JP2000281518A - 抗菌防黴剤 - Google Patents

抗菌防黴剤

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JP2000281518A JP8398499A JP8398499A JP2000281518A JP 2000281518 A JP2000281518 A JP 2000281518A JP 8398499 A JP8398499 A JP 8398499A JP 8398499 A JP8398499 A JP 8398499A JP 2000281518 A JP2000281518 A JP 2000281518A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】優れた安定性と抗菌効果と共に、優れた防黴効
果が認められ、かつ、安価な、無機系の抗菌防黴剤を提
供すること。 【解決手段】平均粒子径が50〜100nmである一次粒
子が面状に集合した酸化亜鉛であって、かつ、そのln
360nm /lnT400nm (Txnm :Xnmの透過光での透
過率)の値が10以上である酸化亜鉛、特に、以下の形
態上の特徴を有する、上記の酸化亜鉛を有効成分とする
抗菌防黴剤を提供することにより、上記の課題を解決し
得ることを見出した。 平均粒子径が50〜100nmの酸化亜鉛の一次粒子が
面状に集合した、これらの一次粒子一個分の厚さの凹凸
面を有する酸化亜鉛である。 上記記載の酸化亜鉛の差し渡し径が0.01〜5μ
m である。 上記記載の酸化亜鉛の面のエッジ部分に10〜2
00nmおきに不規則に10〜200nmの凹凸が生じてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌防黴剤に関す
る技術分野の発明である。
【0002】
【従来の技術】現在、衣食住に関わる極めて広範囲の分
野において多様な抗菌防黴剤が使用されており、これら
は有機系の抗菌防黴剤と無機系の抗菌防黴剤に大別され
る。
【0003】有機系の抗菌防黴剤としては、パラベン、
トリクロサン、第4級アンモニウム塩、塩酸クロルヘキ
シジン、チアベンダゾール等が用いられており、無機系
の抗菌防黴剤としては銀担持ゼオライトや酸化チタン光
触媒等が用いられている。
【0004】これらの抗菌防黴剤は、前述のように、日
用雑貨類や化粧品等の衣食住に関する多く種類の製品に
おいて用いられ、これらの製品の、細菌や黴による汚染
や変質が防止されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の抗菌防黴剤は、現状において、必ずしも満足されてい
るとはいえない。
【0006】すなわち、有機系の抗菌防黴剤は、無機系
の抗菌防黴剤に比べて、配合量における制約が認めら
れ、さらに熱やpHの変化等により、抗菌防黴剤が損な
われてしまう等、その経時的安定性に課題が認められて
いる。
【0007】一方、無機系の抗菌防黴剤は、熱や薬品に
よる影響は比較的受けにくいものの、有機系の抗菌防黴
剤に比べると、一般的に、防黴効果に課題が認められる
ことが指摘されている。さらに、例えば、銀担持ゼオラ
イト等、一般的に高価である場合が多く、コスト面にお
いても課題が認められている。
【0008】本発明が解決するべき課題は、優れた安定
性と抗菌効果と共に、優れた防黴効果が認められ、か
つ、安価な、無機系の抗菌防黴剤を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、この課題の
解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者
は、特定の製法で製造し得る、特徴的な形態を有する、
無機系の原料としては比較的安価な酸化亜鉛(国際出願
番号PCT/JP98/05165に係わる明細書ない
しこれに基づく国際公開公報に開示されている)におい
て、驚くべきことに、優れた抗菌効果と同時に、優れた
防黴効果が認められることを見出し、本発明を完成し
た。
