JP3166623B2 - 生体関連高分子の固定化装置 - Google Patents

生体関連高分子の固定化装置

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JP3166623B2 JP17373196A JP17373196A JP3166623B2 JP 3166623 B2 JP3166623 B2 JP 3166623B2 JP 17373196 A JP17373196 A JP 17373196A JP 17373196 A JP17373196 A JP 17373196A JP 3166623 B2 JP3166623 B2 JP 3166623B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロマシン、
ナノマシン、シリコンマイクロシステム等と称されるマ
イクロアセンブリに用いられる生体高分子および/また
は生体組織を保持、固定化するための装置に関し、特に
DNAやRNA等の核酸分子を固定化するための装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、マイクロマシン、ナノマシン、あ
るいはシリコンマイクロシステム(以下M&Nマシンと
略記)と呼ばれる微小機械により、非常に高感度でかつ
微小な産業用のセンサや、生体組織内で細胞等の除去や
治療作業を行なう医療用の微小ロボットを実現させよう
という研究が盛んに行なわれている。M&Nマシンは、
最近の半導体、特にシリコン集積回路のプロセス技術、
特に微細加工技術の飛躍的な進歩によりその実現性が期
待されているものである。そして、半導体のうちでも、
特にシリコンは微細加工のためのプロセス技術が発達し
ていること、機械的特性に優れていること、集積回路を
内蔵することによってワンチップ化・微細化が可能にな
ること、等の理由によって、シリコンを用いた機械の小
型化・高性能化が特に期待されている。
【0003】M&Nマシンのセンサへの用途としては、
圧力センサ、加速度センサ、温度センサ、流量計、化学
分析用イオンセンサ等が考案されている。このうち、圧
力センサへの適用例を図18に示す[文献;江刺:“半
導体マイクロメカニカルマシーニングとセンサ”センサ
技術、5巻、P.114(昭和60年)]。図18に示
す例では、シリコン基板140の裏面側を異方性エッチ
ングにより薄く加工し、ダイヤフラム141を形成して
いる。さらにシリコンダイヤフラム141の表面にはポ
リシリコンで作製した歪み検出用ゲージ142が設置さ
れている。このもののダイヤフラム141に圧力を印加
すると、圧力の大きさに比例してダイヤフラム141が
撓み、ダイヤフラム141上のポリシリコン歪みゲージ
142の抵抗値が変化する。この変化を電極143を介
してブリッジ回路で検出して圧力値を知る仕組みになっ
ている。図18の例に示したように、M&Nセンサの作
製においては、シリコン基板の微細加工プロセス技術が
重要となることがわかる。
【0004】次に、M&Nマシンによる生体内での作業
ロボットについて説明する。これについては未だ実現さ
れた例はないが、1つの試みとして、自走ロボットの移
動用の脚として適用することを狙ったアレイ型感知レバ
ーアクチュエータについて説明する。図19にその概略
を示す[文献;N.Takeshima and H.Fujita:“Polyimid
e Bimorph Actuators for a Ciliary Motion System ”
1991 ASME Winter Meeting,DSC-Vol32 (Micromechani
cal Sensors, Actuators, and Systems ), PP.203-20
9. ]。図19に示す例は、シリコン基板上に熱膨張係
数の異なる2種類の薄膜を積層し、このものの垂直方向
における変位によって基板を走行させようとするもので
ある。図19において、シリコン基板150上には2種
類の熱膨張係数の異なるポリイミド薄膜151および1
52が、ニクロム配線153(ヒータとして働く)を挟
むようにして積層されており、これがシリコン基板15
0と中空部154を介して隔離されることにより、感知
レバーとして機能する。この感知レバーは、初期状態で
は残留応力のため片方に反っているが、中央のニクロム
配線153に電流を流すことにより発熱し、その結果、
バイメタルのように反対方向に変位する。この運動を連
続的に行なうことによって、生体内を自由に動き回る人
工微小ロボットを実現させようとするものである。
【0005】以上に示したものはM&Nマシンのほんの
一例であるが、ここで示したもの以外のものについて
も、基本となる技術は、シリコン基板を主として用いた
微細加工プロセスによって微小な人工システムを実現さ
せようとするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】医療等の生物学的な分
野への応用を狙ったM&Nマシンでは、生体内または生
体内と類似の環境下において、種々のセンシング、生体
物質の操作・除去、外科的治療等を行なうことを必要と
している。その際に、M&Nマシンに生体関連物質や生
体組織の保持、固定化を容易に行なうことができるよう
な機能を付加することが不可欠となる。
【0007】従来の技術において、たとえば特開平6−
238578号公報は、微細な物体をピンセットのよう
に把持し、離脱させる装置を開示する。同公報に開示さ
れる装置は、開閉可能な1対の把持脚を有する本体と、
把持脚を開閉させる静電アクチュエータとを備える。ま
た把持脚の先端部には強誘電体素子が取付けられてお
り、これに電圧を印加することによって分極状態を変化
させるようになっている。この装置において微細物体を
強誘電体素子の設けられた先端に把持した後、電圧の印
加により強誘電体の分極反転を行ない、静電的な反発力
を生じさせて微細物体を離脱させようとしている。この
ような装置においては、微小な先端部分に微細な誘電体
素子を取付けるため、その作製は容易ではない。またこ
のような装置は、生体組織等を所定の場所に保持するた
めの装置としてはその機構が複雑であり、より簡単な機
構のものが望まれる。
【0008】本発明の目的は、より簡単な構造におい
て、生体高分子および/または生体組織等をM&Nマシ
