本発明によれば、パッセンジャーとしての
ビブリオ・コレラエのトキシンのβ−サブユニット(CtxB)及び担体蛋白質
としてのAIDAオートトランスポーターの使用下に行った。使用される結合パ
ートナーに対する表面露出された抗原ドメインの易入性は、CtxBに特異的な
抗血清を用いる標識付けにより本発明により証明された。この場合に、組み換え
られ、E.コリ宿主菌株の外膜中に貯蔵された融合蛋白質が、総細胞蛋白質の5
%まで達することができることが明らかであり、このことは、他の系に比べた著
しく改善された作用効果を意味する。従って、ここに記載の方法は、グラム陰性
菌の表面上での抗原作用をする蛋白質又は蛋白質フラグメントの安定な生産及び
提示を可能にし、有利な実施形でのその生ワクチンとしてのその使用、経口ワク
チン接種又は血清又は抗体バンクのスクリーニングのために使用することを可能
にする。表面露出発現された抗原作用をする蛋白質を有する細菌細胞、例えば弱
毒化されたサルモネラ菌株(Schorr et al.,Vaccine9(1991),675-681)の使用は
、生ワクチン接種の際に抗原の細胞内細菌発現に比べて有利であることが立証さ
れた。
一般に、有利な1実施形で、本発明は、その主成分中のペプチド又は蛋白質が
グラム陰性菌、殊にE.コリの表面上に存在する全てのパッセンジャーの表面発
現を可能にする。
もう一つの有利な実施形では、AIDA蛋白質、AIDAオートトランスポー
ターのC−末端ドメインが
、グラム陰性菌の表面上での、免疫系の組み換えポリペプチド、例えば組み換え
抗体ドメインの提示のための膜アンカーとして役立つ。組み換え抗体フラグメン
トの表面発現は、その迅速な修飾をも、その抗原−結合特性の評価及び検査をも
可能にする。従って、機能性抗体フラグメントの可能な完全なライブラリイを表
面露出して生産すること及び特定の所望結合特性又は親和性を試験することまで
を可能にする。従来使用されていたファージ系に比べた本発明の利点は、変形、
即ち同じ宿主組織中で遺伝子操作及び蛋白質の生産を行うことができることにあ
る。この場合に、この遺伝子操作は、一つの目的とする操作(場所特異的突然変
異)であるか、又は縮重されたオリゴヌクレオチドの使用下でのパッセンジャー
としての抗体−コードするフラグメント及び担体蛋白質としてのオートトランス
ポーターからの無傷の融合の合成のための偶然の操作であり得る。同様に、この
遺伝子操作はインビボ−突然変異の形で行うことができ、ここでは、融合蛋白質
に関する遺伝子を含有する細菌に、エネルギーの高い照射線(例えばUV)を当
てるか又は化学的突然変異剤を作用させることができる。
正しい結合特性を有する分子の本発明による選択は、生産細菌細胞の選択によ
り行う。このことから、本発明による方法は、免疫系の自然の戦略の変形及び後
続の選択よりなるその戦略において、免疫原分子の結
合特性の可能な最善の適合に依ることが明らかになる。グラム陰性菌、殊にE.
コリの表面上での、通常はグリコシル化されない抗体の機能性抗原−結合性部分
の発現のために、種々の発明性のある処置法が考えられる。軽い鎖(VL)及び
重い鎖(VH)とそれぞれ1個のオートトランスポータードメイン(これらは相
互に無関係に異なる和合性のベクターと共に、又は異なるプロモーターの制御下
に1宿主細胞中の同じベクター上に発現させられる)との別々の融合により、2
個の1価のフラグメントを一緒に提示させることができる。その表面上には、双
方の表面露出されて存在する抗体ドメインが一緒に集合して機能性Fv−フラグ
メントになり、この際、相互作用の安定性は、化学的に誘導されたジスルファイ
ド橋形成又は他の性質の化学的架橋結合により促進されうる。
本発明のもう一つの処置法では、担体蛋白質としてのオートトランスポーター
を含有し、パッセンジャーとして1抗体の抗原−結合性ドメインの軽い鎖(VL
)及び重い鎖(VH)が短いリンカーペプチド(これは機能性Fv−フラグメン
トへの双方の鎖の正しい集合を可能とする)(例えば[Gly4Ser]3)を介
して結合している融合蛋白質を製造する。このような単一鎖(sc)Fv−フラ
グメントの構築の際には、軽い鎖のN−末端と重い鎖のC−末端との結合も、重
い鎖のN−末端と軽い鎖のC−末端との結合と同様
に可能である(Pluckthum Immun.Rev.130(1992),151-188)。記載の処置法を用
いて、完全なFab−フラグメントの生産も可能である。
もう一つの有利な実施形で、本発明は、場合により、定義の貯蔵されたペプチ
ドを有するE.コリ中のMHC−群II分子の表面露出発現を可能とする。この
場合に、二つの戦略が考えられる。一つの変形では、2個の異なる融合蛋白質(
これらは双方とも1個のオートトランスポーターを担体蛋白質として含有する)
を、1宿主細胞中で異なるプロモータの制御下で別々の和合性ベクター上に又は
1ベクター上に発現させる。パッセンジャー蛋白質としては、一方では所望のM
HC−群IIサブタイプのα−鎖が、かつ他方ではこのサブタイプのβ−鎖が役
立ち、これらのN−末端には1リンカーを介して所望のペプチドが付いていてよ
い(Kozono et al.,Nature 369(1994)151-154)。
第2の変法では、ペプチド、β−鎖及びα−鎖より成るパッセンジャー蛋白質
をオートトランスポーターと融合させる。この細菌表面上に、α−及びβ−鎖が
集合して機能性MHC−分子になり、この際、このペプチドがまさしくこの結合
穴内に蓄積する。このコンプレックスの安定性は、化学的に誘導されたジサルフ
ァイド橋形成により支持されうる。融合蛋白質をコードするDNA−フラグメン
