JP2000340881A - 半導体レーザ装置、半導体レーザ装置を用いた変調信号発生装置、および半導体レーザ装置を用いた測定装置 - Google Patents

半導体レーザ装置、半導体レーザ装置を用いた変調信号発生装置、および半導体レーザ装置を用いた測定装置

Info

Publication number
JP2000340881A
JP2000340881A JP11139877A JP13987799A JP2000340881A JP 2000340881 A JP2000340881 A JP 2000340881A JP 11139877 A JP11139877 A JP 11139877A JP 13987799 A JP13987799 A JP 13987799A JP 2000340881 A JP2000340881 A JP 2000340881A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
semiconductor laser
mode
laser device
gain region
light
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP11139877A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoshitoku Nomura
良徳 野村
Seiji Ochi
誠司 越智
Nobuyuki Tomita
信之 冨田
Toshiro Isu
俊郎 井須
Toru Takiguchi
透 瀧口
Hideyo Higuchi
英世 樋口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Electric Corp filed Critical Mitsubishi Electric Corp
Priority to JP11139877A priority Critical patent/JP2000340881A/ja
Publication of JP2000340881A publication Critical patent/JP2000340881A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Semiconductor Lasers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 モードロックされた光パルスを発生するには
過飽和吸収領域が必要であること。 【解決手段】 その内部に設けられた複数の量子井戸を
有する利得領域と、前記利得領域に電子及びホールを供
給するための電極と、前記利得領域で発生する光を反射
させる反射部を有し、複数の光学的発振モードを保持す
るように構成したファブリペロー型の半導体レーザ装置
において、モードロックされた光パルスを取り出すよう
に構成したものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体レーザ装置
およびこの半導体レーザ装置を用いた変調信号発生装
置、計測装置に関するものであり、具体的には繰り返し
周期が高速で一定の光パルスを発光できるモードロック
半導体レーザ装置、このモードロック半導体レーザ装置
を用いて構成した変調信号発生装置、計測装置に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来のモードロック半導体レーザ装置
は、共振器の中に利得領域ばかりでなく可飽和吸収領域
を設ける必要があった。モードロック半導体レーザ装置
は、例えばS. Arahira, Y. Matsui and Y. Ogawa, “Mo
de-Locking at Very High Repetition Rates More Than
Terahertz inPassively Mode-Locked Distributed-Bra
gg-Reflector Laser Diodes”, IEEE J. Quantum Elect
ron.,32,1211 (1996)等に記載されている。
【0003】図11は、従来のモードロック半導体レー
ザ装置の構成を説明するためのものである。図におい
て、n型のInP基板1000上に有機金属気相成長法によりI
nGaAs量子井戸層とInGaAsP障壁層とを交互に積層してな
る多重量子井戸構造の活性領域(多重量子井戸活性層)
31とInGaAsP光導波領域(光導波層)30とがレーザ共振
器方向に直列に並ぶように形成されている。双方の領域
上にはp型InPクラッド層600とp型InGaAsPコンタクト層7
00が積層され、 共振器端面側のInGaAsP光導波層30とp
型InPクラッド層600との界面には回折格子50が形成され
ている。また、
【0004】この半導体レーザ素子は、光導波領域30側
の端面から共振器方向に沿って光導波領域30とクラッド
層600との界面に回折格子50が形成されたDBR(分布
ブラッグ反射鏡)領域、回折格子が形成されない位相調
整領域、活性領域31を有する利得領域、吸収領域の4領
域に分けられる。利得領域と吸収領域は半導体層の積層
構造では大差ないものの、素子動作時の電圧印加方向が
異なる。
【0005】即ち、利得領域をはじめ、DBR領域や位
相調整領域ではp型コンタクト層700からn型InP基板100
0に至るp-i-n接合方向に対して夫々順バイアス電圧が印
加された状態で電流が注入されるのに対し、吸収領域で
は逆バイアス電圧が印加される。このような動作上の要
請から、n側電極800が各領域に共通に設けられるのに対
して、p側電極はDBR領域用91、位相調整領域用94、
利得領域用92、及び吸収領域用93に別れている。吸収領
域側の共振器端面には、高反射膜100が形成され、レー
ザ光はDBR領域側の共振器端面から発振される。
【0006】このモードロック半導体レーザ装置は、発
光現象を利得領域への利得電流注入により行い、複数の
縦モードのレーザ光のパルスを安定且つ連続的に発振さ
せるためにDBR領域並びに位相調整領域への注入電流
が調節される。また、吸収領域に印加される逆バイアス
電圧は、閾値電流の上昇と閾値電流注入時における出力
増大を促す。利得電流を閾値電流値付近に設定すると基
本モードでのレーザ発振が、閾値電流より更に大きくし
ていくと多重縦モードのレーザ発振が夫々生じ、多重縦
モードパルスの時間軸幅は基本モードに比べて狭まる
(時間軸方向に並ぶパルス列の間隔が短くなる)。
【0007】このレーザは基本的にはいくつかのモード
が同時に発振し得る多モードレーザである。利得領域に
は順方向に電流を流して利得を得る。可飽和吸収領域に
は逆方向に電圧を印加して光を吸収させる。可飽和吸収
領域では吸収する光の強度が強くなると吸収率が飽和し