ンの特定領域に保持、固定化することのできる装置を提
供することである。
【0009】本発明のさらなる目的は、シリコンを主た
る半導体基板として用いるM&Nマシンにおいて、シリ
コン基板の微細加工技術により生体高分子および/また
は生体組織等を保持、固定化することのできる装置を提
供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、生体高分子お
よび/または生体高分子が含有される生体組織を固定化
する装置であって、不純物が添加された特定の材料から
なる基材を備える。該基材は、不純物の濃度および/ま
たは種類が異なる2以上の領域を有し、それにより、2
以上の領域の1つで、不純物の添加によって該基材の表
面にもたらされる静電特性により、生体高分子および/
または生体組織を吸着固定することができ、2以上の領
域の他の1つで、生体高分子および/または生体組織の
吸着を抑制することができる。
【0011】本発明の装置において、不純物の濃度およ
び/または種類が異なる2以上の領域の1つは、固定化
させようとする生体高分子および/または生体組織の取
りやすい形状に応じた所定のパターンを有することが好
ましい。このような所定のパターンは、基材上において
連続的または断続的に形成することができる。このよう
な所定のパターンは、たとえば略円形とすることができ
る。後述するように、所定のパターンを略円形とするこ
とで、環状のDNAを選択的に吸着固定する装置を提供
することができる。またこのような所定のパターンとし
て、大きさの異なる複数の略円形を設けることもでき
る。1つの基材上にサイズの異なる複数のパターンを形
成しておけば、サイズの異なる種々の分子(たとえば環
状DNA)の固定化に対応することができる。
【0012】本発明の装置において、基材には電極を形
成することができる。この電極に電圧を印加することに
より、基材表面にもたらされる静電特性を制御すること
ができる。
【0013】本発明に従う固定化装置は、特に、生物お
よび医学の分野におけるM&Nマシンに適用することが
できる。マイクロマシンは、半導体の微細加工技術(μ
mレベル)を用いて、主としてシリコン基板において作
製された微小機械であり、各種センサ、ロボット等に適
用されるものである。ナノマシンは、マイクロマシンの
微細加工レベルをさらに上げ、ナノメータレベルの領域
まで至らしめたものである。このレベルのマシンでは、
分子レベルでの作業や操作が可能となる。
【0014】本発明に従う固定化装置は、不純物元素の
ドーピングされた半導体結晶から構成することができ
る。半導体には、シリコン、ゲルマニウム等の単体のも
の、GaAs、CdS等の化合物のもの等が含まれる。
また本発明に用いられる材料として、不純物元素のドー
ピングによる価電子制御が可能なものであれば、その他
の材料を用いることもでき、たとえば、チタン酸バリウ
ム、チタン酸ストロンチウム等の強誘電材料を用いるこ
ともできる。さらに、マトリックス中にドーパントが添
加された有機導電性化合物、あるいは、固定化されたイ
オンを内蔵した絶縁性有機高分子化合物等も用いること
ができる。
【0015】本発明を構成する材料として、特に好まし
いものはシリコン結晶である。シリコン結晶へ不純物元
素をドーピングしてN型にする場合には、通常、周期律
表第V族の元素を用い、P型にする場合には周期律表第
III族の元素を用いる。シリコン結晶からなる基板の
同一平面上に不純物元素の種類および/または濃度の異
なる2以上の領域を形成するためには、たとえばイオン
注入法を用いることができる。後述するように、半導体
装置の製造プロセスに使われる通常の技術を用いて、本
発明に従う所望の固定化装置を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】蛋白質や核酸を始めとする生体高
分子では、生体内および生体内と類似の環境下におい
て、分子間同士の認識は、ほとんど、幾何学的に特異的
な構造および静電的な相互作用(静電斥力・引力、ファ
ンデルワールス力)によって行なわれている。静電的な
エネルギに基づく分子間の相互作用においては、個々の
分子最表面でのわずかな空間的な電荷分布の相違が、分
子間の認識の度合、分子集合体の作りやすさに決定的な
影響を及ぼすと考えられている。
【0017】本発明者は、生体内での種々の生体構成分
子のセンシング、生体物質の固定化、捕獲等を行なうこ
とを目的として、シリコンに代表される材料を用いてM
&Nマシンの研究を進めていく中で、シリコン基板と生
体関連高分子(具体的には酵素等に代表される蛋白質分
子および生体内で遺伝情報の処理機能を担う核酸分子)
とが特異的に吸着反応を起こすことを見出した。たとえ
ば、特定の蛋白質を含有する母液とシリコン基板を透析
チューブ内に入れ、これを容器内に満たされた緩衝溶液
中に浸漬すると、シリコン表面に蛋白質の結晶が析出し
てくる一方、その際の結晶化の度合がシリコン基板の種
類によって大きく異なることを見出した。たとえば、水
溶性蛋白質分子としてあるpH条件下で分子表面の実効
表面電荷が負のものを用いると、高抵抗のN型シリコン
表面には多くの蛋白質結晶が析出する一方、低抵抗のN
型シリコン表面ではほとんど蛋白質の結晶化が起こらな
いことを見出した。
【0018】この現象は以下のように解釈される。以
下、負の実効表面電荷を有する蛋白質分子がシリコン表
面と接している場合を考える。高抵抗N型シリコンと低
抵抗N型シリコンとを比較すると、ドーパント(たとえ
ばリン原子)の濃度は低抵抗N型シリコンの方が高いた
め、シリコンの表面近傍で誘起される空間電荷層の空乏
層幅は低抵抗N型シリコンの方が狭くなる。よって、空
乏層容量は低抵抗N型シリコンの方が高抵抗N型シリコ
ンより大となることから、表面電位は低抵抗N型シリコ
ンの方が高抵抗N型シリコンより小さくなる。
【0019】このシリコン表面の表面電位は正の極性を
有することから、負の実効表面電荷、したがって負の表
面電位を有する生体高分子と互いに静電的な引力が働く
ことになる。その際、低抵抗N型シリコンの方が高抵抗
N型シリコンより表面電位が低いため、生体高分子に作
用する静電引力が弱く、低抵抗N型シリコン上では生体
高分子の結晶化が起こりにくくなると考えられる。した
がって、負の実効表面電荷を有する生体高分子および/
