JP2000248331A - 高速熱処理性及び熱処理後の疲労特性に優れた低合金鋼鋼板 - Google Patents

高速熱処理性及び熱処理後の疲労特性に優れた低合金鋼鋼板

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JP2000248331A
JP2000248331A JP5286799A JP5286799A JP2000248331A JP 2000248331 A JP2000248331 A JP 2000248331A JP 5286799 A JP5286799 A JP 5286799A JP 5286799 A JP5286799 A JP 5286799A JP 2000248331 A JP2000248331 A JP 2000248331A
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weight
heat treatment
steel sheet
steel
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JP5286799A
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Terushi Hiramatsu
昭史 平松
Naoto Okubo
直人 大久保
Koji Omosako
浩次 面迫
Makoto Akizuki
誠 秋月
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高密度エネルギビーム照射による熱処理性,
熱処理後の疲労特性を改善し、加工性も良好な低合金鋼
鋼板を提供する。 【構成】 この低合金鋼鋼板は、C:0.15〜0.5
0%,Si:0.30%以下,Mn:0.3〜1.0
%,P:0.03%以下,S:0.01%以下,Ti:
0.01〜0.15%,B:0.0005〜0.005
0%,N:0.01%以下,Al:0.02〜0.10
%を含み、[%P]≦6×[%B]+0.005を満足
する組成をもち、フェライトとパーライト又はベイナイ
トとの混合組織若しくはベイナイト組織を呈し、表面粗
さがRa≦5μmに調整されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子ビーム等の高密度
エネルギビームを照射して鋼板表層部を加熱した後で自
己冷却させることにより表層に硬化層を形成する急速熱
処理に適し、熱処理後の疲労特性に優れた低合金鋼鋼板
に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車搭載用機械部品等では、強度,疲
労特性,耐摩耗性を確保するため普通鋼に浸炭,窒化等
の硬化処理を施し、或いは特殊鋼を焼入れ焼戻しして使
用することが一般的であった。近年では、コスト低減を
図るため、強度,疲労特性,靭性,耐摩耗性等が要求さ
れる部位のみを局部熱処理する方法が採用されている。
局部熱処理としては、必要個所を高周波誘導加熱する方
法,高密度エネルギビームを照射して加熱する方法等が
採用されている。高密度エネルギビームを用いた熱処理
法は、特に複雑形状をもつ部品の必要最小限の部位のみ
を熱処理できる長所をもっている。
【0003】高密度エネルギビームを用いた熱処理で
は、適用する部品や部位に応じて素材の加工性及び強度
を最適化すると共に、高密度エネルギビーム照射された
熱処理部に所望の強度及び用途に応じた疲労特性や耐摩
耗性等を付与することが要求される。素材の加工性に関
しては、従来加工性に難点があった炭素鋼でも加工技術
の進歩に伴って、加工形態によっては球状炭化物をもつ
組織に比較して硬質のベイナイト組織や変形能の低いパ
ーライト組織であっても加工可能になってきている。
【0004】しかし、パーライト組織をもつ鋼板の加工
性は依然として低く、球状化炭化物組織をもつ鋼板ほど
の加工性を必要としないまでも、極力加工性を改善する
ことが要求される。更に、高密度エネルギビームを用い