一部光が透過するようになる。このためここから出力さ
れる光はこの領域で光の強度が強くなるように、いくつ
かのモードの位相が揃っている。つまりモードロックパ
ルスが得られる。
【0008】
【発明が解決しようとしている課題】従来のモードロッ
ク半導体レーザ装置はこのように基本的に共振器の内部
に複数の異なる機能を持つ領域を設けなければならない
ので、製作プロセスの工程が多く、かつ製作費用が高価
になる。更に、可飽和吸収領域があるために利得領域に
流す電流が高いものになり、レーザの寿命にとって好ま
しくないばかりでなく、レーザ光を得るために、二つの
電源を必要とする。
【0009】また、モードロックパルスの基本繰り返し
周期は,共振器長が長くなるにつれて長くなる。可飽和
吸収領域と利得領域が必要な従来のモードロックパルス
レーザでは共振器長を短くする上で限界があるので基本
モードでのモードロック動作時に高速繰り返しを得るこ
とが困難である。従来のモードロック半導体レーザは光
強度によって吸収飽和が生じる領域を含むので、光パル
スが共振器を周回伝搬している間に共振器のノーマルモ
ードが変化しそのために大きな位相雑音を生じやすい。
【0010】この発明は上記のような問題点を解決する
ためになされたもので、可飽和領域を必要とせずにモー
ドロックパルスレーザを発生するモードロック半導体レ
ーザを得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明に係る半導体レ
ーザ装置は、その内部に設けられた複数の量子井戸を有
する利得領域と、前記利得領域に電子及びホールを供給
するための電極と、前記利得領域で発生する光を反射さ
せる反射部を有し、複数の光学的発振モードを保持する
ように構成したファブリペロー型の半導体レーザ装置に
おいて、 |d/l|<1 l<0
【0012】
【数2】
【0013】但し、 l:モードロック係数 Em(m=1、2、3):複数の光学的発振モードのう
ち隣り合った三つのモードの振幅 νn(n=1、2、3):複数の光学的発振モードのう
ち隣り合った三つのモードの振動角周波数 ε0:真空の誘電率 k:自由キャリアの波数ベクトル ωk:波数ベクトルkにおける伝導帯と価電子帯準位間
のエネルギー差 ωck:伝導帯のエネルギー準位 ωvk:価電子帯のエネルギー準位 Nk:エネルギー準位ωckとエネルギー準位ωvkとの間
の反転分布の確率 dcvk:ωkに対応する双極子モーメント γ:位相緩和定数 γc:自由電子の非発光緩和定数 γv:自由ホールの非発光緩和定数 δ:クロネッカーのデルタ とし、モードロックされた光パルスを取り出すように構
成したことを特徴とするものである。
【0014】この発明に係る半導体レーザ装置は、その
内部に設けられた複数の量子井戸を有する利得領域と、
前記利得領域に電子及びホールを供給するための電極
と、前記利得領域で発生する光を反射させる反射部を有
し、複数の光学的発振モードを保持するように構成した
ファブリペロー型の半導体レーザ装置において、 Δ≒C/(2n*L)、 γ2/2>Δ2>2γγc 但し、Δ:モード間隔 C:光の速さ n*:利得領域の屈折率 L:前記利得領域の長さ γ:位相緩和定数 γc:自由電子の非発光緩和定数 とし、モードロックされた光パルスを取り出すように構
成したものである。
【0015】この発明に係る半導体レーザ装置は、利得
領域は、予め設定された所望の発振光強度において利得
飽和が生じるような量子井戸の数あるいは量子井戸の第
一準位と障壁高さとのエネルギー差を有するように構成
したものである。
【0016】この発明に係る半導体レーザ装置は、モー
ドロックされた光パルスのスペクトルが予め設定された
幅となるようにスペクトルバンドパスフィルタを設けた
ものである。
【0017】この発明に係る半導体レーザ装置は、出力
パルスの中心波長が予め定められた所望の波長となるよ
うに利得領域の量子井戸構造と材料を設定したものあ
る。
【0018】この発明に係る変調信号発生装置は、請求
項1から5のいずれかに記載の半導体レーザ装置と、前
記レーザ装置からの光パルスを変調する光変調器とを備
えたものである。
【0019】この発明に係る測定装置は、請求項1から
5のいずれかに記載の半導体レーザ装置と、前記半導体
レーザ装置の出力光を照射された被測定電流源からの反
射光より光の偏光方向を検出する検光子とを備えたもの
である。
【0020】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1は、本実施の
形態の半導体レーザ装置を説明するための図であり、具
体的には本実施の形態の半導体レーザ装置の鳥瞰断面図
を示す図である。この半導体レーザ装置は、一般にファ
ブリぺーロー型の半導体レーザ装置と呼ばれるものであ
る。図において、1は正電極、2はSiO2膜、3はp
型InP層、4は電流ブロック層である。Feをドープ
したInP層、5はn型InP層、6は負電極、7は利
得領域である活性層である。電流ブロック層5として、
例えばFeをドープしたInP層を用いればよい。p型
InP層3は活性層7にホール(または自由ホール)を
供給する層、n型InP層5は活性層7に電子(または
自由電子)を供給する層である。また、励起状態である
自由電子、自由ホールの非発光緩和定数をそれぞれ
γc、γvとする。
【0021】活性層7は量子井戸構造を有するものであ
り、例えば無歪みのInGaAsを有する量子井戸層を所定の
厚さを有する障壁層(InGaAsP等)で隔てたものであ
る。活性層7の紙面横方向の長さ(つまり利得領域の長
さ、または共振器長ともいう)をLとし、この半導体レ
ーザ装置により発生するレーザのモード間隔をΔ、光の
速さをcとし、利得領域である活性層7の屈折率をn*
すると、
【0022】 Δ≒C/(2n*L) (1a)
【0023】なる関係が成立するようにLの大きさを調
節している。また、位相緩和定数をγ、γcを自由電子
の非発光緩和定数とすると、
【0024】 γ2/2>Δ2>2γγc (1b)
【0025】となるようにモード間隔の値(またはΔの
値)を設定している。また、図に示した半導体レーザ装
置の劈開面は内部で発生するレーザ光を反射する反射部
を形成する。Δの値を上述の式を満足するように設定す
るとモードロックされた光パルスが半導体レーザ装置よ
り発生する。従って可飽和吸収領域を必要としないモー
ドロック半導体レーザ装置を得ることができる。上述の
条件により可飽和吸収領域を必要としない半導体レーザ
装置であってもモードロックされた光パルスが発生する
理論的な根拠を以下に示す。
【0026】まずこの現象が安定に発生し得る条件を示
す。そして後において、実験的にこの現象が実現するこ
とを示す。均一に分布する2準位原子をレーザ媒質とし
たときのモードロックの発生/安定条件についてはLamb
等によって明らかにされている(M. Sargent III, M. O.
