JP2000239806A - 固体高分子型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents
固体高分子型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼Info
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Abstract
で使用できる固体電解質型燃料電池のセパレータ用フェ
ライト系ステンレス鋼の提供。 【解決手段】S、P、N、V等の不純物を極く低く制限
し、CuおよびNiを積極的に含有量させると共に、C
rとMoの含有量を(Cr+3×Mo)が10.5〜4
3%を満足するようにする。
Description
家庭用等の小型分散型電源として用いられる固体高分子
型燃料電池セパレータ用ステンレス鋼に関する。
直流電力を発電する電池であり、固体電解質型燃料電
池、溶融炭酸塩型燃料電池、リン酸型燃料電池および固
体高分子型燃料電池などがある。燃料電池の名称は、電
池の根幹をなす『電解質』部分の構成材料に由来してい
る。
は、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池がある。
燃料電池のおおよその運転温度は、固体電解質型燃料電
池で1000℃、溶融炭酸塩型燃料電池で650℃、リ
ン酸型燃料電池で200℃および固体高分子型燃料電池
で80℃である。
℃前後と低く起動−停止が容易であり、エネルギー効率
も40%程度が期待できることから、小事業所、電話局
などの非常用分散電源、都市ガスを燃料とする家庭用小
型分散電源、水素ガス、メタノールあるいはガソリンを
燃料とする低公害電気自動車搭載用電源として、世界的
に実用化が期待されている。
言う共通の呼称で呼ばれているものの、それぞれの電池
構成材料を考える場合には、全く別物として捉えること
が必要である。使用される電解質による構成材料の腐食
の有無、380℃付近から顕在化し始める高温酸化の有
無、電解質の昇華と再析出、凝結の有無等により求めら
れる性能、特に耐食性能が、それぞれの燃料電池で全く
異なるためである。実際、使用されている材料も様々で
あり、黒鉛系素材から、Niクラッド材、高合金、ステ
ンレス鋼と多様である。
炭酸塩型燃料電池に使用されている材料を、固体高分子
質型燃料電池の構成材料に適用することは全く考えるこ
とができない。
す図で、図1(a)は、燃料電池セル(単セル)の分解
図、図1(b)は燃料電池全体の斜視図である。同図に
示すように、燃料電池1は単セルの集合体である。単セ
ルは、図1(a)に示すように固体高分子電解質膜2の
1面に燃料電極膜(アノード)3を、他面には酸化剤電
極膜(カソード)4が積層されており、その両面にセパ
レータ5a、5bが重ねられた構造になっている。
水素イオン(プロトン)交換基を有するフッ素系イオン
交換樹脂膜がある。
粒子状の白金触媒と黒鉛粉、必要に応じて水素イオン
(プロトン)交換基を有するフッ素樹脂からなる触媒層
が設けられており、燃料ガスまたは酸化性ガスと接触す
るようになっている。
から燃料ガス(水素または水素含有ガス)Aが流されて
燃料電極膜3に水素が供給される。また、セパレータ5
bに設けられている流路6bからは空気のような酸化性
ガスBが流され、酸素が供給される。これらガスの供給
により電気化学反応が生じて直流電力が発生する。
れる機能は、(1)燃料極側で、燃料ガスを面内均一に
供給する“流路”としての機能、(2)カソード側で生
成した水を、燃料電池より反応後の空気、酸素といった
キャリアガスとともに効率的に系外に排出させる“流
路”としての機能、(3)長時間にわたって電極として
