JP2000351700A - 有機分子の分離装置および分離方法ならびに有機分子の結晶作製方法 - Google Patents

有機分子の分離装置および分離方法ならびに有機分子の結晶作製方法

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JP2000351700A
JP2000351700A JP11167109A JP16710999A JP2000351700A JP 2000351700 A JP2000351700 A JP 2000351700A JP 11167109 A JP11167109 A JP 11167109A JP 16710999 A JP16710999 A JP 16710999A JP 2000351700 A JP2000351700 A JP 2000351700A
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solid
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Koji Akioka
幸司 秋岡
Akira Miki
明 三城
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 タンパク質等の生体高分子の結晶化に有用な
装置および方法を提供する。 【解決手段】 結晶成長用装置10は、シリコン酸化物
からなる固体表面11aおよびアルミナからなる固体表
面12aを有する。この装置10において、これらの固
体表面11aおよび12aは、同時に溶液14に接触す
るよう配置されている。これらの固体表面11aおよび
12aは、溶液14と接触するとき、互いに異なる表面
電位またはゼータ電位を有する。たとえば、固体表面1
1aは負に帯電し、固体表面12aは正に帯電する。し
たがって、溶液14中で負に帯電したタンパク質等の有
機分子13は、正に帯電する固体表面12aに選択的に
吸着される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機分子の分離装
置および分離方法に関し、特に、タンパク質、酵素等の
種々の生体高分子、およびそれらの複合体を含む有機高
分子の結晶化に適用される分離装置および分離方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】タンパク質等の生体高分子の結晶化は、
通常の無機塩等の低分子量化合物の場合と同様、高分子
を含む水または非水溶液から溶媒を奪う処理を施すこと
により、過飽和状態にして、結晶を成長させるのが基本
となっている。このための代表的な方法として、バッチ
法、透析法および気液相間拡散法があり、これらは、試
料の種類、量、性質等によって使い分けられている。
【0003】図22(a)および図22(b)は、気液
相間拡散法に含まれるハンギングドロップ法およびシッ
ティングドロップ法を概略的に示す。図22(a)に示
すハンギングドロップ法では、沈殿剤222を収容する
密閉容器220内において、結晶化すべき生体高分子を
含む母液221が垂下される。図22(b)に示すシッ
ティングドロップ法では、密閉容器230内において、
プレート233上に結晶化すべき生体高分子を含む母液
221が置かれる。沈殿剤222は、密閉容器230内
において、別の容器231に収容される。これらの方法
では、沈殿剤および母液中の揮発成分の蒸発によって、
緩やかに平衡が成立する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】X線結晶構造解析によ
り生体高分子の3次元構造を決定するためには、目的と
する物質を抽出・精製後、結晶化することが必須とな
る。しかし、現在のところ、どの物質に対しても適用す
れば必ず結晶化できるといった手法および装置がないた
め、勘と経験に頼ったトライアンドエラーを繰返しなが
ら結晶化を進めているのが実状である。生体高分子の結
晶を得るためには、非常に多くの実験条件による探索が
必要であり、結晶成長がX線結晶解析の分野での最も大
きなボトルネックとなっている。
【0005】本発明の目的は、上述したように多様な特
性を有するために試行錯誤を繰返しながら進められてき
た従来の結晶化プロセスの欠点を技術的に解消すること
である。
【0006】具体的には、本発明の目的は、種々の生体
高分子および生体高分子から主として構成される生体組
織の結晶化において、重力の影響による溶液内の対流の
影響を低減し、核形成を制御する技術を提供することで
ある。
【0007】さらなる本発明の目的は、微結晶の大量生
成を抑制または制御し、X線構造解析を可能にし得る大
型の結晶を得ることができる技術を提供することであ
る。
【0008】さらなる本発明の目的は、少量の生体高分
子溶液で、結晶化を可能にするための技術を提供するこ
とである。
【0009】さらに本発明の目的は、少量の溶液で結晶
化を可能にするための方法および装置を提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明により、溶液中に
含まれる帯電した有機分子を前記溶液から分離するため
の装置が提供され、この装置は、金属、半導体およびそ
れらの化合物よりなる群から選ばれた互いに実質的に異
なる材料からなる複数種の固体表面を備える。この装置
において、複数種の固体表面は、同時に溶液に接触する
よう配置されており、かつ複数種の固体表面は、溶液と
接触するとき、互いに異なる表面電位またはゼータ電位
を有するものであり、それにより、複数種の固体表面の
いずれかに、有機分子をより強く静電的に吸着させるよ
うになっている。
【0011】本発明による装置は、複数種の固体表面上
で溶液を保持するための囲い壁を有することが好まし
い。
【0012】本発明による装置において、複数種の固体
表面は、所定の領域において互いに隣合うよう配置する
ことができ、かつ当該所定の領域において、有機分子を
より強く静電的に吸着させる固体表面が占める面積は、
残りの固体表面が占める面積以下とすることができる。
【0013】本発明による装置において、複数種の固体
表面は、同一の半導体基板上に形成することができる。
この場合、複数種の固体表面は、当該半導体基板の表面
または当該半導体基板表面に形成された半導体化合物膜
もしくは金属化合物膜の表面からなる第1の表面と、第
1の表面上の所定の領域に形成される半導体化合物のア
イランドまたは金属化合物のアイランドの表面からなる
第2の表面とを含むことができる。第1の表面および第
2の表面は、溶液と接触するとき、互いに異なる表面電
位またはゼータ電位を有する。当該半導体をシリコンと
することができる。
【0014】本発明による装置は、有機分子を含む溶液
のpHを測定するための手段をさらに備えることが好ま
しい。このpH測定手段は、半導体層と、半導体層上に
形成される絶縁層と、溶液を絶縁層上で保持するための
囲い壁と、溶液に接触するように囲い壁に設けられる金
属電極とを備えることができる。
【0015】本発明による装置において、複数の固体表
面およびpH測定手段は、同一の半導体基板上に形成す
ることができる。pH測定手段における半導体層は、半
導体基板の一部とすることができ、また、複数の固体表
面は、当該半導体基板の表面または当該半導体基板表面
に形成された半導体化合物膜もしくは金属化合物膜の表
面からなる第1の表面と、第1の表面上の所定の領域に
