JP2000210079A - 核酸運搬体及び遺伝子治療用薬物 - Google Patents

核酸運搬体及び遺伝子治療用薬物

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JP2000210079A
JP2000210079A JP11294212A JP29421299A JP2000210079A JP 2000210079 A JP2000210079 A JP 2000210079A JP 11294212 A JP11294212 A JP 11294212A JP 29421299 A JP29421299 A JP 29421299A JP 2000210079 A JP2000210079 A JP 2000210079A
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nucleic acid
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Takeshi Goto
武 後藤
Keiji Yonemura
圭史 米村
Tetsuji Kuwabara
哲治 桑原
Masanao Oya
正尚 大屋
Katsuhiko Akiyama
勝彦 秋山
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Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新規核酸運搬体及び遺伝子治療用薬物を提供
する。 【解決手段】 本発明の核酸運搬体は、適当な残基数の
ジアミノ酪酸および/またはその薬学的に許容できる塩
からなるポリペプチドを含むことを特徴とする。また、
さらに、本発明の核酸運搬体は、前記ポリペプチドとポ
リエチレングリコールとのブロックコポリマーを含むこ
とを特徴とする。本発明の核酸運搬体は、種々の核酸等
を成分とする薬物と安全かつ免疫原性の極めて低い複合
体(本発明の遺伝子治療用薬物)を形成し、種々の手段
により前記薬物を細胞に効率的、安全に、導入可能と
し、該細胞内で前記薬物による高い遺伝子発現を可能と
するものである。また、種々の大きさの遺伝子、種々の
種類の遺伝子(アンチセンス、TFO(Triplex Forming O
ligonucleotide)等のオリゴヌクレオチドを含む)をも
発現させることが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞に薬物遺伝子
を導入するための核酸運搬体及び該核酸運搬体と薬物遺
伝子とからなる遺伝子治療用薬物に関する。より詳しく
は、本発明は、核酸運搬体と、該核酸運搬体と結合する
核酸および/またはヌクレオチド誘導体からなる薬物遺
伝子を、細胞内に効率良く安全に導入でき、さらに期待
される効果を有し、しかも長期間その効果を発現するこ
とが可能である遺伝子治療用薬物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】遺伝子治療とは、薬剤として作用する外
来遺伝子(以下、「薬物遺伝子」という)を体内に導入
し発現させることで疾患の治療を行おうとする全く新し
い治療方法である。遺伝子治療によって治療効果が期待
できる疾患は先天性、後天性を問わず遺伝子の異常が原
因で発症する疾患すべてが含まれるが、特に、致死的で
あり、かつ治療法が確立されていない癌やAIDSに対して
は非常に有用性の高い治療方法であると考えられてい
る。遺伝子治療は、異常(原因)遺伝子をそのままにし
て、新しい(正常)遺伝子を付け加える付加遺伝子療法
(Augmentation Gene Therapy)と、異常遺伝子を正常
遺伝子で置き換える置換遺伝子療法(Replacement Ther
apy)に大別される。
【0003】遺伝子治療の臨床応用としては、1989年米
国において初めて遺伝子治療の臨床試験が行われて以
来、すでにイタリア、オランダ、フランス、イギリス、
中国においても臨床試験が開始されている。しかしなが
ら、遺伝子治療の臨床応用において、薬物遺伝子を効率
良く安全に標的細胞へ導入するための最適な遺伝子の形
態や方法の開発が大きな技術的課題の1つとなってい
る。1980年代初期には、マイクロインジェクション等、
物理的手法の応用が試みられたが、疾患治療のために必
要な薬物遺伝子を安定かつ効率良く導入することができ
ず、臨床応用には至らなかった。その後、外来遺伝子を
効率良く細胞に導入するための担体となる組み換えウイ
ルス(ウイルスベクター)が開発され、初めて遺伝子治
療の臨床応用が可能となった。現在最も注目されている
ウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(Molony M
urine Leukemia Virus:以下、MoMLV)由来のレトロウ
イルスベクターであり、本ウイルスの生活環の利点を利
用したものである。レトロウイルスは宿主に感染後、自
己の遺伝情報をゲノムDNAに組み込ませるという性質を
持つ(Miller D.G. et al.,Mol.Cell.Biol.,10,4239,19
90)ことから、薬物遺伝子を持続的に発現させるために
は都合が良い。また、種々の細胞種に感染可能であるこ
とから、これら多くの種類の細胞がMoMLVベクターを用
いた治療の対象となりうる。一方、この性質はウイルス
ベクターの生体への投与を不可能にしている。宿主範囲
が広いということは、言い換えれば、生体に投与した際
に標的細胞への集積性が乏しいということであり、治療
効果や副作用の点から静脈内投与法などの全身性の投与
法は行なうことができない。従って、現在の治療法は標
的細胞を生体から一度分離し、試験管内で遺伝子導入を
行なった後、再び生体に戻す治療法(US5399346)が行
われている(ex vivo遺伝子導入法)。この方法は標的
細胞に対して確実に薬物遺伝子を導入でき、治療効果も
期待できるが、ウイルスベクターを取り扱うための特殊
な設備や、細胞を大量に培養する設備を必要とすること
からこのような治療を実施できる施設は限定されてしま
う。以上のような理由から、in vivoでも遺伝子導入が
可能なベクターの開発が望まれている。また、ウイルス
ベクターを安定的に生産させるためには、ウイルスベク
ター産生細胞による生産が効率的ではあるが、現在開発
されているウイルスベクター産生細胞(Miller A.D. an
d Buttlmore C., Mol.Cell.Biol.,6,2895,1986)で
は、治療に必要な量のウイルスベクターを生産するため
には大量の細胞を培養する必要があり、一般的な薬物の
生産コストに比べて非常に高価になってしまうという欠
点もある。さらに、ウイルスベクターを使用する場合に
おいては、免疫原性が高い為に繰り返し投与ができない
(特にアデノウイルスベクター)ことや、薬物遺伝子の
サイズに制限があるといった欠点もある。
【0004】一方、このようなウイルスベクターにかわ
る遺伝子導入のための担体として、合成ポリアミノ酸を
利用し、この合成ポリアミノ酸に送達すべき薬物を結合
させ、目的の細胞もしくは細胞内へ送達しようとする試
みも同時に行われている。WO79/005155及びUS5162505に
は、ポリアミノ酸と送達すべき薬剤(ヌクレオチド類縁
体、酵素等)を共有結合させた複合体が開示されてい
る。しかし、これらはいずれもポリアミノ酸が薬剤を保
持する手段が共有結合であり、細胞内に取り込まれた際
に、担体と薬物遺伝子の遊離(分離)が必要である場合
には好ましくない。また、Wuら(G.Y.Wu and C.H.Wu,A
dvanced Drug Delivery Reviews,12,159,1993)は、
ポリアミノ酸特にポリリジンを遺伝子の担体としてポリ
アミノ酸/遺伝子複合体を調製し、これを細胞に作用さ
せることで遺伝子を導入して発現させることに成功して
いる。しかしながら、ポリアミノ酸特にポリリジンを担
体とした複合体は、濃度の増加と共に沈殿を生じやす
く、実際の疾患の治療に対しては使用が困難である。特
に、静脈内へ沈殿を生じるような粒子を含む薬液を投与
