JP2000176441A - ヒ素化合物の除去方法及び吸着剤 - Google Patents

ヒ素化合物の除去方法及び吸着剤

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 As濃度1000μmol/L以下の低濃度
域でも高い吸着量を示すヒ素化合物の吸着除去剤を用い
て、水中のヒ素化合物を容易かつ効率的に、極低濃度に
まで吸着除去する。 【解決手段】 水中のヒ素化合物をジルコニウム系メソ
構造体からなる吸着剤と接触させるヒ素化合物の除去方
法。ジルコニウム系メソ構造体からなるヒ素化合物用吸
着剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はヒ素化合物の除去方
法及び吸着剤に係り、特に、水中のヒ素(As)化合物
を吸着法により容易かつ効率的に、極低濃度にまで吸着
除去する方法及び吸着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒ素化合物は半導体材料、顔料、農薬等
幅広い分野で使用されると共に、日本国内の自然の地質
に広く分布しているが、強い毒性を有し、特に人体への
影響が大きいことが知られている。このため、平成8年
以降、水質汚濁防止法に基づく浄化基準項目に規定さ
れ、平成9年3月からは地下水に環境基準が設定され、
水中からのヒ素化合物の除去の必要性が高まってきてい
る。
【0003】従来、水中からのヒ素化合物の除去技術と
しては、吸着剤による吸着法、水酸化物共沈法等があ
る。
【0004】吸着法は、不溶性の吸着剤粒子の表面にヒ
素化合物を捕捉除去する方法で、比較的吸着性能の良い
吸着剤として活性アルミナ、活性炭、希土類系吸着剤な
どが知られている。
【0005】水酸化物共沈法は、鉄化合物、アルミニウ
ム化合物、カルシウム化合物を添加し、ヒ素化合物を共
沈させて固液分離により除去するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来のヒ素化合物の除
去方法のうち、水酸化物共沈法は、最も確実なヒ素化合
物の処理法とされているが、処理水中のヒ素濃度を低く
するためには鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウ
ム化合物等を多量に添加する必要があることから、処理
により多量のヒ素含有スラッジが発生するという欠点が
ある。
【0007】一方、吸着法の場合、従来用いられている
吸着剤のうち、吸着量が高いとされているランタン等の
希土類系吸着剤は、そのヒ素化合物吸着量が水中のAs
濃度の影響を受け、As濃度1000μmol/L以下
の濃度領域になると急激に平衡吸着量が低下するという
欠点があった。また、活性アルミナや活性炭では、ラン
タン等の希土類系吸着剤に比べて平衡吸着量が低い。こ
のため、いずれの吸着剤を用いても、As濃度を地下水
環境基準値以下(0.01mg/L以下)にまでに低減
させようとする場合には、大量の吸着剤が必要となり実
用上問題があった。
【0008】本発明は上記従来の問題点を解決し、水中
のAs濃度1000μmol/L以下の低濃度域でも高
い吸着量を示すヒ素化合物の吸着剤、及び、このような
吸着剤を用いて、水中のヒ素化合物を容易かつ効率的
に、極低濃度にまで吸着除去するヒ素化合物の除去方法
を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のヒ素化合物の除
去方法は、水中のヒ素化合物をジルコニウム系メソ構造
体からなる吸着剤と接触させることを特徴とする。
【0010】本発明のヒ素化合物の吸着剤は、ジルコニ
ウム系メソ構造体からなることを特徴とする。
【0011】即ち、本発明者らは、上記課題を解決すべ
く鋭意研究を重ねた結果、ジルコニウムと陰イオン並び
に界面活性剤を含むジルコニウム系メソ構造体が、低A
s濃度であっても、水中のヒ素化合物を極めて効率良く
捕捉除去することを見出し、この知見に基づいて本発明
を完成するに至った。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を詳細
に説明する。
【0013】まず、ヒ素化合物の吸着剤として用いるジ
ルコニウム系メソ構造体について説明する。
【0014】ジルコニウム系メソ構造体は、界面活性剤
の網状骨格に、ジルコニウム原料として用いたジルコニ
ウム塩のジルコニウムとその対イオンの陰イオンが付着
した、細孔径(D)がメソ孔領域(IUPAC定義:2
