JP2000254794A - 高靭性鉄系溶接金属 - Google Patents

高靭性鉄系溶接金属

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JP2000254794A
JP2000254794A JP6050599A JP6050599A JP2000254794A JP 2000254794 A JP2000254794 A JP 2000254794A JP 6050599 A JP6050599 A JP 6050599A JP 6050599 A JP6050599 A JP 6050599A JP 2000254794 A JP2000254794 A JP 2000254794A
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Hitoshi Hatano
等 畑野
Hiroyuki Morimoto
啓之 森本
Akira Yamamoto
山本  明
Fusaki Koshiishi
房樹 輿石
Tsuyoshi Kurokawa
剛志 黒川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 全姿勢溶接で優れた溶接作業性で形成するこ
とができ、しかも耐気孔性や靭性が優れる高靭性鉄系溶
接金属を提供する。 【解決手段】 C:0.01〜0.15%、Si:0.
5%以下(0%を含まない)、Mn:0.5〜2.5
%、Ni:0.1〜3.0%、Al:1.0〜2.5%
およびCu:0.05〜1.5%を夫々含有すると共
に、N:0.10%以下(0%を含む)に抑制し、且つ
下記(1)式を満足する。 [Ni]+[Cu]≧0.7% ……(1) 但し、[Ni]および[Cu]は、夫々NiおよびCuの含有量
(質量%)を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、セルフシールドアーク
溶接によって形成される鉄系溶接金属に関するものであ
り、殊に全姿勢溶接で優れた溶接作業性で溶接されるも
のであり、しかも耐気孔性および靭性が求められる溶接
構造物に適する高靭性鉄系溶接金属に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】セルフシールドアーク溶接は、フラック
ス入りワイヤを用いて、外部からシールドガスを供給し
ないで行なう溶接法であり、この溶接法ではシールドガ
スやフラックスを別途供給する必要がないので溶接作業
性が良く、しかも風による影響も少ないので建築現場等
の屋外や高所での溶接作業に適しているといわれてい
る。
【0003】こうした溶接法で用いるフラックス入りワ
イヤとは、金属鞘内にフラックスを充填したものであ
り、ここで使用されるフラックスの一般的組成はスラグ
形成剤またはシールド剤としての弗化物、脱酸・脱窒剤
としてのAl、脱酸・シールド剤としてのMg等を主成
分とするものである。
【0004】しかしながらこの溶接法は、現在のところ
その用途は土木・建築等における屋外溶接の特定分野に
限られており、十分に活用されているとは言い難い。こ
の様に用途が限定され、他分野への普及が遅れている理
由としては、フラックス入りワイヤを用いるガスシール
ドアーク溶接に比べて、アーク安定性が悪く、スパッタ
やヒュームの発生量が多く、しかも全姿勢での溶接性が
悪い等、こうした意味での溶接作業性が悪いという問題
がある(以下、本発明では、「溶接作業性」をこうした
意味で用いる)。またセルフシールドアーク溶接は、外
部からシールドガスを供給しないで行なうので、溶接金
属は大気中の窒素や酸素を吸収してブローホール(気
孔)が発生し易く、しかも一般に靭性が低いという欠点
がある。
【0005】こうした溶接作業性を改善するために、こ
れまでにも様々な技術が開発されている。例えば、特開
平4−13497号や同3−118993号等には、金
属弗化物、Al、Mg、MnおよびC等、ワイヤ中のフ
ラックス成分を調整することが提案されている。しかし
ながらこれらの技術では、溶接金属の靭性が依然として
十分ではないという難点がある。
【0006】一方、溶接金属の靭性を向上させるという
観点から、Li酸化物、塩基性及び中性酸化物、並びに
鉄系酸化物といったフラックス成分を調整することも提
案されている(例えば、特公昭62−25479号、同
58−57280号および特開平5−393号等)。し
かしながら、これらの技術においても、靭性と溶接作業
性とを両立させるには至っていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした状況
の下でなされたものであって、その目的は、全姿勢溶接
で優れた溶接作業性で形成することができ、しかも耐気
孔性や靭性が優れる高靭性鉄系溶接金属を提供すること
にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る高靭性鉄溶接金属は、C:0.0
1〜0.15%(質量%の意味、以下同じ)、Si:
0.5%以下(0%を含まない)、Mn:0.5〜2.