形成される半導体化合物のアイランドまたは金属化合物
のアイランドの表面からなる第2の表面とを含むことが
できる。第1の表面および第2の表面は、溶液と接触す
るとき、互いに異なる表面電位またはゼータ電位を有す
る。第1の表面はシリコンまたはシリコン酸化膜で形成
することができる。
【0016】本発明による装置において、複数の固体表
面を与える材料は、積層構造を有してもよい。この積層
構造において、上層に位置する材料は、下層に位置する
材料上の複数の位置に、間隔をあけて設けられているこ
とが好ましい。
【0017】本発明により、溶液中に含まれる帯電した
有機分子を当該溶液から分離するための方法が提供さ
れ、この方法は、有機分子を含み、かつ有機分子の等電
点以外のpHを有する溶液を、上述した装置の複数種の
固体表面に接触させる工程を備える。有機分子を含む溶
液のpHは、複数の固体表面のうち少なくとも1つに該
有機分子と逆の極性の表面電位またはゼータ電位をもた
らすものであることが好ましく、かつ残りの固体表面に
該有機分子と同じ極性の表面電位またはゼータ電位をも
たらすものであることが好ましい。
【0018】本発明により、溶液中に含まれる帯電した
有機分子の結晶を作製する方法が提供され、この方法
は、有機分子を含み、かつ有機分子の等電点以外のpH
を有する溶液を、上述した装置の複数種の固体表面に接
触させる工程と、当該装置を沈殿剤と共に密封して、複
数種の固体表面に溶液が接触している状態を所定時間維
持する工程とを備える。有機分子を含む溶液のpHは、
複数種の固体表面のうち少なくとも1つに有機分子と逆
の極性の表面電位またはゼータ電位をもたらすものであ
り、かつ残りの固体表面に有機分子と同じ極性の表面電
位またはゼータ電位をもたらすものであることが好まし
い。
【0019】
【発明の実施の形態】蛋白質を初めとする生体高分子の
ほとんどは、溶液内において幾何学的に特異的な構造お
よび静電的な相互作用(静電斥力・引力、ファンデルワ
ールス力)によって分子間同士の認識が行なわれてい
る。静電的なエネルギに基づく分子間の相互作用におい
ては、個々の分子最表面でのわずかな空間的な電荷分布
の相違が、分子間の認識度合い、分子集合体の作りやす
さに決定的な影響を及ぼすことが予想される。したがっ
て、溶液内をブラウン運動しながら衝突を繰返している
個々の分子では、周期的かつ規則的な構造を有する分子
集合体の核が非常に形成されにくいと考えられる。
【0020】蛋白質分子の結晶生成に関しては、その核
生成の初期過程が重要であるとの報告がなされている。
結晶化の初期過程において核となる分子を2次元的に配
列させる何らかの条件が整えば、その後の結晶化は、こ
れを核としてエピタキシャル的に進行するものと考えら
れる。
【0021】本発明による装置および方法は以下に説明
するような作用機構に基づき、有機分子の選択的吸着を
行ない、その結果、特定の領域に結晶核が形成され、好
ましい結晶成長をもたらすことができる。
【0022】図1に示すように、本発明による装置10
は、第1の表面11aを有する第1の固体11、および
第2の表面12aを有する第2の固体を有する。第1の
固体11と第2の固体は、実質的に異なる材料からな
る。ここで、「実質的に異なる」とは、固体を構成する
主材料が異なっていることを意味する。固体を構成する
材料は、金属、半導体、またはそれらの化合物、たとえ
ば酸化物、水酸化物、窒化物等である。装置10は、タ
ンパク質等の分離または結晶化すべき有機分子13を含
む溶液14と接触させられる。タンパク質等の有機分子
13の表面は、その分子の等電点以外のpHを有する溶
液において、通常、正または負に帯電している。一方、
本発明による装置において、上述した材料の固体表面1
1aおよび12aも、溶液14中で帯電する。このと
き、固体表面についての電位の大きさおよび極性は、固
体の材質および溶液のpHに依存する。たとえば、ある
pHの溶液中で、固体表面11aは負に帯電し、固体表
面12aは正に帯電する。一方、有機分子13は、当該
pHの溶液中で負に帯電する。この場合、溶液14中の
有機分子13は、有機分子13と逆の極性で帯電する固
体表面12aに静電的な引力に従って選択的に吸着され
る。有機分子13と同じ極性で帯電する固体表面11a
への吸着は、静電作用により阻害される。こうして、固
体表面12a上での有機分子13の分離が進められ、好
ましくは、有機分子13の結晶核が形成され、結晶化が
進められる。このように、帯電した有機分子を含む溶液
中に、表面電位またはゼータ電位の異なる複数種の固体
表面を設ければ、いずれかの固体表面で、当該有機分子
を選択的に吸着させることができ、その結果、当該固体
表面に結晶核が形成されて、選択的に結晶化を進めるこ
とができる。
【0023】一般に、タンパク質分子、コロイド粒子、
ならびに金属、半導体、およびそれらの酸化物、水酸化
物または窒化物などの化合物の表面は、水溶液中で、そ
の溶液のpH値によって定まる表面電位(一般にゼータ
電位として測定できる)に帯電する。この表面電位が見
かけ上ゼロになるときの溶液のpH値が、等電点であ
る。等電点は物質によって異なるが、この等電点より低
いpHにおいて物質は正に帯電し、等電点より高いpH
において物質は負に帯電する。本発明は、このような物
質の性質を利用して、有機分子の選択的分離を行なう。
たとえば、図2に示すような関係が複数の固体表面と分
離すべきタンパク質との間に成立するとする。曲線S1
は、第1の固体表面についての表面電位とpHとの関係
を表し、曲線S2は、第2の固体表面についての表面電
位とpHとの関係を表し、曲線Pは、タンパク質の表面
電位とpHとの関係を表す。第1の固体表面の等電点は
3、タンパク質の等電点は6、第2の固体表面の等電点
は9である。したがって、斜線で示す領域のpH(タン
パク質の等電点と第2の固体表面の等電点の間のpH)
を有する溶液において、第1の固体表面およびタンパク
質は負に帯電し、第2の固体表面は正に帯電する。この
pH領域において、タンパク質は、第2の固体表面に静
電引力により選択的に吸着または固定され、その結果、
第2の固体表面でタンパク質の結晶成長が促進され得
る。一方、タンパク質と第1の固体表面との間には、静
電斥力が働く。一方、図3に示すような関係が成立する
とする。この場合、第1の固体表面の等電点は9、タン
パク質の等電点は6、第2の固体表面の等電点は3であ
る。そして、第2の固体表面の等電点とタンパク質の等
電点の間のpHを有する溶液において、第1の固体表面
およびタンパク質は正に帯電し、第2の固体表面は負に
帯電する。したがって、斜線に示す領域のpHにおい
て、静電引力により、タンパク質を第2の固体表面に選
択的に吸着させることができる。このように、分離また
は結晶化すべき分子を含む溶液(母液)に対し異なる帯
電特性を示す複数種の固体表面を設ければ、母液のpH
を適当な値に設定することで、いずれかの固体表面に選
択的に分子を静電吸着させ、その結果、その固体表面に
結晶核を形成させて、分子の結晶成長を起こさせること
ができる。
【0024】たとえば、酸化シリコン(SiO2)の等
電点は1.8〜2.8であり、したがって、それより低
いpHにおいてSiO2は正に帯電し、それより高いp
Hにおいて負に帯電する。一方、アルミナ(α−Al2
3)の等電点は9付近である(なお、γ−Al23
等電点は7.4〜8.6程度である)。また、ほとんど
のタンパク質は4〜7の等電点を有する(たとえば、ヒ
ト血清アルブミン4.7〜5.2、ウシインスリン5.