トの製造時に、貯蔵されたペプチドの変形は、場所特異的な突然変異及び/又は
縮重されたオリゴヌクレオチドプライマーの使用より、同様にエネルギーの高い
照射線及び/又は化学的突然変異の使用下でのインビボー突然変異によるり可能
である。
ここでも、本発明による方法の利点がなお明白である。結合パートナーの変形
、最適特性を有する分子の発現、選択、配列分析及び安定な生産が1宿主菌株中
で行なうことができる。これにより、例えば既に公知の良好な結合特性を有する
リガンドの変異体の迅速な特徴付け、及びこれに伴うリガンドー又はレセプター
至適化も可能である。
もう一つの有利な実施形では、本発明は、免疫遅延型レセプター、例えばCD
1、Fc−レセプター又はMHC−クラスI分子及びそれらの目的とする変形の
表面発現を可能とする。
もう一つの有利な実施形で、本発明は、T−細胞レセプター又はその部分の、
かつ他の表面抗原性の真核細胞又は免疫系の細胞の表面発現を可能とする。
もう一つの有利な実施形で、表面発現された蛋白質フラグメント又はペプチド
は、適当なセルライン又はプライマーセル、例えばマクロファージによる細菌の
収容に引き続いて、クラスI又はIIのMHC−分子中に貯蔵されたペプチドと
して提示され、特定のT−細胞の刺激のために役立つことのできるT−エピトー
プである。
特に有利な1実施形では、本発明の方法は、結合パートナーに対する親和性を
有するペプチド又はポリペプチド、リガンド、レセプター、抗原、トキシン結合
性蛋白質、酵素活性を有する蛋白質、核酸結合性蛋白質、ィンヒビター、キレー
ター特性を有する蛋白質、抗体又は抗体の抗原結合性ドメインの変形を可能とす
る。
本発明では、「結合パートナー」なる概念に、元素、分子、化学結合又は高分
子が入ると理解されるが、この際、結合パートナー及び/又はそれらは、融合蛋
白質を発現する細菌細胞を自由に溶解して、マトリックスに結合して又は生物学
的膜と会合して存在する。
本発明で、「抗原結合性ドメイン」なる概念は、少なくとも、1抗原の特異的
結合のために充分である抗体分子の範囲を意味する。
もう一つの有利な実施形で、本発明は、表面露出されたパッセンジャーペプチ
ド又は−ポリペプチド又はその部分の化学的、物理的又は/及び酵素的修飾を可
能とし、その際、この修飾は、共有的修飾、非共有的修飾、グリコシル化、ホス
ホリル化又は蛋白質分解であってよい。
表面露出されたペプチドの変異ポピュレーシヨンを製造し、それぞれ所望の特
性を有するペプチド又はポリペプチドを有する細菌の同定のための本発明の方法
は、次の工程を包含する:
(1)フレーム内での1つのオートトランスポーター及び1つのシグナルペプチ
ドのトランスポータードメインのコード性配列を有する所望のパッセンジャーの
コード性配列のクローニングにより、少なくとも1ベクター中に1以上の融合遺
伝子を製造する、この際、個々の部分フラグメントはPCRを介して増幅させる
か又は他のDNAの制限消化から由来することができる;
(2)突然変異による、例えば場所特異的な突然変異、縮重されたオリゴヌクレ
オチドプライマーのPCRでの使用、化学的突然変異又はエネルギーの高い照射
線の使用によるこのパッセンジャーの変形;
(3)宿主細菌中へのこの又はこれらのベクターの取り込み;
(4)融合蛋白質又は複数の融合蛋白質をその表面に安定して提示する宿主細菌
中での融合遺伝子又は複数の融合遺伝子の発現;
(5)安定に表面露出提示されたパッセンジャー又は複数のパッセンジャーを生
産させるための、例えば培養液中又は寒天プレート上でのこの細菌の培養;
(6)場合による、所望の特性を有するパッセンジャー又は複数のパッセンジャ
ーをその表面上に有する細菌の選択;及び
(7)場合による、至適特性を有するパッセンジャーの結合パートナーの特徴付
け。
この場合に、本発明により、表面露出されペプチド又はポリペプチドの特性を
段階的に所望の結合特性に適合させるか又は第1の工程で結合パートナーを1特
性に関して至適化し、第2の工程で1以上の他の特性に関して至適化するために
、この方法を数回実施することができる。しかしながら、本発明によれば、所望
の用途に応じて、この方法の工程の個々の1部分のみを相互に連結することもで
き、典型的な1例では、工程(1)、(3)、(4)及び(5)であるが、他の
全てを組み合わせも可能である。
この方法の有利な1実施形では、融合蛋白質は、担体蛋白質として、融合蛋白
質を分泌することのできるAIDA蛋白質のオートトランスポータードメイン又
はその変異体を含有する。
この方法のもう一つの有利な実施形では、融合蛋白質が担体蛋白質として、S
epAオートトランスポーター又はその一部分、又はIcsAオートトランスポ
ーター又はその一部分、又はTshオートトランスポーター又はその一部分、又
はSspオートトランスポーター又はその一部分、又はHapオートトランスポ
ーター又はその一部分、又はPrnオートトランスポーター又はその一部分、又
はHsrオートトランスポーター又はその一部分、BrkAオートトランスポー
ター又はその一部分、又はVacAオートトランスポーター又はその一部分又は
リケッチアオートトランス
ポーター又はその一部分を含有し、それぞれは融合蛋白質の分泌を可能にする。
本発明により、1細胞中でその表面上に集合して機能性ユニットになる種々の
融合蛋白質を製造することにより、マルチマーの蛋白質を発現させることができ
る。
宿主生物として使用可能な細菌の僅かな世代時間は、変形及び選択の永久的サ
イクルを可能とし、これはパッセンジャー蛋白質の又はオートトランスポーター
の所定の特性への進化性適合を可能とする。この場合の典型的1例は、パッセン
