JP2000217802A - 検体の胸郭内の空気の流れの測定法およびその装置 - Google Patents

検体の胸郭内の空気の流れの測定法およびその装置

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JP2000217802A
JP2000217802A JP11019859A JP1985999A JP2000217802A JP 2000217802 A JP2000217802 A JP 2000217802A JP 11019859 A JP11019859 A JP 11019859A JP 1985999 A JP1985999 A JP 1985999A JP 2000217802 A JP2000217802 A JP 2000217802A
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Ken Kondo
乾 近藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、完全に非侵襲的な呼吸運動のモニ
ター装置、また完全に非侵襲的に呼吸運動の異常又は呼
吸器官の異常を測定することができる装置を提供するも
のである。 【解決手段】 本発明は、複数のレーザーセンサーによ
り検体の呼吸運動を計測し呼吸運動をモニターする装
置、それを用いた測定方法、得られたデータを相互に又
は正常値と照合、比較して呼吸運動の異常又は呼吸器官
の異常を判定するための装置、及びこれらの装置からな
る呼吸運動の異常又は呼吸器官の異常を判定するための
システムに関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザーセンサー
により検体の呼吸運動を計測し呼吸運動をモニターする
装置、それを用いた測定方法、得られたデータを相互に
又は正常値と照合、比較して呼吸運動の異常又は呼吸器
官の異常を判定するための装置、及びこれらの装置から
なる呼吸運動の異常又は呼吸器官の異常を判定するため
のシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】呼吸運動は、呼吸中枢によってプログラ
ムされ、呼吸器系の機械的特性によって修飾される。本
来、呼気は受動(的)機構(passive mech
anism)によりおこなわれるが、胸郭を含め呼吸器
全体が未発達で虚脱しやすい肺を持つ新生児では、吸気
のみならず呼気運動も呼吸中枢からの調節を受けてい
る。大きく分けて呼気の遅速化と機能的残気量(FR
C)のコントロールである。すなわち、吸気が終了した
後も横隔膜が収縮を続け、高い肺気量を維持しようとす
る横隔膜の吸気後部活動(postinspirato
ry activity)と、声帯を閉鎖して呼気抵抗
を高める喉頭によるブレーキ作用(laryngeal
braking)である。呻吟は喉頭によるブレーキ
作用(laryngeal braking)の高度の
ものと考えられる。また、肺が完全に収縮する前に次の
吸気を開始して高い機能的残気量(FRC)を維持して
いる。従って、呼吸波形を分析することにより、呼吸中
枢を含めた肺機能に関する情報をうることができると考
えられる。
【0003】一方、安静呼吸時の呼吸メカニクスの測定
は、さまざまな病態における生理を解明するうえで重要
な手段と考えられる。しかし、測定のため口元にマウス
ピースやマスクを装着すると、正常な呼吸パターンが障
害され測定結果に影響を及ぼす(Gilbert R, et al.,
J. Appl. Physiol., 32: 252-254, 1972 ; Askanazi
J., et al., J. Appl. Phsiol. 48: 577-580, 1980 ; F
leming P J., et al., Pediatr. Res. 16: 1031-1034,
1982)。このような影響を避けるため、胸壁の運動を観
察する方法が考案されている。これらの方式は、呼吸抵
抗や測定器具の装着による刺激を負荷せず、非侵襲的に
生理的な呼吸運動を観察できるという利点がある。得ら
れた呼吸波形は、換気量を計算したり、波形分析に用い
られる。現在、インダクティブ プレシスモグラフィや
ストレインゲージ、マグネットメトリーなどが使用され
ている。これらは、呼吸にともなう胸壁の全周の変化
(インダクティブ プレシスモグラフィー)、半円周の
変化(ストレイン ゲージ)あるは断面積の変化(マグ
ネットメトリー)を測定する。
【0004】しかし、これらも実際には測定装置を胸壁
に装着するので完全に非侵襲的とは言えず、最小限の操
作が要求される重症の患者や未熟児などの新生児での使
用が制限される。さらに、これらのモニターは、周波数
応答に限度があるため高頻度で換気中の小児には使用で
きない。
【0005】このような欠点を克服するため、本発明者
らは低エネルギーのレーザーを用いた呼吸運動モニター
のための新しい装置を開発した。レーザー(LASE
R)は、固有波長の光を増幅したものである。任意の部
位に焦点をあてることができるうえ、光の速さで伝達さ
れるので種々の測定や情報伝達の手段として使用されて
きた。例えば、加熱によって惹起される鉱物の膨張率を
測定するためのレーザー装置が開発されており、この装
置では0.1mmの精度で装置のセンサーと検体との距
離を測定することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、完全に非侵
襲的な呼吸運動のモニター装置、また完全に非侵襲的に
呼吸運動の異常又は呼吸器官の異常を測定することがで
きる装置を提供するものである。本発明は、レーザーセ
ンサーを用いた完全に非侵襲的な呼吸運動のモニター装
置を提供するものである。より詳細には、本発明は、複
数のレーザーセンサーを用いて、呼吸運動により変化す
る複数の位置、例えば、腹部と胸郭部などの動きをモニ
