JP2000186140A - 熱硬化型高分子、その溶液及び被膜 - Google Patents

熱硬化型高分子、その溶液及び被膜

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JP2000186140A
JP2000186140A JP36552798A JP36552798A JP2000186140A JP 2000186140 A JP2000186140 A JP 2000186140A JP 36552798 A JP36552798 A JP 36552798A JP 36552798 A JP36552798 A JP 36552798A JP 2000186140 A JP2000186140 A JP 2000186140A
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film
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Kohei Kita
孝平 北
Tsuneaki Tanabe
恒彰 田辺
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気・電子材料用途として高い耐熱性、低誘
電率等の電気特性、低吸水性を示す重合体の提供。 【解決手段】 2,6−ジフェニルフェノールとエチニ
ル基含有化合物を限定された混合比、反応温度で酸化カ
ップリングすることにより、優れた耐熱性、電気特性、
低吸湿性などを有する電子材料用重合体を得る。本重合
体は誘電率は2.8、架橋後には400℃までの範囲で
ガラス転移点を持たず、LSI多層配線用層間絶縁膜と
して特に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気、電子材料とし
て2、6−ジフェニルフェノールを主成分とする重合体
から得られる薄膜を用いることに属する。さらに詳しく
はLSI多層配線の層間絶縁膜、LSIパッシベーショ
ン膜、プリント基板、BGA、MCMなどの基板材料に
有用な電気特性、低誘電率、低吸水性、耐熱性、成膜性
などに優れた2、6ージフェニルフェノールを主成分と
する重合体薄膜に属する。
【0002】
【従来の技術】電気、電子材料に用いられる重合体とし
ては、一般に耐熱性が高いこと、誘電率が低いこと、吸
水性が小さいことなどが要求され、フェノール樹脂、エ
ポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ビスマ
レイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等が用い
られている。しかしフェノール樹脂、エポキシ樹脂は耐
熱性が低く、また誘電率も高い。ポリイミド系樹脂は耐
熱性は高いが強い極性を有するために吸水性が大きく、
また誘電率も高いという欠点を有する。フッ素系樹脂は
誘電率及び吸水性はきわめて低いが、基板材料への密着
性が低いという欠点を有する。
【0003】近年、特に配線基板用絶縁体としてビスマ
レイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂が報告
されており、これらは誘電率が低いが、耐熱性の点から
満足なものとはいえない。またLSI多層配線用絶縁体
材料として現在用いられている酸化ケイ素膜の誘電率を
低減するためにフッ素をドープすることも行われている
が、熱安定性とのトレードオフの関係にあって低誘電率
化には限界がある。更に、誘電率を下げる目的で空気を
含有させたポーラスシリカ(多孔質酸化ケイ素)やポリ
イミドナノフォーム等が研究されているが、空孔率と機
械的強度がトレードオフの関係にあるため実用化には至
っていないし、また吸湿性に問題がある。
【0004】前記材料中ポリフェニレンエーテルは先に
も述べたように低い誘電率、低い吸水性を持つ重合体で
あるため、例えばポリー2、6ージメチルフェノールな
どは工業化され、エンジニアリングプラスチックとして
大量に用いられており、この重合体を用いたプリント基
板材料などが提案されている。しかしながら、この重合
体は耐熱性の面でポリイミドなどと比較すると十分では
ないため、その改善が研究されている。
【0005】一般にポリ−2、6−ジメチルフェノール
の熱劣化は側鎖のメチル基から起こると考えられ、耐熱
性を改良する目的でメチル基をフェニル基に置き換えた
ポリ−2、6−ジフェニルフェノールがMacromo
lecules4,5,643(1971)に開示され
ている。この重合体はガラス転移温度230℃、融点4
80℃、熱分解開始温度515℃と優れた耐熱性を持
ち、電気、電子材料として高いポテンシャルを有するも
