JP2000317340A - 電線被覆廃材の湿式比重差分別装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は使用を終えたサイズの小さい電線の
電線被覆廃材を再利用するために、該廃材から銅を効率
よく除く電線被覆廃材からの銅の除去方法を提供するこ
とを課題とする。 【解決手段】 本発明は、粉砕したプラスチック被覆電
線廃材を傾斜する水槽に水とともに供給し、該水槽を振
動させて上流側に銅を移動させ、下流側にプラスチック
廃材を移動させて分別する湿式比重差分別装置におい
て、水槽の下流側プラスチック廃材排出口を上下に２つ
以上設けたことを特徴とする電線被覆廃材の湿式比重差
分別装置であり、電線被覆廃材をプラスチックの種類に
まで分別して再利用しうるようにすることにある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は使用を終えた電線を
回収し、解体したプラスチック被覆電線の被覆廃材を再
利用し、または廃却処理するために、該廃材を銅とプラ
スチック（ゴムを含む）とに分離するとともに被覆廃材
の種類による比重差を利用してそれぞれの被覆廃材に効
率よく分離する電線被覆廃材の湿式比重差分別装置に関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】電線、特に屋外に配線された電線は、そ
の安全性を考慮して、一定期間使用されると取り替えら
れる。取り替えられた廃電線は導体（主として銅）と被
覆廃材（主としてプラスチック）とに分離される。分離
された被覆廃材の内、石油系の材料からなる被覆廃材に
ついては燃料化して石油代替エネルギーとしての再利用
（リサイクル）の方法が開発されている。一方、有害な
塩素を含有する塩化ビニル樹脂を主体とした被覆廃材の
再利用（リサイクル）も研究が進み、リサイクルの道が
開けつつある。

【０００３】廃電線のリサイクルは先ず電線を導体
（銅）と被覆廃材（プラスチック）とに分離する。導体
と被覆廃材との分離は電線のサイズにより次の２つの方
法に分けられる。 （１）導体径が１．６ｍｍ以上の電線 回収された廃電線を一定の長さに切断し、ケーブルコア
まで解体後、該ケーブルコアを剥線機により導体から被
覆材を剥がして導体と被覆廃材とを分離する方法（以下
剥線法という）。このようにサイズの大きい電線につい
ては回収時点で被覆材の種類が判別でき、かつ剥線法で
導体と被覆材とを分離回収することができるために回収
された被覆廃材には銅が付着していることは殆どなく、
従って被覆廃材はそのまま再処理工程へと回すことがで
きる。

【０００４】（２）導体径が１．６ｍｍ未満の電線 回収された廃電線を自動粉砕機に投入し、導体と被覆廃
材とを一緒に細かく切断、粉砕（ナゲット処理）し、粉
砕片を比重差によって導体と被覆廃材とに分離する方法
（以下ナゲット法という）。通信線等細線からなる廃電
線は被覆材による分別回収がなされておらず、ポリエチ
レン被覆電線、ポリ塩化ビニル被覆電線等が混在した状
態で回収される。このため、銅を分離した後の被覆廃材
はポリエチレンとポリ塩化ビニルとが混在したままにな
っているためリサイクルは極めて困難な状況であり、ま
た、ポリエチレンとポリ塩化ビニルとの混入比率はポリ
塩化ビニルの方が多いために焼却処分もできず、殆どが
埋立処理されていた。また、廃電線をナゲット法にて導
体と被覆廃材とに分離すると、分離後の被覆廃材には最
高で６％もの銅が残留したままとなっていた。このた
め、被覆廃材を高炉用原料の代替エネルギーとして使用
する場合、鉄を熔解する高炉では、原料中に銅が含まれ
ていると、その銅が鉄に入り込んで鉄の品質を極端に劣
化させるため、原料中の銅の量を極端に少なくする必要
がある。しかしながら、ナゲット法にて処理した廃電線
の被覆廃材には前述したように最高で６％もの銅が含ま
れているために高炉用の原料としては再利用することも
できない状況にある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者はナ
ゲット処理した被覆廃材につき湿式比重差分別装置の水
槽（トラフ）の振動数、水槽の傾斜角度、噴射水量を種
々変化させてポリエチレン廃材とポリ塩化ビニル廃材、
そして少量含まれるゴム廃材の比重差による分別と、プ
ラスチックと銅の分離実験を繰り返したところ、水槽下
流でプラスチック材がその種類による比重差により分離
することを知見し、銅を０．２％程度まで除去すること
に成功したが、銅をこれ以上取り除くことはできなかっ
た。そこで、本発明者は水槽の下流におけるプラスチッ
ク廃材の分布状況をつぶさに研究し、水槽下流のプラス
チック材排出口では、銅を含むプラスチック材が水槽の
底面近傍に集まっていることを突き止め、本発明に到達
した。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、廃電線の被覆
廃材を被覆材の種類毎に分別すると同時に被覆廃材から
銅を極力除去し、被覆廃材の再利用を可能とする電線被
覆廃材の湿式比重差分別装置を提供するものである。本
発明は、粉砕したプラスチック被覆電線廃材を傾斜する
水槽に水とともに供給し、該水槽を振動させて上流側に
銅を移動させ、下流側にプラスチック廃材を移動させて
分別する湿式比重差分別装置において、水槽の下流側プ
ラスチック廃材排出口を上下に２つ以上設けたことを特
徴とする電線被覆廃材の湿式比重差分別装置である。

