JP2000355719A - アルミニウム分離回収用溶解装置 - Google Patents

アルミニウム分離回収用溶解装置

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JP2000355719A JP16687499A JP16687499A JP2000355719A JP 2000355719 A JP2000355719 A JP 2000355719A JP 16687499 A JP16687499 A JP 16687499A JP 16687499 A JP16687499 A JP 16687499A JP 2000355719 A JP2000355719 A JP 2000355719A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルミニウムをそれより高融点の金属から、
容易に適切に分離回収するための溶解装置を提供する。 【解決手段】 溶解装置は、溶融金属を収容可能であ
り、側面に排出口を有する溶解用坩堝と、溶解用坩堝内
に収納可能であり、内側に非溶解状態の金属を収容で
き、内部空間を溶解用坩堝内部と連通させる連通孔を有
したインナーケースと、溶解用坩堝の排出口を通って排
出される溶融金属を受け入れる保持用坩堝と、溶解用坩
堝及び保持用坩堝を断熱的に囲む炉壁と、炉壁と溶解用
坩堝及び保持用坩堝との間に加熱用ガスを供給する加熱
部とを備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウムをそ
れより高融点の金属から分離し回収するための溶解装置
に関し、より具体的には、鉄部品付きアルミニウム材料
からアルミニウム材料を選択的に溶解するための坩堝炉
を備える溶解装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、アルミニウムを使用した自動
車の解体品や家庭器物等から、アルミニウム材料を回収
する技術が開発されてきた。回収されたアルミニウム材
料は、リサイクルのためなどに利用される。このような
アルミニウム材料の回収においては、アルミニウムを含
む廃棄物は、外観、油水付着などが調べられ、合金品種
が分別され、異種金属や異物が選定および分別される。
このように処理された廃棄物は、破砕および除油され溶
解炉で溶解される。その後、用途に応じて必要な材料
(例えばシリコン等)を添加するなどして成分調整が行
われ、アルミニウムの再生地金が生成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、アルミ
ニウム部品と鉄部品とが一体となった廃棄物からアルミ
ニウム部品のみを取り出し、これを溶解することは困難
な場合があった。例えば、廃棄物を破砕し、磁選機など
を用いて鉄材料を回収することも考えられるが、この方
法では多大な時間と労力とが必要とされるので、結果と
してアルミニウム再生地金を得るためのコストが高くな
ってしまう。このようにコストのかかる方法は、リサイ
クルに適切な方法ではない。一方で、このような廃棄物
をそのまま溶解すると、不純物が多いアルミニウム再生
地金が生成されてしまい、これを使用することが出来な
いという問題があった。鉄部品付きアルミニウム材料を
そのまま溶解すると、鉄部品がアルミニウム中に溶け込
み、鉄分の高いアルミニウム地金が生成される。このよ
うに生成されたアルミニウム地金は、その後成分調整を
行った場合にも、やはり再生使用が困難なものとなって
しまう。こういった理由から、従来の技術では、廃棄物
において鉄部品が組み込まれているがために大部分を占
めるアルミニウム材料を回収できず、これを廃棄せざる
を得ないという問題があった。
【0004】従って、アルミニウムと鉄とを含む廃棄物
