JP2000309848A - 疲労特性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
疲労特性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
製造方法を提供する。 【解決手段】 C:0.03〜0.20%、Cu:0.
2〜2.0%、B:2〜20ppmを含むフェライトを
主相とし、マルテンサイトおよびベイナイトを第二相と
する複合組織鋼板であり、フェライト相でのCuの存在
状態は、Cu単独で構成される粒子の大きさが2nm以
下の固溶状態および/または析出状態であることを特徴
とする疲労特性に優れた加工用熱延鋼板、および上記成
分の鋼を、Ar3 変態点以上の温度域で熱間仕上圧延を
終了し、Ar3 変態点からAr1 変態点までの温度域で
1〜10秒間滞留し、その後、20℃/s以上の冷却速
度で冷却して、350℃以下の巻取温度で巻き取ること
を特徴とする上記鋼板の製造方法。
Description
加工用熱延鋼板およびその製造方法に関するものであ
り、特に、自動車の足廻り部品やロードホイール等の耐
久性と加工性の両立が求められる素材として好適な疲労
特性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法に関す
るものである。
量化を目的として、Al合金等の軽金属や高強度鋼板の
自動車部材への適用が進められている。ただ、Al合金
等の軽金属は、比強度が高いという利点があるものの、
鋼に比較して著しく高価であるため、その適用は特殊な
用途に限られてきた。より広い範囲で自動車の軽量化を
推進するためには、安価な高強度鋼板の適用が強く求め
られている。一般に、材料は、高強度になるほど延性が
低下して加工性(成形性)が悪くなるばかりでなく、切
り欠き感受性も高くなる。そのため、複雑な形状をして
いる自動車の足廻り部品等への高強度鋼板の適用にあた
っては、その成形性だけでなく、疲労耐久性も重要な検
討課題となる。
に、低降伏比でかつ延性の優れた高強度鋼板を、フェラ
イトとマルテンサイトを主体とするミクロ組織で得る発
明が、例えば、特開昭58−6937号公報や特開昭6
0−121225号公報等で開示されている。また、特
に、伸びフランジ性(穴拡げ性)の優れた高強度鋼板
を、フェライトとベイナイトを主体とするミクロ組織で
得る発明が、例えば、特開昭57−145965号公報
や特開昭61−96057号公報等で開示されている。
さらにまた、これらの特性を兼ね備えた高強度鋼板を、
フェライト、ベイナイトとマルテンサイトを主体とする
ミクロ組織で得る発明が、例えば、特開平3−2646
45号公報、特開平3−264646号公報、特開平3
−277740号公報等で開示されている。
しては、特開平4−337026号公報、特開平6−1
45792号公報、特開平8−60240号公報等で、
疲労特性を向上させるために特定の添加元素に注目し
て、Pの固溶強化および/またはCuの析出強化を利用
する発明が開示されている。すなわち、上記の特開平4
−337026号公報には、フェライト結晶粒のサイズ
を最適化し、第二相であるマルテンサイト、ベイナイト
およびオーステナイトの体積分率を最適化して下限界応
力拡大係数範囲を高め、Pの固溶強化とCuの析出強化
によって疲労限度比を向上させる技術が開示されてい
る。
は、ミクロ組織をフェライト、ベイナイトおよびマルテ
ンサイトの三相とし、それぞれの相の体積分率を規定し
て強度と伸びフランジ性を確保するとともに、Cuの析
出強化によって疲労特性を向上させる技術が開示されて
いる。さらに、特開平8−60240号公報では、ミク
ロ組織をフェライト、ベイナイトおよびマルテンサイト