ターする装置を提供するものである。本発明者は、わず
かな線量で持続的にセンサーと胸壁や腹部などの複数の
位置の距離を非侵襲的に測定することができ、この距離
の変化を時間軸にプロットすることにより呼吸波形を測
定することができることを見出し、呼吸運動による複数
の位置からの呼吸波形を照合、比較することにより呼吸
運動を総合的にモニターすることができる。また、呼吸
運動は胸壁の前後方向の運動として表され、データをコ
ンピューターに保存し、また当該データを処理や解析を
おこなうことにより、呼吸運動をモニターし、また、完
全に非侵襲的に呼吸運動の異常又は呼吸器官の異常を測
定することができるができることを見出した。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、レーザーによ
りセンサーと検体との距離を測定し得る2個又はそれ以
上のレーザーセンサーを備え、当該センサーにより検体
の異なる2箇所以上の動きを持続的に計測することがで
きる呼吸運動のモニター装置に関し、詳細には、当該装
置のひとつのセンサーの位置が固定されおり、他のセン
サーが移動可能であり、より詳細には、ひとつのセンサ
ーが呼吸運動における腹部の位置変化をモニターし、他
の1個以上のセンサーが呼吸運動における胸郭部(肩部
分を含む)の位置変化をモニターすることができる呼吸
運動のモニター装置に関する。本発明のモニター装置
は、検体の異なる2箇所以上から得られた計測データを
相互に照合及び/又は比較するなどのデータ処理をする
ことができるデータ処理装置、これらのデータを保存す
ることができるデータ保存装置、計測されたデータ又は
処理装置により処理された加工データを表示することが
でき表示装置、さらに、検体の異なる2箇所以上から得
られた計測データを相互に照合及び/又は比較して、呼
吸運動の異常を判定する装置などを有することもでき
る。
【0008】また、本発明は、前記した装置を用いて検
体の呼吸運動を測定する方法に関する。さらに本発明
は、前記した本発明の装置による検体の異なる2箇所以
上から得られた計測データを相互に又は正常値と照合及
び/又は比較して、呼吸運動の異常を判定するための判
定基準を記憶させた記録媒体に関する。そして、本発明
は、レーザーによりセンサーと検体との距離を測定し得
る2個又はそれ以上のレーザーセンサー、得られたデー
タを処理する装置、データ判定装置、及び、データ表示
装置からなる呼吸運動の異常又は呼吸器官の異常を判定
するためのシステムに関する。
【0009】本発明は、市販の距離や厚さを測定するた
めのレーザー装置を応用して、呼吸運動における体の変
位を計測することができることを見出した。使用できる
レーザー装置としては、0.5mm以下、好ましくは
0.1mm以下の距離を、0.5秒以下、好ましくは
0.3秒以下、より好ましくは0.1秒以下の間隔で測
定できるレーザーセンサーであればよい。好ましいレー
ザーセンサーとしては、本来は、加熱によって惹起され
る鉱物の膨張率を測定するために用いられているレーザ
ー装置、例えば、レーザーLB−01、キーアンス株式
会社(大阪)製)などが挙げられる。
【0010】本発明の基本となるレーザーモニター装置
の例を図1に示す。高度調節可能な支持台に移動可能に
レーザーセンサーが固着されており、当該レーザーセン
サーとモニター本体とが導線で結線されている。支持台
の形状や高さには特に制限はなく、計測状況に応じて種
々の大きさのものを選択することができる。
【0011】本発明者は、まず、このようなレーザー装
置を用いることにより呼吸波形の精度を高め、新生児へ
の応用も可能になるのではないかと考え、呼吸モデルや
各病態下で呼吸波形がどのような影響を受けるかを、図
1に示すレーザーモニター装置を用いて観察した。この
モニターは固定したセンサーと胸壁間の距離を連続して
測定し、単位時間ごとの胸壁の変位を時間軸にプロット
して呼吸波形を得るものである。
【0012】この装置の特性と性能を検討した。性能
は、(1)静的状態、(2)通常の換気モード、および
15ヘルツの高頻度振動換気モードでモデル肺を換気
時、(3)健康成人の自発呼吸時の3つの条件下で観察
した。静的条件下で、センサーと机間の距離の測定は約
1時間の実験の前後で完全に一致し、ドリフトもみられ
なかった。
【0013】次に、気流抵抗を最小限に抑え、コンプラ
イアンスを低くしたモデル肺を、ハミングV人工呼吸器
(メトラン株式会社、埼玉)を用いて、毎分10、3
0、60回の通常の換気モードおよび15ヘルツの高頻
度振動換気(HFO)モードで換気したときの計測を行
った。レーザーの性能を、通常のニューモタコグラフグ
ラフ(3500AF、 Hans−Rudolph、K
ansas City)と比較して調べた。人工呼吸器
によって駆出された気流と肺の膨張とのずれを避けるた
め気流抵抗が最小限になるようにした。呼吸回路とモデ
ル肺の間に直接ニューモタコグラフを挿入し、気流を測
定した。吸気抵抗を高めることと測定を容易にするため
重い平坦な金属板をモデル肺にのせ、金属板の変位をモ
ニターした。気流とレーザーの信号を増幅したのちAD
コンバーター(Data Translation D
T2801−A,Marlborough,MA,US
A)により200ヘルツでサンプリングした。気流は数
学的に換気量に積分した。レーザーにより得られた変位
とニューモタコグラフの換気量波形との最大時間差をコ
ンピューターにより計算した。位相差を視覚的に観察す
るためレーザー波形の振幅を調整したのち、換気量波形
に重ねあわせた。約1時間の実験の前後でテーブルの上
に固定したセンサーとテーブル間の距離を測定し、ドリ
フトおよびキャリブレーションの安定性を確かめた。
【0014】通常の換気モードにおけるレーザー波形と
換気量波形の最大位相差は20±0(SD)ミリ秒で、
毎分10、30、60回の換気回数の影響を受けなかっ
た。図2に実験モデルでの通常の換気モード(図2の