Scully, W. E. Lamb, Jr., Laser Physics, US: Addis
on-Wesley Publishing Company.)。
【0027】本発明が対象にしている可飽和吸収領域を
有しない半導体レーザ装置は、互いに相互作用のない2
準位系のアンサンブルとみなすことができるのでこの点
での修正を行えば、Lamb等の議論を半導体レーザに適用
することができる。そこで、先ず半導体レーザの電子状
態と双極子モーメントの表式を以下に纏める。
【0028】(a) 活性層7の量子井戸構造における
双極子モーメント,dcvkの表式 図3は半導体レーザを互いに相互作用のない2準位原子
のアンサンブルと見たときの電子状態と発光エネルギの
関係を説明するための図である。ここではさらに量子井
戸を構成した場合を想定している。活性層7が量子井戸
構造を有するものだからである。バンド間エネルギーE
Gを隔てて伝導帯(c)と価電子帯(v)があり、それぞれに
量子準位
【0029】
【数3】
【0030】(またはEi cとも示す)と
【0031】
【数4】
【0032】(またはEj vと示す)が形成されている。
ここで、i、jは量子井戸構造によって伝導帯と価電子
帯に生じた準位をあらわしている。この系にキャリア
(自由電子、自由ホール)がp型InP層3、n型In
P層5、より注入されて反転分布が生じると、それぞれ
のバンドに擬フェルミ準位μ c、μvが定義できる。運動
量kを持つ自由電子(エネルギ準位はhωck/2π)と自
由ホール(hωvk/2π)の再結合によってエネルギーh
ωk/2πの光子が発生する。従って,これらの量は次
のような関係を持つ:
【0033】
【数5】
【0034】ここで、mcは自由電子の有効質量、mv
自由ホールの有効質量である。また、便宜上以下の式を
定義する。
【0035】
【数6】
【0036】(5)式の左辺はQij vとも示す。擬フェ
ルミエネルギは電子密度であるneあるいはホール密度で
あるnvと次のような関係を持つ:
【0037】
【数7】
【0038】ここに、Vは考えている系の体積であり,T
は系の温度,exp関数の括弧内のkはボルツマン定数
である。このように表される電子系において準位hωck
/2πとhωvk/2πとが関わる双極子モーメントは次
のように表される。
【0039】
【数8】
【0040】ここに、|< s | pz| z >|は上記遷移に関
わるマトリクス要素であり、スプリット-オフ-バンドΔ
s電子の静止質量m0ならびに有効質量mcを用いて次のよ
うに表される。
【0041】
【数9】
【0042】さらに式(8)において、
【0043】
【数10】
【0044】であり、Ψcivjは量子井戸のなかでの
電子とホールのWannier関数である。またAij vは,TE モ
ードについては、
【0045】
【数11】
【0046】であり、TM モードについては,
【0047】
【数12】
【0048】である。ここで、
【0049】
【数13】
【0050】である。
【0051】(b) 振幅と位相の運動方程式 次にファブリペロー半導体レーザ内部で上記の電子系と
自己無撞着に相互作用している電場のモードの振幅と位
相の運動方程式を示す。半導体レーザが発振していると
き共振器内の光の電場をファブリペロー共振器のノーマ
ルモードで展開することができる。モードロックが生
じ、さらに安定にその状態が継続する条件を見いだすた
めには最小限、隣接する3本のモードを考える必要があ
る。なぜなら、モードロックはモード間の位相関係が一
定または一定とみなせる状態になる現象だからである。
【0052】いま、この3本のモードに周波数が低い方
から順に番号を1,2,3とつける。そしてそれぞれのモー
ドの振幅をEn, ;(n=1,2または3),振動角周波数をνn,
;(n=1,2または3),位相をφn;(n=1,2または3)としたと
き,各モードの振幅と位相の時間変化を決定する方程式
は次のようになる。
【0053】
【数14】
【0054】式(13)から(15)において、
【0055】
【数15】
【0056】ここに、
【0057】
【数16】
【0058】である。そして、式(17)において、γは
位相緩和(後述する式(20)に対する表記注参照),Qn
は共振器のモードnに対するQ値、νはモード周波数で
あるがここではν≒ν2と見なすことができる。またε0
は真空の誘電率、
【0059】
【数17】
【0060】はプランク定数hを2πで割ったものであ
る。また式(13)から(15)において、
【0061】
【数18】
【0062】であり、ここに、
【0063】
【数19】
【0064】である。ここで、γc,γvは、それぞれ自
由電子と自由ホールの非発光緩和定数であり、γは位相
緩和定数γphと次のような関係にある。
【0065】
【数20】
【0066】これらはkに依存しないと仮定している。
また後に示すようにγph ≫γc、γvなので以降では、
γとγphは区別しない(等しいものとみなす)。さらに
δσρはクロネッカーのデルタである。
【0067】また、式(16)において
【0068】
【数21】
【0069】である。モードロックによる光パルス発現
の条件と安定化の条件をもとめる。モードロックによる
光パルスは、
【0070】
【数22】
【0071】となったときに出現する。即ち,Ψの定義
式である式(23)と式(31)より,
【0072】
【数23】
【0073】となり、位相φ1、φ2、φ3の間に一定の
関係が定まる。今,Enが時間に依存しないとすると式
(16)を式(13),(14),(15)とは独立に考えること
ができる。式(16)が定常解を持つためには,
【0074】
【数24】
【0075】が必要である。これがモードロック発現の
条件である。次に、Ψの一次微分が0となる状態の安定
性の条件を調べる。今、式(31)の解をΨ(s)とし,ε
を安定状態からのΨの微小な変動であると仮定する。
【0076】
【数25】
【0077】を式(16)に入れて,εの2次以上の高次
の項を無視すると
【0078】
【数26】
【0079】となる。これを積分して,
【0080】
【数27】
【0081】従って
【0082】
【数28】
【0083】ならば t → ∞のときε→0となることが
わかる。これがモードロック安定化の条件である。モー
ドロック発現の条件は後に述べるように、半導体レーザ
の場合も比較的容易に満たされる。そこで安定化の条件
(37)について詳細に調べる。まず安定化の条件(37)
を満たす状態は2種類ある。式(31)が成り立つとき,
式(16)は次のような解を持つ。
【0084】
【数29】
【0085】式(38)が成り立つとき、時間軸を
【0086】
【数30】
【0087】となるようにとり、Ψ0は十分小さいので
無視すると
【0088】
【数31】
【0089】となり、
【0090】
【数32】
【0091】即ち、
【0092】
【数33】
【0093】ならば、3本のモードの位相が同一になる