た熱処理性,熱処理後の疲労特性等の材料特性を向上さ
せる必要がある。また、加工の厳しい用途で特殊鋼を使
用する場合には、球状化炭化物組織とすることにより加
工性を向上させると共に高密度エネルギビーム照射を利
用した熱処理性を向上させることが必要である一方で、
曲げ加工や軽度の絞り加工,張出し加工,バーリング加
工等の場合には加工性がさほど重要視されず、むしろ高
密度エネルギビームによる熱処理性の向上や熱処理後の
疲労特性の向上等が要求される。更に、高密度エネルギ
ビーム照射で加熱された熱処理部が高強度化されるた
め、疲労特性や耐摩耗性の観点から表面を極力平滑な状
態にする必要がある。
【0005】高密度エネルギビーム照射で鋼板表面に硬
化層を形成する方法が特開平10−121125号公報
に紹介されている。この方法では、高密度エネルギビー
ムとして電子ビームを用い、熱処理時の溶融・凝固部及
び熱影響部の深さ,換言すると硬化層の深さを確保して
いる。対象鋼種は、S50C,S10C等の炭素鋼,S
NCM,SCR,SCM等の合金鋼,SK,SKS等の
工具鋼といった比較的一般的な鋼種であり、高密度エネ
ルギビーム照射による熱処理性や熱処理前の加工性・成
形性を考慮した鋼種ではない。また、高密度エネルギビ
ーム照射による溶融部の幅,加工速度に応じて高密度エ
ネルギビームの出力,照射時間を最適化することによ
り、鋼板表面の波打ちを抑制し、溶融深さに影響される
表面処理部の表面状態を良好に維持することも開示され
ている。ところが、高密度エネルギビームを用いた熱処
理では、本発明者等による調査・研究の結果から波打ち
以外にもクレータ状の表面欠陥が生じ、性能を劣化させ
ることが明らかになった。
【0006】高密度エネルギビームとしてレーザビーム
を用い、板厚方向に貫通する熱処理を施す方法も知られ
ている(特開平6−73438号公報,特開平6−73
439号公報,特開平6−73440号公報,特開平6
−73441号公報,特開平6−73442号公報,特
開平6−73443号公報)。たとえば、特開平6−7
3440号公報では、パーライト又はセメンタイトとフ
ェライト組織をもつ鋼板について合金成分の規定により
加工性と強度上昇量のバランスを維持しつつ、レーザビ
ーム照射による熱処理が可能な鋼板が紹介されている。
また、特開平6−73438号公報では、ベイナイト及
びフェライト組織をもつ鋼板の合金成分を調整すること
により、加工性と強度上昇量とのバランスを図ったレー
ザビーム照射による熱処理性を改善している。しかし、
何れもレーザビーム照射後の表面状態も明らかでなく、
レーザビーム照射後の材料特性に関しては強度が取り上
げられているが疲労特性については開示されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来開示
されている高密度エネルギビーム照射を利用した熱処理
では、溶融・凝固部及び熱影響部の深さ(硬化層の深
さ)をより大きくし、溶融深さに影響される表面処理部
を良好な表面状態に保ち、更に熱処理後の疲労特性に優
れた鋼板に関しては十分に明らかにされていない。そこ
で、本発明は、高密度エネルギビームの照射により生じ
る硬化層の深さをより大きくし、溶融深さに影響される
表面処理部の表面状態を良好に維持し、更に熱処理後の
疲労特性に優れた鋼板を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の低合金鋼鋼板
は、その目的を達成するため、C:0.15〜0.50
重量%,Si:0.30重量%以下,Mn:0.3〜
1.0重量%,P:0.03重量%以下,S:0.01
重量%以下,Ti:0.01〜0.15重量%,B:
0.0005〜0.0050重量%,N:0.01重量
%以下,Al:0.02〜0.10重量%,Cr:0〜
0.5重量%を含み、残部が実質的にFeで、[%P]
≦6×[%B]+0.005を満足する組成をもち、フ
ェライトとパーライト又はベイナイトとの混合組織若し
くはベイナイト組織を呈し、表面粗さがRa≦5μmに
調整されていることを特徴とする。
【0009】
【作用】本発明者等は、加工性に優れ且つ高密度エネル