の三相とし、それぞれの相の体積分率を規定して強度延
性バランスを確保し、巻取温度を400℃以上としてC
uの析出強化によって疲労特性を向上させる技術が開示
されている。
ホィールのディスク等の一部の部品においては、伸び、
低降伏比等の加工性とともに疲労耐久性が大変に重要で
あり、上記従来技術では、満足する特性が得られないと
いわざるを得ない。すなわち、上記特開平4−3370
26号公報に記載の発明では、結晶粒界に偏析し粒界脆
化を引き起こすPが0.03〜0.15%添加されるこ
とが必須であるため、疲労破壊の起点となる粒界破壊が
起こった場合、疲労特性が著しく劣化する可能性があ
る。
を抑制するBの添加については何も記載されていない。
また、上記特開平6−145792号公報に記載の発明
では、Siの添加が1.5%以上に限定されているた
め、鋼板の表面性状が悪くなり疲労強度が低下する可能
性がある。さらに、上記特開平8−60240号公報に
記載の発明では、巻取温度を400℃以上と規定してい
るため、ミクロ組織に多量のベイナイトやパーライトが
生成し、十分なマルテンサイトを得られず低降伏比でな
いばかりか、十分な疲労限度比が得られない。そこで、
本発明は、疲労特性と加工性を両立させるための鋼板特
性とその製造方法を明らかにして、上記従来技術の課題
を有利に解決できる、疲労特性に優れた加工用熱延鋼板
およびその製造方法を提供することを目的とするもので
ある。
に採用されている連続熱間圧延設備により工業的規模で
生産されている熱延鋼板の製造プロセスを念頭におい
て、熱延鋼板の疲労特性と加工性の両立を達成すべく鋭
意研究を重ねた。その結果、固溶しているCuもしくは
Cu単独で構成される粒子サイズが2nm以下のCu析
出物が疲労特性向上に非常に有効であり、かつ加工性も
損なわないことを見出し、本発明をなしたものである。
いて説明する。まず、フェライト相におけるCu単独で
構成される粒子サイズの疲労特性に及ぼす効果について
の調査を行った。そのための供試材は、次のようにして
準備した。すなわち、0.05%C−1.0%Si−
1.4%Mn−1.0%Cu−0.5%Ni−0.00
03%Bに成分調整し溶製した鋳片を熱間圧延して常温
で巻き取った鋼板を、100〜600℃で1時間等温保
持した後、炉冷する熱処理を施し、ミクロ組織が、フェ
ライトを主相とし、マルテンサイトおよびベイナイトを
第二相とする複合組織を有し、フェライト相におけるC
u単独で構成される粒子のサイズを変化させた鋼板を得
た。なお、ここでの第二相は、主としてマルテンサイト
およびベイナイトであるが、一部残留オーステナイトを
含むことも許容されるものである。
果を、図1に示す。この結果より、フェライト相とマル
テンサイト相およびベイナイトからなり、一部残留オー
ステナイトを含む複合組織からなる鋼板において、その
フェライト相におけるCu単独で構成される粒子の平均
サイズと疲労限度比には強い相関があり、フェライト相
におけるCu単独で構成される粒子の平均サイズが2n
m以下で疲労限度比が著しく向上することを新規に知見
した。
が、固溶しているCuもしくはCu単独で構成される粒
子サイズが2nm以下のCu析出物はフェライトにおい
て繰返し荷重下での交差すべりを抑制し、繰返し荷重に
よる表面のすべりステップの形態を粗で深い状態から密
で浅い状態に変化させ、そこでの応力集中が緩和される
ために疲労き裂の発生抵抗を向上させると推測される。
また、熱間圧延条件等を制限することによって、フェラ
イト相におけるCu単独で構成される粒子の平均サイズ
が2nm以下という鋼板を製造できることも新たに知見
した。
いての調査を行った。そのための供試材は、次のように
して準備した。すなわち、0.05%C−1.0%Si
−1.4%Mn−0.5%Ni鋼をベースにして、1.