【0010】すなわち、本発明者は、本願において、平
均粒子径が50〜100nmである一次粒子が面状に集合
した酸化亜鉛であって、かつ、そのlnT360nm /ln
40 0nm (Txnm :Xnmの透過光での透過率)の値が1
0以上である酸化亜鉛、特に、以下の形態上の特徴を有
する、上記の酸化亜鉛を有効成分とする抗菌防黴剤を提
供する。
【0011】平均粒子径が50〜100nmの酸化亜鉛
の一次粒子が面状に集合した、これらの一次粒子一個分
の厚さの凹凸面を有する酸化亜鉛である。 上記記載の酸化亜鉛の差し渡し径が0.01〜5μ
m である。 上記記載の酸化亜鉛の面のエッジ部分に10〜2
00nmおきに不規則に10〜200nmの凹凸が生じてい
る。 なお、ここで、酸化亜鉛の「差し渡し径」とは、一次粒
子が面状に集合した酸化亜鉛において、その距離が最大
になるように選んだ二点間の距離(最長径)を意味す
る。
【0012】この本発明に係わる抗菌防黴剤(以下、本
発明抗菌防黴剤という)の有効成分である酸化亜鉛(以
下、本発明に関連する酸化亜鉛という)は、以下の製造
方法により製造され得る酸化亜鉛の凝集体を、粉砕する
ことにより製造される。
【0013】すなわち、水を反応溶媒として、亜鉛イオ
ン(Zn2+:例えば、塩化亜鉛,硫酸亜鉛,硝酸亜鉛等
の亜鉛の強酸塩により供与される)、炭酸イオン(CO
3 2-:例えば、炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム等
の炭酸塩により供与される)及び水酸イオン(OH-
例えば、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム等の
強塩基により供与される)を、反応水溶液のpHを7〜
9に保ち、かつ、水酸イオンの炭酸イオンに対するモル
比を4倍以内(水酸イオンが0モルである場合を含む
が、概ね2.5〜3.5倍)に設定して反応させ(好ま
しくは40℃〜70℃で反応させる)、この反応水溶液
中に生成する塩基性炭酸亜鉛を焼成する(150℃〜4
50℃)ことにより、上記の酸化亜鉛の凝集体(以下、
本発明に関連する酸化亜鉛の凝集体という)が製造され
る。
【0014】なお、本発明抗菌防黴剤の有効成分として
は、上記の本発明に関連する酸化亜鉛と共に、同酸化亜
鉛の凝集体を用いることも可能である。さらに、本発明
においては、本発明抗菌防黴剤を含有する、塗料組成物
等としての態様で用いられ得る抗菌防黴組成物(以下、
本発明抗菌防黴組成物という)を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。 A.本発明抗菌防黴剤について 本発明抗菌防黴剤の有効成分は、上述したように、本発
明に関連する酸化亜鉛又はこの酸化亜鉛の凝集体であ
る。
【0016】本発明に関連する酸化亜鉛は、上述のよう
に、平均粒子径が50〜100nmである一次粒子が面状
に集合した酸化亜鉛であって、かつ、そのlnT360nm
/lnT400nm (Txnm :Xnmの透過光での透過率)の
値が10以上である酸化亜鉛である。
【0017】本発明において、酸化亜鉛のlnT360nm
/lnT400nm (Txnm :Xnmの透過光での透過率)の
値が、本発明に関連する酸化亜鉛を規定する性質を有す
るか否かの指標となる。
【0018】このlnT360nm /lnT400nm は、長波
長紫外線に対する遮蔽性と可視光線に対する透過性との
関係を表す指標である。つまり、長波長紫外線(λ=3
60nm)に対する透過率の対数と、可視光線(λ=40
0nm)に対する透過率の対数との比をとることによっ
て、対象となる酸化亜鉛の透明度と長波長紫外線に対す
る遮蔽性の双方の要素が同時に勘案されて、本発明に関
連する酸化亜鉛の性質が規定される。
【0019】このlnT360nm /lnT400nm の値が大
きければ、可視光線に対する透過率が高く透明性に優
れ、かつ、長波長紫外線の透過率が低く、長波長紫外線
の遮蔽性に優れることを意味する。
【0020】本発明に関連する酸化亜鉛は、このlnT
360nm /lnT400nm の値が、10以上であることによ