3〜5.8、インターフェロン(ニワトリ胚)7〜8、
ヒト成長ホルモン4.9〜5.2)。したがって、たと
えば、図1に示す装置において、第1の固体11をSi
2とし、第2の固体12をアルミナとすれば、タンパ
ク質を含み、かつ6〜8のpH(タンパク質の等電点と
アルミナの等電点の間の値)を有する溶液14中で、S
iO2は負に帯電し、アルミナは正に帯電する。一方、
4〜7の等電点を有するタンパク質は、通常、負に帯電
する。したがって、溶液中のタンパク質は、正に帯電す
るアルミナに選択的に吸着され得る。一方、タンパク質
のSiO2上への吸着は阻害され得る。このように、S
iO2とアルミナとの組合わせは、選択的吸着に対し適
当である。
【0025】また、シリコン(Si)の等電点は添加さ
れている不純物の種類や濃度によって異なるが、たとえ
ば、一般的なn型Siの等電点は3.5〜4程度であ
り、それより低いpHにおいてn型Si表面は正に帯電
し、それより高いpHにおいて負に帯電する。また、一
般的なp型Siの等電点は5〜6程度である。したがっ
て、図1に示す装置において、第1の固体11をn型S
i基板とし、第2の固体12をSi基板上に形成された
アルミナとすれば、タンパク質を含み、かつ6〜8のp
H(タンパク質の等電点とアルミナの等電点の間の値)
を有する溶液14中で、n型Siとタンパク質は負に、
アルミナは正に帯電する。したがって、溶液中のタンパ
ク質は、正に帯電するアルミナに選択的に吸着する一方
で、負に帯電するSi上への吸着は阻害され得る。この
ように、シリコンとアルミナとの組合わせも、タンパク
質分子の選択的吸着に対し適当である。
【0026】本発明による装置において、それぞれの固
体表面は、金属、半導体、金属化合物、半導体化合物か
らなる。複数種の固体表面の組合わせは、任意である
が、分離すべき分子の等電点が、複数種の固体表面の等
電点の間にくるよう、当該組合わせを選択することが望
ましい。すなわち、図2および図3に示すように、分離
すべき分子のpH−表面電位曲線が、複数種の固体表面
のpH−表面電位曲線の間にくることが望ましい。好ま
しい半導体には、シリコン、ガリウム・ヒ素(GaA
s)、ガリウム・リン(GaP)などがある。好ましい
半導体化合物には、酸化シリコン、窒化シリコンなどが
あり、好ましい金属化合物には、酸化アルミニウム(α
−Al23、γ−Al23)、酸化チタン、酸化銅など
の金属酸化物や、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化
タングステン、窒化タンタル、TaSiN、WSiNな
どの金属窒化物や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネ
シウムなどの金属水酸化物などがある。好ましい組合わ
せには、シリコン−アルミナ、酸化シリコン−アルミ
ナ、窒化シリコン(等電点は4〜5程度)−アルミナ、
酸化シリコン−酸化チタン(等電点は5〜6.5程
度)、シリコン−酸化チタン、酸化チタン−アルミナな
どがある。
【0027】このような複数種の固体表面は、同一の基
板上に形成することが好ましく、半導体基板上に形成す
ることがより好ましく、特に、シリコン基板上に形成す
ることが好ましい。たとえば、シリコン基板表面の所定
の領域にのみアルミナを形成することで、シリコン−ア
ルミナの組合わせが形成できる。また、シリコン基板表
面全体にシリコン酸化膜(SiO2膜)を形成し、その
SiO2膜表面の所定の領域にのみアルミナを形成する
ことで、酸化シリコン−アルミナの組合わせが形成でき
る。SiO2膜に変えてシリコン窒化膜(Si34膜)
を形成すれば、同様に窒化シリコン−アルミナの組合わ
せが形成でき、アルミナの代わりに酸化チタンを形成す
れば、シリコン−酸化チタンや酸化シリコン−酸化チタ
ンの組合わせを形成できる。
【0028】半導体基板、より好ましくはシリコン基板
を用いることで、CVD、ホトリソグラフィー、エッチ
ング等の通常の半導体集積回路の製造と同様な手法によ
って、容易に複数種の固体表面を有する装置を作製でき
る。すなわち、CVD技術を用いてシリコン基板上に所
望の材料の膜を成膜し、必要に応じてその上に異なる材
料の膜を成膜して多層構造とし、ホトリソグラフィー技
術を用いて所望の形状のマスクを形成し、エッチング技
術を用いてマスクを施した領域以外を除去して下地を露
出させれば、各種の組合わせの複数種の固体表面を有す
る装置を作製できる。たとえば、シリコン基板の表面に
アルミナ膜を成膜し、所定の領域のみを残して当該アル
ミナ膜をエッチングにより除去してシリコン基板の表面
を露出させれば、シリコン−アルミナの組合わせが形成
できる。また、シリコン基板表面にシリコン酸化膜を成
膜し、さらにその上にアルミナ膜を成膜し、所定の領域
のみを残してアルミナ膜をエッチングにより除去しシリ
コン酸化膜を露出させれば、酸化シリコン−アルミナの
組合わせが形成できる。このように、シリコン基板上に
成膜する膜の材料を変えれば、容易に各種の組合わせが
形成できる。
【0029】金属もしくは半導体の酸化物または水酸化
物の表面は、水と接すると水和を起こし、水酸基を生成
させる。この水酸基の解離により、酸化物または水酸化
物の表面は、水溶液のpHに応じて表面電位(ゼータ電
位)を生じさせる。たとえば、SiO2では次のような
解離が生じる。 固体表面−Si・OH+H+→固体表面−SiOH2 +
OH- 固体表面−Si・OH+OH-→固体表面−SiO-+H
2O+H+ したがって、酸化物または水酸化物の表面は、低いpH
で、プロトン付加により正の電位を帯び、高いpHで、
OH基からのプロトンの引き抜きにより負の電位を帯び
る。一般に、酸化物または水酸化物は、見かけ上の電位
がゼロになる点(等電位点)を有し、この点より高いp
Hでは、負の表面電位を、この点より低いpHでは、正
の表面電位を有する。したがって、異なる等電位点を有
する酸化物または水酸化物の組合わせを選択し、本発明
に好ましく用いることができる。
【0030】本発明による装置において、複数種の固体
表面の配置パターンは、任意である。たとえば、図4
(a)に示すように、第2の固体表面42aが第1の固