〜50nm)の連続ないし不連続気孔を有する多孔質体
であり、このジルコニウム系メソ構造体にジルコニウム
構造体のヒ素に対する強い親和力により、ヒ素化合物が
吸着して水中から分離除去される。
【0015】本発明において、ジルコニウム系メソ構造
体の骨格を構成する界面活性剤としては、公知の界面活
性剤を用いることができる。例えば、長鎖アルキル基と
親水基を有するもの、具体的には炭素数8〜18のアル
キル基と、−N(CH33,=N(CH32,=N(C
3),−NH2,−NO2,−NO,−OH,−COO
H等の親水基を持つ界面活性剤、例えば、ヘキサデシル
トリメチルアンモニウムブロミド等を用いることができ
る。
【0016】また、ジルコニウム系メソ構造体に含まれ
る陰イオンは硫酸イオンであることがヒ酸イオンAs
(V)や亜ヒ酸イオンAs(III)との置換吸着の点で
好ましく、従って、ジルコニウム原料のジルコニウム塩
としては、硫酸ジルコニウムの他、オキシ硫酸ジルコニ
ウム、オキシ塩化ジルコニウム等も使用可能であるが、
これらのうち硫酸ジルコニウムを用いるのが最も好まし
い。なお、リン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、珪
酸ジルコニウム等も用いることもできるが、ヒ素の吸着
量が低下すると共に、リン酸、硝酸、珪酸の溶出の問題
が発生するため好ましくない。
【0017】本発明で用いるジルコニウム系メソ構造体
は、ジルコニウム系メソ構造体中の界面活性剤の含有量
が15〜55重量%好ましくは25〜45重量%であ
り、ジルコニウム系メソ構造体に占める界面活性剤の骨
格部分の断面の直径が2〜10nmであり、また細孔の
割合が40〜90体積%さらに好ましくは60〜80体
積%であることが好ましい。
【0018】ジルコニウム系メソ構造体中の界面活性剤
の含有割合が上記範囲より多いとメソ構造体の構造が不
安定であり、逆に少ないと吸着性能が低下するので好ま
しくない。また、ジルコニウム系メソ構造体に占める界
面活性剤部分の断面の直径が2nm未満では、ヒ素の吸
着速度が低下するため不都合であり、10nmと超える
とメソ構造体の安定性が低下するため好ましくない。ま
た、細孔の割合が40体積%未満ではヒ素の吸着速度が
低下するため不都合であり、90体積%を超えるとメソ
構造体の安定性が低下し不都合である。
【0019】このようなジルコニウム系メソ構造体は、
界面活性剤の所定量を10〜50重量%の範囲で水に溶
解した水溶液と、硫酸ジルコニウム等のジルコニウム塩
の所定量を1〜10重量%の範囲で水に溶解させた水溶
液とを、所定の割合で攪拌混合した後、80〜100℃
で24〜72時間程度水熱合成するに当り、界面活性剤
水溶液の濃度、ジルコニウム塩水溶液の濃度、及びこれ
らの水溶液の混合割合を調整すると共に水熱合成条件
(温度及び時間)を適宜制御することにより調製するこ
とができる。なお、細孔径Dが2〜50nmのメソ多孔
体を得るためには、上記混合及び水熱合成に当り、次の
ような条件を採用するのが好ましい。
【0020】界面活性剤水溶液/ジルコニウム塩水溶液
=6〜2(vol/vol) 反応温度=80〜100℃ 反応時間=30〜50時間 このようにして得られるジルコニウム系メソ構造体は、
通常、粉末状であり、本発明においては、ジルコニウム
系メソ構造体を粉末状のまま使用することもでき、ま
た、必要に応じて公知の方法により所定の粒径又は形状
に造粒ないし成形して用いることもできる。
【0021】ジルコニウム系メソ構造体を粉末状で使用
する場合には、ヒ素化合物を含む処理対象水に必要量の
ジルコニウム系メソ構造体粉末を添加し、所定時間攪拌
して接触処理した後、ヒ素化合物を吸着したジルコニウ
ム系メソ構造体を沈殿又は濾別により固液分離する方法
が簡便である。
【0022】また、ジルコニウム系メソ構造体を所定の
粒径に調製した粒状物として用いる場合には、ジルコニ
ウム系メソ構造体粒子を充填した吸着塔に、ヒ素化合物
を含む処理対象水を所定の流速で通液処理する方法を採
用することができる。この際、吸着塔への通水方向には
特に制限はなく、上向流方式、下向流方式のいずれの方
式でも対応できる。また、上向流方式の場合は、固定層
方式の他に流動層方式で対応することもできる。特に、
処理対象水中に懸濁物質を含む場合には、流動層式で接
触させることにより、水中のヒ素化合物のみを捕捉除去
し、懸濁物質は素通りさせることが可能である。
【0023】なお、処理条件としては特に制限はなく、
例えば、pHについてはpH1〜13の広い範囲で適用
