JP2000328227A - 金属部材の表面処理方法 - Google Patents

金属部材の表面処理方法

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JP2000328227A
JP2000328227A JP11140962A JP14096299A JP2000328227A JP 2000328227 A JP2000328227 A JP 2000328227A JP 11140962 A JP11140962 A JP 11140962A JP 14096299 A JP14096299 A JP 14096299A JP 2000328227 A JP2000328227 A JP 2000328227A
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JP11140962A
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Kenji Miyai
研二 宮井
Seiya Kunioka
誠也 國岡
Masashi Takahashi
正志 高橋
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Suzuki Motor Corp
Original Assignee
Suzuki Motor Corp
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Publication date
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  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面処理材料の歩留まりが高く、短時間で容
易に処理でき、さらに生産ラインに組み込むことができ
る金属部材の表面処理方法を提供する。 【解決手段】 機能性材料2,3を、ブラスト処理を用
いてアルミニウム合金等の軽合金からなる金属部材1の
表面4aに突き当てることにより、金属部材1の表層部
4に機能性材料2を分散させ又は表層部2,3の金属材
料中に機能性材料3を混合させて固定した後、この表層
部4に真空アーク11を放電する真空アーク放電処理を
施すことによって、該機能性材料2,3の全てを金属部
材1に冶金的に結合させる表面処理方法である。また、
上記金属部材1の表層部4に固定した機能性材料2,3
のうち、一部を該表層部4に残存させるようにしても良
い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属部材の表面に
耐摩耗性や耐食性等の機能を付与する表面処理方法に関
するものであり、アルミニウム系合金、チタン系合金、
マグネシウム系合金、又は鉄系合金等からなる各種金属
部材に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】従来から、めっきや溶射等の表面処理を
施して金属部品の表面に皮膜を形成することによって、
耐摩耗性や耐食性等の金属部品表面の性質を向上させる
技術が広く用いられている。しかし、これらの表面処理
方法には、以下の問題点がある。 (1)表面処理に用いる皮膜材料のうち金属部品表面に
付着する量が少ないため、即ち皮膜材料の歩留まりが低
いためにコストが多大にかかる。 (2)金属部品表面に皮膜を形成させる工程が複雑なた
め、表面処理に要する時間が長くなる。 (3)被処理物である金属部品を製作する加工ラインの
工程内に表面処理をする工程を組み込むことができない
ため、この加工ラインとは別個に表面処理ラインを設け
る必要があり、コスト上昇の要因になる。
【0003】(4)上記めっき等は湿式の表面処理であ
るため、廃液処理などの環境対策が困難であり、コスト
も多大にかかる。 (5)さらに、異種材料を表面処理皮膜として各種の合
金上に形成させる場合、多くの処理方法では、表面処理
膜と金属母材とが冶金的な結合をしないため、冶金的結
合に比較すると、表面処理皮膜の密着強度があまり大き
くない。ここで、「冶金的に結合させる」とは、異なる
材質の複数の金属材料について、それらを互いに当接さ
せ、双方の当接面の近傍部を溶融させ結合させることに
よって、上記複数の金属材料を強固に接合させることを
意味する。
【0004】また、表面処理膜と金属部材とを冶金的に
結合させる表面処理方法が、例えば特開平10−102
232号公報に開示されている。ここでは、拡散金属を
含む金属ペーストをアルミニウム材の表面に固定したの
ち、該アルミニウム材を400〜600℃の温度下で熱