から、いかに高い純度で、効率のよい歩留まりで、品位
の高いアルミニウム再生地金を生産し、元の製品原料に
供給可能にするかという、溶解技術についての課題があ
った。特に、鉄分の少ないアルミニウム再生地金を生産
するための溶解技術は、現在のところ満足のいく状況で
はない。
【0005】同様の問題が、上記アルミニウム、鉄の
他、亜鉛、銅やその合金等の種々の金属についての分離
回収についても存在しており、その解決が要請されてい
た。
【0006】このような要請に応えるべく、アルミニウ
ム融点付近の温度でアルミニウムのみを選択的に溶解す
る技術が、特開平10−204553号公報に開示され
ている。この技術においては、アルミニウム材料とそれ
より融点の高い材料とを含む廃棄物をワイヤ又はバスケ
ットなどを用いて坩堝内のアルミニウム溶湯内に浸漬さ
せ、坩堝側壁の出湯穴から溢れ出た溶融アルミニウムを
炉の底壁の保持室に溜める。そして、廃棄物中のアルミ
ニウムをアルミニウム融点付近で選択的に溶解させた
後、アルミニウム以外の金属を溶湯内から引き上げて除
去する。この作業を繰り返すことによりアルミニウム材
料の分離を行う。
【0007】しかしながら、上記公報に開示される溶解
装置は、溶解アルミニウムが燃焼室(すなわち炉室)の
炉底壁を通って回収されるように構成されているので、
アルミニウム溶湯に燃焼ガス、特に水素ガスが吸収さ
れ、品質を劣化させることがあった。また、溶湯アルミ
ニウムが炉室を流れるので、炉室の床面や壁面などに酸
化したアルミニウムが固着することがあり、溶解装置の
メンテナンス上の問題となる場合もあった。
【0008】特に、上述のようにして廃棄物からアルミ
ニウム材料を回収する場合においては、アルミニウム以
外の金属材料を溶湯から引き上げて回収する工程が含ま
れており、被溶解材が断続的に供給される場合がある。
この場合、一度に比較的少量のアルミニウム材料が断続
的に溶解されることから、溶解アルミニウムを適切に保
持するためには、坩堝から流出した溶解アルミニウムの
保持手段の構造や、保持手段における溶湯の温度調節が
重要である。特開平10−204553号公報に開示さ
れている溶解装置では、炉室と連通する保持室上方に設
けられた補助バーナを用いて溶湯を直接加熱することに
より、保持溶湯の温度調節を行っている。しかし、この
ような構成では、保持室上部のアルミニウム溶湯が過昇
温の状態になることで酸化アルミニウムが生成された
り、水素ガスの吸収により溶湯汚染が生じたりするおそ
れがあった。
【0009】本発明は、上記問題点を解決するためにな
されたものであり、アルミニウムをそれより高融点の金
属から分離し且つこれを適切に保持する溶解装置を提供
することをその目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明のアルミニウムを
それより高融点の金属から分離し回収するための溶解装
置は、溶融金属を収容可能であり、側面に排出口を有す
る溶解用坩堝と、該溶解用坩堝内に収納可能であり、内
側に非溶解状態の金属を収容でき、内部空間を該溶解用
坩堝内部と連通させる連通孔を有したインナーケース
と、前記溶解用坩堝の排出口を通って排出される溶融金
属を受け入れる保持用坩堝と、前記溶解用坩堝及び保持
用坩堝を断熱的に囲む炉壁と、該炉壁と該溶解用坩堝及
び保持用坩堝との間に加熱用ガスを供給する加熱部とを
備えており、そのことにより上記目的を達成する。
【0011】上下に開口を有し、前記溶解用坩堝の開口
部上方の位置と該開口部上方位置から離れた位置との間
に移動可能とされ、前記開口部上方に位置するときに、
前記溶解用坩堝の加熱に使用された加熱用ガスを下部開
口から内部に導入する予熱タワーをさらに備えていても
よい。
【0012】前記アルミニウムより高融点の金属は鉄で
あってもよい。
【0013】以下、本発明の作用を説明する。