5%、Ni:0.1〜3.0%、Al:1.0〜2.5
%およびCu:0.05〜1.5%を夫々含有すると共
に、N:0.10%以下(0%を含む)に抑制し、且つ
下記(1)式を満足する点に要旨を有するものである。
【0009】 [Ni]+[Cu]≧0.7% ……(1) また、本発明の高靭性鉄系溶接金属においては、下記
(2)式で定義されるFPがFP≧0.00%を満足す
るものであることが好ましい。
【0010】 FP=[C]-0.145[Si]+0.014[Mn]-0.456([Al]-[N]×27/14 )+0.231[Ni]+0. 3[Cu] +0.393 ……(2) 但し、[C],[Si],[Mn],[Al],[N],[Cu]および[Ni]は、夫
々C,Si,Mn,Al,N,CuおよびNiの含有量
(質量%)を示す。
【0011】更に、本発明の鉄系溶接金属には、必要に
よってMo:0.005〜0.12%を含有させること
も有効であり、これによって溶接金属の特性を更に改善
することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明者らは、上記課題を解決す
るべく様々な角度から検討を重ねた。その結果、溶接金
属の組織に着目して、これを改善することによって、優
れた溶接作業性を有し且つ耐気孔性や靭性にも優れた溶
接金属が実現できることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明が完成された経緯を説明しつつ、本発明の
作用について説明する。
【0013】本発明者らは、まず溶接作業性を支配する
因子について検討したところ、溶接作業性はフラックス
中のAl量に大きく依存することを見出した。即ち、フ
ラックス中のAl添加量が多いほど溶接作業性に優れる
ことが判明した。
【0014】また耐気孔性については、溶接金属中のA
l量が多いほど、即ちフラックス中のAl添加量が多い
ほど優れることを見出した。セルフシールドアーク溶接
時に生じる溶接金属中の気孔は、溶接時に大気から溶融
金属中に混入する窒素が主な原因で生じる。そして、そ
の生成メカニズムは、溶接金属は液相(溶融金属)では
多量の窒素を溶解することが可能であるが、固相は液相
に比べ窒素溶解度が小さくなるため、溶融金属の凝固過
程において、窒素が気化することによって気孔が生じる
ものである。
【0015】こうしたことから、Alを一定量添加する
ことによって溶融金属中でAlNを生成させ、溶融金属
中に溶解する窒素量を固相の溶解度にまで低下させてや
れば、気孔の生成を抑制できるのである。即ち、溶接金
属中のAl量が多いほど耐気孔性が優れたものとなる。
【0016】以上の様に、フラックス中のAl量(若し
くは溶接金属中のAl量)が多いほど、溶接作業性およ
び耐気孔性は優れたものとなる。これに対して、溶接金
属の靭性は、溶接金属中のAl量が多くなるにつれ大き
く劣化することになる。そこで、本発明者らは次に、溶
接金属中に多量のAlが歩留まった場合においても溶接
金属が十分な靭性を保てる方策について検討した。そし
てまず、Alによる溶接金属の靭性の劣化原因について
検討した。その結果、下記の2つのことが原因であるを
明らかにした。
【0017】まず、第1の原因としては、再熱されて微
細化される領域が小さくなったことが挙げられる。通常
溶接金属は多層盛りされ、その場合に次パスによる熱影
響を受け、微細な領域(以下、この領域を「再熱微細化
域」と呼ぶ)が生成することによって、溶接金属の靭性
を保っているが、Alが多量に固溶すると急激に再熱微
細化域が小さくなり、溶接金属の靭性が低下しているこ
とが判明したのである。また、こうした現象は、Ac3
変態点(オーステナイトが単相化する最低温度)がAl
の固溶により高くなることに起因していることを解明し
た。
【0018】一方、もう一つの原因としては、δフェラ
イトの生成が挙げられる。鋼の溶接金属は、通常凝固時
に粗大なδフェライトが生成するが、その後の冷却過程
において一旦完全にオ−ステナイトに変態し、更にオー
ステナイトから微細なフェライトへと変態する。そのた
め、溶接金属の組織は最終的に微細となって靭性も良好
となる。しかしながら、溶接金属にAlが多量に固溶し
た場合には、フェライトが安定となるので、凝固時に生
成する粗大なδフェライトが残存し、溶接金属の靭性を
大きく劣化させるのである。
【0019】以上のことから、Alが溶接金属に固溶し
た場合においても、靭性を劣化させない為には、再熱微
細化域を確保してδフェライトを残存させなければ良い
ことが分かる。即ち、Ac3変態点を低下させて、更に
完全にオーステナイトに変態する様にしてやれば良いこ
とを見出した。
【0020】そこで、本発明者らは、まず再熱微細化域
を確保する方策、即ちAc3変態点を低下させる方策に