ジャー蛋白質と結合パートナーとの間の結合親和性である。安定に露出された融
合蛋白質を有する細菌の単離は、この方法の有利な1実施形では、固定化された
又は/及び標識された結合パートナー、例えばマトリックス−固定された結合パ
ートナーへの、蛍光標識された結合パートナー、磁気粒子標識された結合パート
ナー又は発色団標識された結合パートナーへの結合により行う。もう一つの有利
な実施形では、この結合パートナーを、それが第2工程で修飾のための特異的な
結合パートナーにより検出することができるように修飾されている。
本発明のもう一つの目的は、安定に発現された融合蛋白質又はその一部分又は
安定にその表面上に発現された融合蛋白質を有する細菌の製造及び治療の目的又
は診断の目的のための、有害物質増加又は除去の際、
トキシンの失活化の際、原料物質流通の際、食料品製造又は−加工の際、洗剤製
造の際、所望の真核又は原核細胞の標識付けの際のその使用である。本発明によ
れば、抗体又は抗体フラグメントが表面発現性細菌上で安定であり、典型的な例
ではトランスポータードメインとしてのAIDAオートトランスポーターの使用
下に、それの生産のために使用することができ、この際、この抗体又は抗体フラ
グメントは引き続き、場合によっては精製の後に、診断又は治療の目的に使用す
ることができる。このような抗体又は抗体フラグメントを用いて、例えば特定の
表面マーカー(典型的な例として、ここでは腫瘍抗原が挙げられる)を有する細
胞を特異的に特徴付ける又は選択することも可能である。もう一つの典型的な例
では、標識付けられた表面マーカーはレセプターであり、この際、標識付けは1
又は複数のレセプター特性のブロッキングにより行われ、これにより、レセプタ
ーにより開始されたか又は仲介されたシグナル形質導入の及びそれに伴う細胞機
能の目的とする抑制が可能である。
図面の説明
第1図:AIDA−I蛋白質のC−末端300アミノ酸の疎水性
グラム陰性菌の外膜中のオートトランスポーターに典型的な孔が、両親媒性の
β−折畳み板構造により、すなわちβ−折畳み板構造及び交互の疎水性及び親水
性のアミノ酸を有するドメインから形成される。このことは、アミノ酸の特定の
アルゴリズムを用いて関係付けられたアミノ酸の相対的疎水性値をアミノ酸の位
置に対してプロットすることにより可視化することができる。フォーゲル(Vogel
)及びイェーニッヒ(Jaenig)のアルゴリズム(J.Mol.Biol.190(1986)191-199)を
用いた。矢印は、可能な膜流路を示しており、この際、左向きの矢印は、膜流路
が内部から外部に向かって進み、右向きの矢印は外部から内部への膜流路を示し
ていることを意味する。Spはエミニ(Emini)等(J.Virol.55(1985),836-839)に
より計算されたアミノ酸の相対的表面確率を意味する。
第2図:
AIDA−I蛋白質からのオートトランスポーターのモデル
その位置に対するアミノ酸の相対的疎水性のプロット(第1図)から出発して
、非平行な両親媒性のβ−折畳み板により形成された樽構造をモデルとして図示
することができる。ここに図示されている切り放された樽構造は、その膜中で、
最初と最後の非平行の膜流路の相互作用により閉鎖される。菱形中に記載されて
いるアミノ酸が、膜範囲内に存在し、この際、太線で縁取られたものは相対的に
疎水性であり、樽の外側に向かって、即ち膜に向かって配向されており、細い線
で縁取られたものは相対的に親水性であり、その側鎖
で孔の内側を指している。円内に記載されているアミノ酸は、膜の外でループを
形成している。このモデルの位置1のアラニンは、AIDA−Iの完全配列中で
番号1014を有し、この完全配列中の末端のフェニルアラニンは、番号128
6を有する(Benz und Schmidt,Mol Microbiol 11(1992),1539-1546)。
第3a図:
pJM7、CtxBの表面発現のためのベクターの製造
pJM7は、コレラトキシンB及びAIDA−リンカー/β−樽−領域からの
遺伝子融合(FP59)を含有する。この遺伝子融合は、人工プロモータPTK
(Klauser et al.,EMBO J.(1990)1991-1999)のコントロール下に、1ベクター中
に高いコピー数で本質的に発現される。ctxB−遺伝子を、プラスミドpTK
1からのオリゴヌクレオチドEF16及びJM6(Klauser et al.,EMBO J.9(1
990)1991-1999)と共にPCRにより増幅させた。β−樽及びAIDA−Iからの
リンカー領域からなるオートトランスポーターを、E.コリ EPEC2787
のプラスミド−DNA−調製物からのオリゴヌクレオチドJM1及びJM7(Ben
z und Schmidt,Infect.Immun.57(1989),1506-1511)と一緒の増幅により増幅させ
た。オリゴヌクレオチドJM1は、その5’−突出部にBglII−認識配列を
有し、オリゴヌクレオチドJM6及びJM7は
、それぞれ1個のKpnI−認識配列を有する。ベクターDNA(pBA)をC
laI及びBamHIを用いて加水分解させ、双方のPCR−生成物を、その増
幅に引き続き、ClaI及びKpnI(EF16/JM6−フラグメント)又は
BglII及びKpnI(JM7/JM1−フラグメント)を用いて後切断した
。こうして生成された3個のフラグメントをリゲーシヨンで凝集させた。
第3b図:
pJM22、ペプチドの表面発現のためのベクターの製造
pJM22は、3個のドメインよりなる融合蛋白質FP50を生産する。N−
末端に、CtxM−シグナル配列が存在し、これは、生じる融合蛋白質を細胞膜
