JP2000290170A - 癌細胞増殖抑制性ハイブリッド型リポソーム製剤 - Google Patents

癌細胞増殖抑制性ハイブリッド型リポソーム製剤

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い癌細胞増殖抑制能を有し、毒性および免
疫原性の低い、調製が容易で経時変化の少ない安定な抗
腫瘍性リポソームを提供する。 【解決手段】 本発明により、抗癌剤を含まない抗腫瘍
性の、毒性の極めて低い、調製が容易で安定な2成分系
および3成分系ハイブリッド型リポソームが提供され
る。本発明の2成分系ハイブリッド型リポソームは、リ
ン脂質としてジミストイルホスファチジルグリセロール
(DMPG)を含み、本発明の3成分系ハイブリッド型リポ
ソームは、さらにアルキル化糖などの糖成分を含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はリン脂質および界面
活性剤、または、更に糖ミセルを含む癌細胞増殖抑制性
ハイブリッド型リポソーム製剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来化学療法剤としてはアルキル化剤、
代謝拮抗剤、ホルモン類等が用いられてきた。しかしな
がら、これらの薬剤は細胞毒性が強く、重大な副作用が
あり、また一般には特定の癌組織に対する特異性が低
い。毒性が低く、特定の組織に集まりやすいと考えられ
ているものにリポソームがあり、細胞膜のリン脂質と類
似した成分を含むために種々の生理活性物質のキャリア
ーとして有望と考えられている。一方、リン脂質からな
る単一成分のリポソームは不安定で経時変化が大きく水
に対する溶解性も不十分であり、調製も複雑であった。
この点に関して、本発明者等はリン脂質と界面活性剤を
含む、安定で調製容易なハイブリッド型リポソームが抗
癌剤等のキャリアーとして効果的に機能し、種々の制癌
剤をこれに含めることにより優れたドラッグデリバリー
システム(DSS)を提供し得ることを示してきた(特開
平8-151333号)。さらに、本発明者等は無毒性のジミリ
ストイルホスファチジルコリン(DMPC)と毒性が小さい
直鎖型ポリオキシエチレンアルキルエーテル(CmH2m+1O
(EO)nH)を含み、抗癌剤を含まない2成分系ハイブリッ
ド型リポソーム自体にリンパ系の培養癌細胞に対する増
殖抑制効果があることを見いだし、悪性黒色腫担癌マウ
スを用いたin vivo実験においてもある程度の延命効果
が見られることも明らかにした(C. Imamura, Y.Kemura,
Y. Matsumoto, R. Ueoka, Biol. Pharm. Bull., 20,11
19(1997); 金納明弘、児玉龍平,寺田安隆、松本陽子、
上岡龍一、Drug Delivery System, 13, 101(1998))。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
報告されているものよりも高い癌細胞増殖抑制能を有
し、毒性および免疫原性の低い、調製が容易で経時変化
の少ない安定なハイブリッド型リポソームを提供するこ
とである。本発明の別の目的は、免疫原性が低く、生分
解性の素材を利用した、効果的なドラッグデリバリーシ
ステム(DDS)を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明のハイブリッド型
リポソーム製剤は、高い癌細胞増殖抑制性を有し、毒性
が低く、経時変化の少ない2成分系、または3成分系ハ
イブリッド型リポソームを含むものである。また、本発
明の3成分系ハイブリッド型リポソームは免疫原性が低
く、生分解性である糖類を含むことを特徴とする。前述
のように、本発明者等はこれまでに1,3-ビス(2-クロロ
エチル)-1-ニトロソウレア(BCNU)等を含む2成分系
ハイブリッド型リポソームがラット脳腫瘍細胞に対して
増殖抑制効果を示し、in vivoにおいても抗腫瘍性を有
することを示し(特開平8-151333号)、更に研究を進め
る過程で、抗癌剤を含まないハイブリッド型リポソーム
も癌細胞増殖抑制効果を有することを発見し、これらの
ハイブリッド型リポソームについても報告してきた。本
発明はこれらの知見に基づいて開発された、更に高い癌