0%のCuを添加した鋼とCuを添加しない鋼に、さら
に、B含有濃度を変化させた鋼を成分調整し溶製した鋳
片を、熱間圧延して常温で巻き取り、ミクロ組織が、フ
ェライトを主相とし、マルテンサイトおよびベイナイト
を第二相とする複合組織を有する鋼板を得た。これらの
鋼板について疲労試験を行った結果を、図2に示す。こ
の結果より、1.0%のCuを添加した鋼に限り、B含
有濃度と疲労限度比に強い相関があり、さらに、Bの含
有濃度が2ppm以上で疲労限度比が著しく向上するこ
とを新規に知見した。
は、JIS Z 2201記載の5号試験片にて、JI
S Z 2241記載の試験方法で測定した。また、鋼
板の疲労特性は、図3に示すような板厚3.0mm、長
さ98mm、幅38mm、最小断面部の幅が20mm、
切り欠きの曲率半径が30mmである疲労試験片を用
い、完全両振りの平面曲げ疲労試験によって得られた2
×106回での疲労強度σWを鋼板の引張り強さσBで
除した値(疲労限度比σW/σB)で評価した。
成される粒子は、供試鋼の1/4厚のところから透過型
電子顕微鏡サンプルを採取し、エネルギー分散型X線分
光(Energy Dispersive X−ray
Spectroscope:EDS)や電子エネルギ
ー損失分光(Electron Energy Los
s Spectroscope:EELS)の組成分析
機能を加えた、200kVの加速電圧の電界放射型電子
銃(Field Emission Gun:FEG)
を搭載した透過型電子顕微鏡によって観察した。観察さ
れる粒子の組成は、上記EDSおよびEELSによりC
u単独であることを確認した。また、本願で規定するフ
ェライト相におけるCu単独で構成される粒子のサイズ
は、観察される粒子のサイズをそれぞれ測定したものの
その一視野での平均の値である。
で、その要旨は、以下の通りである。 (1)質量%にて、C:0.03〜0.20%、Si:
0.1〜1.4%、Mn:0.5〜3.0%、P:≦
0.02%、S:≦0.01%、Al:0.005〜
0.1%、Cu:0.2〜2.0%、B:0.0002
〜0.0020%を含み、残部がFe及び不可避的不純
物からなる鋼であって、そのミクロ組織が、フェライト
を主相とし、マルテンサイトおよびベイナイトを第二相
とする複合組織であり、フェライト相におけるCuの存
在状態は、Cu単独で構成される粒子の大きさが2nm
以下の固溶状態および/または析出状態であることを特
徴とする、疲労特性に優れた加工用熱延鋼板。
i:0.1〜1.0%を含有することを特徴とする、上
記(1)に記載の疲労特性に優れた加工用熱延鋼板。 (3)前記鋼が、さらに、質量%にて、Ca:0.00
5〜0.02%、REM:0.005〜0.2%の一種
または二種を含有することを特徴とする、上記(1)ま
たは(2)に記載の疲労特性に優れた加工用熱延鋼板。 (4)前記鋼が、さらに、質量%にて、Mo:0.05
〜1.0%、V:0.02〜0.2%、Ti:0.01
〜0.2%、Nb:0.01〜0.1%、Cr:0.0
1〜1.0%、Zr:0.02〜0.2%の一種または
二種以上を含有することを特徴とする、上記(1)ない
し(3)いずれか1項に記載の疲労特性に優れた加工用
熱延鋼板。
1項に記載の成分を有する鋼片の熱間圧延に際し、Ar
3 変態点以上で熱間仕上圧延を終了した後、Ar3 変態
点からAr1 変態点までの温度域で1〜10秒間滞留
し、その後、20℃/s以上の冷却速度で冷却して、3
50℃以下の巻取温度で巻き取り、ミクロ組織が、フェ
ライトを主相とし、マルテンサイトおよびベイナイトを
第二相とする複合組織であり、フェライト相におけるC
uの存在状態は、Cu単独で構成される粒子の大きさが