(a))および高頻度振動換気(HFO)時(図2の
(b))の両波形を示す。レーザー信号の位相差は、通
常の換気モードの吸気時にのみ認められた。HFO時に
は一貫して26ミリ秒レーザー波形が換気量波形に先行
した。図2中の直線は、HFO時におけるレーザー波形
を示し、点線は換気量波形を示す。両波形間の位相差は
ピーク間の距離で示される、波形の単位は任意に設定し
ている。
【0015】次いで、生体におけるモニターの有用性を
5人の健康成人を用いて実験した。マウスピースを介し
て被験者の気流(V’)(3500AF、Hans−R
udolph)、気道内圧(Endevco,San
Juan Capistrano,CA,USA)を測
定した。胸壁の変位は仰臥位の被験者の剣状突起下縁と
臍の中間の正中線上で測定した。腹壁の変位、気道内
圧、気流信号は増幅後、12ビットのADコンバーター
(Data Translation DT2801−
A)にて200ヘルツでサンプリングし、コンピュータ
に保存、市販のソフトウェアAnadat(RHT−I
nfodat,Montreal,Canada)を用
いて解析した。気流を積分して換気量(V)波形を求め
た。1回20秒の測定データを集積した。
【0016】通常の呼吸で3回の基礎データを収集した
のち、被験者にさまざまな深さの呼吸をおこなってもら
った。測定部位の変化による換気量と腹壁の変位の関係
への影響をみるため、臍の10−15cm左方における
呼吸波形を測定した。それぞれの測定において、胸壁の
変位の最大値(吸気終末時)から最小値(呼気終末時)
をひいて振幅を求め、この値と換気量との関係を調べ
た。基礎データの換気量波形とレーザー波形とを同一時
間軸上にプロットし、波形の比較をおこなった。最後に
このモニターで機能的残気量(FRC)の相対的変化に
どの程度追随できるかを調べるため、1.0kPaの呼
気時陽圧(PEEP)をかけた。呼気時の最小値の平均
をPEEP前後で比較した。この実験はマーガレット王
女小児病院(Perth、 Western Aust
ralia)の倫理委員会で承認され、また、被験者の
インフォ−ムドコンセントを得ておこなわれた。
【0017】図3に換気量と腹壁の変位との関係を示
す。勾配は被験者によりそれぞれ多少異なったものの、
全例において、正中部で測定した腹壁の変位と換気量と
は直線的な関係が得られた。全例の計測結果の傾きと相
関係数を次の表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】表1における換気量(V)と腹壁の変位
(AD)との相関は、直線の勾配bと定数aを用いて次
の式、 AD = b×V + a で示される。相関係数(r)は、ピアソンの方法により
計算され、全例において有意の直線回帰が得られた(p
<0.05)。
【0020】また、レーザーモニターの焦点を鎖骨中線
上においた測定では、換気量に対する腹壁の変位の割合
は少なかった。
【0021】図4は、症例1における自発呼吸時のレー
ザー波形を換気量波形に重ねたものである。図4の直線
はレーザー波形を示し、破線は換気量波形を示し、縦軸
の単位は任意に設定している。レーザー信号が換気量波
形にわずかに先行する位相差が認められるが、両波形は
きわめて類似しており、呼吸モニタリングには十分耐え
うるものと考えられる。
【0022】図5は、症例1の1kPaの呼気時陽圧
(PEEP)をかけたときの気道内圧(Pao)の変化
(図5の(a))と腹壁の変位(図5の(b))を示し
たものである。1.0kPaのPEEPにより呼気終末
時の腹壁は平均4.2mm(2.5−5.8)変化し
た。全症例のそれぞれの胸郭の変位(ΔAD)と機能的
残気量(FRC)の変化との相関における勾配と相関係
数を、前記表1と同様の方法により算出した結果を表2
に示す。
【0023】
【表2】
【0024】この変化を先に求めた一次式にあてはめて
換気量に換算すると329mlの機能的残気量(FR
C)の変化であった。
【0025】前述した静的条件下およびモデル肺を用い
た人工換気下の実験で、モニターの性能は満足すべきも
のであった。通常の換気モードならびに15ヘルツの高
頻度振動換気モードにおけるモデル肺の変位と換気量と
の関係において、換気回数に関係なく良好な呼吸波形が
得られた。また、人における実験で、正中線上で測定し
た腹壁の変位と気流を積分して得られた換気量とは直線
的な相関関係がみられた。モニターで得られた呼吸波形
は、呼吸のモニタリングや波形分析に必要な時間パラメ
ーターの計算に十分耐えうると考えられた。
【0026】これらの実験結果で示されたデータから、
本装置のレーザーモニターはすぐれた精度、再現性、周
波数応答を有し、呼吸運動の完全な非侵襲的なモニター
としてさらに発展させていく必要があると考えられた。
生体から得られた結果から、自発呼吸をしている対象の
肺機能を測定するのに1台のモニターでは十分でないと
考えられた。
【0027】一般に、応答性の精度は機器の周波数応答
と情報を媒介する物質の物理的特性により決定される。
しかし、本装置は反応を遅延させる媒介物質の影響を受
けないで、直接光の速さで伝達されるレーザーを用いて
胸壁の動きを検出することができる。このような測定原
理から、レーザーモニターは急激な肺気量の変化にも追
随できると考えられる。メーカーの仕様書によると10
ヘルツまでは、振幅、位相ともに完全追随、15ヘルツ
で0.98の減衰をみるとある。本発明者は、モデル肺
で急激な肺気量の変化に対するモニターの追随性につい
ても検討した。その結果、通常の換気モードでは、換気
量との位相差は換気回数に関係なく20ミリ秒であっ
た。これは機械の応答特性というより実験系に由来する
と考えられた。図2に示すように、レーザー信号の位相
の遅れは吸気時にのみ認められた。呼吸器の陽圧によっ
て生ずる吸気時には、呼吸器からの気流がモデル肺を膨
らませる前にまずニューモタコグラフを通過するため、