細胞増殖抑制効果を示す、抗癌剤を含まない、副作用の
極めて少ない癌治療用のハイブリッド型リポソームであ
る。
【0005】本発明の2成分系ハイブリッドリポソーム
製剤はリン脂質としてL-α-ジミリストイルホスファチ
ジルグリセロール(DMPG)と界面活性剤として非糖ミセル
系界面活性剤を含むことを特徴とする。DMPGは頭部に水
酸基を有しており、そのため癌細胞への特異的認識効果
が大きくなっているものと考えられる。3成分系ハイブ
リッド製剤はリン脂質、非糖ミセル系界面活性剤の他に
糖ミセル系界面活性剤を含むことを特徴とする。糖を第
3の成分に含むことにより、これらのハイブリッド型リ
ポソームは細胞膜表面への親和性が増大していると考え
られる。これら両タイプのリポソームとも、その成分比
または組成を変化させることにより目的に応じてそのサ
イズ、膜流動性、相転移温度および疎水性を制御するこ
とができる。本発明の2成分系ハイブリッド型リポソー
ムは適切な量のリン脂質、適切な量の非糖ミセル系界面
活性剤を緩衝水溶液中で超音波処理することによって得
られる。また、本発明の3成分系ハイブリッド型リポソ
ームは、前述のような超音波処理をした後、糖ミセルを
添加し、さらに超音波処理をすることによって調製する
ことができる。
【0006】ここで、「リポソーム」とは、生体膜の構
成成分であるリン脂質を水中に比較的低濃度で分散させ
たときに形成される閉鎖小胞体である。また、「ハイブ
リッド型リポソーム」とは、1種以上のリン脂質と1種
以上の界面活性剤、および必要に応じて更に他の成分を
含むリポソームをいう。本明細書において、1種以上の
リン脂質と1種以上の非糖ミセル系界面活性剤を含み、
糖ミセル系界面活性剤を含まないリポソームを特に「2
成分系ハイブリッド型リポソーム」と呼び、1種以上の
リン脂質と1種以上の非糖ミセル系界面活性剤と1種以
上の糖ミセル系界面活性剤を含むリポソームを特に「3
成分系ハイブリッド型リポソーム」と呼ぶことがある。
2成分系、3成分系いずれのハイブリッド型リポソーム
においても、抗癌剤等の1種以上の他の成分を更に含ん
でいてもよい。ここで「糖ミセル系界面活性剤」とはミ
セルを形成する界面活性剤のうち糖骨格を持つものをい
い、「非糖ミセル系界面活性剤」とはミセルを形成する
界面活性剤のうち糖骨格を持たないものをいう。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の2成分系ハイブリッド型
リポソームにおいてベシクルとして用いるのは以下の式
で表されるL-α-ジミリストイルホスファチジルグリセ
ロール(DMPG)である。
【0008】
【化1】
【0009】本発明で使用可能なミセル界面活性剤とし
ては、ミセルを形成できる界面活性剤であれば、何れも
使用することができる。このうち、非イオン界面活性剤
が好ましく、特に通常「ツイーン」の名称で販売されて
いる界面活性剤、例えば、ツイーン20〜ツイーン80等の
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、また
は、通常「スパン」の名称で販売されている界面活性
剤、例えば、スパン20〜スパン80等のソルビタン脂肪酸
エステル、または、以下の一般式(I)で表されるアルキ
ル若しくはアリールポリオキシエチレングリコール
【0010】
【化2】 (I) (式中n=10〜25、m=12〜20、Z=C1〜C12のアル
キル基)が好ましい。より具体的には、ポリキシエチレ
ンソルビタンモノラウレート(ツイーン20(Tween2
0))および、一般式(I)中、mが12〜14でかつnが10
〜23であるアルキルポリオキシエチレングリコールであ
る。特に好ましいのは、mが12または14でnが10または
12のポリオキシエチレングリコールである。
【0011】本発明の3成分系ハイブリッド型リポソー
ムにおいてはベシクル分子として1種以上のリン脂質を
用いる。使用できるリン脂質の例としては、L-α-ジア
シルホスファチジルコリン、L-α-ジアシルホスファチ
ジルグリセロール、L-α-ジアシルホスファチジルセリ
ン、L-α-ジアシルホスファチジルエタノールアミン、
スフィンゴミエリン、L-α-ジアシルホスファチジン
酸、L-α-ジアシルホスファチジルイノシトールおよび
カルジオリピン等が挙げられる。ここで、各2つのアシ
ル基は安定なハイブリッド型リポソームを形成する限り
