JP2000352585A - 周波数測定方法およびドップラソナー - Google Patents

周波数測定方法およびドップラソナー

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JP2000352585A
JP2000352585A JP11163587A JP16358799A JP2000352585A JP 2000352585 A JP2000352585 A JP 2000352585A JP 11163587 A JP11163587 A JP 11163587A JP 16358799 A JP16358799 A JP 16358799A JP 2000352585 A JP2000352585 A JP 2000352585A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 パルスビーム方式で高精度にドップラ周波数
を測定することができる周波数測定方法およびドップラ
ソナーを提供する。 【解決手段】 順次入力される反射エコー信号をつなぐ
ことによって疑似的な連続波を生成し、この疑似連続波
をフーリエ変換することによって高い周波数分解能を実
現できるようにする。反射エコー信号は、波形が崩れて
いる場合が多い。このため、各パルス信号を位相差なく
上手くつなぐことが困難である。そこで、各パルス信号
をつなぐための位相シフト量を修正しながらフーリエ変
換を繰り返し、真値付近に収束または振動するようにな
ったとき、平均処理などで真値を求める。これにより、
崩れた波形のパルス信号であっても正確に周波数を求め
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、入力されるパル
ス信号から高精度の周波数測定を可能にした周波数測定
方法およびこれを用いたドップラソナーに関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】船舶の種類によっては
非常に高精度の速度計測が必要なものがある。また、通
常の船舶でも港内とりわけ接岸時には極めて低速の速度
制御が必要となる。しかし、単発のパルスを用いる従来
のパルスドップラ装置では、上記接岸時には1ノット程
度の速度分解能しか実現できない問題点があった。速度
分解能、すなわち周波数分解能は送信パルス幅に比例す
るが、ドップラソナーのトランスデューサはパルスを送
信するとともに反射エコー信号の受信も担当しているた
め、反射エコーが返ってくるまでの時間よりも短いパル
ス信号しか送信することができない。このため、対象物
との距離が近いと、エコー信号が返ってくるまでの時間
が短いため、長いパルスを送信することができない。
【0003】したがって、対象物に接近するほど低速航
行になり、より高い速度分解能が必要になるのに反し
て、このような場面ほど送信パルス幅を短くしなければ
ならず、速度分解能が低下するという問題点があった。
【0004】また、複数回の測定結果を平均して測定精
度を上げる技術も実用化されているが、この方式で1H
z以下の周波数分解能を実現するためには極めて長時間
の積算平均処理が必要であり、上記のように対象物に接
近しているときなどに適用できるものではなかった。
【0005】一方、送信用トランスデューサと受信用ト
ランスデューサを別々に設け、送信用トランスデューサ
は専ら連続波の超音波ビームを送信し、受信用トランス
デューサでは専らそのエコー信号を受信するようにし
て、長い時間幅のエコーでFFTを行い、高い周波数分
解能を実現することも考えられる。しかし、この方式の
場合、送信用トランスデューサに連続して駆動信号を印
加しつづける必要があるため、トランスデューサや駆動
回路の負担が大きく、送信パワーを従来のパルス波に比
べて低く抑えざるを得ない。このため、連続波ビーム方
式は、対象物に対して50メートル程度に接近してから
でないと使用することができない。
【0006】この発明は、パルスビーム方式で高精度に
ドップラ周波数を測定することができる周波数測定方法
およびドップラソナーを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、 (1) 入力されるパルス信号を順次接合して記憶する (2) 各接合点における信号位相差を無くすような位
相シフト量を求める (3) 求められた位相シフト量を用いて各パルス信号
の位相をシフトし、疑似連続波を作成する (4) 前記疑似連続波をフーリエ解析して、該疑似連
続波の周波数を推定する (5) 手順(3)の処理に用いた位相シフト量のシフ
ト誤差を求め、このシフト誤差に基づいて該位相シフト
量を補正して、新たな位相シフト量を求める (6) 手順(3)乃至手順(5)の処理を所定回数繰
り返し、繰り返し毎に手順(4)で求められた所定個数
の周波数に基づいて、前記順次入力されるパルス信号の
周波数を決定する の手順を有することを特徴とする。
【0008】この発明は、順次入力されるパルス信号を
つなぐことによって疑似的な連続波を生成し、この疑似
連続波をフーリエ変換することによって高い周波数分解
能を実現できるようにしたものである。入力されるパル
ス信号は、たとえば、ドップラソナーの反射エコー等で
あり、波形が崩れている場合が多い。このため、各パル
ス信号をうまく位相差なくつなぐことが困難である。そ
こで、各パルス信号をつなぐための位相シフト量を修正
しながらフーリエ変換を繰り返し、真値付近に収束また
は振動するようになったとき、平均処理などで真値を求
める。これにより、崩れた波形のパルス信号であっても