【０００７】上記記載の湿式比重差分別装置において、
粉砕したプラスチック被覆電線廃材を水槽に供給するホ
ッパーと水槽との間に、前記廃材を水に濡らすフィーダ
ーを設けることにより水槽へ供給される電線廃材をより
効率よく分別することができる。また、本発明は、ポリ
エチレン絶縁電線とポリ塩化ビニル絶縁電線とが混入し
た廃電線をナゲット処理後、前記湿式比重差分別装置の
水槽に水とともに供給し、該水槽を振動させて上流側に
銅を移動させ、下流側にポリエチレンとポリ塩化ビニル
を移動させ、かつ水槽の下流側でポリエチレンとポリ塩
化ビニルとを比重差により分別し、ポリエチレンをプラ
スチック廃材排出口の上側出口から、ポリ塩化ビニルを
下側出口からそれぞれ排出させることを特徴とする電線
被覆廃材の湿式比重差分別装置である。

【０００８】更に、本発明は、ポリエチレン絶縁電線と
ポリ塩化ビニル絶縁電線とが混入した廃電線をナゲット
処理後、前記記載の湿式比重差分別装置の水槽に水とと
もに供給し、該水槽を振動させて上流側に銅を移動さ
せ、下流側にポリエチレンとポリ塩化ビニルを移動さ
せ、かつ水槽の下流側で銅を含むプラスチックとポリエ
チレンとポリ塩化ビニルとを比重差により分別し、ポリ
エチレンをプラスチック廃材排出口の上側出口から、ポ
リ塩化ビニルを中間出口から、銅を含むプラスチックを
プラスチック下側出口から、それぞれ排出させることを
特徴とする電線被覆廃材の湿式比重差分別装置である。

【０００９】なお、本発明は、混在する被覆廃材の種類
（例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ゴム等）によ
りプラスチック廃材排出口の数を設定し、水槽から排出
される廃材を複数に分別することが可能であることは勿
論である。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。図
１は本発明の湿式比重差分別装置の１実施形態を示すも
ので、１は粉砕された被覆廃材粉砕片（被分別材料）を
投入するホッパー、３はホッパー１から供給される被覆
廃材を水に馴染ませるフィーダーで、該フィーダー３に
は濡れた被覆廃材を移動させるスクリュー（図省略）が
内蔵されている。５は被分別材料を比重差により分別す
る水槽（トラフ）で、該水槽５には被分別材料を浮遊さ
せ、押し流す水を供給する水噴射装置７が設けられてい
る。１１は水槽５の上流側に設けた銅排出口、１３は水
槽５の下流に設けたプラスチック廃材排出口で、該排出
口は上下に複数（図示した実施形態は、上側の排出口１
４、中間の排出口１５、下側の排出口１６の３口）設け
られている。１７は水槽の傾斜角度を変えるシリンダ
ー、１９は水槽５に振動を付与する振動装置で、振動は
インバータ制御により任意にかえることができ、水槽の
傾斜角度と振動を被分別材料の種類により最適な分別条
件に選定することができるように構成されている。