のであることが知られている。しかし、この重合体は結
晶性であるため、膜状などに成形した後、熱が加えられ
ると結晶化が進行し変形、ひび割れなどが生じるため均
質な物を得ることが困難である。
【0006】このような重合体を実用に供するための一
つの手法として非晶化することが考えられる。結晶性重
合体を非晶化する代表的な方法は共重合や化学修飾によ
って構造の規則性を乱すものがある。ポリー2、6ージ
フェニルフェノールに関してA.S.HayらはJou
rnal of Polymer Sci, Part
A, vol31,2015(1993)などで側鎖ベン
ゼン環に置換基を有する2、6ージフェニルフェノール
と共重合することによって非晶化できることを開示して
いる。しかし得られた共重合体から結晶化温度を消失さ
せることはできても、本質的にガラス転移温度を200
℃から300℃の間に有しており、半導体用の層間絶縁
膜として用いるには不十分なものであった。さらに本発
明者らは特願平8−342377号で2,6−ジフェニ
ルフェノールと2−フェニルフェノールなどとの共重合
体を、ラジカル発生剤とともに加熱することにより、架
橋された非晶質重合体薄膜を得ることを報告している
が、高温での機械的物性などが必ずしも十分なのもでは
なかった。
【0007】一般に、高温における機械特性を改良する
方法として架橋能を有する二重結合を重合体構造中に導
入しこれを熱架橋し、ガラス転移点を消失させる方法が
考えられるが、二重結合を構造中に導入するともとの重
合体、および架橋重合体の耐熱性が低下し、300℃以
上の温度で熱分解により重量が減少する問題が生じてい
る。また、WO97/01593、WO97/0159
4においては重合体側鎖に三重結合を有する芳香族ポリ
エーテルが開示されているが、これに用いるモノマーの
合成には極めて多くの反応ステップが必要であり、原料
合成が困難な方法で実用性に問題がある。
【0008】更に、置換フェノールとジエチニル化合物
を酸化カップリング反応で共重合し、重合体鎖中に三重
結合を導入する方法もUSP3748305に開示され
ている。基本的に置換フェノールとジエチニル化合物は
共に酸化カップリング重合法で重合されるが、本発明に
用いる2、6ー二置換フェノールはジエチニル化合物と
の酸化電位の違いからジエチニル化合物の重合速度が圧
倒的に速くジエチニル化合物の単独重合体が生成し沈殿
するため本発明のような電気、電子材料用途に優れた重
合体とは言えない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上のような現状を考
慮して、電気・電子材料用途として高い耐熱性、低誘電
率等の電気特性、低吸水性を示す重合体を開発すべく鋭
意研究を行った。
【0010】
【課題を解決するための手段】その結果、限定された組
成比の2、6ージフェニルフェノールとジエチニル化合
物を酸化カップリングして得られる重合体は、耐熱性が
著しく向上し、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ト
ルエン等の一般的な有機溶剤に可溶であることが分かっ
た。加熱架橋された重合体薄膜の400℃における重量
減少が全く観察されないばかりではなく、さらには得ら
れた重合体薄膜を十分に熱架橋した後にはガラス転移温
度をも消失させるだけの架橋が進行し、耐熱性、誘電率
性、低吸湿、密着性、成膜性、均質性等に優れる非晶性
芳香族重合体を得ることを知見した。この新しい知見に
基づいて本発明を完成したものである。
【0011】すなわち本発明は以下の通りである。 1, 下記式(1)で表される2,6−ジフェニルフェ
ノール70〜95モル%と、下記式(2)で表されるジ
エチニル化合物5〜30モル%を、40℃〜110℃で
酸化カップリング重合して得られ、かつゲル浸透クロマ
トグラフィーにより測定した重量平均分子量が2,00
0〜500,000であることを特徴とする重合体。
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
【0014】ただし、上記式(2)でArは2価の芳香
族単位を表す。 2, 1記載の重合体が有機溶剤に2〜60重量%の濃
度でを溶解していることを特徴とする重合体溶液。 3, 1記載の重合体からなり、膜厚が0.1〜500
μmであることを特徴とする重合体薄膜。 4, 3に記載の重合体薄膜が加熱することにより架橋
されていることを特徴とする架橋重合体薄膜。 5, 金属配線が1記載の重合体で絶縁されていること
を特徴とする半導体素子または配線基板。 6, 5記載の重合体が加熱することにより架橋されて
いることを特徴とする半導体素子または配線基板。 7, 多孔質支持体膜からなる配線基板材料において、