多少の時間差が生ずると考えられる。呼気にはモデル肺
の虚脱と呼気気流との関係は逆になる。
【0028】しかし、図2の(a)で、より急峻な下行
脚から推測されるように、呼気時の時定数が吸気に比較
してはるかに短いため位相差として表れないのであろ
う。即ち、位相の遅れはこれ以下と考えられる。高頻度
換気時には一貫してレーザー波形が換気量波形に先行し
た。15ヘルツの高頻度は、換気量の変化を測定するた
めに使用されたニューモタコグラフトランスデューサー
システムの応答性に影響を与えると思われる。以前の本
発明者が周到な準備のもとでおこなった研究では、10
から20ヘルツでニューモタコグラフとトランスデュー
サーを用いたシステムで応答性の減衰が認められた。今
回の実験でレーザー信号が換気量波形に先行したという
事実は、換気量波形との位相差を意味すると思われる。
このことは急激な換気量の変化に追随できる可能性を示
し、レーザーモニターが高頻度換気時(HFO)中の新
生児などの呼吸生理のモニターにも応用できることを示
している。
【0029】最近の研究で、総呼吸時間に対する吸気時
間の比率(tI/ttot)、平均吸気流速(V/t
I)、および、総呼気時間に対する最大呼気流速到達時
間の比率(tPTEF/tE)といった呼吸の時間要素
を測定するため、呼吸パターンをインダクティブ プレ
シスモグラフィーで測定することのの有用性が報告され
た(Adams J. A., et al, Respiratory inductive plet
hysmography. In: Stocks J, Sly P.D., Tepper R.S.,
Morgan W.J., eds., Infant respiratory function tes
ting., New York, Wiley-Liss, 1996; 141-142 ; Stick
S.M., et al.,Pediatr Pulmonol, 14: 187-191, 199
2)。自発呼吸下の症例において、腹壁の変位をプロッ
トして得られた呼吸波形は、ニューモタコグラフによっ
て得られた換気量波形とほぼ同一であった。このことは
レーザーモニターで出られた胸郭の変位の波形が同様の
目的に使用可能なことを示している。
【0030】これらのことから、本装置における呼吸波
形の振幅は換気量に、最大値は最大吸気位、最低値はF
RCを反映することが判明した。さらに、非侵襲的にF
RCの変位を追随できる本装置のレーザーモニターの能
力は、インダクティブプレシスモグラフィーがこういっ
た目的のために長期間使用できないことを考慮すれば、
簡便で非常に価値あるものであることがわかった。
【0031】さらに、本発明者は、本装置を用いて健康
乳児及び疾病中の乳児の呼吸のモニターを行った。次の
表3に示される28生日から61生日までの健康乳児5
名、42生日と53生日の呼吸窮迫症候群(RDS)か
ら慢性肺障害(CLD)への移行期または回復期の1
名、慢性肺障害を合併した超低出生体重児の1名であ
る。健康乳児は全て脳波(EEG)と筋電図(EOG)
をモニターして睡眠レベルと呼吸運動との関係を調べ
た。
【0032】
【表3】
【0033】図6は、健康乳児の熟睡(Quiet S
leep)時の代表的な波形である。周期や振幅、すな
わち、呼吸の早さや深さには当然個人差がみられるが、
幾つかの共通点もみられた。まず吸気において、前半は
比較的早い立ち上がりであるが、後半は鈍化し左に凸の
S字状カーブを描く。吸気から呼気への切り替えはいっ
きにおこり、次の吸気まではほぼ直線的に下降する。吸
気から呼気への移行時に吸気後部活動(postins
piratory activity)がみられること
もある。吸気時間対呼気時間比は吸気時間が明らかに長
い。
【0034】図7に61生日の健康男児における睡眠と
呼吸波形の関係を示した。熟睡(Quiet slee
p)時(図7の上段)には周期、振幅、最大吸気位、F
RCレベルはほぼ安定している。前述したように前半早
く、後半ゆっくりした吸気とそれに引き続く早い呼気が
特徴的である。いっぽうレム睡眠(REM Slee
p)時(図7の下段)では、周期、振幅、最大吸気位、
FRCレベルいずれもきわめて不規則である。この症例
では、上気道狭窄とシーソー呼吸も出現した。それにと
もない吸気の延長や、ガスピング(Gasping)様
呼吸もみられる。いったん減少したFRCを早い呼吸で
回復させようとしている様子がうかがえる。
【0035】図8は、呼吸窮迫症候群のため人工換気を
受けていた症例の抜管後の陥没、シーソー呼吸下の呼吸
波形である。早い吸気が特徴的で、健康乳児でみられた
ような吸気後半の鈍化はみられない。吸気から呼気の移
行時に吸気後部活動(postinspiratory
activity)がみられ、また、呼気の後半に呼
気速度の鈍化、すなわち喉頭によるブレーキ作用(la
ryngeal braking)とおもわれる所見が
みられる。吸気時間対呼気時間比は呼気時間のほうが長
い。
【0036】図9は、RDSからの回復期にある42生
日の乳児の呼吸波形である。吸気はほぼ直線的に立ち上
がり、いっきに呼気へと移行している。軽い吸気後部活
動(postinspiratory activit
y)がみられることもあるが著明ではない。特徴的なの
は呼気である。呼気の前半は吸気より早い。しかし後半
は著明な遅速化(Slowing)がみられゆっくりと
肺気量が減少している。この症例は急性期RDSのため
サーファクタントを使用した。
【0037】図10に25週、865gで出生し、71
生日、CLDのため酸素投与を必要としている症例を示
した。早い吸気と吸気後部活動(postinspir
atory activity)その後いっきにFRC
レベルに下降し、呼気の遅速化(Slowing)は余
り目立たない。しかし、FRCレベルに達してからの基
線の動揺が特徴的で、結果的に呼気時間が延長してい
る。末梢気道の閉塞、すなわち空気の捕らえ込み(Ai