正確に周波数を求めることができる。
【0009】請求項2の発明は、請求項1において、手
順(5)は、シフト誤差の大きさに応じて決定される段
階的な補正値で位相シフト量を補正することを特徴とす
る。このようなラフな処理により、演算部の負担が軽く
なって(3)〜(5)のループを何度も繰り返すことが
でき、受信したパルス信号の波形が崩れて、真値と思わ
れる範囲がブロードであっても平均処理などでほぼ正確
に真値を推定することができる。
【0010】請求項3の発明は請求項2において、前記
補正値は、シフト誤差を減少させ収束させるように決定
され、正のシフト誤差に応じて決定される値と負のシフ
ト誤差に応じて決定される値の絶対値が異なることを特
徴とする。これにより、位相シフト量が発散または等幅
振動をつづけることがなくなる。
【0011】請求項4の発明は、請求項1〜3におい
て、手順(1)は、入力されたパルス信号をベースバン
ドに周波数シフトしたものを記憶することを特徴とす
る。これにより、キャリア周波数成分を除去して目的信
号の周波数のみを求めることができる。
【0012】請求項5の発明は、請求項1〜4におい
て、手順(1)は、入力されたパルス信号から所定区間
を切り出したものを記憶することを特徴とする。これに
より、波形の整った部分のみを取り出して処理すること
ができ、測定精度を向上することができる。
【0013】請求項6の発明は、請求項1〜5におい
て、手順(1)は、入力される1または複数のパルス信
号を複数回繰り返して接合して記憶することを特徴とす
る。これにより、少ないパルス信号からでも長い疑似連
続波を作りだすことができ、周波数スペクトルを鋭くし
て正確に周波数を求めることができる。
【0014】請求項7の発明は、請求項1〜6におい
て、手順(1)で順次入力されるパルス信号は、送信パ
ルス信号の反射エコー信号であることを特徴とする。こ
れにより、たとえばドップラソナー等に適用することが
できる。
【0015】請求項8の発明は、 (1) キャリア周波数に目的信号が重畳されたパルス
信号を一定周期(1/PRF)で複数受信する (2) 手順(1)で受信した複数のパルス信号からキ
ャリア周波数成分を除去し、目的信号のみを取り出す (3) 手順(2)で取り出された複数の目的信号に対
して請求項1〜3の手順を適用して目的信号の概略周波
数を求める (4) 手順(2)で取り出された複数の目的信号をそ
れぞれ1つのサンプリングデータとしてフーリエ変換
し、ベースバンド(0Hz〜PRF)におけるスペクト
ルのピーク周波数fdを求める (5) 手順(3)で求めた概略周波数に基づき、目的
信号の真のスペクトルの属する帯域(PRF×n〜PR
F×(n+1))の次数nを割り出す (6) 手順(4)で求めたfd、および、手順(5)
で求めたnを用い、fd+PRF×nの演算によって目
的信号の精密な周波数を求める の手順を有することを特徴とする。
【0016】この発明では、パルス信号から正確な周波
数を求めることができる請求項1〜3の発明を、等間隔
(1/PRF)で受信されるパルス信号のそれぞれを1
つのサンプリングデータとしてフーリエ変換を行う連続
パルスモードに適用している。これにより、PRFサン
プリングデータをフーリエ変換して得られた写像周波数
の真値がどの帯域に属するか、すなわち「真値=写像周
波数+PRF×n」のnを正確に突き止めることができ
るため、帯域を誤ることなく正しい周波数を求めること
ができる。
【0017】請求項9の発明は、請求項8において、手
順(1)で入力されるパルス信号は、送信パルス信号の
反射エコー信号であることを特徴とする。これにより、
たとえばドップラソナー等に適用することができる。こ
の場合、目的信号はドップラ周波数成分の信号である。
【0018】請求項10の発明は、所定間隔で超音波パ
ルス信号を送信する送信手段と、該所定間隔の超音波パ
ルス信号の反射エコー信号を受信し、請求項7または請
求項9に記載の周波数測定方法を用いて該反射エコー信
号のドップラ周波数を求める受信手段と、を備えたこと
を特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】図面を参照してこの発明が適用さ
れたドップラソナーについて説明する。図1は同ドップ
ラソナーの構成図、図2は同ドップラソナーの受信部の
ブロック図である。
【0020】図1において、ドップラソナーは、トラン
スデューサ1、切換器2、送信部3、受信部4および制
御部5を備えている。送信部3は、トランスデューサ1
を駆動するためのパルス信号を発生する。このパルス信
号は切換器2を介してトランスデューサ1に供給され
る。トランスデューサ1はこのパルス信号によって駆動
され、ビーム状の超音波パルス信号を水中に照射する。
前記切換器2は制御部5によって制御される。制御部5
は、送信部3がパルス信号をトランスデューサ1に供給
したのち、切換器2を受信部4側に切り換える。水中に
照射された超音波パルス信号は対象物で反射し、エコー
信号としてトランスデューサ1に戻ってくる。
【0021】受信部4は、トランスデューサ1が受信し
たエコー信号を入力し、送信してからの遅れ時間に基づ
いて対象物との距離を測定するとともに、このエコー信
号と送信パルス信号との周波数差(ドップラ周波数)に
基づいて対象物との相対速度を測定する。水中における
音波の伝搬速度は1500m/秒であるため、約0.1
33秒の遅れ時間が100mの距離に対応する。また、
船舶等でトランスデューサを斜め下方に取り付けた場
合、1Hzのドップラ周波数は0.01ノット(約0.