該多孔質支持体膜の空隙部に1記載の集合体が存在する
ことを特徴とする配線基板材料。 8, 7記載の重合体が加熱することにより架橋されて
いることを特徴とする配線基板材料に関する。
【0015】以下に、本発明を詳細に説明する。本発明
の重合体は2,6−ジフェニルフェノールとジエチニル
化合物から得られるものである。ジエチニル化合物とし
てはm−ジエチニルベンゼン、oージエチニルベンゼ
ン、pージエチニルベンゼン、ジエチニルビフェニル、
ジエチニルターフェニル、ジエチニルナフタレン、ジエ
チニルアントラセン等の芳香族ジエチニル化合物を挙げ
ることができ、これらを単独、あるいは混合して用いる
ことができる。本発明においては2,6−ジフェニルフ
ェノールとジエチニル化合物の添加比が重要であって、
本発明の効果を得るためにはジエチニル化合物の添加量
が、両者の合計に対して5〜30モル%であることが必
要である。さらに好ましい範囲は、10〜20モル%で
ある。この比が5モル%以下では得られる重合体は結晶
性を示し、実用的に価値のある均質な薄膜を得ることが
できない。また30モル%以上ではジエチニル化合物の
単独重合体が大量に生成し、反応系内に沈殿するため、
経済的に不利になるばかりではなく煩雑な分離操作が必
要となる。
【0016】重合方法としては2、6−ジメチルフェノ
ールや2、6−ジフェニルフェノールの重合方法と同様
に行うことができ、トルエン、キシレン、メシチレン、
クロルベンゼン等の溶媒に2、6−ジフェニルフェノー
ル、ジエチニル化合物、必要に応じてその他のモノマー
成分、及び触媒を混合してから空気、または酸素を吹き
込む方法を用いることができる。
【0017】本発明で用いられる触媒としては置換フェ
ノール類の酸化カップリングで一般に用いられるものを
使用することができる。代表例としては銅化合物/アミ
ン系触媒である。銅化合物の例としては塩化第二銅、塩
化第一銅、臭化第二銅、臭化第一銅、硫酸第二銅、硫酸
第一銅、硝酸第二銅、硝酸第一銅、酢酸第二銅、酢酸第
一銅、アジ化第二銅、アジ化第一銅、トルイル酸第二
銅、トルイル酸第一銅、などを例示することができる。
また銅化合物以外にマンガン化合物などを用いることも
可能である。これらの中で特に好ましいのは塩化第二
銅、塩化第一銅、臭化第二銅、臭化第一銅である。銅化
合物の添加量としては特に規定されるものではないが、
フェノール性モノマーの合計に対して0.01〜25重
量%が適当である。また、本発明の重合体を得るための
アミン化合物としては、特に制限はないが、公知の3級
アミン、2級アミン、を用いることが好ましい。例とし
ては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロ
ピルアミン、ブチルジメチルアミン、フェニルジメチル
アミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジ
アミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−
ジアミノプロパン、ジメチルアミン、ジイソプロピルア
ミン、ジブチルアミンなどをあげることができる。
【0018】本発明において必要に応じて混合できるそ
の他のモノマーとは以下にあげる物である。本発明では
重合性を改良するために、少量(10%以下)の芳香族
プロパルギルエーテル化合物を第3成分として添加する
ことも可能である。用いる芳香族プロパルギルエーテル
はプロパルギル基以外の脂肪族基を何等含有しないこと
が好ましい。他の脂肪族基を含有すると窒素中あるいは
空気中でアニールしたときに脱ガス・重量減少が生じ実
用に供することができない。プロパルギルエーテル基以
外に脂肪族基を含有しないプロパルギルエーテル化合物
としてはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェ
ニル、ターフェニル等の芳香族化合物をプロパルギルオ
キシ基で一置換または二置換したものを用いることがで
きる。
【0019】また重合体の特性を改良する目的で、特に
後述する膜の結晶化をより効率的に抑制する目的で2、
6−ジフェニルフェノール及びジエチニル化合物以外の
モノマーを併用することも可能であり、例えばα−ナフ
トール、β−ナフトール、o−ヒドロキシビフェニル等
の芳香族水酸化化合物を挙げることができる。また、本
発明の趣旨を外さない範囲で例えば1%程度の2、6−
ジメチルフェノール等の脂肪族を含有したコモノマーを
添加することも可能である。
【0020】本発明の重合を行う場合に重合反応温度は
極めて重要であり、40℃〜110℃が好ましく、50
℃〜100℃がより好ましい。この温度を外れた例えば
30℃で反応を行うと実質的に2、6ージフェニルフェ