ついて検討した。その結果、CuとNiの複合添加が効
果的であることを明らかにした。また、CuとNiは、
Ac3変態点を低下させるばかりでなく、マトリックス
の靭性を更に向上させる作用も発揮することも明らかに
した。即ち、本発明ではこうした観点から、[Ni]+[Cu]
≧0.7%[前記(1)式]の関係を満足する必要があ
る。
【0021】次に、本発明者らは、上記の様なδフェラ
イトを残存させないための手段について検討した。その
結果、溶接金属のマトリックス組成のバランスを保つこ
とが、δフェライトを残存させないために極めて重要で
あることを見出した。そしてδフェライトを残存させな
いためには、上述したように冷却中に完全にオーステナ
イトに変態させれば良いのであるが、これは溶接金属中
のマトリックス組成によって決定され、フェライトを安
定化させるAlが多量存在する場合はオーステナイトを
安定化するCu,Ni,Mn,Cなどの元素を適量存在
させなければならないのである。
【0022】こうした観点から、完全にオーステナイト
に変態させるための溶接金属組成について、熱力学的解
析および実験により研究したところ、下記(2)式で定
義されるFPがFP≧0.00を満足する様にすれば、
完全にオーステナイトに変態させ得ることを見出した。
即ち、溶接金属の組成において、下記(2)式で定義さ
れるFPがFP≧0.00を満足する様にしてやれば、
溶接金属の靭性を更に良好にできたのである。
【0023】 FP=[C]-0.145[Si]+0.014[Mn]-0.456([Al]-[N]×27/14 )+0.231[Ni]+0. 3[Cu] +0.393 ……(2) 但し、[C],[Si],[Mn],[Al],[N],[Cu]および[Ni]は、夫
々C,Si,Mn,Al,N,CuおよびNiの含有量
(質量%)を示す。
【0024】また本発明者らが、溶接金属の靭性につい
て更に検討したところ、δフェライトの有無の他に、オ
ーステナイトからの変態組織も影響することも突き止め
た。即ち、必要によりFP≧0.00%とした上で、M
oを微量添加することにより、オーステナイトからの変
態組織が微細になり、溶接金属の靭性を一層良好にでき
ることも見出した。
【0025】尚、本発明は溶接金属組成を適切に制御す
ることによって溶接金属組織を改善するものであるが、
溶接金属組成は、ワイヤ組成に加えて、溶接電流、溶接
電圧およびワイヤ突き出し長さなどの溶接条件、更には
母材組成・開先形状などの影響を受けるものであり、ま
た溶接条件は、ワイヤ組成により変化するものである。
従って、本発明の溶接金属組成を得るためのワイヤ組
成、溶接条件、母材組成などの範囲は一概に決定される
ものではないが、要するにこれらを組み合わせて本発明
で規定する溶接金属を得ることによって、本発明の目的
が達成できる。
【0026】本発明に係る溶接金属は、化学成分組成を
適切に調整する必要があるが、各元素の範囲限定理由は
下記の通りである。
【0027】C:0.01〜0.15% Cはオーステナイト安定化元素の1つであり、δフェラ
イトの残存を抑制する効果がある。また、溶接金属の強
度を向上させる効果をも発揮する。これらの効果を確保
する為には、C含有量は0.01%以上とする必要があ
る。しかしながら、C含有量が過剰になって0.15%
を超えると、強度上昇による靭性の劣化を引き起こす。
従って、本発明の溶接金属中のC含有量は、0.01〜
0.15%とする必要がある。靭性を良好にするという
観点から、C含有量の好ましい下限は0.03%であ
り、好ましい上限は0.10%である。
【0028】Si:0.5%以下(0%を含まない) Siは固溶強化元素であると共に、フェライト安定化元
素でもある。しかしながら、溶接金属中のSi含有量が
0.5%を超えると、強度が高くなり過ぎて靭性の低下
の原因となる。尚、Si含有量の好ましい下限は0.0
5%であり、好ましい上限は0.3%である。
【0029】Mn:0.5〜2.5% Mnは、Cと同様にオーステナイト安定化元素の1つで
あり、δフェライトの残存を抑制する効果がある。ま
た,オーステナイトからの変態組織を微細にして靭性を
高める効果もある。これらの効果を発揮させる為には、
Mn含有量は0.5%以上とする必要がある。しかしな
がら、Mn含有量が過剰になって2.5%を超えると強
度が高まり過ぎて靭性の劣化を引き起こす。従って、溶
接金属中のMn含有量は0.5〜2.5%とする必要が
ある。尚、Mn含有量の好ましい下限は1.5であり、
好ましい上限は2.0%である。
【0030】Ni:0.1〜3.0% NiはAc3変態点を低下させて、再熱微細化域を確保
する元素であり、またオーステナイト安定化元素の1つ
でδフェライトの残存を抑制する効果を発揮する。Ni
含有量が0.1%未満ではその効果が発揮されず、3.
