JP2000282272A - 廃塩酸の処理方法 - Google Patents

廃塩酸の処理方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】廃塩酸の処理方法において、設備費と運転経費
の節減を達成し、濃縮液中の鉄分による配管類および機
器類の目詰まりおよび伝熱係数の低下などを抑制しつ
つ、有用な塩酸の回収を効率よく行うとともに、濃縮残
分の高度の減容化を達成する。 【解決手段】1.蒸発缶を使用する廃塩酸の処理方法に
おいて、(1)廃塩酸を缶内に導入する工程、(2)缶
内の液を加熱・蒸発させる工程、(3)発生した蒸気を
冷却し、塩酸水溶液として回収する工程、(4)加熱・
蒸発用蒸気の凝縮液を回収する工程、(5)缶内温度お
よび/または蒸留液量の割合を調整することにより、濃
縮液中の鉄濃度を制御する工程、(6)濃縮液を缶塔底
から抜き出し、貯槽に送る工程、および(7)抜き出し
た濃縮液を希釈し、鉄濃度を制御する工程を備えた方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼線製造工場、鋼
板製造工場、メッキ工場などにおいて、鋼線、鋼板、鋼
製品などの洗浄工程で発生する高濃度鉄分含有廃塩酸の
処理方法に関する。本発明は、さらに詳しくは、従来は
その殆どが産業廃棄物としてそのまま処理されていた廃
塩酸中に残存する有効な塩酸を蒸発回収することによ
り、その再利用をはかるとともに、廃棄残分の減容化を
行う廃塩酸の再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、特開昭59-26184号公報における
図面に示されている従来の蒸気圧縮式蒸発装置は、下部
に原液の溜室を備えた密閉型の蒸発器内の上部に多数本
の伝熱管を設け、該各伝熱管の外側面に、原液ポンプに
よって送られて来る原液を散布器にて散布することによ
り蒸発させ、この蒸発により発生した蒸気をブロワー圧
縮機で圧縮して昇温し、この昇温した蒸気をダクトを介
して、前記各伝熱管内に供給することにより、各伝熱管
の外側面に散布されている原液を加熱・蒸発させるとと
もに、前記各伝熱管内から空気等の非凝縮性ガスを真空
ポンプなどの真空発生手段にて抽出することにより、前
記蒸発器内を大気圧以下の減圧状態に保持している。
【0003】しかしながら、この形式の蒸気圧縮式蒸発
装置には、以下の様な問題点がある。イ.ブロワー圧縮
機本体の圧縮効率が低く、単位原液量を圧縮するための
必要電力量が大きくなり、運転経費が高くなり、設備も
大きくなる。ロ.原液は、散布器を介して、各伝熱管の
外表面に散布されるので、液分散不良から生じる熱交換
器伝熱係数の低下がある。ハ.特に、多量の鉄分などを
含有する廃塩酸の処理に際して、液の濃縮倍率上昇また
は連続運転に伴い、液分散器ノズル部分でのスラッジに
よる詰まりおよび分散不良、各伝熱管外表面の汚れ、液
比重または粘度の上昇などによる伝熱係数の低下に対
し、有効に対処することができない。
【0004】また、各管の外表面付着スケールの除去
は、液が分散されているため、伝熱管外面に対する液流
速が遅いことなどから、困難となる場合が多い。ニ.上
記ロおよびハの結果、濃縮処理は、常に単位断面積当た
りの蒸発量が低い状態で行わざるを得ない。従って、単
位時間当たりの蒸発量を増大させるためには、伝熱面積
を増大させるか、或いはブロワー圧縮機として圧縮比の
高いものを使用しなければならないため、装置が大型化
するとともに、運転経費が嵩むという問題がある。ホ.
特に、廃塩酸を処理対象とする場合には、蒸気が高濃度
の塩酸を含むので、圧縮機本体などの材質の選択に大き
な制約を受ける。この様な装置の材質上の制約から、原
液中に残存する有用な塩酸を回収することができない
し、濃縮残分の十分な減容化もできない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、加
熱管を備えた加熱装置である蒸発缶を用いて廃塩酸の処
理を行うに際し、装置の小型化による設備費と運転経費
の節減を達成し、濃縮液中の鉄分(スラッジ)による配管
類および機器類の目詰まりおよび伝熱係数の低下などを
抑制しつつ、廃塩酸からの有用な塩酸の回収を効率よく
行うとともに、濃縮残分の高度の減容化を達成すること
を主な目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の様な
技術の現状に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、廃塩酸を導
入する蒸発缶内温度を110〜120℃に調節保持するか、廃
塩酸原液量に対する蒸発液量を調節するか、あるいは蒸
発缶内温度の調節と蒸発液量の調節とを併せて行うこと
により、蒸発缶内濃縮液中の鉄塩濃度を300g/l以下に抑
制する場合には、蒸発缶内での閉塞、伝熱係数の低下な
どの問題点が大幅に軽減されることを見出した。さら
に、蒸発缶外に抜き出した濃縮液を希釈してその鉄濃度
を200g/l以下に抑制する場合には、常温条件下でも、鉄
塩の析出による配管の目詰まり、濃縮液貯留タンク内で
の鉄塩の堆積などが抑制され、安定して廃塩酸原液を処
理できるので、有効な塩酸の回収と濃縮残分の十分な減
容化を達成できることも、見出した。
【0007】すなわち、本発明は、下記の廃塩酸の処理
方法を提供するものである。 1.蒸発缶を使用する廃塩酸の処理方法において、
(1)廃塩酸原液を蒸発缶内に導入する工程、(2)蒸