を経る(Sec−介在)エキスポートのために作用する。これに引き続き、パッ
センジャードメイン、この場合にはペプチド、エピトープPEYFKが続く。A
IDA−β−樽/リンカー領域、オートトランスポーター(これはN−末端をシ
グナルペプチドの周りで短縮されたパッセンジャードメインをE.コリの表面上
に搬送する)を有する融合蛋白質は、C−末端で終端している。pJM22の構
築のために、差し当たりpJM7のDNAをXhoIで加水分解し、pJM7の
ベクター分をPCRによりオリゴヌクレオチドJM7及びJM20と共に増幅さ
せた。この場合に、ctx
B−遺伝子はそのシグナル配列以外で欠失された。オリゴヌクレオチドJM20
は、その5’−突出部中にKpnI−切断配列に加えて、アミノ酸PEYFKを
コードする5個のコドンを含有した。このアミノ酸順
プである。PCR−生成物をKpnIを用いて加水分解させ、引き続きそれ自体
リゲートさせた。
第4図:
発現証明及びプロテアーゼ敏感度
E.コリ中の融合蛋白質FP59(pJM7から)及びFP50(pJM22
から)の極めて安定な発現に基づき、これらは、クマシーブリリアントブルーで
染色された完全細胞リゼート中で容易に同定できる。プロテアーゼ易入性は、蛋
白質の局在化の測定のための慣用の手段である。細胞特有の蛋白質が細菌の外側
上に提示されるか又はこの細菌の外膜がプロテアーゼに関して通過性にされる際
にのみ、細胞特有の蛋白質への易入性が期待される。この通過性を排除するため
に、プロテアーゼ−敏感性マーカーを使用することができ、それは自然にはペリ
プラズム中に存在することが公知である。これが使用されたプロテアーゼにより
作用されない場合にのみ、外膜の無傷性が保証される。E.コリ UT5600
又はJK321の細胞を、一晩LB−寒天(アンピシリン50mg/l)上で培
養させ、PBS中に懸濁させた。この細胞懸濁液をO
D578=4.0に調節した。細胞懸濁液0.5mlからの細胞をテーブル遠心分
離器中で1分間沈殿させ、プロテアーゼ0.1g/mlを有するPBS200μ
l中に再懸濁させた。このバッチを37℃で20分間恒温保持し、0℃までの冷
却、1分間の沈殿及びSDS−PAGE−試料緩衝液40μl中へのペレットの
再懸濁及び直ちの15分間の煮沸により停止させた。SDS−PAGEの後のウ
エスタン−ブロット(4b及び4c)により又はクマシーブリリアントブルーで
の染色(4a)により評価を行った。プロテアーゼがペリプラズムへの易入性を
有することを排除するために、パッセンジャー蛋白質ドメインに対して特異的で
ある抗血清のみならず、自然には非易入性でペリプラズム中に存在し、従って、
外から添加されたプロテアーゼ、例えばトリプシンによっては作用されないはず
であるOmpA(4c)のC−末端部分に対して特異的な抗血清も使用した。
第4a図:
プロテアーゼ敏感性の証明及び発現の定量のためのSDS−PAGE及び引き
続くクマシーブリリアントブルーでの染色。E.コリ JK321及びE.コリ
UT5600の完全細胞リゼートを塗布した。
レーン1 JK321 pJM7 C*
レーン2 JK321 pJM7 T**
レーン3 JK321 pJM7 −***
レーン4 分子量マーカー(94、67、43、3
0、20及び14kDa)
レーン5 JK321 pJM22 C
レーン6 JK321 pJM22 T
レーン7 JK321 pJM22 −
レーン8 JK321 pTK61 C
レーン9 JK321 pTK61 T
レーン10 JK321 pTK61 −
レーン11 UT5600 pJM7 C
レーン12 UT5600 pJM7 T
レーン13 UT5600 pJM7 −
レーン14 分子量マーカー(94、67、43、3
0、20及び14kDa)
レーン15 UT5600 pJM22 C
レーン16 UT5600 pJM22 T
レーン17 UT5600 pJM22 −
レーン18 UT5600 pTK61 C
レーン19 UT5600 pTK61 T
レーン20 UT5600 pTK61 −
C* 細胞をキモトリプシンで消化した
T** 細胞をトリプシンで消化した
*** 本来の細胞
第4b図:
発現及びプロテアーゼ敏感性を証明するためのウエスタン−ブロット
EP.コリ JK321及びE.コリ UT5600の完全細胞リゼートを塗
布した。電気泳動の後にゲルからの半乾燥法の後の蛋白質をニトロセルロース膜
上に移した。引き続き、フィルターをブロック溶液(Tween20 0.5%
及びNaCl 0.5Mを含有するPBS)で10分間ブロックし、第1の抗血
清、AK55(ウサギ−抗−コレラトキシンB)を1:200でブロック溶液中
に希釈して添加した。エピトープPEYFKの証明のために、ハイブリドーマ−
上澄
て添加した。フィルターを一次抗体と一緒に1時間恒温保持し、引き続き3回洗
浄し、プロテインA−アルカリ性−ホスファターゼーコンジュゲート(1:50
0ブロック溶液中)と共に30分間恒温保持した。このフィルターをNBT/B
CIP−染色溶液で呈色させた。
レーン1 JK321 pJM7 C*
レーン2 JK321 pJM7 T**
レーン3 JK321 pJM7 −***
レーン4 分子量マーカー(106、80、50、
32、27及び18kDa)
レーン5 JK321 pJM22 C
レーン6 JK321 pJM22 T
レーン7 JK321 pJM22 −
レーン8 JK321 pTK61 C
レーン9 JK321 pTK61 T
レーン10 JK321 pTK61 −
レーン11 UT5600 pJM7 C