って規定される。言い換えれば、この本発明に関連する
酸化亜鉛は、「一次粒子が面状に集合した酸化亜鉛」
を、少なくとも一つの単位としている酸化亜鉛であり、
かつ、「lnT360nm /lnT400nm の値が、10以上
である」という性質を有する限り、その全体としての形
状は特に限定されるものではない。後述する「本発明に
関連する酸化亜鉛の凝集体」と、この本発明に関連する
酸化亜鉛とは、この酸化亜鉛が、「lnT360nm /ln
400nm の値が、10以上である」という性質を有する
のに対し、「酸化亜鉛の凝集体」は、このような、長波
長紫外線に対する遮蔽性と可視光線に対する透過性を、
それ自体としては伴わないという点において異なる。
【0021】本発明に関連する酸化亜鉛は、概ね、水を
反応溶媒として、亜鉛イオン(Zn 2+)、炭酸イオン
(CO3 2- )及び水酸イオン(OH- )を、反応水溶液
のpHを7〜9に保ち、かつ、水酸イオンの炭酸イオン
に対するモル比を4倍以内(水酸イオンが0モルである
場合を含む)に設定して反応させ、この反応水溶液中に
生成する塩基性炭酸亜鉛を焼成することにより生成す
る、その微視的形態が、いわばカーネーションの花のよ
うに、本発明に関連する酸化亜鉛が互いに凝集した形態
の酸化亜鉛の凝集体を、通常公知の手段により、粉砕す
ることにより製造される。
【0022】上記の亜鉛イオンの供与物質としては、例
えば、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛等の亜鉛の強酸塩
が挙げられる。また、上記の炭酸イオンの供与物質とし
ては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸
塩が挙げられる。さらに上記の水酸イオンの供与物質と
しては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基
が挙げられる。
【0023】通常、上記工程により生成される塩基性炭
酸亜鉛は、亜鉛イオンが溶解している水溶液と、炭酸イ
オンと水酸イオンが溶解している水溶液を、反応水溶液
のpHが7〜9に保たれるように混合することにより製
造することができる。
【0024】上記の炭酸イオンと水酸イオンのモル比
は、炭酸イオン1に対して水酸イオンが4以下(水酸イ
オンが0モルの場合を含む)が好ましく、同じく炭酸塩
1に対して強塩基が2.5〜3.5であることが、特に
好ましい。
【0025】この両アルカリイオンのモル比において、
炭酸イオンが過剰になると、反応溶液中に反応しないで
残留する炭酸イオンが蓄積することになり、その結果、
上述の酸化亜鉛の凝集体の微視的な形態がカーネーショ
ンの花状ではなく、カード状ないし板状になり、これを
粉砕しても、抗菌防黴効果が緩徐な酸化亜鉛しか提供さ
れず、好ましくない。また、水酸イオンが過剰になる
と、上記の酸化亜鉛の凝集体において、米状の巨大な粒
子が認められ、これを粉砕しても、抗菌防黴効果が緩徐
な酸化亜鉛が提供されることになり好ましくない。
【0026】上述の反応水溶液における、塩基性炭酸亜
鉛生成工程は、反応水溶液における炭酸イオンの消費量
が適切である限り、特に、その態様が限定されるもので
はない。すなわち、上述のように、炭酸イオン及び水酸
イオンを含むアルカリ性混合液と、酸性の亜鉛イオン溶
液を滴下して行うことも可能であり、炭酸イオン溶液及
び水酸イオン溶液を、別々に滴下することも可能であ
り、さらに経時的に反応水溶液中に炭酸イオンが蓄積す
ることを考慮して、徐々にアルカリ性混合液における炭
酸イオン量を、反応水溶液における炭酸イオンの蓄積量
に応じて減じることも可能である。
【0027】上述のごとく、反応水溶液のpHは7〜9
が適切である。このpHが9を超えると、生成する上述
の酸化亜鉛の凝集体において、米状の粒子やテトラポッ
ト状の粒子が発生し、これを粉砕しても、抗菌防黴効果
が緩徐な酸化亜鉛が提供されることになり好ましくな
い。また、このpHが7未満であると、塩基性炭酸亜鉛