処理することによって、金属拡散層を上記アルミニウム
材の表面に形成している。しかし、この表面処理方法で
は、熱処理によって、母材であるアルミニウム材が熱的
に損傷を受けて母材強度が低下してしまうため、母材を
熱処理する前、即ち加工前にこのような表面処理を行う
必要があり、摺動部品などの精度の良い加工が求められ
る部品に適用するには制約が多くなり過ぎる。また、実
施例にあるように、熱処理に10時間もかかり、生産性
が非常に低いため、実用化が困難である。
【0005】なお、密着強度を向上させる方法が特開昭
58−45820号公報に開示されている。この技術
は、母材表面に表面処理皮膜を形成した後に、該表面処
理皮膜に放電加工を行って皮膜を母材に冶金的に結合さ
せることにより、皮膜の密着強度を高める方法である。
しかし、この方法においては、母材表面に通常のめっき
や溶射などの皮膜を形成した後に放電加工が行われるた
め、めっきや溶射等よりも工程が増えコストが上昇す
る。更に、特開昭58−45820号公報に記載されて
いる放電加工は絶縁性液中での処理となるため、被処理
物の大きさが制限され、処理時間も長くかかる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を
解決し、表面処理材料の歩留まりが高く、短時間で容易
に処理でき、さらに生産ラインに組み込むことができる
金属部材の乾式表面処理方法を提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る表面処理方
法は、上記目的を達成するため、金属部材の表層部に機
能性材料を分散させ又は表層部の金属部材中に機能性材
料を混合させて固定した後、該金属部材の表層部に真空
アークを放電する真空アーク放電処理を施すことによっ
て、上記機能性材料を金属部材に冶金的に結合させてい
る。上記表面処理方法によれば、金属部材の表層部に真
空アークを放電することによって真空アーク陰極点が発
生する。金属部材表面が機能性材料で覆われていないた
め、真空アーク陰極点が機能性材料と金属母材の両方に
接し、冶金的結合が起こりやすい。また、本発明は、非
常に短い処理時間で機能性材料と金属部材との間に冶金
的結合が得られ、この表面処理工程を生産ラインの一部
として組み込むことができる。
【0008】さらに、真空度が比較的に低い雰囲気中で
の処理であるため、装置が小規模でメンテナンスも容易
であり、真空引きと排気に要する時間も短くなり、全体
にかかる処理時間も短くなる。なお、冶金的結合が得ら
れるにもかかわらず金属母材への入熱が少なく、金属母
材の熱処理を崩さず、金属母材表面の強固な酸化膜も容
易に除去できる。また、本発明は、ブラスト処理を用い
て機能性材料を金属部材の表面に突き当てることによ
り、該金属部材の表層部に機能性材料を分散させ又は表
層部の金属部材中に機能性材料を混合させて固定した
後、この表層部に真空アークを放電する真空アーク放電
処理を施すことによって、上記機能性材料を金属部材に
冶金的に結合させる金属部材の表面処理方法である。こ
の表面処理方法によれば、真空アーク放電による冶金的
結合処理に好適な機能性材料を母材表層部に分散又は混
合させた状態が容易に得られ、処理時間が短く、被処理
物の形状が曲面の場合や、被処理物の面積が大きい場合
にも処理しやすい方法であると共に、機能性材料の歩留
まりが高い。
【0009】本発明の別の態様は、上記金属部材が、ア
ルミニウム合金、チタン合金又はマグネシウム合金等の
軽合金である金属部材の表面処理方法である。この表面
処理方法によれば、機能性材料と金属部材とに冶金的結
合が得られるにもかかわらず、金属母材へ入る熱量が少
なく、母材に施した熱処理に影響を及ぼさない。従っ
て、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの熱伝導
率が高く低融点の材料でも、熱処理を崩さずに表面部の
みに、機能性材料との冶金的結合層を形成することがで
きる。アルミニウム合金やチタン合金等の表面に酸化膜
が出来やすく、更にその酸化膜が強固な材料において
も、容易に酸化膜を除去し機能性材料との冶金結合が得
られる。なお、本発明の更に別の態様は、上記真空アー
ク放電処理を施した表層部の機能性材料のうち、その一
部を該表層部に残存させると共に、残部を表層部に冶金
的に結合させるように処理する表面処理方法である。こ
の表面処理方法によれば、部分的に機能性材料を残すこ
とにより、機能性材料自身の特性を残すことが可能とな
る。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態につ