することは、血管の塞栓や血栓等を引き起こす原因とな
り、また、局所的に投与される場合でも、注射針の詰ま
りの問題や、標的細胞に対して治療をするために必要な
量の遺伝子を導入できない等の問題がある。
【0005】そこで、沈澱を生じることなく核酸(薬物
遺伝子)と複合体を形成することができる核酸運搬体
(担体)としてWO95/09009においてポリリジンとセリ
ンランダムコポリマーについて示されている。しかし実
際の生体への投与、安全性が明確に開示されていない。
【0006】S.Ferrariら(Gene Therapy,4,1100,199
7)は、ポリエチレンイミンが効率的に遺伝子を導入す
ることを報告している。しかし、ポリエチレンイミンは
本来、生体に存在しない物質であるため、生体への投与
は困難である。
【0007】また、特開平9−173067号は、1か
ら20個のカチオン性アミノ酸に脂肪酸を付加したリポ
ペプチドを遺伝子導入に使用しており、この脂肪酸に付
加するアミノ酸としては、リジン、オルニチン、ジアミ
ノ酪酸、ジアミノプロピオン酸の中で、ジアミノ酪酸が
最も効果的と報告している。しかしながら、該公報では
ジアミノ酪酸にC10-14の脂肪族アシル基を付加した担
体とジオレオイルホスファチジルエタノールアミンのリ
ポソームを同時に培養細胞に投与したことのみを開示し
ており、実用性に乏しく、また、ジアミノ酪酸を含む担
体とリポソームを同時に用いる点で操作が煩雑で、コス
ト高となる等の問題が生ずる。従って、現在、生体内
に、安全に、効率的に導入でき、しかも核酸(薬物遺伝
子)の効果を十分に発現できる核酸運搬体、およびそれ
を用いた遺伝子治療用薬物の研究開発が強く望まれてい
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、細胞に、核
酸(薬物遺伝子)を効率良く、安全に導入するための核
酸運搬体を提供することを目的とする。また、本発明
は、細胞に、核酸(薬物遺伝子)を効率良く、安全に導
入する遺伝子治療用薬物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題解
決のため鋭意研究に努めた結果、遺伝子若しくは核酸を
運搬するための核酸運搬体として、ジアミノ酪酸および
/またはその薬学的に許容できる塩からなる担体を用い
れば、薬物遺伝子の核酸および/またはヌクレオチド誘
導体を細胞内に効率良く、安全に導入でき、かつ導入し
た核酸等の機能を長期間にわたり発現させることを見い
だし本願発明を完成した。ここで「安全に」とは、不溶
性の沈殿を生じないこと、および低抗原性であることも
含む。
【0010】より詳細には、本発明は、塩基性アミノ酸
および/またはその薬学的に許容できる塩からなるポリ
ペプチドを含む核酸運搬体にかかるものである。
【0011】また、本発明は、ジアミノ酪酸および/ま
たはその薬学的に許容できる塩からなるポリペプチドを
含む核酸運搬体にかかるものである。
【0012】さらに、本発明は、ジアミノ酪酸および/
またはその薬学的に許容できる塩からなるポリペプチド
と、ポリエチレングリコールとのブロックコポリマーを
含む核酸運搬体にかかるものである。
【0013】さらに、本発明は、前記ポリペプチドが、
残基数20以上のジアミノ酪酸および/またはその薬学
的に許容できる塩からなることを特徴とする前記記載の
核酸運搬体にかかるものである。また、前記残基数が2
80以下である核酸運搬体にかかるものである。
【0014】また、本発明は、前記のいずれかに記載さ
れた本発明の核酸運搬体と、薬物遺伝子とを含む遺伝子
治療用薬物にかかるものである。さらに、全身投与した
場合に、肝臓に特異的に発現させ得る遺伝子治療用薬物
にかかるものである。
【0015】さらに、全身投与した場合に、良好な持続
性を保持する遺伝子治療用薬物にかかるものであり、特
に前記持続性が少なくとも50日以上、約210日まで
継続することを特徴とする遺伝子治療用薬物にかかるも
のである。
【0016】また、前記薬物遺伝子が種々の核酸(天然
物由来のもの、化学合成されたものをも含む)、または
種々のヌクレオチド誘導体(それらの化学的に修飾され
た誘導体も含む)であることを特徴とする遺伝子治療用
薬物にかかるものである。さらには、前記ヌクレオチド
誘導体が、アンチセンス若しくはTFO(Triplex Forming
Oligonucleotide)であることを特徴とする遺伝子治療
用薬物にかかるものである。
【0017】また前記記載の遺伝子治療用薬物であっ
て、さらに低免疫原性であることを特徴とする遺伝子治
療用薬物にかかるものである。
【0018】本発明の遺伝子治療用薬物は、さらに、必
要ならば他の成分を追加した組成物も含むものである。
【0019】さらに、本発明の遺伝子治療用薬物は、効
果的な組織特異的な取り込みを目的とし、該組織を特異
的に認識可能とする種々のリガンドを核酸運搬体に結合
させたものも含むものである。
【0020】以下、本発明の構成および好ましい実施の
形態について詳細に説明する。
【0021】
【発明の実施の形態】(核酸運搬体の構造)本発明の核
酸運搬体の有する構造は、ジアミノ酪酸からなるポリペ
プチドであり、式(1)で表される(ここで、nは自然数を
示す)構造を含むものである。
【0022】
【化1】 また、本発明の核酸運搬体の有する他の構造は、ジアミ
ノ酪酸の薬学的に許容できる塩からなるポリペプチドで
あり、式(2)で表される(ここで、nは自然数を示す)構
造を含むものである。
【0023】
【化2】 さらに、本発明の核酸運搬体は、前記の2つの構造を任
意の割合で含む構造であってもよい。すなわち、任意の
割合で、ジアミノ酪酸、若しくはその塩の形で存在する
ものも含まれる。
【0024】さらに、前記ジアミノ酪酸は光学異性体で
あるD体およびL体が存在可能であるが、本発明にかか
る核酸運搬体は、D体若しくはL体、またはそれらの任
意に混ざったポリペプチドをも含むものである。すなわ
ち、ポリ-L-ジアミノ酪酸、ポリ-D-ジアミノ酪酸、お
よびポリ-DL-ジアミノ酪酸のいずれかを含むポリペプ
チドであればよい。
【0025】また、本発明にかかる核酸運搬体の残基と
は、該ポリペプチドを形成するモノマーであるジアミノ
酪酸(またはその塩)基を意味し、残基数とはそれらの
分子の数を意味するものとする(前記式のnで表され
る)。本発明にかかる核酸運搬体の好ましい残基数は、
少なくとも10残基以上である。さらに好ましくは、少
なくとも20残基以上であり、最も好ましくは25残基
以上である。また、本発明にかかる核酸運搬体の好まし
い残基数は、280残基以下が好ましい。また、より好
ましくは250残基以下である。残基数があまり多い場
合は、合成が困難となり、また取り扱いが不便となる。
またあまり残基数が少ないと核酸運搬体としては性能が
不十分になる。また、好ましい残基数は、使用する薬物
遺伝子により、また同時に使用され得る成分の性質等か
ら、当業者であれば容易に、最適に選択することができ
る。
【0026】また、ジアミノ酪酸塩としては、薬学的に
許容できる塩であれば特に限定はないが、好ましくは、
塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸塩、酢酸、プロピ
オン酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸、酒石
酸、マロン酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機酸塩が挙げ
られ、この中でも特に酢酸塩が好ましい。
【0027】なお、核酸運搬体のポリペプチドをポリジ
アミノ酪酸酢酸塩とすれば、ジアミノ酪酸酢酸塩は分子
量160であるため、上記の残基数を分子量で表わすこと
も可能である。
【0028】本発明の核酸運搬体の他の1つには、上で
説明したジアミノ酪酸からなるポリペプチドに、さら
に、ポリエチレングリコールを結合させたブロックコポ
リマー構造を有するものが含まれ、式(3)で表される
(ここで、n、mはそれぞれ自然数を示す)。
【0029】
【化3】 さらに、前記ポリペプチドがカルボン酸基を1つ有する
ことから、前記ブロックコポリマー構造を有するものに