または生体組織とN型シリコン基板が接する場合には、
該分子を吸着固定するため、不純物のドーピングにおい
てシリコン基板の表面を高抵抗のN型とすることが有効
である。また、P型シリコン基板の場合にも同様のドー
ピングが有効である。
【0020】一方、正の実効表面電荷を有する生体高分
子および/または生体組織とP型シリコン基板が接する
場合には、分子の固定化のため、シリコン基板の表面が
高抵抗P型となるように不純物をドーピングするのが有
効である。また、N型シリコン基板を用いる場合にも同
様な表面へのドーピングが有効である。
【0021】以上のことから、本発明者は基板に添加さ
れる不純物の濃度および/または種類を制御することに
より、生体高分子および/または生体組織を吸着かつ固
定化するためのより好ましい静電特性が得られることを
見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明
では、図1に示すように、固定化させるべき分子2に対
して、異なる静電特性を示す領域1aおよび1bを設
け、その中の特定の領域1aにおいて分子2を吸着固定
する。基板1において、このような2以上の領域は、添
加される不純物の種類および/または濃度を変えること
によって形成することができる。図に示すように、領域
1aでは生体高分子および/または生体組織の吸着が促
進される一方、領域1bでは、それらの吸着が抑制され
る。後述するように、このような領域は、所定のパター
ンで形成することがより好ましい。
【0022】一般に、電解質溶液内における帯電物質ま
たは分子の凝集性は、それらの間の電気二重層斥力とフ
ァンデルワールス力との和に依存するため、物質または
分子同士を凝集させる場合、電解質溶液中に添加する表
面電位を調整するための塩濃度を人為的にコントロール
することが非常に重要となる。しかしながら、実際の生
体内においてそのような操作はほとんど不可能である。
一方、本発明によれば、基材表面の静電特性は、添加さ
れる不純物の種類および/または濃度を制御することに
より、すなわち価電子制御により予め調整されているた
め、固定化すべき分子を含む溶液の塩濃度の調整が容易
または不要になるというメリットも生じる。このこと
は、本発明の装置が、M&Nマシンとして生体内で適用
するのにより優れていることを意味する。
【0023】生体高分子および/または生体組織を固定
化する基材上の領域は、固定化すべき分子または組織の
取りやすい形状に応じたパターンにすることがより好ま
しい。たとえば、固定化すべき分子が円形の形状を取り
やすい場合、図2に示すように、基材10上において価
電子制御により特定の静電特性を示す固定化領域11も
それに応じた円形とすることが好ましい。生体高分子お
よび生体組織の取り得る形状に即して基材上に形成する
固定化領域の形状およびサイズを選択することができ
る。以下には、DNAを固定化するための装置を具体例
として挙げながら本発明をより詳細に説明する。
【0024】固定化すべき分子で特に産業上重要なもの
として核酸(DNA等)分子が挙げられる。これは、遺
伝子工学の分野において、DNAの組換えおよび遺伝子
クローニングの実験を行なう上で核酸の人為的な操作が
不可欠となるからである。核酸は、通常、糸状あるいは
環状の二重鎖構造を有している。生理的条件下では、核
酸の骨格を形成するヌクレオチド鎖のリボヌクレオチド
またはデオキシリボヌクレオチドの間を結ぶリン酸基は
解離しているため、核酸は通常は負に帯電している。し
たがって、上述したように、不純物がドーピングされた
表面を有するシリコン基板を用いることによって、核酸
分子を安定に固定化することが可能である。
【0025】DNAに代表される鎖状あるいは環状の生
体高分子を固定化する装置の1具体例を図3に示す。図
3(a)に示すように、この装置では、基板表面に複数
の円形のパターン21、22、23、24、25および
26が形成されている。各円形のパターンは、基材上に
形成された二重溝とすることができる。図3(b)は、
その断面構造を示している。たとえば高抵抗のN型シリ
コン(N- −Si)20a上に低抵抗のN型シリコン
(N+ −Si)が形成されたシリコン基板20上に、所
定のパターン(円形のパターン)21が形成される。パ
ターン21に相当する部分には、2つの溝21aおよび
21b(二重溝)が形成されている。これらの溝は、図
3(a)に示すように、略円形の形状を有する。溝21
aおよび21bにおいて低抵抗のN型シリコン層20b
は除去されており、高抵抗のN型シリコン20aが露出
している。上述したように、負に帯電した分子、たとえ
ば鎖状DNA分子は、高抵抗のN型シリコンで形成され
る溝に静電的に吸着させ、固定化することができる。こ
のように円形のパターンを基板上に形成することで、環
状の高分子、たとえば環状のDNAを選択的かつ効果的
に固定化することができる。環状の分子は、円形のパタ
ーンに沿って固定化される。固定化のための領域は、た
とえば1本の溝でもよいが、図に示すように2本の溝と
することでより効果的な固定化を行なうことができる。
DNAのような環状の分子は、フレキシビリティを有す
るため、円形の溝から外れることもしばしばである。し
かし、二重溝が形成された領域においては、分子の鎖の
ある部分が1つの溝から外れたとしても、もう一つの溝
で吸着することができ、分子のフレキシビリティに対応
することができる。特に二本鎖であるDNAに対して
は、それぞれの鎖のフレキシビリティに効果的に対応す
ることができる。環状の分子を、所定の間隔で離れた二
重溝のいずれかに吸着されることによって、安定した固
定化を実現することができる。
【0026】また図3(a)に示すように、直径の異な
る複数の円形のパターンを形成することが好ましい。図
3(a)に示す装置では、各円形が接するようにパター
ンが設けられている。このようなパターンのほか、たと
えば同心円状にパターンを配置することもできる。図3
(c)は、図3(a)に示す部分を拡大して示したもの
であり、パターン21、22および23においてそれぞ
れ二重溝が形成されているようすを示している。このよ
うに異なるサイズの円形領域を1つの基板に複数作製し
ておけば、サイズの異なる種々の環状分子、たとえば環
状DNAを取扱うことが可能になる。DNA分子等の環
状分子は、そのサイズに応じた領域に安定して固定化さ