いて、図面を用いて詳細に説明する。本実施の形態に係
る表面処理方法は、下記に示すように、機能性材料の固
定工程と真空アーク放電処理(冶金的結合処理)工程と
に大別される。 (a)機能性材料の固定工程 まず、図1,2に示すように、金属母材1の表面に歩留
まり良く機能性材料2,3を短時間で容易に固定させ
る。この固定工程においては、機能性材料2,3の金属
母材1に対する密着強度は多少低くても問題ないため、
固定処理に用いる方法は特に限定されずに、種々の方法
を用いることができる。例えば、粉末状の機能性材料
2,3を金属母材1に加圧して固定する等の簡易な方法
や、後述するように、ブラスト処理によって機能性材料
2,3を金属母材1の表面に高速で突き当て、該金属母
材1の表面層4に分散又は混合させる方法を採用するこ
とができる。 (b)真空アーク放電処理(冶金的結合処理)工程 次いで、図3に示すように、その表面層4に上記機能性
材料2,3が固定された金属母材1を真空槽10の内部
に配置し、該金属母材1の表面層4に向けて真空アーク
11を放電させて、機能性材料2,3が分散・混合した
表面層4の表面4aに真空アーク陰極点12を走らせ
る。これにより、図4,5に示すように、機能性材料
2,3と金属母材1とが冶金的に結合し、信頼性の高い
冶金的結合層14,15を、短時間で容易に且つ安価に
金属母材1の表面部分4に形成することができる。
【0011】以下に、本発明の実施の形態の構成につい
て説明する。 [金属母材]金属母材1は、特に限定されることなく、
広く種々の材質のものを用いることができ、例えば、ア
ルミニウム系合金、チタン系合金、マグネシウム系合
金、鉄系合金などを好適に使用できる。従来は、アルミ
ニウム系合金、チタン系合金、マグネシウム系合金等の
軽合金材料からなる金属母材1の表面に冶金的結合によ
って表面処理皮膜を強固に密着させる方法が特になかっ
たので、本発明は非常に有用である。この理由は、以下
のとおりである。冶金的結合処理を熱処理により行う
と、例えばアルミニウム系合金及びマグネシウム系合金
は融点が低く熱伝導性が良いので、金属母材1に熱影響
を与えて母材強度が低下するためである。また、チタン
系合金も含めて軽合金材料は、表面に安定な酸化膜が形
成し、この酸化膜によって、表面処理皮膜と金属母材1
との間に冶金的結合が得られにくくなるためでもある。
【0012】[機能性材料]機能性材料は、強度や靱性
などの機械的性質とは異なる有用な性質を示す材料であ
り、形状記憶合金や制振合金などがある。ただし、本明
細書中では、表面硬化による耐摩耗性向上や耐食性向上
等の、母材が持っていない新たなる機能を付与する材料
を機能性材料とよぶ。この材料としては、例えば、母材
金属と金属間化合物を作る材料が挙げられ、金属間化合
物の生成により機能が向上する。また、金属間化合物ま
で生成しなくても、拡散により性質が変化するものもあ
り、金属母材と表面に固定化する機能性材料の組合せは
無限に存在すると思われる。そして、具体的には、アル
ミニウム合金の場合、Ni系、Cu系、Fe系、Ti系
合金を固定化したのち、真空アーク放電加工を施して冶
金的に結合させると、金属間化合物の生成や拡散による
表面硬化などの新たなる機能が発生する。機能性材料の
形状は、破砕粉のようなエッジが鋭角になった粒子の方
が金属母材に刺さり易く本発明には有利であるが、アト
マイズのようなエッジが丸くなったような粒子でも十分
に固定化できるため、形状に制約はない。また、図2に
示したような機能性材料3は、粒径が小さい粉末状の材
料であり、ブラスト処理によって金属母材1の表面層4
の内部に、該表面層4を構成する金属材料と混合された
状態になっている。
【0013】[機能性材料の固定]上述したように、機
能性材料2,3は、金属母材1の表面上に膜状に固定さ
せても良いが、金属母材1に刺さり込むように金属母材
1の表面層4に分散したり、該表面層4において金属母
材1と混合させることが好ましい。この理由は、以下の
とおりである。機能性材料2,3が膜状に固定されてい
る場合は、真空アーク陰極点12は金属母材1に直接接
することが少なく、機能性材料膜が溶解することにより
一方向からの拡散となり易い。しかし、金属母材1の表
面層4に分散したり、表層部分4で混合している場合
は、真空アーク11による陰極点12が金属母材1と機
能性材料2,3の両方に接し、相互に拡散することで大
きな効果が得られるからである。また、機能性材料2,
3を金属母材1の表面に固定する場合、該機能性材料
2,3と金属母材1とを強固に密着させる必要はなく、
その後の真空アーク放電処理により冶金的結合が発生し
て強固に密着させる。従って、密着強さの高いめっき、