は以下のコポリマーも可能である(ここで、n、n'、mは
それぞれ自然数を示す)。
【0030】
【化4】 ここでエチレングリコールの分子量(または数m)につ
いては特に制限はないが、通常は200から25,000程度で
あることが好ましい。
【0031】(核酸運搬体の合成方法)上で説明した構
造を有することを特徴とする本発明の核酸運搬体の合成
方法については特に制限はなく、通常公知の種々のポリ
ペプチド合成方法(新実験化学講座19高分子化学I 1980
年発行、丸善株式会社)を含む有機化学反応が好ましく
使用できる。より具体的には、本発明においては、モノ
マー成分を適当な反応により重合して核酸運搬体を得る
ことが好ましい。この場合、使用するモノマーとして
は、ジアミノ酪酸、γアミノ基に保護基が導入されたジ
アミノ酪酸、またはペプチド基形成のために活性化され
たアミノ基および/またはカルボン酸基を有するジアミ
ノ酪酸が好ましく使用できる。特に、本発明において
は、γアミノ基を保護し、かつペプチド結合形成を容易
にするためにジアミノ酪酸を酸無水物化することが好ま
しい(新実験化学講座19 高分子化学I 1980年発行、丸
善株式会社)。
【0032】また、かかるモノマーを重合するには、種
々の種類、適当な量の開始剤を使用することが可能であ
る。具体的には、種々のアミン化合物、アルコール化合
物が使用可能である。前記アミン化合物にはアルキルア
ミン類が挙げられ、特にブチルアミンが好ましい。ま
た、アルコール類としてポリエチレングリコール類を用
いると、ポリエチレングリコール基が付加した本発明の
核酸運搬体が得られる。
【0033】本発明にかかるポリペプチドの合成に、特
に好ましい合成経路を図1に例示した。すなわち、γア
ミノ基を適当な保護基で保護し、かつアミノ酸部分をホ
スゲンを用いて酸無水物とし、縮重合のモノマー(図1
の(10))として使用することが好ましい。また、このモ
ノマーを用いることで、縮重合反応は適当な開始剤を用
いることが可能となり、好ましい数のモノマー数を導入
することが可能となる。開始剤には特に制限はないが、
種々のアミン化合物が好ましく、特にブチルアミンの使
用が好ましい。また、適当なエチレングリコール類を開
始剤に使用することにより同様に、好ましい数のモノマ
ーを有するポリペプチドであって、かつエチレングリコ
ール基を有するブロックコポリマーを得ることが可能と
なる。具体的には、Helv.Chim.Acta,43,270(1960)又は
「新実験化学講座19 高分子化学I1980年発行、丸善株式
会社」に記載された方法に従い、若しくは準じて行うこ
とができる。
【0034】(核酸運搬体の検出)本発明の核酸運搬体
の構造は、前記説明したような特徴を有するものであ
る。従って、かかる構造上の特徴に基づいて本発明にか
かる核酸運搬体を検出することが可能となる。また、本
発明の核酸運搬体自体、若しくはそれを用いた遺伝子治
療用薬物が、種々の使用形態で使用されている場合にお
いても、適当な前処理を施すことにより、同様に本発明
にかかる核酸運搬体を検出することが可能となる。当業
者が、必要な前処理を選択することは容易である。
【0035】検出方法についても特に制限はなく、種々
の通常公知のポリペプチド分析方法(J. Controlled R
elease 54,39-48、1998)を用いることが可能である。
具体的には、ペプチドのアミノ酸分析方法によるジアミ
ノ酪酸の定性および定量分析、種々の液体クロマトグラ
フを用いた分子量測定による残基数の決定、ポリエチレ
ングリコール基の存在を検出する種々のスペクトル分析
(赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴吸収スペクト
ル)、質量分析、または化学的な定性分析方法が使用可
能である。
【0036】(遺伝子治療用薬物、薬物遺伝子)本発明
の遺伝子治療用薬物は、前記で説明した本発明の核酸運
搬体と、薬物遺伝子とを少なくとも含むものである。こ
こで薬物遺伝子とは、以下で説明する種々の核酸および
/またはヌクレオチド誘導体を意味する。
【0037】核酸運搬体と薬物遺伝子(以下単に核酸と
して説明する)は、様々な比で複合体を形成し、遺伝子
治療用薬物として調製できるが、核酸/核酸運搬体(重
量(w)/重量(w))が、2/1から1/50の範囲であれ
ば有効な効果を得ることができ、さらに好ましくは、核
酸/核酸運搬体(w/w)が、1/1から1/30の範囲で混合され
ることによりさらに有効な効果を得ることができる。核
酸/核酸運搬体(w/w)の比が、1/50以上で有れば、核酸
との複合体に関与しない遊離した核酸運搬体の量が増え
好ましくなく、2/1以下では、導入されるべき細胞の細
胞表面との親和性が低下することによる核酸導入効率の
低下が起こるため好ましくない。
【0038】本発明の核酸運搬体は正の電荷を持ち得る
ことから、主に負の電荷を有する薬物遺伝子(例えば核
酸)を静電的結合により保持することが可能である。従
って、目的の細胞もしくは細胞内に運ばれた後に、該薬
物遺伝子を効果的に遊離し、薬物遺伝子を発現させるこ
とが可能となる。このような作用は、核酸/核酸運搬体
のチャージ比を適宜選択することで制御することが可能
となる。本発明においては、例えば1/1から1/40の範囲
とすることによりより高い効果が得られる。チャージ比
が1/1以下では、細胞表面との親和性が低下することに
よる核酸導入効率の低下が起こり、1/40以上では核酸と
の複合体に関与しない遊離した核酸運搬体の量が増え好
ましくない。
【0039】本発明の遺伝子治療用薬物によって細胞内
に導入され得る薬物遺伝子の核酸または/およびヌクレ
オチド誘導体の種類、分子量、形状、コードされる遺伝
子の配列等には特に制限はない。具体的には核酸の分子
量は、20塩基程度のオリゴヌクレオチドから数十キロ
塩基のコスミド遺伝子まで特に制限はない。核酸の形状
は、1重鎖遺伝子、2重鎖遺伝子、3重鎖形成遺伝子、
DNA、RNA、DNA/RNAキメラ型遺伝子、ホス
ホロチオエート型遺伝子、直鎖状遺伝子、環状遺伝子等
制限なく用いることができる。コードされる遺伝子の配
列は薬物遺伝子のほか、薬物遺伝子を転写するためのプ
ロモーターやエンハンサー、ポリAシグナル、遺伝子が
導入された細胞の標識、および/または選別のためのマ
ーカー遺伝子、細胞のゲノムDNA配列内に効率良く遺
伝子を挿入するためのウイルス由来の遺伝子配列、薬物
として作用する物質を細胞外に分泌および/または細胞
内の局所に滞留させるためのシグナル配列等、どのよう
な配列でも用いることが可能である。
【0040】薬物遺伝子は疾患に対応する遺伝子、即
ち、疾患に対して拮抗的に作用する遺伝子や疾患におけ
る欠如を補足する遺伝子が用いられる。例えば、炎症性
疾患に対しては、SOD、抗炎症性のサイトカイン類、
細胞接着因子に拮抗的に作用するペプチドをコードする
遺伝子、酵素欠損症に対しては正常な酵素をコードする
遺伝子、受容体欠損症に対しては正常な受容体をコード
する遺伝子、ウイルス感染症に対してはウイルス感染細
胞を殺傷するためのチミジンキナーゼ、ジフテリアトキ
シン等の毒素をコードする遺伝子やウイルスの複製等を
阻害するアンチセンス、トリプルヘリックス、リボザイ
ム、デコイ、トランスドミナントミュータント等をコー
ドする遺伝子、癌に対しては癌細胞を殺傷するためのチ
ミジンキナーゼ、ジフテリアトキシン等の毒素をコード
する遺伝子や癌遺伝子を不活性化するためのアンチセン
ス、リボザイム、トリプルヘリックス等をコードする遺
伝子や、癌細胞を正常化するためのp53等の癌抑制遺
伝子、抗癌剤に対する多剤耐性に関与する遺伝子を不活
性化するためのアンチセンス、トリプルヘリックス、リ
ボザイム等をコードする遺伝子、家族性高コレステロー
ル血症に対してはLDLレセプターをコードする遺伝子
等が挙げられる。
【0041】さらに、薬物遺伝子に用いられる発現カセ
ットは、標的細胞内で遺伝子を発現させることができる
ものであれば、特に制限されることなく何でも用いるこ
とができる。当業者はそのような発現カセットを容易に
選択することができる。好ましくは、動物由来の細胞内
で遺伝子発現が可能な発現カセットであり、より好まし
くは、哺乳類由来の細胞内で遺伝子発現が可能な発現カ