の生成効率が極端に低下することになり好ましくない。
【0028】また、反応水溶液の温度は40〜70℃で
あることが好ましい。この温度が40℃未満になると、
塩基性炭酸亜鉛の生成効率が低下し、70℃を超えると
米状の粒子やテトラポット状の粒子が発生し、抗菌防黴
効果が緩徐な酸化亜鉛が提供されることになり好ましく
ない。
【0029】塩基性炭酸亜鉛から本発明に関連する酸化
亜鉛の凝集体を生成するための焼成は、概ね150℃〜
450℃の範囲で行うことが好ましい。焼成温度が45
0℃を超えると、酸化亜鉛の粒子の焼結が過度に進行し
て、製造される酸化亜鉛の凝集体の抗菌防黴効果が低下
することになり好ましくない。また、焼成温度が150
℃未満であると、焼成による脱炭酸反応の進行が著しく
緩徐になり実用性に乏しく、好ましくない。
【0030】焼成時間は、設定した焼成温度に応じて適
宜選択することができる。すなわち、焼成温度を低く設
定した場合には長時間の焼成を必要とし(例えば150
℃では数日間の焼成が必要である)、高く設定した場合
には短時間の焼成時間で脱炭酸反応が完了する(例えば
250℃では数時間の焼成で脱炭酸反応が完了する)。
【0031】このように、塩基性炭酸亜鉛を焼成するこ
とにより、本発明に関連する酸化亜鉛が、互いに、いわ
ばカーネーションの花状の微視的な形態となるように凝
集した、本発明に関連する酸化亜鉛の凝集体を得ること
ができる。
【0032】この本発明に関連する酸化亜鉛の凝集体の
微視的な形態は、カーネーションの花状であるが、かか
る凝集体一単位の全体的な形態は、上述の反応条件によ
っても変わり得るものであり、特に限定されるものでは
ない。
【0033】上述のような工程を経て得られる、本発明
に関連する酸化亜鉛の凝集体を、粉砕することにより、
本発明に関連する酸化亜鉛を製造することができる。か
かる粉砕手段は、粉体の粉砕において用いられている通
常公知の粉砕手段を用いることができる。具体的には、
三本ローラー、超音波破砕器、ビーズミル、モーターミ
ル、リングミル、アトマイザー、パルベライザー等、好
ましくは、三本ローラー、モーターミルによる機械的な
粉砕を、本発明に関連する酸化亜鉛の凝集体に対して行
うことにより、本発明に関連する酸化亜鉛を製造するこ
とができる。
【0034】このようにして、平均粒子径が50〜10
0nmである一次粒子が面状に集合した酸化亜鉛であっ
て、かつ、そのlnT360nm /lnT400nm (Txnm
Xnmの透過光での透過率)の値が10以上である、本発
明に関連する酸化亜鉛が提供される。
【0035】この本発明に関連する酸化亜鉛は、以下の
ような外観を有する。 平均粒子径が50〜100nmの酸化亜鉛の一次粒子が
面状に集合した、これらの一次粒子一個分の厚さの凹凸
面を有する酸化亜鉛である。 上記記載の酸化亜鉛の差し渡し径が0.01〜5μ
m である。 上記記載の酸化亜鉛の面のエッジ部分に10〜2
00nmおきに不規則に10〜200nmの凹凸が生じてい
る。
【0036】このようにして製造され得る、本発明に関
連する酸化亜鉛又はその凝集体には、優れた抗菌防黴効
果が認められ、本発明抗菌防黴剤の有効成分として用い
られる。
【0037】なお、本発明に関連する酸化亜鉛やその凝
集体に、常法により、撥水処理等の表面処理を施し、こ
れを本発明抗菌防黴剤の有効成分とすることも可能であ
る。また、本発明に関連する酸化亜鉛又はその凝集体
は、そのまま、粉体形態の本発明抗菌防黴剤として用い
ることも可能であり、適宜、必要に応じて、他の成分と
共に組み合わせた形態で、本発明抗菌防黴剤を構成する
ことも可能である。
【0038】本発明抗菌防黴剤における、本発明に関連
する酸化亜鉛又はその凝集体の配合量は、具体的な形態
や用途等により、適宜選択されるべきものであり、剤全
体の100重量%の場合を含めて特に限定されるもので
はない。
【0039】本発明抗菌防黴剤に配合され得る、他の成
分は、本発明の所期の効果である、抗菌防黴効果を妨げ
ない限り特に限定されず、例えば、水、エタノール、シ
リコーンオイル等の液体成分;ポリ塩化ビニル、セルロ