【0014】本発明によれば、溶解装置の溶解用坩堝に
収納されたインナーケース内に収容されたアルミニウム
は、連通孔を通って流れ込んだ溶解用坩堝内の溶融金属
によって溶解され得る。ここで、非溶解状態のアルミニ
ウムが溶解する過程において、溶解用坩堝内の溶融金属
はアルミニウムの融点付近の温度に維持され得る。従っ
て、アルミニウムを選択的に溶解することが可能であ
り、アルミニウムより高融点の金属がとけ込んでいない
適切な時点で、インナーケースを溶解用坩堝内の溶融金
属から引き上げることにより、純度の高い溶融アルミニ
ウムを得ることができる。
【0015】溶解されたアルミニウムは、保持用坩堝に
収容される。ここにおいて、加熱部からの加熱用ガスで
保持用坩堝を加熱することにより、収容されたアルミニ
ウムを間接加熱することができるので、溶解されたアル
ミニウムを適切に保持することが可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を説明す
る。本実施形態においては、アルミニウムと鉄とを含む
被溶解材から、アルミニウム材料を回収するための溶解
装置を説明する。
【0017】図1は、溶解用坩堝炉(溶解炉)10及び
保持用坩堝炉(保持炉)20を備える本実施形態の溶解
装置100を示す。
【0018】溶解炉10は、坩堝の形状に合わせて全体
が円柱状をなす炉室を形成する炉壁11と、炉室内に設
置された溶解用黒鉛坩堝12と、黒鉛坩堝12を加熱す
るための加熱部を備えており、この加熱部は、本実施形
態においては燃焼バーナを装着するための燃焼バーナ口
18としている。
【0019】また、溶解用黒鉛坩堝12の側壁には出湯
口13が形成され、これにより溶解用黒鉛坩堝12は、
出湯口13から保持炉20へと延びるように設けられた
出湯樋14を介して、保持炉20と流体連通している。
このように構成された溢流タイプの黒鉛坩堝12内に収
容されたアルミニウム溶湯5は、溶湯表面の高さが上昇
して出湯口13に達した場合に、出湯口13から黒鉛坩
堝12の外部に流れ出す。この出湯口13から出た溶湯
は、出湯樋14を介して、保持炉20へと移送される。
【0020】溶解炉10は、黒鉛坩堝12内に納められ
るインナーケース16をさらに有している。このインナ
ーケース16は、鉄部品つき固体アルミニウム等の被溶
解材を収容するためのものであり、吊り上げ/吊り降ろ
し手段などによって坩堝12に対して上下に移動出来る
ように構成されている。
【0021】本実施形態では、インナーケース16の形
状は、底が球面状の円筒形としているが、これに限られ
るものではない。インナーケース16の形状は、黒鉛坩
堝12内に納まる(すなわち、インナーケース16の外
径が黒鉛坩堝12の内径よりも小さい)形状であれば、
有底の円筒形、箱形等の任意の形状とする事ができ、イ
ンナーケース16内に収容される被溶解部材の形状等に
応じて適切に選択される。また、インナーケース16
は、少なくとも一部分が坩堝内に納まる形状であれば、
必ずしも全体が坩堝内に納まる形状である必要はない。
【0022】インナーケース16のケース上部16a
は、インナーケース16を上下移動させるための吊り部
などを含んでおり、黒鉛坩堝12内のアルミニウム溶湯
5に浸漬されない。この吊り部は、例えば、フランジ面
に設けられたアイボルト又は貫通孔であり得、カギ付き
ワイヤなどの吊り上げ/吊り降ろし手段に対して連結及
び取り外しできるように形成されている。また、インナ
ーケース16のケース底部16cが坩堝12の底と接触
しないようにするために、ケース上部16aは坩堝12
の開口端12aに当接するように設計されたフランジ構
造を有していてもよい。
【0023】一方、インナーケース16のケース下部1
6bは、アルミニウム溶湯5に大部分が浸漬され、黒鉛
坩堝12内部とインナーケース16内部とを連通させる