レーン12 UT5600 pJM7 T
レーン13 UT5600 pJM7 −
レーン14 分子量マーカー(106、80、50)
32、27及び18kDa)
レーン15 UT5600 pJM22 C
レーン16 UT5600 pJM22 T
レーン17 UT5600 pJM22 −
レーン18 UT5600 pTK61 C
レーン19 UT5600 pTK61 T
レーン20 UT5600 pTK61 −
C* 細胞をキモトリプシンで消化した
T** 細胞をトリプシンで消化した
−*** 本来の細胞
第4c図:
ウエスタン−ブロット−分析による外膜の無傷性の証明
E.コリ JK321及びE.コリ UT5600の完全細胞リゼートを塗布
した。電気泳動の後にゲルからの半乾燥法の後の蛋白質をニトロセルロース膜上
に移した。引き続き、このフィルターをブロック溶液(Tween20 0.5
%及びNaCl 0.5Mを含有するPBS)で10分間ブロックし、第1の抗
血清
、K56(ウサギ抗−OmpA)を1:1000でブロック溶液中に希釈して添
加した。このフィルターを1次抗血清と一緒に1時間恒温保持し、引き続き3回
洗浄し、プロテインAアルカリ性−ホスファターゼ−コンジュゲート(ブロック
溶液中1:500)と一緒に30分間恒温保持した。このフィルターをNBT/
BCIP−染色溶液で呈色させた。OmpAは、C−末端ペリプラズム分を有す
るE.コリの外膜蛋白質である。このペリプラズム分は、トリプシン敏感である
。トリプシンがぺリプラズムへの易入性を有する場合には、成熟OmpA(35
kDa)により約10〜11kDaの大きい部分が消化される。即ち、消化は、
ウエスタンブロットでのOmpA−バンドの35kDaから25kDaへの転換
も生じさせるであろう(Klauser et al.,EMB0 J.9(1990)1991-1999)が、組み
換え蛋白質の移送のためのAIDA−Iオートトランスポーターの使用の際には
明らかにこの場合ではない。
レーン1 JK321 pTK1 T*
レーン2 JK321 pJM7 T
レーン3 JK321 pJM22 T
レーン4 JK321 pTK61 T
レーン5 分子量マーカー(106、80、50、
32、27及び18kDa)
レーン6 JK321 pTK1 −**
レーン7 JK321 pJM7 −
レーン8 JK321 pJM22 −
レーン9 JK321 pTK61 −
レーン10 なし
レーン11 UT5600 pTK1 T*
レーン12 UT5600 pJM7 T
レーン13 UT5600 pJM22 T
レーン14 UT5600 pTK61 T
レーン15 分子量マーカー(106、80、50、
32、27及び18kDa)
レーン16 UT5600 pTK1 −**
レーン17 UT5600 pJM7 −
レーン18 UT5600 pJM22 −
レーン19 UT5600 pTK61 −
T* 細胞はトリプシンで消化
** 本来の細胞
第5図:
免疫蛍光
完全な非浸透性細胞の免疫蛍光は、露出された決定子の細胞表面上での証明の
慣用の方法である。この場合に決定子の検出のために使用される抗体は、無傷の
外膜を通って到達するためには大きすぎる。ペリプラズム又は細胞に発現した決
定子の背景活性の差別化又は査定のために、対照として公知のペリプラズム又は
細胞に発現した抗原に対する抗体を利用する。
プラスミドpBA、pTK1、pTK61、pJM7又はpJM22の一つを
含有するE.コリ UT5600をLB−寒天(アンピシリン50mg/l)上
で一晩培養させ、PBS中に578nmで0.1の光学密度になるまで懸濁させ
た。この細胞懸濁液500μlを、24穴−マイクロ滴定プレート中に置かれた
カバーグラスに重層させた。細胞をプレート遠心機中で5分間このカバーグラス
上に沈殿させた。上澄みの450μlを取り除き、PFA(パラホルムアルデヒ
ド)2.5%を有するPBSで置換し、これにより20分間固定させた。上澄み
を完全に取り除き、PBS500μlで3回洗浄した。非特異的結合位置を、F
CS1%を含有するPBS300μlと一緒に5分間の恒温保持によりでブロッ
クした。このブロック溶液を完全に取り除き、カバーグラスをその凹中に中心を
とり、ウサギ血清AK55の1:100希釈液15μlで覆い(コレラトキシン
Bに対して展開)、湿った室内、室温で1時間恒温保持した。引き続き、PBS
各500μlで3回洗浄し、PBS/FCS350μlで5分間ブロックし、羊
−抗−ウサギ−テキサスレッド−コンジュゲートの1:100希釈液15μlと
共に30分間恒温保持した。引き続く3回洗浄の後に、載物プレート上にカバー
グラスを載せ、包埋媒体と一緒に埋め込んだ。免疫蛍光の結果を顕微鏡で評価し
、同じ長さの露光時間で写真に記録した。
a)E.コリ UT5600 pBA(挿入なしのクローニングベクターのみを
含有する、利用菌株の負対照として)
b)E.コリ UT5600 pTK1(ペリプラズム中に露出されるコレラト
キシンBを生産する。この構築はペリプラズムに発現されたコレラトキシンBの
背景活性の測定のために役立つ)。
c)E.コリ UT5600 pJM7(E.コリ の表面上に提示されるAI
DA及びコレラトキシンBからの融合蛋白質であるFP59を発現させる)。
d)E.コリ UT5600 pJM22(AIDAとエピトープPEYFKと
からの融合蛋白質であるFP50を発現させる。この構築を用いて、FP59及
びFP50のAIDA−分がこの実験で利用されたAK55と交叉反応を有しな
いことが示される)。
e)E.コリ UT5600 pTK61(E.コリの表面上に提示されるコレ