2nm以下の固溶状態および/または析出状態である鋼
板を得ることを特徴とする疲労特性に優れた加工用熱延
鋼板の製造方法。 (6)前記熱間圧延に際し、粗圧延終了後、高圧デスケ
ーリングを行ない、Ar 3 変態点以上で熱間仕上圧延を
終了することを特徴とする前記(5)記載の疲労特性に
優れた加工用熱延鋼板の製造方法にある。
まず、本発明の鋼板のミクロ組織およびCuの存在状態
について説明する。鋼板のミクロ組織は、優れた加工性
を確保するために、フェライトを主相とし、マルテンサ
イトおよびベイナイトを第二相とする複合組織とする。
ただし、第二相には一部残留オーステナイトを含むこと
を許容するものである。なお、良好な加工性を保証する
良好な延性を確保するためには、フェライトの体積分率
が50%以上でかつベイナイトおよび残留オーステナイ
トの体積分率の合計が40%以下が好ましい。また、7
0%以下の低降伏比を得るために、さらに好ましくは2
5%以下である。ここで、フェライト、ベイナイトおよ
び残留オーステナイトの体積率とは鋼板の圧延方向断面
厚みの1/4厚における光学顕微鏡で200〜500倍
で観察されたミクロ組織中のそれらの組織の面積分率で
定義される。
態は、Cu単独で構成される粒子の大きさが2nm以下
の固溶状態および/または析出状態とする。これによ
り、加工性の劣化につながる静的強度の上昇を抑えつ
つ、すなわち、フェライトとマルテンサイトの複合組織
鋼板の優れた加工性を損なうことなく、疲労特性を向上
させることができる。一方、フェライト相におけるCu
単独で構成される粒子の大きさが2nm超であると、C
uの析出強化により鋼板の静的強度が著しく上昇するた
め、加工性が著しく劣化することになる。また、このよ
うなCuの析出強化では、疲労限は静的強度の上昇ほど
には向上しないので疲労限度比が低下してしまう。その
ため、フェライト相におけるCu単独で構成される粒子
の大きさは、2nm以下とする必要がある。
て説明する。Cは、0.20%超含有していると加工性
及び溶接性が劣化するので、0.20%以下とする。ま
た0.03%未満であると組織中のマルテンサイトおよ
びベイナイトの体積率が減少し、強度が低下するので
0.03%以上とする。Siは、フェライト変態の促進
と未変態オーステナイト中のC濃度をあげて複合組織を
生成する効果がある。ただし、0.1%未満では、その
効果が失われ、1.4%超添加するとスケールの性状が
悪くなるため表面性状が劣化して圧延ままでの疲労特性
が低下する。そこで、Siの含有量は0.1%以上、
1.4%以下とする。
サイトおよびベイナイトを得るために、0.5%以上必
要である。また、3.0%超添加するとスラブ割れを生
ずるため、3.0%以下とする。Pは、0.02%超添
加すると加工性や溶接性に悪影響を及ぼすだけでなく、
粒界に偏析して粒界強度を低下させ粒界脆化を起こすの
で、0.02%以下とする。Sは、多すぎると熱間圧延
時の割れを引き起こすので極力低減させるべきである
が、0.01%以下ならば許容できる範囲である。
上添加する必要があるが、あまり多量に添加すると、非
金属介在物を増大させ伸びを劣化させるだけでなく、コ
ストの上昇を招くため、その上限を0.1%とする。C
uは、本発明の最も重要な元素一つであり、固溶もしく
は2nm以下の粒子サイズに析出させることにより疲労
特性を改善する効果がある。ただし、0.2%未満で
は、その効果は少なく、2.0%を超えて添加しても効
果が飽和するので、0.2〜2.0%と添加範囲を限定
する。
り、Cuと複合添加されることによって疲労限を上昇さ
せる効果がある。ただし、0.0002%未満ではその
効果を得るために不十分であり、0.0020%超添加
するとスラブ割れが起こる。よって、Bの添加は、0.