ギビーム照射による熱処理性及び熱処理後の疲労特性に
優れた低合金鋼が得られる条件について種々調査・研究
した。高密度エネルギビーム照射による熱処理性は、熱
処理で形成される硬化層が板厚方向に深いものほど良好
と評価される。硬化層が深いと、耐摩耗性,耐久性が向
上し、表面の圧縮残留応力を大きくできるため疲労強度
も向上する。そこで、本発明者等は、高密度エネルギビ
ームとして電子ビームを用いて種々の組成をもつ鋼板を
熱処理し、合金組成が熱処理性に及ぼす影響を調査し
た。その結果、一般的な炭素鋼や機械構造用鋼に対し
て、素材を球状化炭化物組織とするよりもフェライト+
パーライト組織,フェライト+ベイナイト組織又はベイ
ナイト組織にすることが有効であることを解明した。
【0010】フェライト+パーライト組織,フェライト
+ベイナイト組織又はベイナイト組織の鋼板を高密度エ
ネルギビーム照射で熱処理すると、α→γ変態点以上に
加熱されるときγ中に固溶する速度は球状炭化物よりも
パーライトやベイナイトが速いため硬化層がより深くな
る。また、フェライト+パーライト組織,フェライト+
ベイナイト組織又はベイナイト組織をもつ鋼板では、加
工性を劣化させないようにC,Si,Mn,Cr量を調
整し、更に適量のB添加により焼入れ性を向上させる
と、一層深い硬化層が形成される。
【0011】硬化層の表面性状は、素材鋼板の表面粗さ
に影響される。熱処理前の表面粗さが大きいと、熱処理
された鋼板表面にクレータ状の表面欠陥が発生し易くな
る。クレータ状表面欠陥の発生は、鋼板表面にある凹部
の底が高密度エネルギビーム照射で溶融する際に大気や
底に残存していた油脂,汚れ等から生成したガスが巻込
まれることに原因があると推察される。クレータ状表面
欠陥は、耐摩耗性に悪影響を及ぼすと共に、疲労特性を
劣化させる切欠き効果を呈する。本発明者等による研究
結果から、素材鋼板の表面粗さをRa≦5μmにすると
き耐摩耗性や疲労特性に悪影響を及ぼすクレータ状表面
欠陥が熱処理後の鋼板表面に発生しないことが判った。
【0012】疲労特性を微量添加成分で改善する一般的
な方策としては、P及びBの調整が考えられる。すなわ
ち、粒界に偏析して脆化を促進させるP量を低減し、粒
界に偏析して粒界を強化するBを添加すると、疲労特性
が向上する。P量の低減及びB添加は、熱処理前の鋼板
の加工性にも悪影響を及ぼさない。しかし、P量の低減
は、製鋼段階で経済的に不利になる。そこで、P量及び
B量を種々変化させた鋼板を電子ビーム照射で熱処理し
て曲げ式の疲労試験に供し、疲労限度改善に有効なP量
とB量とのバランスを詳細に調査した。その結果、本発
明で規定する成分系においては、単純なP量の低減及び
B添加だけでなく、[%P]≦6×[%B]+0.00
5の関係をP量とB量との間に成立させるとき、加工性
に悪影響を及ぼすことなく疲労強度が更に改善されるこ
とが判った。
【0013】一般的な加工性向上の指標としては、硬さ
や引張強さ等の強度が低いこと,通常の引張試験で得ら
れる伸びが大きいこと等が挙げられる。高密度エネルギ
ビーム照射による熱処理が施される用途では、通常の打
抜き性や曲げ加工性に加え、穴拡げ性,精密打抜き性等
の局部的な延性が必要とされることが多い。局部的な延
性は、本発明者などによる調査・研究の結果から切欠き
引張伸びと強い相関関係があることが判った。
【0014】局部的な延性が要求される精密打抜き加工
の良否は、打抜き面における破断面の生成難易度により
判断される。破断面の生成は、加工変形中に生じる非常
に局部的な欠陥によって敏感に引き起こされるものと考
えられる。穴拡げ性では、打抜き加工で局部的に変形し
た個所に更に局部変形(バーリング加工)が加えられ
る。したがって、穴拡げ性や精密打抜き性は、局部延性
の指標である切欠き引張伸び(ElV 値)と強い相関関
係をもつ。炭素鋼板では、炭化物(セメンタイト)を起
点として生じたミクロボイドの成長(連結)が局部的な
欠陥の生成原因に挙げられる。この点、炭素鋼板の穴拡
げ性,換言すると切欠き引張伸びの改善には、加工変形