ノールの重合反応が進まない。また、より高温の120
℃で反応を行うと2、6ージフェニルフェノールは炭素
ー酸素結合を作って重合するよりも、炭素ー炭素間で結
合しジフェノキノンを生成するため高分子化しない。4
0℃〜110℃の温度範囲が好ましく、ジエチニルベン
ゼン重合体の溶解性、2、6−ジフェニルフェノールの
反応性を考えると50〜100℃が更に好ましい温度で
ある。また、さらに好ましい温度条件としては50〜6
0℃で2〜3時間重合することにより2、6−ジフェニ
ルフェノールモノマーをオリゴマーとした後、80〜1
00℃に昇温しさらに分子量を上げる方法である。この
方法のように二段階で昇温させることにより2、6ージ
フェニルフェノールが炭素ー炭素間でカップリングする
ことによる副生物であるジフェノキノンの生成を抑制す
ることができ、しかもジエチニルベンゼン重合体の溶解
性をも有するので優れた方法となる。また2、6ージフ
ェニルフェノールを単独重合しているところにジエチニ
ル化合物の溶液を滴下する方法をとることや、これらの
モノマーの全てを適宜滴下することにより重合すること
も可能である。
【0021】本発明の重合体のゲル浸透クロマトグラフ
ィーにより測定した重量平均分子量は2,000〜50
0,000である。好ましくは10,000〜250,
000であり、更に好ましくは30,000〜200,
000である。重量平均分子量が2,000未満では機
械的強度が小さく、500,000を越えると溶解性が
悪くなる傾向が強い。
【0022】得られた重合体は触媒残査その他の不純物
を含有するのでろ過、水洗、溶剤洗浄、酸洗浄、再沈殿
など通常の方法で精製、回収する。場合によってはイオ
ン交換樹脂と接触させることによって含有されるイオン
成分を除去することなども好ましい方法である。使用す
るイオン交換樹脂は除去すべきイオン性不純物によって
異なるが、スルホン酸基を交換基として有する強酸性陽
イオン交換樹脂やカルボン酸基を交換基として有する弱
酸性陽イオン交換樹脂、4級アンモニウム基を交換基と
して有する強塩基性イオン交換樹脂、1〜3級アンモニ
ウム基を交換基として有する弱塩基性イオン交換樹脂等
を挙げることができる。また、イオン交換樹脂との接触
方法についても単純に該高分子溶液中にイオン交換樹脂
を添加し撹拌接触させ、イオン性不純物を除去すること
も可能であるし、イオン交換樹脂を充填したカラムの中
を該高分子溶液を通過させることによってイオン性不純
物を除去することも可能である。
【0023】本発明で得られる重合体は、通常用いられ
る種々の成形方法で成形し実用に供することができる。
射出成形、押し出し成形などで構造部品、フィルムとし
て用いることもできるが、本発明の重合体は熱架橋しや
すいため好ましくは適当な溶媒に溶解して流延法、キャ
スト法、スピンコート法などの公知の方法で膜状に成形
することにより電気、電子部品用の絶縁膜等として有利
に用いることができる。
【0024】成膜に当たり使用する溶媒は重合体を溶解
するものなら特に限定するものではないが、トルエン、
キシレン、メシチレン、デュレン、テトラリンなどの芳
香族炭化水素系、クロロホルム、ジクロロメタン、ジク
ロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、
クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭
化水素系、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセ
トフェノンなどのケトン系、乳酸エチルなどのエステル
系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなど
のエーテル系、その他N−メチルピロリドン、テトラメ
チルウレア、プロピレングリコール−1−モノメチルエ
ーテルー2ーアセテート、1−メトキシ−2−プロパノ
ールなどを挙げることができる。これらのうち、作業
性、安全性、経済性、成膜性などを考慮して好ましいも
のとしてはトルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘ
キサノン、シクロペンタノン、アニソール、Nーメチル
ピロリドン、乳酸エチル、プロピレングリコール−1−
モノメチルエーテル−2−アセテートが挙げられる。こ
れらの溶媒は単独で用いてもよいが、成膜性、基板への
濡れ性、作業性などを改良するために数種類の溶媒を混
合して用いることも好ましい。
【0025】重合体溶液中の重合体の濃度は、使用目的
や重合体の分子量などによって異なるが、2〜60重量
%、好ましくは5〜40重量%の範囲が用いられる。本
発明の重合体溶液を用いてLSI多層配線の層間絶縁