ので、重ね合わせによってすべてのモードが強めあうモ
ードロックが得られる。この場合、
【0094】
【数34】
【0095】なので、条件(37)は
【0096】
【数35】
【0097】である。また同じことだが、
【0098】
【数36】
【0099】である。他方、条件(39)が成り立つと
き、位相関係は
【0100】
【数37】
【0101】となる。この場合たとえ(42)式が成り立
っていても、モード1とモード2が強めあうのに対してモ
ード3がそれを打ち消す方向に重なるためモードロック
パルスの信号強度が小さくなる。この場合,cos(Ψ
(s)−Ψ(0)) < 0なので、条件(37)は
【0102】
【数38】
【0103】である。逆にls<0ならば、(41)式より
強め合うモードロックが生じ、ls>0ならば、(46)式
より弱め合うモードロックが生じる。そこで次に条件
(45)はどのような場合に満たされるかを調べる。
【0104】先ず半導体の場合lsに含まれる量の典型的
な数値を示す。発振ピークのエネルギーは後に示す実施
の形態1では,hν2=0.8025 eVとなるように材料と利得
領域の構造を設定している。位相緩和は通常キャリア-
キャリア散乱によって生じるので、hγ/2π=41.36 m
eVの程度であることが例えば文献(G. P. Agrawal and
N. K. Dutta, ”Long-Wavelength Semiconductor Laser
s”, New York: Van Nostrand Reinhold, 1986.:以後
文献1と称す)に示されている。モード間隔は共振器の
長さと屈折率できまる。本実施の形態では共振器長Lが
300(μm)の場合を示しており,hΔ/2π=0.571 (me
V)である。励起状態のダンピングについては,その値
はこのダンピングが生じる原因により異なる。実施の形
態1で示すような1.5μmあるいは1.3μmの波長で発光
する半導体レーザの場合はAuger過程による緩和が大き
いことが知られている。そしてその大きさはキャリア密
度の3乗に逆比例することが知られている(例えば文献1
など) 即ちhγc/2π∝ 1/ n3、キャリア密度が1018 cm-3
場合、hγc/2π=4.136(μeV)である。この場合
【0105】
【数39】
【0106】なる大小関係が成り立つ。しかし共振器の
長さが長くなったり、閾キャリア密度が大きくなるとΔ
とγcの値が近くなることは起こり得る。
【0107】この条件の下で安定化の条件(45)が成り
立つ条件を調べる。式(28)でE2の項は、
【0108】
【数40】
【0109】となる。但し、
【0110】 E1 ≒ E3 (50)
【0111】と仮定している。(今系が対称である場合
を考えているので、この仮定は自然な仮定である)。θ
1232とθ3212の具体的な表式を書くと、
【0112】
【数41】
【0113】ここで、式(32)を用いた。また、
【0114】
【数42】
【0115】
【数43】
【0116】とおいた。このQは、θn μρσの中の総和
をとるためのパラメータである。θn μρσの中の総和
については,量子井戸の中では
【0117】
【数44】
【0118】とかける。ここにLzは量子井戸の厚さであ
る。積分の範囲は,3本のモードを考えているので発光
の中心エネルギーhν2/2πの近傍、
【0119】 -hΔ/2π < Q < hΔ/2π (55)
【0120】の範囲と考えておけばよい。
【0121】このような状況の下では(49)は、Qに関
して偶関数とみなしてよく、最低限(55)を満足し、
かつ(49)が負であるためには,
【0122】
【数45】
【0123】であればよい。このことを示そう。-hΔ
/2π < Q < hΔ/2πの範囲では、Nkはほとんど一
定とみて積分の外に出してもよい。双極子モーメント
(8)の中の左辺の項であるAij vはQに関して偶関数であ
る。そして、同じ双極子モーメント(8)の中の(1/ωk)4
は,式(48)を考慮して
【0124】
【数46】
【0125】とかける。右辺括弧内の第二項は第一項に
比べて小さい。そこで、式(49)において式(57)の最
初の項だけを残して考えると次の関係が成り立つことが
分かる。
【0126】
【数47】
【0127】よって、式(49)はQに関する偶関数であ
る。従って、また式(57)の8Qπ/(hν2)の項はQ
に関する積分を実行すると消える。その結果、積分範囲
-hΔ/2π < Q < hΔ/2πで式(49)が負であるこ
とを要請すると、条件(56)が得られる。
【0128】ロッキング係数(28)の2E13について
同様の議論を行うと
【0129】
【数48】
【0130】が得られる。この条件は、条件(56)を含
んでいるので結局式(60)が、安定化条件(45)を保
証するものである。
【0131】モードロック発現の条件(33)について
は、式(24)の各項2σ2−σ1−σ3と2τ2m−τ1m
τ3mについて同様な解析を行うと、式(57)の一次を残
す近似ではそれぞれの項はQに関して奇関数である。従
って,これらの項はlsに比べて、Δ/ν2程度の大きであ
るので条件(33)は十分なパワーが得られた場合には成
り立つ。これについては、実施の形態6で再び考察す
る。
【0132】次にこれまで前提にした3本のモードが同
時に発振する条件について考える。利得のスペクトル分
布はほぼ対称になる。式(13)、(14)、(15)のうち
モード2に対する利得飽和の項
【0133】
【数49】
【0134】が他のモードに比べて大きいことは不等式
(48)の条件を使って容易に示すことができる。光強度
が十分強くなると3本のモードがほぼ同じ程度の強度で
発振する状況は自然に出現しうる。
【0135】しかし、次のような場合を考えておく必要
がある。光強度を強くすることはキャリア密度も高くし
なければならない場合があるのでAugerによる非発光緩
和が大きくなる可能性がある。その結果条件(60)が成
り立たない状態が生じ得る。その場合、閾キャリア密度
を低く保ちながら共振器内部の光強度を強くするために
はファブリペロー共振器のミラーの反射率を高くすれば
よい。
【0136】さらに低い電場強度で利得飽和を生じさせ
るためには、量子井戸の第一準位と量子井戸の障壁との
高さの差を小さくすることと量子井戸の数を多くするこ
とが効果がある。これは次のような理由による。例えば
本実施の形態で示すInGaAs/InPを用いた系の場合ヘテロ
接合界面における価電子帯のバンド不連続量が大きいた
めに、量子井戸の数が多いとホールがp-InPからn-InPに
最も近い量子井戸に輸送されるまでに無視できない時間
を要する。従って電場強度が強くなるにつれn-InPに近
い量子井戸の利得が飽和する傾向が生じる。他方、量子
井戸の深さ(第一量子準位と障壁の高さの差)が小さいと
一つの量子井戸当たり蓄積し得るキャリア密度が少なく
なるのでやはり利得が飽和する傾向が生じる。
【0137】以下に、実際に設計した半導体レーザ装置
