JP2000218114A - セラミックフィルタの製造方法 - Google Patents

セラミックフィルタの製造方法

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JP2000218114A
JP2000218114A JP11024460A JP2446099A JP2000218114A JP 2000218114 A JP2000218114 A JP 2000218114A JP 11024460 A JP11024460 A JP 11024460A JP 2446099 A JP2446099 A JP 2446099A JP 2000218114 A JP2000218114 A JP 2000218114A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多孔質基材の細孔の閉塞を防止しつつ、基材
表面に均一で欠陥がない多孔質膜を形成することがで
き、かつ、基材表面と多孔質膜との密着強度が担保でき
るセラミックフィルタの製造方法を提供する。 【解決手段】 多数の細孔を有するセラミック多孔質基
材の表面に、セラミックスラリーを成膜し焼成すること
により、多孔質基材の細孔に比して更に細孔径が小さい
セラミック多孔質膜を、多孔質基材の表面に形成するセ
ラミックフィルタの製造方法である。予め疎水化処理を
行った多孔質基材の表面に、無機酸濃度を0.5〜10
重量%に調製したセラミックスラリーを成膜する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、多数の細孔を有
するセラミック多孔質基材の表面に、比較的小さい細孔
を有するセラミック多孔質膜を形成してなるセラミック
フィルタの製造方法に関し、詳しくは焼成により多孔質
膜となるスラリーを多孔質基材の表面に成膜する方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】 セラミックフィルタは、高分子膜等と
比較して、物理的強度、耐久性に優れるため信頼性が高
いこと、耐食性が高いため酸・アルカリ等による洗浄を
行っても劣化が少ないこと、更には濾過能力を決定する
細孔径の精密な制御が可能である点において、固液分離
用のフィルタ等として有用である。
【0003】 通常、セラミックフィルタは、透水量を
確保しつつ濾過性能を向上させる観点から、図3に示す
如く比較的大きい細孔を有するセラミック多孔質基材
(以下、「多孔質基材」という。)1の表面を、比較的
小さい細孔を有するセラミック多孔質膜(以下、「多孔
質膜」という。)2で被覆したものが用いられる。
【0004】 従来、このようなセラミックフィルタの
製造は、多孔質基材の表面にセラミック骨材粒子(以
下、「骨材粒子」という。)を水中に分散させたスラリ
ーを成膜した後、1300℃以上の高温で焼成し、スラ
リー中の骨材粒子同士を固相焼結する方法により製造さ
れていた。しかしながら、当該方法により製造されたフ
ィルタは、図3に示すように多孔質基材1の細孔が閉塞
し、或いは被覆されるため、フィルタの透水量が低下す
るという問題が生じていた。
【0005】 上述の問題は、スラリーが多孔質基材表
面のみに成膜されず、多孔質基材の細孔にまで浸透して
しまうことにより生ずるものである。そこで、予めシラ
ン化合物等により疎水化処理を行った多孔質基材の表面
に、スラリーを成膜する成膜工程を備えたセラミックフ
ィルタの製造方法が提案されている(特開平2-2847号公
報)。
【0006】 当該製造方法によれば、疎水化処理によ
り撥水性が高まった多孔質基材の細孔と、水を分散媒と
するスラリーとの間の親和性が低下するところ、当該細
孔へのスラリーの浸透を防止できるため、上述の問題を
解決することが可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、前記
の製造方法における疎水化処理は、多孔質基材を液状の
シラン化合物等に浸漬し、或いは多孔質基材に対し液状
のシラン化合物等を噴霧・塗布することにより行われる