膜、パッシベーション膜などを得るためには、一般にス
ピンコート法が適用される。この際、濡れ性、密着性な
どを改良するために基板を表面処理しておくこともよく
行われる。一度のスピンコートによって通常0.1〜1
0μmの膜を得ることができる。もちろん膜厚を大きく
したいときには溶液中における重合体濃度を高くする
か、あるいは加熱硬化後にスピンコートを繰り返せばよ
い。得られた膜の乾燥温度は溶媒の種類によって異なる
が、一般に室温〜150℃である。
【0026】上記のようにして得られた膜を架橋する場
合にはこの後、さらに加熱などの処理を行う。熱架橋を
行う場合加熱温度は150℃以上、好ましくは200℃
以上である。150℃未満では実質的に架橋反応は進行
しない。架橋条件の例としては窒素雰囲気下、300℃
以上の温度で1分〜3時間程度である。半導体の層間絶
縁膜等として用いる場合には400℃以上の高温での脱
ガスが問題になるが、このような場合にはこの後、例え
ば400℃程度で30分程度の加熱を行うことによって
実用上問題の無い薄膜を獲得することが可能である。
【0027】本発明の重合体において架橋反応は本質的
にエチニル基の加熱反応で十分進行するが、光照射、電
子線照射など公知の方法を行うことも可能であるし、更
に過酸化物やビベンジル化合物などのラジカル発生剤を
含有させることによって架橋を促進することも可能であ
る。ラジカル発生剤の添加方法に関しては重合体溶液調
製時に重合体とともに溶媒に溶解させるのがもっとも簡
便である。このとき、密着性改良剤、レベリング剤など
の作業性、膜特性を改良するための添加剤を加えること
もできる。一般に電気、電子材料ではいわゆるパーティ
クルの混入は極力さける必要があり、前記の方法で得ら
れた重合体、あるいは重合体とラジカル発生剤の溶液は
使用前にあらかじめ0.1μm〜1μm程度のフィルタ
ーでろ過しておくことが好ましい。架橋反応は酸素が存
在する雰囲気下で行うことも可能であるが、例えば配線
材料としてアルミニウムを用いた半導体素子のバッファ
膜や、半導体素子に用いる配線構造体の絶縁膜等として
本発明の架橋重合体膜を用いる場合、酸素存在下で加熱
すると金属配線材料の酸化が懸念される。このように酸
素存在下での加熱が好ましくない場合には、窒素、ヘリ
ウムまたはアルゴン雰囲気下などの不活性雰囲気下でも
実用上全く問題ない速度で架橋が進行する。
【0028】本発明のようなエチニル基を含有し、2、
6ージフェニルフェノールを主成分とする高分子重合体
では加熱することにより三重結合が架橋に寄与し、ガラ
ス転移温度が全く観察されなくなる。架橋した膜は架橋
前の膜に比べて耐熱性、耐溶剤性が著しく改善されてい
る。示差熱分析(DSC)において、架橋前の芳香族重
合体のガラス転移温度は230℃付近に観察されるが、
架橋後には350℃以下の温度でガラス転移温度が観察
されなくなり、更に架橋が進行すると400℃以下の温
度でガラス転移温度が観察されなくなる。
【0029】この結果はフィルムストレス測定によって
も確認され、適当な条件下で架橋したフィルムでは室温
から400℃までの温度範囲でガラス転移温度が観察さ
れなかった。また、熱減量分析(以下TGAと称する)
において熱重量減少を測定した場合にも同様で架橋しな
い2、6−ジフェニルフェノール単独重合体では窒素
下、400℃で1時間アニールした場合には0.8%程
度の重量減少が見られるが、本発明で得られる重合体で
は何等重量減少が観察されなかった。
【0030】一般に多くの電気・電子材料を使用するプ
ロセスにおいては300〜450℃程度の熱が加えられ
る。2、6−ジフェニルフェノール重合体はそれ自身が
260〜270℃付近に結晶化温度を有する結晶性高分
子であり、このような熱が加えられると結晶化が進行し
膜が白化しひび割れてしまう。ところが本発明の重合体
は、加熱により200〜250℃付近で三重結合が環化
架橋するため、2、6ージフェニルフェノールの結晶化
は進行せず、さらに架橋を進行させたものはフィルムス
トレス測定を行うとガラス転移温度も観察されなくなっ
た。これは高い密度で架橋反応が起こっていることを示
唆する。先に述べた、熱重量減少が観察されないことと
あわせて、本発明の重合体が電気電子材料用途として優
れることを示すものである。また、結晶化の抑制は、前
述のナフトール、ヒドロキシビフェニルなどの添加によ
ってさらに効率的に抑制することができる。
【0031】本発明の重合体薄膜は必要に応じて、通常
のレジストを用いてパターンニングする事は容易であ
る。また分子量、濃度を適切に設定した重合体溶液を適
当なガラスクロス、不織布などの多孔質支持体に含浸し
てプレプリグとした後、加熱硬化して板状にしたものを
配線基板材料として用いることもできる。さらに、重合