セットであり、特に好ましくは、ヒト由来の細胞内で遺
伝子発現が可能な発現カセットである。発現カセットに
用いられる遺伝子プロモーターは、例えばアデノウイル
ス、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、シ
ミアンウイルス40、ラウス肉腫ウイルス、単純ヘルペ
スウイルス、マウス白血病ウイルス、シンビスウイル
ス、センダイウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウ
イルス、C型肝炎ウイルス、バピローマウイルス、ヒト
T細胞白血病ウイルス、インフルエンザウイルス、日本
脳炎ウイルス、JCウイルス、バルボウイルスB19、
ポリオウイルス等のウイルス由来のプロモーター、アル
ブミンや熱ショック蛋白等の哺乳類由来のプロモータ
ー、CAGプロモーター等のキメラ型プロモーター等を
含む。
【0042】薬物遺伝子として作用する核酸を細胞外に
分泌および/または細胞内の局所に滞留させるためのシ
グナル配列としては、細胞外への分泌を補助するインタ
ーロイキン2由来のシグナルペプチド(駒田富佐夫、日
本薬学会第115年会講演要旨集4,12,1995)や核局在化
を促進するアデノウイルスE1a由来のペプチド、ポリオ
ーマウイルスラージT抗原由来のペプチド、SV40ラージ
T抗原由来のペプチド、ヌクレオプラスミン由来のペプ
チド、HTLV1p24転写後調節蛋白質由来のペプチド(Kald
eron,D., et al.,Cell,39,499,1984)等を用いることが
できる。
【0043】本発明の遺伝子治療用薬物は、たとえば上
記に示すような治療用にデザインされた薬物遺伝子と核
酸運搬体を混合することで調製される。より具体的に言
えば、核酸運搬体と治療用にデザインされた薬物遺伝子
を各々、水、生理食塩水、等張化した緩衝液等の適当な
溶媒に溶解した後、混和し、10分から30分放置すること
で調製することができる。このとき、用いられる薬物遺
伝子である核酸と核酸運搬体の比は、限定されるわけで
はないが、核酸1μgに対して約0.5〜50μg、好ましく
は約1〜30μgの核酸運搬体を使用する。
【0044】(遺伝子治療用薬物の使用方法)本発明の
遺伝子治療用薬物は、まず患者から標的細胞を体外に取
り出し、目的とする遺伝子を導入した後に再びその細胞
を患者の体内に戻すという自家移植による遺伝子治療
(ex vivo遺伝子治療)に使用可能である。また、遺伝
子を直接患者に投与する遺伝子治療(in vivo遺伝子治
療)にも使用可能である。
【0045】また、遺伝子治療の方法として、異常(原
因)遺伝子をそのままにして、新しい(正常)遺伝子を
付け加える方法(Augmentation Gene Therapy)と、異
常遺伝子を正常遺伝子で置き換える方法(Replacement
Gene Therapy)に大別できるが、本発明にかかる遺伝子
治療用薬物はどちらにも使用可能である。
【0046】本発明の遺伝子治療用薬物の生体への投与
の方法については特に制限はない。例えば非経口的投
与、例えば注射投与することにより好ましく実施でき
る。
【0047】本発明の遺伝子治療用薬物の用量は、その
使用方法、使用目的等により異なり、当業者は容易に適
宜選択、最適化することが可能である。例えば、注射投
与して用いる場合には、1日量約0.1μg/kg〜1000mg/k
gを投与するのが好ましく、より好ましくは、1日量約1
μg/kg〜100mg/kgである。
【0048】本発明の核酸運搬体は、核酸との複合体形
成の際、沈殿生成を生じない。従って、血管に直接遺伝
子治療用薬物を投与しても血栓を起こす危険性はなく、
効率的に精度良く薬物遺伝子を投与することが可能とな
る。
【0049】本発明の核酸運搬体、および遺伝子治療用
薬物は、通常認められる外来物質を生体内に投与した場
合に生じる抗原性を生じない。従って、生体での治療効
果を維持するために一定期間をおいて繰り返し投与する
ことが可能となる。
【0050】本発明の遺伝子治療用薬物は、生体内の組
織、例えば、腎臓、脾臓、肺、気管支、心臓、肝臓、
脳、神経、筋肉、骨髄、小腸、結腸、大腸、皮膚、血管
内皮等に対して優れた効果を有する。特に、全身投与、
例えば静脈投与した場合には、肝臓に特異的に取り込ま
れる。従って、特に肝臓に安全に、かつ効果的に薬物遺
伝子を発現させることが可能となる。
【0051】さらに、効果的な組織特異的な取り込みを
目的とする場合は、組織特異的なリガンドを核酸運搬体
に結合させることも可能である。たとえば肝臓を標的と
する場合は、糖類(ガラクトース、ラクトース、アシア
ログリコプロテイン、オリゴガラクトース、ヒアルロン
酸等)を核酸運搬体に結合させ、肝臓に対する親和性を
上げ、より効果的にすることが可能である。また、細胞
毒性の軽減、血中滞留、溶媒へのさらなる溶解性の向上
を目的として該核酸運搬体中のジアミノ酪酸とポリエチ
レングリコール(PEG)とによりブロックコポリマーを
形成し、修飾を施すことも可能である(合成方法はすで
に説明した)。その場合、PEGの分子量は200以上のもの
を使用することが可能である。より好ましくは、1000以
上のものである。また、PEGの分子量は25,000以下であ
ることが好ましいが、より好ましくは10,000以下であ
り、最も好ましくは5,000以下である。ポリエチレング
リコールの分子量が25,000以上では、細胞表面と親和性
が低下することによる核酸導入効率の低下が起こり、20
0以下では、目的とするポリエチレングリコールによる
効果が小さく好ましくない。
【0052】本発明の遺伝子治療用薬物は、遺伝子治療
用薬物を全身投与した後、生体内の細胞内で遺伝子薬物
の効果を長期間発現させることができるものである。具
体的には50日以上にわたり発現させることも可能であ
る。この持続時間はまた、本発明にかかる核酸運搬体を
適宜選択することにより調整可能となる。従って、投与
が容易となるばかりでなく、患者の投与時の負担を減少
させるという点で非常に有益である。
【0053】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的
に説明するが、本発明はこれらの例によって制限される
ものではない。
【0054】
【実施例】以下の実施例において用いた核酸運搬体の合
成は、K.Vogelerらの方法(Helv.Chim.Acta,43,270(196
0))に準じて行った。その合成経路を図1に示した。
【0055】本明細書においては、ポリ-ジアミノ酪酸
(Poly(2,4-diaminobutyric acid)をpDBAと略す。ま
た、pDBAには、可能な全ての光学異性体に基づくものを
も含むものとする。さらに、ポリエチレングリコールと
のブロックコポリマーを同様にpDBApeg(又はpDBA-PE
G)と略す。
【0056】(実施例1)核酸運搬体の合成 (I)モノマーとしての、Nγ-カルボベンゾキシ-DL-ジ
アミノ酪酸NCA(4N-Carbobenzoxy-DL-2,4-diaminobu
tyric acid N-carboxy-anhydride(10)の合成。 (I-1)Nγカルボベンゾキシ-DL-ジアミノ酪酸 (4N-Carbobenzoxy-DL-2,4-Diaminobutyric acid)(8)の
合成:DL-2,4-ジアミノ酪酸2塩酸塩(DL-2,4-Diamino-
n-butyric acidDihydrochloride)(1)15g(シグマ社
製)を水75mlに溶解し、これに塩基性炭酸銅(2)11.7g
を加えて放置後、煮沸還流した後、ろ過した。ろ液に炭
酸水素ナトリウム16.6g,カルボベンゾキシクロリド
(4)(和光純薬社製)17.8mlを加えて攪拌し、生成物を
沈殿として得た。得られた生成物をろ過し、アセトン、
およびジエチルエーテルで洗浄した後乾燥し、15gのN
γカルボベンゾキシ-DL-ジアミノ酪酸銅錯体(4N-Car
bobenzoxy-DL-2,4-Diaminobutyric acid Copper Comple
x;以下Dba(Z)-Cuとする)(5)を得た。
【0057】上記得られた錯体(5)の11gを、35%HCl9.