r Trapping)と関係しているのかもしれな
い。
【0038】このように本装置のレーザーモニターを用
いて呼吸にともなう胸壁の運動を観察することにより、
各病態下で呼吸波形がさまざまに変化することがわかっ
た。5例の健康乳児の熟睡(quiet sleep)
時では、共通の呼吸パターンがみられた。これに対し上
気道狭窄、呼吸窮迫症候群(RDS)、呼吸窮迫症候群
(RDS)から慢性肺障害への移行期、慢性肺障害の各
病態でそれぞれ異なる呼吸パターンが観察された。本方
法が全く非侵襲的で呼吸運動に影響を及ぼさず反復して
測定可能であることを考慮すると、本装置が呼吸中枢を
含めた肺機能の評価をおこなっていくのに価値ある手段
と考えられた。
【0039】以上のように、本装置は人における安静呼
吸、モデル肺を用いての通常の人工換気およびHFO時
の呼吸波形を得るのきわめて優れた性能を有することを
示してきた。生体におけるモニターの性能も臨床応用の
有用性を十分示唆するものであった。以上の計測は、1
台のモニターを用いて腹壁上の1点の動きを測定したも
のである。呼吸の運動は一方向の動きによって描出され
るような単純なものではないことは十分認識している
が、KonnoとMead(Konno K., et al., J. App
l. Phsiol., 22: 407-422, 1966)は、気道閉塞がない
限り胸壁上の任意の1点の前後方向の運動と換気量との
間には直線関係が認められると報告した。通常の自発呼
吸下でおこなったわれわれの研究も同様の結果であっ
た。
【0040】呼吸により腹部が上下運動をし、この上下
運動をレーザーによるモニタリングすることにより、実
際の肺の換気量を知ることができること、即ち、腹部の
運動で測定した呼吸波形と、実際の換気量波形に良好な
相関(一致)があることをみいだした。さらに、本発明
者は、モニターの焦点を鎖骨中線上に置いた場合の測定
結果でも明らかなように、直線の勾配は測定部位により
異なることを見出した。したがって、本発明のモニター
装置は、前記したレーザーセンサーを2個以上備えたも
のである。これにより、異なる部位からの複数のレーザ
ー信号を同時に得ることができ、呼吸中の胸壁の運動を
詳細に描写することが可能となった。特に、胸郭と腹壁
の2つの要素が換気量の変化に及ぼす影響を同時に調べ
られるように複数のセンサーを備えることが好ましい。
本発明は、胸郭部の呼吸波形と腹部の呼吸波形の相関関
係を測定をし、呼吸器官各部の空気の流れ状況を把握す
る方法およびその装置を主たる目的とするものであり、
より詳細には、胸郭部の呼吸波形と腹部の呼吸波形の不
一致、即ち、波形の位相のずれ及び波形のずれから、呼
吸運動の異常、肺病変の程度、部位、種類などを知る方
法及びそのための装置を提供するものである。
【0041】例えば、腹部一点のみのレーザーモニタリ
ングでなく、同時に胸郭部運動をレーザーモニタリング
し、これによる腹部の呼吸波形と、胸郭部各部の呼吸波
形(一点以上複数点の)について、その両者の呼吸波形
の位相のずれ、波形のずれを調べることにより、胸郭内
各部の空気の流れの状況を知ることに成功した。即ち、
気管部(太部、細部)、胞肺部における空気の流れの状
況を本発明の装置により知ることができる。
【0042】肺は胸郭(肋骨と筋肉で囲まれた籠)と横
隔膜に囲まれた胸腔内にある。息を吸うときには胸郭が
外に広がり、同時に横隔膜が下に移動するため、胸腔が
広がり肺が拡張する。横隔膜が下に移動すると、腹腔
(横隔膜より下のお腹の部分)が狭くなるため腹壁が前
方に飛び出す。息を吐くときにはこの逆が起こる。呼吸
時に横隔膜の上下運動にともなって起こる腹部の前後方
向の動きは、1回肺に出入りする量に比例する。したが
って、腹部の運動を測定することにより、間接的に肺に
出入りする空気の量を測定することができる。これは、
ひとつのレーザー信号を用いた前記した装置の通りであ
る。また、息を吐いてしまった時に肺にまだ残っている
量(機能的残気量)の推測にも応用できることも、前記
したとおりである。これは、健康な肺では、胸郭と横隔
膜は一緒に(時間的なずれがない)運動をするためにこ
のようなことが言えるのである。
【0043】しかし、肺に病変がある場合は、胸郭と横
隔膜の運動にずれが出てくる。胸郭の運動はすぐ近くに
ある肺の病変の影響を受けるが、横隔膜の運動は胸腔全
体の動きを反映する。したがって、胸郭上の任意の一点
の運動と腹壁の運動(横隔膜の運動を反映する)とを対
比することにより局所の病変の種類、部位、程度を診断
することができると考えられる。即ち、肺に異常のない
健康な人では、胸郭上の任意の一点における呼吸運動
は、腹壁の運動と波形、位相とも一致する。しかし、肺
の一部に病変がある場合、病変部の呼吸波形と腹部の呼
吸波形は、病変の種類や程度に応じて、波形や位相にお
いて不一致が生ずると考えられる。したがって、一つの
レーザーを用いた場合、健康な肺で換気量(肺に出入り
する空気の量)の計算や機能的残気量(息を吐いたと
き、まだ肺に残っている空気の量)を測定することはで
きる。しかし、病的肺では、その測定は困難である。し
かし、複数のレーザー信号を用いると、病的肺でも測定
が可能になる。しかも、腹部の呼吸波形と胸壁上の呼吸
波形の相違(位相や波形の違い)(図12及び図13参
照)をコンピューターを用いて対比・解析することによ
り、肺病変の部位、種類、程度などの診断に応用でき
る。
【0044】図11にひとつのレーザーモニターを用い
た場合の呼吸変位の測定法の概略を示す。検体の上に本
発明のレーザーセンサーを置き、検体の呼吸による検体
の外郭の変位をレーザーセンサーにより測定し、レーザ
ーモニターにより得られたデータを処理する。図12に
5個のレーザーセンサー(1,2,3,4,5)を備え
た本発明の装置の例を示す。図12の6は、レーザーセ
ンサーから得られたデータを処理する処理装置(レーザ
ーモニターを含む)である。これに必要に応じて、保存
