JP2000333674A - パラオキソナーゼに対するモノクローナル抗体及びこれを用いる動脈硬化の判定方法 - Google Patents

パラオキソナーゼに対するモノクローナル抗体及びこれを用いる動脈硬化の判定方法

Info

Publication number
JP2000333674A
JP2000333674A JP11143681A JP14368199A JP2000333674A JP 2000333674 A JP2000333674 A JP 2000333674A JP 11143681 A JP11143681 A JP 11143681A JP 14368199 A JP14368199 A JP 14368199A JP 2000333674 A JP2000333674 A JP 2000333674A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
paraoxonase
monoclonal antibody
present
activity
purified
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP11143681A
Other languages
English (en)
Inventor
Takeshi Kujiraoka
健 鯨岡
Hiroaki Hattori
浩明 服部
Tomoichiro Oka
智一郎 岡
Tadao Iwasaki
忠雄 岩崎
Mitsuaki Ishihara
光昭 石原
Toru Egashira
徹 江頭
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
BML Inc
Original Assignee
BML Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by BML Inc filed Critical BML Inc
Priority to JP11143681A priority Critical patent/JP2000333674A/ja
Publication of JP2000333674A publication Critical patent/JP2000333674A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】パラオキソナーゼに関連した、優れた動脈硬化
の判定手段を見出すこと。 【解決手段】パラオキソナーゼに対するモノクローナ
ル抗体、このパラオキソナーゼに対するモノクローナ
ル抗体を産生するハイブリドーマ、このパラオキソナ
ーゼに対するモノクローナル抗体と、検体中のパラオキ
ソナーゼとの間における抗原抗体反応を利用する、検体
中のパラオキソナーゼの検出方法及びこの検出方法に
より検出された検体中のパラオキソナーゼの異常によ
り、検体提供者の動脈硬化を判定する方法を提供するこ
とにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モノクローナル抗
体及びこれを用いた検体中の疾病に関する情報を検出す
る検出方法に関する技術分野の発明である。より具体的
には、本発明は、パラオキソナーゼについての、前記技
術分野の発明である。
【0002】
【従来の技術】低密度リポプロテイン(LDL)あるい
はその酸化修飾されたリポプロテインは動脈硬化症発症
の引き金となり、また動脈硬化症を促進することで冠動
脈疾患(CAD)へ進展させると考えられている。この
ような観点から、血中のLDLコレステロールの上昇
は、冠動脈疾患の進展に対する優れた指標であると考え
られ、数多くの食事指導、あるいは薬剤などによるLD
Lコレステロールを低下させる臨床冶験が試みられ、そ
の結果、LDLを低下させることが冠動脈疾患の低下に
つながるという多くの証拠が得られている。最近では、
4S(ScandinavianSimbastatin Survival Study )の
臨床治験においてCADを有する高コレステロール血症
者における30%のCAD発症の危険度をCADによる
死亡から42%減少させているという結果が得られてい
る。また、プラバスタチンを服用している高コレステロ
ール血症患者を対象としたWOSCOPS(West of Sc
otlandCoronary Prevention Study)、あるいはロバス
タチンを服用している境界領域の高コレステロール血症
者を対象としたAFCAPS/TexCAPS(the Ai
r Force/Texas Coronary Atherosclerosis Prevension
Study )においては、両治験とも、血中のLDLを減少
させる上記の薬剤が、冠動脈疾患の素因を減少させてい
ることが示されている。その他、多くのLDLを低下さ
せる薬剤の単独並びに併用による、冠動脈撮影による臨
床治験においては、冠動脈肥厚の変化はわずかであるに
もかかわらず、CAD発症の著明な改善が示されてい
る。
【0003】
【発明が解決すべき課題】上述したように、HMG−C
oA還元酵素阻害剤を代表とするスタチン系薬剤によ
り、CADの発症は約1/3に減少したことが示された
わけある。しかしながら、このことは逆に、残り約2/
3は薬剤を服用しているにもかかわらずCADの危険に
さらされていることになる。このことは、未知の、発見
されていない冠動脈疾患のリスクファクター、例えば、
高血圧症、喫煙、糖尿病、肥満、低HDLコレステロー
ル血症等に挙げられるその他のリスクファクターの、冠
動脈疾患の発症における関与がさらに浮き彫りにされた
ことになる。また、これら血中コレステロールを低下さ
せる薬剤は、肝臓あるいは末梢組織でのコレステロール
の取り込みを亢進させ、あるいは腸管からの胆汁の吸収
を抑制することにより、血中コレステロールを低下させ
る薬剤である。それゆえ、血中での余剰のコレステロー
ルを低下させて、生体内、ひいては血中でのLDLに対
する酸化ストレスによる影響を、上記の血中コレステロ
ールを低下させる薬剤の使用により緩和することは可能
ではあるが、これを完全に取り除いたわけではない。す
なわち、その血中濃度を低下させたといっても、血中に
循環しているLDLは、依然、酸化ストレスの標的であ
ることには変わりはない。
【0004】また、動脈硬化層のコレステロールの蓄積
は、末梢組織間において酸化修飾されたLDLである
「酸化LDL」が、マクロファージあるいは平滑筋中膜
の細胞にスカベンジャー受容体を介して取り込まれるこ
とによると考えられている。このような観点から、血中
における酸化LDLを測定することが、動脈硬化の発
症、および進展を知る上で重要と考えられる。しかしな
がら、かかる酸化LDLは末梢で酸化され、速やかにマ
クロファージに取り込まれることから、血中には、この
ような酸化LDLは存在しないか、あるいは極めて微量
で存在するに過ぎないと考えられる。
【0005】一方、高密度リポプロテイン(HDL)
は、肝以外の末梢組織よりフリーコレステロールを引き
抜き、引き抜いたコレステロールを、肝臓へ運ぶ役割を
していることが知られている。すなわち、HDLは、コ
レステロール逆転送系の主な役割を担っており、末梢組
織でのコレステロールの蓄積に拮抗的に働き、生体内で
は抗動脈硬化的に作用していることが知られている。し
かしながら、HDLの代謝については、明確には解明さ
れておらず、どのようにHDLが生体内で抗動脈硬化的
に作用しているのかは未だ明らかにされていない。
【0006】近年、HDLの抗酸化作用は、HDLを構
成している蛋白成分、例えば、アポプロテインAl、L
CAT、パラオキソナーゼ、PAF−AH、CETP、
PLTP、アポプロテインJ等に起因していることが提
唱されている。とりわけ、パラオクソン、有機リン、神
経ガスのサリンなどのaromatic carboxylic acidを加水
分解する血清酵素であるパラオキソナーゼについては、
近年抗動脈硬化作用が示されている(Mackness,et al.,
Curr Opin Lipidol,1996;7:69-76)。さらに、パラオキ
ソナーゼは抗酸化作用を有するHDL結合蛋白であり、
酸化修飾により、動脈硬化を促進する炎症性の分子を破
壊することにより、CADへのリスクを軽減していると
いう報告がある(Heinecke,et al.,Am J Hum Genet,199
8;62:20-24)。
【0007】また、ヒトのパラオキソナーゼの遺伝子
は、第7染色体の長腕q21−q22に局在し、血中の
パラオキソナーゼ活性は広範囲にわたることが示されて
おり、これはパラオキソナーゼの192番目にコードさ
れているアミノ酸の多型(Gln/Arg)によるもの
であることが知られている。前記の192番目のアミノ
酸がグルタミンであるAタイプは、パラオキソナーゼ活
性が低く、アルギニンであるBタイプは、同活性が約8
倍高い。
【0008】HDL結合パラオキソナーゼが、銅イオン
によるLDLの酸化を阻害すること(Mackness,et al.,
FEBS Lett,1991;286:152-154)、これはHDLがLDL
の酸化を阻害することにより動脈硬化へのリスクを軽減
しているという仮説を裏付ける事実である。また、パラ
オキソナーゼが酸化修飾されたLDLの酸化リン脂質を
取り除く作用を有するという報告もなされている(Wats
on,et al.,J Clin Invest,1995;96:2882-2891 )。Bタ
イプのパラオキソナーゼとCADの関連性について多く
の報告があるが、これは、パラオキソナーゼ活性の高い
Bタイプの頻度がAタイプの頻度と比較して、CHDに
おいて高いことと関連している。さらに、ジーンターゲ
ッティングにより作出したパラオキソナーゼ欠損マウス
は、細菌毒素に対して感受性であり、このマウスから分
離されたHDLはLDL酸化に対して抗酸化作用を示さ
ず、野生型マウスに比して動脈硬化を発症しやすいこと
が報告されている(Shih,et al.,Nature,1998;394:284-
287 )。
【0009】上述したごとく、パラオキソナーゼが、生
体内において抗酸化作用を発揮することが推測されてお
り、パラオキソナーゼが生体内で生じる酸化ストレスに
対し、予防的に働き消費されるのであれば、その活性と
蛋白量を測定すれば、生体内の酸化ストレス、さらには
動脈硬化のレベルを知ることが可能となる。
【0010】パラオキソナーゼの蛋白定量系について
は、Kawaiらのモノクローナル抗体を用いたELI
SA法による定量法が報告されている(Clin Chim Act