3ml、水22ml、メタノール11mlの混合液に入れ、硫化水
素(H2S)ガスの存在下で撹拌した。室温に静置後、過剰
の硫化水素を除去した後、ろ過により不溶物を除いた。
ろ液は減圧し水とメタノールを加えて冷却した。さらに
メタノールを加えた後、ジエチルアミン(7)(Diethylami
ne)を加えて溶液のpHを7に調整した。析出した結晶を
ろ過して分離し、ジエチルエーテルを用いて、ろ斗上で
洗浄、および乾燥し、白色の結晶として4gの生成物を
得た。さらに、前記ろ液を濃縮して冷却することにより
析出した結晶をろ過して分離し、ジエチルエーテルを用
いてろう斗上洗浄、および乾燥し、白色結晶として1.5
gの生成物を得た。これらを合わせて合計5.5g(原料
アミノ酸から計算して収率31%)のNγカルボベンゾキ
シ-DL-ジアミノ酪酸(8)を得た。
【0058】(I-2)Nγ-カルボベンゾキシ-DL-ジアミ
ノ酪酸NCA (4N-Carbobenzoxy-DL-2,4-diaminobutyric acid N-car
boxy-anhydride(10)の合成:上記で得られた(8)の5gを
テトラヒドロフラン(THF)200mlに溶解し、そこにトリホ
スゲン(9)(Triphosgene,Bis(tricholoromethyl)carbo
nate、Aldrich社製)4.5gを40mlのTHFに溶解したもの
を加え、さらに40℃で60分攪拌した。減圧で溶媒を除去
した後、得られた粗生成物にヘキサンを加えて溶解した
後、冷却した。さらに減圧で十分ヘキサンを除いた後、
得られた粗生成物に酢酸エチルを加えて溶解し、不溶物
をろ過して除いた。得られたろ液にヘキサンを加えて冷
却することで生成物が白色結晶として沈殿した。析出し
た結晶をろ過して分離し、減圧にて乾燥した。また、前
記ろ液も減圧濃縮した後、同様に処理し生成物を結晶と
して得た。これら得られた結晶をジエチルエーテルから
再結晶することにより、精製された生成物(10)が2.7g
(収率50%)得られた。
【0059】(II) 重合反応。 種々の残基数の核酸運搬体は、前記で得られたNγ-カ
ルボベンゾキシ-DL-ジアミノ酪酸NCA(10)を、種々
の割合の開始剤を用いて縮重合させ、その後アミノ基の
保護基を脱保護することにより得られた。
【0060】ここで、本発明における残基数とは以下の
式(Arieh Yaron等、Biochim.Biophys.Acta,69,397-39
9,1963)で算出したものを意味する(最後に0.9を掛け
る理由は、保護基を除去する反応条件で、約10%分子量
が低下することによる)。さらに、本発明における分子
量は以下の式で表されるものを意味する。
【0061】残基数=重合度(n)=[Nγ-カルボベンゾ
キシ-DL-ジアミノ酪酸NCA(10)の量(モル数)/開
始剤の量(モル数)]×収率(%)/100×0.9 分子量=n(重合度)×残基量(酢酸塩として、DBA酢酸
塩の残基量=160) 以下、表1、表2の合成例3(残基数49)ポリ-DL-ジ
アミノ酪酸(Poly(DL-2,4-diaminobutyric acid)酢酸
塩の合成例を示したが、表1に示す他の条件を用いて同
様に合成例1(残基数12)、2(残基数26)、4(残基
数62),5(残基数170),6(残基数278),7(残基
数348)のpDBAを得た。また、合成例3のポリジアミノ
酪酸酢酸塩にポリエチレングリコール(14)(PEG、分子
量1000)を末端に結合させたポリジアミノ酪酸-PEG
(15)の合成条件も合成例8として表1および表2に示し
た。
【0062】(II-1) ポリ-Nγ-カルボベンゾキシ-D
L-ジアミノ酪酸(Poly(4-N-Carbobenzoxy-DL-2,4-diami
nobutyoric acid)(11)の合成:Nγ-カルボベンゾキシ
-DL-ジアミノ酪酸NCA(10)の1g(3.6mmol)をアセ
トニトリル(acetonitrile)19mlに溶解した。開始剤とし
てブチルアミン(butylamine)4.38mg(0.06mmol)を加え、
30℃で307時間静置した。得られたポリマーをろ過し、
アセトニトリルで洗浄した。ソックスレー抽出器を用い
てジエチルエーテルで抽出した後、減圧で乾燥してポリ
-Nγ-カルボベンゾキシ-DL-ジアミノ酪酸(11)0.77g
(重合率91%)を得た。
【0063】(II-2)ポリ-DL-ジアミノ酪酸(Poly(DL-
2,4-diaminobutyric acid)(13)酢酸塩の合成:ポリN
γ-カルボベンゾキシ-DL-ジアミノ酪酸(11)の0.5gを
トリフルオロ酢酸(trifuluoroacetic acid)2mlに溶解
し、これに25%臭化水素酢酸溶液(12)を加え振り混ぜ
た。静置した後、ジエチルエーテルを加え、上澄エーテ
ル相を傾斜で除去し、さらにジイソプロピルエーテルで
同じ操作を行い上澄エーテル相を傾斜で除去した。得ら
れた沈殿物を減圧で十分乾固した。得られた個体に酢酸
ナトリウムと水を加えて得た混合液を、分子量1,000以
下除去の透析チューブを用いて流水で透析を行った後、
20,000Gで一時間遠心分離を行い沈殿物を除去した。得
られた溶液を凍結乾燥し、ポリ-DL-ジアミノ酪酸(13)
酢酸塩を0.34g(収率91%)得た。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】(実施例2) 各種分子量のpDBAでのHepG
2細胞への遺伝子導入 プラスミド/pDBA複合体の調製:ルシフェラーゼ遺伝子
をコードするプラスミド(約5.25kb。予めルシフェラー
ゼ遺伝子を挿入してあるピッカジーンコントロールベク
ター(東洋インキ社製)、以下プラスミドAと略記す
る)の溶液と、核酸運搬体溶液とをそれぞれ所望濃度の
2倍濃度で調製した。投与約30分前にプラスミド溶液を
撹拌しながら核酸運搬体溶液を徐々に滴下してプラスミ
ド/核酸運搬体複合体溶液を調製した。溶媒はDMEM培地
(Sigma社製)を使用した。具体的には25μg/mlのプラ
スミド溶液を調製し、プラスミド濃度が12.5μg/mlで
あるプラスミド/核酸運搬体複合体溶液を投与用検体と
した。
【0067】プラスミド/pDBA複合体溶液のHepG2細胞
への投与及び測定法:試験前日に12穴のマルチウェルプ
レート(コースター社製)の1ウェルあたり1×105個播
種したHepG2細胞に、10%ウシ胎仔血清(三光純薬製)
存在下でプラスミド/pDBA複合体溶液を投与(プラスミ
ドの終濃度は2.5μg/ml)し、37℃で4時間インキュベ
ートした。新鮮な培養液に交換し、さらに48時間インキ
ュベートした。PBSで2回洗浄後、細胞溶解剤(東洋イ
ンキ製)を加え、凍結融解を1度行った。細胞溶解液を
回収して遠心分離(12,000rpm×10min)し、上清中のル
シフェラーゼ活性をルシフェラーゼアッセイシステム
(東洋インキ製)を使用してルミノメーター(Lumit LB
9501;berthold社製)で測定した。また、遠心上清の蛋
白質濃度はプロテインアッセイキット(Bio-Rad社製)
を使い、マイクロプレートリーダー(Rainbow Thermo;
Tecan製)で測定した。
【0068】pDBAは合成例1、合成例2、合成例3、合