れる。図4は、サイズの異なるDNA分子が各パターン
に固定化されるようすを示すものである。シリコン基板
30において、大きなDNA分子31と小さなDNA分
子32とが、それぞれのサイズに相当する円形の領域に
固定化される。
【0027】図5および図6に、図3に示すような装置
の製造方法の概略を示す。図5に示すプロセスでは、高
抵抗のN型シリコンからなる基板40a上に、たとえば
+イオンを注入し(図5(a))、低抵抗のN型シリ
コンからなる層40bを形成する(図5(b))。次い
で、CVD等の方法によってSiO2 膜42を形成した
後(図5(c))、レジスト43を塗布する(図5
(d))。フォトリソグラフィー等によりレジスト43
について所定のパターンを形成した後(図5(e))、
SiO2 膜42の所定の部分をエッチングする(図5
(f))。次いで、エッチングされた領域の低抵抗N型
シリコン層40bを異方性エッチングにより除去すれ
ば、所定のパターンで高抵抗N型シリコンを露出させる
ことができる(図5(g))。エッチングされた領域に
は、溝41aおよび41bを有する所定のパターン41
が形成され、固定化のための装置を得ることができる。
【0028】図6に示すプロセスでは、高抵抗N型シリ
コン基板50aを準備した後(図6(a))、その上に
レジスト53を塗布する(図6(b))。次いで、レジ
スト43について所定のパターンを形成した後、残った
レジストパターンをマスクとしてたとえばP+ イオンを
基板50aに注入する(図6(c))。P+ イオンが注
入されなかった領域に、固定化のためのパターン51が
得られる(図6(d))。パターン51では、高抵抗N
型シリコン50aが露出しており、その他の領域は低抵
抗N型シリコン50bによって覆われている。なお、図
示しなかったが、必要に応じて図5または図6に得られ
る装置の表面に酸化膜等の保護膜を全面的または部分的
に形成してもよい。
【0029】図7は、図5および図6でそれぞれ得られ
た装置における表面電位を示している。固定化すべき生
体関連高分子が溶液中で負の解離状態にあるとき、高抵
抗のN型シリコン表面における表面電位は正であり、し
かも低抵抗シリコン表面の正の表面電位より高くなって
いる。そこで、二重鎖DNA分子のように溶液中で負に
帯電している分子は、図に示すような表面電位の高い2
つの領域に選択的に静電結合し、固定化することができ
る。
【0030】以上に示す装置では、固定化のための領域
を比較的狭い線状のパターンとしたが、たとえば図8に
示すように、基板上の広い領域に固定化のためのパター
ンを形成することもできる。図8に示す装置では、シリ
コン基板60上の円形の領域61全体を固定化のために
用いる。このような領域も、上述したプロセスと同様の
技術を用いて形成することができる。図9は、比較的広
い範囲に固定化のための領域が設けられた場合の表面電
位を示している。図に示すように、低抵抗N型シリコン
70bまたは70′bで覆われておらず、高抵抗N型シ
リコン70aまたは70′aが露出した領域71または
71′において表面電位が高くなっている。DNAのよ
うな溶液中負に帯電する分子は、この広い領域に固定化
することができる。
【0031】DNAおよびDNA類似体は溶液内におい
て二重らせん構造を取るため、分子鎖が一定の間隔で捩
じれて存在する方が明らかに安定であると考えられる。
このような構造において二重鎖内のリン酸基が負に解離
している分子を固定化する場合、分子鎖全体を静電的に
固定するよりも、固定化しない領域を所々に設けて、分
子鎖内での捩じれに伴うストレスを緩和した方が、より
安定な状態で分子を基板表面に固定できると考えられ
る。
【0032】以上のような見地から、図10に示すよう
な装置を提供することができる。図10に示す固定化装
置でも、基板表面には複数の円形のパターン81、8
2、83および84が形成される。しかしながら、各円
形のパターンは、不連続な点在する溝によって構成され
ている。図10(b)にその断面を示す。たとえば高抵
抗のN型シリコン(N- −Si)80a上に低抵抗のN
型シリコン(N+ −Si)の層80bが形成された基板
80上にパターン81に相当する溝81aが形成されて
いる。この装置でも、図3に示す装置と同様に二重溝を
採用している。しかしながら溝は円形に連続的に形成さ
れているのではなく、円形のパターンに沿って断続的に
形成されている。図10(a)に示す部分を拡大して図
10(c)に示す。パターン81および82にそれぞれ
相当する部分には、所定の長さの溝81a、81b、8
2a、82bが所定の間隔で形成されている。各溝は、
上から見ると矩形の形状をしているが、特にそのような
形状に限定されるものではない。DNA等の環状分子
は、多数の溝によって構成される所定のパターンに安定
して固定化することができる。また、サイズの異なる複
数の円形パターンを設けることにより、上述したように
サイズの異なる分子の安定化に対応することができる。
このように静電的に分子を吸着させる領域を点在させる
ことで、基板表面に固定化される分子の構造的歪みを緩
和することができる。
【0033】図10に示す装置も、図11および図12
に示すように製造することができる。図11に示すプロ
セスでは、高抵抗シリコンからなる基板90a上にP+
イオンを注入して(図11(a))、低抵抗シリコンの
層90bを形成する(図11(b))。次いで、CVD
等によりSiO2 膜92を形成した後(図11
(c))、その上にレジスト93を塗布する(図11
(d))。フォトリソグラフィー等を用いることによっ
てレジスト層93を所定のパターンとした後(図11
(e))、レジストで覆われていないSiO2 膜をエッ
チングする(図11(f))。次いで、SiO2 膜で覆
われていない領域について異方性エッチングを行ない、
各パターン91に相当する溝91aおよび91bを形成
し、固定化のための装置を得る(図11(g))。また
図12に示すプロセスでは、高抵抗シリコンからなる基
板100aを準備した後(図12(a))、その上にレ
ジスト層103を形成する(図12(b))。次いで、
レジスト層103について所定のパターンを形成した
後、P+ イオン等の注入を行なう(図12(c))。イ
オン注入された領域には低抵抗シリコンからなる層10
0bが形成され、イオン注入されなかった領域には高抵