低電気抵抗、良電導性を維持する単セル間の電気的“コ
ネクタ”としての機能、および(4)隣り合うセルで一
方のセルのアノード室と隣接するセルのカソード室との
“隔壁”としての機能などである。
板材の適用が鋭意検討されてきているが、カーボン板材
には“割れやすい”という問題があり、さらに表面を平
坦にするための機械加工コストおよびガス流路形成のた
めの機械加工コストが非常に高くなる問題がある。それ
ぞれが宿命的な問題であり、燃料電池の商用化そのもの
を難しくさせかねない状況がある。
格段に安価であることから、固体高分子型燃料電池セパ
レータ用素材として最も注目されている。しかしなが
ら、ガス透過性を低減して前記隔壁としての機能を付与
するためには、“複数回”に及ぶ樹脂含浸と焼成を実施
しなければならない。また、平坦度確保および溝形成の
ための機械加工コスト等今後も解決すべき課題が多く、
実用化されるに至っていないのが現状である。
る動きとして、コスト削減を目的に、セパレータにステ
ンレス鋼を適用する試みが開始されている。
属製部材からなり、単位電池の電極との接触面に直接金
めっきを施した燃料電池用セパレータが開示されてい
る。金属製部材として、ステンレス鋼、アルミニウムお
よびNi−鉄合金が挙げられており、ステンレス鋼とし
ては、SUS304が用いられている。この発明では、
セパレータは金めっきが施されているので、セパレータ
と電極との接触抵抗が低下し、セパレータから電極への
電子の導通が良好となるため、燃料電池の出力電圧が大
きくなるとされている。
に形成される不働態膜が大気により容易に生成される金
属材料からなるセパレータが用いられている固体高分子
電解質型燃料電池が開示されている。金属材料としてス
テンレス鋼とチタン合金が挙げられている。この発明で
は、セパレータに用いられる金属の表面には、必ず不働
態膜が存在しており、金属の表面が化学的に侵され難く
なって燃料電池セルで生成された水がイオン化される度
合いが低減され、燃料電池セルの電気化学反応度の低下
が抑制されるとされている。また、セパレータの電極膜
等に接触する部分の不働体膜を除去し、貴金属層を形成
することにより、電気接触抵抗値が小さくなるとされて
いる。
ている表面に不働態膜を備えたステンレス鋼のような金
属材料をそのままセパレータに用いても、耐食性が十分
でなく金属の溶出が起こり、溶出金属イオンにより担持
触媒性能が劣化(以下、担持触媒の被毒と記す)する。
また、溶出後に生成するCr-OH、Fe-OHのような腐食生成
物により、セパレータの接触抵抗が増加するという問題
があるので、金属材料からなるセパレータには、コスト
を度外視した金めっき等の貴金属めっきが施されている
のが現状である。
は、適用したという実績があるにすぎず、実用化にはほ
ど遠い状況にある。
ない“無垢”で適用できる、電池環境での電気伝導性に
優れると共に、耐食性に優れたステンレス鋼の開発が極
めて強く望まれており、ステンレス鋼製セパレータの実
用化が固体高分子型燃料電池の商用化、適用拡大の成否
を握っていると言っても過言ではない。
電解質型燃料電池のセパレータとして好適なステンレス
鋼を提供することにあり、具体的には高価な表面処理を
施す必要がなく、無垢のままで使用しても、溶出金属イ
オンによる各電極担持触媒の被毒が低減され、腐食生成
物による電極との接触電気抵抗の増加が抑制され、さら
に不働態皮膜の強化による接触抵抗の増加が抑制される
ステンレス鋼を提供する。
通りである。
Si:0.01〜0.6%、Mn:0.01〜0.6
%、P:0.026%以下、S:0.004%以下、
N:0.02%以下、V:0.2%以下、Cu:0.0
1〜0.8%、Ni:0.2〜6%、Cr:10.5〜
35%、Mo:0.5〜5%、Al:0.001〜0.