体表面41aに囲まれるような配置は好ましく使用され
る。この場合、第1の固体表面は、第2の固体表面より
顕著に広い。第2の固体表面に有機分子を吸着させれ
ば、結晶核のランダムな生成を効果的に防ぎ、良好な結
晶成長をもたらすことができる。すなわち、良好な結晶
成長または大きな結晶の形成のためには、本発明による
装置の所定の領域において、有機分子をより強く吸着さ
せる固体表面は、他の固体表面(有機分子の吸着を阻害
し得る表面)より狭いことが好ましい。図4(a)に示
すもののほか、図4(b)に示すように、第1の固体表
面41bに対し、所定の幅を有する複数の第2の固体表
面42bを所定の間隔をあけて配置してもよいし、図4
(c)に示すように、第1の固体表面41cに対し、所
定の形状および面積を有する複数の固体表面42cを、
所定の間隔をあけてマトリクス状に配置してもよい。複
数種の固体表面の配置は、図5(a)に示すように第1
の固体51a上に第2の固体52aが配置される積層構
造とした方が半導体集積回路の製造と同様の手法を用い
て少ない工程で作製できるので好ましい。しかし、図5
(b)に示すように、所定の面に複数種の固体表面51
bおよび52bが同じレベルで設けられる構造を有して
もよい。
【0031】また、図6に示すように第1の固体表面6
1に対し、これと異なる複数種の第2の固体表面62お
よび63を配置することができる。固体表面62および
63は、所定のpHを有する溶液に対し、異なる電位を
有する。たとえば、固体表面61は酸化シリコンとし、
固体表面62はアルミナとし、固体表面63は酸化チタ
ンとすることができる。分離すべき特定の有機分子は、
固体表面62および63のいずれかにより強く吸着され
得る。有機分子をより強く吸着させ得る固体表面(第2
の固体表面)の最適な材料は、目的とする有機分子によ
り異なることが考えられる。図6に示すように第2の固
体表面を複数種形成することにより、1つの装置で各種
の有機分子の分離、結晶化に利用できる装置を提供でき
る。図6の装置では、第2の固体表面は2種類である
が、3種以上形成することもできる。このような装置も
同様に半導体集積回路の一般的な製造方法を用いて容易
に作製可能である。たとえば、シリコン基板上にSiO
2膜、TiO2膜、Al23膜を順に成膜、積層して、固
体表面62および63の領域を残してAl23膜を除去
して下地のTiO2膜を露出させ、その後、露出したT
iO2膜のうち固体表面63の領域を残してTiO2膜を
除去してSiO2膜を露出させればよい。また、特定の
有機分子の分離のため、図7に示すように、複数の装置
を提供してもよい。装置71、72および73は、それ
ぞれ、異なる固体表面71a、72aおよび73aを有
する。装置71〜73のいずれかにおいて、分離または
結晶化がより好ましく進行し得る。同時に使用される固
体表面の種類を多くすることによって、より多くの有機
分子の分離または結晶化に対応することができる。
【0032】前述したように本発明による装置におい
て、複数種の固体表面は、同一の基材上に設けることが
好ましい。図8(a)および図8(b)は、その一例を
示す。装置80において、シリコン基板81上にSiO
2膜82が形成され、その上にAl23のアイランド8
4が形成されている。アイランド84の周りでは、Si
2膜82が露出している。基板81上には、SiO2
82上で溶液85を保持するため、囲い壁86が設けら
れている。囲い壁86は、溶液85の流れを堰きとめる
ための部材である。囲い壁86により溶液を保持するた
めの部分が形成される。この装置は、上述した酸化シリ
コン−アルミナの組合わせを提供する。溶液85が7〜
8のpHを有するとき、上述したようにSiO2膜82
は負に帯電し、アルミナのアイランド84は正に帯電す
る。一方、溶液85中に存在する分離すべき有機分子が
4〜7の等電点を有する場合、当該分子は、通常、負に
帯電する。したがって、溶液85中の分子は、正に帯電
するアイランド84に選択的に吸着され、その結果、ア
イランド84で結晶成長が起こり得る。一方、有機分子
のSiO2膜82上への吸着は阻害される。このような
装置は、結晶成長装置として使用することができる。こ
のような装置において、SiO2膜を設けずにシリコン
基板上に直接アルミナのアイランドを形成し、シリコン
基板そのものの表面を吸着阻害用の表面として使用して
もよい。このようにするとシリコン−アルミナの組合わ
せが提供される。また、アルミナの代わりに他の金属酸
化物、金属窒化物または金属水酸化物を使用してもよ
い。さらに、シリコン以外の半導体、または金属の基板
を使用してもよい。
【0033】図8に示す装置のアイランドは、たとえば
図9(a)〜図9(d)に示すような工程によって作製
できる。まず、図9(a)に示すように、シリコン基板
81上にSiO2膜82を形成する。次いで、図9
(b)に示すようにSiO2膜82上にAl23膜94
を形成する。これらの膜は、蒸着、スパッタリング等に
よって形成できる。通常のホトリソグラフィーに従っ
て、図9(c)に示すようなレジストパターン95を形
成した後、レジストで覆われていない部分をエッチング
することにより、図9(d)に示すようなアイランド8
4が得られる。得られた構造物に囲い壁をもたらす部材
を結合すれば、図8(a)および(b)に示すような装
置が得られる。このとき、囲い壁は、溶液中の有機分子
の吸着を阻害し得る材料、たとえば低い等電点を有する
ガラス等で形成することが望ましい。ただし、有機分子
を吸着させる固体表面(アイランド)と囲い壁との距離
が溶液中の有機分子の拡散距離(有機分子が溶液中で移
動し得る距離)よりも十分に長い場合は、この限りでは
なく、他の材料で囲い壁を形成しても問題ない。また、
上記工程において、シリコン基板上に形成する膜の材料
を変えることにより、種々の組合わせの固体表面を有す
る装置を得ることができる。
【0034】本発明による装置は、溶液のpHを測定す
るための手段を含むことができる。上述したように固体
表面および分離すべき有機分子の表面電位または実効表
面電荷は、溶液のpHに左右されるため、分離または結
晶化の操作において、溶液のpHをモニタすることは、