抗シリコン100aがそのまま残っている。高抵抗シリ
コン100aが残った領域が固定化のためのパターン1
01となる(図12(d))。
【0034】図13は、図11および図12においてそ
れぞれ得られる装置において、表面電位の分布を示して
いる。パターン91または101に相当する高抵抗シリ
コン90aまたは100aの領域は、低抵抗シリコン9
0bまたは100bの領域よりも正の表面電位が高くな
っている。したがって、溶液中に負に解離する分子は、
高い表面電位を有する領域に選択的に吸着され、固定化
されることになる。
【0035】また、本発明の装置において、基板に電圧
を印加することにより、表面電位を制御することができ
る。図14は、基板の裏面にバイアス電圧を印加するた
めの電極を設けた構造を示している。たとえば、高抵抗
N型シリコン110a上に低抵抗N型シリコン110b
が形成された基板110において、表面にはたとえば溝
111aおよび111bを有する固定化のための領域1
11を設け、裏面にはバイアス電圧を印加するための電
極117を設けることができる。固定化のための領域1
11は、線状、円形状などの種々のパターンを有するこ
とができる。図では、2つの溝を有するパターンを示し
たが、これに限定されることなく、種々の形状を有する
領域を基板110の上に設けることができる。固定化の
ための領域が形成された表面は、SiO2 などの絶縁膜
116で覆われることがより好ましい。図に示す装置で
は、上述したメカニズムに従って、高抵抗シリコンの領
域にDNA分子等の負に帯電した分子が固定化される。
【0036】図14に示す装置は、たとえば図15およ
び図16にそれぞれ示すプロセスによって製造すること
ができる。図15に示すプロセスでは、高抵抗シリコン
基板120aにP+ イオンを注入し(図15(a))、
低抵抗シリコン層120bを形成する(図15
(b))。その上にCVD等によりSiO2 膜122を
形成した後(図15(c))、さらにレジスト層123
を形成する(図15(d))。露光および現像の後、レ
ジスト層123について所定のパターンを形成し(図1
5(e))、レジストで覆われない部分のSiO2 膜に
ついてエッチングを行なう(図15(f))。さらに異
方性エッチングを行なって所定のパターンで低抵抗シリ
コン層を除去し、高抵抗シリコン基板を露出させる(図
15(g))。次いで、基板の表面にSiO2 からなる
絶縁膜126を形成し、裏面に電極層127を形成する
(図15(h))。このようにして、必要な分子の固定
化のため所定のパターン121を有する装置が得られ
る。図16に示すプロセスでは、高抵抗シリコン基板1
30aを準備した後(図16(a))、その上にレジス
ト層133を形成する(図16(b))。レジスト層1
33について所定のパターンを形成した後、P+ イオン
注入を行なう(図16(c))。レジストを除去すれ
ば、所定の部分に低抵抗シリコン層130bが形成され
た基板が得られる(図16(d))。次いで、基板の表
面にSiO2 からなる絶縁膜136を形成し、裏面に電
極層137を設ける。
【0037】図17は、固定化装置に電極を介して電圧
を印加したときと印加しないときの表面電位をそれぞれ
示している。高抵抗シリコン120a上に低抵抗シリコ
ン120bが形成された基板120の裏面に電極127
を介して電圧を印加する場合を示している。なお基板1
20の表面は絶縁膜126で覆われている。このように
装置において、電圧を印加していないとき、低抵抗シリ
コンで覆われていない領域121aおよび121bには
高い正の表面電位がもたらされる。したがって、溶液中
で負に解離した分子は、高い正の表面電荷を有する領域
に選択的に静電引力によって吸着固定される。一方、基
板120の裏面側から電極127を介して負のバイアス
電圧を印加すると、シリコン内の伝導電子は基板表面の
絶縁膜界面に蓄積されるとともに、表面側に形成されて
いた正の空間電荷層が打消されることになる。結果とし
て、シリコンの表面電位は負に反転することになる。こ
れによって、固定化されていた分子は、静電的な反発力
によりシリコン表面から離脱する。このように表面電位
の制御によって、分子の吸着および離脱をより積極的に
制御することができる。
【0038】本発明に用いられるN型およびP型のシリ
コン結晶は、通常のLSIプロセスに用いられるシリコ
ンウェハと同等の特性を有するものでよい。シリコン結
晶表面の比抵抗は、0.0001〜1000Ωcm程度
の範囲内であることが望ましく、より望ましくは0.0
001〜100Ωcmであり、さらに望ましくは0.0
001〜10Ωcmである。N型およびP型に価電子制
御されたシリコンの調製方法として、種々のものが考え
られ、どのような方式のものでもよいが、最も簡便で不
純物濃度の制御が正確に行なえる方法として、イオン注
入法が挙げられる。この場合、P型およびN型の価電子
制御は、それぞれ周期律表第III族および第V族に属
する元素のイオンをシリコン中に注入、アニールするこ
とによって容易に行なうことができる。P型にするため
のIII族元素としてB、Al、Ga、In、Tl等を
挙げることができる。特にBが一般的である。N型にす
るための第V族元素としてN、P、As、Sb、Bi等
を挙げることができ、特にP、As、Sbが一般的であ
る。ドーピングに用いられる周期律表第III族および
第V族元素の濃度は、1012〜1021/cm3 の範囲が
望ましく、より望ましくは1013〜1021/cm3 であ
り、さらに望ましくは1014〜1021/cm 3 である。
また本発明においてシリコン表面にN型またはP型の不
純物層を形成する場合、その厚みは1〜200μmの範
囲が望ましく、より望ましくは3〜50μmの範囲であ
る。これ以外の範囲では作製が容易でなかったり、効果
がなくなるため望ましくない。なお、シリコン結晶の表
面は、ミラーポリッシュされたものが、余分な結晶核の
生成を抑制する上で好ましい。
【0039】本発明の装置において、固定化のための領
域は種々のサイズおよび形状とすることができる。たと
えば線状の連続した領域を基材上に設ける場合、その幅
を10Å〜0.1μmの範囲で設定することができる。
このような範囲は、核酸分子の解離したリン酸基を安定
して固定化するためより好ましい。また、核酸分子を固
定化するため、不連続な領域を設ける場合、幅が10Å