0002%以上、0.0020%以下とする。Niは、
Cu含有による熱間脆性防止のために添加する。ただ
し、0.1%未満ではその効果が少なく、1.0%を超
えて添加してもその効果が飽和するので、0.1〜1.
0%とする。
り、加工性を劣化させる非金属介在物の形態を変化させ
て無害化する元素である。ただし、0.005%未満添
加してもその効果がなく、Caならば0.02%超、R
EMならば0.2%超添加してもその効果が飽和するの
でCa:0.005〜0.02%、REM:0.005
〜0.2%とする。さらに、強度を付与するために、M
o、V、Ti、Nb、Cr、Zrの析出強化もしくは固
溶強化元素の一種または二種以上を添加しても良い。た
だし、それぞれ、0.05%、0.02%、0.01
%、0.01%、0.01%、0.02%未満ではその
効果を得ることができない。また、それぞれ、1.0
%、0.2%、0.2%、0.1%、1.0%、0.2
%を超え添加してもその効果は飽和する。
て、以下に詳細に述べる。本発明では、目的の成分含有
量になるように成分調整した溶鋼を鋳込むことによって
得たスラブを、高温鋳片のまま熱間圧延機に直送しても
よいし、室温まで冷却後に加熱炉にて再加熱した後に熱
間圧延してもよい。再加熱温度については特に制限はな
いが、1350℃以上であると、スケールオフ量が多量
になり歩留まりが低下するので、再加熱温度は1350
℃未満が望ましい。熱間圧延工程は、粗圧延を終了後、
仕上げ圧延を行うが、最終パス温度(FT)がAr3 変
態点以上の温度域で終了する必要がある。これは、熱間
圧延中に圧延温度がAr3 変態点を切るとフェライト粒
にひずみが残留して延性が低下するためである。
グを行う場合は、鋼板表面での高圧水の衝突圧P(MP
a)×流量L(リットル/cm2)≧0.0025の条
件を満たすことが好ましい。鋼板表面での高圧水の衝突
圧Pは以下のように記述される。(「鉄と鋼」1991
vol.77 No.9 p1450参照) P(MPa)=5.64×P0 ×V/H2 ただし、 P0(MPa):液圧力 V(リットル/min):ノズル流液量 H(cm):鋼板表面とノズル間の距離
いる幅 v(cm/min):通板速度
yが15μm(15μmRy,l2.5mm,ln1
2.5mm)以下であることが好ましい。これは、例え
ば金属材料疲労設計便覧、日本材料学会編、84ページ
に記載されている通り熱延または酸洗のままの鋼板の疲
労強度は鋼板表面の最大高さRyと相関があることから
明らかである。また、その後の仕上げ圧延はデスケーリ
ング後に再びスケールが生成してしまうのを防ぐために
5秒以内に行うのが望ましい。
r3 変態点からAr1 変態点までの温度域(フェライト
とオーステナイトの二相域)で1〜10秒間滞留する。
ここでの滞留は、二相域でフェライト変態を促進させる
ために行うが、1秒未満では、二相域におけるフェライ
ト変態が不十分なため、十分な延性が得られない。一
方、10秒超では、パーライトが生成し、目的とするフ
ェライトを主相とし、マルテンサイトおよびベイナイト
を第二相とするミクロ組織が得られない。また、1〜1
0秒間の滞留をさせる温度域はフェライト変態を容易に
促進させるためAr1 変態点以上800℃以下が望まし
く、そのためには、仕上げ圧延終了後20℃/s以上の
冷却速度で当該温度域に迅速に到達させることが好まし
い。
では20℃/s以上の冷却速度で冷却するが、20℃/
s未満の冷却速度では、パーライトもしくは多量のベイ
ナイトが生成してしまい十分なマルテンサイトが得られ
ず目的とするフェライトを主相とし、マルテンサイトお
よびベイナイトを第二相とするミクロ組織が得られな
い。巻取温度が350℃超では、多量のベイナイトが生
成して十分なマルテンサイトが得られず目的とするフェ
ライトを主相とし、マルテンサイトおよびベイナイトを
第二相とするミクロ組織が得られないだけでなく、巻き
取り後に静的強度における析出強化能が大きいサイズの
Cuの析出が起こる恐れがあるため、巻取温度は、35