同じであっても異なっていてもよく、アシル基部分の炭
素数は約10〜約22のものが好ましい。特に好ましいの
は、以下の式で表されるL-α-ジミリストイルホスファ
チルコリン(DMPC)または前述のDMPGである。
【0012】
【化3】 DMPC 3成分系ハイブリッド型リポソームに使用する非糖ミセ
ル系界面活性剤の例は2成分系と同じである。
【0013】本発明の3成分系ハイブリッド型リポソー
ムに使用する糖は、糖ミセル自身が細胞毒性を有しな
い、あるいは毒性が許容できる程度に弱く、また調製さ
れたハイブリッド型リポソームが安定であることを条件
として任意である。3成分系ハイブリッド型リポソーム
に使用する糖ミセル系界面活性剤の例としては、下記の
一般式(II)で表されるアルキルグルコシド、一般式
(III)で表されるアルキルチオグルコシド、下記の式
(IV)を有するガラクトセレブロシド、または糖部分が
グルコースであるグルコセレブロシドなどの単糖のほ
か、下記の一般式(V)で表されるアルキルマルトピラ
ノシド、一般式(VI)で表されるフルクトフラノシルア
ルキルグルコピラノシド、一般式(VII)で表されるア
ルキルラクトピラノシドなどの二糖、アミロース、イヌ
リンなどの多糖が挙げられる。これらの糖はα型、β型
の何れであってもよい。
【化4】 (II) (式中n=7〜17であり、---はα型またはβ型を意味
する。)
【化5】 (III) (式中、n=7〜17であり、---はα型またはβ型を意
味する。)
【化6】 (IV) (式中n=7〜17)、
【化7】 (V) (式中n=7〜17であり、---はα型またはβ型を意味
する。)
【化8】 (VI) (式中n=7〜17であり、---はα型またはβ型を意味
する。)
【化9】 (VII)
【0014】これらの糖ミセル系界面活性剤中、β-D-
フルクトフラノシル-α-D-グルコピラノシドが好まし
い。アルキル基はミセルを形成し得る限り分枝または非
分枝状でよく、炭素数はいずれの糖ミセル系界面活性剤
においても一般に8から18が好ましく、より好ましくは
8〜16、更に好ましくは8〜10である。特に好ましいの
は、β-D-フルクトフラノシル-α-D-グルコピラノシド
モノデカノエート(DeFG)(一般式(VI)中、n=8)およ
び、β-D-フルクトフラノシル-α-D-グルコピラノシド
モノドデカノエート(DoFG)(一般式(VI)中、n=10)で
ある
【0015】本発明の2成分系ハイブリッド型リポソー
ムにおけるDMPGリン脂質とミセル界面活性剤との使用量
はリポソームを形成することができる限り任意とするこ
とができるが、リン脂質濃度を1x10-5〜5x10-3M、
ミセル界面活性剤濃度を1x10- 6〜1x10-3Mとするのが
適切である。また、リン脂質とミセル界面活性剤との使
用比率は任意とすることができるが、リン脂質とミセル
界面活性剤とを50:50〜98:2(重量比)とするのがよ
く、70:30〜95:5とするのがより好ましい。本発明の3
成分系ハイブリッド型リポソームについても、リン脂
質、ミセル界面活性剤、糖ミセルの使用量は、リポソー
ムを形成することができる限り任意である。これら3成
分の比も2成分系ハイブリッドリポソームに準じた範囲
で任意に変更できるが、リン脂質と糖ミセルのみでは安
定なリポソームが形成されないことは注意を要する。
【0016】本発明の2成分系ハイブリッド型リポソー
ムは前述のようなリン脂質、非糖ミセル系界面活性剤を
前述したような適切な量と比率で緩衝水溶液中で混合
し、適切な温度にて比較的短時間超音波処理することに
よって得られる。また、本発明の3成分系ハイブリッド
型リポソームは、前述のような超音波処理をした後、糖
ミセルを添加し、さらに同様な条件で超音波処理をする
ことによって調製できる。緩衝水溶液としては、ハイブ
リッド型リポソームが形成される範囲で任意に選択でき
るが、生体と共存可能な緩衝水溶液、例えばpH7.0〜8.0
の範囲のリン酸緩衝液等を使用することが好ましく、具
体的にはPBS(リン酸緩衝生理食塩水)等を使用するこ
とができる。本発明の2成分系および3成分系ハイブリ
ッド型リポソーム製剤は癌患者に対して直接投与するこ
とができ、例えば、患者体重1kgあたり50〜300μg/1
日を腹腔内、静脈内投与することができる。
【0017】