〜0.1μmで、長さが20Å〜1μmの範囲の溝を、
100Åから0.1μmの範囲の間隔で設けることがで
きる。しかしながら、固定化領域の幅、長さ、形状は、
固定化すべき分子のサイズ、分子量、とり得る形状等に
応じて適宜設定するのがより好ましい。また上述したよ
うに、異なる形状および異なるサイズのパターンを固定
化のため形成することがより好ましい。
【0040】シリコン基板の表面に絶縁性の膜を形成す
る場合、酸化物、窒化物等の無機絶縁材料、ポリイミド
等の有機絶縁材料等、種々の絶縁材料を用いることがで
きる。絶縁膜の厚みは、絶縁性を確保するため100Å
〜1μmの範囲であれば十分であるが、それ以上の厚み
であっても特に差支えはない。
【0041】本発明の装置に形成される裏面電極は、主
として金属によって形成することができる。電極のため
の下地金属として、Ti、Cr等の金属を100Å〜1
μmの範囲の厚みでまず堆積することが好ましい。そし
てさらにバリアメタルとして、Ni、W、Mo等の金属
を100Å〜1μmの範囲で堆積し、その上に上部電極
としてCu、Au等の金属を同じく100Å〜1μmの
範囲で堆積するのがよい。
【0042】以上、価電子制御が容易な半導体結晶であ
るシリコンを用いた例について説明してきたが、シリコ
ン以外にも、同様の機能を有する物質でかつ固定化すべ
き物質を含む溶液に対して安定な種々の材料を用いるこ
とができる。たとえば、固定化装置を構成するための基
材として、電荷分布の制御された無機化合物、有機化合
物、有機高分子等を候補として挙げることができる。さ
らに、半導体、金属、有機化合物、無機化合物等が組合
された複合化合物でも固定化のための基材を構成するこ
とができる。
【0043】上述したように、本発明の装置において、
DNA、RNA等の核酸分子を効果的に固定化すること
ができる。本発明が適用される生体高分子の具体例とし
て、DNA、RNAおよびそれらのポリメラーゼ複合
体、遺伝子組換えに用いられるDNA断片、水溶性蛋白
質、水溶性蛋白質とDNAとの複合体、主に細胞内に埋
込まれた疎水性の膜蛋白質およびその複合体、抗原抗体
反応に重要な受容体蛋白質およびそれに関連する酵素
類、膜を構成する疎水性蛋白質、細胞内にあって電子伝
達を行なう酵素類、繊維状蛋白質、糖類およびそれらの
集合体、神経伝達および神経情報を担う神経細胞中の神
経伝達物質および受容体蛋白質等の酵素類、ならびにウ
ィルス類等を挙げることができる。一方、本発明が適用
される生体組織は、生体中に存在する各種機関を構成す
る細胞、筋繊維等を指す。生体組織の具体例として、た
とえば神経細胞、肝細胞、血液を構成する細胞、筋肉繊
維細胞、その他生体組織を構成する細胞等を挙げること
ができる。
【0044】
【実施例】
例1 DNA分子を固定化するためのシリコン結晶として以下
に示すものを作製した。約100Ωcmの比抵抗の高抵
抗N型シリコンウェハの全面にイオン注入装置によって
リンイオンを約214/cm2 のドーズ量で注入した。得
られたシリコンウェハを、窒素中900℃で20分間ア
ニールした。以上のようにしてウェハ上に形成された低
抵抗N型シリコン層の比抵抗は約0.1Ωcmであり、
またその接合深さは約0.5μmであった。
【0045】得られたシリコンウェハを約10mm角の
サイズに切断し、表面に電子線用のレジストをコーティ
ングした後、電子ビーム露光装置によりシリコン表面に
円形の線状パターンを複数描画した。円形パターンのう
ち1つは、平均直径が1.5μmの二重溝となるようレ
ジストについて描画を行なった。描かれた二重の円の各
線幅は400Åであった。二重の円を形成する線の中心
と中心の間隔は800Åであり、したがって線間のスペ
ースは400Åであった。
【0046】また、別の円形パターンとして平均直径が
10μmの二重溝が形成できるよう描画を行なった。描
画された二重の円の線幅、線間のスペースは上記と同様
としとた。これらサイズの異なる2種類の円形パターン
は、同心円上となるよう描画された。
【0047】さらに別のパターンとして、同心円上に描
画された円形パターンから50μm離れた場所に、直径
が10μmの円内をすべて露光したパターンを描画し
た。
【0048】以上のようにして電子線の露光を行なった
レジストを現像液によって現像した後、レジストパター
ンを有するシリコンウェハをプラズマエッチング装置内
に載置し、シリコンのエッチングを行なった。エッチン
グに際しては、表面に形成されている低抵抗N型シリコ
ン層を完全に除去し、その下にある高抵抗のN型シリコ
ンが露出するよう、慎重にエッチングを行なった。エッ
チングが完了した後、表面のレジストを除去した。これ
により、2種類の二重溝および1つの円形の内部が高抵
抗シリコンよりなり、それ以外の表面部分が低抵抗シリ
コンで覆われるシリコンウェハを調製した。なお、エッ
チングの後、形成された二重溝の寸法を測定した結果、
溝の幅は約700Åであり、溝の間隔は約80Åであっ
た。
【0049】以上のようにして作製されたシリコン結晶
からなる固定化装置を、十分洗浄した後、DNA溶液と
ともに透析チューブ内に封入した。DNAとしては、天
然のプラスミドCol E1由来のプラスミドDNAで
あるpBR322を用いた。このプラスミドを50μg
/mlの濃度となるようにpH=7.0の緩衝溶液に溶
解した。DNA溶液とともに固定化装置を封入した透析
チューブを、ビーカーに収容したpH12.0の緩衝溶
液中に浸漬した。試料の入ったビーカーを10℃の冷暗
所に10時間保存した後、ビーカーを取出し、さらに透
析チューブ内からシリコンウェハのサンプルを注意深く
取出した。取出したシリコン片を純水中に3分間浸漬さ
せ、ゆっくり揺動させて溶液を除去した後、自然乾燥を
行なった。その後、シリコンの表面を電子顕微鏡によっ
て観察した。その結果、平均直径が1.5μmの二重溝
からなる円形パターン上では、それぞれの溝上に一重鎖
のプラスミドが固定化されていることが確認された。一
方、平均直径が10μmの二重溝からなる円形パターン
上では、それぞれの溝にはプラスミドが存在していなか
った。また、直径が10μmの円内を高抵抗のシリコン
としたパターンにおいては、円内において一重鎖のプラ
スミドがランダムに付着していることが確認された。よ
って、本発明の固定化装置が、鎖状の生体関連高分子、