装置や表示装置を設けることもできる。
【0045】図13は、前記に例示した本発明の装置を
用いて測定する位置を例示したものである。測定位置
は、例えば、レーザーセンサー1を胸郭の右側上方(鎖
骨のやや下あたり)におき、レーザーセンサー3を胸郭
の右側下方(肋骨の最下段よりやや上)におき、レーザ
ーセンサー2及び4をレーザーセンサー1及び3に左右
対称位置におく。レーザーセンサー5は、腹部の臍の上
辺りにおく。なお、図13中の破線は横隔膜を示してい
る。
【0046】図14は、前記した5個のレーザーセンサ
ーを備えた本発明の装置を用いて検体の呼吸変位の測定
法の概略を示したものである。本発明における複数のレ
ーザーセンサーは、各々独立して設置されていてもよい
が、図14に示されるように板状の物質などで相互に結
合されていてもよい。複数のレーザーセンサーが板状の
物質で相互に結合されている例を図15に示す。図15
では、例示のために板状の物質は四角形で示されている
が、この形状や厚さや硬さなどは適宜変更することがで
きる。また、図15では、各レーザーセンサーは例示の
ために一次元的に移動可能に表示されているが、これに
限定されるものではなく、二次元的や三次元的に移動可
能なように設計することもできる。
【0047】この例によれば、各レーザーセンサーから
得られる距離データをまず時間軸に対する波形情報に変
換する。次いで、レーザーセンサー5から得られる腹部
のデータと、レーザーセンサー1、2、3及び4から得
られる胸郭部の各々のデータとその位相及び波形などを
照合、比較して病変の有無、病変部分などを判定するこ
とになる。また、正常値のデータと比較することもでき
る。本発明のモニター装置は、前記した図面に例示され
るものに限定されるものではなく、本発明はレーザーに
よりセンサーと検体との距離を測定し得る2個又はそれ
以上のレーザーセンサーを備え、当該センサーにより検
体の異なる2箇所以上の動きを計測することができるこ
とを特徴とする呼吸運動のモニター装置であり、この特
徴を備えている限り実施の形態において種々の形態に設
計することができる。
【0048】また、本発明の判定装置における判定手段
の概略を例示すれば、次のようになる。 1.距離データを波形情報に変換するモジュール。 2.腹部波形情報を正常値と照合し、比較するモジュー
ル。 3.腹部波形情報と胸郭部のひとつの波形情報との位相
を比較するモジュール。 4.前記3における位相の相違を判定するモジュール。 5.腹部波形情報と胸郭部のひとつの波形情報との波形
を比較するモジュール。 6.前記5における波形の相違を判定するモジュール。 7.波形情報を解析するモジュール。 8.各部の波形情報及び判定結果を表示させるモジュー
ル。 これらの各モジュールにおける具体的なプログラムは、
使用するハードウエアーに応じて設計することができ
る。
【0049】次の図16〜18に、腹部と胸郭部のひと
つからの波形データを例示する。図16は、健常肺にお
ける、胸郭部(灰色線)と腹壁(黒線)とからの波形デ
ータを例示する。健常肺の場合には比較的両者の位相の
ずれ及び波形の相違がほとんどみられない。一方、図1
7に病的肺における、胸郭部(灰色線)と腹壁(黒線)
とからの本発明の装置による波形データを例示する。こ
の例における病的肺においては、波形に顕著な相違はみ
られないが、胸郭部と腹壁との間の位相差がみられ、位
相差が正常な呼吸運動でないことを示しており、この位
置のレーザーセンサーによりモニターされた周辺部位に
異常があることがわかる。さらに、この位相差の程度
は、病変部の症状の程度をあらわしている。図18に病
的肺における波形の相違の例を示している。胸郭部(破
線)と腹壁(黒線)とからの位相差も見られるが、その
波形が大きく異なっており、このモニターした位置に波
形の変形に応じた病巣部が存在していることがわかる。
実際的には、肺病変の部位、種類、程度などが判るわけ
である。位相のずれから病変の程度、波形のずれから不
良気管の部位、胸郭部の測定点から胸郭内の病変の位置
が判る、などの有意性がある。
【0050】本発明の装置における胸郭部からのモニタ
ーは、胸郭部の任意の位置で行うことができ、位相差や
波形の変形が計測された位置に主たる病巣部が存在して
いることから、胸郭部のモニターは任意に移動可能にし
ておくことが好ましい。また、胸郭部に2個以上の複数
のモニターを設置することも本発明の好ましい態様であ
る。
【0051】また、本発明のモニター装置は、レーザー
センサーによって検知された腹部又は胸郭部などの位置
情報をコンピューター処理して、経時的な呼吸波形に変
換することができるものであるから、上記腹部の呼吸波
形と胸郭部の呼吸波形の相違をコンピューターを用いて
対比、解析することができる。さらに、予め正常な呼吸
パターンや、胸骨の陥没や奇異性呼吸パターン、あるい
は、未熟児の気胸などの下部肋骨の膨隆といった胸壁の
一部が変位した場合のパターンなどを記憶させておい
て、計測された結果をこれらのパターンと比較、照合す
ることができるようにプログラムしておくこともでき
る。したがって、本発明は、本発明の装置による検体の
異なる2箇所以上から得られた計測データを相互に又は
たのパターンと照合し、解析し及び/又は比較して、呼
吸運動の異常を判定するための判定基準を記憶させた記
録媒体を提供するものである。
【0052】さらに、本発明は、前述してきた各装置を
用いることにより、レーザーによりセンサーと検体との
距離を測定し得る2個又はそれ以上のレーザーセンサ
ー、得られたデータを処理する装置、データ判定装置、
及び、データ表示装置からなる呼吸運動の異常又は呼吸
器官の異常を判定するためのシステムを提供するもので
ある。
【0053】本発明の装置は、低エネルギーレーザーの
簡便な装置で、新生児、未熟児などについて、完全に非
侵襲的な胸郭内局所病変の検出等に利用できる有用なも
のであり、胸壁の運動を描写するため、胸壁上の複数の