気を蒸発缶内に供給し、蒸発缶内の液を間接的に加熱し
て、蒸発させる工程、(3)蒸発缶内で発生した蒸気を
冷却器で冷却し、これを塩酸水溶液として回収する工
程、(4)蒸発缶内での加熱・蒸発に利用した蒸気の凝
縮液を回収する工程、(5)蒸発缶内温度および/また
は廃塩酸原液量に対する蒸留液量の割合を調整すること
により、蒸発缶内濃縮液中の鉄濃度を300g/l以下に制御
する工程、(6)蒸発缶内の液面高さに対応して濃縮液
を抜き出し、濃縮液貯槽に送る工程、および(7)蒸発
缶外に抜き出した濃縮液を希釈することにより、その鉄
濃度を200g/l以下に制御する工程を備えたことを特徴と
する廃塩酸の処理方法。 2.工程(5)における蒸発缶内温度が、110〜120℃で
ある上記項1に記載の廃塩酸の処理方法。 3.工程(7)において、蒸発缶からの濃縮液の抜き出
しを80〜100℃の加熱条件下に行った後、濃縮液を希釈
する上記項1に記載の塩酸の処理方法。 4.蒸発缶内下部および/または濃縮液抜き出しライン
に外部から蒸気および/または空気を間欠的に導入する
ことにより、鉄塩の固化を抑制する上記項1に記載の廃
塩酸の処理方法。 5.工程(7)において、希釈液として、工程(4)か
らの凝縮液および/または廃塩酸原液および/または水
を使用する上記項1に記載の廃塩酸の処理方法。 6.蒸発缶が、加熱管を備えた蒸気加熱型装置である上
記項1に記載の廃塩酸の処理方法。 7.蒸発缶が、カランドリア型蒸発缶、縦型多管式熱交
換器蒸発缶あるいは横型多管式熱交換器蒸発缶である上
記項6に記載の廃塩酸の処理方法。 8.加熱・蒸発用熱源が、ボイラーで発生する蒸気およ
び/またはコジェネレーション設備で発生する蒸気であ
る上記項1に記載の廃塩酸の処理方法。 9.加熱・蒸発熱源が、加熱熱媒および/または高温燃
焼排ガスおよび/または電気である上記項1に記載の廃
塩酸の処理方法。 10.加熱・蒸発熱源が、高温・高圧蒸気を減圧弁で減
圧した蒸気である上記項1、3、4、6、7または8に
記載の廃塩酸の処理方法。 11.加熱・蒸発用熱源が、低温・低圧蒸気を圧縮機で
圧縮・昇温した蒸気である上記項1、3、4、6、7ま
たは8に記載の廃塩酸の処理方法。 12.圧縮機が、スクリュー型圧縮機である上記項11
に記載の廃塩酸の処理方法。 13.スクリュー型圧縮機のモーター回転数をインバー
ター装置により制御する上記項12に記載の廃塩酸の処
理方法。 14.蒸発缶内発生蒸気量(回収塩酸水溶液量)に対応
してスクリュー型圧縮機のモーター回転数を制御する上
記項12または13に記載の廃塩酸の処理方法。 15.蒸発缶内温度に対応してスクリュー型圧縮機のモ
ーター回転数を制御する上記項12または13に記載の
廃塩酸の処理方法。 16.複数個の圧縮機が設けられている上記項11に記
載の廃塩酸の処理方法。 17.工程(7)において、蒸発缶内の塔底液をポンプ
で抜き取り、廃塩酸原液の導入ラインへ循環する上記項
1に記載の廃塩酸の処理方法。 18.加熱・蒸発用熱源として使用した蒸気の凝縮液を
ボイラー給水として使用する上記項1に記載の廃塩酸の
処理方法。 19.蒸発缶内液面の上方空間部にデミスターを設けた
上記項1に記載の廃塩酸の処理方法。 20.加熱側の蒸気ラインに、蒸発缶内の非凝縮性気体
の自動的排出を定期的に行うための電磁弁を設けた上記
項1に記載の廃塩酸の処理方法。 21.スタートアップ時または長期運転時に蒸発缶内伝
熱管の汚れによる蒸発量の低下に対応するために、補助
熱源を蒸発缶内底部へ導入する上記項1に記載の廃塩酸
の処理方法。 22.スタートアップ時または長期運転時に蒸発缶内伝
熱管の汚れによる蒸発量の低下に対応するために、補助
熱源を圧縮機出口ラインへ導入する上記項11に記載の
廃塩酸の処理方法。 23.補助熱源が蒸気である上記項21または22に記
載の廃塩酸の処理方法。 24.蒸発缶内伝熱管の汚れによる伝熱係数の低下が生
じた場合、運転中に廃塩酸原液の供給を一時的に中断
し、水を供給することにより、汚れを洗浄・除去する上
記項1に記載の廃塩酸の処理方法。 25.工程(6)において、液面高さを示す信号に対応
して濃縮液を塔底から抜き出す上記項1に記載の廃塩酸
処理方法。 26.工程(6)において、蒸発缶内の液面に相当する
位置で、蒸発缶底部と連通するオーバーフロー管から濃
縮液を抜き出す上記項1に記載の廃塩酸の処理方法。 27.工程(3)において、蒸発缶内で発生する蒸気を
冷却・凝縮させて塩酸として回収した後、鉄鋼製品の表
面処理に使用する上記項1に記載の廃塩酸の処理方法。 28.回分式および/または連続式の鉄鋼製品処理槽か
ら廃塩酸原液を連続的に抜き出し、処理する上記項1に
記載の廃塩酸の処理方法。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の処理対象となる廃塩酸原
液が、濃縮条件下に発泡を生じる可能性がある成分(界
面活性剤など)を含んでいる場合には、あらかじめシリ
コーン系などの公知の消泡剤を添加してもよい。消泡剤
の添加量は、発泡性成分の含有量などを考慮して定めれ
ば良く、特に限定されるものではないが、通常30〜500m
g/l程度である。
【0009】本発明方法で使用する蒸発缶としては、カ
ランドリア型蒸発缶、縦型多管式熱交換器蒸発缶、横型
多管式熱交換器蒸発缶などの加熱管を備えた加熱方式蒸
発缶が挙げられる。
【0010】本発明方法においては、鉄塩の固化による
機器/配管などの閉塞を防止して、装置を安定して運転
するために、蒸発缶内の濃縮液中の鉄濃度を300g/l以下