005m/秒)の相対速度に対応する。
【0022】図2において、トランスデューサ1は、送
信パルス信号のエコー信号を受信して電気信号に変換す
る。このエコー信号は、水中を伝搬し一様でない対象物
で反射した信号であるため、図3に示すようにエンベロ
ープも波形も崩れており、ドップラ周波数も一様ではな
い。すなわちドップラ周波数の波形も正弦波から崩れた
ものになっている。
【0023】このエコー信号は高周波アンプ11に入力
される高周波アンプ11は、この信号を後段のバンドパ
スフィルタ13でろ波可能なレベルまで増幅する。バン
ドパスフィルタ13は、エコー信号付近以外の不要な周
波数成分を除去し、後段のA/D変換器15によるアン
ダーサンプリングで写像が重なり合わないようにするも
のである。バンドパスフィルタ13から出力される帯域
制限されたエコー信号は、アンプ14でA/D変換可能
なレベルまで増幅されA/D変換器15に入力される。
【0024】A/D変換器15は、入力されたエコー信
号を、該エコー信号よりも低い周波数でアンダーサンプ
リングする。たとえば、エコー信号(送信パルス信号)
の中心周波数が438kHzであるとすると、この信号
を24kHzでサンプリングする。そうすると、438
kHzを中心とする±6kHzの周波数領域のスペクト
ルが6kHz±6kHz(0〜12kHz)および18
kHz±6kHz(12〜24kHz)の範囲に写像と
して現れる。上記バンドパスフィルタ13のろ波帯域を
438kHz±6kHz以下に絞っておくことにより、
これらの写像が重なり合うことがない。
【0025】なお、トランスデューサを斜め下方に設け
た船舶においては、航行速度が15ノットのときそのド
ップラ周波数は3kHz程度であるため、送信パルス信
号を中心として±6kHzの周波数領域をサンプリング
すればドップラソナーが使用される速度領域を十分カバ
ーすることができる。
【0026】A/D変換器15によってデジタル変換さ
れたエコー信号はサンプリングデータとしてDSP16
に入力される。以下図3および図4のフローチャートを
参照してDSP16の処理について説明する。
【0027】送信部3によるパルス信号の送信は定期的
に行われ、DSP16に対するサンプリングデータの入
力は、図3に示すように定期的に行われる。そして、図
4の処理は、1つの送信パルス信号に対するサンプリン
グデータの入力から次の送信パルス信号に対するサンプ
リングデータの入力までの無入力期間を利用して実行さ
れる。
【0028】図4において、まず入力したサンプリング
データでFFT演算を行い。単一のパルス(単一パルス
モード)によるドップラ周波数を求めておく(s1)。
次に、このサンプリングデータに対して複素指数関数を
乗算することにより、受信したエコー信号のキャリア周
波数(送信パルス信号の周波数)のスペクトルを周波数
ゼロまでシフトし(デモジュレーション)、ベースバン
ド付近以外の周波数スペクトルを除去するローパスフィ
ルタリングを行う(s2)。この処理によってキャリア
周波数成分をキャンセルし、ドップラ周波数成分のみの
複素数ベースバンド信号を得る。
【0029】つぎに、このベースバンド帯域にシフトさ
れたサンプリングデータから送信パルスのパルス幅に相
当する時間分のデータを切り出し(s3:図3参照)、
この切り出しデータをパルス順にメモリに記憶してゆく
(s4)。このとき各切り出しデータの境界、すなわち
各切り出しデータの接合点がどこであるかを記憶してお
く。
【0030】上記の切り出し処理において、サンプリン
グデータの切り出し区間は、対象物からの直接反射波を
最初に受信したタイミングを先頭にして送信パルス幅に
対応する区間とするのが最良である。なお、このドップ
ラソナーでは、送信部2および受信部3が同一の基準ク
ロックに同期して動作しているため、受信の遅れ時間に
基づいて反射エコー信号の算術上の位相を正確に割り出
すことができる(実際の信号は波形のくずれなどによっ
てずれている場合がある)。サンプリングデータから切
り出しデータを切り出したとき、そのデータの位相の上
記算術上の位相が同じになるように位相シフトしておく
ことにより、複数の切り出しデータを接合したときに各
接合点について同じ処理で位相差をなくすことができ
る。
【0031】また、時々刻々海底深度などの相対距離が
変化するため受信エコー信号の遅れ時間が変動し、サン
プリングデータ中の最良の切り出し区間は各サンプリン
グデータ毎に一定ではない。しかし、短時間での相対距
離の変動は僅かであるため、超音波パルス信号の送信間
隔が一定の間は、対象物との距離が一定と考えて送信タ
イミングから一定の遅延時間のサンプリングデータを切
り出しても問題はない。
【0032】s4の処理でメモリ上で順次配列された切
り出しデータをつないで疑似連続波データを作成するた
め以下の処理を行う。なお、以下の処理は、各切り出し
データのベースバンド波形、すなわちドップラ周波数の
波形が崩れていることを前提にしている。まず、隣接す
る各切り出しデータの接合点における位相差を推定す
る。この位相差は、接合点付近の各切り出しデータの差
分(微分値)に基づいて推定すればよい。この推定にお
いて、接合点近傍を各切り出しデータ毎に個別に直線近
似(平滑化)し、ノイズの影響を軽減してもよい。位相
差は、各接合点について個別に推定するが、以下の処理
を効率的に行うため、これを平均したものを位相差とす
ればよい。なお、各接合点毎に位相差を設定して以下の
処理を行ってもよいことは勿論である。また、接合点に
よっては位相差が2π以上になるものがあるが、この場
合には2π除算計算の余りを位相差とすればよい。
【0033】次に、各切り出しデータを上記位相差だけ
位相シフトするため、上記求めた位相差と同じ値の位相
シフト量Ωskipを持つ複素指数関数(補正関数)を乗算
して位相を補正する(s5)。この補正において、最初