a,1991;202:219-226 )。しかしながら、彼らの用いた
モノクローナル抗体は、血漿より精製したアリルエステ
ラーゼ活性を有する蛋白に対するモノクローナル抗体で
あり、その蛋白の精製品における詳細な記載は認められ
ない。また、疾患との関連性も、肝硬変を患った患者群
と健常者との比較を示したのみであり、血清パラオキソ
ナーゼが、肝臓で合成されることを考えると、かかる臨
床検査は、動脈硬化症との関連性は極めて薄い。また、
最近、Blatter-Garin らのELISA法(Blatter-Gari
n,et al.,Biochem J,1994;304:549-554)は、パラオキ
ソナーゼに対する一種類のモノクローナル抗体を用いた
競合ELISA法による測定系であり、特異性、再現
性、感度の点で信頼性に乏しい面があることは否めな
い。
【0011】そこで、本発明において解決すべき課題
は、パラオキソナーゼに関連した、優れた動脈硬化の判
定手段を見出すことである。
【0012】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に、本発明者は、ヒト血漿に存在するパラオキソナーゼ
を単離・精製し、この精製パラオキソナーゼを免疫抗原
とするモノクローナル抗体を製造し、このモノクローナ
ル抗体に基づく抗原抗体反応を利用した、パラオキソナ
ーゼの検出方法を利用することにより、的確に被検者の
動脈硬化を判定することが可能であることを見出し、本
発明を完成した。
【0013】すなわち、本発明者は、パラオキソナー
ゼに対するモノクローナル抗体(以下、本発明モノクロ
ーナル抗体ともいう)、本発明モノクローナル抗体を
産生するハイブリドーマ(以下、本発明ハイブリドーマ
ともいう)、本発明モノクローナル抗体と、検体中の
パラオキソナーゼとの間における抗原抗体反応を利用す
る、検体中のパラオキソナーゼの検出方法(以下、本発
明検出方法ともいう)及び本発明検出方法により検出
された検体中のパラオキソナーゼの量的・質的な異常を
指標として、検体提供者の動脈硬化を判定する方法(以
下、本発明判定方法ともいう)を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。 A.本発明モノクローナル抗体ないし同ハイブリドー
マ:本発明モノクローナル抗体は、上述のように、パラ
オキソナーゼに対するモノクローナル抗体である。
【0015】このようなモノクローナル抗体を得るため
の前提条件として、適切な免疫抗原を選択して用いるこ
とが必要である。本発明においては、免疫抗原として、
ヒトに由来するパラオキソナーゼを用いることが好まし
い。具体的には、例えば、ヒトの血漿に由来するパラオ
キソナーゼを精製して用いることが、本発明検出方法に
おいては、血液検体を特に好適に用いる点及び単離・精
製操作が比較的簡便である等の点において好ましい。
【0016】血漿からのパラオキソナーゼの単離・精製
は、公知の方法、例えば、Ganらの方法(Gan,et a
l.,Drug Metabolism and Disposition,19:100-106,199
1: 具体的には、後述する)に従って行うことができ
る。
【0017】また、免疫抗原として、タンパク質工学的
な手法を用いて得られる、組換えパラオキソナーゼを、
本発明において用いることも可能である。かかる組換え
パラオキソナーゼは、既に知られているパラオキソナー
ゼ遺伝子の塩基配列(Hassett,et al.,Biochemistry,3
0,10141,1991)を基にして、常法、例えば、PCR法等
の遺伝子増幅法を、ヒトのゲノムDNAに直接施すこと
により、所望するパラオキソナーゼ遺伝子を入手するこ
とが可能である。
【0018】すなわち、ゲノムDNAを鋳型とし、パラ
オキソナーゼ遺伝子の5’末端側と3’末端側の配列を
含むDNA断片をプライマーとして、PCR法等の遺伝
子増幅法により、パラオキソナーゼ遺伝子を大量に増幅
して入手することもできる。
【0019】さらに、ホスファイト−トリエステル法(I
kehara,M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,5956
(1984)) 等の、通常公知の方法を用いて、パラオキソナ
ーゼ遺伝子を化学合成することも可能であり、このよう
な化学合成法を応用したDNAシンセサイザーを用い
て、パラオキソナーゼ遺伝子を合成することもできる。
【0020】上述のようにして入手され得るパラオキソ
ナーゼ遺伝子を用いて、本発明モノクローナル抗体とし
て用い得る、組換えパラオキソナーゼを、一般的な遺伝
子組換え技術に従って製造することができる。
【0021】より具体的には、パラオキソナーゼ遺伝子
が、発現可能な形態の遺伝子発現用ベクターに、パラオ
キソナーゼ遺伝子を組み込み、この遺伝子発現用ベクタ
ーの性質に対応する宿主に、この組換えベクターを導入
して形質転換し、この形質転換体を培養等することによ
り、所望するパラオキソナーゼを製造することができ
る。
【0022】本発明モノクローナル抗体の免疫抗原とし
ては、上述のようにして得られるパラオキソナーゼの全
部又は一部を用いることができる。また、例えば、パラ
オキソナーゼの一部を抗原決定基として用いる場合のよ
うに、用いるパラオキソナーゼが小分子量の場合には、
必要に応じてハプテンに結合したパラオキソナーゼを免
疫抗原とすることも可能である。
【0023】本発明モノクローナル抗体を製造するため
に、上述のようにして得られる免疫抗原で免疫される動
物も、特に限定されるものではなく、マウス、ラット等
を広く用いることが可能であり、細胞融合に用いる骨髄
腫細胞との適合性を考慮して選択することが望ましい。
【0024】免疫は一般的方法により、例えば上記免疫
抗原を免疫の対象とする動物に静脈内、皮内、皮下、腹
腔内等で投与することにより行うことができる。より、
具体的には、上記免疫抗原を所望により通常のアジュバ
ントと併用して、免疫の対象とする動物に、2週間程度
毎に、上記手法により数回投与し、本発明モノクローナ
ル抗体製造のための免疫細胞、例えば免疫後の脾臓細胞
を得ることができる。
【0025】モノクローナル抗体を製造する場合、この
免疫細胞と細胞融合する他方の親細胞としての骨髄腫細
胞としては、既に公知のもの、例えばSP2/0−Ag
14,P3−NS1−1−Ag4−1,MPC11−4
5,6.TG1.7(以上、マウス由来);210.R
CY.Ag1.2.3(ラット由来);SKO−00
7,GM15006TG−A12(以上、ヒト由来)等
を用いることができる。
【0026】上記免疫細胞とこの骨髄腫細胞との細胞融
合は、通常公知の方法、例えばケーラーとミルシュタイ
ンの方法(Kohler,G. and Milstein,C.,Nature,256,495
(1975))等に準じて行うことができる。
【0027】より具体的には、この細胞融合は、通常公
知の融合促進剤、例えばポリエチレングリコール(PE
G)又はセンダイウイルス(HVJ)等の存在下におい
て、融合効率を向上させるためにジメチルスルホキシド
等の補助剤を必要に応じて添加した通常の培養培地中で
行い、ハイブリドーマを調製する。
【0028】所望のハイブリドーマの分離は、通常の選
別用培地、例えばHAT(ヒポキサンチン,アミノプテ
リン及びチミジン)培地で培養することにより行うこと
ができる。すなわち、この選別用培地において目的とす
るハイブリドーマ以外の細胞が死滅するのに十分な時間
をかけて培養することによりハイブリドーマの分離を行
うことができる。このようにして得られるハイブリドー
マは、通常の限界希釈法により目的とするモノクローナ
ル抗体の検索及び単一クローン化に供することができ
る。
【0029】目的とするモノクローナル抗体産生株の検
索は、例えばELISA法,プラーク法,スポット法,
凝集反応法,オクタロニー法,RIA法等の一般的な検
索法に従い行うことができる。
【0030】このようにして得られるパラオキソナーゼ
を認識する本発明モノクローナル抗体を産生する本発明
ハイブリドーマは、通常の培地で継代培養することが可
能であり、さらに液体窒素中で長時間保存することもで
きる。
【0031】本発明ハイブリドーマからの本発明モノク
ローナル抗体の採取は、このハイブリドーマを常法に従
って培養して、その培養上清として得る方法や、ハイブ
リドーマをこのハイブリドーマに適合性が認められる動
物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法等を用
いることができる。
【0032】なお、インビトロで免疫細胞をパラオキソ
ナーゼ又はその一部の存在下で培養し、一定期間後に上
記細胞融合手段を用いて、この免疫細胞と骨髄腫細胞と
のハイブリドーマを調製し、抗体産生ハイブリドーマを
スクリーニングすることで本発明モノクローナル抗体を
得ることもできる(Reading,C.L.,J.Immunol.Meth.,53,
261(1982);Pardue,R.L.,et al.,J.Cell Biol.,96,114
9(1983))。
【0033】また、上記のようにして得られるモノクロ
ーナル抗体は、更に塩析,ゲル濾過法,アフィニティク
ロマトグラフィー等の通常の手段により精製することが
できる。
【0034】このようにして得られる本発明モノクロー
ナル抗体は、パラオキソナーゼに特異反応性を有する抗
体である。なお、この「パラオキソナーゼに特異反応性
を有する」とは、本発明モノクローナル抗体は、少なく
とも、ヒトのパラオキソナーゼに対しては交差反応性を
示すという意味である。
【0035】このような性質の本発明モノクローナル抗
体は、後述するように、臨床において用い得ることは勿
論のこと、パラオキソナーゼ自体の分離・精製のための
試薬としても極めて有用である。
【0036】本発明モノクローナル抗体についてのさら
に具体的な内容は、実施例において後述する。このよう
にして得られる本発明モノクローナル抗体を、必要に応
じて標識物質で標識して、後述する本発明に係わる測定
方法等において用いることができる。
【0037】かかる標識物質は、その標識物質単独で又
はその標識物質と他の物質とを反応させることにより、
検出可能なシグナルをもたらす標識物質であり、具体的
には、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ,アルカリホ
スファターゼ,β−D−ガラクトシダーゼ,グルコース
オキシダーゼ,グルコース−6−ホスフェートデヒドロ