に保持する。この鉄濃度調整は、蒸発缶内温度を110〜1
20℃程度、より好ましくは110〜115℃程度に調整するこ
とにより、あるいは廃塩酸原液量に対する蒸発液量の割
合を調整することにより、あるいは蒸発缶内温度および
蒸発液量の割合を調整することにより、行うことができ
る。
【0011】蒸発缶における加熱・蒸発用熱源として
は、ガスだきボイラーからの蒸気、コジェネレーション
設備で発生する蒸気、種々の場所で発生する低温・低圧
蒸気を圧縮機で圧縮・昇圧した蒸気、高温・高圧の蒸気
を減圧した蒸気、加熱した熱媒、高温燃焼排ガス、電気
などが利用される。以下においては、上記を以て蒸発缶
における加熱・蒸発用熱源を代表させる。
【0012】蒸発缶(以下「カランドリア型蒸発缶」を
もって代表させる)においては、従来技術で生じていた
伝熱管外側への液分散不良などによる伝熱係数の低下を
防ぐために、カランドリア型蒸発缶(以下単に「カラン
ドリア」ということもある)内液面から伝熱管上部まで
の液深さの上方から15〜50%程度の位置に液を導入する
ことが好ましい。これにより、液は、伝熱管内に常時保
持された状態で、伝熱管外の蒸気により加熱・蒸発され
る。従来の液供給方法では、発泡を促進することがあ
り、その結果濃縮処理が不能となることがあった。しか
るに、本発明方法では、前記の液の分散による流速の低
下ならびに発泡促進などの問題は、解消される。
【0013】さらに、塩酸および水の蒸気が蒸発缶を出
る前流側(蒸発缶内液面の上方空間部)に充填物、フィル
ター、たれ壁など(デミスター)を配置することによ
り、原液飛沫あるいは缶内液飛沫の蒸気側への同伴混入
を防止することができる。
【0014】また、必要に応じ、カランドリア内塔底液
をポンプで抜き出し、原液導入位置へ循環することによ
り、伝熱管内の液流速を増大させて、伝熱係数を上げる
ことができる。
【0015】伝熱管外の蒸気は、伝熱管内の液を加熱
し、蒸発させた後、凝縮する。本発明においては、蒸発
缶内伝熱管外の蒸気の凝縮液面高さを一定に制御するた
めに、スチームトラップあるいは凝縮液槽を設けること
により、圧縮蒸気の系外への排出による損失を防いでい
る。凝縮液は、スチームトラップあるいは凝縮液槽を経
て系外に排出される。この凝縮液は、ボイラー給水とし
て、あるいは蒸発缶塔底部から抜き出された濃縮液中の
鉄濃度を200g/l以下として、濃縮液の固化を防止するた
めの希釈水などとして、再利用することができる。
【0016】圧縮機の効率、消費電力などに影響を与え
るカランドリア内の空気などの非凝縮性ガスは、伝熱管
外側の蒸気ラインに設けた電磁弁の開閉により、カラン
ドリア外へ排出される。排出ガスは、ガス中の成分に対
応して、必要ならば、活性炭吸着などにより所定成分を
除去した後、或いは濃縮液タンク内の液にバブリングさ
せて所定成分を吸収除去した後、大気中に放出される。
電磁弁の開閉は、カランドリア内圧力と連動させる方
法、任意のタイマー設定などにより、自動的に行われ
る。
【0017】濃縮液は、濃縮器内の液面計からの信号を
受けて、塔底部から制御弁を通しておよび/または蒸発
缶内の液面に相当する位置で蒸発缶底部と連通するオー
バーフロー管から、排出される。本発明においては、好
ましくは80〜100℃程度の加熱条件下に、蒸発缶から濃
縮液を抜き出し、これを希釈して、その鉄濃度を200g/l
以下に保つ。
【0018】カランドリア内の運転圧力が減圧系である
場合には、伝熱管外側の蒸気ラインに設けた電磁弁の後
流側にこの電磁弁の開閉と連動する真空ポンプを設け
る。
【0019】必要ならば、スタートアップ時の装置全体
の昇温のために、或いは長期運転後の予熱器やカランド
リア伝熱管の汚れによる蒸発量の低下に応じて、補助熱
源(ガスだきボイラーからの蒸気、コジェネレーション
設備で発生する蒸気、低温・低圧蒸気を圧縮機で圧縮・
昇圧した蒸気など)を、カランドリア内底部または圧縮
器出口ラインへ導入する。
【0020】本発明においては、加熱源としての蒸気が
蒸発缶内の廃塩酸原液を加熱・蒸発させるに必要な温度
・圧力を有する場合には、そのままあるいは減圧して使
用する。低温・低圧蒸気を使用する場合には、圧縮機に
より、圧縮・昇圧した後、使用する。圧縮機としては、
特に限定されるものではないが、従来の濃縮技術では用
いられたことがなかったスクリュー型圧縮機であること
が好ましい。スクリュー型圧縮機は、次の様な特性を備
えている。 a.低速回転時から高圧力・高効率運転が可能である。 b.高い応答性を持っている。 c.小型、コンパクトで据え付けが容易である。 d.発生蒸気量に対応して、スクリュー型圧縮機のモー
ター回転数を制御することができる。
【0021】この様なスクリュー型圧縮機は、通常アル
ミニウム合金製のケーシング部に一対の雄、雌シリンダ
ーを内蔵する構造を有している。以下においては、スク
リュー型圧縮機を使用する実施態様について説明を行
う。
【0022】上記の様な構造を有し、且つ効果を発揮す
るスクリュー型圧縮機を使用する場合には、従来の圧縮
機を使用する場合に比して、設備費および運転費が大幅
に安価となる。
【0023】本発明で使用するスクリュー型圧縮機は、
一例として、最大吐出圧力として160KPa、最高許容吐出
温度として160℃、最大吸気量として760m3/hr(空気換
算)、圧縮比として約2.3という高い特性を発揮するこ
とができる。
【0024】従来の圧縮機としてのルーツブロワーでの
圧縮比限界が約1.8程度で、全断熱効率が約45〜60%で