の切り出しデータは、基準となるものであるため、位相
補正をしない。2番目の切り出しデータは、
【数1】 の補正関数を掛けて位相補正をする。3番目の切り出し
データは2番目の切り出しデータに対して位相補正をす
る。すなわち、2番目の切り出しデータは既に補正関数
を乗算されて位相補正されているため、
【数2】 の補正関数を掛けて位相補正をする。このように切り出
しデータの番号をnとすると、
【数3】 の値を各切り出しデータに掛けて位相補正をする。な
お、この位相補正した疑似連続波データは上記s4でメ
モリに記憶された切り出しデータ列とは別に記憶し、s
4の切り出しデータ列はそのまま保存しておく。
【0034】このように切り出しデータ例を位相補正し
て求めた疑似連続波データに対してFFT演算を行い、
この疑似連続波データの周波数すなわちドップラ周波数
を推定する(s7)。このドップラ周波数の推定におい
て、推定精度をあげるため、補間法等を用いて周波数ス
ペクトルのピーク周波数を求めてもよい。補間法として
は、田部井・上田法(電子情報通信学会論文誌A,vo
l.J70−A,pp.798−805,1987)を
用いればよい。
【0035】次に、s6で位相補正された疑似連続波デ
ータについて再度接合点の位相差(シフト誤差)を求め
る(s9)。この処理は、上記s4と同じ処理でよい
が、各接合点について求められた位相差の平均をとるの
ではなく、中央値(メディアン)をシフト誤差φとす
る。これは、大きなノイズを伴う接合点から求められた
極端な値の位相差を無視するためである。なお、s9で
求めたシフト誤差φは正負の値をとる。シフト誤差が正
値であれば、接続点で位相が順方向にジャンプしている
ため、疑似連続波データは、真のドプラ信号の波長より
も短くなり、真のドップラ周波数よりも高くなる。また
逆に、シフト誤差が負値であれば、接続点で位相が逆方
向にジャンプしているため、疑似連続波データは、真の
ドプラ信号の波長よりも長くなり、真のドップラ周波数
よりも低くなる。
【0036】そして、s9で求めたシフト誤差φをその
まま位相シフト量Ωskipの補正値とするのではなく、こ
のシフト誤差φに基づいてシフト補正値Δを決定する
(s10)。この実施形態では、 0.05π<φ のとき Δ= 0.3 (radian) 0<φ≦ 0.05 π のとき Δ= 0.05(radian) -0.05π≦φ≦ 0 のとき Δ=-0.03(radian) φ<-0.05 π のとき Δ=-0.5 (radian) のシフト補正値を割り当てている。求めたシフト補正値
Δを位相シフト量Ωskipに加算して(Ωskip←Ωskip+
Δ)、s6にもどる。
【0037】このようにシフト誤差φが0.3radianを
超えてもシフト補正値Δを0.3にし、シフト誤差φが
−0.5radianを(負方向に)超えてもシフト補正値Δ
を−0.5にすることにより、補正を繰り返したときに
補正された位相差(ドップラ周波数:図5〜図10参
照)が発散や振動をせず収束に向かうようにしている。
また、シフト誤差φが0.05radian以下でもシフト補
正値Δを0.05にし、シフト誤差φが−0.05radi
an以上でもシフト補正値Δを−0.03にすることによ
り、補正された位相差(ドップラ周波数)を特定の値に
完全に収束させず、その付近で振動させるようにしてい
る。これは、各切り出しデータの波形が崩れており、ま
た、各切り出しデータ間の位相差が一定でないため、特
定の値に完全に収束させる制御には無理があり、返って
誤差を大きくしてしまうおそれがあるためである。最終
的には振動しているドップラ周波数の推定値を平均する
ことで真のドップラ周波数を求めればよい。
【0038】なお、上記処理の開始時点で位相差の初期
値Ωskipが真の位相差から大きく離れていると、収束に
必要なループ回数が多くなる。このような場合には、シ
フト誤差φを0.05πよりもさらに大きい境界値で分
割し、この境界値を超えたときには0.3radianよりも
大きいシフト補正値Δを適用すればよい。例えば、 0.2 π<φ のとき Δ= 0.9 (radian) 0.05π<φ< 0.2π のとき Δ= 0.3 (radian) のように変更する。
【0039】また、シフト誤差φが正値(+)の場合の
シフト補正値Δと、負値(−)の場合のシフト補正値Δ
を絶対値が同じにならないように設定する。同じ値にす
ると、真の周波数に収束せずに同じ位相差(ドップラ周
波数)間で振動を繰り返す場合があるためである。
【0040】s8でループの終了を判断するまで、上記
s6〜s10の処理を繰り返し実行する。s8のループ
終了の判断は、何回くらい位相シフト量Ωskipを補正す
れば真値付近で振動するようになるかを経験的に割り出
して決定してもよく、シフト誤差φを常時監視し、所定
値以下のループが所定回数以上継続したときループ終了
と判断するようにしてもよい。また、次のサンプリング
データが入力される時刻までに処理を終えるようにルー
プを打ち切ってもよい。
【0041】ループを終了すると、s7の処理でループ
毎に求められたドップラ周波数に基づいて真の推定ドッ
プラ周波数を推定する(s11)。この推定は、ドップ
ラ周波数が上述のほぼ収束した条件下で振動しはじめて
からの値を平均すればよい。推定されたドップラ周波数
を出力して(s12)、処理を終了する。このドップラ
周波数に基づいて対象物との相対速度等が算出される。
【0042】上述したように図4の処理は、所定間隔で
送信される超音波パルス信号の受信エコー信号のサンプ
リングデータが入力される毎に実行されるため、今回入
力されたサンプリングデータに対応して処理を開始した
とき、前回入力されたサンプリングデータに対応して前
回実行された処理の結果が保存されている。したがっ
て、s1〜s4の処理は、今回入力されたサンプリング