に関する説明をする。以下のような設計を行い、図1に
示した半導体レーザ装置を得た。活性層7を成す量子井
戸構造は、厚さが6(nm)で無歪みのInGaAs量子井戸構
造を有する層をその厚さが10(nm)の障壁層(発光波長
が1.325 μmのInGaAsP層)で隔てたものとした。電流ブ
ロック層4として、Fe-ドープのInP層を用いた。さらに
本実施形態のモードロック半導体レーザは劈開面(コー
トはしていない)を共振器ミラーとするファブリペロー
共振器構造で共振器長(活性層の長さL)は300(μm)
ある。
【0138】上述のように設計した得た半導体レーザ装
置の基礎特性を以下に示す。上述の設計により得た半導
体レーザ装置の室温(25℃)での閾値電流は7.8 (mA)、
出力3 (mW)での注入電流は31(mA)である。
【0139】本実施の形態のモードロック半導体レーザ
装置の動作を示すために、図3に示す測定系(自己相関
測定系)を用いて出力光の自己相関波形を測定した。図
において、201は本実施の形態のモードロック半導体レ
ーザ装置、202はモードロック半導体レーザ装置201を駆
動するための半導体レーザ駆動装置、203はモードロッ
ク半導体レーザ装置201より発生する光パルスを増幅す
る光ファイバ増幅器、204は自己相関測定器である。ま
た、スペクトルアナライザを用いて同じ駆動条件でのス
ペクトルを測定した。
【0140】図3において被測定体であるモードロック
半導体レーザ装置201を 8 (ns)の幅、2 (μs)の繰
り返し周期の電流パルスで駆動する。出力光を光ファイ
バで受けて光ファイバ増幅器203に入力して増幅(15dB)
する。この出力をやはり光ファイバで自己相関測定器20
4に導く。
【0141】自己相関測定器204に入った光は二つの光
路に分けられる。一方の光路を辿る光は回転する平行ミ
ラーによって周期的に光路長変化を受けた後同じ光路を
戻ってくる。この光ともう一方の光路を辿った光は非線
形光学結晶上で重なり二倍高調波を発生する。これを光
電子増倍管で受光して平行ミラーの回転周期に同期した
オシロスコープで観測する。非線形光学結晶はLiIO3
ある。この測定系での時間分解能は0.1 (ps)の程度で
ある。時間軸は、コーナーミラの位置変化とパルス位置
の変化を比較することによって更正した。
【0142】図3に示す測定装置を用い本実施の形態の
半導体レーザ装置の特性を測定した測定結果を図4、図
5に示す。図4は半導体レーザからの発光の自己相関波
形を示す図である。図に示すように周期的なパルスが観
測されているのが理解できる。パルス間隔は、7.5 (p
s)、パルス幅は、0.6 (ps)である。駆動パルス条件
は駆動パルス周期が2(μs)、パルス幅が8(ns)、電
流が60(mA)である。図においてパルス間隔が左へ行く
に従ってわずかに広がっているように見えるのは自己相
関測定器の回転ミラーによる光路長の変化が時間軸上で
非線形であるためである。
【0143】図5には半導体レーザの発光スペクトルの
注入電流依存性を示す。注入電流は(a) 28 (mA)と(b)
60 (mA)である。いずれの場合もファブリペローモー
ドのピークが観測されている。モード間隔は,1.1 (n
m)であり、時間軸上で7.2(ps)に相当し、観測された
自己相関波形に見られるパルス間隔とほぼ一致するので
このパルスがモードロックに基づくものであることが分
かる。
【0144】注入電流が低い(a) では、特に強い強度の
モードが一つある。それに対し、注入電流が高い(b)の
場合、ピーク付近で3本のモードの強度がほぼ同じ程度
に強くなっている。(a) ではモード間のビートによるパ
ルスはほとんど見えない程度に小さいが、(b) では図5
のようにモードロックパルスが観測される。少なくとも
3本のモードピークが同程度の強度を持つことは、先に
しめしたようにモードロックが半導体レーザで観測され
るために必要な条件である。
【0145】本実施の形態では、共振器を構成するミラ
ーを劈開面としたが、反射率を変化させるために劈開面
に一層または多層の薄膜をコートしてもよい。
【0146】実施の形態2.実施の形態1では劈開面あ
るいはそれに多層膜コートした面を共振器ミラーとした
が本実施の形態では、すくなくとも一方のミラーを分布
帰還構造とすることによってスペクトルの広がりを制限
する。この様にすることによって光ファイバによって伝
送させるときに分散によるパルスの時間軸上での広がり
を最小に抑えることができる。あるいは、共振器を構成
するミラーは劈開面あるいはそれに多層膜コートした面
であるが共振器の内部にバンドパスフィルタを回折格子
によって構成してもよい。
【0147】実施の形態3.実施の形態1では、1.55
(μm)帯で発光する材料と量子井戸構造の場合につい
て述べたが、異なる発光波長1.3 (μm)帯あるいは他
の発光波長でも上に述べた条件を満たすように材料と量
子井戸構造を設定することによってモードロック半導体
レーザ装置を構成することができる。材料のバンド間エ
ネルギと量子井戸の厚さを適切に設定することによって
所望の発光波長を得る方法はよく知られているのでここ
では改めて説明を要しない。
【0148】実施の形態4.図6は本実施の形態のモー
ドロック半導体装置を用いた変調信号発生装置を示す図
である。図において、400は上述の実施の形態で説明し
たモードロック半導体装置、401は、繰り返し周期抽出
回路、402は光変調器、403は光増幅器、404は変調器駆
動回路である。
【0149】繰り返し周期抽出回路401は、モードロッ
ク半導体レーザ装置からの光パルスを光検出器(図示せ
ず)で受けてその繰返し周期を抽出する。これをクロッ
クとして、変調器駆動回路404を介して光変調器402を駆
動する。変調器駆動回路404にはこれとは別に電気信号
が入力する。従って光変調器402は、モードロック半導
体レーザ装置からの出力光を変調器駆動回路404に入力
される電気信号に従って変調することになる。光増幅器
403は、光変調器402の出力を増幅する。
【0150】このように構成することによりモードロッ
ク半導体装置により発生する光パルスを用いて変調され
た信号を発生する変調信号発生装置を得ることができ
る。また光増幅器403はモードロック半導体レーザ装置
からの出力を増幅し増幅した出力を光変調器403に入力
するように構成してもよい。
【0151】実施の形態5.図7は本実施の形態のモー
ドロック半導体レーザ装置を用いた検出装置の構成を説
明するための図である。図において500は上述の実施の
形態で説明したモードロック半導体レーザ装置、501は
複屈折結晶、502は被測定電流源、503はSi基板、504は
検出子、505は検出回路である。
【0152】図に示した検出装置では上記モードロック
半導体レーザの出力光を複屈折結晶501を通して被測定
電流源502に照射し、その反射光を光の偏光方向を検出
する検光子504を通した後検出することによってパルス
の繰り返し周期を時間分解能として電流の時間変化を検
出できる。