有意義である。pH測定手段には、通常のpHメータ
ー、イオン感応性電界効果型トランジスタ(ISFE
T)と基準電極を組合わせた従来型のpHセンサー等を
用いることができる。
【0035】一方、pH測定手段として、図10に示す
ような装置を用いてもよい。pH測定装置100におい
て、n型シリコン基板101上にはSiO2膜102が
形成されている。基板101上には溶液保持部110が
設けられる。溶液保持部110は、溶液105の流れを
堰きとめる囲い壁106およびSiO2膜102から構
成される。囲い壁106上には金属電極107が設けら
れる。金属電極107は、SiO2膜102の方に延び
ていて、溶液保持部110内に保持される溶液と接触す
るように配置される。シリコン基板101の裏面(Si
2膜102が設けられた面と対向する面)には、端子
電極108が設けられる。
【0036】酸化物の表面は、上述したように水和反応
を起こして、水酸基を生成させる。その水酸基の解離に
よって酸化物表面に電荷が生じる。したがって、酸化物
の表面には、溶液のpHに応じた表面電位が発生する。
たとえば、SiO2の場合、以下のような解離がおこ
り、その表面電位はpHによって変化する。 Si・OH2 ++OH-⇔H++Si・OH+OH-⇔Si・O-+H2O+H+ 低pH 等電点 高pH 他の酸化物でも同様な機構により表面電位が生じ、酸化
物の種類に応じて等電点や発生する電位の値は異なる。
なお、SiO2の等電点はおよそ1.8〜2.8であ
る。また、詳細な機構は分からないが、窒化物の表面に
も酸化物と同様に水溶液中でその水溶液のpHに応じた
電位が発生する。たとえば、Si34の場合は等電点が
およそ4〜5程度であって、それより低いpHで正の表
面電位を、それより高いpHで負の表面電位を帯びる。
このため、絶縁層としてSiO2膜のかわりにSi34
膜等の窒化物膜を用いてもよい。
【0037】したがって、図10に示す装置100にお
いて、SiO2膜102が露出した溶液保持部110に
水溶液を入れると、SiO2膜102の表面にその水溶
液のpHに応じた電位が発生する。この電位によって、
酸化膜を介して設けられるシリコン基板表面のキャリア
濃度が変化する。したがって、シリコン基板101の溶
液105に近い部分に形成される空乏層109の容量が
変化する(空乏層の幅が変化する)。したがって、MO
S(MIS)に相当する構造を有する装置100におい
て、金属電極107と端子電極108との間の容量電圧
特性(高周波特性)は、溶液105のpHに応じて変化
する。この変化を、図11に示す。図11は、pHの異
なる2種の溶液に関して容量電圧特性を示している。容
量電圧特性は、図に示すようにpHに応じて電圧軸方向
に変化する。
【0038】あらかじめ、図10に示すpH測定装置を
用いて、測定周波数1MHz程度で、pHの分かってい
る種々の溶液の容量電圧特性を測定し、pH値とフラッ
トバンド電位(VFB)との関係を得ることができる。p
H値とフラットバンド電位(VFB)は、たとえば図12
に示すような関係を有する。この関係に基づいて、未知
の溶液のpHが求められる。すなわち、pH測定装置1
00をC−VメーターおよびC−Vレコーダーに接続す
る。次いで、溶液保持部110に測定すべき溶液を入
れ、電極107と108との間のC−V特性を測定し、
FBを求める。得られたVFBと、予め得られたpH値と
フラットバンド電位(VFB)との関係から、当該溶液の
pHが決定される。
【0039】このpH測定装置において、n型Si基板
の代わりにp型Si基板を用いてもよいし、他の半導体
基板、たとえば、Ge基板やGaAs等の化合物半導体
基板を用いてもよい。また、SiO2膜の代わりに他の
酸化物膜たとえばAl23膜、TiO2膜を用いてもよ
いし、Si34等の窒化物膜を用いてもよい。絶縁層の
厚みは、たとえば100Å〜1μmであり、好ましくは
500Å〜3000Åである。電極用の材料には、P
t、Pd、Au等を用いることができる。
【0040】このpH測定装置は、極めて単純な構造
(MOS(MIS)構造)を有し、通常の半導体加工技
術(リソグラフィー、CVD、エッチング等)を用いて
簡単に製作できる。当該装置の溶液保持部にピペットな
どで溶液を滴下し、数μl〜数十μlの微量の溶液につ
いてpHを測定できる。この装置は、シリコン基板上に
作製することができ、したがって、本発明による分離装
置と同じ基板上に作り込むことができる。そのような組
み合わされた装置を以下の実施例に示す。
【0041】
【実施例】図13および図14に示すような装置を作製
した。装置130は、シリコン基板131を含む基台部
141と、それに接合されたパイレックスガラス製の溶
液保持プレート(囲い壁)142とを有する。基台部1
41のサイズは、15mm×15mmである。基台部1
41とプレート142とによって、2つの結晶成長用セ
ル132aおよび132b、1つの沈殿剤用セル13
3、ならびに1つのpHモニター用セル134が形成さ
れる。プレート142のサイズは、12mm×12mm
であり、高さは0.5mmである。シリコン基板131
の表面は、シリコン酸化膜135で被覆されている。セ
ル132a、132bおよび134は、直径約4mmの
円筒形または円錐台形であり、セル133は、5.5m
m×5.5mmの角柱形である。結晶成長用セル132
aおよび132b、ならびにpHモニター用セル134
内には、シリコン酸化膜135上にアルミナのアイラン
ド136が複数形成されている。アイランド136は、
図16(a)および図16(b)に示すような線状であ
り、その幅は約100μm〜200μmである。また、
隣り合うアイランド間の距離は、約0.2mm〜1mm
である。セル内の場所またはセルによって、このアイラ
ンド間の間隔は、異なっている。たとえば、セル132
aには、図16(a)に示すようなパターンのアイラン
ドが形成され、セル132bには、図16(b)に示す
ようなパターンのアイランドが形成される。pHモニタ
ー用セル134を形成するプレート142a上には、電
極144が形成され、シリコン基板131の裏面にも電
極145が形成される。図15に示すように電極144