データについてのみ行えばよい。また、s5の位相シフ
ト量Ωskipの割り出しは、上記s5に記述したように最
初の段階から行ってもよいが、前回の処理で繰り返し補
正された最終的なΩskipをそのまま適用してループを開
始してもよい。また、この処理に用いる切り出しデータ
の数が決まっている場合には、s4で最も古いデータを
捨てて今回のデータを書き込むFIFO処理をすればよ
い。
【0043】図5〜図10は、7Hzの正弦波信号を用
いて上記処理を行ったシミュレーション結果を示してい
る。同図左側のグラフは切り出しデータの実数部を示
し、右側のグラフは位相を示している。図5(A)は切
り出しデータをそのまま接続した状態を示しており、同
図(B)〜図9に向けて位相シフト量Ωskipをシフト補
正値Δで繰り返し補正している。最終的には殆ど位相差
なく接合した状態が維持されている。図10は、上記処
理の各ループ毎に求めたドップラ周波数を示している。
この例では、1回目〜5回目のループでドップラ周波数
が徐々に真値に接近してゆき、6回目のループ以後のド
ップラ周波数は、ほぼ真値付近で振動している。6番目
〜16番目のデータを平均した値は6.9925Hzと
なり真値7Hzとほぼ等しくなった。
【0044】図11、図12は入力信号の周波数を各種
設定して上記と同様のシミュレーションを行った結果を
示している。いずれの場合も、入力信号周波数(inp
utsignal freqency)と平均周波数
(mean freqency)はほぼ等しくなってい
る。
【0045】なお、上記図4のフローチャートの説明お
よび図5〜図12のシミュレーションでは最初に位相シ
フト量Ωskipを求めて、これをシフト補正値Δで補正す
るようにしているが、最初は全く位相差を補正せずに
(すなわちΩskip=0で)s6以下の処理を行い、シフ
ト補正値Δで全位相差を補正していくようにしてもよ
い。
【0046】また、上述したように、シフト誤差φを多
段に分割して、シフト誤差φが大きい場合には大きいシ
フト補正値Δを適用することにより、収束を速くするこ
ともできる。
【0047】図13(B)は、 0.2 π<φ のとき Δ= 0.9 (radian) 0.05π<φ< 0.2π のとき Δ= 0.3 (radian) 0<φ≦-0.05 π のとき Δ= 0.05(radian) -0.05π≦φ≦ 0 のとき Δ=-0.03(radian) φ<-0.05 π のとき Δ=-0.5 (radian) としてシミュレートした例である。同図(A)は図5〜
図12に示したものと同様に図4のs10の場合分けで
シフト補正値Δを適用した例を示している。両者を比較
すると、シフト誤差φが大きいときには大きいシフト補
正値Δを適用したほうが若干振動は大きくなるが収束が
速くなることが分かる。
【0048】なお、図4のフローチャートのs1におい
て単一パルスモードで求めたドップラ周波数は、上記疑
似連続波モードで求めたドップラ周波数の確認に用いれ
ばよい。
【0049】また、上記の実施形態では、順次入力され
るサンプリングデータ(切り出しデータ)を1回ずつ接
合して記憶することによって疑似連続波データを作成し
たが、1つまたは数個のサンプリングデータ(切り出し
データ)を繰り返すことによって少ないサンプリングデ
ータから長い疑似連続波データを作成するようにするこ
ともできる。この場合、図4のs4の処理において、1
つの切り出しデータを繰り返しメモリに記憶するように
すればよい。
【0050】≪連続パルスモードへの適用≫上記実施形
態では、疑似連続波モードで求めたドップラ周波数を最
終的なドップラ周波数として採用しているが、より精度
の高い連続パルスモードのドップラ周波数測定におい
て、上記疑似連続波モードを写像次数の割り出しに適用
してもよい。以下連続パルスモードについて説明する。
【0051】連続パルスモードも上記疑似連続波モード
と同様、受信エコー信号(サンプリングデータ)からキ
ャリア周波数成分を除去した信号、すなわちデモジュレ
ーションしてドップラ周波数波形のみにしたものを用い
る。数ヘルツ程度の低周波で波長の長いドップラ周波数
の波形に対して、受信エコー信号は、図14に示すよう
にそのドップラ周波数波形上の1点のサンプリングデー
タ程度の時間幅である。そこで、これをPRFサンプリ
ングデータとして用いる。実際には、パルス幅の中央値
を用いたり、一定区間を平均化するなどして1つのサン
プリングデータを求める。1サンプルを抽出するにして
も平均化するにしても各PRFサンプリングデータは等
間隔である必要がある。
【0052】超音波パルス信号を一定周波数PRF(p
ulse repetitionfrequency)
で繰り返し送信し、そのエコー信号を受信して複数のP
RFサンプリングデータを獲得する。このPRFサンプ
リングデータを用いて離散フーリエ解析(FFT)を行
う。たとえば、送信周期306ms(PRF=3.27
Hz)のエコー信号のPRFサンプリングデータを32
点求めてFFTを行った場合には、ほぼ0.1Hzの周
波数分解能を得ることができる。このようにパルスドッ
プラでありながら、極めて高い周波数分解能を得ること
ができる(図14(A)参照)。
【0053】ただし、FFTのサンプリング周波数はパ
ルスの繰り返し周波数であるPRFであり、これは数ヘ
ルツ程度の低いものである(上記の例では3.27Hz
である)。このため、真のドップラ周波数がこれよりも
高い場合があり、上記FFTで求められたドップラ周波
数は、0ヘルツ(DC)〜PRFのベースバンド(n=
0)帯域に現れた上記真のドップラ周波数の写像である
(図14(B)参照)。そこで、前記疑似連続波モード
で求めたドップラ周波数を用いて真のドップラ周波数が
どの帯域(PRF×n〜PRF×(n+1)…n:整
数)に属するかを割り出す。図15に信号の帯域Bとサ