特にDNAの固定化に有効であることが確認された。
【0050】例2 DNA分子を固定化するためのシリコン結晶として以下
に示すものを作製した。約100Ωcmの比抵抗の高抵
抗N型シリコンウェハの全面にイオン注入装置によって
リンイオンを約214/cm2 のドーズ量で注入した。得
られたシリコンウェハを窒素中900℃で2分間アニー
ルした。このようにして形成された低抵抗N型シリコン
層の比抵抗は約0.1Ωcmであり、またその接合深さ
は約0.5μmであった。
【0051】得られたシリコンウェハを約10mm角の
サイズに切断し、表面に電子線用のレジストをコーティ
ングした後、電子ビーム露光装置によりレジストについ
て描画を行なった。描画されたパターンのうち1つは、
直径が1.5μmの円であった。ただし、円は、図10
に示すように、不連続に多数形成された矩形パターンよ
り構成されている。各矩形パターンのサイズは、幅が3
00Å、長さが400Åであった。また矩形パターン
は、400Åの間隔で形成された。
【0052】また、別のパターンとして、50μm離れ
た場所に、直径が1.5μmの円内が全面的に露光され
たパターンを描画した。
【0053】レジストについて描画を行なったサンプル
を現像液によって現像した後、プラズマエッチング装置
内に装着し、シリコンについてエッチングを行なった。
エッチングに際しては、所定の部分の低抵抗N型シリコ
ン層を完全に除去し、下の高抵抗N型シリコン層が露出
するよう、エッチングを慎重に行なった。最後に表面の
レジストを除去することにより、DNA分子を固定化す
るためのシリコン結晶が得られた。得られたサンプル
は、高抵抗N型シリコンからなる矩形のパターンが円形
に配列された領域と、円形の内部が全面的に高抵抗N型
シリコンからなる領域とを有している。エッチングの
後、別途行なった測定から、矩形部分のパターンのサイ
ズは、幅が400Å、長さが500Åであった。また各
矩形パターンの間隔は500Åであった。
【0054】以上のようにして作製されたサンプルを十
分洗浄した後、DNA溶液とともに透析チューブ内に封
入した。DNAとして、天然のプラスミドCol E1
由来のプラスミドDNAであるpBR322を用いた。
このプラスミドを50μg/mlとなるようにpH7.
0の緩衝液に溶解し、DNA溶液を調製した。DNA溶
液およびシリコン結晶のサンプルを封入した透析チュー
ブは、ビーカーにおいてpH12.0の緩衝溶液に浸漬
した。
【0055】試料の入ったビーカーを10℃の冷暗所に
10時間保持した後、ビーカーを取出し、さらに透析チ
ューブ内からシリコンのサンプルを注意深く取出した。
取出したシリコン片を純水中に3分間浸漬させ、ゆっく
り揺動させて溶液を除去した後、自然乾燥を行なった。
その後、シリコン片の表面を電子顕微鏡によって観察し
た。観察の結果、直径が1.5μmの円形パターン上で
は、それぞれの矩形に一重鎖のプラスミドが固定化され
ていることが確認された。また、直径1.5μmの円内
が全面的に高抵抗シリコンで形成されている領域では、
円内部において、一重鎖のプラスミドがランダムに付着
していることが確認された。よって、本発明の固定化装
置が、鎖状の生体関連高分子、特にDNAの固定化に極
めて有効であることが確認された。
【0056】例3 DNA分子を固定化するためのシリコン結晶として以下
に示すものを作製した。約100Ωcmの比抵抗の高抵
抗N型シリコンウェハの全面にイオン注入装置によって
リンイオンを約214/cm2 のドーズ量で注入した。そ
の後、このサンプルを窒素中900℃で20分間アニー
ルした。以上のようにして作製された低抵抗N型シリコ
ン層の比抵抗は約0.1Ωcmであり、またその接合深
さは約0.5μmであった。
【0057】得られたシリコンウェハを切断して、約1
0mm角のサイズのサンプルを2個準備した。それぞれ
の表面に電子線用のレジストをコーティングした後、電
子ビーム露光装置により表面に円形のパターンを描画し
た。円形のパターンのうち1つは、例2と同様に矩形の
パターンから構成される直径1.5μmの円であった。
矩形パターンのサイズは、幅が300Å、長さが400
Åであった。また矩形パターンの間隔は400Åであっ
た。
【0058】もう1つのパターンは直径が1.5μmの
円内を全面的に露光したものであった。このパターン
は、矩形パターンから構成される円から50μm離れた
場所に描画した。
【0059】描画を行なったサンプルを現像液によって
現像した後、プラズマエッチング装置内に装着し、シリ
コンのエッチングを行なった。エッチングに際しては、
所定の部分の低抵抗N型シリコン層を完全に除去し、下
の高抵抗N型シリコン層が露出するよう、注意深くエッ
チングを行なった。最後に表面のレジストを除去した。
得られたシリコン結晶は、高抵抗N型シリコンからなる
矩形のパターンが円形に配列された領域と、円形の内部
が全面的に高抵抗シリコンからなる領域とを有する。エ
ッチングの後、別途測定を行なった結果、矩形パターン
のサイズは、幅が400Å、長さが500Åであった。
また、円形に配列された矩形パターンの間隔は500Å
であった。
【0060】次に、シリコン基板の裏面に以下に示す方
法によって電極を形成した。シリコン基板をスパッタリ
ング装置に載置し、その裏面に、厚み500ÅのTi
膜、厚み5000ÅのNi膜、厚み5000ÅのAu膜
をそれぞれ順に形成していった。電極膜を形成したサン
プルを窒素中、500℃で30分間アニール処理を行な
った。
【0061】以上のようにして作製されたサンプルを十
分洗浄した後、DNA溶液とともに透析チューブ内に封
入した。1つのシリコン片はそのまま透析チューブ内に
浸漬し、もう1つのシリコン片は裏面電極に電圧印加用
のリード線を接続して透析チューブ内に封入した。DN
Aとして、天然のプラスミドCol E1由来のプラス
ミドDNAであるpBR322を用いた。このプラスミ
ドを50μg/mlとなるようにpH7.0の緩衝溶液
に溶解してDNA溶液を調製した。シリコン片を封入し
た透析チューブは、ビーカーにおいてpH12.0の緩
衝溶液に浸漬した。
【0062】試料の入ったビーカーを10℃の冷暗所に
10時間保存した後、ビーカーを取出し、さらに透析チ
ューブ内からシリコンのサンプルを注意深く取出した。
その際、2つのシリコン片のうち1つはそのまま取出