あるのに対し、スクリュー型圧縮機は、圧縮比1.5で全
断熱効率約65%、圧縮比2〜2.3で約70%と高い性能を発
揮することができる。
【0025】スクリュー型圧縮機のローターは、熱膨張
を少なくし、必要クリアランスを小さくするために、好
ましくは、膨張係数の少ないアルミニウム合金を用い、
ローターの表面にフッ素樹脂(たとえば、デュポン社か
ら商標名「テフロン」として市販されている)系コーテ
ィング材を塗布する。圧縮機は、必要蒸気量に応じて、
複数個設けることができる。
【0026】従来、必要蒸気量に対応して、低温・低圧
の蒸気を圧縮機により吸引および吐出させて、蒸発缶
(以下「濃縮器」ということがある)内での蒸発を効率
よく行わせることは、圧縮機の制御上困難であった。本
発明で使用するスクリュー型圧縮機においては、圧縮機
の駆動源として高速回転型の誘導電動機からなるモータ
ーを使用し、このモーターの回転数制御機構としてイン
バーター装置を用いる。すなわち、冷却器後流側に設け
た流量計および/または蒸発缶内温度を測定する温度計
により、蒸気発生量および/または温度を検出し、この
入力信号を調節計に送り、この調節計からの出力信号を
インバーターに入力して、蒸気発生量が一定となる様に
するか、或いは蒸気発生量に対応してモーターの回転数
を増減することができる。その結果、装置全体が簡略化
され、始動時などにおける制御も容易となる。
【0027】また、圧縮機前流側の蒸気ラインにおいて
は、保温および/またはヒーターによる加熱により、圧
縮機入口側での蒸気の凝縮を防止することができる。
【0028】本発明においては、装置の小型化とコスト
低減を目的として、原液の予熱のためにプレート型熱交
換器を用いることもできる。この予熱器および原液導入
ライン内の圧力を蒸発缶内圧力よりも高くすることによ
り、予熱器内での気泡生成による伝熱係数の低下を防ぐ
ため、予熱器出口(例えばカランドリア型蒸発缶などの
蒸発缶入口)側に背圧弁を設けることもできる。
【0029】以下図面を参照しつつ、本発明をさらに詳
細に説明する。なお、以下においては、廃塩酸の濃縮に
ついて説明するが、本発明は、その作動原理上、その他
の廃酸、廃アルカリ液、廃水、さらには液状食品などの
濃縮にも適用できることはいうまでもない。
【0030】図1は、本発明による廃塩酸の濃縮処理の
一例を示すフローシートである。濃縮すべき廃塩酸は、
タンク1から、ライン2を経て、ポンプ3において所定
圧力まで昇圧された後、ライン4から濃縮器(カランド
リア型蒸発缶)12へ導入される。図示はしないが、必
要ならば、ポンプ3の前流側にストレーナーを設け、後
流側に流量計を設けることができる。廃塩酸は、濃縮器
12内の液面から伝熱管上部までの液深さの15〜50%の
位置(液面から下方に向けての位置)で濃縮器に導入さ
れる。
【0031】伝熱缶内での廃塩酸の加熱は、通常廃塩酸
の発生源である鋼線製造/加工工場、鋼板製造/加工工
場、メッキ工場などで発生する回収蒸気(ボイラーで発
生する蒸気、コジェネレーション設備で発生する蒸気、
廃熱回収により発生する蒸気など)により行う。
【0032】この際、利用すべき蒸気が低温・低圧(110
℃以下/0.15MPa以下程度)である場合には、圧縮機で予
め圧縮・昇温を行う。すなわち、この蒸気をライン6を
経て圧縮機7に供給し、ここで圧縮・昇温した後、ライ
ン9および10を経て、濃縮器12の伝熱管外側に供給
し、伝熱管内の液を加熱し、蒸発させる。高温・高圧の
蒸気が得られる場合には、この蒸気をそのままライン9
および10を経て、濃縮器に供給する。この様な操作に
より、伝熱管外の蒸気自体は、凝縮・液化する。凝縮液
は、濃縮器12内の伝熱管の下部に接続されたライン1
8からスチームトラップ19を経て、ライン20から排
出される。この凝縮液は、必要に応じ、ボイラー5への
給水用水として、あるいはライン24から抜き出される
濃縮液の固化防止用希釈水などとして、再利用される。
さらに、この凝縮水は、再利用に先立って、ポンプ3の
出口側のライン4に設けた予熱器(図示せず)におい
て、原液の予熱源として利用することができる。
【0033】低温・低圧の蒸気圧縮機7としては、先述
の通り、アルミニウム合金製ケーシング内に一対の雄お
よび雌ローターを内蔵した形式のスクリュー型圧縮機を
使用することが好ましい。
【0034】濃縮器12内で発生した塩酸および水の蒸
気は、ライン13を経て、冷却水ライン15を備えた冷
却器14で冷却され、凝縮した後、ライン16を経て、
蒸留液タンク17に溜められる。この様に再生された塩
酸水溶液は、鉄鋼製品の表面処理に再度使用することが
できる。
【0035】濃縮器12の上部空間には、充填物、フィ
ルター、たれ壁などのデミスター(「26」として示す)
を配設することにより、原液飛沫あるいは缶内液飛沫の
上記への同伴混入を防止することができる。
【0036】圧縮機7の効率および消費電力などに影響
を与える濃縮器12内の空気などの非凝縮性ガスは、伝
熱管外側の蒸気ライン21に設けた電磁弁22の開閉に
より蒸発缶外へ排出される。この電磁弁22の開閉は、
濃縮器12内圧力と連動させることにより行ってもよ
く、或いはタイマー設定により自動的に行ってもよい。
必要ならば、排出ガスを活性炭などによる吸着処理に供
したり、或いは濃縮液タンク25内の液中にバブリング
させる。
【0037】濃縮器12内に蓄積する濃縮液は、濃縮器
12内の液面計(図示せず)からの信号により、濃縮器
12の底部からのライン24および制御弁(図示せず)