ンプリング周波数fsに応じて発生する信号帯域の写像
パターンを示す。上記疑似連続波モードで求めたドップ
ラ周波数によって割り出された帯域の基底周波数n×P
RFをベースバンドスペクトルのピーク周波数fdに加
算することによって精密なドップラ周波数である精ドッ
プラ周波数を求める。
【0054】以下、図16のフローチャートおよび図1
7のベースバンドおよびn次写像バンドの図を参照して
DSP16の連続パルスモード時の処理動作を説明す
る。図16において、A/D変換器15からサンプリン
グデータが入力されると(s21)、このサンプリング
データをデモジュレーションする(s22)。すなわ
ち、6kHz下方に周波数シフトする。ただし、サンプ
リングにおいてスペクトル反転が発生する場合には、1
8kHz下方に周波数シフト、または6kHz上方にシ
フトする。この処理により、超音波パルスのキャリア周
波数成分を除去しドップラ周波数成分のみが現れるよう
にする。そして、ベースバンドの周波数スペクトル以外
を除去するようにフィルタリングする(s23)。な
お、上記デモジュレーション演算またはサンプリング時
にこのサンプリングデータは複素化される。
【0055】疑似連続波モードの処理を行うために、デ
モジュレーションされたサンプリングデータから送信パ
ルス幅に対応する区間を切り出す(s24)。つぎに、
このデモジュレーションされたサンプリングデータは、
図14に示したようにドップラ周波数波形の一部である
ため、この信号の中央部の一部区間を平均するなどして
PRFサンプリングデータを抽出する(s25)。s2
1〜s25の処理を所定回繰り返し実行する(s2
6)。すなわち、所定個数のサンプリングデータが入力
されるまで上記処理を繰り返す。
【0056】所定数(たとえば32)のサンプリングデ
ータが入力され、切り出しデータおよびPRFサンプリ
ングデータが抽出されると、s26からs27に進む。
s27以下では以下の動作を実行する。s27では図4
のs5以下の処理を実行して疑似連続波モードのドップ
ラ周波数を求める。この疑似連続波モードのドップラ周
波数の精度はPRF(3.27Hz)以下であるため、
連続パルスモードで求めたドップラ周波数の帯域バイア
ス、すなわちn×PRFを正確に求めることができる。
【0057】そして、蓄積したPRFサンプリングデー
タのうち最新の所定点数(たとえば128)を用いてF
FTを実行し(s28)、ベースバンドに変換してピー
ク周波数fdを検出する(s29)。このピーク周波数
fdは、単純なピークであってもよく、ピーク領域を加
重平均または積分してピークの中心値を求めてもよい。
ただし、実際のドップラ周波数はベースバンドよりも高
い周波数または低い周波数である可能性があるため、前
記s27で求められた疑似連続波モードのドップラ周波
数に基づいて真のドップラ周波数がどの帯域(第n写像
帯域:n×PRF〜(n+1)×PRF)にあるかを割
り出す(s30)。図17の場合にはn=5、すなわち
第5写像帯域を示している。そして、前記ピーク周波数
fdにn×PRFを加算して精ドップラ周波数を算出す
る(s31)。
【0058】なお、PRFは常に一定ではなく、対象物
との距離に応じて決定される。すなわち、対象物との距
離が長いとエコーの遅延時間が長いためPRFは小さく
なり(その代わりパルス幅が長くなる)、対象物との距
離が短いとエコーの遅延時間が短いためPRFを大きく
することができる。
【0059】このように単一のトランスデューサ1を用
いたドップラソナーで1Hz以下の周波数分解能を得る
ことができるため、従来より船舶等に搭載されているド
ップラソナーの処理アルゴリズムを変更するのみで計測
精度を著しく向上させることも可能である。たとえば、
岸壁に接岸する場合などは、微速航行となりドップラ周
波数も小さくなり、岸壁との距離も短くなるためPRF
を10Hz(1秒間に10回パルスビームを送受信)程
度にあげることができるため、極めて有効にこの方式を
適用することができる。
【0060】なお、図4および図16のフローチャート
において、DSP16が行うデモジュレーション処理
は、サンプリングデータ例に対して+1,−j,−1,
+jを順次乗算するのみでよい。以下、この簡略化され
た演算処理方式について説明する。なお、この処理を可
能にするために、A/D変換器15のサンプリング周波
数を24kHzに設定し、438kHz付近にスペクト
ルが展開しているエコー信号をアンダーサンプリングし
た。
【0061】デモジュレーションは、エコー信号のスペ
クトルが展開している注目領域の中心周波数をゼロ周波
数(DC)にシフトする処理、すなわち、周波数軸に対
してスペクトルを並行移動する処理である。ここで、A
/D変換器15から入力されるエコー信号のサンプリン
グデータ列をx(n)と表す。このサンプリングデータ
列x(n)は、上記のようにサンプリング周波数fs
(=24kHz)でサンプリングされ、中心周波数fc
(=6kHz)の離散時間信号となったものである。こ
れに対して、以下のような離散複数指数関数列c(n)
を乗算する。
【0062】
【数4】 このc(n)をx(n)の各項に乗算することによって
中心周波数fcが0(DC)になるように周波数スペク
トルをシフトすることができる。すなわち、データ列x
(n)のDFT変換から求まる周波数スペクトルが、
【数5】 であるのに対し、データ数列x(n)に離散複素指数関
数c(n)を乗算したデータ列の周波数スペクトルXs
hift(k)が、
【数6】 となることから、この乗算によりデータ列の周波数スペ
クトルX(k)が周波数軸に沿ってシフトされているこ
とが分かる。すなわち、
【数7】 によってスペクトルの注目領域の中心周波数fcを周波
数ゼロとするように、スペクトル全体を周波数軸に沿っ
てシフトすることができる。
【0063】また、前記c(n)の指数部(−jΩ