0℃以下と限定する。また、巻取温度の下限値は特に限
定する必要はないが、コイルが長時間水濡れの状態にあ
ると錆による外観不良が懸念されるため、50℃以上が
望ましい。
る。表1に示す化学成分を有するA〜Zの鋼は、転炉に
て溶製して、連続鋳造後、表2に示す加熱温度(SR
T)で再加熱し、粗圧延後に同じく表2に示す仕上げ圧
延温度(FT)で1.2〜5.4mmの板厚に圧延した
後、表2に示す時間で滞留後、表2に示す冷却速度(C
R)で冷却し巻取温度(CT)でそれぞれ巻き取った。
なお一部については粗圧延後に高圧デスケーリングを行
った。ただし、表中の化学組成についての表示は質量%
である。
は、供試材を、まず、JIS Z2201記載の5号試
験片に加工し、JIS Z 2241記載の試験方法に
従って行った。表2にその試験結果を示す。鋼板圧延方
向断面厚みの1/4厚を光学顕微鏡で200〜500倍
で観察した組織の体積率を合わせて表2に示す。さら
に、図3に示すような長さ98mm、幅38mm、最小
断面部の幅が20mm、切り欠きの曲率半径が30mm
である平面曲げ疲労試験片にて、完全両振りの平面曲げ
疲労試験を行った。鋼板の疲労特性は、2×106回で
の疲労強度σWを鋼板の引張り強さσBで除した値(疲
労限度比σW/σB)で評価した。
成される粒子は、供試鋼の1/4厚のところから透過型
電子顕微鏡サンプルを採取し、エネルギー分散型X線分
光(EDS)や電子エネルギー損失分光(EELS)の
組成分析機能を加えた、200kVの加速電圧の電界放
射型電子銃(FEG)を搭載した透過型電子顕微鏡によ
って観察した。観察される粒子の組成は、上記EDSお
よびEELSによりCu単独であることを確認した。ま
た、本願で規定するフェライト相におけるCu単独で構
成される粒子のサイズは、観察される粒子のサイズをそ
れぞれ測定したもののその一視野での平均の値である。
B−1、C−1、D−1、F−1、H−1、I−1、J
−1、J−2、J−4、K−1、L−2、N−1、P−
1、R−1、S−1、T−1、W−1、X−1、Z−1
の21鋼であり、主相であるフェライトにおけるCu単
独で構成される粒子の大きさが2nm以下である疲労特
性に優れた加工用熱延鋼板が得られている。
明の範囲外である。すなわち、鋼A−2は、仕上圧延終
了温度(FT)が本発明の範囲外であるのでフェライト
粒にひずみが残留して延性が低下するたけでなく低降伏
比(YR)も得られていない。鋼A−3は、熱間圧延後
の巻取温度(CT)が本発明の範囲外であるので目的と
する第二相のマルテンサイトを十分に得られない。ま
た、Cu単独で構成される粒子の大きさが2nm以上に
なる。そのため十分な疲労限度比(σW/σB)が得ら
れていない。鋼A−5は、滞留後の冷却速度(CR)が
本発明の範囲外であるのでパーライトが生成してしまい
目的とするフェライトを主相とし、マルテンサイトおよ
びベイナイトを第二相とするミクロ組織が得られず低降
伏比(YR)で十分な疲労限度比も得られていない。
であるのでPが粒界に偏析して粒界強度を低下させるた
め十分な疲労限度比が得られていない。鋼G−1は、C
uの含有量が本発明の範囲外であるので疲労特性を改善
する効果が少なく十分な疲労限度比が得られていない。
鋼J−3および鋼L−1は、仕上圧延後の滞留時間が本
発明の範囲外であるので目的とするフェライトを主相と
し、マルテンサイトおよびベイナイトを第二相とするミ
クロ組織が得られず低降伏比で十分な疲労限度比も得ら
れていない。鋼M−1は、Bの含有量が本発明の範囲外
であるのでCuと複合添加されることで発現する疲労特
性向上効果を得ることができず十分な疲労限度比も得ら
れていない。
明の上限を超えているのでスケールの性状が悪くなり表
面性状が劣化するため十分な疲労限度比が得られていな
い。鋼U−1は、Siの含有量が本発明の下限を割って
いるのでフェライト変態の促進効果と未変態オーステナ
イト中へのC元素の濃化による複合組織の生成効果が得
られず目的とするフェライトを主相とし、マルテンサイ