ースの酢酸エステル、セルロースのプロピオン酸エステ
ル、ポリプロピレン、ポリエステル、塩素化ポリエステ
ル、ナイロン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の樹脂
類;酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、タルク、カオリ
ン、マイカ、セリサイト等の無機粉体等を、必要に応じ
て配合することができるが、これらの成分に限定される
ものではない。
【0040】これらの他の成分は、本発明抗菌防黴剤の
有効成分である、本発明に関連する酸化亜鉛又はその凝
集体に付随させることにより、所望する抗菌防黴効果を
発揮させることを第一義として配合される成分である。
つまり、これらの他の成分は、本発明抗菌防黴組成物
(後述する)における用途(例えば、塗料組成物として
の用途や外用組成物としての用途)を満足させるため
に、本発明抗菌防黴組成物に配合される諸成分とは、そ
の意味合いが異なる成分である。
【0041】本発明抗菌防黴剤の用途は、実に多様であ
り、例えば、壁、天井などの屋内塗料や床材、壁紙等の
建築部材、さらに日用製品の原材料となる樹脂、紙、繊
維等において用いることにより、優れた抗菌防黴効果が
発揮される。
【0042】B.本発明抗菌防黴組成物について 本発明抗菌防黴組成物は、上述したような本発明抗菌防
黴剤の多様な用途に対応した、優れた抗菌防黴効果が認
められる、本発明抗菌防黴剤を含有する組成物である。
この本発明抗菌防黴組成物の具体的な態様は、特に限定
されず、例えば、塗料組成物や外用組成物としての態様
を採り得る。
【0043】本発明抗菌防黴組成物における、本発明抗
菌防黴剤の含有量は、組成物の具体的な態様や目的等に
よって、適宜選択され得るものであり、特に限定される
べきものではない。
【0044】また、本発明抗菌防黴組成物においては、
その使用前においても使用後においても、本発明抗菌防
黴剤が、可能な限り分散した状態で存在していること
が、その抗菌防黴効果が、より効果的に発揮され得ると
いう点において好ましい。よって、本発明抗菌防黴組成
物においては、本発明抗菌防黴剤を、組成物内において
分散させるための手段、例えば、攪拌や組成物の構成に
応じた分散剤の使用等を行うことができる。
【0045】本発明抗菌防黴組成物の代表的な態様の一
つである塗料組成物は、最初は流動性を有し、物の表面
に塗り広げて付着させ、その後、乾燥過程を経て連続被
膜を形成させるための組成物である。
【0046】塗料組成物においては、その使用される環
境によっては、黴や細菌の存在によって、塗布面が汚染
されてしまうという問題点が、常に付きまとう。特に、
風呂場等の湿った環境において用いられる場合には、塗
布面が、黴によって、容易に汚染されてしまうことは、
よく知られている事実である。
【0047】本発明抗菌防黴組成物を、塗料組成物とし
て用いることにより、このような黴や細菌による汚染
を、極めて効果的に防ぐことが可能である。塗料組成物
として用いられる本発明抗菌防黴組成物には、本発明抗
菌防黴剤の他に、通常、塗料組成物中に配合され得る成
分が、本発明の所期の効果を妨げない限度で配合され得
る。
【0048】具体的には、塗膜形成成分として、重合
油、天然若しくは合成樹脂、セルロースやゴム誘導体等
の高分子物質等の塗膜形成主要成分;可塑剤、乾燥剤、
硬化剤、皮張り防止剤、流動性調整剤(増粘剤、平坦化
剤等)、たれ防止剤、防さび剤等の塗膜形成状助成分;
各種の顔料等を、本発明抗菌防黴組成物中に配合するこ
とができる。
【0049】また、上記の塗膜形成成分を溶解するため
の溶剤も、適宜選択して用いることができる。この態様
の本発明抗菌防黴組成物は、各種の塗料、例えば、建築
塗料、石材塗料、車両塗料、船舶・船底塗料、木材塗
料、機具塗料、標識塗料、電気絶縁塗料、導電・半導電
塗料、耐薬品性塗料、防食塗料、耐熱塗料、防火塗料、
示温塗料、発光塗料、殺虫塗料等に広く用いることが可
能である。
【0050】また、本発明抗菌防黴組成物が、化粧料等
