JP2000354901A - 切削工具及びその製造方法 - Google Patents

切削工具及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性等に優れた切削工具及びその製造方
法を提供すること。 【解決手段】 窒化珪素をマトリックスとして、窒化チ
タン:10〜20重量%、アルミナ:3〜5重量%、イ
ットリア:5〜15重量%を含有する切削工具であっ
て、窒化珪素からなるマトリックス相、窒化チタンから
なる硬質相、粒界相に存在するガラス相、及び粒界相に
存在する結晶相を備えるとともに、X線回折による、窒
化珪素の最大ピークAと、窒化珪素及び窒化チタン以外
の結晶相の最大ピークBとの比R(=B/A)が、0.
05≦R≦0.6の範囲である切削工具。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、窒化珪素をマトリ
ックスとする切削工具及びその製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来より、窒化珪素をマトリックス(母
材)とする多くの焼結体が開発されている。例えば特公
昭60−48475号公報には、窒化チタン、窒化タン
タルから選ばれる1種又は2種を含有する窒化珪素ホッ
トプレス焼結体が提案されている。
【0003】また、これとは別に、特開平9−2680
71号公報には、窒化珪素と炭窒化チタンを主体とする
窒化珪素工具が開示されており、この種の窒化珪素工具
は、鋳鉄部品の加工(切削加工)などに使用されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した窒
化珪素工具は、鋳鉄部品の切削加工以外に、超耐熱合金
の切削加工にも用いられるが、超耐熱合金は熱伝導性が
悪いので、工具刃先に熱がこもり易いという問題があっ
た。
【0005】つまり、刃先温度が上昇すると、工具を構
成する組織の各相(マトリックス相、硬質相、粒界相)
のうち、粒界相の軟化が進み、工具の耐摩耗性が低下す
るという問題があった。本発明は上記問題点に鑑みて提
案されたものであり、耐摩耗性等に優れた切削工具及び
その製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】(1)前記目的を達成す
るための請求項1の発明は、窒化珪素をマトリックスと
して、窒化チタン:10〜20重量%、アルミナ:3〜
5重量%、イットリア:5〜15重量%を含有する切削
工具であって、前記窒化珪素からなるマトリックス相、
前記窒化チタンからなる硬質相、粒界相に存在するガラ
ス相、及び前記粒界相に存在する結晶相を備えるととも
に、X線回折による、前記窒化珪素の最大ピークAと、
前記窒化珪素及び窒化チタン以外の前記結晶相の最大ピ
ークBとの比R(=B/A)が、0.05≦R≦0.6
の範囲であることを特徴とする切削工具を要旨とする。
【0007】本発明の切削工具は、窒化珪素をマトリ
ックス(即ち主成分である母材)とする窒化珪素質焼結
体であり、この窒化珪素以外に、窒化チタン:10〜2
0重量%、アルミナ:3〜5重量%、イットリア:5〜
15重量%を含んでいるが、特に、窒化珪素のマトリッ
クスに、熱伝導性に優れ且つ摩擦係数の少ない窒化チタ
ンを含有させて複合化することにより、耐摩耗性が増加
するという効果が得られる。
【0008】以下、各成分の数値限定の理由を説明す
る。 <窒化チタン:10〜20重量%>溶融金属に対する耐
摩耗性が高い窒化チタンの含有量が10重量%を下回る
と、耐摩耗性の向上が十分ではなく、一方、20重量%
を上回ると、焼結性が低下する傾向があるので、窒化チ
タンは、10〜20重量%が最も好ましい範囲である。
【0009】<アルミナ:3〜5重量%>アルミナの含
有量が3重量%を下回ると、焼結性が低下し、一方、5
重量%を上回ると、硬度が低下し、耐摩耗性が劣化する
ので、アルミナは、3〜5重量%が最も好ましい範囲で
ある。
【0010】<イットリア:5〜15重量%>イットリ
アの含有量が5重量%を下回ると、焼結性が低下し、一
方、15重量%を上回ると、結晶相が多くなるので、イ
ットリアは、5〜15重量%が最も好ましい範囲であ
る。
【0011】尚、切削工具が、実質的に、窒化珪素、窒
化チタン、アルミナ、イットリアのみからなる場合に
は、窒化珪素の重量%は、窒化チタン、アルミナ、イッ