時にミクロボイドの生成・成長が可能な限り抑制される
金属組織の調整が重要であると考えられる。他の一般的
な加工性の改善に伴って切欠き引張伸びが必ずしも同様
に改善されないことは、他の加工性に影響を及ぼさない
ミクロ的な欠陥が切欠き引張伸びに対し敏感に影響する
ことが原因と推察される。
【0015】このような考察に基づき種々の実験を繰り
返した結果、フェライト+パーライト組織をもつ鋼板に
あってはフェライト及びパーライトを微細化するとき、
パーライトを起点として生成したミクロボイドの連結が
抑制され、穴拡げ性や精密打抜き性等の局部的な延性、
すなわち切欠き引張伸びが顕著に改善されることを確認
した。フェライト,パーライトの微細化には、熱延され
た鋼帯を巻き取る際に好ましくは600℃以下の低温巻
取りが有効である。切欠き引張伸びの改善には、鋼板の
成分のうちC量及びMn量の低下が有利であるが、C
量,Mn量の低下は焼入れ性,焼入れ硬さの確保等の熱
処理性を劣化させ易い。熱処理性の低下を抑制して切欠
き引張伸びを改善するには、適量のTi,B,Cr等の
添加が有効である。Ti,B,Cr等を添加して成分調
整すると、高密度エネルギビーム照射による熱処理性も
向上する。
【0016】以下、本発明鋼板に含まれる合金成分,含
有量等を説明する。 C:0.15〜0.50重量% 本発明は、C含有量が0.15〜0.50重量%の範囲
にある中炭素鋼を対象にしている。Cは炭素鋼において
最も基本となる合金成分であり、C含有量に応じて焼入
れ硬さ,炭化物量等が大きく変動する。C含有量が低い
ほど切欠き引張伸びが向上するが、十分な焼入れ硬さを
確保するため0.15重量%以上が必要である。しか
し、0.50重量%を超える過剰量のCが含まれると、
熱延後の靭性が低下し、鋼帯の製造性・取扱い性が悪く
なるばかりでなく、焼鈍後に十分な切欠き引張伸びが得
られない。したがって、高密度エネルギビーム照射によ
る適度な焼入れ硬さ及び加工性を兼ね備えた鋼板を得る
上から、0.15〜0.50重量%の範囲にC含有量を
定めた。
【0017】Si:0.30重量%以下 穴拡げ性,精密打抜き性等の局部的な延性の指標である
切欠き引張伸びに影響を与える合金成分であり、0.3
0重量%を超える過剰量のSiは固溶強化作用によりフ
ェライト又はベイナイトを硬化し、成形加工時に割れ発
生の原因となる。また、Si含有量の増加に伴って製造
過程で鋼板表面にスケール疵が発生し易くなり、鋼板の
表面品質を低下させる。 Mn:0.3〜1.0重量% 鋼板の焼入れ性を高め、強靭化にも有効な合金成分であ
る。十分な焼入れ性を得るためには、0.3重量%以上
のMnが必要である。しかし、1.0重量%を超える過
剰量のMnが含まれると、フェライト又はベイナイトが
硬化し、加工性が低下する。
【0018】P:0.03重量%以下 疲労特性に悪影響を及ぼす成分であるが、B量とのバラ
ンス調整によりある程度まで許容される。しかし、P含
有量が0.03重量%を超えると、B量とのバランス調
整に拘わらず、延性や靭性を劣化させる傾向が大きくな
る。 S:0.01重量%以下 MnS系介在物を形成する有害成分である。MnS系介
在物が多くなると切欠き引張伸びが低下するので、S含
有量は可能な限り低いほど好ましい。しかし、フェライ
ト+パーライトの組織に調整すると、極低S化の必要は
なく、一般的な市販鋼であっても精密打抜き性及び切欠
き引張伸びが改善される。しかし、C含有量を0.50
重量%近くまで上げた鋼板にあっても高い切欠き引張伸
びを安定して確保するため、S含有量の上限を0.01
重量%に規定する。また、非常に優れた切欠き引張伸び
をもつ鋼板を安定して得るためには、S含有量を0.0
05重量%以下にすることが好ましい。
【0019】Ti:0.01〜0.15重量% 溶鋼の脱酸調整に使用される成分であり、脱窒作用も呈
する。また、鋼中に固溶しているNを窒化物として固定
するため、焼入れ性の改善に必要な有効B量を高める。
更には、焼入れ時の結晶粒粗大化防止に有効な炭窒化物
を形成する。これらの作用を安定して得るためには、
0.01重量%以上のTiが必要である。しかし、0.