c n)のnを、自然数Mを加算することによって(n+
M)に置き換えた場合、すなわち,離散複素指数関数を
M個シフトしてデータ数列に乗算した場合でも、
【数8】 で明らかなように、周波数パワースペクトルはこのずれ
に影響されることなく同様にシフトされる。
【0064】ここで、サンプリング周波数fsと注目領
域の中心周波数fcは、上述したように fs=4fc/(4k+1) ,k=0,1,2,… となるような関係に設定されている。このため、上記、
Ωc は、 Ωc =2π(fc/fs)=2πk+π/2 となり、前記離散複素指数関数c(n)は、
【数9】 となる。したがって、任意の整数値nに対して、
【数10】 となり、+1,−j,−1,+jの4種類の値のみを取
ることが分かる。
【0065】したがって、x(n)に対するc(n)の
乗算は、x(n)に対して+1,−j,−1,+jを順
次乗算するのみでよい。また、この順序が維持されてい
れば、〔数8〕で証明されたように、x(n)の各デー
タと+1,−j,−1,+jとの対応は任意である。
【0066】上記の例では6kHz付近に展開している
エコー信号のスペクトルを用いているが、18kHz付
近に展開しているスペクトルを用いることも可能であ
る。この場合、注目領域の中心周波数fc=18kHz
となり、 fs=4fc/(4k+3) ,k=0,1,2,… となるため、 Ωc =2π(fc/fs)=3π/2 となり、Ωc =π/2の場合と逆回りの+1,+j,−
1,−jをx(n)に乗算することで18kHzを0H
zにシフトすることができる。
【0067】しかし、実際に乗算を行う必要はなく、乗
算した場合に合わせて正負符号制御および実数虚数制御
をするだけでよい。すなわち、c(n)がマイナス符号
の場合には符号反転計算のみを行い、c(n)が実数の
場合はx(n)の値を全て実数部として処理し、c
(n)が虚数の場合はx(n)の値を全て虚数部として
処理すればよい。
【0068】このように、 fs=4fc/(4k+1) ,k=0,1,2,… となるようなサンプリング周波数fsでサンプリングす
ることにより、サンプリングデータのサンプリング番号
に基づいて符号制御および実数部,虚数部に割り振るの
みの処理で周波数スペクトルのシフトを行うことがで
き、上記指数関数を実際に乗算して演算する必要がなく
なるため、処理を大幅に簡略化することができる。
【0069】そして、図18のようなレジスタの転記を
行うことによって、x(n)の周波数スペクトルをシフ
トすると同時に、実数値としてサンプリングされたデー
タ列x(n)を複素数に変換することができる。ここ
で、A/D変換器15から入力されたデータ列x(n)
を記憶するA/Dデータバッファをx(n)で表し、複
素数バッファをX(n)で表す。
【0070】この図において、x(0)はそのままX
(0)の実数部に転記され、X(0)の虚数部には0が
書き込まれる。x(1)は正負の符号を反転されたのち
X(1)の虚数部に転記され、X(1)の実数部には0
が書き込まれる。x(2)は正負の符号を反転されたの
ちX(2)の実数部に転記され、X(2)の虚数部には
0が書き込まれる。x(3)はそのままX(3)の虚数
部に転記され、X(3)の実数部には0が書き込まれ
る。このように、離散複素指数関数の演算結果を複素単
位乗数データ列(+1、−j、−1、+jの任意の値か
ら開始する数列)の値にしたがって順次符号反転および
転記を繰り返すのみでこの周波数シフトを行うことがで
き、指数関数を実際に乗算して演算する必要がなくな
り、処理を大幅に簡略化することができる。
【0071】さらに、前記複素数バッファX(n)の実
数部Real(n)、Imaginary(n)のうち
一方は必ず0であるため、上記規則に基づいて0になる
側が分かっていれば0を記憶するバッファを省略してバ
ッファの記憶領域を実質的に半分にすることも可能であ
る。
【0072】なお、図2に示す受信部4はアンダーサン
プリングを利用するためのサンプリング周波数fsと注
目領域の中心周波数fcとの関係をfs=4fc/(4
k+1)としているが、送信する超音波パルスの周波数
を任意に設定できない場合には、一旦中間周波数にダウ
ンコンバートし、上記関係式を満足する周波数としてサ
ンプリングすることも可能である。また、アンダーサン
プリングを用いない従来方式のものにおいても本願発明
は適用可能である。
【0073】なお、上記実施形態では超音波う用いたド
ップラソナーについて説明したが、測定対象はドップラ
周波数に限定されない。パルス信号として送信されてく
る信号(たとえば電磁波など)の周波数を測定する場合
に広く適用することができる。
【0074】また、連続パルスモードの測定方法につい
ても超音波を用いたドップラソナーについて説明した
が、この発明は超音波以外でも電磁波など波動信号のド
ップラ周波数を測定する場合に広く適用できるものであ
る。さらに、測定されたドップラ周波数に基づいて割り
出される変量も速度に限定されない。
【0075】
【発明の効果】この発明によれば、波形のくずれたパル
ス信号でも、これらを接合して疑似的な連続波を作成す
ることができるため、この疑似連続波を用いたフーリエ
変換によって前記パルス信号の周波数を正確に測定する
ことができる(疑似連続波モード)。
【0076】また、この発明によれば、等間隔で入力さ
れるパルス信号のそれぞれをサンプリングデータとして
フーリエ変化することによって、該パルス信号のベース
バンド帯域への写像周波数を高精度に求めることができ
る(連続パルスモード)。そして、この連続パルスモー
ドに上記疑似連続波モードを適用することにより、周波
数の真値がどの帯域に属するかを正確に求めることがで
きるため、極めて高精度な信頼性の高い周波数測定が可