ため、実際には多孔質基材の細孔のみならず表面につい
ても疎水化されてしまい、焼成後に形成される多孔質膜
に不良を生ずる場合があるという問題点があった。
【0008】 即ち、多孔質基材の孔径が小さい、気孔
率が低い、或いは表面が平滑である等の場合に基材の表
面が疎水化されると、スラリーの成膜が不完全となっ
て、焼成後に形成される多孔質膜に欠陥を生じたり、或
いは多孔質膜に欠陥を生じなかった場合でも、基材表面
と多孔質膜との密着強度が低下し、基材表面から多孔質
膜が剥離する場合があるという不具合が生じていた。
【0009】 従って、多孔質基材の細孔の閉塞を防止
しつつ、基材表面に均一で欠陥がない多孔質膜を形成す
ることができ、かつ、基材表面と多孔質膜との密着強度
が担保できるセラミックフィルタの製造方法が切望され
ている。
【0010】
【課題を解決するための手段】 本発明者らが前記問題
点を解決すべく鋭意検討した結果、予め疎水化処理を行
った多孔質基材に対し、所定の無機酸濃度のスラリーを
成膜することに想到して本発明を完成した。
【0011】 即ち、本発明によれば、セラミックから
なる、多数の細孔を有する多孔質基材の表面に、セラミ
ック骨材粒子を含むスラリーを成膜し、焼成することに
より、前記多孔質基材の表面に、当該多孔質基材の細孔
に比して更に細孔径が小さいセラミック多孔質膜を形成
するセラミックフィルタの製造方法であって、予め疎水
化処理を行った前記多孔質基材の表面に、無機酸濃度を
0.5〜10重量%に調製した前記スラリーを成膜する
成膜工程を備えたことを特徴とするセラミックフィルタ
の製造方法が提供される。
【0012】 また、セラミックからなる、多数の細孔
を有する多孔質基材の表面に、セラミック骨材粒子及び
セラミック微粒子からなる結合材を含むスラリーを成膜
し、300〜700℃で焼成することにより、前記多孔
質基材の表面に、当該多孔質基材の細孔に比して更に細
孔径が小さいセラミック多孔質膜を形成するセラミック
フィルタの製造方法であって、予め疎水化処理を行った
前記多孔質基材の表面に、無機酸濃度を1.0〜10重
量%に調製した前記スラリーを成膜する成膜工程を備え
たことを特徴とするセラミックフィルタの製造方法が提
供される。当該製造方法においては、スラリー中におけ
るセラミック微粒子の固形分濃度が2〜10重量%であ
ることが好ましく、セラミック微粒子がチタニアゾル粒
子であることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】 本発明のセラミックフィルタの
製造方法は、予め疎水化処理を行った多孔質基材に対
し、所定の無機酸濃度のスラリーを成膜することを特徴
とする。本発明の製造方法によれば、多孔質基材の細孔
の閉塞を防止しつつ、基材表面に均一で欠陥がない多孔
質膜を形成することができ、かつ、多孔質基材表面と多
孔質膜との密着強度が担保できる。
【0014】 以下、本発明のセラミックフィルタの製
造方法について詳細に説明する。なお、以下の説明にお
いては「細孔径」、「粒径」は各々「平均細孔径」、
「平均粒径」を意味するものとする。
【0015】 本発明にいうセラミックフィルタ(以
下、「フィルタ」という。)とは、多孔質基材の表面
に、当該多孔質基材の細孔に比して更に細孔径が小さい
セラミック多孔質膜を形成してなるものである。
【0016】 本発明における多孔質基材(以下、「基
材」という。)とは、多数の細孔を有する多孔質体であ
って、セラミックからなる部材をいう。基材を構成する
多孔質体としては、細孔径が1〜50μmの、比較的細
孔径が大きいものを使用する。フィルタの濾過機能は専
ら基材表面に形成される多孔質膜が果たすため、基材自
体は細孔径を大きくし、フィルタの透水量を増加させる
ことが好ましいからである。
【0017】 基材の材質は、セラミックである限りに
おいて特に限定されず、例えばアルミナ、チタニア、ム
ライト、ジルコニア、或いはこれらの混合物等を好適に
用いることができる。
【0018】 基材の形状についても特に限定されず、
濾過の目的に応じ適宜選択すればよい。例えば、平板
状、チューブ状、レンコン状(円筒体の長手方向に多数