の外用組成物である場合、本発明抗菌防黴剤の有効成分
として用いられる、本発明に関連する酸化亜鉛が、抗菌
防黴効果と同時に、非常に優れる紫外線遮蔽効果と透明
性を兼ね備えているため、外用組成物において、これら
の光学面の効果を発揮させつつ、従来、配合されている
パラベン等の有機系の抗菌防黴剤の配合を省略又は減量
することが可能になる(これらの光学的な効果を企図せ
ず、純粋に「抗菌防黴剤」として用いることも勿論可能
である)。
【0051】
【実施例】以下、本発明を実施例等において、より具体
的に説明するがこの実施例により本発明の技術的範囲が
限定解釈されるべきものではない。 〔製造例〕 本発明に関連する酸化亜鉛の製造 反応容器に1000mlのイオン交換水を入れ、これを6
0℃に加熱して、この温度を維持した(反応水溶液)。
【0052】これとは別に、炭酸ナトリウム(炭酸ナト
リウム10水塩)と水酸化ナトリウムとを1:3.25
のモル比率で、200mlのイオン交換水に溶解したアル
カリ調整液を調製した。
【0053】ポンプを接続したpHコントローラーを用
いて、上記の反応水溶液のpHを8.0に保ちながら、
1.0M塩化亜鉛水溶液(0.1M塩酸を含む)及び上
記アルカリ調整液を滴下した。
【0054】塩化亜鉛水溶液を1000ml滴下した時点
で、滴下を終了し、0.4μm フィルターで、反応液を
ろ過して、ひき続き、水洗とろ過を3回繰り返した。こ
のようにして得た残査を、150℃で12時間乾燥した
後、400℃で2時間の焼成を施し、本発明に関連する
酸化亜鉛の凝集体を得た。
【0055】この凝集体を粉砕後、100メッシュの篩
をかけて、所望する本発明に関連する酸化亜鉛の粉末を
回収した。 〔試験例1〕 抗菌防黴試験 上記製造例により得られた本発明に関連する酸化亜鉛の
粉末を、製剤用打錠機を用いて直径8mmの円盤状に打錠
成型し、これを、あらかじめ前培養していたアオカビ
(Penicillium sp.)、クロカビ(Aspergillus niger
)、カンジダ菌(Candida albicans ATCC10231)、大
腸菌(Escherichia coli ATCC8739 )、黄色ブドウ球菌
(Stapyhlococcus aureus FDA209P )の各供試菌株を塗
布した培地上に静置した。
【0056】このようにして調製した、培養サンプル
を、アオカビ、クロカビ、カンジダ菌については、25
℃で72時間、その他のバクテリアについては、30℃
で48時間培養し、本発明に関連する酸化亜鉛の存在に
より生成した、これらの微生物の生育阻止帯を観察した
(試験品1)。
【0057】なお、比較品1として、幅広い抗菌スペク
トルを持つ無機系抗菌剤として知られている「Zeomic」
〔(株)シナネンゼオミック社製〕を、比較品2とし
て、現在、化粧料において最も一般的に用いられている
酸化亜鉛で、抗菌能が認められている「亜鉛華」
〔(株)正同化学社製〕を、上記の本発明に関連する酸
化亜鉛の粉末と同様に、直径8mmの円盤状に打錠成型
し、各カビ、酵母およびバクテリアの各供試菌株を塗布
した培地上に静置し、上記と同様の条件で、生成したこ
れらの微生物の生育阻止帯の直径を測定した。生育阻止
帯の直径が大きいほど、抗菌防黴能に優れていることが
示される。
【0058】この抗菌防黴試験の結果を、第1表に示す
(表中の数字はmmを表す)。
【0059】
【表1】 第 1 表 ──────────────────────────────────── 供 試 微 生 物 試験品1 比較品1 比較品2 ──────────────────────────────────── アオカビ 15 0 0 クロカビ 25 11 12 カンジダ菌 30 11 0 大腸菌 10 11 14 黄色ブドウ球菌 14 14 17 ──────────────────────────────────── この結果から、実施例1の粉末は各供試菌に対し抗菌防
黴性を有しており、特に現在知られている無機系の抗菌
剤と比較して、カビ(アオカビ、クロカビ)及び酵母
(カンジダ菌)に対する効果が優れていることが判明し
た。