ゲナーゼ,アルコール脱水素酵素,リンゴ酸脱水素酵
素,ペニシリナーゼ,カタラーゼ,アポグルコースオキ
シダーゼ,ウレアーゼ,ルシフェラーゼ若しくはアセチ
ルコリンエステラーゼ等の酵素、フルオレスセインイソ
チオシアネート,フィコビリタンパク,希土類金属キレ
ート,ダンシルクロライド若しくはテトラメチルローダ
ミンイソチオシアネート等の蛍光物質、125I,14C,3
H等の放射性同位体、ビオチン,アビジン若しくはジゴ
ケシゲニン等の化学物質、又は化学発光物質等を挙げる
ことができる。
【0038】これらの標識物質による、本発明モノクロ
ーナル抗体の標識方法は、選択すべき標識物質の種類に
応じて、既に公知となっている標識方法を適宜用いるこ
とができる。
【0039】また、本発明モノクローナル抗体(標識さ
れたものを含む)を、不溶性担体に固定化した、固定化
モノクローナル抗体として、後述する本発明に係わる測
定方法等に用いることもできる。
【0040】さらに、本発明モノクローナル抗体は、必
要に応じて、不溶性担体に固定化して用いることができ
る。かかる不溶性担体としては、抗体の不溶性担体とし
て既に用いられている各種の不溶性担体を用いることが
できる。具体的には、例えば、マイクロプレートに代表
されるプレート、試験管、チューブ、ビーズ、ボール、
フィルター、メンブレン、あるいはセルロース系担体、
アガロース系担体、ポリアクリルアミド系担体、デキス
トラン系担体、ポリスチレン系担体、ポリビニルアルコ
ール系担体、ポリアミノ酸系担体、あるいは多孔性シリ
カ系担体等のアフィニティークロマトグラフィーにおい
て用いられる不溶性担体等が挙げられる。
【0041】これらの不溶性担体における、本発明モノ
クローナル抗体の固定化方法は、各種の不溶性担体にお
いて既に確立している抗体の固定化方法を、選択すべき
不溶性担体の種類に応じて、適宜選択することができ
る。
【0042】B.本発明検出方法:本発明検出方法は、
上述したように、本発明モノクローナル抗体と、検体中
のパラオキソナーゼとの間における抗原抗体反応を利用
する、パラオキソナーゼの検出方法である。
【0043】このような本発明検出方法の様態として
は、例えばエンザイムイムノアッセイ法、ラジオイムノ
アッセイ法、フルオロメトリーによる解析、ウエスタン
ブロット法等を挙げることができるが、一般的には、エ
ンザイムイムノアッセイ法による解析による方法を選択
することが望ましい。 エンザイムイムノアッセイ法
は、酵素免疫定量法ともいい、標識イムノアッセイ法の
うち、酵素を標識物質として用いる検出方法である。エ
ンザイムイムノアッセイ法には、いわゆるB/F分離を
必要とする"heterogeneous enzyme immunoassay"と、こ
のB/F分離を必要としない"homogeneous enzyme immu
noassay"とに大別される。本発明検出方法においては、
これらのうち、一般的に測定感度が高いといわれる、前
者の"heterogeneous enzyme immunoassay"を選択するこ
とが好ましく、イムノソルベントを用いる、"enzyme-li
nked immunosorbent assay(ELISA)”を選択する
ことがさらに好ましい。
【0044】より具体的な検出態様として、いわゆるサ
ンドイッチ法によるエンザイムイムノアッセイ法(以
下、サンドイッチ法ともいう)を例示することができ
る。かかるサンドイッチ法は、特に、操作上の簡便性、
経済上の利便性、とりわけ臨床検査としての汎用性を考
慮すると、特に好ましい検出態様の一つである。
【0045】このサンドイッチ法を行うに際しては、本
発明モノクローナル抗体が、96穴マイクロプレートに
代表されるような、多数のウエルを有するマイクロプレ
ートに固定化された、固定化モノクローナル抗体と、西
洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素又はビオチンにより
標識された、本発明モノクローナル抗体を用いることが
好ましい。
【0046】サンドイッチ法は、少なくとも、下記(a)
及び(b) の工程を含む、エンザイムイムノアッセイ法で
ある。 (a) 不溶性担体に、本発明モノクローナル抗体を固定化
した、固定化モノクローナル抗体に、血液検体等の検体
を反応させる工程。
【0047】この工程(a) においては、通常は、反応
後、用いたマイクロプレートを洗浄し、未反応の検体
は、固定化モノクローナル抗体から除去される。 (b)固定化モノクローナル抗体と、試料中のパラオキソ
ナーゼとの結合により形成される、抗原抗体複合体に、
西洋ワサビペルオキシダーゼやビオチン等により標識さ
れた本発明モノクローナル抗体を反応させる工程。
【0048】この工程(b) においては、通常は、反応
後、用いたマイクロプレートを洗浄し、未反応の標識さ
れた本発明モノクローナル抗体は、固定化モノクローナ
ル抗体から除去される。
【0049】また、この工程(b) においては、反応させ
た第2抗体における標識物質の種類に応じた標識シグナ
ルの発現手段を用いて、標識シグナルを顕在化させるこ
とができる。例えば、標識物質としてビオチンを選択し
た場合には、アビジンやストレプトアビジンを用いて、
標識シグナルを顕在化させることができる。また、例え
ば、標識物質として、西洋ワサビペルオキシダーゼを選
択した場合には、その基質を必要に応じて発色物質と共
に添加して、標識シグナルを顕在化することができる。
【0050】このようにして、顕在化した発色シグナル
を、その発色シグナルの種類に応じた、シグナルの特定
手段を用いて検出することで、所望する検体中のパラオ
キソナーゼの検出を行うことができる。
【0051】なお、本発明検出方法において用いられる
検体は、本来、パラオキソナーゼが存在する検体であれ
ば特に限定されないが、後述する本発明判定方法が、動
脈硬化について判定する方法であることや、本発明の臨
床検査としての適応等を考慮すると、血漿等の血液検体
であることが好ましい。
【0052】本発明検出方法の検出対象である、検体中
のパラオキソナーゼ量は、被検者の動脈硬化の進展度合
いの有力な指標となる。すなわち、本発明検出方法によ
り検出された検体中のパラオキソナーゼの異常により、
検体提供者の動脈硬化を判定する、本発明判定方法が提
供される。
【0053】本発明判定方法においては、動脈硬化が進
展していなければ、検体中のパラオキソナーゼ量が正常
値(80±25μg /ml程度)であるが、動脈硬化が進
展している場合には、生体が動脈硬化に際しての過酷な
酸化ストレスに対抗するために、パラオキソナーゼが大
量に消費されてしまうことになり、量的に低値を示す
か、あるいは質的に異常を示すかによって、動脈硬化の
判定がなされる。
【0054】すなわち、本発明判定方法においては、本
発明検出方法を用いて、血液検体等の検体中のパラオキ
ソナーゼ量が、正常値よりも少ないか、又は質的に異な
れば、動脈硬化の進展が認められることを判定可能であ
り、本発明判定方法で、「動脈硬化陽性」と判定された
検体提供者に対して、具体的な症状、例えば、狭心症、
心筋梗塞、脳梗塞等が現れる前に、適切な処置を行うこ
とが可能であり、極めて、予防医学上、有用な方法であ
る。なお、本発明判定方法の有用性については、後述す
る実施例において、具体的に述べる。
【0055】本発明においては、本発明モノクローナル
抗体を、本発明判定方法(本発明検出方法を含む)にお
いて用いるための、本発明モノクローナル抗体を含む動
脈硬化判定用キットも提供される〔以下、本発明判定用
キット(本発明検出用キット)という〕。
【0056】本発明判定用キットにおいては、本発明モ
ノクローナル抗体を、検体中のパラオキソナーゼの異常
の検出のために供するための要素、例えば、前記の標識
された本発明モノクローナル抗体や固定化された本発明
モノクローナル抗体等が含まれ得る。
【0057】本発明判定用キットも、上述した本発明判
定方法(本発明検出方法)に対応して、サンドイッチ法
やフルオロメトリーによる判定や検出を容易に行い得る
構成のキットであることが好ましい。
【0058】
【実施例】以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明
するが、この実施例は、本発明の技術的範囲を限定解釈
するべきものではない。パラオキソナーゼ活性測定法 パラオキソナーゼ活性測定はEckersonらの方法
(Am J Hum Genet,35:214-227,1983)に準じて行った。
すなわち、1.0mM paraoxon(シグマ社製)
の基質を添加した1.0mM CaCl2 含有50mMグリ
シン緩衝液(pH 10.5)0.2mlの反応液に10
μl の予めPBSにて10倍に希釈した血清、あるいは
精製分画を加え、25℃の条件下で酵素の加水分解によ
り生じるp−ニトロフェノールの遊離を分光光度計にて
波長λ=412nmの吸光度の増加を経時的に測定した。
血清および検体のパラオキソナーゼ活性は試料中のパラ
オキソナーゼ活性からバックグランド(非酵素学的反応
により分解され遊離されるp−ニトロフェノール)を差
し引いた活性をパラオキソナーゼ活性とした。パラオキ
ソナーゼ活性1Uは1分間に1nmolのp−ニトロフェノ
ールを遊離する酵素活性と定義される。
【0059】アリルエステラーゼ活性測定法 アリルエステラーゼ活性測定は、Eckersonらの
方法(Am J Hum Genet,35:214-227,1983)に準じて行っ
た。すなわち、1mM phenylacetate(和光純薬社製)を
添加した1.0mM CaCl2 を含む20mM トリス緩
衝液(pH8.0)0.2mlの反応液に10μl の予め
PBSにて100倍に希釈した血清、あるいは精製分画
を加え、25℃の条件下で酵素の加水分解により生じる
フェノールの遊離を分光光度計にて、波長λ=270nm
の吸光度の増加を経時的に測定した。血清および検体の
アリルエステラーゼ活性は、試料中のアリルエステラー
ゼ活性からバックグランド(非酵素学的反応により分解
され遊離されるフェノール)を差し引いた活性をアリル
エステラーゼ活性とした。アリルエステラーゼ活性1U
は1分間に1μmol の phenylacetateを加水分解する酵
素活性と定義される。
【0060】パラオキソナーゼの精製 血漿からのパラオキソナーゼの精製はGanらの方法
(Drug Metabolism andDisposition,19:100-106,1991
)に準じて行った。すなわち、2種類の樹脂ブルーア
ガロースCibacron blue F3GA-agarose(シグマ社製)、