の貫通孔が形成された形状)等の基材を用いることがで
きる。また、基材表面に既に多孔質膜が形成されている
ものを基材として用いてもよい。
【0019】 本発明においては、上述のような基材に
予め疎水化処理を行った後にスラリーを成膜する。疎水
化処理により撥水性が高まった基材の細孔と、水を分散
媒とするスラリーとの間の親和性が低下するところ、当
該細孔へのスラリーの浸透を防止できるからである。こ
のような成膜工程を備えることにより、製造されたフィ
ルタの細孔が閉塞し、透水量が低下することが防止され
る。
【0020】 本発明における疎水化処理とは、基材の
表面及び細孔内の親水性を低下せしめる化学的処理をい
い、具体的には、基材を液状のシラン化合物等に浸漬
し、或いは基材に対し液状のシラン化合物等を噴霧・塗
布する処理方法などが挙げられる。
【0021】 シラン化合物としては、室温から100
℃程度の大気中で加水分解して疎水性を示す点におい
て、トリアルコキシシラン誘導体(例えば、商品名:シ
ンエツバイオウォーターガードM(信越化学工業(株)
製)等)を特に好適に用いることができる。
【0022】 トリアルコキシシラン誘導体は、基材の
細孔内に浸透し、加水分解を受けることによりシラノー
ル誘導体を生成し、当該シラノール誘導体が、図4に示
すように基材表面のヒドロキシル基と反応して強固なシ
ラノール結合を形成する。即ち、基材の細孔表面が疎水
性の高い有機基によって被覆されるため、水を分散媒と
するスラリーは基材の細孔内に侵入し難くなるのであ
る。
【0023】 前記の疎水化処理を行った基材には、骨
材粒子を含むスラリーを成膜する。一般に、成膜用のス
ラリーは、骨材粒子が分散媒中に分散している懸濁液を
いうが、本発明においては疎水基に対して親和性のない
水を分散媒として用いることが好ましく、更に当該水中
に、成膜性を向上させるための有機バインダー、分散性
を向上させるためのpH調製剤、界面活性剤等を添加し
てスラリーを調製してもよい。
【0024】 本発明におけるセラミック骨材粒子と
は、多孔質膜の骨格を形成する粒子をいい、当該骨材粒
子の粒子径により多孔質膜の細孔径、ひいてはフィルタ
機能が決定される。即ち、骨材粒子の粒子径を適宣選択
することにより、所望の細孔径を有する多孔質膜を得る
ことが可能である。本発明においては、0.05〜5μ
m程度の比較的粒径が小さいセラミック粒子を用い、細
孔径が0.05〜1μm程度の多孔質膜を形成すること
を目的とする。
【0025】 水中に分散させる骨材粒子の種類は特に
限定されず、例えばアルミナ、チタニア、ムライト、ジ
ルコニア、シリカ、スピネル、或いはそれらの混合物等
を用いることができる。但し、粒子径が制御された原料
を入手し易く、安定なスラリーを形成でき、かつ、耐食
性も高いアルミナを用いることが好ましい。
【0026】 スラリー中の骨材粒子の固形分濃度は、
成膜する膜厚にもよるが通常は50〜75重量%の範囲
内となるように調製することが好ましい。骨材粒子の固
形分濃度が50重量%未満では基材表面全体が均一に成
膜されないため、75重量%を超えると骨材粒子の凝集
が起こるため、いずれも焼成後に形成される多孔質膜に
欠陥を生じ易くなるからである。
【0027】 また、本出願人が既に開示したように、
スラリー中に骨材粒子の他、粒径5〜100nmのセラ
ミック微粒子(セラミックゾル粒子、セラミック微粉末
粒子等)からなる結合材を添加することも好ましい(特
願平9-225839号、特願平9-366482号)。このようなスラ
リーを用いることにより、300〜700℃という比較
的低温での焼成が可能となるからである(以下、このよ
うな方法を「低温焼成法」という。)。
【0028】 低温焼成法におけるスラリー中のセラミ
ック微粒子の固形分濃度は、2〜10重量%であること
が好ましい。2重量%未満では形成される多孔質膜の機
械的強度が小さくなり、10重量%を超えるとフィルタ
の透水量が著しく低下するためである。この場合におい
ては、スラリー全体の固形分濃度は50〜70重量%で
あることが好ましい。
【0029】 なお、本明細書においてセラミック微粒
子の固形分濃度(重量%)とはスラリーの全重量中にお