能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の疑似連続波モードの測定方法が適用
されるドップラソナーの概略構成図である。
【図2】同ドップラソナーの受信部の構成を示す図であ
る。
【図3】同ドップラソナーのサンプリングデータの切り
出し方式を示す図である。
【図4】同ドップラソナーのDSPの動作を示すフロー
チャートである。
【図5】上記疑似連続波モードの測定方法をシミュレー
トした波形と位相を示すグラフである。
【図6】上記疑似連続波モードの測定方法をシミュレー
トした波形と位相を示すグラフである。
【図7】上記疑似連続波モードの測定方法をシミュレー
トした波形と位相を示すグラフである。
【図8】上記疑似連続波モードの測定方法をシミュレー
トした波形と位相を示すグラフである。
【図9】上記疑似連続波モードの測定方法をシミュレー
トした波形と位相を示すグラフである。
【図10】上記疑似連続波モードの測定方法をシミュレ
ートして得たドップラ周波数の変化を示すグラフであ
る。
【図11】種々の入力周波数で上記疑似連続波モードの
測定方法をシミュレートした場合のドップラ周波数の変
化を示すグラフである。
【図12】種々の入力周波数で上記疑似連続波モードの
測定方法をシミュレートした場合のドップラ周波数の変
化を示すグラフである。
【図13】シフト補正値Δの分割数を多くして上記測定
方法をシミュレートした場合のドップラ周波数の変化を
示すグラフである。
【図14】この発明の連続パルスモードを説明する図で
ある。
【図15】周波数スペクトルの写像パターンを説明する
図である。
【図16】連続パルスモード時のDSPの動作を示すフ
ローチャートである。
【図17】疑似連続波モードで写像の次数を確定するこ
とを説明する図である。
【図18】DSPで実現されるフィルタの構成図であ
る。
【符号の説明】
1…トランスデューサ 2…切換器 3…送信部 4…受信部 5…制御部 11…アンプ 13…バンドパスフィルタ 14…アンプ 15…A/D変換器 16…DSP

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1) 入力されるパルス信号を順次接
    合して記憶する (2) 各接合点における信号位相差を無くすような位
    相シフト量を求める (3) 求められた位相シフト量を用いて各パルス信号
    の位相をシフトし、疑似連続波を作成する (4) 前記疑似連続波をフーリエ解析して、該疑似連
    続波の周波数を推定する (5) 手順(3)の処理に用いた位相シフト量のシフ
    ト誤差を求め、このシフト誤差に基づいて該位相シフト
    量を補正して、新たな位相シフト量を求める (6) 手順(3)乃至手順(5)の処理を所定回数繰
    り返し、繰り返し毎に手順(4)で求められた所定個数
    の周波数に基づいて、前記順次入力されるパルス信号の
    周波数を決定する の手順を有する周波数測定方法。
  2. 【請求項2】 手順(5)は、シフト誤差の大きさに応
    じて決定される段階的な補正値で位相シフト量を補正す
    る請求項1に記載の周波数測定方法。
  3. 【請求項3】 前記補正値は、正のシフト誤差に応じて
    決定される値と負のシフト誤差に対して決定される値の
    絶対値が異なる請求項2に記載の周波数測定方法。
  4. 【請求項4】 手順(1)は、入力されたパルス信号を
    ベースバンドに周波数シフトしたものを記憶する請求項
    1、請求項2または請求項3に記載の周波数測定方法。
  5. 【請求項5】 手順(1)は、入力されたパルス信号か
    ら所定区間を切り出したものを記憶する請求項1乃至請
    求項4のいずれかに記載の周波数測定方法。
  6. 【請求項6】 手順(1)は、入力される1または複数
    のパルス信号を複数回繰り返して接合して記憶する請求
    項1乃至請求項5のいずれかに記載の周波数測定方法。
  7. 【請求項7】 手順(1)で入力されるパルス信号は、
    送信パルス信号の反射エコー信号である請求項1乃至請
    求項6のいずれかに記載の周波数測定方法。
  8. 【請求項8】 (1) キャリア周波数に目的信号が重
    畳されたパルス信号を一定周期(1/PRF)で複数入
    力する (2) 手順(1)で入力した複数のパルス信号からキ
    ャリア周波数成分を除去し、目的信号のみを取り出す (3) 手順(2)で取り出された複数の目的信号に対
    して請求項1、請求項2または請求項3の手順を適用し
    て目的信号の概略周波数を求める (4) 手順(2)で取り出された複数の目的信号をそ
    れぞれ1つのサンプリングデータとしてフーリエ変換
    し、ベースバンド(0Hz〜PRF)におけるスペクト
    ルのピーク周波数fdを求める (5) 手順(3)で求めた概略周波数に基づき、目的
    信号の真のスペクトルの属する帯域(PRF×n〜PR
    F×(n+1))の次数nを割り出す (6) 手順(4)で求めたfd、および、手順(5)
    で求めたnを用い、fd+PRF×nの演算によって目
    的信号の精密な周波数を求めるの手順を有する周波数測
    定方法。
  9. 【請求項9】 手順(1)で入力されるパルス信号は、
    送信パルス信号の反射エコー信号である請求項8に記載
    の周波数測定方法。
  10. 【請求項10】 所定間隔で超音波パルス信号を送信す
    る送信手段と、該所定間隔の超音波パルス信号の反射エ
    コー信号を受信し、請求項7または請求項9に記載の周
    波数測定方法を用いて該反射エコー信号のドップラ周波
    数を求める受信手段と、を備えたドップラソナー。
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