部位をモニターし、それぞれの部位の変位を観察できる
能力は、胸壁の変位を観察する他のモニターに比べては
るかに多くの利点を有する。さらに、不均一な肺疾患に
対するPEEPやHFOが局所の過膨張をきたすことは
よく知られている。こういった問題を早期に検出できる
能力は新生児集中治療室(NICU)では大いに有用で
あろう。現在市販されているモニターにはこのような性
能は備わっていない。
【0054】
【実施例】次に実施例により本発明をより具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
【0055】実施例1(レーザーモニター) 市販のレーザー装置(レーザー LB−01、キーアン
ス株式会社、大阪)を胸壁の運動が観察できるよう改造
した。このレーザー装置は本来は、加熱によって惹起さ
れる鉱物の膨張率を測定するために用いられているもの
である。本装置はガリウム−砒素半導体レーザーを使用
しておりパルス放射式により測定をおこなう。周波数応
答は0.7、20、500ミリ秒の3段階に調節可能で
ある。平均出力は0.9 mWで、最大出力は3.0m
Wに設定されている。これはJIS規格の3Bに相当
し、最大出力500mW以内の使用で安全基準を満た
す。レーザー信号が、対象の表面から反射されて戻るま
での時間を測定することにより距離を求める。ミリ単位
のキャリブレーションは既知の厚さのプラスチック平板
を測定物体の表面に置き、生じた電圧の変化を距離に換
算することにより求める。電圧の変化は増幅してフィル
ターにかけ、デジタル信号化したのちミリメートルの距
離に換算しコンピューターに記録する。
【0056】モニターはディスプレイを有する調節部と
センサー部からなる(図1)。レーザー信号は1mmの
距離の変化で100mVの電圧の変化を生ずるよう調節
されており、解析精度は0.1mmである。この構成
で、センサーから6−16cmの距離で正確な測定がで
きる(working range)。測定中は、セン
サーから10cmのところの静止物体に対して出力が0
mVとなるよう調節した。周波数応答は20ミリ秒にな
るよう設定した。この設定でモニターは、10ヘルツま
では振幅、位相において完全追随し、15ヘルツで0.
98の減衰をみる。センサーの位置を胸壁上に固定する
ため、任意の高さに調節可能なアームを用いた。
【0057】実施例2(モデル肺による実験) 気流抵抗を最小限に抑え、コンプライアンスを低くした
モデル肺を、ハミングV人工呼吸器(メトラン株式会
社、埼玉)を用いて、毎分10、30、60回の通常の
換気モードおよび15ヘルツの高頻度振動換気(HF
O)モードで換気した。レーザーの性能を、通常のニュ
ーモタコグラフグラフ(3500AF、Hans−Ru
dolph、Kansas City)と比較して調べ
た。人工呼吸器によって駆出された気流と肺の膨張との
ずれを避けるため気流抵抗が最小限になるようにした。
呼吸回路とモデル肺の間に直接ニューモタコグラフを挿
入し、気流を測定した。吸気抵抗を高めることと測定を
容易にするため重い平坦な金属板をモデル肺にのせ、金
属板の変位をモニターした。気流とレーザーの信号を増
幅したのちADコンバーター(Data Transl
ation DT2801−A,Marlboroug
h,MA,USA)により200ヘルツでサンプリング
した。気流は数学的に換気量に積分した。レーザーによ
り得られた変位とニューモタコグラフの換気量波形との
最大時間差をコンピューターにより計算した。位相差を
視覚的に観察するためレーザー波形の振幅を調整したの
ち、換気量波形に重ねあわせた。約1時間の実験の前後
でテーブルの上に固定したセンサーとテーブル間の距離
を測定し、ドリフトおよびキャリブレーションの安定性
を確かめた。
【0058】実施例3(人における実験) 生体におけるモニターの有用性を5人の健康成人を用い
て実験した。マウスピースを介して被験者の気流
(V’)(3500AF、Hans−Rudolp
h)、気道内圧(Endevco,San Juan
Capistrano,CA,USA)を測定した。胸
壁の変位は仰臥位の被験者の剣状突起下縁と臍の中間の
正中線上で測定した。腹壁の変位、気道内圧、気流信号
は増幅後、12ビットのADコンバーター(Data
Translation DT2801−A)にて20
0ヘルツでサンプリングし、コンピュータに保存、市販
のソフトウェアAnadat(RHT−Infoda
t,Montreal,Canada)を用いて解析し
た。気流を積分して換気量(V)波形を求めた。1回2
0秒の測定データを集積した。
【0059】通常の呼吸で3回の基礎データを収集した
のち、被験者にさまざまな深さの呼吸をおこなってもら
った。測定部位の変化による換気量と腹壁の変位の関係
への影響をみるため、臍の10−15cm左方における
呼吸波形を測定した。それぞれの測定において、胸壁の
変位の最大値(吸気終末時)から最小値(呼気終末時)
をひいて振幅を求め、この値と換気量との関係を調べ
た。基礎データの換気量波形とレーザー波形とを同一時
間軸上にプロットし、波形の比較をおこなった。最後に
このモニターで機能的残気量(FRC)の相対的変化に
どの程度追随できるかを調べるため、1.0kPaの呼
気時陽圧(PEEP)をかけた。呼気時の最小値の平均
をPEEP前後で比較した。この実験はマーガレット王
女小児病院(Perth、Western Austr
alia)の倫理委員会で承認され、また、被験者のイ
ンフォ−ムドコンセントを得ておこなわれた。
【0060】実施例4(レーザセンサーを5個備えた装
置) 図11に本発明の装置を例示する。本装置は、5個のレ
ーザーセンサー1、2、3、4、及び5を有している。
モニター6は、複数のレーザーセンサーからのデータを
入力できるように設定されており、図11では5個のレ
ーザーセンサーが接続されている。各レーザーセンサー
から得られるデータは、モニター6で波形情報に変換さ