し、シリコン片を純水中に3分間浸漬させ、ゆっくり揺
動させて溶液を除去した後、自然乾燥を行なった。もう
1つのシリコン片は、透析チューブ内にさらに保持し、
外部よりリード線を介して電源から−5Vの直流電圧を
3分間印加した。その後、チューブより取出し、同様の
方法によって溶液を除去し、乾燥を行なった。
【0063】それぞれのシリコン片について表面を電子
顕微鏡によって観察した。その結果、裏面電極に電圧を
印加しないシリコン片では、直径が1.5μmの円形パ
ターンにおいてそれぞれの矩形パターンに一重鎖のプラ
スミドが固定化されていることが確認された。また直径
1.5μmの円内を全面的に高抵抗シリコンで形成した
パターンでは、その中に一重鎖のプラスミドがランダム
に付着していることが確認された。一方、裏面電極に電
圧を印加したシリコン片では、どのパターンにもプラス
ミドが固定化されていなかった。したがって、本発明の
固定化装置は、鎖状の生体関連高分子、特にDNAの固
定化に有効であるのみならず、電圧の印加によりその離
脱を極めて有効に行なえるものであることが確認され
た。
【0064】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
所望の生体関連高分子、特に鎖状のDNA分子を固定化
および離脱させるための装置を、容易に入手できる材料
について単に不純物の添加および微細加工を施すだけで
容易に作製することができる。特に本発明によれば、シ
リコンを主たる半導体基板として用いるM&Nマシンに
おいて、生体関連高分子を固定化および離脱させるため
の装置を、ドーピングの技術および微細加工の技術を用
いることによって容易に作製することができる。本発明
の固定化装置は、固定化すべき分子の形状に応じた固定
化領域を容易に形成することができ、特定のサイズおよ
び形状を有する生体関連高分子を選択的かつ有効に固定
化することが可能である。また、サイズおよび/または
形状の異なる種々の固定化領域を形成することにより、
1つの装置においてあらゆる種類の生体関連高分子の固
定化を行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置において生体関連高分子が固定化
される様子を示す模式図である。
【図2】本発明の装置の一具体例を示す斜視図である。
【図3】本発明の装置のもう1つの具体例を示す図であ
る。
【図4】本発明の装置においてサイズの異なるDNA分
子がそれぞれ固定化される様子を示す斜視図である。
【図5】図3に示す装置の製造方法を説明するための概
略断面図である。
【図6】図3に示す装置のもう1つの製造方法を説明す
るための概略断面図である。
【図7】図5および図6で得られる装置における表面電
位を示す図である。
【図8】本発明の装置の他の具体例を示す斜視図であ
る。
【図9】図8に示す装置において表面電位の分布を示す
図である。
【図10】本発明の固定化装置のさらなる具体例を示す
図である。
【図11】図10に示す装置を製造するためのプロセス
を示す概略断面図である。
【図12】図10に示す装置を製造するためのもう1つ
のプロセスを示す概略断面図である。
【図13】図11および図12で得られる装置における
表面電位の分布を示す図である。
【図14】本発明の固定化装置のさらなる具体例を示す
概略断面図である。
【図15】図14に示す装置の製造方法を説明するため
の概略断面図である。
【図16】図14に示す装置のもう1つの製造方法を説
明するための概略断面図である。
【図17】本発明の固定化装置にバイアス電圧を印加し
た場合の表面電位の変化を示す図である。
【図18】従来のM&Nマシンセンサの例を示す斜視図
である。
【図19】従来のM&Nマシンアクチュエータの例を示
す図である。
【符号の説明】
1 基材 2 生体関連高分子 10 基材 11 固定化領域 21、22、23、24、25、26、81、82、8
3、84 円形パターン 40a、50a、70a、80a、90a、100a、
110a、120a、130a 高抵抗N型シリコン 40b、50b、70b、80b、90b、100b、
110b、120b、130b 低抵抗N型シリコン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B25J 7/00 B25J 15/06 C12M 1/00 C12N 15/00 G01N 13/10

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生体高分子および/または生体高分子が
    含有される生体組織を固定化する装置であって、 不純物が添加された特定の材料からなる基材を備え、 前記基材は、前記不純物の濃度および/または種類が異
    なる2以上の領域を有し、それにより、 前記2以上の領域の1つで、前記不純物の添加によって
    前記基材の表面にもたらされる静電特性により、前記生
    体高分子および/または前記生体組織を吸着固定するこ
    とができ、 前記2以上の領域の他の1つで、前記生体高分子および
    /または前記生体組織の吸着を抑制することができ、さ
    らに 前記2以上の領域の1つが、前記生体高分子および
    /または前記生体組織の取りやすい形状に応じた所定の
    パターンを有することを特徴とする、生体関連高分子の
    固定化装置。
  2. 【請求項2】 前記所定のパターンは、前記基材上にお
    いて連続的または断続的に形成されていることを特徴と
    する、請求項記載の装置。
  3. 【請求項3】 前記所定のパターンは、略円形であるこ
    とを特徴とする、請求項または記載の装置。
  4. 【請求項4】 前記所定のパターンは、大きさの異なる
    複数の略円形であることを特徴とする、請求項または
    記載の装置。
  5. 【請求項5】 前記基材に、前記静電特性を制御する電
    圧を印加するための電極が形成されていることを特徴と
    する、請求項1〜のいずれか1項記載の装置。
  6. 【請求項6】 前記基材は、不純物添加された半導体基
    板からなることを特徴とする、請求項1〜のいずれか
    1項記載の装置。
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