溶湯連通孔17が設けられている。この実施形態におい
て、溶湯連通孔17は、ケース下部16bの底部16c
及びその近傍に設けられた多数の孔である。ただし連通
孔の形態はこれに限られるものではなく、インナーケー
ス16全体を網構造とすることで連通孔17を形成して
もよい。また、インナーケース16内に収容される被溶
解材の体積が小さいなどの場合には、有底筒形のインナ
ーケースの底部分には連通孔を設けず、底部付近の側壁
にのみ連通孔を設ける形態であってもよい。溶湯連通孔
7の位置、形状及び数もまた、被溶解材の形状および/
又は寸法などに応じて、適切に選択され得る。
【0024】このようにして、黒鉛坩堝12内のアルミ
ニウム溶湯5は、ケース下部16bに設けられた溶湯連
通孔17を通じてインナーケース16内部にも流れ込む
ことが可能になる。すなわち、図1に示すように、イン
ナーケース16が坩堝12内に納められている場合にお
いて、アルミニウム溶湯5は、坩堝12およびインナー
ケース16の内部に同時に存在する。
【0025】このようなインナーケース16のケース下
部16bの材質は、高強度および高熱伝導性を有し、ア
ルミニウム溶湯と反応しない性質であることが好まし
い。このような材料として、例えば、鉄、炭化珪素、窒
化珪素などが挙げられる。
【0026】また、インナーケース16を坩堝12内に
安定して設置出来るようにするために、ケース底部16
cに例えば下駄のような高台部を設けても良い。このよ
うな高台部は、坩堝の内側底面とインナーケースの外側
底部との形状に応じて、適切な形状に選択される。
【0027】さらに、黒鉛坩堝12の上方には、被溶解
材の溶解を効率よく行うために、被溶解材を予熱するた
めの材料予熱タワー30が設けられる。予熱タワー30
は、例えば無蓋無底の筒形などの上下に開口を有する形
状とされている。従って、予熱タワー30の内部には、
加熱部によって供給される燃焼ガスが黒鉛坩堝12と炉
壁11との間の間隙を通って上昇するときに発生する燃
焼排ガスが供給される。また、上部に設けられた開口を
通して、被溶解材を黒鉛坩堝12内のインナーケース1
6内に投入することが可能である。
【0028】また、材料予熱タワー30は、タワー30
に固定された台車32をレール34に沿って走行させる
ことにより水平方向(図1において手前から奥の方向)
に平行移動できるように構成されている。これにより、
材料予熱タワー30は、必要に応じて坩堝の開口部12
b真上の位置から離れた位置に(すなわち、タワー30
が坩堝の開口部12bを覆わないように)配置され得
る。
【0029】また、保持炉20は、坩堝の形状に合わせ
て全体が円柱状をなす炉室を形成する炉壁21と、炉室
内に設置され、出湯樋14を介して溶解用黒鉛坩堝12
から流れ出た溶湯を保持する保持用黒鉛坩堝22と、こ
の保持用黒鉛坩堝22を加熱するためのバーナ口28と
を有する。保持用黒鉛坩堝22には、熱電対デバイスな
どを利用した温度測定装置が取り付けられる。これによ
り、測定された溶湯温度に基づいてバーナの火力を調節
して、溶湯を適切な温度に保持することが可能である。
本実施形態の保持炉20の構成においては、溶解された
アルミニウムは、保持用坩堝炉22をバーナで加熱する
ことにより間接加熱で保持されるため、過昇温により酸
化したり、水素ガスを吸収したりする可能性が低減され
る。さらにガス吸収を低減するために、坩堝22上には
炉蓋24が設けられていてもよい。
【0030】また、このように保持用坩堝炉を設けた構
成にすることにより、溶解装置のメンテナンスを溶解用
坩堝炉及び/又は保持用坩堝炉の交換によって行うこと
が可能になるので、炉室に固着した酸化アルミニウムの
掃除などの面倒な作業を行う必要がなくなる。
【0031】なお、保持炉20の炉室(すなわち、炉壁
21と坩堝22との間の間隙)は、出湯樋14近傍に形