は、Ti層144aおよびPt層144bを有する二層
構造となっている。電極144上には、外部との接続用
の端子146が設けられる。シリコン基板131、シリ
コン酸化膜135、電極144、および電極145によ
りpHセンサー部が構成される。図13および14に示
す装置において、pHモニター用セル134内のアイラ
ンド136は必ずしも必要でない。さらに、シリコン基
板131の裏面で結晶成長用セルに対向する位置には、
必要に応じてセル132aおよび132bを加熱するた
めの発熱素子147が設けられる。発熱素子は、溶液を
加熱し、結晶の成長を制御する。
【0042】図17は、好ましい発熱素子の一具体例を
示す。発熱素子164において、基材161上には、パ
ッド165aおよび165bが形成される。パッド16
5aと165bとの間には、コンパクトに折り畳まれた
電熱線167が設けられる。パッド165aおよび16
5bならびに電熱線167は、基材161上に形成され
た薄膜である。基材161には、シリコン基板やガラス
基板等を用いることができる。パッド165aおよび1
65bは、アルミニウム、銅等の良導体からなる薄膜で
あり、電熱線167は、Cr、Fe−Cr−Al系合
金、Ni−Cr系合金等の電熱材料からなる薄膜であ
る。電熱線167の隣には、温度測定用の抵抗線168
が設けられる。抵抗線168の両端には、パッド165
cおよび165dが設けられる。パッド165cおよび
165dは、アルミニウム、銅などの良導体からなる薄
膜であり、抵抗線168は、Cr、銅マンガン合金、銅
ニッケル合金などの抵抗材料からなる薄膜である。厳密
な温度管理が必要な場合、図17に示すように電熱線の
隣に温度測定用の抵抗線を設けることが好ましい。たと
えば、電熱線167の厚みは、0.1μm〜1.0μm
であり、パッド165a〜165dの厚みは、0.5μ
m〜2.0μmである。電熱線167の幅は、たとえば
50μm〜100μmである。一方、発熱素子の温度を
正確に測定するため、抵抗線168の熱容量はできるだ
け小さくすることが望ましい。したがって、抵抗線16
8のサイズは、必要な範囲でできるだけ小さくすること
が望ましい。たとえば抵抗線168の幅は、10μm以
下が好ましく、たとえば1〜10μmである。抵抗線1
68の厚みは、0.3μm以下が好ましく、たとえば
0.1〜0.3μmである。
【0043】図13に示す装置の基台部は、半導体装置
の一般的な製造プロセスを使用して、シリコンウェーハ
上に一度に多数作製することができる。たとえば、図1
8(a)に示すように、まず、シリコンウェーハ181
の表面に熱酸化によって約200nmの厚みのシリコン
酸化膜182を形成する。次に、シリコン酸化膜182
上に、スパッタリング、CVD等によりアルミナ膜を形
成するか、スパッタリングまたは蒸着により形成したア
ルミニウム膜を酸化して、図18(b)に示すように、
厚み約3〜5μmのアルミナ膜184を形成する。次い
で、図18(c)に示すように、通常のホトリソグラフ
ィーに従ってアルミナ膜184上にレジストパターン1
85を形成する。通常用いられレジストをマスクとする
エッチングにより、アイランド部のみを残してアルミナ
膜を除去する。かくして、図18(d)に示すように、
シリコン酸化膜182上にアルミナのアイランド18
4’が形成される。その後、シリコンウェーハを切断
(スクライビング)し、得られたチップに電極185お
よび必要に応じ発熱素子187を設けて、多数の基台部
を得る(図18(e))。
【0044】溶液保持プレートも、一般的なエッチング
技術およびスパッタリング技術を用いて、たとえば図1
9(a)〜図19(f)に示すように作製される。ま
ず、図19(a)に示すように、パイレックスガラス板
191の表面に所定のパターンでレジストマスク192
を形成する。次いで、フッ酸によるウェットエッチング
またはダイヤモンドブラスト法を行なって貫通孔193
aおよび193bをガラス板191に形成する。次に、
pHモニタ用セルとなるべき貫通孔193a以外の場所
をSUS板のハードマスク194aで覆い、スパッタリ
ングによってTi/Pt膜195を形成する(図19
(c))。その後、必要な部分をハードマスク194b
で覆い、スパッタリングにより接続用のAu端子196
を形成する(図19(d))。かくして、図19(e)
に示すような電極部197を有する溶液保持プレート1
98が得られる。得られたプレートを、図18(a)〜
(e)に示すプロセスにより得られた基台部に、陽極接
合などにより結合し、図13に示す装置が得られる(図
19(f))。
【0045】図13に示す装置130において、次のよ
うな方法により、タンパク質の結晶を調製する。まず、
結晶成長用セルとpHモニター用セルに、目的とするタ
ンパク質が溶解した溶液(母液)をたとえば約30μl
滴下する。溶液中のタンパク質の濃度は10〜50mg
/ml程度である。最適な濃度は目的とするタンパク質
の種類によって異なる。未知のタンパク質の結晶化を行
なう場合、濃度を変えた複数種の溶液を調製し、それら
について、図13に示す装置を複数用意し、同時に結晶
成長を行なえばよい。このとき、溶液のpHは、タンパ
ク質およびシリコン酸化物の等電位点より高く、アルミ
ナの等電位点よりも低くなるように調整する。溶液のp
Hの調整は、緩衝溶液の添加により行なう。シリコン酸
化物の等電位点は約2であり、アルミナのそれは約9で
ある。したがって、たとえば、目的とするタンパク質の
等電位点が約7である場合、溶液のpHを約8に調整す
る。こうすれば、タンパク質およびシリコン酸化膜の表
面電位は負となり、アルミナの表面電位は正となる。溶
液の最適なpHも、目的とするタンパク質により異な
る。したがって、pHを変えた複数種の溶液を調製し、
これらについて同時に結晶化を行なうことが好ましい。
また、沈殿剤用セルに沈殿剤を入れる。沈殿剤には、た
とえば1MのNaCl溶液2mlとpHが4.6の標準
緩衝溶液2mlとを混合したものを用いる。
【0046】図20に示すように、装置130のセルを
透明なガラスの蓋200で密封し、冷暗所に約100時
間保管する。タンパク質分子は、静電的な引力により、