体溶液を微細配線パターンへ流し込んだ後、加熱硬化す
ることで埋め込み性に優れた材料とすることができる。
そして、アルミニウム、銅などの配線材料、ガラス、シ
リカなどのセラミックス材料への密着性にもきわめて優
れていることも本発明の重合体の特徴である。
【0032】このように本発明の重合体はきわめて優れ
た耐熱性、電気特性、力学特性、低吸水性を持ち、LS
I多層配線の層間絶縁膜、LSIパッシベーション膜、
プリント基板、BGA、MCMなどの基板材料などの電
気電子材料として有利に用いることができる。
【0033】以下に実施例、比較例により本発明を具体
的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定され
るものではない。なお、示差熱分析(以下DSCと称
す)はパーキンエルマー社製DSC7を用い窒素中で1
0℃/分の昇温速度で行った。フィルムストレス測定は
KLATencor社製FLX2320型ストレス測定
装置を用いシリコン基板上に1〜2μmに成膜した試料
を用い、窒素中で10℃/分の昇温速度で測定を行っ
た。耐熱性はリガク社製THERMOFLEX Tas
ー300TG8110D型熱天秤を用いてヘリウム中で
測定した。被膜の比誘電率は横河HP社製CーVプロッ
タHP4280Aを用いシールドマイクロプローブ法に
より測定した。重合体被膜の膜厚は接触式膜厚計(スロ
ーン社製DEKTAKII)を用いて測定した。昇温脱
離ガス分析(以下TDSと称す)測定は電子科学社製高
精度昇温脱離ガス分析装置EMDーWA1000S型を
用い10eー9Torrの真空下で20℃/分の昇温速
度で測定を行った。
【0034】
【実施例1】酸素導入管、攪拌装置のついた500ml
セパラブルフラスコに350gのトルエンを秤り取り、
20.73g(84.2mmol)の2、6−ジフェニ
ルフェノール、1.06g(8.42mmol)のmー
ジエチニルベンゼンを加え窒素気流下で攪拌し溶解させ
た。これに臭化第一銅0.5g、N、N、N'、N'−テ
トラメチルエチレンジアミン400μl及び8.72g
の無水硫酸マグネシウムを加え50℃で液面下より酸素
を導入しながら約2時間、その後90℃に昇温して2時
間の酸化カップリング重合反応を行った。反応終了後、
反応液中の不溶分をポリテトラフルオロエチレン(以下
PTFEと称する)0.5μmのフィルターでろ過し、
メタノールで再沈殿させ重合体固形分を単離し真空乾燥
した。乾燥後の収量は21g(収率97%)であり、定
量的に溶媒可溶の重合体が得られた。ポリスチレン換算
での重量平均分子量は約10万であった。
【0035】得られた粗重合体20gをフラスコ中で酢
酸20mlを含むトルエン300mlに溶解し約1時間
の加熱還流をした後にメタノールに滴下、再沈殿し固形
分を回収した。得られた固形分の銅残量を誘導結合プラ
ズマ分析(以下ICPと称す)により測定したところ
0.8ppmの残存が認められた。さらに精製するため
に得られた重合体20gをトルエン340mlに溶解し
三菱化学製陽イオン交換樹脂PK220中を流した後に
メタノール中に滴下し再沈殿精製を行った。得られた固
形分の銅残量をICPにより測定したところ0.1pp
m以下まで除去されていた。得られた重合体のアルゴン
中10℃/分の昇温速度でのTGA測定による5%重量
減少温度は540℃であった。
【0036】
【実施例2】酸素導入管、攪拌装置のついた500ml
セパラブルフラスコに350gのトルエンを秤り取り、
20.73g(84.2mmol)の2、6−ジフェニ
ルフェノール、0.75g(4.41mmol)のoー
ヒドロキシビフェニル、1.33g(10.53mmo
l)のmージエチニルベンゼンを加え窒素気流下で攪拌
し溶解させた。これに臭化第一銅0.5g、N、N、
N'、N'−テトラメチルエチレンジアミン400μl及
び8.72gの無水硫酸マグネシウムを加え55℃で液
面下より酸素を導入しながら約3時間、その後90℃に
昇温し、さらに1時間酸化重合を行った。反応終了後、
反応液中の不溶分をPTFE0.5μmのフィルターで
ろ過し、メタノールで再沈殿させ重合体固形分を単離し
真空乾燥した。乾燥後の収量は21.7g(収率95
%)であり、定量的に溶媒可溶の重合体が得られた。ポ
リスチレン換算での重量平均分子量は約13万であっ
た。
【0037】得られた粗重合体20gをフラスコ中で酢
酸20mlを含むトルエン300mlに溶解し約1時間
の加熱還流をした後にメタノールに滴下、再沈殿し固形
分を回収した。得られた固形分の銅残量をICPにより
測定したところ1ppmの残存が認められた。さらに精
製するために得られた重合体20gをトルエン340m
lに溶解し三菱化学製陽イオン交換樹脂PK220中を