2%を含有し、かつC、N、CrおよびMo含有量は下
記式、を満足する範囲内にあり、25℃におけるp
Hが2.6の硫酸水溶液を80℃に昇温した硫酸水溶液
中で、0.2V vs. SCEにおける不働態保持電流密
度が、50μA/cm2以下である固体高分子型燃料電
池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼。
1〜0.6%、Mn:0.01〜0.6%、P:0.0
26%以下、S:0.004%以下、N:0.02%以
下、V:0.2%以下、Cu:0.01〜0.8%、N
i:0.2〜6%、Cr:10.5〜35%、Mo:
0.5〜5%、Al:0.001〜0.2%を含有し、
さらにNb:0.001〜0.3%、Ti:0.001
〜0.15%の一方または双方を含み、かつC、N、C
r、Mo含有量は、下記式およびを満足し、かつN
bおよびTi含有量は下記式および、またはを満足
する範囲内にあり、25℃におけるpHが2.6の硫酸
水溶液を80℃に昇温した硫酸水溶液中で、0.2V v
s. SCEにおける不働態保持電流密度が50μA/c
m2以下である固体高分子型燃料電池セパレータ用フェ
ライト系ステンレス鋼。
本発明者らは、固体高分子型燃料電池セパレータに好適
なステンレス鋼を開発するため、セパレータが置かれる
環境において、ステンレス鋼表面から溶出する金属イオ
ンを可能な限り低減することを目標に、単セルを用いて
種々試験を実施した。その結果、以下の知見を得て本発
明を完成するに至った。
低い環境(以下、単にセパレータ環境と記す)におい
て、オーステナイト系ステンレス鋼は耐食性が不十分で
あり、金属の溶出が著しくセパレータには不適当であ
る。
ンレス鋼は良好な耐食性を発揮するが、一般のフェライ
ト系ステンレス鋼では、電池性能に影響を及ぼす程度の
金属の溶出が生じる。
を主体とする水酸化物)が生成し、接触電気抵抗の増大
をもたらし、かつ担持触媒性能に著しい悪影響を及すの
で、起電力に代表される電池性能が短時間で劣化する。
また、水素イオン(プロトン)交換基を有するフッ素系
イオン交換樹脂膜の陽イオン伝導度にも悪影響を及ぼ
す。
ライト系ステンレス鋼中の不純物のうち、S、P、V、
Mnの含有量を低減すると共に、不働態被膜を強固にし
なければならない。
厚くすると接触電気抵抗が増大し、電池効率が著しく低
下する。
ライト系ステンレス鋼に、適量のCuおよびNiを含有
させるのが良く、それにより鋼表面の不働態化が促進さ
れ、不働態保持電流密度を低めるのに効果的で、溶出イ
オン量の低減に極めて有効である。
防止には、Sの低減とCuおよびNi複合添加による相
乗効果が大きい。
るためには、25℃におけるpHが2.6で、80℃に
昇温した硫酸水溶液中で不働態の状態を維持し続けなけ
ればならない。すなわち、上記硫酸溶液中で、0.2V
vs. SCEにおける不働態維持電流密度は50μA/c
m2以下になるようにしなければならない。
(Cr+3×Mo)が10.5〜43%の範囲内になる
ようにする必要がある。
性が確保されるが、Moは溶出したとしても、アノード
およびカソード部に担持されている触媒の性能に対する
影響が比較的軽微である。
ンレス鋼の化学組成を規定した理由を詳しく説明する。
なお、下記の%表示は重量%を示す。
目的から、Cは0.012%以下、Nは0.02%以下
で、かつC+N値で0.03%以下とすることが必要で
ある。C、Nは、浸入型元素であり、高純度フェライト
系ステンレス鋼の母材靭性、溶接部耐食性および靭性劣
化の原因となる。C、Nは厳しく制限することが、高純
度フェライト系ステンレス鋼の製造工程での熱延コイル
靭性対策となり、製造コストの上昇を避けることができ
る。鋼中のC、Nを極低化すればするほど常温靭性は改
善するので低ければ低い程良い。
%の範囲内であることが必要である。Siは、量産鋼に
おいてはAlと同様に有効な脱酸元素である。0.01
%未満では脱酸が不十分となり、一方0.6%を超える