および陰イオン交換樹脂DEAEイオン交換樹脂(ファ
ルマシア社製)を用いた3ステップによる方法を用い
て、パラオキソナーゼの精製を行った。
【0061】ブルーアガロースクロマトグラフィー 400mlの血漿に、4mlの1.0M CaCl2 を加
え、終濃度10mMとした。室温にて2時間攪拌後、血漿
を、4℃、5000g、20分間遠心分離し、フィブリ
ン塊を取り除いた。次いで、400mlの血漿に対し予め
3M NaCl含有カラムバッファー(1.0mM Ca
Cl2 、および5μM EDTA含有50mMトリス緩衝
液、pH8.0)にて平衡化した400mlのブルーアガ
ロース(Cibacron blue F3GA-agarose)と室温にて混和
し、3M NaCl含有カラムバッファーを加え全量を
2Lとし、室温で混和した。次いで、ブルーアガロース
ゲルに結合したパラオキソナーゼを濾紙(No.3、ワ
ットマン社製)を装着したブチャーファネル(井内盛栄
堂社製)で、全量をろ過した。さらに、600mlの3M
NaCl含有カラムバッファーで5回洗浄した。洗浄
後、ブルーアガロースゲルを600mlのカラムバッファ
ーにて2回洗浄した。洗浄後、ブルーアガロースゲルの
スラリーをカラム(2.6×40cm、ファルマシア社
製)にカラムバッファーを用いて充填した。次いで、
0.1%デオキシコーレート含有カラムバッファーにて
パラオキソナーゼを溶出した。溶出ファラクションは各
々10mlずつチューブに分取した。分取した各フラクシ
ョンの蛋白濃度(280nmの吸光度)、およびパラオキ
ソナーゼ活性を上述のごとく測定した。その結果、フラ
クションNo.24〜No.30の画分に蛋白とパラオ
キソナーゼ活性が認められた(第1図)。このようにし
て得られたパラオキソナーゼ活性が認められる分画N
o.24〜No.30のフラクションをまとめてパラオ
キソナーゼのブルーアガロース分画とした。
【0062】イオン交換クロマトグラフィー 上述のごとく得られたブルーアガロース分画に同等量の
0.2%Nonidet P-40(ナカライテスク社製)含有トリ
スバッファー(1mM CaCl2 、40%グリセロー
ル、および5μM EDTA含有25mM Tris/H
Cl、pH8.0)を加え、混和した。さらに、予め
0.1%Nonidet P-40含有トリスバッファー(1mM C
aCl2 、20%グリセロール、および5μM EDT
A含有25mMTris/HCl、pH8.0)で平衡化
した陰イオン交換樹脂DEAEセファロース(ファルマ
シア社製)を等量加え、混和した。この懸濁液を、50
mlのファルコンチューブに移し、低速にて遠心分離し、
上清を捨てる。さらに、DEAEセファロースに0.1
%Nonidet P-40含有トリスバッファー(1mM CaCl
2 、20%グリセロール、および5μM EDTA含有
25mM Tris/HCl、pH8.0)に懸濁し、再
度遠心し、洗浄した。この洗浄操作を4回繰り返した
後、DEAEセファロースをカラム(1.6×40cm、
ファルマシア社製)に充填した。次いで、0.1%Noni
det P-40含有トリスバッファー(1mM CaCl2 、2
0%グリセロール、および5μM EDTA含有25mM
Tris/HCl、PH8.0)を用いて、塩濃度0
〜0.35M NaClのグラディエントでパラオキソ
ナーゼを溶出した。溶出ファラクションは、各々10ml
ずつチューブに分取した。分取した各フラクションの蛋
白濃度、およびパラオキソナーゼ活性を上述のごとく測
定した。その結果、フラクションNo.40〜No.5
0の画分にパラオキソナーゼ活性が認められた(第2
図)。このようにして得られたパラオキソナーゼ活性が
認められる分画No.40〜No.50のフラクション
をまとめてパラオキソナーゼのDEAE I 分画とし
た。
【0063】上述のごとく得られたDEAE分画に、同
等量の0.1%Nonidet P-40含有トリスバッファー(1
mM CaCl2 、20%グリセロール、および5μM
EDTA含有25mM Tris/HCl、pH8.0)
を加えて混和し、カラム(1.0×10cm、ファルマシ
ア社製)に充填した。次いで、0.1%Nonidet P-40含
有トリスバッファー(1mM CaCl2 、20%グリセ
ロール、および5μMEDTA含有25mM Tris/
HCl、pH8.0)を用いて塩濃度0〜0.35M
NaClのグラディエントでパラオキソナーゼを溶出し
た。各分画のパラオキソナーゼ活性を上述のごとく測定
し、活性画分をDEAE II分画(精製パラオキソナー
ゼ)とした(第3図)。
【0064】パラオキソナーゼの性状 上述のごとく得られた精製パラオキソナーゼ(DEAE
II分画)の蛋白濃度はBCA法(ピアース社製のキッ
トによる)を用いて求めたところ、0.5mg/mlであっ
た。さらに、精製パラオキソナーゼのパラオキソナーゼ
活性、およびアリルエステラーゼ活性を上述のごとく測
定し、パラオキソナーゼ活性の比活性を求めたところ、
4000nmol/min /mg、および1000μmol /min
/mgであった。また、精製パラオキソナーゼの精製度
は、10%ポリアクリルアミド電気泳動を行った後、ゲ
ルを銀染色(第一化学社製)にて確認した。その結果、
精製パラオキソナーゼは分子量約46kDaの単一蛋白
であることが認められ、Blatter−Garinら
(Biochem J.,1994,304:549-554)、あるいはGanらの
報告による分子量約45kDaとほぼ同ーの結果であっ
た(第4図)。
【0065】本発明ハイブリドーマの調製 上述の如く精製した精製パラオキソナーゼ(50μg /
ml)を、等量のフロイント完全アジュバントと混和し、
その0.4mlを7週齢のBalb/cマウス(雌、日本
SLC社)の腹腔に免疫した。2週間後、フロイント不
完全アジュバントを使用して同様に追加免疫を行い、そ
れ以降は2週間に1回、計4回免疫した。
【0066】最終免疫3日後のマウスの脾細胞4×10
8 個を、マウスミエローマ細胞(SP2/0−Ag14
(4×107 個))と混和し、50%ポリエチレングリ
コール(平均分子量1500、ベーリンガーマンハイム
社製)PBS溶液を用いて細胞融合を行った。
【0067】処理後の細胞を、RPMI1640培地
(ギブコ社製)中に、96ウエルプレートにウエル当た
り5×105 個の割合になるように播き、翌日からHA
T試薬(シグマ社製)を添加し、7日間選択培養を行っ
たところ、ほぼ全ウエルにハイブリドーマの増殖が認め
られた。
【0068】各ハイブリドーマの培養上清中のヒトパラ
オキソナーゼに対して特異的なモノクローナル抗体の有
無は、精製パラオキソナーゼを抗原としたELISA法
でスクリーニングした。すなわち、精製パラオキソナー
ゼをウエル当たり50ngずつ固相化した96ウエルマイ
クロプレート(固定化精製ヒトパラオキソナーゼプレー
ト)にハイブリドーマの培養上清を50μl 添加し、室
温下で2時間反応させた(一次反応)。次いで、プレー
トを0.1%Tween20を含むPBSで6回洗浄し
た後、同PBSで4000倍に希釈したパーオキシダー
ゼ標識ウサギ抗マウスlgG抗体(Zymed laboratories
社製)を50μl 加え、室温で1時間反応させた(二次
反応)。反応後、プレートを上記PBSにて6回洗浄
後、0.015%過酸化水素を含む0.25mg/mlOP
D溶液(シグマ社製)を各ウエルに100μl 加え、室
温で30分間反応させた(基質反応)。反応後、さらに
各ウエルに、2N硫酸を50μl 加えて反応を停止し
た。そして、波長492nmの吸光度をマイクロプレート
リーダー(ラボシステム社製)で測定した。この結果、
吸光度が1.0以上のハイブリドーマ培養上清を陽性と
した。上記のスクリーニング方法で陽性であったハイブ
リドーマ培養上清について、さらにウエスタンブロット
法でヒト血漿中のパラオキソナーゼとの反応性を確認
し、上記精製パラオキソナーゼを抗原としたELISA
法、およびヒト血漿のウエスタンブロット法にて特異性
が認められたクローンを選別した。
【0069】このように特異性が認められたハイブリド
ーマについて、HT試薬(シグマ社製)を添加したRP
MI1640培地において、96ウエルプレートに、ウ
エル当たり0.5個の細胞を播く操作を3回繰り返して
クローニングし、モノクローナル抗体産生ハイブリドー
マ(4C−1、5−10D)が得られた。なお、これら
のハイブリドーマは、mouse hybridoma PON 4C-1(受
託番号 FERM P−17385:以下、「4C−
1」とも記載する)及びmouse hybridoma PON5-10D
(受託番号 FERM P−17386:以下、「5−
10D」とも記載する)として、工業技術院生命工学工
業技術研究所に寄託されている。
【0070】本発明モノクローナル抗体の調製 モノクローナル抗体の大量精製 Balb/cマウス(雌、8週齢、10匹、日本SLC
社)に、上述のようにして得られたハイブリドーマ(4
C−1、5−10D、(各々106 から107個/0.
5ml/マウス))の各々を、腹腔内注射により導入し
た。導入10日後、マウスを麻酔下で開腹し、常法によ
り採取した腹水からモノクローナル抗体(4C−1、5
−10D)を大量に精製した。
【0071】アイソタイプの決定 マウスモノクローナル抗体アイソタイプ決定用キット
(サングスタットメディカル社製)を用い、このキット
に添付の実験操作プロトコールに従って操作を行い、モ
ノクローナル抗体(4C−1、5−10D)のアイソタ
イプを決定した。その結果、モノクローナル抗体4C−
1のアイソタイプはlgG2bで、同5−10Dはlg
G1であった。
【0072】モノクローナル抗体の精製 上述のモノクローナル抗体(4C−1、5−10D)を
含む腹水を各々遠心分離し、各々の上清(各5ml)に5
mlの飽和硫酸アンモニウム溶液を加えて混和し、2時間
氷冷にて放置した後、4℃、10000×gで10分間
遠心した。遠心後、沈殿物をバインディングバッファー
(3M塩化ナトリウム/1.5Mグリシン溶液、pH
8.9)に溶解し、プロテインAセファロース(ファル
マシア社製)1mlと混和し、4℃で一晩転倒混和した。
翌日、プロテインAセファロースをカラムに充填し、バ
インディングバッファー6mlで6回洗浄後、溶出バッフ
ァー(0.1Mクエン酸溶液、pH4.0)2mlずつで
溶出し、溶出回収した各々の溶液を、2Mトリス溶液
(pH10.0)0.2mlで中和した。各溶出フラクシ
ョンの吸光度(波長280nm)を測定し、モノクローナ
ル抗体の溶出画分を回収し、リン酸緩衝液(pH7.