成された空間である連絡部40を介して溶解炉10の炉
室と連通している。このようにすれば、保持炉20の炉
室において発生した燃焼排ガスもまた、予熱タワー30
内部に供給され得るので、予熱タワー30における予熱
効果がさらに向上する。
【0032】また、上述の炉壁11及び21は、溶湯と
直接接触しないので、例えばセラミック系の断熱材で内
張することも可能である。セラミック系断熱材は軽量材
のため蓄熱量が少なく、炉壁からの放熱量を小さくする
ことができるので省エネルギーを実現できる。
【0033】以下、図2A〜図2Cを参照して上記のよ
うに構成された溶解装置100の使用方法を説明する。
なお、図2A〜図2Cは、図1のX−X線に沿った断面
に対応している。
【0034】図2Aに示すように、まず、溶解用坩堝1
2の開口部12b上方に吊り上げられた状態のインナー
ケース16を、吊り上げ/吊り下げ手段などを用いて溶
解用坩堝12に対して下降させる。また、この工程にお
いて、材料予熱タワー30は、インナーケース16の下
降を妨害しないように、溶解用坩堝12の開口部12b
から離れた位置に適切に配置されている。なお、溶解用
坩堝12内のアルミニウム溶湯5は、燃焼バーナ等で坩
堝12を加熱することにより、好適には約650〜66
0℃に保持されている。
【0035】次に、インナーケース16を溶解用坩堝1
2内部に収納して、ケース下部を加熱されたアルミニウ
ム溶湯5内に浸漬させる。これにより、坩堝12内のア
ルミニウム溶湯5は、連通孔17を通ってインナーケー
ス16内に流入する。好適には、図2Bに示すようにイ
ンナーケースのフランジ部16dを坩堝の開口端12a
上に載置させるなどして、インナーケースの底部が坩堝
12の内側底面に接触しないような状態に維持される。
【0036】次に、材料予熱タワー30を使用して被溶
解材を投入するために、インナーケース16に設けられ
た吊り部(例えばアイボルト)を、吊り上げ/吊り下げ
手段(例えばリフトに連結されたカギ付きワイヤ)から
取り外した後、材料予熱タワー30を坩堝12の開口部
12b上の位置に移動させる。上述したように、予熱タ
ワー30は無蓋無底の筒型で形成されているので、この
ように坩堝12及びインナーケース16の真上を覆うよ
うに配置された場合にも、材料予熱タワー30の上部開
口を通して被溶解材3をインナーケース16の内に投入
することが可能である。図2Bは、被溶解材3が投入さ
れた状態を示す。好適には、予熱タワー30の内径は、
インナーケース16の内径以下のサイズになるように設
計されている。
【0037】このように、材料予熱タワー30を利用し
て、インナーケース16の容量以上の被溶解材3をイン
ナーケース16内に連続的に供給することができる。ま
た、予熱タワー30内に存在する被溶解材3は、溶解炉
及び保持炉の炉室から供給される燃焼排ガスによって予
熱される。従って、被溶解材3の溶解をより効果的に行
うことが可能になる。また、予熱タワー30内で加熱さ
れた被溶解材3は付着していた油分や水分が燃焼される
ので、予めこれらを取り除いておく工程を省略すること
が可能になる。
【0038】さらに、バーナ等で溶解用坩堝12を加熱
してアルミニウム溶湯5に熱を与えることにより、イン
ナーケース16内のアルミニウム溶湯5に浸漬された被
溶解材(鉄部品付きアルミニウム材料)が、その外側か
ら順次溶解される。また、インナーケース16の浸漬に
よって黒鉛坩堝12内の溶湯5は、溶湯出湯口13から
溢れ出て、出湯樋14を介して保持炉20の保持用坩堝
22へと排出され得る。
【0039】ここで、被溶解材3が溶解される過程で、
溶湯5に浸漬されたアルミニウムが溶解するにつれ、溶
湯表面より上の未溶解状態の被溶解材が自重により溶湯
内に浸漬するので、インナーケース16内の溶湯5に
は、未溶解アルミニウムの一部が自動的に供給されるこ