と成形性が低下するので、Si含有は0.01〜0.6
%とした。0.1%から0.25%前後が生産性、成形
性の改善、生産コスト低減の観点からは最も望ましい。
の範囲内であることが必要である。通常、Mnは、鋼中
のSをMn系の硫化物として固定する作用があり、熱間
加工性を改善する効果がある。また脱酸元素あるいはN
iバランス調整元素として積極的に添加しても良い。こ
れらの効果を得るには、0.01%以上が必要である。
一方、上限は0.6%とする。これは、不働態を維持し
ている状態においても金属の溶出がわずかづつ進行する
が、0.6%を超える量になると、溶出したMnイオン
が、アノードおよびカソード触媒層の被毒に対して少な
からず影響を及ぼすためである。
ることが必要である。通常のステンレス商用鋼のP含有
レベルは、0.026%から0.035%程度である。
セパレータにとっては、PはSと並んで最も有害な不純
物である。低ければ低い程望ましい。
ることが必要である。Sは、鋼中共存元素および鋼中の
S量に応じて、Mn系硫化物、Cr系硫化物、Fe系硫
化物、Ti系硫化物、これらの複合硫化物および酸化物
との複合非金属介在物としてほとんどは析出している。
しかしながら、セパレータ環境においては、いずれの組
成の非金属介在物も、程度の差はあるものの腐食の起点
として作用し、不働態化の維持、腐食溶出抑制に有害で
ある。
て、フェライト系ステンレス鋼からなるセパレータとM
EA(Membrane Electrode Assembly)間の隙間内は、
電池反応および/または酸素濃度差電池腐食が起こるこ
とにより隙間内のpHが低下し、ミクロ電池腐食を起こ
しやすい状況となるが、硫化物系非金属介在物はその際
の腐食起点、加速因子として大きな影響を及ぼす。通常
の量産鋼の鋼中S量は、0.005%超え0.008%
前後であるが、上記の有害な影響を防止するためには
0.004%以下に低減する必要がある。望ましい鋼中
S量は0.002%以下であり、最も望ましい鋼中S量
レベルは、0.001%未満であり、低ければ低い程良
い。
である。一般に、Vはステンレス鋼を溶製する際の必須
溶解原料であるCr源中に不純物として含有されてお
り、ある程度の混入は不可避である。但し、溶出したV
は、アノードおよびカソード部に担持されている触媒の
性能に対して少なからず悪影響を及ぼす。電池特性維持
の上から、許容できる上限は0.2%であり、低ければ
低い程良い。
必要がある。フェライト系ステンレス鋼は、不働態皮膜
が不安定となる臨界pH以上のpH環境においては、N
iを多量に含有するオーステナイト系ステンレス鋼に比
べて優れた耐食性質を示し、不働態維持状態における溶
出速度も小さい特徴を有している。この特徴は、フェラ
イト系ステンレス鋼中にCuを添加することにより、一
層改善される。
め、不働態保持状態にある素材からの金属溶出を低減さ
せるために、適正量のCuを添加すると不働態化を促進
し、不働態保持電流密度を低めることに極めて効果的で
ある。不働態化の程度が顕著に改善されることは、溶出
金属イオン量を低減することにとって極めて有効なこと
であり、ひいては溶出金属イオンによる触媒被毒の程度
を顕著に改善するために極めて有効である。これらの効
果を得るためには0.01%以上含有させることが必要
で、0.8%を超えると効果がほぼ飽和し、製造性低
下、製造コストアップの原因となる。したがって、Cu
含有量は0.01〜0.8%とした。0.15〜0.6
5%が最も効果的である。
内とする必要がある。Niは、Cuと同様に、フェライ
ト系ステンレス鋼の不働態皮膜を安定にして、不働態皮
膜が不安定となる臨界pH以上のpH環境における不働
態維持状態における金属の溶出速度を小さくする効果を
有している。Niを含有させることにより、セパレータ
環境での不働態保持状態での金属溶出が低減し、溶出金
属イオンによる触媒被毒の程度が顕著に改善される。こ
の効果を得るためには0.2%以上が必要である。