を通じて、濃縮液タンク25に排出される。あるいは、
濃縮液は、制御弁を用いることなく、蒸発缶内の液面に
相当する位置において、濃縮器12の底部に連通するオ
ーバーフロー管(図示せず)から抜き出すことも可能で
ある。
【0038】排出された濃縮液の固化を防止する必要が
ある場合には、水または前記ライン20からの凝縮水を
ライン24または濃縮液タンク25内に供給し、濃縮液
を希釈すればよい。
【0039】また、必要に応じて、濃縮器12内の液を
液抜き出しライン24から循環ポンプ(図示せず)によ
り抜き出し、原液ライン4へ循環することにより、伝熱
管内の液流速を増大させ、伝熱係数を上げることができ
る濃縮器12内の運転圧力が減圧系である場合には、電
磁弁22の後流側に電磁弁22の開閉と連動する真空ポ
ンプ(図示せず)を設ける。減圧系で運転する場合に
は、ライン20上に凝縮液ポンプ(図示せず)を設け、
ライン24上に濃縮液ポンプ(図示せず)を設ける必要
がある。
【0040】また、必要に応じ、スタートアップ時の加
熱・昇温のために、あるいは長期運転後に濃縮器12の
伝熱管などの汚れによる蒸発量の低下に応じて、補助熱
源として、各種の蒸気源(例えばボイラー5)からの蒸気
をライン6、圧縮機7、ライン9および10を経て、あ
るいはライン6、バイパスライン8、ライン9および1
0を経て、ライン11から導入する。
【0041】なお、濃縮器12の伝熱管などの汚れとそ
れに伴う伝熱係数の低下を生じた場合には、運転中に廃
塩酸の供給を一時的に中断し、工業用水を供給すること
により、汚れを洗浄・除去することができる。
【0042】図2は、本発明による廃塩酸の濃縮処理の
他の一例を示すフローシートである。図2において、図
1と同機能の構成要素は、図1と同じ番号で示してあ
り、その機能については、説明を省略することがある。
【0043】濃縮すべき廃塩酸原液は、図1におけると
同様に、タンク1から、ライン2を経て、廃液ポンプ3
において所定圧力まで昇圧された後、ライン4からライ
ン105を経て蒸発缶12(この場合、横型熱交換器タ
イプの蒸発缶)の伝熱管の上側(上部)の分散器126
に導入される。図示はしないが、必要ならば、ポンプ3
の前流側にストレーナーを設け、後流側に流量計を設け
ることができる。分散器126は、伝熱管に対して廃塩
酸を均一に分散ないし滴下させる構造となっている。
【0044】蒸発缶12内で発生した塩酸および水の蒸
気は、ラシッヒリングなどの充填物および/または活性
炭などの濾過材を充填した充填部128およびライン1
3を経て冷却器14において冷却・凝縮された後、ライ
ン16を経て蒸留液タンク17に溜められる。
【0045】蒸発缶内での廃塩酸の加熱は、例えば、コ
ジェネレーション設備におけるボイラー106で発生す
る低圧蒸気(1kg/cm2G程度)を利用して行う。すなわ
ち、この蒸気をライン107、108を経て圧縮機10
9に供給し、ここで圧縮・昇温した後、ライン110を
経て、蒸発缶12の伝熱管127の内側に供給し、伝熱
管127外の液を加熱し、蒸発させる。これにより、伝
熱管内の蒸気自体は、凝縮・液化する。この凝縮液は、
蒸発缶12内の伝熱管の下部に接続されたライン118
から凝縮液槽119に溜められる。
【0046】圧縮機109としては、先述の通り、アル
ミニウム合金製ケーシング内にアルミニウム合金製の一
対の雄および雌ローターを内蔵した形式のスクリュー型
圧縮機を使用することが好ましい。
【0047】未凝縮蒸気の系外への排出による損失を防
ぐため、凝縮液槽119での液面は、蒸発缶12から凝
縮液槽119への凝縮液取り出しライン118の位置よ
りも高くなるように制御する。凝縮液槽119の気相部
は、ライン120を経て、圧縮前流側の蒸発缶12に接
続されている。凝縮液は、必要に応じ、ボイラー106
への給水用水として、あるいは濃縮液の固化防止用希釈
水などとして、ライン121から抜き出され、再利用さ
れる。さらに、この凝縮液は、再利用に先立って、ポン
プ3の出口側のライン4に設けた予熱器(図示せず)に
おいて、原液の予熱源として利用することができる。
【0048】蒸発缶12の上部空間には、デミスター1
28を配設することにより、原液飛沫あるいは缶内液飛
沫の蒸気への同伴混入を防止することができる。
【0049】圧縮機109の効率および消費電力などに
影響を与える蒸発缶12内の空気などの非凝縮性ガス
は、蒸気ライン22に設けた電磁弁23の開閉により蒸
発缶外へ排出される。この電磁弁23の開閉は、蒸発缶
12内圧力と連動させることにより行ってもよく、或い
はタイマー設定により自動的に行ってもよい。必要なら
ば、排出ガスを活性炭などによる吸着処理に供したり、
或いは濃縮液タンク25内の液中にバブリングさせる。
【0050】蒸発缶12内に蓄積する濃縮液は、蒸発缶
12内の液面計(図示せず)からの信号により、蒸発缶
12の底部からのライン129および制御弁(図示せ
ず)を通じて、濃縮液タンク25に排出される。あるい
は、濃縮液は、制御弁を用いることなく、蒸発缶内の液
面に相当する位置において、蒸発缶12の底部に連通す
るオーバーフロー管(図示せず)から抜き出すことも可
能である。
【0051】排出された濃縮液の固化を防止する必要が
ある場合には、水または前記ライン121からの凝縮水
をライン129内または濃縮液タンク25内に供給し、
濃縮液を希釈すればよい。
【0052】また、必要に応じて、蒸発缶12内の液を
液抜き出しライン129から循環ポンプ130により抜