【実施例】実施例1.2成分系ハイブリッド型リポソー
ムの調製 リン脂質であるDMPG(L-α-ジミリストイルホスファチ
ジルグリセロール)およ非糖ミセル系界面活性剤である
C12H25O(EO)10H(ポリオキシエチレンアルキルエーテ
ル、上述の一般式(I)においてm=12、n=10の場合
に相当する。以下においては、C12(EO)10と略記す
る。)を必要とする成分比に応じて一定量をとり、 BRA
NSONIC モデルB2210を用いて、90W、45℃にて窒素雰囲
気下、超音波処理し(5分間/5ml)、均一溶液が得ら
れたことを確認した後、孔径0.45μmのフィルターで濾
過滅菌して2成分系ハイブリッド型リポソームを調製し
た。
【0018】実施例2.3成分系ハイブリッド型リポソ
ームの調製 リン脂質としてL-α-ジミルストイルホスファチジルコ
リン(DMPC)を使用し、非糖ミセル系界面活性剤として
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween2
0)を用い、実施例1のようにして調製したハイブリッ
ド型リポソームに、最終成分比に応じて糖ミセル系界面
活性剤を添加した。使用した糖ミセル系界面活性剤は、
以下のものである。すなわち、β-D-フルクトフラノシ
ル-α-D-グルコピラノシドモノデカノエート(DeFG)
(同仁化学(株))、β-D-フルクトフラノシル-α-D-
グルコピラノシドモノドデカノエート(DoFG)(同仁化
学(株))、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド(OcGl
u)(同仁化学)、n-デシル-β-D-グルコピラノシド(DeG
lu)(シグマ)、n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド(Do
Glu)(シグマ)、n-オクチル-β-D-マルトピラノシド
(OcMal)(CALBIOCHEM)、n-デシル-β-D-マルトピラノ
シド(DeMal)(シグマ)、のn-ドデシル-β-D-マルトピ
ラノシド(DoMal)(シグマ)を使用した。これらの糖ミ
セル系界面活性剤の一定量を最終成分比に応じて加え、
更にBRANSONIC モデルB2210を用いて、90W、45℃にて
窒素雰囲気下、超音波処理し(3分間/5ml)、均一溶
液が得られたことを確認した後、孔径0.45μmのフィル
ターで濾過滅菌して3成分系ハイブリッド型リポソーム
を調製した。
【0019】実施例3. 2成分系および3成分系ハイ
ブリッド型リポソームの安定性 膜サイズの経時変化を測定することによって2成分系お
よび3成分系ハイブリッド型リポソームの安定性を調べ
た。ハイブリッド型リポソームの膜サイズは、サブミク
ロン・サイザー(BROKKHAVENBI-90)を用い、動的光散乱
法により測定した。光源としてHe-Neレーザーの632.8nm
の発振線を出力35 mWで用い、散乱角90°で測定し、得
られた拡散係数(D)から式(1)(Stokes-Einsteinの式)
に従い膜の直径dhyを求めた。 dhy = kT/3πηD (1) ここで、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、ηは溶媒
の粘度である。37℃にてインキュベーションしたハイブ
リッド型リポソームについてdhyの値を調製後0日〜35
日にわたって測定し、結果を記録した。2成分系ハイブ
リッド型リポソームDMPG/10mol%C12(EO)10は一定して
1ヶ月以上安定であった。この結果を図1に示した。3
成分系ハイブリッド型リポソームは、調製後1日目から
2日目にかけて急激なサイズの増加が観察されたが、3
日目以降はいずれのハイブリッド型リポソームも1ヶ月
以上にわたって安定であった。その結果を図2に示す
【0020】実施例4.2成分系および3成分系ハイブ
リッド型リポソーム膜の相転移温度 ハイブリッド型リポソームのゲル・液晶の相転移温度
(Tc)は、示差走査型熱量計(SEIKO SSC 5200 DSC 12
0)を用いて測定した。資料溶液をAg製容器に密封し、
昇温速度1.0℃/分で測定した。2成分系および3成分
系ハイブリッド型リポソームの相転移温度は、生理的条
件温度(約37℃)よりもかなり低く、生理的条件では安
定に液晶状態で保持されることが確認された。その結果