トリアの合計重量%の残部となる。 また、本発明では、前記組成の構成に加えて、4種の
相構造を有している。つまり、窒化珪素からなるマトリ
ックス相(母材相)、窒化チタンからなる硬質相、粒界
相に存在するガラス相、及び粒界相に存在する結晶相で
ある。この4相の状態を、図1に模式的に示すが、マト
リックス相と硬質相との間に粒界相が存在し、この粒界
相がガラス相と結晶相とから構成されている。
【0012】本発明では、この粒界相の一部の結晶化に
よる結晶相の存在により、粒界相におけるガラス相量が
減少するので、刃先温度が上昇した場合でも、粒界相の
軟化が低減されることになり、結果として、耐摩耗性が
向上するという効果が得られる。
【0013】更に、本発明では、X線回折によって得
られた、窒化珪素の最大ピークAと、窒化珪素及び窒化
チタン以外の結晶相の最大ピークBとの比R(=B/
A)が、0.05≦R≦0.6の範囲に設定されてい
る。尚、結晶相におけるピークとは、結晶相に含まれ
る、例えば、Y8Si4414、Y10Al2Si3
184、Y 10Si7423の様な既知の結晶や未知の結
晶の量を示すものである。
【0014】そして、前記ピークの比Rが、0.05を
下回ると、結晶相の量が少なすぎて、前記粒界相の軟化
を抑制する効果が少なく、耐摩耗性が低い。一方、ピー
クの比Rが0.6を上回ると、結晶相の量が多すぎて、
靭性が低下する。よって、前記ピークの比Rは、0.0
5≦R≦0.6が最も好ましい範囲である。
【0015】つまり、本発明は、上述した4成分の組
成、4種の相の構成、及びピークの比Rを備えているの
で、耐摩耗性及び靭性に優れた切削工具である。 (2)請求項2の発明は、前記結晶相には、J相を含む
ことを特徴とする前記請求項1に記載の切削工具を要旨
とする。
【0016】本発明は、結晶相の構成を例示したもので
あり、結晶相としてJ相、即ちY8Si4414を含ん
でいる。よって、粒界相のガラス相が減少して、融点の
高い結晶となるため、高温での粒界相の軟化が抑制され
るという効果がある。 (3)請求項3の発明は、前記切削工具は、超耐熱合金
の切削加工用であることを特徴とする前記請求項1又は
2に記載の切削工具を要旨とする。
【0017】本発明は、切削工具の用途を例示したもの
である。つまり、超耐熱合金は熱伝導性が悪く、切削工
具の刃先に熱がこもりやすいが、本発明では、上述した
構成を備えているので、超耐熱合金を切削加工する際に
刃先温度が上昇した場合でも、粒界相の軟化が抑制さ
れ、優れた耐摩耗性を発揮できる。
【0018】ここで、超耐熱合金とは、通常、650℃
以上の高温での使用に耐える合金であり、具体的には、
合金組成のFe成分が50重量%以下の合金とNi、C
o系のものを主成分とする高温用の合金等のことであ
る。この超耐熱合金としては、例えばNi基合金のイン
コネル、ワスパロイなどが挙げられる。
【0019】尚、本発明の切削工具は、上述したNi基
合金(インコネル、ワスパロイ)を切削するのに特に好
ましいものである。この切削条件としては、下記の範囲
が好適である。 切削速度 :V=100〜500m/min(より好ま
しくは、200〜400m/min) 送り量 :f=0.05〜0.4mm/rev(より
好ましくは、0.1〜0.3mm/rev) 切込み :d=0.05mm以上(より好ましくは、
0.1mm以上) (4)請求項4の発明は、前記切削工具は、すくい面と
逃げ面との間に切れ刃を有することを特徴とする前記請
求項1〜3のいずれかに記載の切削工具を要旨とする。
【0020】本発明は、切削工具の形状を例示したもの
であり、すくい面と逃げ面との間に切れ刃を備えた例え
ば直方体形状が挙げられる。また、それ以外にも、すく
い面側がひし形の四角柱形状、すくい面側が三角形の三
角柱形状、すくい面側が円形の円柱形状など、各種の形
状のものが挙げられる。
【0021】(5)請求項5の発明は、前記請求項1〜
4のいずれかに記載の切削工具の製造方法であって、窒
素雰囲気中で、常圧焼結を行うことを特徴とする切削工
具の製造方法を要旨とする。本発明は、切削工具の製造
方法を例示したものであり、ここでは、前記切削工具の
組成等の構成となるように調整した材料を成形し、窒素
雰囲気中で常圧焼結することにより、窒化珪素質焼結体
を製造することができるので、その後、例えば研磨等の
後加工を施すことにより、切削工具とすることができ