ラトキシンBとIga−βとからの融合蛋白質を生産する(Klauser et al.,ENB
O J.9(1990)1991-1999)。AIDA−構造FP59との比較のために役立つ)。
第6図:
使用オリゴヌクレオチドのDNA−配列
第7図〜第24図
細菌性オートトランスポーターのDNA−配列(非コード性ストランド)及び
これらから誘導されたアミ
ノ酸配列。
第7図:
膜中に集積された部分のエセリキア・コリからのAIDA−Iのオートトラン
スポーター(Benz und Schmidt,Mol.Microbiol.6(1992),1539-1546)の表示。
第8図:
膜中に集積された部分のボルデテラ・ペルトウシスからのBrkAのオートト
ランスポーター(Fernandez und Weiss,Infect Immun.62(1994),4727-4738)の表
示。
第9図:
膜中に集積された部分のヘモフィルス・インフルエンザからのHapのオート
トランスポーター(StGeme et al.,Mol.Microbiol.14(1994),217-233)の表示。
第10図:
膜中に集積された部分のヘリコバクター・ムステラエからのHsrのオートト
ランスポーター(O'Toole et al.,Mol.Microbiol.11(1994),349-361)の表示。
第11図:
膜中に集積された部分のシゲラ・フレクスネリからのIcsAのオートトラン
スポーター(Goldberg et al.,J.Bacteriol 175(1993),2189-2196)の表示。
第12図:
膜中に集積された部分のボルデテラ・ペルトウシスからのPrn(外膜蛋白質
p96)のオートトランスポーター(Charles et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
86(1989),3554-3558)の表示。
第13図:
膜中に集積された部分のボルデテラ・パラペルトウシスからのPrn(p70
,ペルタクチン)のオートトランスポーター(Li et al.,J.Gen.Microbiol.138
(1992),1697-1705)の表示。
第14図:
膜内に集積された部分のリケッチア・リケッチイからの190kDa細胞表面
抗原のオートトランスポーター(Anderson et al.,非公開,Genbank-Accessionnr
.31227)の表示。
第15図:
膜中に集積された部分のリケッチア・プロワゼキイからのSpaPのオートト
ランスポーター(Carl etal.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87(1990),8237-8241)
の表示。
第16図:
膜中に集積された部分のリケッチア・リケッチイの120キロダルトン外膜蛋
白質(rOmpB)からのオートトランスポーター(Gilmore et al.,Mol.Micro
biol.5(1991),2361-2370)の表示。
第17図:
膜中に集積された部分のリケッチア・チフィからのSlpTのオートトランス
ポーター(Hahn et al.,Gene 133(1993),129-133)の表示。
第18図:
膜中に集積された部分のシゲリア・フレックスネリからのSepAのオートト
ランスポーター(Benjellou -Touimi et al.,Mol.Microbiol 17(1995),123-13
5)の表示。
第19図:
膜中に集積された部分のセラテイア・マルセッセンスRH1からのSspのオ
ートトランスポーター(Rho,非公開,Genbank-Accessionnr.X59719)の表示。
第20図:
膜中に集積された部分のS.マルセッセンス IFO−3046、クローンp
SP11のSspのオートトランスポーター(Yanagida et al.,J.Bacteriol.16
6(1986),937-944)の表示。
第21図:
膜中に集積された部分のセタリア・マルセッセンス、菌株IFO3046から
のSsp−h1のオートトランスポーター(Onishi und Horinouchi,非公開,Genb
ank-Accessionnr.D78380)の表示。
第22図:
膜中に集積された部分のセタリア・マルセッセンス
、菌株IFO3046からのSsp−h2のオートトランスポーター(Ohnishi u
nd Horinouchi,unveroeffentlicht,Genbank-Accessionnr.D78380)の表示。
第23図:
膜中に集積された部分のエセリキア・コリからのTshのオートトランスポー
ター(Provence et al.,1994,Infect.Immun.62(1994),1369-1380)の表示。
第24図:
膜中に集積された部分のヘリコバクター・ピロリからのVacAのオートトラ
ンスポーター(Schmidt und Haas,Mol.Microbiol.12(1994),307-319)の表示。V
acAからヘリコバクター・ピロリにおいて少なくとも3種の他の形が公知であ
るが、これらは記載の範囲内では実質的に異なっていない。
実施例
例1
エセリキア・コリの表面蛋白質中のオートトランスポーターの同定及び局在化
所望の用途に適する、即ちパッセンジャー蛋白質及び使用すべき宿主菌株に適
合するオートトランスポーターを見つけるために、使用される蛋白質のC−末端
アミノ酸配列の分析を実施することが必要である。この場合、これは、既に表面
因子として同定された1蛋白質であるが、不明な機能を有する蛋白質のデータバ
ンクにファイルされたアミノ酸並列、1データバンク