4)にて透析(4℃、24時間)し、精製モノクローナ
ル抗体(4C−1、5−10D)を得た。
【0073】本発明モノクローナル抗体の性状解析 ヒト血漿に対する反応性 上述のようにして得られた精製モノクローナル抗体(4
C−1、5−10D)のヒト血漿に対する反応性は、ヒ
ト血漿を用いたウエスタンブロット法で確認した。ヒト
血漿試料は0.5μl /レーンの濃度で10%SDSポ
リアクリルアミドゲルを用いて、SDS−PAGE電気
泳動を行った。次いで、ゲルをPVDF膜(ミリポア社
製)に転写した。さらに、転写膜をブロッキング試薬
(5%スキムミルク含有PBS、pH7.4)中にて4
℃、一晩インキュベートした。次いで、転写膜を0.1
%Tween20含有PBS(pH7.4)で5回洗浄
後、上記の0.1%Tween20含有PBSで1μg
/mlの濃度に調製した各精製モノクローナル抗体(4C
−1、5−10D)を室温下で2時間反応させた。反応
後、膜を0.1%Tween20含有PBSで5回洗浄
し、同0.1%Tween20含有PBSで4000倍
に希釈した2次抗体(HRP標識マウスlgG抗体:Zy
med Laboratories社製)を室温で1時間反応させた。反
応後、膜を同0.1%Tween20含有PBSで5回
洗浄し、ケミルミ試薬(NENライフサイエンスプロダ
クト社製)を1分間反応させた。次いで、ケミルミ試薬
を取り除き、X線フィルムに感光後、フィルムを現像し
反応バンドを検出した。この結果、各精製モノクローナ
ル抗体(4C−1、5−10D)のヒト血漿に対する反
応性は、分子量約46kDa の蛋白と反応していることが
確認された(第5図)。この結果は、Ganらが報告し
ている血漿のパラオキソナーゼの分子量約45kDa とほ
ぼ同様の結果であり、各本発明精製モノクローナル抗体
(4C−1、5−10D)は、血漿中のパラオキソナー
ゼを特異的に結合する抗体であることが示された。
【0074】精製パラオキソナーゼに対する反応性 上述のようにして得られた精製モノクローナル抗体(4
C−1、5−10D)の精製パラオキソナーゼに対する
反応性は、ヒト血漿より精製した精製パラオキソナーゼ
を用いたELISAで確認した。
【0075】上述のようにして得られた精製パラオキソ
ナーゼ1μg /mlを50μl /ウエルで96ウエルマイ
クロプレートに固相化した(精製パラオキソナーゼ固相
化プレート)。次いで、各ウエルの未反応の抗体を捨
て、200μl の5%スキムミルク含有PBS(pH
7.4)を各ウエルに加えて室温で2時間反応させ、精
製パラオキソナーゼが固相されていない部分をブロック
した。反応後、各ウエルに予めPBS(pH7.4)に
て希釈した各精製モノクローナル抗体(4C−1、5−
10D)(0.001〜1.0μg /ml)を50μl 加
えて、室温で1時間反応させた。反応後、0.1%Tw
een20含有PBS(pH7.4)で精製パラオキソ
ナーゼ固相化プレートを5回洗浄後、各ウエルに0.1
%Tween20含有PBSで4000倍に希釈した2
次抗体(ビオチン標識標識マウスlgG抗体、ザイメッ
ド社製)を100μl ずつ加えて、室温で2時間反応さ
せた。反応後、0.1%Tween20含有PBS(p
H7.4)で精製パラオキソナーゼ固相化プレートを5
回洗浄後、各ウエルに、0.1%Tween20含有P
BSで2000倍に希釈したHRP標識ストレプトアビ
ジン(1mg/ml、Vector Laboratori
es社製)100μl 加え、室温下で30分間反応させ
た。反応後、精製パラオキソナーゼ固相化プレートを
0.1%Tween20含有PBS(pH7.4)で5
回洗浄後、各ウエルに0.015%過酸化水素を含む
0.25mg/mlOPD(シグマ社製)溶液を100μl
加え、室温で30分間反応させた。さらに、精製パラオ
キソナーゼ固相化プレートの各ウエルに2N硫酸50μ
l 加えて、反応を停止した。そして、波長492nmでの
吸光度をマイクロプレートリーダー(ラボシステム社
製)で測定した。
【0076】この結果、本発明精製モノクローナル抗体
4C−1、5−10Dは1.0μg/mlの精製パラオキ
ソナーゼに対して、それぞれ0.1μg /ml、0.3μ
g /mlの力価で反応することが示された(第6図)。
【0077】サンドイッチELISAによるヒトパラオ
キソナーゼの定量系の確立 固相化モノクローナル抗体の調製 上記の各精製モノクローナル抗体(4C−1、5−10
D)を、PBS溶液で希釈(10ng/ml〜1μg /ml)
し、これらの各々希釈モノクローナル抗体溶液100μ
l を96ウエルマイクロプレートの各ウエルに加え、4
℃で24時間インキュベートし、各々のモノクローナル
抗体をマイクロプレートに吸着させた。次いで、各ウエ
ルを200μl のPBSで4回洗浄した。この洗浄液を
捨て、各ウエルに200μl のブロッキング試薬(1%
ブロックエース粉末(大日本製薬社製)含有PBS、p
H7.4)を加え、室温で2時間インキュベートし、モ
ノクローナル抗体が結合していない部位をブロックし
た。次いで、各ウエルを200μl の0.1%Twee
n20含有PBSで4回洗浄した。このようにして所望
する固相化モノクローナル抗体プレートを作製した。
【0078】精製モノクローナル抗体の標識 上記の各精製モノクローナル抗体(4C−1、5−10
D、1mg/ml)を0.1MNaHCO3 (pH8.2〜
8.3)溶液で透析(4℃、24時間)した。次いで、
NHS−ビオチン(1mg/mlを60μl 、ピアース社
製)を加えて激しく攪拌した後、室温下で4時間インキ
ュベートした。次いで、PBS(pH7.4)で透析
(4℃、24時間)して、各々のモノクローナル抗体に
おいて、所望するビオチン標識モノクローナル抗体(以
下、標識モノクローナル抗体という)を調製した。この
ように調製した標識モノクローナル抗体の精製パラオキ
ソナーゼに対する反応性を、上述の固定化精製パラオキ
ソナーゼマイクロプレートで、同様に検討した。その結
果、各々の標識モノクローナル抗体4C−1、および5
−10Dは、0.01〜1.0μg /mlの濃度で、固定
化精製パラオキソナーゼ(100ng)に反応することが
示された(第7図)。
【0079】サンドイッチELISAによる定量法の確
上記の各固定化モノクローナル抗体(4C−1、5−1
0D、500ng/ウエル〜0.5μg /ウエルの濃度で
固定化した。以下、「固定化マイクロプレート」ともい
う。)の各々を0.1%Tween20含有PBSで5
回洗浄した。各々の固定化マイクロプレートの各ウエル
に、0.1%Tween20含有PBSで予め希釈した
測定試料(精製パラオキソナーゼ、および健常人血清)
を100μl 加え、室温で2時間インキュベートした。
インキュベート後、固定化マイクロプレートを0.1%
Tween20含有PBSで5回洗浄した後、各ウエル
に0.1%Tween20含有PBSで希釈した、上記
のビオチン標識モノクローナル抗体を加え(0.5μg
/mlを100μl )、室温下で2時間インキュベートし
た。次いで、固定化マイクロプレートを0.1%Twe
en20含有PBSで5回洗浄後、0.1%Tween
20含有PBS2000倍に希釈したHRP標識ストレ
プトアビジン(1mg/ml、Vector Laboratories 社製)
の100μlを各ウエルに加え、室温下で、30分間イ
ンキュベートした。インキュベート後、固定化マイクロ
プレートを0.1%Tween20含有PBSで5回洗
浄した後、固定化マイクロプレートの各ウエルに0.0
15%過酸化水素を含む0.25mg/mlOPD(シグマ
社製)溶液を100μl 加え、室温で30分間インキュ
ベートした。さらに、固定化マイクロプレートの各ウエ
ルに、50μl の2N硫酸を加えて、反応を停止した。
そして、波長492nmでの吸光度をマイクロプレートリ
ーダーで測定した。
【0080】このような、サンドイッチELISAによ
る測定試料中のパラオキソナーゼ測定では、実施例で示
したように、健常人の血清や精製パラオキソナーゼを濃
度依存的に測定がなされており、本発明のサンドイッチ
ELISAによる測定試料中のパラオキソナーゼ量を定
量することが十分に可能であることが示された(第8
図)。
【0081】この結果、標識モノクローナル抗体および
固定化モノクローナル抗体の組み合わせのうち、特に固
定化モノクローナル抗体は5−10Dと標識モノクロー
ナル抗体4C−1との組み合わせにより、測定試料中の
パラオキソナーゼ量を測定することが望ましい。
【0082】また、このような測定試料中のパラオキソ
ナーゼを測定するのに最適な固定化モノクローナル抗体
および標識モノクローナル抗体の濃度は、固定化モノク
ローナル抗体の濃度が250ng/ウエルであり、標識モ
ノクローナル抗体の濃度が150ng/ウエルであること
が上記の実施例より示された。
【0083】測定試料の希釈 上述のごとく確立された本発明モノクローナル抗体を用
いたサンドイッチELISAによる測定において、測定
試料を血清等のリポタンパクに結合したパラオキソナー
ゼを測定する場合、脂質という疎水性の性状を有するリ
ポタンパク質と結合しており、測定試料中のパラオキソ
ナーゼ量を正確に捉えることが不可能な場合が想定され
る。このような状況を鑑み、測定試料に血清を用いた際
の、試料希釈に用いる希釈液の組成について検討を加え
た。すなわち、上述のごとく確立されたサンドイッチE
LISAによるパラオキソナーゼの測定において、血清
試料を試料希釈液としてPBS、0.1%Tween2
0含有PBS、0.1%Triton含有PBS、0.
1%CHAPS含有PBSで、10倍から10000倍
に希釈した際の血清試料中のパラオキソナーゼ量を測定
した。その結果、どの希釈液においても精製パラオキソ
ナーゼと同様のカーブを示していた(第9図)。中で
も、0.1%CHAPS含有PBSを血清試料を用いる
場合に、吸光度が高く得られることより、以後の血清パ
ラオキソナーゼの蛋白定量は同希釈液を用いることし
た。
【0084】血清試料におけるパラオキソナーゼ量 健常人66名、および少なくともカルジオアンギオグラ
フィーで冠動脈の1枝以上に、軽度以上の狭窄が認めら
れた冠動脈疾患を患った患者(以下、CHDという)5
1名の血清を用いてパラオキソナーゼ活性、アリルエス
テラーゼ活性、パラオキソナーゼ蛋白量、および各個人
の192番目のアミノ酸における多型性について解析を
行った。パラオキソナーゼ多型性の解析は下記に示した
方法で行った。
【0085】パラオキソナーゼ多型性解析 ゲノムDNAは末梢血白血球からキアゲンブラッドキッ