アルミナのアイランド部に集められ、固定される。アイ
ランド部でタンパク質の結晶核が形成され、結晶成長が
進む。結晶成長の様子は、透明な蓋の上から顕微鏡によ
り観察される。その際、図20に示すように、pHモニ
ター用セルの電極にC−Vメーター201を接続し、X
−Yレコーダー202でC−V特性を測定する。これに
より、結晶成長中の溶液のpHがモニターされる。溶液
のpHは、事前に調整してあるものの、結晶成長中に変
化し得る。タンパク質の結晶性は、溶液のpHの微妙な
変化に影響され得る。したがって、実際に結晶が成長し
ていく過程においてpHの微妙な変化を把握することは
重要である。
【0047】本発明の装置を結晶成長用(結晶作製用)
装置として適用する場合は、結晶成長用セルを少なくと
も1つ有していればよい。沈殿剤は別の容器に入れて結
晶成長用装置と並べて置けばよく、pHモニターも必ず
しも必要ではない。ただし、同一の基板上に結晶成長用
セル、pHモニター用セル、沈殿剤用セルを作製し、1
チップとした方が、使い勝手がよく好ましい。このよう
な1チップ化した装置は、前述にように半導体装置の一
般的な製造プロセスを用いて容易に作製できる。
【0048】また、より多い数のセルを有する装置を用
いれば、より多くの条件下(含有するタンパク質の濃度
やpHなどの条件を変えた複数種の母液)で、同時に結
晶化の実験を行なうことができる。たとえば、図21に
示す装置は、この要求に答えることができる。装置21
0は、9つの結晶成長用セル211〜219、1つのp
Hモニター用セル221および2つの沈殿剤用セル23
1および232を有する。タンパク質の濃度を変えた複
数種の母液を用いて、結晶化を行うような場合には、装
置210のように複数の結晶成長用セルに対してpHモ
ニター用セルは1つあればよいが、pHを変えた複数種
の母液を用いる場合には、結晶成長用セルと同数のpH
モニター用セルを有することができる。また、pHをモ
ニターする必要がない場合は、沈殿剤用セルを除いて、
すべてを結晶成長用セルにすることもできる。
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、特定の固体表面に選択
的に有機分子を吸着させ、それによって、対流の有機分
子への影響を低減し、有機分子の結晶核の形成を安定化
させることができる。また本発明によれば、微結晶の大
量生成を抑制または制御することができ、X線構造解析
を可能にし得る大型の結晶を得ることができる。さらに
本発明によれば、多数の固体表面を結晶化に用いること
によって、あらゆる種類の有機分子の結晶化に対応する
ことができる。また、本発明では、極微量の試料につい
て結晶化を行なうことができる。
【0050】本発明は、製薬産業や食品産業等におい
て、種々の高分子化合物、特に高分子電解質を精製また
は結晶化するために用いることができる。本発明は特
に、酵素および膜タンパク質等のタンパク質、ポリペプ
チド、ペプチド、ポリサッカライド、核酸、ならびにこ
れらの複合体および誘導体等を精製または結晶化させる
ため好ましく適用される。特に本発明は、生体高分子の
精製または結晶化のため好ましく適用される。また本発
明の装置は、生体高分子等を選択的に吸着および固定化
することが可能なため、バイオセンサ、バイオセンサに
よる各種生体組織および生体物質の測定装置への応用等
が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による装置の一具体例を示す概略断面図
である。
【図2】溶液中の2種の固体表面およびタンパク質の表
面電荷が、溶液のpHによって変化する様子を示す図で
ある。
【図3】溶液中の2種の固体表面およびタンパク質の表
面電荷が、溶液のpHによって変化する様子を示す図で
ある。
【図4】(a)〜(c)は、本発明による装置におい
て、複数の固体表面が配置されるパターンの例を示す平
面図である。
【図5】(a)および(b)は、本発明による装置にお
いて、複数の固体表面が配置されるパターンの例を示す
断面図である。
【図6】本発明に従い、複数の好ましい吸着表面を有す
る装置の一例を示す平面図である。
【図7】本発明に従い、複数の装置で条件の異なる結晶
化を行なうことを示す図である。
【図8】本発明による装置のもう一つの例を示す(a)
断面図および(b)平面図である。
【図9】(a)〜(d)は、図8(a)および(b)に
示す装置を製造する方法を説明する概略断面図である。
【図10】本発明の装置に設けられるpHセンサーの一
例を示す概略断面図である。
【図11】図10に示すpHセンサーで測定される容量
電圧特性の例を示す図である。
【図12】図10に示すpHセンサーで測定される容量
電圧特性から求められるフラットバンド値と溶液のpH
との関係を示す図である。
【図13】本発明による装置の他の例を示す斜視図であ
る。
【図14】図13に示す装置の断面図である。
【図15】図13に示す装置における電極を拡大した断
面図である。
【図16】(a)および(b)は、図13に示す装置に
おいて結晶成長用セルに設けられるアイランドのパター
ンを拡大して示す平面図である。
【図17】図13に示す装置が有する発熱素子の構造を
拡大して示す斜視図である。
【図18】(a)〜(e)は、図13に示す装置の基台
部を製造する方法を示す概略断面図である。
【図19】(a)〜(f)は、図13に示す装置の溶液
保持プレートを製造する方法を示す概略断面図である。
【図20】図13に示す装置においてpHを測定する流
れを示す模式図である。
【図21】本発明による装置のさらなる例を示す平面図
である。
【図22】(a)および(b)は、従来の結晶成長法を
示す模式図である。
【符号の説明】
11 第1の固体 11a 第1の表面 12 第2の固体 12a 第2の表面 13 有機分子 14 溶液

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶液中に含まれる帯電した有機分子を前
    記溶液から分離するための装置であって、 金属、半導体およびそれらの化合物よりなる群から選ば
    れた互いに実質的に異なる材料からなる複数種の固体表