15重量%を超える過剰量のTiは、経済的に不利なだ
けでなく、局部的な延性、すなわち切欠き引張伸びを劣
化させる原因にもなる。 B:0.0005〜0.0050重量% 極微量の添加で熱処理性を大幅に向上させる作用を呈
し、焼入れ硬さを安定して得るために必要な合金成分で
ある。このような作用は、0.0005重量%以上のB
含有量で顕著になるが、B量0.0050重量%で飽和
し、0.0050重量%を超えるBを添加しても却って
靭性が劣化する。
【0020】N:0.01重量%以下 Tiと結合してTiNとなり、焼入れ時の結晶粒を微細
化する作用を呈する合金成分である。しかし、N含有量
が0.01重量%を超えると、延性が低下する。また、
過剰なNは、Bと結合し、焼入れ性の改善に有効なB量
を消費する。 Al:0.02〜0.10重量% Alは、溶鋼の脱酸剤として使用される成分であり、A
lNとしてNを固定する作用も呈する。このような作用
は、0.02重量%以上のAl含有量で顕著になる。し
かし、鋼中のAl量が0.10重量%を超えると、鋼の
清浄度が損われ、鋼板に表面疵が発生し易くなる。 Cr:0.5重量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、焼入れ性を改
善すると共に、焼戻し軟化抵抗を大きくする。しかし、
0.5重量%を超える過剰量のCrを添加すると、切欠
き引張伸びや一般的な加工性が低下する傾向がみられ
る。
【0021】
【実施例1】表1に示す組成の鋼を溶製した。鋼A〜D
は、本発明で規定した成分条件及び[%P]≦6×[%
B]+0.005を満足する鋼である。比較鋼E〜Kの
うち、鋼Eは[%P]≦6×[%B]+0.005を満
足するが、C含有量が本発明で規定した範囲より低くな
っている。鋼Fは、C含有量が高く、Ti,Bが添加さ
れていない点で本発明で規定する条件を満足していな
い。鋼Gは、JIS鋼種のS35Cであり、Ti,Bが
添加されていない点で本発明で規定する条件を満足して
いない。鋼Hは、N量が多く、Ti,Bが添加されてい
ない点で本発明で規定する条件を満足していない。鋼I
及びJは、[%P]≦6×[%B]+0.005を満足
しない鋼である。鋼Kは、Cr含有量が高く、Ti,B
が添加されていない点で本発明で規定する条件を満足し
ていない。
【0022】
【0023】各溶鋼を鋳造して得た鋼塊を熱間圧延し、
板厚4.0mmの熱延板とした。熱延時、コイル巻取り
温度を変えることにより熱延組織を変化させた。各鋼板
から切り出された試験片の表面を番手が異なるエメリー
紙で研磨し、表面粗さを変えた試料を用意した。そし
て、加速電圧60kV,ビーム電流70mA,ビーム振
幅周波数1.5kHz,照射スピード4m/分,照射幅
10mmの電子ビーム照射条件下で熱処理した後、熱処
理部に発生したクレータ状表面欠陥を目視観察し、単位
面積当りのクレータ状表面欠陥発生個数(/cm2 )を
求めた。
【0024】素材鋼板の表面粗さとクレータ状欠陥発生
個数との関係を示す表2にみられるように、表面粗さを
Ra0.2〜4.8μmに調整した試験番号1〜8(本
発明例)では熱処理部のクレータ状表面欠陥発生個数が
0〜2個/cm2 となっており、良好な表面を呈してい
た。他方、表面粗さがRa5.6〜14.7μmと粗く
調整された試験番号9〜14(比較例)では、熱処理部
のクレータ状表面欠陥発生個数が9〜19個/cm2
本発明例に比較して著しく多く、表面不良になってい
た。
【0025】
【0026】更に、各鋼板から切り出された試験片を、
加速電圧60kV,ビーム電流70mA,ビーム振幅周
波数1.5kHz,照射スピード4m/分,照射幅10
mmの電子ビーム照射で試験片を熱処理し、熱処理部の
断面硬さを測定した。そして、最高硬さの80%に相当
する硬さが得られる位置から試験片表面までの距離を測
定し、硬化層の深さとした。また、加速電圧60kV,
ビーム電流70mA,ビーム振幅周波数1.5kHz,
照射スピード4m/分,照射幅30mmの条件で試験片
の表裏両面を電子ビーム照射した後、平面曲げの両振り
疲労試験(周波数23Hz)により疲労限度を測定し
た。
【0027】表3の調査結果にみられるように、試験番
号15,16(本発明例)では、ほぼ同じC含有量の試
験番号27(比較例,鋼G)に比較して硬化層が約35
0μmと深く、疲労特性も優れていた。試験番号17,
18,21,22(本発明例)は、試験番号27(比較
例,鋼G)のC含有量0.34重量%に比較してC含有
量がほぼ0.2重量%と低いにも拘わらず、深い硬化層
が形成されている。試験番号19,20(本発明例)
は、ほぼ同じC含有量の試験番号28(比較例,鋼H)