ト(キアゲン社製)を用いて抽出した。パラオキソナー
ゼの192番目のアミノ酸の置換はHumbertらの
方法(Narure Genet,3:73-76,1993 )に準じてPCR−
RFLP法にて行った。すなわち、センスプライマー
(配列番号1:5' −tattgttgctgtggg
acctgag)、およびアンチセンスプライマー(配
列番号2:5' −cttgccatcgggtgaaa
tgttg)を用いて、0.5μgのゲノムDNAをP
CR増幅(denature: 94℃ 20秒、annealing:60
℃30秒、extention:72℃ 90秒、30サイクル)
し、193bpのPCR産物は3%アガロース電気泳動で
確認した。泳動後、PCR産物の確認はエチジウムブロ
マイド染色を行い同定した。さらに、このPCR産物2
0μl を1UのAlwl制限酵素にて消化し(37℃、
16時間)、消化後反応液を3%アガロースゲルにて電
気泳動し、泳動後、エチジウムブロマイド染色して、P
CR産物のAlwl制限酵素による消化パターンを判別
した。その結果を、第1表に示す。
【0086】
【表1】
【0087】第1表に示す通り、健常人66名における
各パラオキソナーゼ多型性のタイプ別のパラオキソナー
ゼ活性、アリルエステラーゼ活性、パラオキソナーゼ蛋
白量はそれぞれ、AAタイプ:n=8、パラオキソナー
ゼ活性184.2±29.5nmole /min /ml、アリル
エステラーゼ活性154.4±24.2μmol /min/m
l、パラオキソナーゼ蛋白量144.1±39.8μg
/ml、ABタイプ:n=25、パラオキソナーゼ活性5
53.5±88.9nmole /min /ml、アリルエステラ
ーゼ活性133.5±26.4μmol /min /ml、パラ
オキソナーゼ蛋白量128.4±36.6μg /ml、B
Bタイプ:n=33、パラオキソナーゼ活性958.9
±184.7nmole /min /ml、アリルエステラーゼ活
性113.1±19.6μmol /min /ml、パラオキソ
ナーゼ蛋白量112.1±29.9μg /mlであった。
【0088】CHD患者51名ではそれぞれ、AAタイ
プ:n=6、パラオキソナーゼ活性156.4±64.
9nmole /min /ml、アリルエステラーゼ活性131.
2±45.9μmol /min /ml、パラオキソナーゼ蛋白
量98.1±37.7μg /ml、ABタイプ:n=2
4、パラオキソナーゼ活性536.3±177.9nmol
e /min /ml、アリルエステラーゼ活性134.9±4
2.5μmol /min /ml、パラオキソナーゼ蛋白量11
2.7±38.8μg /ml、BBタイプ:n=21、パ
ラオキソナーゼ活性762.9±196.5nmole /mi
n /ml、アリルエステラーゼ活性93.1±24.6μ
mol /min /ml、パラオキソナーゼ蛋白量82.5±2
6.9μg /mlであった。
【0089】また、健常者をコントロールとした場合の
CHD患者での各々の測定結果について不等分散による
t検定を実施し有意差を検討したところ、パラオキソナ
ーゼ活性はBBタイプにおいてp<0.01、アリルエ
ステラーゼ活性は同じくBBタイプにおいてp<0.0
1、パラオキソナーゼ蛋白量はAAタイプがp<0.0
5、BBタイプがp<0.01と有意に低下しているこ
とが認められた。すなわち、健常人よりCHD患者にお
いてパラオキソナーゼ活性、アリルエステラーゼ活性、
パラオキソナーゼ蛋白量のいずれもが低値であり、とり
わけパラオキソナーゼ蛋白量は低値であることが示され
た。
【0090】過酷な酸化ストレスの結果生じたと考えら
れるCHD患者において、抗酸化的に作用するパラオキ
ソナーゼが消費され、その結果パラオキソナーゼ活性を
はじめ、アリルエステラーゼ活性、パラオキソナーゼ蛋
白量のいずれもが低値を示したと考えられる。
【0091】このように、パラオキソナーゼの活性ない
し蛋白量が、CHDないし動脈硬化症のマーカーとなり
得ることが示された。以上のように、CHD患者におい
ては、パラオキソナーゼが量的に減少する傾向が強いこ
とが明らかになった。よって、検体におけるパラオキソ
ナーゼの活性を、全体量として把握することで、これを
動脈硬化の一次的な指標にすることが可能である。
【0092】さらに、本試験では、驚くべきことに、パ
ラオキソナーゼの質的な変化にも着目することにより、
より詳細な動脈硬化の判定をすることが可能であること
が明らかになった。
【0093】CHD患者群においては、低HDLコレス
テロール血症を呈する例が、かなりの頻度で観察され、
この低HDLコレステロール血症であるということも、
動脈硬化のリスクファクターの一つとして知られてい
る。しかしながら、低HDLコレステロール血症である
ということが、必ずしも確度の高い動脈硬化の指標であ
るとはいいがたい面もあることも、また事実である。低
HDLコレステロール血症であるということは、少なく
とも動脈硬化を惹き起こす素因が存在することを示して
いるが、現に、動脈硬化が進展していることを、直接的
に反映していないことも想定される。
【0094】低HDLコレステロール血症である場合
に、HDL結合性蛋白質であるパラオキソナーゼの量
は、HDL量が低下するのと相関して、低値を示す。こ
の時点で、ある程度の動脈硬化のリスクについての知見
を得ることができるが、さらに、パラオキソナーゼの質
的な変化を検出することにより、より突っ込んだ動脈硬
化についての知見を得ることができるはずである。
【0095】パラオキソナーゼの質的な変化は、パラオ
キソナーゼの単位当りの酵素活性の変化を検出すること
により特定され得る。つまり、パラオキソナーゼの質的
な変化は、パラオキソナーゼ活性を蛋白量当りに換算し
た「特異活性」を求めることにより評価することが可能
である。
【0096】低HDLコレステロール血症であるもの
の、動脈硬化が現にそれほど亢進していない場合、パラ
オキソナーゼの特異活性は、健常人の同特異活性とは差
異が認められないが、動脈硬化が現に亢進している場合
には、パラオキソナーゼにおいて質的な変化が認められ
ることが考えられる。
【0097】上述のパラオキソナーゼの質的な変化につ
いて検討した本試験の結果を、ここに示す。第1表に示
したごとく、パラオキソナーゼ特異活性及びアリルエス
テラーゼ特異活性は、健常人コントロールと比較する
と、CHD患者群のパラオキソナーゼ特異活性が、AA
タイプがp<0.01、BBタイプがp<0.05、同
アリルエステラーゼ特異活性が、AAタイプがp<0.
005、ABタイプ及びBBタイプがp<0.01と、
有意差をもって高値であることが示された。このことか
ら、CHD患者群においては、パラオキソナーゼの量的
な異常ばかりではなく、質的な異常が認められることが
明らかとなった。
【0098】よって、パラオキソナーゼ特異活性及びア
リルエステラーゼ特異活性について検討して、パラオキ
ソナーゼの質的な異常を検出することにより、より詳細
な動脈硬化ないしCHDについての指標を得ることが可
能であることが裏付けられた。
【0099】上述のように、動脈硬化ないしCHDにお
いて、パラオキソナーゼ特異活性が向上することは、こ
れらの疾患に際しての生体内における酸化反応の亢進に
より、パラオキソナーゼが防御的に働いて消費され、生
体内でのパラオキソナーゼの分解及び産生の代謝が亢進
していることによるものと考えられる。
【0100】以上、本発明検出方法により検出された検
体中のパラオキソナーゼの量的・質的な異常により、検
体提供者の動脈硬化を判定することが可能であることが
明らかになった。
【0101】
【発明の効果】本発明により、パラオキソナーゼに対す
るモノクローナル抗体及びこれを用いた動脈硬化の判定
方法が提供される。
【0102】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> BML,INC. <120> Monoclonal antibody against paraoxonase <130> PBM36 <140> <141> <160> 2 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:pcr primer <400> 1 tattgttgct gtgggacctg ag 22 <210> 2 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:pcr primer <400> 2 cttgccatcg ggtgaaatgt tg 22
【図面の簡単な説明】
【図1】ブルーアガロースクロマトグラフィーによるパ
ラオキソナーゼの精製について示した図面である。
【図2】陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE
I)によるパラオキソナーゼの精製について示した図面
である。
【図3】陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE I
I)によるパラオキソナーゼの精製について示した図面
である。
【図4】精製パラオキソナーゼの銀染色像を示した図面
である。
【図5】精製モノクローナル抗体の血漿に対する反応性
を示した図面である。
【図6】精製モノクローナル抗体の精製パラオキソナー
ゼに対する反応性を、ELISA法で検討した結果を示
した図面である。
【図7】標識精製モノクローナル抗体の精製パラオキソ
ナーゼに対する反応性を、ELISA法で検討した結果
を示した図面である。
【図8】本発明検出法における検量線の直線性を、精製
パラオキソナーゼを用いて検討した結果を示した図面で
ある。
【図9】本発明検出法を用いて、検体希釈液のパラオキ
ソナーゼを検出した結果を示した図面である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡 智一郎 埼玉県川越市的場1361番地1 株式会社ビ ー・エム・エル総合研究所内 (72)発明者 岩崎 忠雄 埼玉県川越市的場1361番地1 株式会社ビ ー・エム・エル総合研究所内 (72)発明者 石原 光昭 埼玉県川越市的場1361番地1 株式会社ビ ー・エム・エル総合研究所内 (72)発明者 江頭 徹 埼玉県川越市的場1361番地1 株式会社ビ ー・エム・エル総合研究所内 Fターム(参考) 4B024 BA44 DA02 GA03 HA15 4B065 AA92X AB05 AC14 BA08 CA25 CA46 4H045 AA11 AA30 BA10 CA42 DA76 DA86 EA55