【0153】実施の形態6.図8は、実施の形態1にお
いて、モードパワー(mW)、モード間隔(ps-1)、
|d/l|の関係を示すグラフ図である。モードパワー
は、各モードの電場が半導体レーザ装置の内部で、共振
器の軸に垂直方向に1.3(μm)〜2.0(μm)の
範囲で均一に拡がっていると仮定してモード振幅から換
算して求めた。dは(24)式により、lは(27)式
〜(30)式を用いて表現される。ただし、(24)式
において2σ213の項は、モードの振幅Em(m=
1、2、3)を含まないのに対してlはモードの振幅を
含むので、半導体レーザへの注入電流が小さくモード振
幅が小さい間は、|d/l|<1が満たされない場合が
ある。
【0154】その点を調べるために,モード振幅をパワ
ーで表して,モード間隔のある範囲について|d/l|
<1が満たされる範囲を計算し,示したものが図8であ
る。この範囲の計算において、γ=62.8(ps-1
とγc=0をそれぞれ一定としている。また、モードパワ
ーは3つのモードで等しいと仮定した。図8からまず分
かることは、モード間隔が小さいほど低いモードパワー
でモードロックが発生するということである。これは、
モード間の相互の利得飽和がモード間隔が小さいほど生
じ易いことによるものである。
【0155】さらに図8から分かることは、モード間隔
の大小によらずモードのパワーを増加させることによっ
て|d|/|l|を減少させることができる。その結果三つの
モードの位相の不一致部分である、-sin-1(d/l)が減
少し、モードロックパルスの消光比を改善させることが
できる。以上は、理論的側面からの説明であるが、実験
的にも出力光の強度に依存して消光比が変化する事実が
確かめられている。
【0156】図9は、共振器長が300μm、400μm、60
0μmのレーザのモードロックパルスの自己相関波形か
ら消光比をもとめ、注入電流密度に対してプロットした
ものである。
【0157】図10は図9において示す(a)点におけ
る自己相関波形を実測し撮影した図(図10(a))、
(b)点における自己相関波形を実測し撮影した図であ
る。図10において共振器長は3000μmである。図1
0から共振器長に依らず電流密度の上昇につれて消光比
が増大していることがわかる。これは、図1でモード振
幅の増大につれてモード間の位相の不一致 -sin-1(d/
l)、が減少することと整合している。なおこの実験で
得られた最大の消光比は、300μmの共振器の場合に得
られ、その値は10以上である。
【0158】このように、|d/l|<1、l<0とな
るようにすれば、実施の形態1の半導体レーザ装置と同
様の効果を得ることができる。
【0159】
【発明の効果】この発明にかかる半導体レーザー装置に
よれば、その内部に設けられた複数の量子井戸を有する
利得領域と、前記利得領域に電子及びホールを供給する
ための電極と、前記利得領域で発生する光を反射させる
反射部を有し、複数の光学的発振モードを保持するよう
に構成したファブリペロー型の半導体レーザ装置におい
て、 |d/l|<1 l<0
【0160】
【数50】
【0161】但し、 l:モードロック係数 Em(m=1、2、3):複数の光学的発振モードのう
ち隣り合った三つのモードの振幅 νn(n=1、2、3):複数の光学的発振モードのう
ち隣り合った三つのモードの振動角周波数 ε0:真空の誘電率 k:自由キャリアの波数ベクトル ωk:波数ベクトルkにおける伝導帯と価電子帯準位間
のエネルギー差 ωck:伝導帯のエネルギー準位 ωvk:価電子帯のエネルギー準位 Nk:エネルギー準位ωckとエネルギー準位ωvkとの間
の反転分布の確率 dcvk:ωkに対応する双極子モーメント γ:位相緩和定数 γc:自由電子の非発光緩和定数 γv:自由ホールの非発光緩和定数 δ:クロネッカーのデルタ とし、モードロックされた光パルスを取り出すように構
成したので、可飽和吸収領域を必要とすることなくモー
ドロックされた光パルスを発生することができるため、
製作プロセスの工程が従来の装置に比べて少なく製作費
用が安価である。更に可飽和吸収領域を必要としないの
で、光パルスが装置内部を周回伝搬している間にノーマ
ルモードが変化せず、位相雑音を生じない。更に、動作
時には利得領域に電流を流せばよくこのための電流電源
があればよく、低電流動作が可能でレーザを長寿命で動
作させられる。更に可飽和吸収領域を必要としない分、
装置の長さを短くできるので基本モードでのモードロッ
ク動作時の高速繰り返しが得られる。
【0162】この発明に係る半導体レーザ装置によれ
ば、その内部に設けられた複数の量子井戸を有する利得
領域と、 前記利得領域に電子及びホールを供給するた
めの電極と、前記利得領域で発生する光を反射させる反
射部を有し、複数の光学的発振モードを保持するように
構成したファブリペロー型の半導体レーザ装置におい
て、 Δ≒C/(2n*L)、 γ2/2>Δ2>2γγc 但し、Δ:モード間隔 C:光の速さ n*:利得領域の屈折率 L:前記利得領域の長さ γ:位相緩和定数 γc:自由電子の非発光緩和定数 とし、モードロックされた光パルスを取り出すように構
成したので、可飽和吸収領域を必要とすることなくモー
ドロックされた光パルスを発生することができるため、
製作プロセスの工程が従来の装置に比べて少なく製作費
用が安価である。更に可飽和吸収領域を必要としないの
で、光パルスが装置内部を周回伝搬している間にノーマ
ルモードが変化せず、位相雑音を生じない。更に、動作
時には利得領域に電流を流せばよくこのための電流電源
があればよく、低電流動作が可能でレーザを長寿命で動
作させられる。更に可飽和吸収領域を必要としない分、
装置の長さを短くできるので基本モードでのモードロッ
ク動作時の高速繰り返しが得られる。
【0163】この発明に係る半導体レーザ装置によれ
ば、利得領域は、予め設定された所望の発振光強度にお
いて利得飽和が生じるような量子井戸の数あるいは量子
井戸の第一準位と障壁高さとのエネルギー差を有するよ
うに構成したもので、低電流動作でモードロックされた
光パルスを得ることができる。
【0164】この発明に係る半導体レーザ装置によれ
ば、モードロックされた光パルスのスペクトルが予め設
定された幅となるようにスペクトルバンドパスフィルタ
を設けたので、光ファイバによって伝送したときにパル
ス波形の劣化を最小にできる。
【0165】この発明に係る半導体レーザ装置によれ
ば、出力パルスの中心波長が予め定められた所望の波長
となるように利得領域の量子井戸構造と材料を設定した
ので、所望する発光波長を有する光パルスを得ることが
できる。
【0166】この発明に係る変調信号発生装置によれ
ば、請求項1から5のいずれかに記載の半導体レーザ装
置と、前記レーザ装置からの光パルスを変調する光変調
器とを備えたので、光通信用としてトランスフォームリ
ミットで高速の光信号パルスを発信する装置を提供でき
る。
【0167】この発明に係る測定装置は、請求項1から
5のいずれかに記載の半導体レーザ装置と、前記半導体