可能であるが、pH4〜5の条件下で最も高い吸着量を
得ることができ、好ましい。また、接触時間も用いるジ
ルコニウム系メソ構造体の粒径や使用量、接触方式によ
って異なるが、通常は10〜60分程度の接触時間で十
分な除去効果を得ることができる。
【0024】本発明において、処理対象水となるヒ素化
合物含有水には特に制限はなく、本発明はヒ酸、亜ヒ酸
や各種のヒ酸塩を含む各種のヒ素化合物含有水に適用す
ることができる。また、この処理対象水のAs濃度につ
いても特に制限はないが、本発明は特にAs濃度400
0μmol/L以下(As濃度:300mg/L以下)
の低濃度ヒ素化合物含有水に適用した場合、従来の吸着
剤に比べて著しく高い除去効果を得ることができる。
【0025】
【実施例】以下に製造例、実施例及び比較例を挙げて本
発明をより具体的に説明する。
【0026】製造例1:ジルコニウム系メソ構造体の調
製 ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(HT
AB)(C1633N(CH33Br)1.91gを純水
65mLに溶解した液に、硫酸ジルコニウム(Zr(S
42・4H2O)3.76gを純水12mLに溶解さ
せた溶液を加え、室温で2時間攪拌した後、この液を密
閉容器に入れ、100℃で48時間熟成させた。反応生
成物を濾別、洗浄した後、100℃で3時間乾燥させて
粉末状のジルコニウム系メソ構造体を得た。得られたジ
ルコニウム系メソ構造体の細孔径Dは、20〜50nm
の範囲であり、HTAB含有量は39重量%であり、H
TABの断面の直径は30〜40nmであった。
【0027】実施例1:ヒ素化合物含有水からのヒ素化
合物の吸着除去試験 ヒ素化合物として60%H3AsO4溶液を用い、As濃
度5〜300mg/Lの範囲で所定の濃度に調整した水
溶液60mL(NH4OHとHClを用いてpH4.5
に調整)を試験液とし、この液に、吸着剤として製造例
1で調整したジルコニウム系メソ構造体の所定量(0.
006〜0.6g)添加し、30℃の水浴中で18時間
攪拌した。その後、吸着剤を濾別した後、濾液中のAs
濃度をICP又は偏光ゼーマン原子吸光光度計を用いて
測定した。ジルコニウム系メソ構造体に吸着したAs量
は上記試験液の初期As量から濾液中に残存したAs量
を差し引いて算出した。
【0028】この結果を平衡濃度と平衡吸着量の関係と
して図1に示した。
【0029】比較例1〜7:ヒ素化合物含有水からのヒ
素化合物の吸着除去試験 吸着剤として、水酸化ランタン(比較例1)、炭酸ラン
タン(比較例2)、塩基性炭酸ランタン(比較例3)、
活性アルミナA(比較例4)、活性アルミナB(比較例
5)、活性炭A(比較例6)、活性炭B(比較例7)を
それぞれ用い、実施例1と同様の条件で吸着試験を行
い、結果を図1に示した。
【0030】図1より、本発明で用いるジルコニウム系
メソ構造体によれば、As濃度4000μmol/L
(As:300mg/L)以下の低濃度域において、従
来の吸着剤のいずれのものよりも優れた吸着性能を得る
ことができることが明らかである。
【0031】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のヒ素化合物
の除去方法及び吸着剤によれば、水中のヒ素化合物を、
少ない吸着剤使用量で容易かつ効率的に極低濃度にまで
吸着除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例1〜7のヒ素化合物吸着試
験結果(平衡濃度と平衡吸着量との関係)を示すグラフ
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北川 博一 北海道札幌市北区北7条西5丁目6−1 ストークマンション札幌 1106 Fターム(参考) 4D017 AA01 BA13 CA11 CB01 DA07 4D024 AA02 AA05 AB17 BA14 BA16 BB01 BC04 DB03 DB12 4G066 AA21B AB23B CA46

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水中のヒ素化合物をジルコニウム系メソ
    構造体からなる吸着剤と接触させることを特徴とするヒ
    素化合物の除去方法。
  2. 【請求項2】 ジルコニウム系メソ構造体からなるヒ素
    化合物用吸着剤。
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