させ、かつS量を低減することにより、一層顕著にな
る。しかし、6%を超えると、フェライト−オーステナ
イトの二相組織、あるいは、マルテンサイト組織とな
り、成形性が劣化する。二相組織では、成形性に方向性
が強くなり、またマルテンサイト系では、強度が高くな
り、セパレータのような鋼板の成形が必要な用途には不
向きである。
を確保する上での基本合金元素である。含有量は高いほ
ど高耐食となるが、高Cr化するに伴い常温靭性が低下
する傾向があり、Cr量で35%を超えると量産での生
産は困難となる。また、10.5%未満では、その他の
元素を変化させてもセパレータとして必要な耐食性の確
保が困難となる。
る効果がある。0.5%未満ではMoの効果が明確でな
くなる。一方、5%を超えて含有させると、シグマ相等
の金属間化合物の析出回避が困難であり、鋼の脆化の問
題から生産が困難となるので上限を5%とする。積極的
にMo添加することで、耐食性が確保される。Moが溶
出したとしても、アノードおよびカソード部に担持され
ている触媒の性能に対する影響は比較的軽微である。
テンレス鋼としては、固体高分子型燃料電池の作動温度
である70℃から高々100℃の環境において不働態化
の状態にあり、かつ、継時的にも接触電気抵抗値が低い
ことが必要である。不働態皮膜厚さ増加と腐食生成物生
成を実用的な範囲で抑制する必要がある。そのための必
要条件として、実際の作動状態にある電池内部の模擬環
境として妥当と判断される「25℃におけるpHが2.
6の硫酸水溶液80℃中」で不働態化していることが少
なくとも必要である。本環境で、0.2V vs. SCEに
おける不働態維持電流密度が50μA/cm 2以下である
必要がある。本条件を満たすためには、少なくとも、C
rおよびMoの含有量は、腐食指数である(Cr%+3
×Mo%)が10.5〜43%の範囲内にあることが必
要である。
を得るためには0.001%以上が必要である。しか
し、0.2%を超えると更なる改善硬化が認められなく
なるとともに、製造コストアップが大きくなり過ぎるた
め0.2%以下とする。
よりも強い合金元素であるNbおよびTiの1種または
2種を、必要により含有させる。Nbは、0.001〜
0.3%でかつ、Nb(%)/C(%)は6〜25の範囲
で、またTiは、0.001〜0.15%で、かつTi
(%)/C+N(%)は6〜25の範囲内とする。
的である。鋼板の成形性改善に果たす効果も大きい。た
だし、腐食に伴い溶出したNbは、腐食面に腐食生成物
として堆積し、接触電気抵抗を高める弊害がある。ま
た、腐食に伴い溶出したTiは、固体高分子型燃料電池
アノードおよびカソード極側に担持している触媒性能を
低める害がある。したがって、含有させる場合は必要最
低量にする必要があり、上記範囲内であれば上記の効果
が得られ、かつ上記弊害を避けることができる。また、
NbとTiを同時に添加することで、冷延鋼板素材の加
工性が改善される。
鋼段階でSとの結合力が極めて強いので、Sを無害化す
る。必要によりミッシュメタルのような形で含有させて
も良い。含有量は、0.1%以下の微量で十分効果が得
られる。
てもよい。例えば、熱間加工性改善には、0.1以下の
微量のCa、MgやBを含有させるのがよい。
系ステンレス鋼を高周波誘導加熱方式の150kg真空溶
解炉で溶解した。溶解原料としては、市販の不純物の少
ない原料を厳選して使用し、鋼中の不純物量を調整し
た。
気中で1230℃に3時間加熱した後、プレス方式鍛造
機で熱間鍛造し、各インゴットを下記2種の寸法の試験
用スラブに仕上げた。
し、次いで量産での熱延終了直後の温度履歴を模擬した
断熱材巻き付け条件で徐冷した。常温での熱延コイルの
靱性を調べるためシャルピー衝撃試験に供した。試験片
は、JIS−4号ハーフサイズとした。のスラブは、機
械加工でスラブ表面を切削加工して、表面の酸化スケー
ルを除去し、厚さ62mmのスラブに仕上げた。このス
ラブを大気中で1200℃に加熱し、熱間圧延して厚さ