成例4、合成例5、合成例7(いずれも表2)により得
られたものを使用した。なお、プラスミドAとpDBAとの
重量比(プラスミド/pDBA)は、1/5(w/w)の複合体溶液
を調製して試験に用いた。発現したルシフェラーゼの活
性測定結果を図2に示した。残基数が多いほど、すなわ
ち分子量が大きいpDBAほど遺伝子発現が高いことが明ら
かであり、pDBAにおいてジアミノ酪酸の重合度がある程
度以上であることが好ましいことが確認された。
【0069】(実施例3)プラスミドに対するpDBAの重
量比を変えた複合体によるHepG2細胞への遺伝子導入 実施例2と同様の方法を用いて、HepG2細胞への遺伝子
導入を検討した。pDBAは合成例3により得られたもの
と、合成例8により得られたpDBApegを使用した。ま
た、プラスミドとpDBAとの重量比(プラスミド/pDBA)
が、1/1、1/3、1/5、1/7、1/10、1/20(w/w)となるよう
に複合体溶液を調製して試験に用いた。pDBApeg場合に
は、この比が1/1、1/5、1/10(w/w)となるように複合体
溶液を調製して試験に用いた。
【0070】発現したルシフェラーゼの活性測定結果が
図3に示されているが、プラスミドに対するpDBAの量の
増加とともに遺伝子の発現が増加する。
【0071】(実施例4)サイズの大きいプラスミドを
用いてpDBAによるHepG2細胞への遺伝子導入 実施例1,実施例2で用いたプラスミドAと同様にルシ
フェラーゼ遺伝子をコードし、プラスミドAよりもサイ
ズが大きいプラスミド(約11.1kb;EBVベクター(pREP
7;フナコシ社製)のマルチクローニングサイトに一般
的な遺伝子組換え方法(Sambrook等、Molecular Clonin
g, A Laboratory Manual, 2nd ed., ColdSpring Harbor
Laboratory Press, 1989)でルシフェラーゼ遺伝子を挿
入したもの、以下プラスミドBと略記)の遺伝子導入を
確認するために、実施例1と同様の方法を用いて、HepG
2細胞への遺伝子導入を検討した。
【0072】使用した5種類のpDBAは、合成例1、合成
例2、合成例3、合成例4、合成例5(いずれも表2)
により得られたものを使用した。プラスミドBとpDBAと
の重量比(プラスミド/pDBA)が、1/5と1/10(w/w)の複
合体溶液を調製して試験に用いた。
【0073】発現したルシフェラーゼの活性測定結果を
図4に示した。pDBAは(実施例2)で用いたプラスミド
(5.25kb)と同様に、よりサイズの大きなプラスミド
(11.1kb)を用いても、遺伝子を発現させることが示さ
れた。
【0074】この結果は、本発明にかかる核酸運搬体を
用いて治療用遺伝子を導入する場合に、該遺伝子のサイ
ズに制限されないということを意味する。
【0075】(実施例5)pDBA複合体を用いたマウスへ
の遺伝子導入 プラスミド/pDBA複合体の調製:プラスミドAの溶液と
pDBA溶液を各所望濃度の2倍濃度で調製した。投与約3
0分前にプラスミド溶液を撹拌しながらpDBA溶液を徐々
に滴下してプラスミド/pDBA複合体溶液を調製した。溶
媒にはDMEM培地を使用した。具体的には50μg/mlのプ
ラスミド溶液を調製し、プラスミド濃度が25μg/mlで
あるプラスミド/pDBA複合体溶液を投与用検体とした。
【0076】合成例3で得られたpDBAとプラスミドAと
を、プラスミド/pDBAの重量比が1/7(w/w)となるように
複合体溶液を調製し、Balb/Cマウスに尾静脈投与した。
マウス1匹あたりのプラスミドA投与量は12.5μg/0.5m
lであった。投与2日後と21日後での肺、肝臓、脾臓
で見られるルシフェラーゼ活性を測定することによりそ
れぞれの組織への遺伝子導入を測定した。
【0077】得られた結果を図5に示した。図5A)に
示すように、投与2日後には肝臓においてpDBAを核酸運
搬体として使用した群ではプラスミドのみを投与した群
と比較して顕著に高いルシフェラーゼ活性が測定され
た。この結果は、本発明にかかる遺伝子運搬体を用いて
全身に投与した場合、特に肝臓へ遺伝子を導入すること
が可能であることを意味する。さらに、この結果は、本
発明にかかる遺伝子運搬体を最適化することにより、全
身に投与して特定の組織へ集中的に遺伝子を導入するこ
とが可能であることをも意味する。また、図5B)に示
すように、投与後21日目においても肝臓でのルシフェラ
ーゼ活性は維持されている。この結果は、本発明にかか
る核酸運搬体を用いて全身に投与した場合、特定の組織
での該遺伝子の発現を長期間持続させることができるこ
とを意味する。さらに、この結果は、本発明にかかる核
酸運搬体を最適化することにより、全身に投与して、特
定の組織での特定の遺伝子の発現の持続時間を最適化す
ることが可能となることをも意味する。
【0078】(実施例6)プラスミドに対するpDBAの重
量比を変えた複合体を用いたマウスへの遺伝子導入 実施例4と同様の方法で各種重量比で調製したプラスミ
ドAとpDBAの複合体による遺伝子導入をルシフェラーゼ
活性の発現で評価した。
【0079】合成例3で得られたpDBAと、プラスミドA
とを各種重量比(プラスミド/pDBA=1/0、1/1、1/5、1
/10、1/20)となるように複合体溶液を調製し、Balb/C
マウスに尾静脈投与した。
【0080】投与2日後の肝臓で見られるルシフェラー
ゼ活性を測定することによりそれぞれの組織への遺伝子
導入を測定した。
【0081】得られた結果を図6に示した。プラスミド
に対するpDBAの量が増すにつれて遺伝子の発現が高まる
傾向が明らかに確認できた。
【0082】(実施例7)各種分子量のpDBAによるマウ
スへの遺伝子導入 実施例4と同様の方法で調製したプラスミドAとpDBAの
複合体による遺伝子導入をルシフェラーゼ活性の発現で
評価した。
【0083】合成例1、合成例2、合成例3、合成例
4、合成例5(いずれも表2)で得られた5種類のpDBA
とプラスミドAとを、プラスミド/pDBAの重量比が1/5
(w/w)となるように複合体を調製してBalb/Cマウスに尾
静脈投与した。投与2日後の肝臓のルシフェラーゼ活性
を測定した。
【0084】得られた結果を図7に示した。肝臓での遺
伝子発現はpDBAの残基数が多くなるにつれて高まる傾向
が明らかに見られ、(実施例5)での結果と同様に、ジ
アミノ酪酸の重合度がある程度以上であることが好まし
いことが確認できた。
【0085】(実施例8)マウスに尾静脈投与した遺伝
子の発現期間 実施例4と同様の方法で調製したプラスミド/pDBA複合
体溶液をBalb/Cマウス(雄、生後8週間)に尾静脈投
与(0.5ml)し、投与後の肝臓での遺伝子発現をルシフ
ェラーゼ活性を測定することにより評価した。合成例3
で得られたpDBAを使用し、プラスミド/pDBA=1/5(w/w)
となるように複合体溶液を調製し、これを前記投与に使
用した。
【0086】得られた結果を図8に示した。プラスミド
/pDBA複合体を投与した群では、投与後2日目から7ヶ
月まで遺伝子発現が確認できた。すなわち、単回の投与
で7ヶ月以上にわたって、肝臓において遺伝子を発現す