【００１１】かかる本発明湿式比重差分別装置を使用し
て銅とポリエチレンとポリ塩化ビニルとが混在する廃電
線ナゲット処理材を分別処理するには、ナゲット処理に
より粉砕された被覆廃材砕片（以下被分別材料という）
をホッパー１に投入する。ホッパー１に投入した被分別
材料を所定の量づつフィーダー３へ落とし、フィーダー
３にて水と馴染ませる。被分別材料は水との馴染みが悪
く、水に馴染む前は水に浮くため、フィーダー３にて水
と馴染ませ、水に良く濡らすようにする。水に濡れた被
分別材料はフィーダー内蔵のスクリューにより運ばれて
水槽５に落とされる。水槽５に入った被分別材料は水槽
の傾斜の上側に向けて噴出する水の水圧と、水槽の振動
とにより重い銅は水槽の底板に沿って上流側に移動し、
比較的軽いプラスチック類は水中を浮遊し水流により下
流側に移動して銅とプラスチック類とに分離される。

【００１２】水中を浮遊しつつ下流側に移動するプラス
チック類は、水槽５の振動により下流側に流されるに従
い比重差により重いものは水槽の底板側に、軽いものは
水に浮くような状態で上方に移動して、水槽出口近傍で
はそれぞれの比重により層状に分離かれた状態となり、
上方に浮いた軽いものは上側の排出口１４から、中間に
位置する層のものは中間の排出口１５から、下に沈んだ
ものは下方の排出口１６からそれぞれ排出される。

【００１３】それぞれの排出口から排出された被分別材
料につき分析した結果、上側排出口１４から排出された
（比重の軽い）被分別材料は、比重が０．９２〜０．９
５のポリエチレンが大部分であり銅は含まれていなかっ
た。中間の排出口１５から排出された被分別材料は比重
が１．４程度のポリ塩化ビニルが主であり、この被分別
廃材中にも銅は含まれていなかった。下側の排出口１６
から排出された（比重の重い）被分別材料は比重が２〜
６の銅を含むプラスチック廃材であった。

【００１４】湿式分別に使用する水は、添加物のない水
を使用することもできるが、少量の界面活性剤を添加す
ると被覆廃材粉砕片から銅を分離し易くなり、効果的に
銅の分離作業を行うことができる。界面活性剤としては
任意のものが使用できる。また、添加量としては、界面
活性剤の種類にもよるが、０．１〜２．０％程度添加す
るとよい。添加量が０．１％以下では界面活性剤を添加
した効果がそれほど現れず、また、２．０％以上添加し
ても効果は飽和し、寧ろ不経済となり、また、排水処理
の問題も生じてくるため好ましくない。

【００１５】以下、本発明を実施例により詳細に説明す
る。

【実施例１】ポリエチレン粉砕片２５％、ポリ塩化ビニ
ル粉砕片７５％からなるプラスチック粉砕片に対して銅
砕片を５％混入した被分別材料のサンプルを作成し、図
１に示す湿式比重差分別装置のホッパー１に投入し、湿
式比重差分別を実施した。水槽５の下流には上下２つの
排出口を設け、傾斜角度を２°、振動数を４５Ｈｚにセ
ットした。被分別材料をフィーダー３にて十分に濡らし
た後、振動している水槽５に供給し、水噴射装置から水
を噴射しつつ分別作業を行い、それぞれの排出口から排
出された被分別材料につき分析を行った。その結果、上
側排出口から排出された材料はポリエチレンが９５〜１
００％、ポリ塩化ビニルが５〜０％であり、銅は含まれ
ていなかった。下側の排出口から排出された材料はポリ
塩化ビニルが９０〜１００％で、ポリエチレンが１０〜
０％であり、銅は含まれていなかった。