及び処理に長時間かかりコストが高い溶射等の方法でな
く、粉末状の機能性材料2,3を金属母材1に加圧して
固定する等の簡易な方法で良い。
【0014】[ブラスト処理]本発明に用いるブラスト
処理は、上述した機能性材料2,3の固定方法の一つで
あり、圧縮空気流によって粉末状の機能性材料2,3を
高速飛行させて金属母材1に突き当てることによって、
該金属母材1の表面層4に機能性材料2,3を分散させ
たり混合させたりする処理である。一般的に、ブラスト
処理とは、アルミナや炭化珪素などの粒子を圧縮空気流
などにより高速飛行させ、これを基材に吹き付けること
によって、基材表面を粗くする処理である。この処理
は、溶射における基材表面の前処理の一種で、基材表面
の酸化物や汚れを除去するとともに、溶射粒子の投びょ
う効果を高めて溶射皮膜の基材への密着性を向上させる
効果がある。このブラスト処理によって、ブラスト材を
基材表面に刺さり込ませることができるため、本発明で
は、この現象を機能性材料の固定に利用している。ブラ
スト処理が機能性材料2,3の固定に好ましい理由は以
下のとおりである。本発明に用いるブラスト処理は、機
能性材料2,3を金属母材1の表面層4に分散させたり
表層部分4に混合させることが容易にでき、処理時間が
短く、被処理物の形状が曲面であったり、被処理物の面
積が大きい場合にも処理しやすいためである。また、被
処理物に吹き付ける機能性材料2,3の歩留まりが良い
ことや、真空アーク放電による冶金的結合処理に好まし
いことが挙げられる。これは、ブラスト処理により金属
母材1の表面に固定しなかった機能性材料2,3は、廃
棄されるのではなく、固定するまでブラスト処理され続
けるため、機能性材料2,3の歩留まりは溶射などに比
較して格段に良好である。なお、ブラスト処理について
は、これまでに数多くの技術が開発されているが、本発
明に用いる処理は、以下の点で従来のブラスト処理と相
違する。
【0015】(1)特開平8−333671号公報に開
示された技術は、被覆金属粉体を噴射圧力3kgf/c
2以上で噴射して被処理物である金属母材に突き当て
て、被覆金属粉体が金属母材の表面で加熱されることに
よって、該被覆金属粉体内の元素が金属母材表面に活性
化吸着して拡散及び浸透させるめっき方法である。これ
に対して本発明は、金属母材1に拡散させるものではな
く、金属母材1の表面層4に機能性材料2,3を刺さり
込ませる方法であり、両者は基本的に違う技術である。 (2)また、特開平7−256330号公報に開示され
た技術は、被処理物の表面のスケールをショットブラス
ト処理したのち、真空アーク放電処理によるデスケーリ
ング処理を行っている。これは、ブラスト処理をした後
に真空アーク放電処理をする工程が本発明と同じであ
る。しかし、上記公報の技術の目的は被処理材のデスケ
ーリングであるため、ショットブラスト処理もスケール
除去を目的としており、その後の真空アーク処理工程に
おいて、ブラスト処理によっては除去できなかったスケ
ールと、被処理材表面に刺さり込んだショット材(鉄を
主成分とした粉粒鉄)とを除去している。また、更に残
存したショット材は酸洗いにより除去され、被処理材の
純粋な表面を作り出している。従って、ブラスト処理に
より固定された機能性材料2,3と金属母材1との間で
冶金的結合を起こし、金属母材1の表面に新たな機能を
付与する本発明とは基本的に違う技術である。
【0016】[真空アーク放電処理]真空アーク放電処
理とは、図3に示すように、電源20の陰極21に接続
された金属母材1に向けて真空アーク放電を行い、この
金属母材1の表面層4に真空アーク陰極点12を発生さ
せる処理である。真空アーク11という用語は、厳密な
意味での真空の中で形成されるアークに限定されるもの
ではなく、大気圧より極めて低い減圧雰囲気において形
成されるアークをも意味するものとする。以下、減圧雰
囲気で形成されるアークで、そのアーク陰極点12が金
属母材1上の特定の位置に固定されずに動き回る性質を
示すアークを真空アーク11と呼ぶ。
【0017】この真空アーク陰極点12は、例えば、1
0Torr以下という低い真空度の状態のアーク形成雰囲気
22中においては、エネルギー密度が極めて高くなり、
図3に示すように、金属母材1の表面4aの上を広い範
囲に亘って、一定の位置に固定されることなく激しく動
き回る。即ち、本発明では、機能性材料2,3を固定し
た金属母材1の表面層4が真空アーク陰極点12の移動
により局所的に急熱又は急冷されて溶融と凝固を繰り返
し、短時間で金属母材1の表面層4のほぼ全ての領域に
おいて溶融凝固が行われ、図4,5に示すように、金属
母材1の表面層4に冶金的結合層14,15が形成され