にファイルされたDNA−DNA−配列から誘導された1蛋白質のアミノ酸配列
又は一つの遺伝子の配列分析に引き続き誘導された1蛋白質のアミノ酸配列であ
ってよい。この蛋白質のN−末端は、内膜を介しての移送を可能にするために一
つのシグナルペプチド配列を含有すべきであり、C−末端には、この膜内に集積
された部分が芳香族アミノ酸フェニルアラニン又はトリプトファンで開始すべき
であり、交互に極性(又は帯電された)及び疎水性(又は芳香族)アミノ酸が引
き続く。パッセンジャードメインは、少ないシステインを含有すべきであり、ジ
スルファイド橋を殆ど含有してはならない、それというのも、これらは形成され
た孔を通るパッセンジャーの移送をブロックすることが明らかであるからである
。疎水性プロットは、外膜孔を構成する両親媒性のβ−折畳み板構造の偶数を示
すべきである。両親媒性のβ−折畳み板構造は、約12個のアミノ酸長を有し、
帯電性アミノ酸の最小1個が膜側に向いて含有すべきであり、この際、膜流路を
結合するループがペリプラズムに向かって僅かなアミノ酸を含有すべきである。
外側(媒体)に向かって著しく多いアミノ酸が存在していてよい。このことから
、疎水性プロット中で、膜流路の最初及び最後の膜流路を除いて、非平行な対で
膜流路の集合が起こり、これらは非平行な相互の集合により孔の樽構造を完成す
る。この基準の満足から出発して、今や、オートトラ
ンスポーターのモデルを作成することができ、これを用いて移送に必要なアミノ
酸の位置及び範囲を決定することができる。孔のために必要であるアミノ酸に加
えて、なおβ−樽構造のペリプラズムに配置されたN−末端から孔を通って表面
に進むいわゆるリンカー領域も、この融合蛋白質中への機能性オートトランスポ
ーターを保証するはずであり、これにより全てのパッセンジャードメインの表面
露出が完全に確保される。
本発明の第一の目的は、E.コリ中に組み換え蛋白質の至適表面露出のための
系を準備することであった。従って、E.コリの天然の表面蛋白質中のオートト
ランスポーターが所望された。その配列がデータバンクから入手可能であるアド
ヘシンAIDA−I(Adhesin Involved in Diffuse Adherence,Benz und
Schmidt Infect.Immun.57(1989)1506-1511)を選択した。本発明により、4
9アミノ酸のN−末端の1シグナル配列が明らかになり、C−末端では、本発明
の有利な条件はアミノ酸順序FSYKI(フェニルアラニン−セリン−トリプシ
ン−リジン−イソロイシン)により満たされた。移送されたドメインは、システ
インを含有せず、疎水性プロット(第1図)により、14の非平行な両親媒性β
−折畳み板構造が予測された。これにより、孔の形成のためには、少なくとも、
全アミノ酸配列(Benz und Schmidt,Mol.Microbiol.6(1992)1539-1546)の位
置1014のアラニン
から位置1286のフェニルアラニンまでのアミノ酸が必要である(第2図)。
リンカー領域として、アラニン1014のN−末端に引き続く付加的なアミノ酸
を選択した。このように選択された機能性オートトランスポーター領域は、今や
PCRを用いて相応するE.コリEPEC2787のDNAから単離することが
でき、融合蛋白質の構築のために使用することができる。
例2
パッセンジャー蛋白質としての抗原性決定子を有する表面露出された融合蛋白
質の構築
AIDA−Iはオートトランスポーターであり、任意のパッセンジャー及びE
.コリ−特有オートトランスポーター(即ちAIDA−β)からの遺伝子融合が
、同じパッセンジャーと非相同オートトランスポーター(例えばIga−β)と
の遺伝子融合よりもE.コリに対して良好に和合性であるはずであるという仮定
から出発して、AIDA−βとパッセンジャー蛋白質の遺伝子との間の遺伝子融
合を行った。パッセンジャーの移送を確保するために、AIDA−βのみならず
β−樽のN−末端に存在する結合領域(リンカー)もクローニングさせた。
パッセンジャーとして、CtxBを選択し、pTK1からの相応する遺伝子(
Klauser et al.,EMBO J.9(1990),1991-1999)を、オリゴヌクレオチドEF1
6及びJM6と共にPCRにより増幅させた。AIDA−Iは、プラスミド−コ
ードしてE.コリ EPEC2787(Benz und Schmidt,Infect.Immun.57(1
989),1506-1511)中に存在するので、リンカー領域を有するAIDA−Iオート
トランスポーターを、同様にE.コリ EPEC2787のプラスミド調製物か
らのオリゴヌクレオチドJM1及びJM7と共にPCRにより増幅させた。双方
のPCR−生成物を、オリゴヌクレオチド中にその認識配列を含有する制限酵素
を用いて消化させた。こうして生じた二つのフラグメントを、相応して予備消化
された1クローニングベクター(pBA)中で高いコピー数でクローニングさせ
た。こうして、5’−末端(アミノ酸1−113をコードする)のctxBから
なる遺伝子融合の前に人工の本質的プロモータを有する構造(PTK;Klauser et
al.,EMB0 J.9(1990)1991-1999)が生じ、AIDA−Iリンカー(融合蛋白質
のアミノ酸116−279をコードする)及び3’−末端にAIDA−Iオート
トランスポータ−(融合蛋白質のアミノ酸280−563をコードする)が続く
(第3図a)。生じた遺伝子融合をFP59と称した。
従来存在する系Iga−βと比べて、Iga−βにおける注目すべきリーゼの
傾向なしに得られた実質的に強力な発現は、明白に、完全細胞リゼートの比較電