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】パラオキソナーゼに対するモノクローナル
    抗体。
  2. 【請求項2】パラオキソナーゼが、ヒトの血漿に由来す
    るパラオキソナーゼである、請求項1記載のモノクロー
    ナル抗体。
  3. 【請求項3】請求項1又は2記載のモノクローナル抗体
    を産生するハイブリドーマ。
  4. 【請求項4】請求項1又は2のモノクローナル抗体と、
    検体中のパラオキソナーゼとの間における抗原抗体反応
    を利用する、検体中のパラオキソナーゼの検出方法。
  5. 【請求項5】検体が血液検体である、請求項4記載の検
    出方法。
  6. 【請求項6】請求項4又は5記載の検出方法により検出
    された検体中のパラオキソナーゼの量的・質的な異常を
    指標として、検体提供者の動脈硬化を判定する方法。
JP11143681A 1999-05-24 1999-05-24 パラオキソナーゼに対するモノクローナル抗体及びこれを用いる動脈硬化の判定方法 Pending JP2000333674A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11143681A JP2000333674A (ja) 1999-05-24 1999-05-24 パラオキソナーゼに対するモノクローナル抗体及びこれを用いる動脈硬化の判定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11143681A JP2000333674A (ja) 1999-05-24 1999-05-24 パラオキソナーゼに対するモノクローナル抗体及びこれを用いる動脈硬化の判定方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000333674A true JP2000333674A (ja) 2000-12-05