を表1に示す。
【0021】
【表1】 表1.ハイブリッド型リポソームの相転移温度
【0022】実施例5.ハイブリッド型リポソームの癌
細胞増殖抑制性 DMPG/10mol%C12(EO)10ハイブリッド型リポソームにつ
いては、ヒト肺せん癌細胞(RERF-LC-OK)、ヒト胃癌細胞
(GT3TKB)、ヒト肝臓癌細胞(Hep-G2)およびマウスのル
イス肺癌細胞(LLC)を用いて癌細胞増殖抑制性を評価
した。3成分系ハイブリッド型リポソームについては、
ヒト脳腫瘍細胞(U251)、ヒト肝臓癌細胞(Hep-G2)お
よびヒト肺せん癌細胞(RERF-LC-OK)を用いて癌細胞増殖
抑制性を評価した。培養培地として、RERF-LC-OK細胞に
はRPMI-1640+10%ウシ胎仔血清(FBS)を、GT3TKB細
胞、Hep-G2細胞およびU251細胞にはダルベッコ改変ミニ
マムエセンシャルメディウム(DMEM)+10%FBSを用い
た。
【0023】癌細胞増殖抑制効果の評価は、テトラゾリ
ウム塩の酵素特異性を利用し、生化学的検査として一般
に用いられている酵素活性測定法であるWST-1法(M. Ish
iyama, M.Shiga, K.Sasamoto, M.Mizoguchi, P.G. He,
Chem. Pharm. Bull., 41, 1118(1993))によって評価し
た。WST-1法は、細胞のWST-1(2-[4-イオドフェニル]-3
-[4-ニトロフェニル]-5-[2,4,-ジサルフォフェニル]-2H
-5-テトラゾリウムナトリウム)代謝物による発色によ
って細胞増殖活性を測定する方法である。初期細胞数を
約1.0x104細胞/mlに調製した細胞懸濁液100μlを96ウ
ェルのマルチプレートに分注し、24時間プレインキュベ
ーションした後テストサンプルを10μl/ウェル添加し
た。37℃にて、CO2濃度5.0%、湿度95%の条件下で48時
間培養後、WST-1溶液を10μl/ウェル添加した。3時間
後、分光光度計(EIA READER)を用いて450nmで吸光度を
測定した。テストサンプル無添加の場合の吸光度(A
control)に対する、テストサンプルを添加した場合の吸
光度(Amean)の比(A mean/Acontrol)を算出するこ
とにより、癌細胞増殖抑制効果を評価した。DMPG/10mol
%C12(EO)10の癌細胞増殖抑制効果を表2および図3
に、3成分系ハイブリッド型リポソームの癌細胞増殖抑
制効果を図4〜図6に示した。
【0024】
【表2】 表2. DMPG/10mol%C12(EO)10の癌細胞増殖抑制効果 脂質濃度=3.00x10-4、C12(EO)10濃度=3.33x10-5
【0025】表2および図3から明らかなように、DMPG
を含む2成分系ハイブリッド型リポソームはDMPG単独あ
るいは非糖ミセル系界面活性剤(C12(EO)10)の単独使
用に比較して増殖抑制効果が高く、かつ、DMPCを含むリ
ポソーム(DMPC/10mol%C12(EO)10)に対しても癌細胞
増殖抑制効果が高いことが示された。特に肺せん癌およ
び胃癌に対して顕著な増殖抑制効果を示した。また、図
4〜図6から明らかなように、糖ミセル系界面活性剤を
含む3成分系ハイブリッド型リポソームはDMPC単独、非
糖ミセル系または糖ミセル系界面活性剤の単独使用と比
較して、使用した3種類の癌細胞の何れに対しても高い
増殖抑制効果を示し、特にシュクロース系を使用した場
合にヒト脳腫瘍細胞(U251)およびヒト肝臓癌細胞(He
p-G2)に対する効果が高く、特にU251に対する効果が顕
著であった。また、アルキル鎖の長さの増大に伴って、
増殖抑制効果が増すことも示された(図4〜図6)。
【0026】
【発明の効果】 本発明により、高い抗癌性を有し、特
に脳腫瘍、肺せん癌、胃癌に高い効果を示すリポソーム
製剤が提供される。本発明のリポソーム製剤は、毒性が
少なく、すなわち副作用が少なく、かつ経時変化が少な
く長期保存が可能であることと併せて、医薬品として、
または医薬材料として利用価値の高い素材を提供するも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】DMPG含有2成分系ハイブリッド型リポソームの
膜サイズの経時変化を示す。図中、△はDMPG単独を表