る。
【0022】この常圧焼結は、例えばHIPに比べて製
造が容易で、製造コストが低く、そのため、低いコスト
で切削工具を製造できるという利点がある。尚、常圧焼
結のみで、切削工具に適した窒化珪素質焼結体を製造す
る場合には、その材料の組成(従って切削工具の組成)
を適切に選択する必要がある。具体的には、切削工具の
組成が、例えばTiN:10重量%以下、焼結助剤:6
重量%以上、残部:Si34となる様な材料を選択する
ことが望ましい。
【0023】(6)請求項6の発明は、前記常圧焼結後
に、窒素雰囲気中でガス圧焼結を行うことを特徴とする
前記請求項5に記載の切削工具の製造方法を要旨とす
る。特定の組成以外の場合には、通常、常圧焼結(一次
焼結)のみでは、切削工具として十分に緻密化した焼結
体が得られ難いので(例えば理論密度比の95%以
下)、本発明では、二次焼結として、窒素雰囲気中でガ
ス圧焼結を行う。これにより、十分に緻密化した焼結体
が得られる(例えば理論密度比98%以上)。
【0024】この様に、常圧焼結とガス圧焼結とを組み
合わせることにより、十分に緻密化した焼結体を低コス
トで製造することができる。尚、ガス圧焼結の条件とし
ては、窒素雰囲気が採用されるが、その窒素雰囲気の圧
力は5〜100気圧、焼成温度は1600〜1800℃
の範囲が望ましい。
【0025】(7)請求項7の発明は、前記常圧焼結後
に、HIP(Hot Isostatic Press:熱間静水圧プレ
ス)による焼結を行うことを特徴とする前記請求項5に
記載の切削工具の製造方法を要旨とする。
【0026】上述した様に、通常、常圧焼結(一次焼
結)のみでは、切削工具として十分に緻密化した焼結体
が得られ難いので、本発明では、二次焼結として、HI
Pによる焼結を行う。これにより、十分に緻密化した焼
結体が得られる(理論密度比95%以上)。
【0027】この様に、常圧焼結とHIPによる焼結と
を組み合わせることにより、十分に緻密化した焼結体を
製造することができる。尚、HIPによる焼結の条件と
しては、窒素雰囲気が採用されるが、その窒素雰囲気の
圧力は1000〜2000気圧、焼成温度は1500〜
1800℃の範囲が望ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の切削工具及びその
製造方法の実施の形態の例(実施例)を、図面を参照し
て説明する。 (実施例)本実施例では、超耐熱合金の切削加工用に用
いられる窒素珪素質焼結体からなる切削工具及びその製
造方法を例に挙げる。
【0029】a)まず、本実施例の切削工具について説
明する。図2に示す様に、本実施例の切削工具1は、I
SO規格:SNGN120408形状のネガチップであ
る。具体的には、切削工具1は、図2の上下方向のすく
い面3、側面側の四方の逃げ面5、及びすくい面3と逃
げ面5の間の各辺である切れ刃7を備えており、切れ刃
7の長さが各々12.7mm、切削工具1の厚さが4.
76mmの直方体のチップである。尚、切れ刃7には、
面取り加工(チャンファー加工)が施されている。
【0030】また、本実施例の切削工具1は、窒化珪素
をマトリックス(母材)とする窒化珪素質焼結体からな
り、窒化チタン:10〜20重量%、アルミナ:3〜5
重量%、イットリア:5〜15重量%、窒化珪素:残部
の組成を有している。更に、この切削工具1は、窒化珪
素からなるマトリックス相、窒化チタンからなる硬質
相、粒界相に存在するガラス相、及び粒界相に存在する
結晶相を備えるとともに、X線回折による、窒化珪素の
最大ピークAと、窒化珪素及び窒化チタン以外の結晶相
の最大ピークBとの比R(=B/A)が、0.05≦R
≦0.6の範囲の工具である。
【0031】b)次に、本実施例の切削工具1の製造方
法について説明する。平均粒径0.5μmの主成分の窒
化珪素(Si34)粉末(α率=99%以上)と、平均
粒径0.8μmのイットリア(Y23)粉末と、平均粒
径0.4μmのアルミナ(Al23)粉末とを、前記切
削工具1の組成範囲となる様に、下記表1に示す配合割
合(本発明例)に秤量する。
【0032】次に、この秤量した材料を、アルミナ製ボ
ール、アルミナ製内壁ポットを用いて、エタノール溶媒
中にて16時間湿式混合粉砕し、スラリーとする。次
に、このスラリーを、湯煎乾燥し、エタノールに溶解し
たマイクロワックス系の有機バインダを固形分比で3.