に比較して硬化層が深く、疲労特性も優れていた。
【0028】試験番号29,30( 比較例) は、何れも
[%P]≦6×[%B] +0.005の条件が満足され
ず、それぞれC含有量がほぼ同じ試験番号15,16(
本発明例) 及び試験番号19,20( 本発明例) と同じ
レベルの硬化層深さをもつが、疲労限度が低くなってい
る。試験番号23〜25(比較例)は、それぞれ鋼A〜
Cを球状化炭化物組織にしたものであるが、フェライト
+パーライト組織をもつ試験番号15〜20(本発明
例)に比較すると、硬化層が浅く、疲労限度も低くなっ
ている。試験番号26では、本発明で規定した下限より
もC含有量が少ないため最高硬さが低く硬化層も浅くな
っており、実際の使用上で支障を来した。
【0029】
【0030】更に、熱延後の巻取り温度を種々変化さ
せ、巻取り温度が鋼板の切欠き引張伸びに及ぼす影響を
調査した。切欠き引張試験では、JIS 5号試験片の
平行部長手方向中央位置における幅方向両側に開き角4
5度,深さ2mmのVノッチを形成した試験片を用いて
引張り試験した。そして、Vノッチを含む標点間距離5
mmに対する伸び率を試験片の破断後に求め、得られた
ElV 値で加工性を評価した。調査結果を表4に示す。
試験番号31〜38(本発明例)は、鋼A〜Dを巻取り
温度600℃以下で熱延したものであり、同一鋼種で巻
取り温度が600℃を超える試験番号39,40(本発
明例)に比較すると、高いElV 値が示されており、局
部延性に優れていることが判る。他方、本発明で規定し
た成分条件を満足しない鋼G,Hを使用した場合、試験
番号43,44(比較例)にみられるように巻取り温度
が600℃以下であってもElV 値が低くなっている。
また、C含有量及びCr含有量が多い鋼F,Kを使用し
且つ600℃を超える温度で巻き取った試験番号45,
46(比較例)では、ElV 値が22%,27%と低
く、加工性に劣っていた。
【0031】
【0032】
【実施例2】表5に示す組成の鋼を溶製した。鋼L〜O
は、本発明で規定した成分条件及び[%P]≦6×[%
B]+0.005を満足する鋼である。比較鋼P〜Uの
うち、鋼Pは[%P]≦6×[%B]+0.005を満
足するが、C含有量が本発明で規定した範囲より低くな
っている。鋼Qは、C含有量が高く、Ti,Bが添加さ
れていない点で本発明で規定する条件を満足していな
い。鋼Rは、JIS鋼種のS35Cであり、Ti,Bが
添加されていない点で本発明で規定する条件を満足して
いない。鋼Sは、N量が多く、Ti,Bが添加されてい
ない点で本発明で規定する条件を満足していない。鋼T
及びUは、[%P]≦6×[%B]+0.005を満足
しない鋼である。
【0033】
【0034】各溶鋼を鋳造して得た鋼塊を熱間圧延し、
板厚4.0mmの熱延板とした。熱延板を900℃で均
熱15分保持した後、300〜500℃で30分保持し
てベイナイト組織にした。鋼L〜Nの一部については、
更に700℃で均熱20時間の焼鈍を施し、球状化炭化
物組織にした。各鋼板から切り出された試験片の表面を
番手が異なるエメリー紙で研磨し、表面粗さを変えた試
料を用意した。そして、加速電圧60kV,ビーム電流
70mA,ビーム振幅周波数1.5kHz,照射スピー
ド4m/分,照射幅10mmの電子ビーム照射条件下で
熱処理した後、熱処理部に発生したクレータ状表面欠陥
を目視観察し、単位面積当りのクレータ状表面欠陥発生
個数(/cm2 )を求めた。
【0035】素材鋼板の表面粗さとクレータ状欠陥発生
個数との関係を示す表6にみられるように、表面粗さを
Ra0.5〜4.7μmに調整した試験番号51〜58
(本発明例)では熱処理部のクレータ状表面欠陥発生個
数が0〜2個/cm2 となっており、良好な表面を呈し
ていた。他方、表面粗さがRa5.7〜13.5μmと
粗く調整された試験番号59〜64(比較例)では、熱
処理部のクレータ状表面欠陥発生個数が9〜17個/c
2 と本発明例に比較して著しく多く、表面不良になっ
ていた。
【0036】
【0037】更に、各鋼板から切り出された試験片を、
加速電圧60kV,ビーム電流70mA,ビーム振幅周
波数1.5kHz,照射スピード4m/分,照射幅10
mmの電子ビーム照射で試験片を熱処理し、熱処理部の
断面硬さを測定した。そして、最高硬さの80%に相当
する硬さが得られる位置から試験片表面までの距離を測
定し、硬化層の深さとした。また、加速電圧60kV,
ビーム電流70mA,ビーム振幅周波数1.5kHz,
照射スピード4m/分,照射幅30mmの条件で試験片
の表裏両面を電子ビーム照射した後、実施例1と同様な
疲労試験で疲労限度を測定した。
【0038】表7の調査結果にみられるように、試験番