し、▲はDMPG/10mol%C12(EO)10をあらわす。なお、□
は参考として、DMTAP(1,2-ジミリストイルホスファチ
ジルグリセロール)単独からなるリポソームを表す。
【図2】3成分系ハイブリッド型リポソームの膜サイズ
の経時変化を示す。図中、■はDMPC/10mol%Tween20を
表し、●はDMPC/10mol%Tween20/30mol%DeFGを表し、
▲はDMPC/10mol%Tween20/30mol%DoFGを表す。
【図3】 DMPG/10mol%C12(EO)10の癌細胞増殖抑制効果
を示す。図中、□はDMPG単独、■はDMPG/10mol%C12(E
O)10を表し、斜線付きの□はC12(EO)10単独を表す。
【図4】 グルコース系の3成分系ハイブリッド型リポ
ソームの癌細胞増殖抑制効果を示す。種々の癌細胞の増
殖に対する、48時間後のin vitroにおける増殖抑制効果
を表すものである。
【図5】マルトース系の3成分系ハイブリッド型リポソ
ームの癌細胞増殖抑制効果を示す。種々の癌細胞の増殖
に対する、48時間後のin vitroにおける増殖抑制効果を
表すものである。
【図6】シュクロース系の3成分系ハイブリッド型リポ
ソームの癌細胞増殖抑制効果を示す。種々の癌細胞の増
殖に対する、48時間後のin vitroにおける増殖抑制効果
を表すものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 47/26 A61K 47/26 47/32 47/32 Fターム(参考) 4C076 AA19 AA95 CC27 DD08 DD09 DD63 DD69 FF32 FF36 FF67 4C084 AA16 MA24 NA03 NA13 NA14 ZB261 ZB262 4C086 AA01 AA02 DA41 EA06 FA02 MA05 MA24 NA03 NA13 NA14 ZB26

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン脂質と非糖ミセル系界面活性剤と糖
    ミセル系界面活性剤を含有するリポソームであることを
    特徴とする癌治療用ハイブリッド型リポソーム製剤。
  2. 【請求項2】 リン脂質がL-α-ジアシルホスファチジ
    ルコリン、L-α-ジアシルホスファチジルグリセロー
    ル、L-α-ジアシルホスファチジルセリン、L-α-ジアシ
    ルホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリ
    ン、L-α-ジアシルホスファチジン酸、L-α-ジアシルホ
    スファチジルイノシトールおよびカルジオリピンよりな
    る群から選ばれる請求項1記載のハイブリッド型リポソ
    ーム製剤。
  3. 【請求項3】 非糖ミセル系ミセル界面活性剤が、ソル
    ビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン
    脂肪酸エステル、およびアルキル若しくはアリールポリ
    オキシエチレングリコールよりなる群から選ばれる、請
    求項1または2記載のリポソーム製剤。
  4. 【請求項4】 糖ミセル系界面活性剤がアルキルグルコ
    シド、アルキルチオグルコシド、セレブロシド、アルキ
    ルマルトピラノシド、フルクトフラノシルアルキルグル
    コピラノシドおよびアルキルラクトピラノシドよりなる
    群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の
    リポソーム製剤。
  5. 【請求項5】 L-α-ジミリストイルホスファチジルグ
    リセロールと非糖ミセル系界面活性剤を含有するリポソ
    ームであることを特徴とする癌治療用ハイブリッド型リ
    ポソーム製剤。
  6. 【請求項6】非糖ミセル系界面活性剤がソルビタン脂肪
    酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エス
    テル、およびアルキル若しくはアリールポリオキシエチ
    レングリコールより選ばれる、請求項5に記載のリポソ
    ーム製剤。
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