0%を超えると強度を著しく高めて、靭性を劣化させ
る。従って、溶接金属中のNi含有量は0.1〜3.0
%とする必要がある。尚、Ni含有量の好ましい下限は
0.8%であり、好ましい上限は2.0%である。ま
た、靭性の観点からより好ましい下限は1.0%であ
り、より好ましい上限は1.5%である。
【0031】Al:1.0〜2.5% Alは溶接作業性および耐ブローホール性を高める元素
であり、セルフシールドアーク溶接において最も重要な
元素である。1.0%未満では、これらの効果が発揮さ
れず、2.5%を超えると靭性が劣化する。従って、溶
接金属中のAl含有量は1.0〜2.5%とする必要が
ある。尚、Al含有量の好ましい下限は1.5%であ
り、好ましい上限は2.0%である。また耐気孔性の観
点からより好ましい範囲は1.7〜2.0%である。
【0032】Cu:0.05〜1.5% Cuは、Niと同様にAc3変態点を低下させて、再熱
微細化域を確保する元素であり、またオーステナイト安
定化元素の一つであり、Niと同様にδフェライトの残
存を効果的に抑制する元素である。Cu含有量が0.1
%未満ではその効果が発揮されず、1.5%を超えると
強度を著しく高めて、靭性を劣化させる。従って、溶接
金属中のCu含有量は0.05〜1.5%とする必要が
ある。尚、Cu含有量の好ましい下限は0.2%であ
り、好ましい上限は0.8%である。また、靭性の観点
からより好ましい下限は0.3%であり、より好ましい
上限は0.5%である。
【0033】N:0.10以下(0%を含む) Nは大気中、母材およびワイヤ等から不可避的に溶接金
属中に混入する元素である。こうしたNは少ないほど溶
接金属の靭性は改善されるので、N含有量はできるだけ
少なくするほどよい。N含有量が0.10%を超えると
靭性が劣化する為、溶接金属中のN含有量は0.10%
以下とする必要がある。尚、N含有量の好ましい上限
は、0.05%である。
【0034】Mo:0.005〜0.12% Moは、オーステナイトからの変態組織を微細にて靭性
を高める効果があり、必要によって添加される。こうし
た効果は、Moの含有量が0.005%未満では発揮さ
れず、0.12%を超えると強度の上昇により靭性を劣
化させる。従って、溶接金属中のMo含有量は0.00
5〜0.12%とする必要がある。尚、Mo含有量の好
ましい下限は0.02%であり、好ましい上限は0.0
5%である。
【0035】本発明に係る溶接金属における化学成分組
成は上記の通りであり、残部は基本的にはFeおよび不
可避不純物からなるものであるが、本発明の溶接金属の
特性を阻害しない範囲であれば、種々の目的により、他
の元素を含有させることが可能である。例えば耐食性を
改善する目的でCr等を1%程度添加することや、高温
特性の改善の目的でCo,W等を1%程度添加すること
は可能である。しかしながら、本発明の効果とのバラン
スを考慮すると、これらの付加的な添加元素は総量で3
%以下程度にとどめることが推奨される。
【0036】[Ni]+[Cu]≧0.7% 本発明の溶接金属では、上記の様に化学成分組成を調整
するだけでは、本発明の目的を達成することができず、
前述の如く、前記(1)式の関係を満足する必要があ
る。即ち、NiとCuを上記の範囲で複合添加すること
によって、再熱微細化域の確保およびマトリックス靭性
の向上により溶接金属の靭性が大幅に改善できるのであ
る。この[Ni]+[Cu]の値が0.7%未満となると、こう
した効果が発揮されない。この値の好ましい下限は、
1.0%であり、より好ましくは1.5%以上とするの
が良い。
【0037】FP:0.00%以上 本発明の溶接金属では、前述の如く前記(2)式で規定
されるFPを0.00%以上とすることが好ましい。こ
のFPは、本発明において溶接金属が冷却中に完全にオ
ーステナイトに変態するか否かの指標となるものであ
る。そしてこのFPが0.00以上の場合には、完全に
オーステナイトに変態し、溶接金属の靭性は良好となる
が、0.00%未満の場合は、完全にオーステナイトに
変態しないために粗大なδフェライトが残存し、溶接金
属の靭性は劣化することになる。尚靭性を良好にすると
いう観点から、FPの好ましい範囲は、0.00〜0.