5重量%添加し、ライカイ機で混合する。
【0033】次に、得られた素地を、ISO規格:SN
GN120408形状になるようにプレス成形した後、
1気圧に設定された窒素雰囲気中で、800℃で60分
加熱して脱ワックスを行う。次に、1次焼結を行う。こ
の1次焼結は、常圧(1気圧)の窒素雰囲気中で、17
00℃で4時間加熱して、焼結を行うものである。
【0034】次に、ガス圧焼結により2次焼結を行う。
この2次焼結は、75気圧に設定された窒素雰囲気中
で、1750℃で4時間加熱して、焼結を行うものであ
るの尚、この2次焼結のガス圧焼結に代えて、HIPに
よる焼結を行ってもよい。このHIPによる2次焼結
は、1000気圧に設定された窒素雰囲気中にて、17
00℃で4時間加熱して、焼結を行うものである。
【0035】次に、この様にして得られた窒化珪素質焼
結体を、下記表1に示す様な条件(本発明例)で、窒素
雰囲気中で熱処理し、粒界相の結晶化を促進する。次
に、この窒化珪素焼結体を、ISO規格:SNGN12
0408形状に研削加工することにより、切削工具1を
完成する。
【0036】c)次に、本発明の範囲の切削工具の効果
を確認するために行った実験例について説明する。ま
ず、実験に用いる切削工具として、下記表1に示す条件
にて、本発明例(試料No.1〜4)及び比較例(試料No.
5〜10)の切削工具を作製した。尚、切削工具の形状
は、ISO規格:SNGN120408である。
【0037】そして、これらの試料No.1〜10の切削
工具に対して、下記(i)物理性能評価及び(ii)切削性能
評価を行った。 (i)<物理性能評価> 下記の様にして、焼結体の密度、マイクロポア、硬度、
靭性、ピーク比R(結晶相量)、結晶相の種類を求め
た。その結果を下記表1に記す。
【0038】(密度) アルキメデス法で焼結体の密度を測定した。そして、そ
の密度から、焼結体の理論密度比を求めた。また、マイ
クロポアは、焼結体断面を鏡面研磨し、200倍の顕微
鏡で観察し、CIS−006B規格により測定した。
【0039】(硬度及び靭性) 焼結体の研削した面を鏡面研磨し、30kgの押し込み
荷重でビッカース圧子を押し込み、圧痕の対角長さと亀
裂長さを測定し、ビッカース硬度(JIS R1610
に準拠)と破壊靭性値(JIS R1607(IF法)
に準拠)を求めた。
【0040】(ピーク比R(結晶相量)) 焼結体の研磨面に対するX線回折を行って、そのピーク
比Rを求めた。例えば図3に示す様なX線回折が得られ
た場合には、窒化珪素の最大ピークA(=I(Si34
max))と、窒化珪素及び窒化チタン以外の結晶相の最
大ピークB(=I(GB max))とを測定し、そのピー
ク比R(=B/A=I(GB max)/I(Si34 ma
x))を求める。
【0041】尚、図3は縦軸に強度[cps]をとり、
横軸に2θ[゜]をとったX線回折の結果のグラフであ
り、図3では、ピーク比Rは、0.48である。 (結晶相の種類) また、前記X線回折によって得られた各ピークを、既知
の材料のピークと対比させて調べることにより、結晶相
の種類を調べた。
【0042】(ii)<切削性能評価> 図4に示す様に、下記の条件にて、回転する円柱形状の
被削材の外径側の表面に対して、切削工具を矢印A方向
に移動させて旋削を行った。そして、その際の工具刃先
の摩耗状態(1パス後のフランク摩耗量)やカケの発生
状況を調べた。その結果を、下記表1に記す。
【0043】(切削条件) 被削材材質:インコネル718 被削材形状:外径φ300mm×長さ100mm 切削速度 :V=300m/min 送り量 :f=0.15mm/rev 切込み :d=1.0mm 乾湿 :WET
【0044】
【表1】
【0045】尚、前記表1で、焼結体の構成相におい
て、Si34の○はマトリックス相の存在を示し、Ti
Nの○は硬質相の存在を示す。また、結晶相のJ相を示
すJはY8Si4414、A相を示すAはY10Al2Si
3184、H相を示すHはY10Si7423、Ukは未
知相である。
【0046】更に、焼結方法のは常圧焼結、はガス
圧焼結、はHIPであり、+で示すものは、1次焼結
に加えて2次焼結を行うものである。尚、試料No.7の
焼結方法においては、急速冷却を行い、試料No.8の焼
結方法では、1400℃で窒素1気圧中12時間保持の
熱処理を行った。