とになる。このように、インナーケース16内の溶湯5
には、固体(未溶解)アルミニウムが常に存在している
ことが望ましい。なぜなら、固体アルミニウムが存在す
る場合において、燃焼ガス等により溶湯に与えられる熱
の一部は、固体アルミニウムの融解熱(94.8cal
/g)として消費されるので、アルミニウム溶湯5の温
度は、アルミニウムの融点近傍(約650℃〜660
℃)の温度にほぼ一定に保持されるからである。ここ
で、被溶解材に含まれる鉄の融点は、約1540℃であ
るが、アルミニウム溶湯の温度が約670℃を超える
と、溶湯に鉄成分が混入する可能性があることが見出さ
れている。また、670℃のアルミニウム溶湯に対して
混入する鉄成分はごくわずかであるが、溶湯の温度が6
70℃を超えてさらに上昇するにつれて、鉄成分が混入
する割合も比例的に高くなることがわかっている。従っ
て、インナーケース内の鉄部材の溶け込みを防止するた
めには、アルミニウム溶湯を670℃未満に維持するこ
とが重要であり、なるべく鉄成分の少ない(純度の高
い)アルミニウム溶湯を得るためには、アルミニウム溶
湯を出来るだけ670℃未満の温度に近づけることが重
要である。
【0040】固体アルミニウムが溶解した後、インナー
ケース16をアルミニウム溶湯5から引き上げる。ここ
では、まず、予熱タワー30を、図2Bに示すような坩
堝の開口部12b真上の位置から、図2Aに示すような
離れの位置にスライド移動させ、その後、吊り上げ/吊
り下げ手段をケース上部に設けられた吊り部に連結し
て、インナーケース16を吊り上げる(図2C)。イン
ナーケース16内のアルミニウム溶湯は、インナーケー
ス16を溶湯5から引き上げる際、連通孔17を介して
黒鉛坩堝12内へと排出される。この後、インナーケー
ス16の底に残存する鉄部品3aを除去する。
【0041】このように、アルミニウム部品と鉄部品と
の分離は、アルミニウム融点付近での低温熔解を行い、
溶湯内から鉄部品を除去することによって、短時間に容
易に行われ得る。本実施形態のように、黒鉛坩堝炉を使
用すれば、純度の高いアルミニウムの回収が容易に確実
に実現する。これは、黒鉛坩堝が、高い耐熱衝撃性、高
温伝導性およびアルミニウムに対する非反応性を有して
おり且つ坩堝炉を用いているので溶湯を間接加熱できる
からである。
【0042】また、図1に示すように、被溶解材料から
選択的に溶解されたアルミニウム(溶融アルミニウム)
は、出湯口13を出て出湯樋14を流れ、保持用坩堝2
2内に収容される。出湯樋14を流れる溶融アルミニウ
ムは、好適には連絡部40を通過する燃焼排ガスによっ
て適切に加熱される。また、保持用坩堝22内に収容さ
れた溶融アルミニウムは、加熱部28により保持用坩堝
22を加熱することによって間接加熱され、適切な温度
に保持される。このようにして、溶融アルミニウムを保
持用坩堝内において保持すれば、水素ガスが吸着するこ
とや過昇温の状態になることが防げるので、高品位の溶
融アルミニウムを得ることが出来る。
【0043】また、本発明の溶解装置によれば、一度に
比較的少量のアルミニウムが保持用坩堝22に流れ込む
場合にも、良好な溶融アルミニウムを得ることが可能で
ある。例えば、比較的少量の溶融アルミニウムが、従来
の溶解装置のように燃焼室中を流れる場合等において
は、少量故に比表面積が大きいので、溶融アルミニウム
は水素ガスを吸収し易いと考えられる。また、燃焼室中
において燃焼ガスによる温度変化を受け易いので、過昇
温又は凝固した状態になり易いと考えられる。これに対
して、本発明の溶解装置の構成においては、溶融アルミ
ニウムは直接加熱されることなく、出湯樋を介して移送
され、保持用坩堝内に収容されるので、比較的少量の溶
融アルミニウムであっても、このような水素ガス吸収及
び温度による状態変化を防ぐことができる。