号65,66(本発明例)では、ほぼ同じC含有量の試
験番号77(比較例,鋼R)に比較して硬化層が約34
0μmと深く、疲労特性も優れていた。試験番号67,
68,71,72(本発明例)は、試験番号77(比較
例,鋼R)のC含有量0.35重量%に比較してC含有
量がほぼ0.2重量%と低いにも拘わらず、深い硬化層
が形成されている。試験番号73〜75(比較例)は、
それぞれ鋼L〜Nを球状化炭化物組織にしたものである
が、ベイナイト組織にした試験番号65〜70でC含有
量が同レベルのものと比較すると、最高硬さはほぼ同等
であるが、素材強度が低く、しかも硬化層が浅いため、
疲労強度が低下していた。試験番号69,70(本発明
例)は、ほぼ同じC含有量の試験番号78(比較例,鋼
S)に比較して硬化層が360μmと深く、クレータ状
の表面欠陥も少ないため、著しく優れた疲労特性を示し
た。試験番号79,80( 比較例) は、何れも[%P]
≦6×[%B] +0.005の条件が満足されず、それ
ぞれC含有量がほぼ同じ試験番号65,66( 本発明
例) 及び試験番号69,70( 本発明例) と同じレベル
の硬化層深さをもつが、疲労限度が低くなっている。試
験番号76(比較例)では、本発明で規定した下限より
もC含有量が少ないため最高硬さが低く硬化層も浅くな
っており、実際の使用上で支障を来した。
【0039】
【0040】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の低合金
鋼鋼板は、合金成分を調整してフェライト+パーライト
混合組織,フェライト+ベイナイト混合組織又はベイナ
イト組織とし、高密度エネルギビーム照射による熱処理
で深い硬化層を形成し、しかも硬化層が形成された熱処
理部の表面を良好に維持して熱処理後の疲労特性を向上
させている。このようにして、本発明の低合金鋼鋼板
は、加工性に優れていることと相俟って自動車搭載用部
品を始めとして各種機械分として使用される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 面迫 浩次 広島県呉市昭和町11番1号 日新製鋼株式 会社技術研究所内 (72)発明者 秋月 誠 広島県呉市昭和町11番1号 日新製鋼株式 会社技術研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.15〜0.50重量%,Si:
    0.30重量%以下,Mn:0.3〜1.0重量%,
    P:0.03重量%以下,S:0.01重量%以下,T
    i:0.01〜0.15重量%,B:0.0005〜
    0.0050重量%,N:0.01重量%以下,Al:
    0.02〜0.10重量%を含み、残部が実質的にFe
    で、[%P]≦6×[%B]+0.005を満足する組
    成をもち、フェライトとパーライト又はベイナイトとの
    混合組織若しくはベイナイト組織を呈し、表面粗さがR
    a≦5μmに調整されている高速熱処理性及び熱処理後
    の疲労特性に優れた低合金鋼鋼板。
  2. 【請求項2】 C:0.15〜0.50重量%,Si:
    0.30重量%以下,Mn:0.3〜1.0重量%,
    P:0.03重量%以下,S:0.01重量%以下,T
    i:0.01〜0.15重量%,B:0.0005〜
    0.0050重量%,N:0.01重量%以下,Al:
    0.02〜0.10重量%,Cr:0.5重量%以下を
    含み、残部が実質的にFeで、[%P]≦6×[%B]
    +0.005を満足する組成をもち、フェライトとパー
    ライト又はベイナイトとの混合組織若しくはベイナイト
    組織を呈し、表面粗さがRa≦5μmに調整されている
    高速熱処理性及び熱処理後の疲労特性に優れた低合金鋼
    鋼板。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6848215B2 (en) 2000-10-26 2005-02-01 Meritor Light Vehicle Systems - France Assembly for attaching a window regulator motor to a window regulator mechanism through a door panel
JP2009191733A (ja) * 2008-02-14 2009-08-27 Toshiba Corp 蒸気タービン翼およびその表面改質方法

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