【００１６】

【実施例２】廃棄されたポリエチレン被覆電線を２５
％、廃棄されたポリ塩化ビニル被覆電線を７５％の割合
で混ぜてナゲット処理し、先ず乾式比重差分別法にて銅
と被覆材とに分別し、次いで、被覆材を図１に示す湿式
比重差分別装置のホッパー１に投入し、湿式比重差分別
を行った。使用した水槽５の下流に設ける排出口を上、
中、下の３ヵ所とした他は実施例１と同一条件で分別作
業を実施した。上流側から排出された材料の銅の含有率
は９５〜１００％で、銅に少量のプラスチックが付着し
たものが混在していた。下流側排出口から排出された材
料は、上側排出口からのものはポリエチレンが９５〜１
００％、ポリ塩化ビニルが５〜０％であり、銅は含まれ
ていなかった。中間の排出口から排出された材料はポリ
塩化ビニルが９５〜１００％で、ポリエチレンが５〜２
％、銅が少量付着したポリエチレンが２〜０％であり、
下側の排出口から排出された材料はプラスチックと銅が
分離していないもの（ミスカット材）が８０％以上であ
った。

【００１７】水槽の下側排出口から排出された材料は再
度粉砕機にかけて銅とプラスチック廃材とに分離して湿
式比重差分別装置に供給することにより銅とプラスチッ
クとに分離し、銅を含まない、あるいは極少量の銅を含
むプラスチック廃材として再処理（リサイクル）工程へ
と回すことができる。

【００１８】本発明は、プラスチック被覆電線廃材を銅
とプラスチック材、更にはプラスチックの種類にまで分
別しうるので、ポリエチレン材は石油代替エネルギーと
して、ポリ塩化ビニルは高炉用原料等として再利用が可
能となる。また、分別された廃材には銅が殆ど含まれな
いので埋立廃棄しても土壌汚染を引き起こすことがな
い。

【００１９】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
廃電線の被覆廃材から銅を殆ど除去することができ、ま
た、被覆材の種類による分別が極めて容易となる。従っ
て、被覆廃材を石油代替エネルギー等として再利用で
き、或いは埋立廃棄するに際しても土壌の重金属汚染を
懸念することなく廃棄できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明で使用する湿式比重差分別装置の一実施
形態を示す説明図である。

【符号の説明】

１ ホッパー ３ フィーダー ５ 水槽（トラフ） ７ 水噴射装置 １１ 銅排出口 １３ 排出口 １７ シリンダー １９ 振動装置

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 粉砕したプラスチック被覆電線廃材を傾
   斜する水槽に水とともに供給し、該水槽を振動させて上
   流側に銅を移動させ、下流側にプラスチック廃材を移動
   させて分別する湿式比重差分別装置において、水槽の下
   流側プラスチック廃材排出口を上下に２つ以上設けたこ
   とを特徴とする電線被覆廃材の湿式比重差分別装置。
2. 【請求項２】 粉砕したプラスチック被覆電線廃材を水
   槽に供給するホッパーと水槽との間に、前記廃材を水に
   濡らすフィーダーを設けてなることを特徴とする請求項
   １に記載の電線被覆廃材の湿式比重差分別装置。
3. 【請求項３】 ポリエチレン絶縁電線とポリ塩化ビニル
   絶縁電線とが混入した廃電線をナゲット処理後、請求項
   １または２に記載の湿式比重差分別装置の水槽に水とと
   もに供給し、該水槽を振動させて上流側に銅を移動さ
   せ、下流側にポリエチレンとポリ塩化ビニルを移動さ
   せ、かつ水槽の下流側でポリエチレンとポリ塩化ビニル
   とを比重差により分別し、ポリエチレンをプラスチック
   廃材排出口の上側出口から、ポリ塩化ビニルを下側出口
   からそれぞれ排出させることを特徴とする電線被覆廃材
   の湿式比重差分別装置。
4. 【請求項４】 ポリエチレン絶縁電線とポリ塩化ビニル
   絶縁電線とが混入した廃電線をナゲット処理後、請求項
   １または２に記載の湿式比重差分別装置の水槽に水とと
   もに供給し、該水槽を振動させて上流側に銅を移動さ
   せ、下流側にポリエチレンとポリ塩化ビニルを移動さ
   せ、かつ水槽の下流側で銅を含むプラスチックとポリエ
   チレンとポリ塩化ビニルとを比重差により分別し、ポリ
   エチレンをプラスチック廃材排出口の上側出口から、ポ
   リ塩化ビニルを中間出口から、銅を含むプラスチックを
   プラスチック下側出口から、それぞれ排出させることを
   特徴とする電線被覆廃材の湿式比重差分別装置。