【0044】さらに、このような構成にすることによ
り、容易に且つ低コストで溶解装置のメンテナンスを行
うことが可能である。例えば、酸化アルミニウムが生成
された場合にも、これを取り除くために例えば炉室の内
部などを掃除する必要はなく、坩堝を炉外へ取り出して
掃除するか、または新たな坩堝に交換するだけで足り
る。
【0045】また、従来の溶解装置において、例えば、
被溶解材を、ワイヤで直接つるしたり、ワイヤに固定接
続されたバスケットに収納したりすることにより溶湯内
に浸漬させる場合に、一度に処理できる被溶解材を比較
的少量にせざるを得ないこともあった。また、被溶解材
の予熱という点に関しても、十分であるとはいえなかっ
た。これに対し、本実施形態の溶解装置のように、坩堝
上に移動可能な予熱タワーを設ける構成にすれば、この
ような問題も解決できる。
【0046】上述のようにして、鉄部品付きアルミニウ
ム材料からアルミニウム材料が選択的に溶解されたアル
ミニウムが保持用坩堝において得られる。得られた溶融
アルミニウムから再生地金を生成すれば、品位の高いア
ルミニウム地金が得られる。アルミニウム溶湯からアル
ミニウム地金を得るためには、公知の方法を用いること
ができる。
【0047】このように、本実施形態の溶解装置によれ
ば、費用を比較的安く、容易にかつ高い純度で、鉄部品
付きアルミニウム材料からアルミニウム材料のみを溶解
及び保持することが可能になる。これにより、純度の高
いアルミニウム再生地金を得ることが可能になる。
【0048】(実験例)以下、鉄部品付きアルミニウム
材料からアルミニウムを分離(すなわち、鉄部品を除
去)する実験例を説明する。
【0049】実験例においては、インナーケース16と
して、鉄板製で、側壁にパンチメタル状に直径約30m
mの孔を多数設けた無蓋有底筒型のものを使用した。ま
た、インナーケース下部16bの溶湯浸漬部を耐熱塗料
で被覆した。
【0050】また、被溶解材として、極細線の鉄製スプ
リングが組み込まれた油付き回収アルミニウム製品と、
アルミニウム低圧鋳造の工程において生じた鉄製金網付
きの溶融アルミニウムを押し湯するための部材とを使用
した。
【0051】上記被溶解材を収容したインナーケース1
6を、黒鉛坩堝12内に出湯口13に達する量だけ収容
され燃焼バーナにより加熱しておいたアルミニウム溶湯
5に浸漬させた。インナーケース16の浸漬により、黒
鉛坩堝12内の溶湯5は、インナーケース16内に流入
するとともに、溶湯出湯口13から溢れ出て、出湯樋1
4を流れて保持炉20の保持用坩堝22へと排出され
た。
【0052】この工程で、固体アルミニウムがインナー
ケース内の溶湯内に残存している間は、溶解温度は約6
60℃に保持されたまま、被溶解材が溶解された。溶湯
内の固体アルミニウムが全部溶解した後、インナーケー
ス16をアルミニウム溶湯5から引き上げ、インナーケ
ースの底部に残存する未溶解物を回収した。未溶解物を
調べた結果、インナーケースの底部に残存した鉄製のス
プリングと金網とは、概ね原型のままであった。従っ
て、インナーケース内の鉄部材は、アルミニウム溶湯の
中には、実質的に溶け込んでいないことがわかった。ま
た、インナーケースとして使用した鉄板表面の被覆は異
常がみられず、鉄板からの鉄の溶け込みもないことが確
認された。
【0053】以上のように、本実施形態の坩堝炉によれ
ば、少なくとも以下の利点を得ることが理解される。
【0054】(1)鉄部品付きアルミニウム材料を、容
易に鉄部とアルミニウム部とに分離し、安定して純度の
高い溶融アルミニウムを得ることができるので、アルミ
ニウム再生地金として回収できる。
【0055】(2)黒鉛坩堝炉という簡易の設備で品位
の高いアルミニウム材料が回収できるので、アルミニウ
ムリサイクルコストを低減できる。
【0056】また、図1に示すような材料予熱タワーを