4mmに仕上げた後、と同様、量産での熱延終了直後
の温度履歴を模擬した断熱材巻き付け条件で徐冷した。
温度で、保持4分の溶体化処理を施し、強制空冷した。 表1のNo.1〜4、15〜20、28の化学組成の熱延鋼板 ・・・・930℃ 表1のNo.5〜8、12、13、21、22の熱延鋼板 ・・・・・・1000℃ 表1のNo.9〜11、23〜26の熱延鋼板 ・・・・・・・・1080℃ 各温度は、再結晶が進行し、金属間化合物が固溶する温
度とした。在炉時間はおよそ20分であった。
式ゼンジマー型ロール圧延機を用い途中で中間焼鈍を挟
みながら、冷間圧延をおこない厚さ0.3mmに仕上げ
た。最終仕上げ焼鈍は、露点が−50℃以下である水素
雰囲気の光輝焼鈍炉内で行い、温度は熱間圧延素材の焼
鈍温度と同じとした。保持時間は1分であり、在炉時間
で約3分であった。
レータ模擬環境での不働態皮膜の評価をおこなうための
試験片、および実際の固体高分子型燃料電池への装填用
のセパレータをプレス成形により製作した。
環境用試験片およびセパレータを作製後、片側5μm厚
さの金めっきを施した。
(コルゲート加工)これらをの表面をショット加工用S
iC砥粒を用いて機械的にショット研磨仕上げし、5%
HNO3+3%HF、40℃中で15分間の超音波洗浄
を行い、さらに、試験直前に6%水酸化ナトリウム水溶
液を用いたアルカリ噴霧脱脂処理を行い、流水で簡易水
洗後、バッチ型水槽で蒸留水浸漬洗浄を3回行い、さら
に蒸留水噴霧洗浄を4分間行って冷風ドライアー乾燥さ
せた後、各試験に供した。
を用いて作成した25℃におけるpHが2.6である硫
酸水溶液を80℃に昇温し、その溶液中に試験片を6時
間浸漬した。不働態化の有無は、腐食減量、素材表面か
らの水素気泡発生の有無、試験溶液の色変化から評価す
ると共に、金属の溶出程度をより正確に調べるため、
0.2V vs SCE における不働態保持電流密度を測定
した。
模擬環境における試験結果は、表2に示す通りであっ
た。
80℃に昇温した25℃におけるpHが2.6である硫
酸水溶液中で不働態化状態にあり、溶出の程度を示す
“不働態保持電流密度”も30μA/cm2以下となって
いる。
パレータとして適用する際には、不働態保持電流密度を
可能な限り低いレベルとすることが望ましいことは言う
までもない。安定して低い値をとることが重要であり、
10μA/cm2未満が最も望ましく、次いで10〜20
μA/cm2であることが望ましい。
ていると言えるが、セパレータから比較的大きな溶出が
起こっている状態であることを示している。
としての適用可否を判断する基準として、実機単セル電
池での性能特性との関係から不働態保持密度電流>50
μm/cm2 では性能が不十分であると判断した。不働
態保持電流密度が50μm/cm2以下の材料において
は、実単セル評価試験でも、問題となる程度の継時的性
能劣化を確認するには至っておらず、迅速模擬環境評価
条件として極めて適切であると判断している。本結果に
おいても、発明例の鋼は固体高分子型燃料電池環境で最
も望ましい金属素材のひとつである金めっき素材(供試
鋼27)と同じレベルであり、相対的に見て良好な性能
が確保できると判断された。
にセパレータとして装填した状態での特性評価として、
電池内に燃料ガスを流してから1時間経過後に単セル電
池の電圧を測定し、初期の電圧と比較することにより電
圧の低下率を調べた。なお、低下率は、1−(1時間経
過後の電圧V/初期電圧v)により求めた。
は、米国Elechtrochem社製市販電池セル“FC50(商
品名)”を改造して用いた。
999%水素ガスを用い、カソード極側ガスとしては空
気を用いた。電池本体は全体を78±2℃に保温すると
共に、電池内部の湿度制御を、セル出側の排ガス水分濃
度測定をもとに入り側で調整した。設定湿度は、78±
2℃である。電池内部の圧力は、1気圧である。水素ガ
ス、空気の電池への導入ガス圧は0.04〜0.20b
arで調整した。セル性能評価は、単セル電圧で500