【0047】また、マイクロポアのA2はマイクロポア
0.02体積%を示し、A8はマイクロポア0.6体積
%を示す。この表1から明かな様に、本発明例である窒
化チタンを所定量含み所定ピーク比Rの結晶相を有する
試料No.1〜4は、耐摩耗性に優れている。また、試料N
o.1〜4は、適度な硬度と靭性を備えており、実験の際
に、チッピングが発生せず、好適である。
【0048】それに対して、窒化チタンが少な過ぎると
(比較例試料No.5)、摩耗量が多く、また、窒化チタ
ンが多すぎると(比較例試料No.6)、硬くなって脆く
なり、刃先がチッピングするので、好ましくない。ま
た、粒界相の結晶化が少なすぎると(比較例試料No.
7)、摩耗が多くなり、逆に、結晶化が多すぎると(比
較例試料No.8)、靭性が不足して、チッピングに到る
ので、好ましくない。
【0049】更に、焼結助剤が少ないと(比較例試料N
o.9)、94%しか緻密化せず、焼結助剤が多いと(比
較例試料No.10)、耐摩耗性が悪いので、好ましくな
い。尚、本発明は前記実施例になんら限定されるもので
はなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の
態様で実施しうることはいうまでもない。
【0050】
【発明の効果】以上詳述した様に、本発明の切削工具
は、上述した4成分の組成、4種の相の構成、及びピー
クの比Rを備えているので、即ち、窒化珪素と窒化チタ
ンの適度な複合化及び粒界相の適度な結晶化により、耐
摩耗性及び靭性に優れた切削工具である。
【0051】また、本発明の切削工具の製造方法によ
り、上述した優れた性能を有する切削工具を、低コスト
で容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 切削工具を構成する各相の状態を模式的に示
す説明図である。
【図2】 実施例1の切削工具の形状を示す斜視図であ
る。
【図3】 X線回折によるピークの状態を示す説明図で
ある。
【図4】 切削性能評価の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1…切削工具 3…すくい面 5…逃げ面 7…切れ刃

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒化珪素をマトリックスとして、窒化チ
    タン:10〜20重量%、アルミナ:3〜5重量%、イ
    ットリア:5〜15重量%を含有する切削工具であっ
    て、 前記窒化珪素からなるマトリックス相、前記窒化チタン
    からなる硬質相、粒界相に存在するガラス相、及び前記
    粒界相に存在する結晶相を備えるとともに、 X線回折による、前記窒化珪素の最大ピークAと、前記
    窒化珪素及び窒化チタン以外の前記結晶相の最大ピーク
    Bとの比R(=B/A)が、0.05≦R≦0.6の範
    囲であることを特徴とする切削工具。
  2. 【請求項2】 前記結晶相には、J相を含むことを特徴
    とする前記請求項1に記載の切削工具。
  3. 【請求項3】 前記切削工具は、超耐熱合金の切削加工
    用であることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の
    切削工具。
  4. 【請求項4】 前記切削工具は、すくい面と逃げ面との
    間に切れ刃を有することを特徴とする前記請求項1〜3
    のいずれかに記載の切削工具。
  5. 【請求項5】 前記請求項1〜4のいずれかに記載の切
    削工具の製造方法であって、 窒素雰囲気中で、常圧焼結を行うことを特徴とする切削
    工具の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記常圧焼結後に、窒素雰囲気中でガス
    圧焼結を行うことを特徴とする前記請求項5に記載の切
    削工具の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記常圧焼結後に、HIPによる焼結を
    行うことを特徴とする前記請求項5に記載の切削工具の
    製造方法。
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