き出し、原液ライン5へ循環することにより、伝熱管1
27外の液流速を増大させ、伝熱係数を上げることがで
きる蒸発缶器12内の運転圧力が減圧系である場合に
は、電磁弁23の後流側に電磁弁23の開閉と連動する
真空ポンプ(図示せず)を設ける。
【0053】また、必要に応じ、スタートアップ時の加
熱・昇温のために、あるいは長期運転後に蒸発缶12の
伝熱管などの汚れによる蒸発量の低下に応じて、補助熱
源として、例えばガスだきボイラー106からの蒸気を
ライン107およびライン111から導入する。
【0054】本発明は、各種の廃酸液、廃アルカリ液の
濃縮処理のみならず、各種の産業廃水、洗浄廃水、写真
現像液、定着液および洗浄廃水などの濃縮・減容化、原
液中の有用成分或いは不純物の蒸留分離、食品工業での
溶液(だし汁、ジュース、ミルクなど)の濃縮などの広
い分野で利用できる。本発明は、その他の分野でも利用
可能であり、ここに例示した分野での利用に限定される
ものではない。
【0055】
【発明の効果】本発明方法によれば、以下の様な顕著な
効果が達成される。 (1)従来技術に比して、原液の濃縮プロセスが簡単で
あり、設備が小型化されるので、設備費、運転経費など
が低減される。 (2)連続的に安定した運転が可能である。 (3)例えば、コジェネレーション設備などで比較的多
量に発生するにもかかわらず、従来ほとんど利用されて
いなかった低圧蒸気を有効に利用することができる。 (4)廃塩酸中に残存する有用な塩酸を回収し、例え
ば、鉄鋼製品の洗浄などに再利用することができる。 (5)廃塩酸中の塩酸および水分が回収される結果、従
来に比して、廃棄処理量を減容化することができ、廃棄
コストを低減することができる。 (6)鋼線、鋼板などの鉄鋼製品の回分式あるいは連続
式表面処理過程で発生する廃塩酸を適宜あるいは連続的
に抜き出して濃縮することにより、塩酸を連続的に回収
して、繰り返し利用することができる。従って、鉄鋼製
品の表面処理工程に本発明による廃塩酸処理工程を併設
する場合には、表面処理工程における塩酸濃度および純
度がほぼ一定に保持されるので、鉄鋼製品の表面処理を
一定時間で安定して行うことができ、防食剤を使用する
ことなく、高品質の処理製品が得られる。
【0056】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明の特徴とすると
ころをより一層明らかにする。 実施例1〜4 蒸留液を回収するための冷却器および蒸留液受器を備え
た容量1リットルのガラス製濃縮器(シリコーン油を熱媒
体とする)を用いて、鋼線製造工場(A社)で発生した数種
の廃塩酸(それぞれ0.5リットル)の処理を大気圧下に行
った。
【0057】廃塩酸の分析値および処理条件を表1に示
す。
【0058】
【表1】
【0059】注:実施例4では、連続槽とバッチ槽に由
来する廃塩酸を等量混合して、処理した。
【0060】濃縮液中の鉄(Fe+2+Fe+3)濃度が約300g/l
となる様に、廃塩酸を蒸留液と濃縮液とに分離した。蒸
留液の分析結果と蒸留液および遊離HClの回収率を表2
に示す。
【0061】
【表2】
【0062】注:遊離HClとは、Fe+2+Fe+3などと不結
合状態の分子状のHClを意味する。
【0063】 蒸留液回収率=蒸留液量/廃塩酸量×100 遊離HCl回収率=蒸留液量×蒸留液中遊離HCl/廃塩酸量×
廃塩酸中HCl 以上の結果から、廃塩酸中の鉄濃度が高く、遊離HCl濃
度が低い場合には、蒸留液中のHCl濃度が低く、HCl回収
率が低いことが明らかである。 実施例5〜8 メッキ処理工場(B社)で発生した廃塩酸を原液とし、且
つ試験温度を各濃縮条件に対応した温度とする以外は実
施例1〜4の手法に準じて、処理を行った。廃塩酸の分
析値および処理条件を表3に示し、蒸留液の分析結果と
蒸留液および遊離HClの回収率を表4に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】実施例9 図1に示すフローに従って大気圧で本発明を実施した。
すなわち、鋼線製造工場(C社)で発生した廃塩酸(遊離HC
l=200g/l、Fe(Fe+2+Fe+3=88g/l)を使用して、連続的に
その処理を行い、蒸発缶内部温度と濃縮倍率との関係を
求めた。運転時の各機器における条件は、表5に示す通
りである。
【0067】
【表5】
【0068】結果を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】表6に示す結果から明らかな様に、濃縮液
の温度または比重を測定することにより、原液中の鉄濃
度に対応して、濃縮倍率を決めることができる。
【0071】なお、各濃縮液を系外に取り出したとこ
ろ、常温/常圧下において、2.1倍濃縮時(鉄濃度185g/l)
には、濃縮液は固化しなかった。これに対し、3.5倍濃
縮時(鉄濃度307g/l)には、濃縮液の約50%が、4倍濃縮
時に約90%が、5倍濃縮時に約100%がそれぞれ固化し
た。 実施例10〜11 図1に示すフローに従って大気圧で本発明を実施した。
すなわち、鋼線製造工場(d社)で発生した廃塩酸(連続槽
およびバッチ槽で発生した2種の廃塩酸の等量混合物)
を使用して、その処理を連続的に行った。運転時の各機
器における条件は、実施例9と同様である。廃塩酸の分
析値および濃縮倍率を表7に示す。
【0072】
【表7】
【0073】濃縮液中の鉄(Fe+2+Fe+3)濃度が約300g/l
となる様に、廃塩酸を蒸留液と濃縮液とに分離した。蒸
留液および濃縮液の分析結果などを表8に示す。
