JP2000167029A - 放射線照射装置 - Google Patents

放射線照射装置

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JP2000167029A
JP2000167029A JP10342044A JP34204498A JP2000167029A JP 2000167029 A JP2000167029 A JP 2000167029A JP 10342044 A JP10342044 A JP 10342044A JP 34204498 A JP34204498 A JP 34204498A JP 2000167029 A JP2000167029 A JP 2000167029A
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radiation
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irradiating
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Katsuichi Kimura
勝一 木村
Takeshi Hirano
剛 平野
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Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 食品等の殺菌等を行う放射線照射において、
被照射物全体での一様な線量分布を実現する照射条件を
自動的に求める。 【解決手段】 X線CTユニット6により被照射物2の
断層像を撮影し、照射条件決定部8はその断層像に基づ
く被照射物2の密度分布を取得する。照射条件決定部8
は、密度分布に基づいて、被照射物2内部での線量分布
の変動が所定幅に抑制される照射条件を探索する。照射
制御部16は当該照射条件に基づいて放射線照射ユニッ
ト14を制御し、ベルトコンベア10により放射線照射
ユニット14へ搬送された被照射物2に当該照射条件に
従った放射線照射が行われる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放射線照射装置に
関し、特に放射線の照射による確実な滅菌、殺菌、殺虫
又は発芽防止の実現に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、人工透析器、注射針や手術用手袋
或いは医薬品容器等の医療用器具を使用する前に滅菌す
るために放射線を照射する装置があった。この装置で
は、放射線は医療用器具を収納したケースに向けて照射
される。この場合、ケース内の物質の密度は均一ではな
いため、ケース内の各点での放射線線量を計算によって
単純に求めることが難しい。そこで、実際に放射線を照
射してケース内の各点での線量を測定するという方法に
よって、ケースの中に収納した医療用器具がそのケース
内での配置に係わらず確実に滅菌される照射条件を決定
する作業が予め行われる。
【0003】この作業は、具体的には、放射線感応性の
フィルム線量計等の小型の放射線センサを医療用器具と
共にケース内の複数位置に配置して放射線を照射し、放
射線センサによる各点の線量の測定値に基づいて適切な
照射条件を求めるというものであった。
【0004】一方、放射線は悪性腫瘍等の病気の治療に
も用いられている。この治療は、悪性腫瘍等の病巣に対
して放射線を照射し、病巣の細胞に放射線エネルギーを
吸収させ、その消滅を図るというものである。この治療
では、放射線の照射野・照射条件を定めるためにX線C
T(computed tomography)装置または画像が用いられ
る。すなわち、X線CT装置により患者体内の断層像を
撮影し、その断層像情報から病巣の位置を把握し、病巣
に対して放射線エネルギー吸収量を最大にしつつ、正常
組織の放射線エネルギー吸収量を最小とするように照射
野・照射条件が定められる。
【0005】このような細胞への放射線エネルギー付与
を中心とした放射線の作用を利用しようという検討が、
他の産業分野でも進められている。例えば、FAO(Fo
od and Agriculture Organization of the United Nati
ons:国連食糧農業機関)/WHO(World Health Orga
nization:世界保健機構)合同国際食品規格委員会(C