レーザ装置の出力光を照射された被測定電流源からの反
射光より光の偏光方向を検出する検光子とを備えたの
で、半導体レーザ装置により発生する光パルスの繰り返
し周期を時間分解能として電流の時間変化を検出するこ
とができるため、短い時間分解能で電気的現象を計測す
る測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態の半導体レーザ装置の構成を説
明するための図である。
【図2】 半導体レーザのバンドダイヤグラムとエネル
ギーの定義を説明するための図である。
【図3】 本実施の形態の半導体レーザ装置の特性を測
定する測定装置の構成を説明するための図である。
【図4】 本実施の形態の半導体レーザ装置の特性を示
す図である。
【図5】 本実施の形態の半導体レーザ装置の特性を示
す図である。
【図6】 本実施の形態の半導体レーザ装置を用いた装
置の構成を説明するための図である。
【図7】 本実施の形態の半導体レーザ装置を用いた装
置の構成を説明するための図である。
【図8】 本実施の半導体レーザ装置において、モード
間隔と、モードパワーと|d/l|との関係を示す図で
ある。
【図9】 本実施の半導体レーザ装置において、電流密
度と消光比との関係を示す図である。
【図10】 本実施の半導体レーザ装置において、自己
相関波形を実測し撮影した図である。
【図11】 従来のモードロック半導体レーザ装置の構
成を説明するための図である。
【符号の説明】
1:正電極 2:SiO2膜 3:P型InP層 4:電流ブロック層 5:n型InP層 6:負電極 7:利得領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 冨田 信之 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 井須 俊郎 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 瀧口 透 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 樋口 英世 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 Fターム(参考) 5F073 AA22 AA65 AA74 CA12 EA01 EA27 HA08

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 その内部に設けられた複数の量子井戸を
    有する利得領域と、 前記利得領域に電子及びホールを供給するための電極
    と、 前記利得領域で発生する光を反射させる反射部を有し、 複数の光学的発振モードを保持するように構成したファ
    ブリペロー型の半導体レーザ装置において、 |d/l|<1 l<0 【数1】 但し、 l:モードロック係数 Em(m=1、2、3):複数の光学的発振モードのう
    ち隣り合った三つのモードの振幅 νn(n=1、2、3):複数の光学的発振モードのう
    ち隣り合った三つのモードの振動角周波数 ε0:真空の誘電率 k:自由キャリアの波数ベクトル ωk:波数ベクトルkにおける伝導帯と価電子帯準位間
    のエネルギー差 ωck:伝導帯のエネルギー準位 ωvk:価電子帯のエネルギー準位 Nk:エネルギー準位ωckとエネルギー準位ωvkとの間
    の反転分布の確率 dcvk:ωkに対応する双極子モーメント γ:位相緩和定数 γc:自由電子の非発光緩和定数 γv:自由ホールの非発光緩和定数 δ:クロネッカーのデルタ とし、モードロックされた光パルスを取り出すように構
    成したことを特徴とする半導体レーザ装置。
  2. 【請求項2】 その内部に設けられた複数の量子井戸を
    有する利得領域と、 前記利得領域に電子及びホールを供給するための電極
    と、 前記利得領域で発生する光を反射させる反射部を有し、 複数の光学的発振モードを保持するように構成したファ
    ブリペロー型の半導体レーザ装置において、 Δ≒C/(2n*L)、 γ2/2>Δ2>2γγc 但し、Δ:モード間隔 C:光の速さ n*:利得領域の屈折率 L:前記利得領域の長さ γ:位相緩和定数 γc:自由電子の非発光緩和定数 とし、モードロックされた光パルスを取り出すように構
    成したことを特徴とする半導体レーザ装置。
  3. 【請求項3】 利得領域は、予め設定された所望の発振
    光強度において利得飽和が生じるような量子井戸の数あ
    るいは量子井戸の第一準位と障壁高さとのエネルギー差
    を有するように構成したことを特徴とする請求項1また
    は2のいずれかに記載の半導体レーザ装置。
  4. 【請求項4】 モードロックされた光パルスのスペクト
    ルが予め設定された幅となるようにスペクトルバンドパ
    スフィルタを設けたことを特徴とする請求項1から3の
    いずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
  5. 【請求項5】 出力パルスの中心波長が予め定められた
    所望の波長となるように利得領域の量子井戸構造と材料
    を設定したことを特徴とする請求項1から4のいずれか
    1項に記載の半導体レーザ装置。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれかに記載の半導
    体レーザ装置と、 前記レーザ装置からの光パルスを変調する光変調器とを
    備えた変調信号発生装置。
  7. 【請求項7】 請求項1から5のいずれかに記載の半
    導体レーザ装置と、 前記半導体レーザ装置の出力光を照射された被測定電流
    源からの反射光より光の偏光方向を検出する検光子とを
    備えたことを特徴とする測定装置。
JP11139877A 1999-03-25 1999-05-20 半導体レーザ装置、半導体レーザ装置を用いた変調信号発生装置、および半導体レーザ装置を用いた測定装置 Pending JP2000340881A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11139877A JP2000340881A (ja) 1999-03-25 1999-05-20 半導体レーザ装置、半導体レーザ装置を用いた変調信号発生装置、および半導体レーザ装置を用いた測定装置

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8150099 1999-03-25
JP11-81500 1999-03-25
JP11139877A JP2000340881A (ja) 1999-03-25 1999-05-20 半導体レーザ装置、半導体レーザ装置を用いた変調信号発生装置、および半導体レーザ装置を用いた測定装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000340881A true JP2000340881A (ja) 2000-12-08