【0074】
【表8】
【0075】蒸発缶内濃縮液中の鉄濃度が約300g/lであ
る実施例10および11のいずれにおいても、安定した
長期濃縮処理が可能であった。また、蒸発缶外に取り出
した濃縮液に適量の水を添加して、鉄濃度を200g/l以下
とすることにより、常温下での固化を防止することが出
来た。
【0076】なお、実施例10および11によるコスト
削減率(回収塩酸の使用による塩酸購入費の低減および
減容化による産業廃棄物処理費の低減)を算出すると、
従来法に比して(現時点基準)、実施例10の場合で約40
%であり、実施例11の場合で約30%である。 実施例12 カランドリア型蒸発缶を用い、実施例10の手法に準じ
て、減圧下にメッキ工場廃液(廃塩酸)の濃縮処理を行
った。処理条件を表9に示し、結果を表10に示す。
【0077】
【表9】
【0078】
【表10】
【0079】表9および表10に示す結果から明らかな
様に、減圧下での処理によっても、実施例10とほぼ同
様の廃液処理結果が得られている。 実施例13 カランドリア型蒸発缶を使用し、図1に示すフローに従
って大気圧下に112.5℃で本発明を実施した。すなわ
ち、鋼線製造工場(e社)で発生した廃塩酸(連続槽および
バッチ槽で発生した2種の廃塩酸の混合物)を使用し
て、その処理を連続的に(月曜日午前処理開始/金曜日
午後処理停止の繰り返し)行った。運転時の各機器にお
ける条件は、実施例9と同様である。
【0080】2種の廃塩酸それぞれと両者の混合物の分
析値/処理量を表11に示し、蒸留液の分析値/回収量と
濃縮液の分析値/回収量とをそれぞれ表12と13に示
す。
【0081】
【表11】
【0082】
【表12】
【0083】
【表13】
【0084】その結果、鉄濃度80g/l、塩酸濃度126g/l
の廃塩酸を185リットル/hrの割合で処理して、濃度126g
/lの塩酸水溶液を135.4リットル/hrの割合で回収するこ
とができた。蒸留液回収率は73.2%であり、遊離塩酸回
収率は86.2%であった。
【0085】濃縮液の塩酸濃度は54.7g/l、鉄濃度は300
g/lであり、蒸発缶内での鉄分析出は認められず、長期
にわたる安定した廃塩酸処理が可能であった。また、蒸
発缶から抜き出した濃縮液を工業用水で希釈し、その鉄
濃度を約200g/lとしたところ、常温での鉄分析出は生じ
なかった。
【0086】回収塩酸は、少量の新しい塩酸とともに連
続槽およびバッチ槽に循環して、鋼線処理に使用するこ
とができた。この場合、鋼線処理用塩酸の濃度および純
度はほぼ一定に保持されるので、常に安定した操作が行
われ、所定の時間で高品質の製品が得られた。また、防
食剤を使用する必要はなかった。
【0087】その結果、塩酸回収によるコスト削減、濃
縮液の大幅な減容化によるコスト削減、防食剤の使用省
略などを考慮すると、1年間当たり約1200万円の経費削
減が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による廃水の濃縮処理の一例を示すフロ
ーシートである。
【図2】本発明による廃水の濃縮処理の他の一例を示す
フローシートである。
【符号の説明】
1…廃水タンク 3…廃水ポンプ 5、106…ボイラー 7、109…圧縮機 12…濃縮器 14…冷却器 15…冷却水ライン 17…蒸留液槽 19…スチームトラップ 22…電磁弁 25…濃縮液タンク 26…充填物 111…補助熱源(蒸気)ライン 119…凝縮槽 126…分散器 127…伝熱管 128…デミスター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C23G 3/00 C23G 3/00 B (72)発明者 二川 道夫 大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内 (72)発明者 佐藤 悦郎 大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内 (72)発明者 山田 末和 大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内 (72)発明者 樫本 広男 大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内 Fターム(参考) 4D034 AA11 AA19 CA12 4D076 BA04 CB04 CD25 CD33 DA04 DA05 DA22 DA25 DA28 DA37 EA04Z EA08Z EA12Z EA15Y EA20Z EA49 HA05 JA03 4K053 PA02 PA12 PA13 PA14 RA19 TA16 XA11 XA14 XA24 XA50 YA05 YA10

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】蒸発缶を使用する廃塩酸の処理方法におい
    て、(1)廃塩酸原液を蒸発缶内に導入する工程、
    (2)蒸気を蒸発缶内に供給し、蒸発缶内の液を間接的
    に加熱して、蒸発させる工程、(3)蒸発缶内で発生し
    た蒸気を冷却器で冷却し、これを塩酸水溶液として回収
    する工程、(4)蒸発缶内での加熱・蒸発に利用した蒸
    気の凝縮液を回収する工程、(5)蒸発缶内温度および
    /または廃塩酸原液量に対する蒸留液量の割合を調整す
    ることにより、蒸発缶内濃縮液中の鉄濃度を300g/l以下