AC)では、放射線の食品照射の応用分野として、腐敗
菌及び病原菌の殺菌、害虫及び寄生虫の殺滅、発芽抑
制、貯蔵期間延長といった用途に対して、それぞれ線量
の規格基準を準備している。そこには、それら用途によ
り安全な食品保存を可能として、世界の重要課題である
食糧問題の解決策としようという狙いがある。
【0006】また、近年の他の動向の一例を挙げれば、
現在、我が国をはじめ諸外国で植物検疫処理において害
虫・寄生虫の殺滅に用いられている臭化メチルの全廃が
ある。臭化メチルはオゾン層破壊物質であることから、
その使用および生産が国際的に廃止される方向であり、
それに代わる方法として放射線照射が有望視されてい
る。ちなみに、植物検疫の対象となる我が国への輸入物
は、切り花、香辛料・生薬、フルーツ、穀類、木材の
他、多品種にわたっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来の医療用器
具等の滅菌におけるような、予め放射線センサを用いて
照射条件を定めるという方法は、好適な条件を定めるの
に一般に試行錯誤を繰り返す必要があり、手間が掛かる
という問題があった。特に放射線センサにフィルムなど
のリアルタイムで計測値が得られないものを用いた場合
には、条件決定に長期間を要するおそれがあるという問
題があった。これらの問題は、従来の医療用器具のよう
に被照射物が限られた種類であり、一旦決定した条件で
同様の照射を何度も行う場合には、まだ許容しうるもの
であったかもしれない。しかし、検疫などのように、被
照射物が多品種また様々な形態で梱包され得る場合に
は、上記従来の条件出しの方法の煩雑さの問題は無視で
きないものとなる。
【0008】また、従来の医療用器具の場合には、X線
或いはガンマ線を用いても被照射物が放射化されること
はないため、基本的には滅菌に充分な強度の放射線を当
てることができる。つまり、照射条件決定に際して、ケ
ース内の最も線量が少ない部分で充分に滅菌が行われる
ことが重要であり、ケース内での線量分布に強い部分が
あっても基本的には問題ではなく線量の均一性に対する
要求は緩やかである。しかし、被照射物が食品や植物な
どの場合には、それらに付着した滅殺の対象となる菌や
害虫等と同様、それ自身も放射線の影響を受けうる。つ
まり、これら被照射物に過度の放射線が照射されると、
化学的変化などにより例えば味、色彩、臭いなどが変化
し、食品としての安全性や栄養が劣化したり、花が枯れ
たりするといった不都合が生じる。そのため、これらの
被照射物に関しては、被照射物が受けるダメージが許容
範囲内であって、かつ目的とする滅菌等が充分に行われ
るという照射条件が要求される。その条件の幅は一般に
それほど大きくはないため、被照射領域内での線量の均
一化を図る必要がある。このような制約条件が加わった
場合には、上記従来の試行錯誤的な方法で条件出しを行
うことには一層の困難さが伴う。
【0009】一方、上述の従来の放射線治療システム
は、照射目標領域を特定するためにX線CT装置を用い
た断層像を利用し、そしてその特定の目標領域にのみ放
射線を集中させ、正常組織には極力、放射線が照射され
ないように照射野・照射条件を定める。そのため、その
ままでは被照射領域全体での線量の均一化が要求される
用途で照射条件を決定することができないという問題が
あった。
【0010】本発明は上記問題点を解消するためになさ
れたもので、被照射物の全体での放射線の線量分布の均
一化が図られる照射条件を自動的に決定することがで
き、条件決定における省力化が実現される放射線照射装
置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る放射線照射
装置は、放射線照射方向の断層像を撮影し被照射物の密
度分布を取得する断層撮影手段と、前記密度分布に基づ
いて前記被照射物中での照射放射線の線量分布の変動を
所定の基準幅以下に抑制するように照射条件を定める照
射条件決定手段とを有し、放射線照射手段を制御して前
記照射条件に応じた放射線照射を実施することを特徴と
する。
【0012】本発明に係る放射線照射装置においては、
前記放射線照射手段が、放射可能な放射線種として電子
線またはX線またはその両方を有し、前記照射条件決定
手段は前記放射線種を含めた前記照射条件を求めること
を特徴とする。
【0013】本発明に係る放射線照射装置は、前記被照