Family

ID=26422523

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP11139877A Pending JP2000340881A (ja) 1999-03-25 1999-05-20 半導体レーザ装置、半導体レーザ装置を用いた変調信号発生装置、および半導体レーザ装置を用いた測定装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000340881A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020137422A1 (ja) * 2018-12-25 2020-07-02 三菱電機株式会社 光送信装置
CN115598723A (zh) * 2022-12-15 2023-01-13 宜科(天津)电子有限公司(Cn) 一种对射光电传感器的抗干扰方法、设备及介质

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020137422A1 (ja) * 2018-12-25 2020-07-02 三菱電機株式会社 光送信装置
JPWO2020137422A1 (ja) * 2018-12-25 2021-02-18 三菱電機株式会社 光送信装置
CN115598723A (zh) * 2022-12-15 2023-01-13 宜科(天津)电子有限公司(Cn) 一种对射光电传感器的抗干扰方法、设备及介质
CN115598723B (zh) * 2022-12-15 2023-03-10 宜科(天津)电子有限公司 一种对射光电传感器的抗干扰方法、设备及介质

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Simpson et al. Enhanced modulation bandwidth in injection-locked semiconductor lasers
Wu et al. High-repetition-rate optical pulse generation using a rational harmonic mode-locked fiber laser
Hui et al. Injection locking in distributed feedback semiconductor lasers
US6650673B2 (en) Generation of short optical pulses using strongly complex coupled DFB lasers
Heil et al. TE-TM dynamics in a semiconductor laser subject to polarization-rotated optical feedback
JP2001320136A (ja) 量子カスケードレーザー
US5007062A (en) Semiconductor laser source modulated at high frequency
Nagarajan et al. Resonantly enhanced semiconductor lasers for efficient transmission of millimeter wave modulated light
JP2822994B2 (ja) モード同期半導体レーザ
Kitching et al. Room temperature generation of amplitude squeezed light from a semiconductor laser with weak optical feedback
US8625191B2 (en) Wavelength-tunable light source apparatus
Dong et al. Dynamic and nonlinear properties of epitaxial quantum-dot lasers on silicon operating under long-and short-cavity feedback conditions for photonic integrated circuits
Sartorius et al. 12-64 GHz continuous frequency tuning in self-pulsating 1.55-/spl mu/m multiquantum-well DFB lasers
Feng et al. Passively mode-locked 2.7 and 3.2 μm gasb-based cascade diode lasers
WO1997039504A1 (en) Tunable gigahertz all-optical clock generator
Renaudier et al. Phase correlation between longitudinal modes in semiconductor self-pulsating DBR lasers
JP2002094176A (ja) レーザ装置
Hou et al. Photonic integrated circuits for terahertz source generation
JP2000340881A (ja) 半導体レーザ装置、半導体レーザ装置を用いた変調信号発生装置、および半導体レーザ装置を用いた測定装置
Kefelian et al. Locking and noise properties of multisection semiconductor lasers with optical injection. Application to Fabry–Pérot and DFB cavities
JPH0595152A (ja) 半導体短光パルス発生装置および短光パルスの発生方法
Manamanni et al. Frequency Stability Transfer in Passive Mode-Locked Quantum-Dash Laser Diode Using Optical Injection Locking
Mar et al. Mode-locked multisegment resonant-optical-waveguide diode laser arrays
JPH04247676A (ja) 面発光半導体モードロックレーザ
Yao et al. Coupled opto-electronic oscillators

Legal Events

Date Code Title Description
RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20040629