れ、各波形じょうほうが照合され、比較される。
【0061】
【発明の効果】本発明は、完全に非侵襲的に呼吸運動を
モニターすることができ、かつ、呼吸運動の異常、呼吸
器官の異常を計測することができる方法及び装置を提供
するものである。本発明の方法及び装置によれば、患者
に特別な負担をかけることなく、簡便かつ迅速に呼吸運
動や呼吸器官の異常を知ることができる。特に、重篤な
患者や新生児などの呼吸運動を常時モニターすることが
できるのみならず、急激な呼吸運動の変動に対しても、
迅速な対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、レーザーセンサーが1個のモニター装
置の概略を示したものである。
【図2】図2は、モデル肺による通常換気時(図の
(a))及び高頻度振動換気時(図の(b))のレーザ
ー波形(直線)及び換気量(破線)を示したものであ
る。
【図3】図3は、1症例における換気量(横軸(m
L))と腹部の変位(縦軸(mm))との相関を示した
グラフである。
【図4】図4は、1症例における自発呼吸時のレーザー
波形(直線)及び換気量(破線)を示したものである。
【図5】図5は、1症例における1kPaの呼気時陽圧
(PEEP)をかけたときの気道内圧(Pao)の変化
(図の(a))と腹壁の変位(図の(b))を示したも
のである。
【図6】図6は、健康乳児の熟睡時の代表的な波形を示
す。
【図7】図7は、61生日の健康男児における熟睡時
(図の上段)とレム睡眠時(図の下段)の呼吸波形の関
係を示す。
【図8】図8は、RDSのため人工換気を受けていた症
例の抜管後の陥没、シーソー呼吸下の呼吸波形を示す。
【図9】図9は、RDSからの回復期にある42生日と
の乳児の呼吸波形を示す。
【図10】図10は、25週、865gで出生し、71
生日、CLDのため酸素投与を必要としている症例の呼
吸波形を示す。
【図11】図11は、ひとつのレーザーモニターを用い
た場合の呼吸変位の測定法の概略を示すものである。
【図12】図12は、本発明の装置を一例を示す。例示
された装置は5個のレーザーセンサー1、2、3、4、
及び5、並びにモニター6からなっている。
【図13】図13は、図12に示す本発明の装置を用い
て、モニターする身体の部位を例示するものである。図
中の破線は横隔膜を示す。
【図14】図14は、5個のレーザーセンサーを用いた
本発明のモニター装置による呼吸変位の測定法の概略を
示すものである。
【図15】図15は、5個のレーザーセンサーが板状の
物質で相互に結合されている例を示すものである。
【図16】図16は、本発明の装置による正常肺におけ
る、胸郭部(灰色線)と腹壁(黒線)とからの波形情報
を比較した例を示す。
【図17】図17は、本発明の装置による病的な肺にお
ける、胸郭部(灰色線)と腹壁(黒線)とからの波形情
報を比較した例を示す。
【図18】図18は、本発明の装置による病的な肺にお
ける、胸郭部(破線)と腹壁(黒線)とからの波形情報
を比較した例を示す。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザーによりセンサーと検体との距離
    を測定し得る2個又はそれ以上のレーザーセンサーを備
    え、当該センサーにより検体の異なる2箇所以上の動き
    を持続的に計測することができる呼吸運動のモニター装
    置。
  2. 【請求項2】 5個のレーザーセンサーを有する請求項
    1に記載のモニター装置。
  3. 【請求項3】 複数のレーザーセンサーが相互に結合さ
    れ、かつ各レーザーセンサーは各々独立して移動可能で
    ある請求項1又は2に記載のモニター装置。
  4. 【請求項4】 検体の計測位置が、腹部及び胸郭部であ
    る請求項1から3のいずれかに記載のモニター装置。
  5. 【請求項5】 検体の計測位置が、腹部の1箇所及び胸
    郭部の4箇所である請求項4に記載のモニター装置。
  6. 【請求項6】 検体の異なる2箇所以上から得られた計
    測データを相互に照合及び/又は比較することができる
    装置を有する請求項1〜5のいずれかに記載のモニター
    装置。
  7. 【請求項7】 検体の異なる2箇所以上から得られた計
    測データを保存することができるデータ保存装置を有す
    る請求項1〜6のいずれかに記載のモニター装置。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載の装置を
    用いて検体の呼吸運動を測定する方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜7のいずれかに記載の装置に
    より、検体の異なる2箇所以上から得られた計測データ
    を相互に照合及び/又は比較して、呼吸運動の異常を判
    定する装置。
  10. 【請求項10】 請求項1〜7のいずれかに記載の装置
    により、検体の異なる2箇所以上から得られた計測デー
    タを相互に又は正常値と照合及び/又は比較して、呼吸
    運動の異常を判定するための判定基準を記憶させた記録
    媒体。
  11. 【請求項11】 請求項1〜7のいずれかに記載の装
    置、及び、当該装置による検体の異なる2箇所以上から
    得られた計測データを相互に照合及び/又は比較して呼
    吸運動の異常を判定する装置からなる呼吸器官の異常を
    判定する装置。
  12. 【請求項12】 レーザーによりセンサーと検体との距
    離を測定し得る2個又はそれ以上のレーザーセンサー、
    得られたデータを処理する装置、データ判定装置、及
    び、データ表示装置からなる呼吸運動の異常又は呼吸器
    官の異常を判定するためのシステム。
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