【0060】〔製造例2〕 本発明抗菌防黴剤を配合し
た抗菌防黴塗料の製造 製造例1で得られた粉末を用いて抗菌防黴塗料を製造し
た(試験品2)。また、比較品3として、試験品2にお
ける酸化亜鉛粉末を、前記の「Zeomic」〔(株)シナネ
ンゼオミック社製〕と置換した塗料を、比較例4とし
て、試験品2における酸化亜鉛粉末を抜去した塗料を、
常法により製造した。
【0061】これらの塗料の組成を、第2表に示す。
【0062】
【表2】 第 2 表 ──────────────────────────────────── 配合成分 配合量(g ) ──────────────────── 試験品2 比較品3 比較品4 ──────────────────────────────────── ルミフロンLF200*1 10.4 10.4 10.4 (旭硝子(株)社製) ──────────────────────────────────── キシレン(和光純薬工業(株)社製) 8.3 8.3 8.3 ──────────────────────────────────── コロネートHX*2 25.0 25.0 25.0 (日本ポリウレタン(株)社製) ──────────────────────────────────── 製造例1の酸化亜鉛粉末 4.0 − − ──────────────────────────────────── Zeomic − 4.0 − ──────────────────────────────────── *1:フッ素系樹脂 *2:硬化剤 〔試験例2〕 塗料の防黴試験(1) 試験品2、比較品3及び比較品4の塗料を用いて、これ
らの塗料の抗菌防黴試験を行った。
【0063】具体的には、100mm×100mm×10mm
に切断した木材(ヒノキ)のサンプル表面に、これらの
塗料を、塗料用刷毛で塗布し、80℃で15時間乾燥し
た。これらの木材サンプル3枚と、表面に何も塗布して
いない木材サンプルの計4枚を、カビ汚染の激しい風呂
場の壁に固定し、これらの木材サンプルの表面に生育す
るカビの様子を、目視で観察した(塗布後、2週間後、
4週間後、8週間後及び12週間後において観察し
た)。
【0064】なお、この風呂場に主に生育しているカビ
は、クラドスポリウム(Cladosporium)属であった。この
木材サンプル表面の観察結果を、第3表に示す。
【0065】
【表3】 第 3 表 ──────────────────────────────────── 試料(塗料) 2週間後 4週間後 8週間後 12週間後 ──────────────────────────────────── 試験品2 − − − − 比較品3 − − + + 比較品4 − + + ++ 塗布なし − + ++ ++ ──────────────────────────────────── (−:カビの生育が観察されない、+:少しカビの生育が観察される、++:カ ビの生育が激しい) このように、試験品2は、他のサンプルと比較して、経
時的に非常に優れた防黴効果を発揮していることが明ら
かになった。
【0066】このことは、本発明抗菌防黴剤を、配合し
た製品にも、非常に優れた防黴効果が認められること
を、明らかに示すものである。 〔試験例3〕 塗料の防黴試験(2) 第1図に示すように、10mm×10mm×3mmの白色タイ
ル12枚を市販のタイル用目地材を用いて、2.5mmの
間隔をおいて固定し固化させ試験サンプルとした(第1
図において、1がタイルで、2が固化させた目地材であ
る)。
【0067】このサンプルの表面に、上記の試験品2、
比較品3及び比較品4の塗料を、塗料用刷毛で塗布し8
0℃で15時間乾燥した。これら3枚と、表面に何も塗
布していないタイル目地サンプルの計4枚を用いて、防
黴試験を行った。
【0068】すなわち、これらのサンプルを角シャーレ
に入れ、アオカビ及びクロカビの野性株を含んだ水を噴
霧した。その後、サンプルの静置温度を25℃に保持
し、3〜4日に1度、希釈した上記のカビの培養液を噴
霧し、1週間ごとにサンプル表面のカビの生育状態を、