流した後にメタノール中に滴下し再沈殿精製を行った。
得られた固形分の銅残量をICPにより測定したところ
0.1ppm以下まで除去されていた。得られた重合体
のアルゴン中10℃/分の昇温速度でのTGA測定によ
る5%重量減少温度は535℃であった。
【0038】
【実施例3】1、5ージヒドロキシナフタレン13.5
6g(84mmol)を300mlのアセトンに溶解
し、28.08gの炭酸カリウムの存在下に25g(2
10mmol)のプロパルギルブロミドと反応させた。
反応は窒素気流下、68℃で還流をさせながら6時間行
った。反応後に減圧濾過し、得られたロ液をロータリー
エバポレーターにかけ、1、5ージジプロパルギルオキ
シナフタレンの粉末を得た。その後再度トルエンに溶解
し2Nの水酸化ナトリウムで抽出後、蒸留水を添加し水
洗を行い、メタノールで再結晶し精製を行った。
【0039】
【実施例4】酸素導入管、攪拌装置のついた500ml
セパラブルフラスコに350gのトルエンを秤り取り、
20.73g(84.2mmol)の2、6−ジフェニ
ルフェノール、1.33g(10.53mmol)のm
ージエチニルベンゼン、及び実施例3で合成した1、5
ージプロパルギルオキシナフタレン1.18g(5mm
ol)を加え窒素気流下で攪拌し溶解させた。これに臭
化第一銅0.5g、N、N、N'、N'ーテトラメチルエ
チレンジアミン400μl及び8.72gの無水硫酸マ
グネシウムを加え70℃で液面下より酸素を導入しなが
ら約5時間酸化重合を行った。反応終了後、反応液中の
不溶分をPTFE0.5μmのフィルターでろ過し、メ
タノールで再沈殿させ重合体固形分を単離し真空乾燥し
た。乾燥後の収量は22.3g(収率97%)であり、
定量的に溶媒可溶の重合体が得られた。ポリスチレン換
算での重量平均分子量は約13万であった。
【0040】得られた粗重合体20gをフラスコ中で酢
酸20mlを含むトルエン300mlに溶解し約1時間
の加熱還流をした後にメタノールに滴下、再沈殿し固形
分を回収した。得られた固形分の銅残量をICPにより
測定したところ1ppmの残存が認められた。さらに精
製するために得られた重合体20gをトルエン340m
lに溶解し三菱化学製陽イオン交換樹脂PK220中を
流した後にメタノール中に滴下し再沈殿精製を行った。
得られた固形分の銅残量をICPにより測定したところ
0.1ppm以下まで除去されていた。得られた重合体
のアルゴン中10℃/分の昇温速度でのTGA測定によ
る5%重量減少温度は535℃であった。
【0041】
【実施例5】実施例1、2、4で得た重合体2gをそれ
ぞれアニソール15gに溶解しアルミニウムでコートし
たシリコン基板上に3000rpmで60秒間回転塗布
した後窒素雰囲気下400℃で1時間乾燥・架橋するこ
とにより、1〜2μmの均質な被膜を形成した。この被
膜上にアルミニウム電極を形成し測定した1MHzでの
誘電率はいずれも2.7であった。
【0042】
【実施例6】実施例2で得られた得られた重合体を2g
をメシチレン20gに溶解した後1500rpmでシリ
コン基板上にスピンコートし2μmの薄膜を得た。この
薄膜をストレス測定装置でストレス測定を行った結果を
図1に示す。室温における初期ストレスは50MPaで
あり、室温から450℃まで20℃/分で昇温をしたが
400℃付近で応力が緩和するまでの間でガラス転移点
等に由来するピークは検出されなかった。この結果、重
合体が有するガラス転移温度は400℃と判断された。
【0043】
【実施例7】酸素導入管、攪拌装置のついた200ml
セパラブルフラスコに35gのトルエンを秤り取り、表
1に記載の添加量で2、6ージフェニルフェノール、m
ージエチニルベンゼンを加え窒素気流下で攪拌し溶解さ
せた。これに臭化第一銅0.05g、N、N、N'、N'
ーテトラメチルエチレンジアミン40μl及び0.87
gの無水硫酸マグネシウムを加え70℃で液面下より酸
素を導入しながら約5時間酸化重合を行った。反応終了
後、反応液中の不溶分をPTFE0.5μmのフィルタ
ーでろ過し、メタノールで再沈殿させ重合体固形分を単
離し真空乾燥した。得られた粗重合体20gをフラスコ
中で酢酸2mlを含むトルエン50mlに溶解し約1時
間の加熱還流をした後にメタノールに滴下、再沈殿し固
形分を回収した。さらに精製するために得られた重合体
20gをトルエン50mlに溶解し三菱化学製陽イオン
交換樹脂PK220中を流した後に重合体中に滴下し再
沈殿精製を行った。
【0044】得られた固形分の銅残量をICPにより測
定したところ0.1ppm以下まで除去されていた。得
られた重合体のアルゴン中10℃/分の昇温速度でのT
GA測定による5%重量減少温度は下記表1に示したよ
うにm−ジエチニルベンゼン濃度が増えるに従って上昇