    に制御する工程、(6)蒸発缶内の液面高さに対応して
    濃縮液を抜き出し、濃縮液貯槽に送る工程、および
    (7)蒸発缶外に抜き出した濃縮液を希釈することによ
    り、その鉄濃度を200g/l以下に制御する工程を備えたこ
    とを特徴とする廃塩酸の処理方法。
  2. 【請求項2】工程(5)における蒸発缶内温度が、110
    〜120℃である請求項1に記載の廃塩酸の処理方法。
  3. 【請求項3】工程(7)において、蒸発缶からの濃縮液
    の抜き出しを80〜100℃の加熱条件下に行った後、濃縮
    液を希釈する請求項1に記載の塩酸の処理方法。
  4. 【請求項4】蒸発缶内下部および/または濃縮液抜き出
    しラインに外部から蒸気および/または空気を間欠的に
    導入することにより、鉄塩の固化を抑制する請求項1に
    記載の廃塩酸の処理方法。
  5. 【請求項5】工程(7)において、希釈液として、工程
    (4)からの凝縮液および/または廃塩酸原液および/
    または水を使用する請求項1に記載の廃塩酸の処理方
    法。
  6. 【請求項6】蒸発缶が、加熱管を備えた蒸気加熱型装置
    である請求項1に記載の廃塩酸の処理方法。
  7. 【請求項7】蒸発缶が、カランドリア型蒸発缶、縦型多
    管式熱交換器蒸発缶あるいは横型多管式熱交換器蒸発缶
    である請求項6に記載の廃塩酸の処理方法。
  8. 【請求項8】加熱・蒸発用熱源が、ボイラーで発生する
    蒸気および/またはコジェネレーション設備で発生する
    蒸気である請求項1に記載の廃塩酸の処理方法。
  9. 【請求項9】加熱・蒸発熱源が、加熱熱媒および/また
    は高温燃焼排ガスおよび/または電気である請求項1に
    記載の廃塩酸の処理方法。
  10. 【請求項10】加熱・蒸発熱源が、高温・高圧蒸気を減
    圧弁で減圧した蒸気である請求項1、3、4、6、7ま
    たは8に記載の廃塩酸の処理方法。
  11. 【請求項11】加熱・蒸発用熱源が、低温・低圧蒸気を
    圧縮機で圧縮・昇温した蒸気である請求項1、3、4、
    6、7または8に記載の廃塩酸の処理方法。
  12. 【請求項12】圧縮機が、スクリュー型圧縮機である請
    求項11に記載の廃塩酸の処理方法。
  13. 【請求項13】スクリュー型圧縮機のモーター回転数を
    インバーター装置により制御する請求項12に記載の廃
    塩酸の処理方法。
  14. 【請求項14】蒸発缶内発生蒸気量(回収塩酸水溶液
    量)に対応してスクリュー型圧縮機のモーター回転数を
    制御する請求項12または13に記載の廃塩酸の処理方
    法。
  15. 【請求項15】蒸発缶内温度に対応してスクリュー型圧
    縮機のモーター回転数を制御する請求項12または13
    に記載の廃塩酸の処理方法。
  16. 【請求項16】複数個の圧縮機が設けられている請求項
    11に記載の廃塩酸の処理方法。
  17. 【請求項17】工程(7)において、蒸発缶内の塔底液
    をポンプで抜き取り、廃塩酸原液の導入ラインへ循環す
    る請求項1に記載の廃塩酸の処理方法。
  18. 【請求項18】加熱・蒸発用熱源として使用した蒸気の
    凝縮液をボイラー給水として使用する請求項1に記載の
    廃塩酸の処理方法。
  19. 【請求項19】蒸発缶内液面の上方空間部にデミスター
    を設けた請求項1に記載の廃塩酸の処理方法。
  20. 【請求項20】加熱側の蒸気ラインに、蒸発缶内の非凝
    縮性気体の自動的排出を定期的に行うための電磁弁を設
    けた請求項1に記載の廃塩酸の処理方法。
  21. 【請求項21】スタートアップ時または長期運転時に蒸
    発缶内伝熱管の汚れによる蒸発量の低下に対応するため
    に、補助熱源を蒸発缶内底部へ導入する請求項1に記載
    の廃塩酸の処理方法。
  22. 【請求項22】スタートアップ時または長期運転時に蒸
    発缶内伝熱管の汚れによる蒸発量の低下に対応するため
    に、補助熱源を圧縮機出口ラインへ導入する請求項11
    に記載の廃塩酸の処理方法。
  23. 【請求項23】補助熱源が蒸気である請求項21または
    22に記載の廃塩酸の処理方法。
  24. 【請求項24】蒸発缶内伝熱管の汚れによる伝熱係数の
    低下が生じた場合、運転中に廃塩酸原液の供給を一時的
    に中断し、水を供給することにより、汚れを洗浄・除去
    する請求項1に記載の廃塩酸の処理方法。
  25. 【請求項25】工程(6)において、液面高さを示す信
    号に対応して濃縮液を塔底から抜き出す請求項1に記載
    の廃塩酸処理方法。
  26. 【請求項26】工程(6)において、蒸発缶内の液面に
    相当する位置で、蒸発缶底部と連通するオーバーフロー
    管から濃縮液を抜き出す請求項1に記載の廃塩酸の処理
    方法。
  27. 【請求項27】工程(3)において、蒸発缶内で発生す
    る蒸気を冷却・凝縮させて塩酸として回収した後、鉄鋼
    製品の表面処理に使用する請求項1に記載の廃塩酸の処
    理方法。
  28. 【請求項28】回分式および/または連続式の鉄鋼製品
    処理槽から廃塩酸原液を連続的に抜き出し、処理する請
    求項1に記載の廃塩酸の処理方法。
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