トおよびベイナイトを第二相とするミクロ組織が得られ
ず十分な疲労限度比も得られていない。鋼V−1は、M
nの含有量が本発明の範囲外であるので目的とする第二
相のマルテンサイトを十分に得られず低降伏比も得られ
ていない。鋼Y−1は、Cの含有量が本発明の範囲外で
あるのでミクロ組織中のマルテンサイトの体積率が十分
でなく低降伏比で十分な疲労限度比も得られていない。
性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法を提供す
るものであり、これらの熱延鋼板を用いることにより、
伸びを始めとする加工性を十分に確保しつつ疲労特性の
大幅な改善が期待できるため、本発明は、工業的価値が
高い発明であると言える。
成される粒子の大きさと疲労限度比の関係で示す図であ
る。
と疲労限度比の関係で示す図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 質量%にて、 C:0.03〜0.20%、 Si:0.1〜1.4%、 Mn:0.5〜3.0%、 P:≦0.02%、 S:≦0.01%、 Al:0.005〜0.1%、 Cu:0.2〜2.0%、 B:0.0002〜0.0020%を含み、残部がFe
及び不可避的不純物からなる鋼であって、そのミクロ組
織が、フェライトを主相とし、マルテンサイトおよびベ
イナイトを第二相とする複合組織であり、フェライト相
におけるCuの存在状態は、Cu単独で構成される粒子
の大きさが2nm以下の固溶状態および/または析出状
態であることを特徴とする、疲労特性に優れた加工用熱
延鋼板。 - 【請求項2】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Ni:0.1〜1.0% を含有することを特徴とする、請求項1に記載の疲労特
性に優れた加工用熱延鋼板。 - 【請求項3】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Ca:0.005〜0.02%、 REM:0.005〜0.2%の一種または二種を含有
することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載
の疲労特性に優れた加工用熱延鋼板。 - 【請求項4】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Mo:0.05〜1.0%、 V:0.02〜0.2%、 Ti:0.01〜0.2%、 Nb:0.01〜0.1%、 Cr:0.01〜1.0%、 Zr:0.02〜0.2%の一種または二種以上を含有
することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいず
れか1項に記載の疲労特性に優れた加工用熱延鋼板。 - 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれか1項
に記載の成分を有する鋼片の熱間圧延に際し、Ar3 変
態点以上で熱間仕上圧延を終了した後、Ar 3 変態点か
らAr1 変態点までの温度域で1〜10秒間滞留し、そ
の後、20℃/s以上の冷却速度で冷却して、350℃
以下の巻取温度で巻き取り、ミクロ組織が、フェライト
を主相とし、マルテンサイトおよびベイナイトを第二相
とする複合組織であり、フェライト相におけるCuの存
在状態は、Cu単独で構成される粒子の大きさが2nm
以下の固溶状態および/または析出状態である鋼板を得
ることを特徴とする疲労特性に優れた加工用熱延鋼板の
製造方法。 - 【請求項6】 前記熱間圧延に際し、粗圧延終了後、高
圧デスケーリングを行ない、Ar3 変態点以上で熱間仕
上圧延を終了することを特徴とする請求項5記載の疲労
特性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法。
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