る。しかし、真空アーク陰極点12は高密度であるが、
高速で移動するため、金属母材1のごく表面のみにおい
て溶融と凝固が行われ、金属母材1の内部にはほとんど
熱が伝わらないという特性を有する。この特性により、
アルミニウム合金やマグネシウム合金等の熱伝導の高い
材料に真空アーク放電処理を施しても、母材強度を低下
させずに金属母材1表面の溶融凝固処理がなされる。こ
れは、他のレーザー処理や大気アーク、電子ビーム等で
は得られない特性である。
【0018】なお、真空アーク放電処理は、通常、特開
平7−75819号、特開平10−287920号、及
び特開平5−98412号に記載されているように、金
属材料の表面に付着したスケール、異物又は不純物等を
除去する場合に利用される。また、金属表面層の焼入
れ、焼戻し、焼鈍しなどの熱処理や、溶射皮膜の前処理
として利用される。しかし、金属母材1表面層4に機能
性材料2,3を固定した後に、該表面層4に真空アーク
放電処理を施すことによって、機能性材料2,3と金属
母材1とを冶金的に結合させる技術は、上記公報には開
示されていない。真空アーク放電処理により機能性材料
2,3と金属母材1とが冶金的結合をするためには、処
理雰囲気22の真空度が10Torr以下であることが必要
であり、このうち特に、0.1〜1Torrの範囲が好まし
い。上記処理雰囲気22中の真空度が0.1Torr以下の
高真空状態では、真空アーク陰極点12の移動速さが速
すぎて、機能性材料2,3と金属母材1との間に冶金的
結合が得られにくくなると共に、真空引きに長い時間が
かかる。また、真空槽10の密閉度を高くすることが必
要なため、真空槽10の容積が大きくなる。さらに、取
り扱いが複雑であり、生産ライン内に真空放電処理工程
を組み込むことが難しくなるため、コストが大幅に向上
する。一方、真空度が1Torrより高い場合は、真空アー
ク陰極点12の移動速度が遅すぎて、金属母材1表面の
温度が上昇しすぎたり、真空アーク放電処理の時間が長
くなる。
【0019】[真空アーク放電処理装置]本発明の実施
の形態に用いる真空アーク放電処理装置30は、図3に
示すように、内部が密閉された真空槽10と、外部電源
20の陽極31に接続された電極32と、被処理物を積
載する支持台33と、図示しない真空ポンプとを備えて
いる。上記支持台33には被処理物である金属部材1が
略水平の状態に載置されている。該金属部材1は、その
表面に機能性材料2,3が固定されており、外部電源2
0の陰極側21に接続されている。また、上記真空ポン
プを用いて真空槽10の内部から空気を吸引することに
よって、真空槽10内の真空度を調整することができ
る。さらに、電極32と金属部材1との間に電圧を負荷
すると、該電極32から金属部材1に向けて真空アーク
11が放電されるように構成されている。
【0020】[処理後の形態]金属母材1の表面層4に
固定された機能性材料2,3が真空アーク放電処理によ
り、図4に示すように、全て金属母材1と冶金的に結合
した冶金的結合層14を形成する。また、図5に示すよ
うに、金属母材1の表面層4に部分的に機能性材料2,
3が残り、該機能性材料2,3が、その界面部分で金属
母材1と冶金的に結合しても良い。これにより機能性材
料2,3そのものの機能も有することができる。機能性
材料2,3を真空アーク放電処理の後でも表面層4に残
す方法は、金属母材1の表層部分4に機能性材料2,3
との混合層を形成する場合に、径が大きい粉末状の機能
性材料3を混合することが望ましい。
【0021】
【実施例】まず、金属母材1として、熱伝導性が高いア
ルミニウム合金鋳物(AC4CT6処理品25×30×
10mm)の表面にブラスト処理することによって、図
6に示すように、機能性材料3としてNi系合金粉末
(Ni−16Cr)をアルミニウム合金鋳物1の表面層
4に刺さり込ませて固定し、合金粉末の混合層を形成さ
せた。このときのブラスト条件は、圧縮空気の圧力を3
kgf/cm2とし、処理時間を10秒間とした。次い
で、図3に示すように、真空槽10内の真空度を0.2
Torrまで減圧し、該真空槽10内にアルミニウム合金鋳
物1を収納した。そして、該アルミニウム合金鋳物1の
表面4aに向けて真空アーク11を放電させ、該表面4
aに真空アーク陰極点12を走らせた。真空アーク放電
の処理条件は、アーク電流値を100Aとし、処理時間
を3秒とした。この処理によって、図7に示すように、
アルミニウム合金鋳物1の表面層4に冶金的結合層15
が形成された。
【0022】こののち、真空アーク放電処理を施したア
ルミニウム合金鋳物1を切断し、この断面組織を観察す
ると共に、機能性材料3が固定された部分、及び金属母