20%である。
【0038】以下、本発明を実施例によって更に詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変形することは
いずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0039】
【実施例】C:0.010%,Mn:0.35%,P:
0.015%,S:0.007%(残部:鉄)の化学組
成の鋼製外皮を用いて、フラックスを充填し、伸線加工
を行い、下記表1に示す組成のフラックス入りワイヤを
作製した。溶接作業性および耐気孔性の観点から、表1
に示した成分以外に、Ba,Mg,Sr,Li,F,O
等をフラックス成分として添加した。
【0040】用いたフラックス入りワイヤの断面を図1
に示す。図1に示すように、フラックス入りワイヤはラ
ップタイプのものである。即ち、両端が重なり合うよう
に突き合わされて円筒状の外皮1が形成されており、こ
の外皮1の中心部にフラックス2が充填されて、フラッ
クス入りワイヤが構成されている。そしてフラックス入
りワイヤの直径を1.4mmとし、ワイヤの外皮表面に
は潤滑油が塗布されている。
【0041】各種のフラックスを充填したフラックス入
りワイヤを使用して、下記表1に併記した溶接条件にて
実際に溶接を試験板に施した。試験板は、JIS G3
106 SM490Bに規定されるもので、厚さが20
mm、幅150mmおよび長さが500mmのものを使
用した。また開先は、角度が45°のV字型、そしてギ
ャップが12mmとなるように形成されたものを使用し
た。このような開先に対して、極性:DCEN(直流:
ワイヤ陰極)、溶接電流:180〜220A、溶接電
圧:18〜23V、溶接速度:20cm/min、ワイ
ヤ突出し長さ:15〜25mmの溶接条件で、開先を埋
める適正なパス数だけ、溶接を施した。
【0042】
【表1】
【0043】得られた溶接金属の組成とそれらに対する
評価結果を下記表2に示す。このとき、溶接作業性を評
価するために、アーク安定性、スパッタ、全姿勢溶接性
およびビード外観を調査し、全て良好であったものを
○、いずれかが不良であったものを×とした。また溶接
金属特性を評価するために、耐気孔性及び靭性を調査し
た。耐気孔性については、JI S3140に基づいて
溶接金属のX線透過試験を行い、分類が1種1級のもの
を○とし、それ以外のものは×とした。靭性について
は、JIS Z2202に基づいて0℃でのVシャルピ
ー衝撃値(vE0)を求め、70J以上のものを良好と
した。
【0044】
【表2】
【0045】この結果から、次の様に考察できる。まず
No.1〜10のものは、いずれも本発明で規定する要
件のいずれも満足するものであり、良好な特性を示して
いることがわかる。これに対し、No.11〜20、2
2〜24のものでは、成分または[Ni]+[Cu]値が本発
明で規定する範囲を外れているので、溶接金属の靭性が
劣化していることが分かる。また、No.21のもので
は、Al量が少なすぎるため溶接作業性が劣化してい
る。
【0046】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、全
姿勢溶接で優れた溶接作業性で形成することができ、し
かも耐気孔性や靭性が優れる高靭性溶接金属が実現でき
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いたフラックス入りワイヤの断面を
示す説明図である。
【符号の説明】
1 外皮 2 フラックス
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 明 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株 式会社神戸製鋼所藤沢事業所内 (72)発明者 輿石 房樹 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株 式会社神戸製鋼所藤沢事業所内 (72)発明者 黒川 剛志 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株 式会社神戸製鋼所藤沢事業所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.01〜0.15%(質量%の意
    味、以下同じ)、Si:0.5%以下(0%を含まな
    い)、Mn:0.5〜2.5%、Ni:0.1〜3.0
    %、Al:1.0〜2.5%およびCu:0.05〜
    1.5%を夫々含有すると共に、N:0.10%以下
    (0%を含む)に抑制し、且つ下記(1)式を満足する
    ことを特徴とする高靭性鉄系溶接金属。 [Ni]+[Cu]≧0.7% ……(1) 但し、[Ni]および[Cu]は、夫々NiおよびCuの含有量
    (質量%)を示す。
  2. 【請求項2】 下記(2)式で定義されるFPがFP≧
    0.00%を満足するものである請求項1に記載の高靭
    性鉄系溶接金属。 FP=[C]-0.145[Si]+0.014[Mn]-0.456([Al]-[N]×27/14 )+0.231[Ni]+0. 3[Cu] +0.393 ……(2) 但し、[C],[Si],[Mn],[Al],[N],[Cu]および[Ni]は、夫
    々C,Si,Mn,Al,N,CuおよびNiの含有量
    (質量%)を示す。
  3. 【請求項3】 更に、Mo:0.005〜0.12%を
    夫々含有するものっである請求項1に記載の高靭性鉄系
    溶接金属。
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