ることが確認できた。また、比較のためにプラスミドの
みの投与と、市販の遺伝子導入試薬であるExGen500(Eu
romedex製)とプラスミドとの複合体の投与を実施し
た。得られた結果を図8に示した。両者とも、プラスミ
ド/pDBA複合体投与群に比べて遺伝子の発現は、低く、
プラスミドのみの投与では、1ヶ月以内、ExGen500とプ
ラスミドとの複合体の投与群でも3ヶ月以内に遺伝子発
現が検出できなくなった。
【0087】この結果は、本発明の核酸運搬体を最適化
することにより、特定の組織で、特定の遺伝子の発現の
持続時間を最適化することが可能となることをも意味す
る。
【0088】(実施例9)単回投与した高用量pDBAによ
るマウスの生存率 高用量のpDBA溶液をマウスへ直接投与した場合のマウス
の生存率を以下のように調べた。
【0089】pDBAを生理食塩水に溶解して各種濃度のpD
BA溶液を調製し、Balb/Cマウスへ尾静脈投与して症状を
観察した。pDBAは、合成例1〜7で得られたものを用い
た。結果を表3に示した。
【0090】
【表3】
【0091】また、比較のために、単回投与した高用量
ポリエチレンイミン(PEI)によるマウスの生存率を上記
と同様の方法により調べた。この場合、ExGen500の主成
分であり、カチオニックなポリマーであるポリエチレン
イミン(PEI)(Gene Therapy,4,1100,1997)を用いた。分
子量1,800と10,000のPEI(いずれも和光純薬製)を生理
食塩水で希釈して使用した。比較結果を表4に示した。
【0092】
【表4】
【0093】表3および表4より、pDBAの安全性はPE
Iよりも高いことがわかる。PEIを単体で投与した場
合、分子量の大きい(MW10,000)PEIを高用量投与する
と消化器系の臓器への障害を起こしやすく、分子量の小
さい(MW1,800)PEIの方は、肺での出血を起こしやすい
傾向が観察された。
【0094】pDBAの安全性は他のカチオニックなポリア
ミノ酸と同程度と考えられるが、比較例のポリエチレン
イミン(PEI)よりも高い。また、実施例3や実施例6
で示したように、効果面ではアミノ酸の重合度が高い方
が好ましいが、重合度が高くなるほど、高用量の投与で
は肝臓での障害を起こしやすくなると一般には考えら
れ、効果と安全面を考慮すると核酸運搬体としてのpDBA
の残基数には好ましい範囲があり、10から280の間が好
ましい範囲と考えられる。さらに20から280の間が
最も好ましい範囲と考えられる。
【0095】(実施例10)モルモットを用いたpDBAの
抗原性試験 動物の感作:Hartley系雄性モルモットの皮下に1mg/kg
となるように週1回、4週間に渡ってpDBA(合成例3で
得られたもの)を投与し動物を感作した。最終投与の5
日後に動物をエーテル麻酔して心臓より採血し、得られ
た血清を用いて、無処置のモルモットを用いて4時間受
身皮膚アナフィラキシー試験を実施した。また、感作し
たモルモットについては採血3日後に能動的全身性アナ
フィラキシー試験を実施した。陽性対照群としてウシ血
清アルブミン(BSA)を10mg/kgの量で同様に投与して動
物を感作した。
【0096】能動的全身性アナフィラキシーによる抗原
性の確認:最終感作8日後に、各動物に対して被験液
(pDBA、1mg/kg)0.1ml/100gを耳介または前肢内側の静
脈内に投与した。また、陽性対照のBSA投与群について
も同様に処理し、BSA溶液を静脈内に投与(10mg/kg)し
た。静脈内投与後1時間までに発現する症状を下に示し
た基準にしたがって観察した。得られた結果を図9に示
した。pDBAの免疫原性は低いことが確認できた。能動的
全身性アナフィラキシーの判定基準を以下に示した。
【0097】 症状 評価スコア -------------------------------------------------- 変化無し 0 立毛、掻鼻、不安感 1 上記に加えて震え、くしゃみ、運動亢進 2 上記に加えて排尿、排便、呼吸困難 3 上記に加えて痙攣、転倒 4 死亡 5 ==================================================
【0098】4時間受身皮膚アナフィラキシーによる抗
原性の確認:毛刈りした未感作モルモットの背部皮膚に
感作動物から得た原血清ならびに生理食塩液にて10、10
0、1,000、10,000倍希釈した血清0.1mlずつを皮内投与
した。皮内投与4時間後に、0.5% Evans blueを含む
被検液(pDBA、1mg/kg)0.1ml/100gを耳介または前肢内
側の静脈内に投与した。また、陽性対照群のBSA投与群
から得た血清も同様に処理し、0.5% Evans blueを含
むBSA溶液(1mg/kg)を静脈内投与した。静脈内投与の3
0分後に皮膚に現れた色素斑の直径を測定した。得られ
た結果を図10に示した。陽性対照であるBSA群では血
清を100倍から1000倍希釈しても皮膚反応が検出された
のに対して、pDBA群では血清原液を投与しても皮膚反応
は惹起されす、全身性アナフィラキシーの結果と同様で
あった。pDBAの免疫原性は非常に低いことが明らかにな
った。
【0099】(実施例11)pDBAを用いたオリゴヌクレ
オチドの細胞内への導入 FITC標識したオリゴヌクレオチド(20mer;ファルマシ
ア製)を用い、オリゴヌクレオチドと種々のpDBAの複合
体の細胞内導入能を調べた。
【0100】HepG2細胞を12穴シャーレに1x105個/well
で播種し、24時間培養した。FITC標識オリゴヌクレオチ
ドを用い、その核酸運搬体として、合成例3、合成例5
で得られたpDBAを用いた。これら3種のpDBAとFITC標識
オリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチド/pDBA =
1/1,1/5,1/10(w/w)となるように複合体を調製した。
複合体溶液をHepG2細胞に添加し、4時間培養した後、P
BS(-)で2回細胞を洗った。PBS(-)を除去した
後、cell dissociation solution(SIGMA製)を用いて
細胞をシャーレからはがし、細胞懸濁液をフローサイト
メーター(FACSCalibur;ベクトンディッキンソン製)で
測定した。結果を図11(オリゴヌクレオチド/pDBA=
1/5(w/w))に示した(図11において、M1はコントロール
実験結果を示し、M2はFITC標識オリゴヌクレオチドを用
いた実験結果を示す)。また、10,000個の細胞中のFITC
標識オリゴヌクレオチドが導入された細胞の割合を評価
した結果を図12(オリゴヌクレオチド/pDBA=1/1,1
/5,1/10(w/w))に示した。
【0101】図11より、オリゴヌクレオチドのみで
は、ほとんど細胞内へ導入されていないことが確認され
た。図12でFITC標識オリゴヌクレオチドが導入された
細胞の割合を算出したが、オリゴヌクレオチドのみで
は、ほとんど細胞内へ導入されておらず、また、合成例
1(残基数12)で得られたpDBAを核酸運搬体として使
用した群でもオリゴヌクレオチドの取り込みは少なかっ
た。これに対して合成例3(残基数49)と合成例5