Family

ID=15344480

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP11143681A Pending JP2000333674A (ja) 1999-05-24 1999-05-24 パラオキソナーゼに対するモノクローナル抗体及びこれを用いる動脈硬化の判定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000333674A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010018870A1 (ja) 2008-08-15 2010-02-18 藤倉化成株式会社 動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー、及び該マーカー等を用いる動脈硬化の検出方法、並びに動脈硬化診断用キット
EP2251033A1 (en) 2004-02-04 2010-11-17 Mitsubishi Tanabe Pharma Corporation Pharmaceutical formulations comprising paraoxonase

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63267799A (ja) * 1987-04-22 1988-11-04 Kanebo Ltd モノクロ−ナル抗体
JPH10502255A (ja) * 1994-07-05 1998-03-03 ヒューマン・ジェノム・サイエンシズ・インコーポレイテッド 血清パラオキソナーゼ

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63267799A (ja) * 1987-04-22 1988-11-04 Kanebo Ltd モノクロ−ナル抗体
JPH10502255A (ja) * 1994-07-05 1998-03-03 ヒューマン・ジェノム・サイエンシズ・インコーポレイテッド 血清パラオキソナーゼ

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2251033A1 (en) 2004-02-04 2010-11-17 Mitsubishi Tanabe Pharma Corporation Pharmaceutical formulations comprising paraoxonase
US9050331B2 (en) 2004-02-04 2015-06-09 Mitsubishi Tanabe Pharma Corporation Pharmaceutical formulations comprising paraoxonase
WO2010018870A1 (ja) 2008-08-15 2010-02-18 藤倉化成株式会社 動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー、及び該マーカー等を用いる動脈硬化の検出方法、並びに動脈硬化診断用キット
EP3021121A1 (en) 2008-08-15 2016-05-18 Fujikura Kasei Co., Ltd. Polypeptide marker for diagnosis of arteriosclerosis, method for detection of arteriosclerosis by using the maker or the like, and kit for diagnosis of arteriosclerosis
US9366681B2 (en) 2008-08-15 2016-06-14 Fujikura Kasei Co., Ltd. Polypeptide marker for diagnosis of arteriosclerosis, method for detection of arteriosclerosis by using the maker or the like, and kit for diagnosis of arteriosclerosis

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5202234A (en) Myocardial infarction immunoassay
Gils et al. Development of a Genotype 325–Specific proCPU/TAFI ELISA
JP5941615B2 (ja) ヒトcxcl1タンパク質の免疫学的測定方法
US5382515A (en) Creative kinase-MB immunoassay for myocardial infarction and reagents
JP5415946B2 (ja) 新規な動脈硬化性疾患マーカー
US5382522A (en) Immunoassay for creatine kinase-MB and creatine kinase-BB isoforms and reagents
WO2012175602A2 (en) Elisa for calprotectin
US8003075B2 (en) Diagnostic assay for human matrix GLA-protein and its use as a biomarker
WO2008013257A1 (fr) Anticorps monoclonal dirigé contre le lox-1 soluble
EP1190259B1 (en) Diagnostic assay for human matrix gla-protein and its use as a biomarker
JP2001091517A (ja) 血液中の低比重リポ蛋白(ldl)もしくは変性低比重リポ蛋白の検出方法
EP1601683B1 (en) Novel non-invasive marker for liver disease
JP2000333674A (ja) パラオキソナーゼに対するモノクローナル抗体及びこれを用いる動脈硬化の判定方法
US20080305499A1 (en) Anti-Synoviolin Antibody
JP2007282553A (ja) 動脈硬化感受性遺伝子およびその用途
JP2864219B2 (ja) 遊離の活性型マトリックスメタロプロテアーゼ類の分別定量法
JP3736798B2 (ja) 心筋梗塞診断用免疫学的製剤、心筋梗塞診断用キット及び心筋梗塞の検出方法。
JP2002510050A (ja) 骨吸収速度を測定する方法
JP4203878B2 (ja) モノクローナル抗体を用いるヒト血漿型paf−ahの検出方法
JPH0753757B2 (ja) モノクローナル抗体及びその使用方法
JP2003227837A (ja) 血液中の低比重リポ蛋白(ldl)もしくは変性低比重リポ蛋白の検出方法
JP4856381B2 (ja) ヒトオロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼタンパク質の測定法
CA2047298A1 (en) Myocardial infarction immunoassay
JP2000279174A (ja) ヒトldlレセプターに対するモノクローナル抗体及びこれを用いる家族性高脂血症の判定方法
JP2005075803A (ja) ヒトアポリポ蛋白質jに対する抗体、および、これを用いたヒトアポリポ蛋白質jの検出方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060424

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090602

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090731

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090825

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091023

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20091023

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100817