することよりmージエチニルベンゼンが架橋を促進し得
られた重合体の耐熱性を著しく改善させることが分かっ
た。 ただし表中のDPPは2、6−ジフェニルフェノ
ールを表し、m−dEBはm−ジエチニルベンゼンを表
す。
【0045】
【比較例1】2,6−ジフェニルフェノール85モル%
と2−フェニルフェノール15モル%から実施例2と同
様の反応操作で得られる重合体を用いて、実施例6と同
様な測定を行ったところ、図2のストレス曲線が得られ
た。この図より、エチニル基を含有しない重合体ではガ
ラス転移点が220℃付近に存在することがわかる。
【0046】
【比較例2】m−dEBの添加比を40モル%として、
実施例7と同様の重合を行ったが、反応終了後、反応系
内には大量の不溶分が生成して、ろ過による精製が困難
であった。
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、2、6
−ジフェニルフェノールとジエチニル化合物を酸化重合
することにより、低誘電率等の電気特性、低吸湿、他の
基材に対する密着性、成膜性等に優れた自己熱架橋型の
2、6−ジフェニルフェノールを主成分とする重合体が
得られ、この重合体は半導体、配線基板等の電気・電子
部品の絶縁被膜材料として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例6で得られた重合体薄膜のストレス測定
結果。
【図2】比較例1で得られた重合体薄膜のストレス測定
結果。
フロントページの続き Fターム(参考) 4J002 CH071 EA026 EA056 EB026 EB126 ED026 ED056 EE036 EH036 EL066 EL106 GQ05 4J005 AA24 BA00 4J038 DN011 GA03 KA06 MA14 NA21 PA19 PB09 PC02 5F058 AA04 AA10 AC10 AF04 AG01 AH02

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1)で表される2,6−ジフェ
    ニルフェノール70〜95モル%と、下記式(2)で表
    されるジエチニル化合物5〜30モル%を、40℃〜1
    10℃で酸化カップリング重合して得られ、かつゲル浸
    透クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が
    2,000〜500,000であることを特徴とする重
    合体。 【化1】 【化2】 ただし、上記式(2)でArは2価の芳香族単位を表
    す。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の重合体が有機溶剤に2〜
    60重量%の濃度で溶解していることを特徴とする重合
    体溶液。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の重合体からなり、膜厚が
    0.1〜500μmであることを特徴とする重合体薄
    膜。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の重合体薄膜が加熱する
    ことにより架橋されていることを特徴とする架橋重合体
    薄膜。
  5. 【請求項5】 金属配線が請求項1記載の重合体で絶縁
    されていることを特徴とする半導体素子または配線基
    板。
  6. 【請求項6】 請求項5の重合体が加熱することにより
    架橋されていることを特徴とする半導体素子または配線
    基板。
  7. 【請求項7】 多孔質支持体膜からなる配線基板材料に
    おいて、該多孔質支持体膜の空隙部に請求項1記載の重
    合体が存在することを特徴とする配線基板材料。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の重合体が加熱することに
    より架橋されていることを特徴とする配線基板材料。
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JP2002053661A (ja) * 2000-08-04 2002-02-19 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 高融点2,5−ジ置換フェノール酸化重合体
JP4601135B2 (ja) * 2000-08-04 2010-12-22 独立行政法人産業技術総合研究所 高融点2,5−ジ置換フェノール酸化重合体
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