気泳動により証明することができた(第4a図)。
FP59の表面露出の証明は、種々の方法で実施された。FP59のプロテア
ーゼ親和性は、蛋白質−ゲル中でのトリプシン又はキモトリプシンの添加(第3
a図)に引き続く分子量の低下により明らかである。それぞれ約33−35kD
a分子量を有するプロテアーゼー抵抗性フラグメントが生じた(第3a図)。こ
のプロテアーゼー抵抗性フラグメントは、パッセンジャー蛋白質の免疫原性分を
含有しない。このことは、抗−コレラトキシンB血清の使用下での完全細胞−リ
ゼートのウエスタン−ブロット−分析により、プロテアーゼ消化及び非消化のF
P59−発現性E.コリの比較により示すことができた(第4b図及び第4a図
と第4b図との比較)。
膜保護されたトリプシン消化生成物のN−末端配列決定により、AIDA−オ
ートトランスポーターにおける膜リンカー領域が55アミノ酸の長さを有するこ
とが判明した。
プロテアーゼ消化を用いて、FP59−表現性E.コリの外膜の無傷性も示す
ことができた(第4c図)。このために、完全細胞−リゼートを、トリプシンで
のこの消化に引き続き、抗−OmpA−血清を用いる免疫ブロットにより展開さ
せた。非消化細胞もトリプシン消化された細胞も、無傷の外膜を有する細胞に関
して予期されたような無傷のOmpAを示した。
免疫蛍光法を用いても、FP59の表面露出及び強
力な発現を示すことができた(第5図)。蛍光標識された抗体の結合により、無
傷な外膜における細菌細胞上の抗原の表面露出が証明できた。このことは、強力
な蛍光によるFP59発現性E.コリ−細胞を示した。負対照として使用された
、ペリプラズム発現されたコレラトキシンBN表面露出されたFP50(第3b
図)及び非組み換えクローニングベクターを有するE.コリ細胞は明白に負であ
った。ペリプラズム性コレラトキシンBは、抗体のペリプラズムの非易入性を示
し(第5b図)、EP50との免疫蛍光の負の結果により、使用抗血清(パッセ
ンジャー蛋白質に対する)とFP59のAIDA−抗原との交叉反応性は排除で
きた(第5d図)。非組み換えクローニングベクターを用いる免疫蛍光法は、測
定法に内在する背景染色(第5a図)のための尺度であった。更に、FP59の
表現とB61、pTK61により生産された表面提示されたコレラトキシンB−
Iga−β−融合蛋白質との比較が可能であり(第5c図及第5e図)、この際
、同様に本発明による系の明白な利点が証明できた。
例3
表面提示されたペプチド融合の構築
ープとして機能するペプチドが、その表面上に露出され、証明された。このペプ
チドのクローニングのために、ペプチドライブラリーの発生及び表面露出のため
に極めて好適であるPCR−に依る戦略を利用した。この場合に、ctxBのエ
クスポートシグナル(塩基1〜81)、ペプチドをコードする短かい配列(塩基
82〜96)及びAIDA−リンカー/AIDA−β−領域(塩基103〜14
50)からの3重遺伝子融合が形成される。
pJM7(第3a図)をXhoIで線状化させ、オリゴヌクレオチドJm7及
びJM20(第6図)を用いるPCRのためのマトリックスとして利用した(第
3b図)。
二つのオリゴヌクレオチドはそれらの5’−末端に1つのKpnI−認識配列
を有した。JM7を、PCRでのその使用時にAIDA−リンカー/AIDA−
β−ドメインが増幅されるように選択した。JM20を、PCR−生成物中にc
txB中に含有されるサイトプラズマ膜を介するSec−依存性膜移送のための
シグナル配列及びそれに引き続く6個のコドンを共に含有する様に選択した。更
に、JM20は、その5’−位置のマトリックスに対して非相補的な延長部の中5個のコドンを含有した。このコドンの上流に、KpnI−認識配列が存在した
。PCRの後に、生じる生成物をKpnIで加水分解し、それ自体リゲートさせ
、引き続きE.コリ中で形質転換させた。正しい遺伝子融合の同定は、コロニー
免疫ブロットを用いて行っ
た(図面なし)。発現及び表面露出の証明は、例2に記載の方法と同様に、プロ
テアーゼ消化のウエスタン−ブロット−分析及びゲル中での蛋白質染色の分析(
第4a、b、c図)により実施した。
全般的なペプチドライブラリイの発生は、ここに記載のクローニング戦略の僅
かな変更により行わせることが可能である。JM20に関して記載のこのオリゴ
ヌクレオチドの種々異なる機能範囲の分配は、この線状エピトープをコードする
範囲を、オリゴヌクレオチド合成時に故意に縮重が行われる範囲で交換するよう
に変更すべきである。縮重とは、この機能範囲の全ての位置での特定の塩基の代
わりに、単一の、複数の又は全ての塩基が4個までの異なる塩基からの塩基混合
物により置換されることを意味する。これにより、各々のコドンは、1個のアミ
ノ酸の代わりに20個までの異なるアミノ酸をコードすることができ、これによ
り、所定の長さの一つのペプチド中のアミノ酸の考えうる全ての組合せに関して
理論的に可能であるコード性配列の一つのプールが生じる。所望の特性を有する
ペプチドを有する細胞は、今や、例えば1マトリックスに固定化されて付いて存
在し、蛍光標識されているか又は磁気球にカップリンクされている結合パートナ
ーへの表面露出ペプチドの結合により仲介し、単離し、持続的生産及び特徴付け
のために使用することができる。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C07K 19/00 C07K 19/00
C12N 1/21 C12N 1/21
// A61K 39/00 A61K 39/00 A
(C12N 15/09 ZNA
C12R 1:19)