利用すれば、一度の比較的多量の被溶解材を効率よく溶
解できるとともに、油付きアルミニウム材料も除油する
ことなく溶解できるという利点も得られる。また、被溶
解材との熱交換によって、炉外に排出される燃焼排ガス
の温度は低下されるので、作業環境の向上にもつなが
る。
【0057】なお、本実施形態では、鉄部品付きアルミ
ニウム材料からアルミニウム材料のみをアルミニウム溶
湯中に溶解し、これにより、純度の高いアルミニウム地
金を得るための実施形態を例示したが、同様にして、ア
ルミニウムをそれより高い融点を有する他の金属から分
離回収することも可能である。
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、容易に且つ安い費用
で、アルミニウムをそれより高融点の金属から分離し及
びこれを保持する溶解装置が提供される。また、本発明
による溶解装置を用いて、純度が高く、高品位なアルミ
ニウム再生地金を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による溶解用坩堝及び保持用
坩堝を備える溶解装置を示す断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の溶解装置の使用方法を説
明する図である。図2A〜図2Cは、溶解装置の使用に
おける各工程を示す図であり、図1のX−X線に沿った
断面に対応している。
【符号の説明】
10 溶解用坩堝炉 11 炉壁 12 溶解用黒鉛坩堝 12a 開口端 12b 開口部 13 出湯口 14 出湯樋 16 インナーケース 16a ケース上部 16b ケース下部 16c ケース底部 17 溶湯連通孔 18 燃焼バーナ口 20 保持用坩堝炉 21 炉壁 22 保持用黒鉛坩堝 24 炉蓋 28 燃焼バーナ口 30 材料予熱タワー 32 台車 34 レール 40 連絡部 100 溶解装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉川 英雄 東京都渋谷区恵比寿一丁目21番3号 日本 坩堝株式会社内 (72)発明者 畑中 智弘 東京都大田区東麹谷五丁目3番9号 日本 坩堝株式会社内 Fターム(参考) 4K001 AA02 AA10 BA22 EA05 GA18 GB02 GB10

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウムをそれより高融点の金属か
    ら分離し回収するための溶解装置であって、 溶融金属を収容可能であり、側面に排出口を有する溶解
    用坩堝と、 該溶解用坩堝内に収納可能であり、内側に非溶解状態の
    金属を収容でき、内部空間を該溶解用坩堝内部と連通さ
    せる連通孔を有したインナーケースと、 前記溶解用坩堝の排出口を通って排出される溶融金属を
    受け入れる保持用坩堝と、 前記溶解用坩堝及び保持用坩堝を断熱的に囲む炉壁と、 該炉壁と該溶解用坩堝及び保持用坩堝との間に加熱用ガ
    スを供給する加熱部とを備えたことを特徴とする溶解装
    置。
  2. 【請求項2】 上下に開口を有し、前記溶解用坩堝の開
    口部上方の位置と該開口部上方位置から離れた位置との
    間に移動可能とされ、前記開口部上方に位置するとき
    に、前記溶解用坩堝の加熱に使用された前記加熱用ガス
    を下部開口から内部に導入する予熱タワーをさらに備え
    ることを特徴とする請求項1に記載の溶解装置。
  3. 【請求項3】 前記アルミニウムより高融点の金属は鉄
    であることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶解装
    置。
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