mA/cm2−0.62Vとなるのを確認できた状態より継
時的に測定を行った。
スクリブナー社製890 シリーズを基本とした燃料電池計
測システムを改造して用いた。電池運転状態により、特
性に変化があると予想されるが、同一条件での比較評価
である。
圧低下率は全て0.05以下であり、No.27の高価で
高耐食性の金めっきしたセパレータと同等となった。そ
れに対して本発明で規定した化学組成を外れた比較例で
は、電圧低下率が0.2〜0.8と極めて大きかった。
評価おこなったが、表2に示した短時間試験結果と近似
した相関結果が得られた。
ーステナイト系ステンレス鋼に比べてフェライト系ステ
ンレス鋼は劣っている。しかし、表2のシャルピー試験
結果から明らかなように、鋼中のC、N含有量が高い比
較例の鋼に比べて、C、N含有量が低い一連の本発明例
の鋼は格段に優れた靱性を有している。すなわち、高純
度フェライト系ステンレス鋼製造時に問題となる熱延コ
イル常温靭性は良好であると言える。一般に常温靭性
は、板厚が薄くなると見かけ上改善されるため、本発明
の鋼のレベルであれば実用上全く問題がない。
固体高分子型燃料電池のセパレータ用として、高価な金
めっきを施さないで無垢のまま使用でき、極めて優れた
電気特性を発揮するので、安価な固体高分子型燃料電池
の製造に貢献するところ大である。
Claims (2)
- 【請求項1】重量%で、C:0.012%以下、Si:
0.01〜0.6%、Mn:0.01〜0.6%、P:
0.026%以下、S:0.004%以下、N:0.0
2%以下、V:0.2%以下、Cu:0.01〜0.8
%、Ni:0.2〜6%、Cr:10.5〜35%、M
o:0.5〜5%、Al:0.001〜0.2%を含有
し、かつC、N、CrおよびMo含有量は下記式、
を満足する範囲内にあり、25℃におけるpHが2.6
の硫酸水溶液を80℃に昇温した硫酸水溶液中で、0.
2V vs. SCEにおける不働態保持電流密度が、50
μA/cm2以下であることを特徴とする固体高分子型
燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼。 C+N≦0.03% ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10.5%≦Cr+3×Mo≦43%・・・・・・ ここで、元素記号は各元素の含有量(重量%)を示す。 - 【請求項2】重量%で、C:0.012%以下、Si:
0.01〜0.6%、Mn:0.01〜0.6%、P:
0.026%以下、S:0.004%以下、N:0.0
2%以下、V:0.2%以下、Cu:0.01〜0.8
%、Ni:0.2〜6%、Cr:10.5〜35%、M
o:0.5〜5%、Al:0.001〜0.2%を含有
し、さらにNb:0.001〜0.3%、Ti:0.0
01〜0.15%の一方または双方を含み、かつC、
N、Cr、Mo含有量は、下記式およびを満足し、
かつNbおよびTi含有量は下記式および、または
を満足する範囲内にあり、25℃におけるpHが2.6
の硫酸水溶液を80℃に昇温した硫酸水溶液中で、0.
2V vs. SCEにおける不働態保持電流密度が50μ
A/cm2以下であることを特徴とする固体高分子型燃
料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼。 C+N≦0.03% ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10.5%≦Cr+3×Mo≦43% ・・・・・ 6≦Nb/C≦25 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6≦Ti/(C+N)≦25 ・・・・・・・・・・・・ ここで、元素記号は各元素の含有量(重量%)を示す。
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