いてセラミック微粒子の重量が占める比率を示し、スラ
リー全体の固形分濃度(重量%)とはスラリーの全重量
中において骨材粒子及びセラミック微粒子の重量が占め
る比率を示すものとする。
【0030】 また、本発明の製造方法においては、セ
ラミック微粒子としてチタニアゾル粒子を用いることが
好ましい。高耐食性のチタニアゾル粒子を結合材として
用いることにより、通常、腐食に対して敏感な骨材粒子
間の結合部についても耐食性が高い多孔質膜を形成する
ことが可能となるからである。
【0031】 本発明においては、上述したような成膜
用スラリーの無機酸濃度を所定範囲内に調製して成膜す
ることを特徴とする。基材細孔内の疎水化皮膜を保持し
たまま、スラリーと接触した基材表面の疎水化皮膜のみ
を除去し、或いは疎水性を弱めるためである。
【0032】 このような方法によれば、スラリーの基
材細孔内への浸透を防止しつつ、基材表面にはスラリー
を均一かつ完全に成膜できる。従って、当該成膜体を焼
成することにより、基材表面に均一で欠陥がない多孔質
膜を形成し、また、基材表面と多孔質膜との密着強度を
向上させることが可能となる。
【0033】 本発明においては、スラリーの無機酸濃
度は0.5〜10重量%とすることが必要である。0.
5重量%未満とするとスラリーを基材表面に均一かつ完
全に成膜することができず、一方、10重量%を超える
とスラリーの粘度が高くなり過ぎると成膜を行うこと自
体が困難となるからである。
【0034】 但し、既述の低温焼成法のスラリーにお
ける無機酸濃度は1〜10重量%とすることが必要とな
る。1重量%未満とすると、スラリーを基材表面に均一
に成膜することができないためであり、10重量%を超
えるとスラリー粘度が高くなり成膜すること自体が困難
となるからである。
【0035】 なお、本明細書において酸濃度(重量
%)というときは、スラリー中における分散媒たる水の
重量に対し無機酸の重量の占める比率を示すものとす
る。また、本発明においては、使用する無機酸の種類は
特に限定されず、例えば硝酸、硫酸、或いは塩酸等の無
機酸を用いることができる。
【0036】 上述のように酸濃度を所定範囲内に調製
した成膜用スラリーを、例えばディッピング法等の従来
公知の成膜方法に従って成膜することにより、基材表面
に骨材粒子を含むスラリーが成膜された多孔質基材(以
下、「成膜体」という。)を得ることができる。当該成
膜体を焼成することにより、多孔質基材の表面に、当該
多孔質基材の細孔に比して更に細孔径が小さいセラミッ
ク多孔質膜が形成されたセラミックフィルタが製造され
る。
【0037】 本発明においては、前記成膜体の焼成方
法は特に限定されず、従来公知の方法、例えば1300
℃以上の高温で成膜体を焼成し、スラリー中のセラミッ
ク粒子同士を固相焼結する方法等を採ることができる。
また、成膜用スラリーが既述の低温焼成法用のスラリー
である場合には、300〜700℃の比較的低温で成膜
体を焼成することも可能である。
【0038】 上述のような焼成を行うことにより、基
材表面に厚さ10〜300μm程度、細孔径が0.05
〜1μm程度の薄膜状の多孔質膜が形成されたフィルタ
が製造される。当該多孔質膜はフィルタの濾過機能の中
枢をなす部分となる。なお、本発明の方法で形成された
多孔質膜の表面に更に細孔径の小さい多孔質膜を形成す
ることも可能である。
【0039】
【実施例】 以下、本発明の製造方法を実施例により更
に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限
定されるものではない。まず、本実施例で使用した多孔
質基材、チタニアゾル溶液、無機酸及び、評価法につい
て説明する。
【0040】多孔質基材 直径30mm、長さ50mmの円筒状であって、長手方
向に直径2.5mmの貫通孔を61穴形成したレンコン
状のアルミナ多孔体を基材として使用した。アルミナ多
孔体は、レーザー回折法による粒子径が60μmのアル
ミナ粒子を骨材粒子とした多孔体であり、水銀圧入法に
よる細孔径は10μm、アルキメデス法による気孔率は
30%のものを使用した。