目視で観察した。その結果を、第4表に示す。
【0069】
【表4】 第 4 表 ──────────────────────────────────── 試料(塗料) 2週間後 4週間後 8週間後 12週間後 ──────────────────────────────────── 試験品2 − − − + 比較品3 − + + ++ 比較品4 + + ++ ++ 塗布なし + + ++ ++ ──────────────────────────────────── (−:カビの生育が観察されない、+:少しカビの生育が観察される、++:カ ビの生育が激しい) このように、試験品2の塗料を用いたサンプルは、他の
塗料を用いたサンプルと比較して、明らかに優れた防黴
性を発揮し得ることが明らかになった。なお、Zeom
ic((株)シナネンゼオミック社製)を含有する比較
品3の塗料を用いたサンプルは、塗料自体が茶色に変色
してしまい、タイルの意匠性が著しく損なわれてしまっ
た。
【0070】
【発明の効果】本発明により、優れた安定性と抗菌効果
と共に、優れた防黴効果が認められ、かつ、安価に提供
され得る、無機系の抗菌防黴剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例3のサンプルの構成を示した図面であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 和田 正良 神奈川県横浜市港北区新羽町1050番地 株 式会社資生堂第1リサーチセンター内 Fターム(参考) 4H011 AA02 AA03 BA04 BB18 BC03 BC18 BC19 DA19 DC01 DC05 DD05 DD06 DF02 DF03 DG02 DH02 DH03 DH04 DH06 DH10 4J038 EA011 HA216 KA20 MA14

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平均粒子径が50〜100nmである一次粒
    子が面状に集合した酸化亜鉛であって、かつ、そのln
    360nm /lnT400nm (Txnm :Xnmの透過光での透
    過率)の値が10以上である酸化亜鉛又はこの酸化亜鉛
    の凝集体を有効成分とする抗菌防黴剤。
  2. 【請求項2】請求項1記載の抗菌防黴剤において、酸化
    亜鉛が、以下の形態上の特徴を有する酸化亜鉛である、
    抗菌防黴剤: 平均粒子径が50〜100nmの酸化亜鉛の一次粒子が
    面状に集合した、これらの一次粒子一個分の厚さの凹凸
    面を有する酸化亜鉛である; 上記記載の酸化亜鉛の差し渡し径が0.01〜5μ
    m である; 上記記載の酸化亜鉛の面のエッジ部分に10〜2
    00nmおきに不規則に10〜200nmの凹凸が生じてい
    る。
  3. 【請求項3】請求項1又は2の請求項記載の抗菌防黴剤
    において、酸化亜鉛の凝集体が、水を反応溶媒として、
    亜鉛イオン(Zn2+)、炭酸イオン(CO3 2-)及び水
    酸イオン(OH- )を、反応水溶液のpHを7〜9に保
    ち、かつ、水酸イオンの炭酸イオンに対するモル比を4
    倍以内(水酸イオンが0モルである場合を含む)に設定
    して反応させ、この反応水溶液中に生成する塩基性炭酸
    亜鉛を焼成することにより製造され得る酸化亜鉛の凝集
    体である、抗菌防黴剤。
  4. 【請求項4】請求項1ないし3のいずれかの請求項記載
    の抗菌防黴剤において、酸化亜鉛が、これらの請求項に
    記載されている酸化亜鉛の凝集体を粉砕することにより
    製造される酸化亜鉛である、抗菌防黴剤。
  5. 【請求項5】請求項1ないし4のいずれかの請求項記載
    の抗菌防黴剤を含有する抗菌防黴組成物。
  6. 【請求項6】抗菌防黴組成物が塗料組成物である、請求
    項5記載の抗菌防黴組成物。
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