(残基数170)で得られたpDBAとの複合体群ではオリ
ゴヌクレオチド/pDBA=1/5(w/w)以上で、測定した10,0
00個の細胞中、約70%〜90%の細胞にFITC標識オリゴヌ
クレオチドの取り込みが観察された。
【0102】この結果は、本発明の核酸運搬体(pDBA)
は、アンチセンス、TFO(Triplex Forming Oligonucleo
tide)等のオリゴヌクレオチドにも好ましく使用可能で
あることが確認された。
【0103】
【発明の効果】以上説明したように本発明の核酸運搬体
は、適当な残基数のジアミノ酪酸および/またはその薬
学的に許容できる塩からなるポリペプチドを含むことを
特徴とする。また、さらに、本発明の核酸運搬体は、前
記ポリペプチドとポリエチレングリコールとがブロック
コポリマーを含むことを特徴とする。
【0104】本発明の核酸運搬体は、種々の核酸を成分
とする薬物と安全かつ免疫原性の極めて低い複合体(本
発明の遺伝子治療用薬物)を形成し、種々の手段により
前記薬物を細胞に効率的、安全に、導入可能とし、該細
胞内で前記薬物による高い遺伝子発現を可能とするもの
である。また、適当な残基数を選択することにより、種
々の大きさの遺伝子、種々の種類の遺伝子(アンチセン
ス、TFO(Triplex Forming Oligonucleotide)等のオリ
ゴヌクレオチドを含む)をも発現させることが可能とな
る。
【0105】また、本発明の遺伝子運搬体を用いて全身
に投与することで特に肝臓へ遺伝子を導入することが可
能となる。
【0106】また、本発明の核酸運搬体を最適化するこ
とにより、全身に投与して特定の組織へ集中的に遺伝子
を導入することが可能となる。
【0107】さらに、本発明の核酸運搬体を用いて全身
に投与し、特定の組織での該遺伝子の発現を長期間持続
させることが可能となる。
【0108】また、本発明の核酸運搬体を用いて、全身
に投与し、特定の組織で、特定の遺伝子の発現の持続時
間を最適化することが可能となる。
【0109】さらに、本発明の核酸運搬体を用いて、特
定の組織での特定の遺伝子の発現の持続時間を制御する
ことが可能となる。
【0110】本発明の核酸運搬体(pDBA)は、アンチセ
ンス、TFO(TriplexForming Oligonucleotide)等のオ
リゴヌクレオチドにも好ましく使用可能であることが確
認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の核酸運搬体の合成経路の1つを示す図
である。
【図2】実施例2で測定した、発現したルシフェラーゼ
の活性測定結果を示す図である。ここで、12、26、49、
62、170、348はそれぞれ、表2の合成例1、2、3、4、
5、7により得られた、MW(分子量)1,900 、4,200、7,8
00、9,900、27,200、55,700のものを示す。
【図3】実施例3で測定した、発現したルシフェラーゼ
の活性測定結果を示す図である。ここでpDBAはPoly(Dia
minobutyric acid)酢酸塩(合成例3により得た)を示
し、pDBApegは、合成例8により得たものを示す。
【図4】実施例4で測定した、発現したルシフェラーゼ
の活性測定結果を示す図である。ここで、non-T.f.は、
non-transfectionを示す。また、12、26、49、62、170
は、それぞれ、合成例1、2、3、4、5により得られた、M
W(分子量)1,900、4,200、7,800、9,900、27,200のも
のを示す。
【図5】実施例5で得られた結果を示した図である。こ
こでA)は2日後の結果を、B)は21日後の結果を示
す。pDBA-49とは、合成例3で得たものを示す。
【図6】実施例6で得られた結果を示す図である。
【図7】実施例7で得られた結果を示した図である。こ
こで、12、26、49、62、170はそれぞれ、合成例1、2、
3、4、5により得られた、MW(分子量)1,900、4,200、
7,800、9,900、27,200のものを示す。
【図8】実施例8で得られた結果を示した図である。こ
こで、pDBAは、合成例3で得たものを示す。
【図9】実施例10で得られた、静脈内投与後1時間ま
でに発現する症状を観察した結果を示す図である。
【図10】実施例10で得られた、静脈内投与の30分後
に皮膚に現れた色素斑の直径を測定した結果を示す図で
ある。
【図11】実施例11で得られた、フローサイトメータ
ーで測定した結果を示す図である。ここで(a)は、コン
トロールとしてのFITC Oligoのみを用いた場合の結果を
示す。また、(b)はFITC OligoとpDBA#49(合成例3で得
られたMW(7,800)のもの)とを用いた場合の結果を示
す。(c)はFITC OligoとpDBA#170(合成例5で得られたMW
(27,200)のもの)とを用いた場合の結果を示す。
【図12】実施例11で得られた、導入された細胞の割
合を評価した結果を示す図である。ここで、12、49、17
0はそれぞれ、合成例1、3、5により得られた、MW(分子
量)1,900、7,800、27,200のものを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 14/00 C07K 14/00 // C08G 69/10 C08G 69/10 (72)発明者 桑原 哲治 茨城県つくば市観音台1丁目25番地11号 久光製薬株式会社筑波研究所内 (72)発明者 大屋 正尚 茨城県つくば市観音台1丁目25番地11号 久光製薬株式会社筑波研究所内 (72)発明者 秋山 勝彦 茨城県つくば市観音台1丁目25番地11号 久光製薬株式会社筑波研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ジアミノ酪酸および/またはその薬学的
    に許容できる塩からなるポリペプチドを含む核酸運搬
    体。
  2. 【請求項2】 ジアミノ酪酸および/またはその薬学的
    に許容できる塩からなるポリペプチドと、ポリエチレン
    グリコールとのブロックコポリマーを含む核酸運搬体。
  3. 【請求項3】 前記ポリペプチドが、残基数20以上2
    80以下のジアミノ酪酸および/またはその薬学的に許
    容できる塩からなることを特徴とする請求項1または2
    に記載の核酸運搬体。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の核
    酸運搬体と、薬物遺伝子とを含む遺伝子治療用薬物。
  5. 【請求項5】 前記薬物遺伝子が核酸および/またはヌ
    クレオチド誘導体であることを特徴とする請求項4に記
    載の遺伝子治療用薬物。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001052901A1 (fr) * 2000-01-21 2001-07-26 Hisamitsu Pharmaceutical Co., Inc. Medicaments pour la therapie genique
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