【0041】 前記多孔質基材は、スラリー成膜前に予
め疎水化処理を施した。疎水化処理は、液状のトリアル
コキシシラン誘導体に多孔質基材を浸漬した後、引き上
げ、80℃で加温・乾燥することにより行った。トリア
ルコキシシラン誘導体としては、信越化学工業(株)製
のバイオウォーターガードM(商品名)を使用した。
【0042】チタニアゾル溶液 実施例2におけるチタニアゾル粒子は、粒径30nmの
市販のチタニアゾル液を固形分換算して添加した。ゾル
粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡により、各ゾル粒子の
最大、最小直径の平均値を当該粒子の粒径とし、さらに
100個のゾル粒子について当該粒径の平均値を採り、
ゾル粒子の粒径とした。
【0043】無機酸 成膜用スラリーに添加する無機酸としては、試薬特級の
濃硝酸(濃度60重量%)、濃硫酸(濃度97重量%)
及び濃塩酸(濃度37重量%)を使用した。
【0044】評価法 スラリー粘度については、基材表面への成膜が容易に行
えたものを○、粘性が高く、基材表面に成膜することが
困難であったものを×として評価した。
【0045】 多孔質膜における未成膜部分及び欠陥の
有無は、走査型電子顕微鏡(SEM)で多孔質膜表面を
欠陥観察し、全く未成膜部分及び欠陥が発見されない場
合を○、1箇所でも発見された場合は×として評価し
た。基材表面と多孔質膜との密着強度については、製造
されたフィルタの多孔質膜部分に透明粘着テープを貼着
した後に剥ぎ取り、多孔質膜が全く剥離しなかった場合
を○、一部でも剥離した場合を×として評価した。
【0046】 この他、実施例のフィルタにつき、細孔
径分布、及び純水透水量を測定した。細孔径分布はASTM
F306記載のエアーフロー法に基づく平均細孔径で、透
水量は膜間差圧1Kg/cm、温度25℃における、
ろ過面積当たりの時間当たり透水量で表記した。
【0047】(実施例1)骨材粒子となるアルミナ粉末
(純度99重量%以上)、或いはムライト粉末(純度9
9重量%以上)と水と無機酸とを、表1に記載の比率で
調合し、スターラーで1時間混合して、ディップ成膜用
のスラリーを調製した。
【0048】 各スラリーに既述の基材を浸漬した後に
引き上げることにより、ディップ膜を形成し、成膜体と
した。成膜体は110℃で乾燥した後、電気炉において
1300〜1400℃で1時間焼成することによりフィ
ルタとした。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】(実施例2)実施例2では、本発明の方法
を低温焼成法に適用した例を示す。成膜用スラリーにチ
タニアゾル液を添加すること、及び500℃で4時間焼
成を行ったことを除いては、実施例1と同様にフィルタ
ーを作製した。その結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】(評価結果)実施例1においては、スラリ
ーの酸濃度が本発明の範囲(0.5〜10重量%)であ
る実施例1−1〜1−5の条件においては、多孔質膜に
欠陥がなく、密着強度も高いフィルタを得ることができ
た。
【0053】 一方、酸濃度が0.5重量%未満である
比較例1−1,1−3の条件では多孔質膜に未成膜部分
及び欠陥が認められ、10重量%を超える比較例1−2
の条件ではスラリーの粘度が高過ぎて基材表面に成膜す
ることすらできなかった。
【0054】 また、実施例1においては、スラリーの
酸濃度が本発明の範囲(0.5〜10重量%)である限
り、スラリーの固形分濃度(実施例1−6,1−7)、
骨材粒子の粒径(実施例1−8〜1−10)、無機酸の
種別(実施例1−11,1−12)、骨材の種別(実施
例1−13,1−14)に拘わらず、いずれも良好な結
果を示した。
【0055】 この傾向は本発明を低温焼成法に適用し
た実施例2においても同様であり、スラリーの酸濃度が
本発明の範囲(1.0〜10重量%)である実施例2−
1〜2−6の条件においては良好な結果を示す一方、酸
濃度が本発明の範囲外である比較例2−1,2−2,2
−3の条件では多孔質膜の欠陥や成膜不能等の不具合を
生じた。