    面を備え、 前記複数種の固体表面は、同時に前記溶液に接触するよ
    う配置されており、かつ前記複数種の固体表面は、前記
    溶液と接触するとき、互いに異なる表面電位またはゼー
    タ電位を有するものであり、それにより、 前記複数種の固体表面のいずれかに、前記有機分子をよ
    り強く静電的に吸着させるようになっていることを特徴
    とする、有機分子の分離装置。
  2. 【請求項2】 前記複数種の固体表面上で前記溶液を保
    持するための囲い壁を有することを特徴とする、請求項
    1に記載の装置。
  3. 【請求項3】 前記複数種の固体表面は、所定の領域に
    おいて互いに隣合うよう配置され、かつ前記所定の領域
    において、前記有機分子をより強く静電的に吸着させる
    固体表面が占める面積は、残りの固体表面が占める面積
    以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載
    の装置。
  4. 【請求項4】 前記複数種の固体表面は、同一の基板上
    に形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のい
    ずれか1項に記載の装置。
  5. 【請求項5】 前記基板が半導体基板であることを特徴
    とする、請求項4に記載の装置。
  6. 【請求項6】 前記複数種の固体表面は、同一の半導体
    基板上に形成されており、 前記複数種の固体表面は、当該半導体基板の表面または
    当該半導体基板表面に形成された半導体化合物膜もしく
    は金属化合物膜の表面からなる第1の表面と、前記第1
    の表面上の所定の領域に形成される半導体化合物のアイ
    ランドまたは金属化合物のアイランドの表面からなる第
    2の表面とを含み、かつ前記第1の表面および前記第2
    の表面は、前記溶液と接触するとき、互いに異なる表面
    電位またはゼータ電位を有するものであり、それによ
    り、前記第2の表面に前記有機分子をより強く静電的に
    吸着させるようになっていることを特徴とする、請求項
    1〜3のいずれか1項に記載の装置。
  7. 【請求項7】 前記半導体基板がシリコン基板であるこ
    とを特徴とする、請求項5または6に記載の装置。
  8. 【請求項8】 前記有機分子を含む溶液のpHを測定す
    るための手段をさらに備えることを特徴とする、請求項
    1〜7のいずれか1項に記載の装置。
  9. 【請求項9】 前記pH測定手段は、 半導体層と、 前記半導体層上に形成される絶縁層と、 前記溶液を前記絶縁層上で保持するための囲い壁と、 前記溶液に接触するように前記囲い壁に設けられる金属
    電極とを備えることを特徴とする、請求項8に記載の装
    置。
  10. 【請求項10】 前記複数種の固体表面および前記pH
    測定手段は、同一の半導体基板上に形成され、 前記pH測定手段における前記半導体層は、前記半導体
    基板の一部であり、 前記複数種の固体表面は、当該半導体基板の表面または
    当該半導体基板表面に形成された半導体化合物膜もしく
    は金属化合物膜の表面からなる第1の表面と、前記第1
    の表面上の所定の領域に形成される半導体化合物のアイ
    ランドまたは金属化合物のアイランドの表面からなる第
    2の表面とを含み、かつ前記第1の表面および前記第2
    の表面は、前記溶液と接触するとき、互いに異なる表面
    電位またはゼータ電位を有するものであり、それによ
    り、前記第2の表面に前記有機分子をより強く静電的に
    吸着させるようになっていることを特徴とする、請求項
    9に記載の装置。
  11. 【請求項11】 前記半導体がシリコンであることを特
    徴とする、請求項10に記載の装置。
  12. 【請求項12】 前記複数種の固体表面を与える材料
    は、積層構造を有し、 前記積層構造において、上層に位置する材料は、下層に
    位置する材料上の複数の位置に、間隔をあけて設けられ
    ていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1
    項に記載の装置。
  13. 【請求項13】 溶液中に含まれる帯電した有機分子を
    前記溶液から分離するための方法であって、 前記有機分子を含み、かつ前記有機分子の等電点以外の
    pHを有する溶液を、請求項1〜12のいずれか1項に
    記載される装置の前記複数種の固体表面に接触させる工
    程を備えることを特徴とする、有機分子の分離方法。
  14. 【請求項14】 前記有機分子を含む溶液のpHは、前
    記複数の固体表面のうち少なくとも1つに前記有機分子
    と逆の極性の表面電位またはゼータ電位をもたらすもの
    であり、かつ残りの固体表面に前記有機分子と同じ極性
    の表面電位またはゼータ電位をもたらすものであること
    を特徴とする、請求項13に記載の方法。
  15. 【請求項15】 溶液中に含まれる帯電した有機分子の
    結晶を作製する方法であって、 前記有機分子を含み、かつ前記有機分子の等電点以外の
    pHを有する溶液を、請求項1〜12のいずれか1項に
    記載される装置の前記複数種の固体表面に接触させる工
    程と、 前記装置を沈殿剤と共に密封して、前記複数種の固体表
    面に前記溶液が接触している状態を所定時間維持する工
    程とを備えることを特徴とする、有機分子の結晶作製方
    法。
  16. 【請求項16】 前記有機分子を含む溶液のpHは、前
    記複数種の固体表面のうち少なくとも1つに前記有機分
    子と逆の極性の表面電位またはゼータ電位をもたらすも
    のであり、かつ残りの固体表面に前記有機分子と同じ極
    性の表面電位またはゼータ電位をもたらすものであるこ
    とを特徴とする、請求項15に記載の方法。
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