材1の内部の硬さを測定した。機能性材料3をブラスト
処理した段階では、表層部分4の断面硬さは204HV
0.1であったが、真空アーク放電処理を行った後で
は、固定部分の硬さは370HV0.1に到達してい
た。即ち、真空アーク放電処理により、図4に示すよう
に、ブラスト処理による固定では得られない冶金的結合
が得られ、強化されたことが判る。また、母材内部の硬
さは123HV0.1であり、アルミニウム合金AC4
Cの熱処理(T6処理)が崩れていないことがわかる。
また、写真2中Ni−16Cr粒子が残っている部分
は、633HV0.1の硬さを有しており、冶金的結合
層以上の硬さを示していた。また、その粒子の界面は冶
金的に結合し、強固になっていた。
【0023】
【発明の効果】本発明は以下のような効果を有する。 (1)非常に短い処理時間で機能性材料と金属材料の間
に冶金的結合が得られ、生産ラインの一部として組み込
むことができる。 (2)機能性材料を母材表層部に分散、混合した状態が
容易に得られ、処理時間が短く、被処理物の曲面や大面
積に処理しやすい方法である。 (3)冶金的結合が得られるにもかかわらず金属母材へ
入る熱量が少なく、母材に施した熱処理に影響を及ぼさ
ないため、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの
熱伝導率が高く低融点の材料でも熱処理を崩さずに表面
のみに機能性材料との冶金的結合が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面層に機能性材料を分散させた金属部材を示
す断面図である。
【図2】表層部の金属材料中に機能性材料を混合して固
定させた金属部材を示す断面図である。
【図3】本発明に係る表面処理方法に用いる表面処理装
置を示す断面図である。
【図4】本発明に係る表面処理を施した金属部材であっ
て、その表面層に機能性材料が部分的に残存したものを
示す断面図である。
【図5】本発明に係る表面処理を施した金属部材であっ
て、その表層部の機能性材料が完全に金属部材に冶金的
に結合したものを示す断面図である。
【図6】実施例において、その表面部にNi系合金粉末
の混合層を形成したアルミニウム合金鋳物の金属組織を
示す断面図(倍率が400倍に相当)である。
【図7】実施例において、その表面部に冶金的結合層を
真空アーク放電処理によって形成したアルミニウム合金
鋳物の金属組織を示す断面図(倍率が400倍に相当)
である。
【符号の説明】
1 金属母材 2,3 機能性材料 4,5 表面層 4a,5a 表面 10 真空槽 11 真空アーク 12 真空アーク陰極点 14,15 冶金的結合層 20 電源 21 陰極 22 アーク形成雰囲気 30 真空アーク放電処理装置 31 陽極 32 電極 33 支持台
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 正志 静岡県浜松市高塚町300番地 スズキ株式 会社内 Fターム(参考) 4K028 CA01 CB01 CC01 CC05 CC06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属部材の表層部に機能性材料を分散さ
    せ又は表層部の金属部材中に機能性材料を混合させて固
    定するステップと、該金属部材の表層部に真空アークを
    放電する真空アーク放電処理を施すことによって、上記
    機能性材料を金属部材に冶金的に結合させるステップと
    を含んでなる金属部材の表面処理方法。
  2. 【請求項2】 ブラスト処理を用いて機能性材料を金属
    部材の表面に突き当てることにより、該金属部材の表層
    部に機能性材料を分散させ又は表層部の金属部材中に機
    能性材料を混合させて固定するステップと、この表層部
    に真空アークを放電する真空アーク放電処理を施すこと
    によって、上記機能性材料を金属部材に冶金的に結合さ
    せるステップとを含んでなる金属部材の表面処理方法。
  3. 【請求項3】 上記金属部材が、アルミニウム合金、チ
    タン合金又はマグネシウム合金等の軽合金であることを
    特徴とする請求項1又は2に記載の金属部材の表面処理
    方法。
  4. 【請求項4】 上記真空アーク放電処理を施した表層部
    の機能性材料のうち、その一部を該表層部に残存させる
    と共に、残部を表層部に冶金的に結合させるように処理
    することを特徴とする請求項1〜3に記載の金属部材の
    表面処理方法。
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