【0056】 また、実施例2においても、スラリーの
酸濃度が本発明の範囲(1.0〜10重量%)である限
り、スラリーの固形分濃度(実施例2−7,2−8)、
骨材粒子の粒径(実施例2−9,2−10)、骨材の種
別(実施例2−11,2−12)に拘わらず、いずれも
良好な結果を示した。
【0057】 但し、結合材であるチタニアの固形分濃
度が2重量%未満である場合には形成される多孔質膜の
機械的強度が得られず(比較例2−4)、10重量%を
超えるとフィルタの透水量が顕著に減少した。
【0058】 図1(a)は、実施例2−3のフィルタ
の多孔質膜表面を走査型電子顕微鏡により撮影した微構
造写真である。図2に示すように酸濃度が本発明の範囲
外の比較例2−1のフィルタにおいては、基材表面上に
未成膜部分が認められるが、酸濃度が本発明の範囲内で
ある実施例2−3のフィルタでは、図1(a)に示すよ
うに基材表面上に均一に成膜されていることが観察でき
る。また、図1(b)は実施例2−3のフィルタの多孔
質膜近傍の断面構造を示す写真であるが、基材と多孔質
膜との界面における密着状態が良好であることが確認で
きる。
【0059】 更に、図5は実施例2−10のフィルタ
の細孔径分布を示すグラフである。図5のグラフからわ
かるように本発明の方法により製造されるセラミックフ
ィルタは細孔径についても精密に制御されており、細孔
の閉塞等は認められなかった。
【0060】
【発明の効果】 本発明によれば、多孔質基材の細孔の
閉塞を防止しつつ、基材表面に均一で欠陥がない多孔質
膜を形成することができ、かつ、多孔質基材表面と多孔
質膜との密着強度を担保することが可能なセラミックフ
ィルタの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例2−3のフィルタの写真であり、
(a)は多孔質膜表面、(b)は多孔質膜近傍の断面構
造を示す。
【図2】 比較例2−1のフィルタの多孔質膜表面を示
す写真である。
【図3】 セラミックフィルタの多孔質膜近傍の断面構
造を示す概略図である。
【図4】 疎水化の仕組みを示す概略図である。
【図5】 実施例2−10のフィルタの多孔質膜の細孔
径分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1…多孔質基材、2…多孔質膜。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミックからなる、多数の細孔を有す
    る多孔質基材の表面に、セラミック骨材粒子を含むスラ
    リーを成膜し、焼成することにより、前記多孔質基材の
    表面に、当該多孔質基材の細孔に比して更に細孔径が小
    さいセラミック多孔質膜を形成するセラミックフィルタ
    の製造方法であって、 予め疎水化処理を行った前記多孔質基材の表面に、無機
    酸濃度を0.5〜10重量%に調製した前記スラリーを
    成膜する成膜工程を備えたことを特徴とするセラミック
    フィルタの製造方法。
  2. 【請求項2】 セラミックからなる、多数の細孔を有す
    る多孔質基材の表面に、セラミック骨材粒子及びセラミ
    ック微粒子からなる結合材を含むスラリーを成膜し、3
    00〜700℃で焼成することにより、前記多孔質基材
    の表面に、当該多孔質基材の細孔に比して更に細孔径が
    小さいセラミック多孔質膜を形成するセラミックフィル
    タの製造方法であって、 予め疎水化処理を行った前記多孔質基材の表面に、無機
    酸濃度を1.0〜10重量%に調製した前記スラリーを
    成膜する成膜工程を備えたことを特徴とするセラミック
    フィルタの製造方法。
  3. 【請求項3】 スラリー中におけるセラミック微粒子の
    固形分濃度が2〜10重量%である請求項2に記載のセ
    ラミックフィルタの製造方法。
  4. 【請求項4】 セラミック微粒子がチタニアゾル粒子で
    ある請求項2又は3に記載のセラミックフィルタの製造
    方法。
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