射物を前記断層撮影手段から前記放射線照射手段へ搬送
すると共に前記被照射物が必要照射線量と前記放射線照
射手段の放射線出力とに応じた速度で前記放射線照射手
段を通過するように駆動される搬送手段を有することを
特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について
図面を参照して説明する。
【0015】[実施の形態1]図1は、本発明の実施の
形態である植物検疫処理用放射線照射装置の概略のブロ
ック図である。ここで、被照射物2は輸入されてきた切
り花、香辛料・生薬、フルーツ、穀類、木材等であり、
それらの多くは箱を用いて梱包されている。その箱の形
状(例えば高さ、幅、奥行きの寸法)や材質、厚さは、
収納される品種毎に様々であるし、また、品種によって
は小単位に梱包されたものが箱内に配列されている場合
もある。検疫官の抽出検査等により害虫の殺滅等の処理
が必要と判断された輸入物が被照射物2として本装置へ
運ばれてくる。
【0016】被照射物2は、ベルトコンベア4に載せら
れて、断層撮影手段であるX線CTユニット6のスキャ
ナ機構部(ガントリ)中央の空洞に搬入される。X線C
Tユニット6は被照射物2を細いX線ビームで多方向か
ら走査し、透過データに基づいて被照射物2の断層像を
再構成する。この断層像は、X線が照射された被照射物
2の断面の各点でのCT値のデータである。CT値は密
度に応じた値であり、断層像は当該断面上での被照射物
2の密度分布に対応するものである。断層像は、被照射
物2をガントリ中央の空洞内を入口側から出口側へ移動
させながら被照射物2の複数箇所で撮影される。これに
より、被照射物2の3次元的な密度分布情報が取得され
る。
【0017】X線CTユニット6での断層像データの取
得が終了すると、断層像データは照射条件決定部8(照
射条件決定手段)に渡される。一方、被照射物2はベル
トコンベア10に載せられ、放射線防護壁で囲まれたシ
ールドルーム12内の放射線照射ユニット14を通過さ
せられる。
【0018】照射条件決定部8は断層像データを利用し
て照射条件を決定し、照射制御部16は照射条件決定部
8が決定した照射条件に従って放射線照射ユニット14
を制御する。放射線照射ユニット14は放射線照射手段
であり、被照射物2がベルトコンベア10に載って放射
線照射ユニット14内を移動する間に被照射物2に放射
線を照射し、被照射物2の害虫殺滅等の処理を行う。
【0019】本装置では放射線照射ユニット14は、放
射線としてX線又は電子線のいずれかを照射できる放射
線照射ヘッドを複数門有し、それら放射線照射ヘッドは
互いに異なる方向からベルトコンベア10を臨むように
配置される。例えば、放射線照射ヘッドが2門の場合に
は、それらはベルトコンベア10を中心に対向配置さ
れ、3門の場合にはベルトコンベア10を中心に120
°ずつずらして配置され、また4門の場合にはベルトコ
ンベア10に直交する2軸上にそれぞれ対向配置され
る。また、各放射線照射ヘッドからの放射線のエネルギ
ーは互いに独立に変更することができる。このような構
成は、例えば、高エネルギー放射線治療で従来より用い
られている線型加速器等の加速器を複数用いて構成する
ことができる。
【0020】本装置の放射線照射ユニット14は、放射
線のエネルギーE、照射方向θ及び照射線量Rの3つの
条件を制御可能な照射条件として有する。照射線量R
は、放射線照射ユニット14の放射線出力Iと照射時間
tとの積で表されるので、I又はtを制御することによ
りRを制御することができる。照射時間tは、放射線照
射ユニット14そのものの放射線出力時間により制御す
ることもできるし、ベルトコンベア10の移動速度を制
御して放射線照射位置の通過時間を操作することにより
制御することもできる。
【0021】放射線照射ユニット14で放射線照射が完
了した被照射物2はベルトコンベア10により放射線照
射ユニット14から取り出され、シールドルーム12か
ら搬出される。
【0022】さて、本装置の特徴の一つは、照射条件決
定部8が、断層像データに表される被照射物2の密度分
布情報に基づいて、放射線照射ユニット14による照射
放射線の被照射物2中での線量分布のばらつきが所定の
基準値以下となるような照射条件を探索する点にある。
以下、この点について説明する。
【0023】図2は、照射条件決定部8の処理の概略を
示すフロー図である。上述したようにX線CTユニット
6が撮影した断層像データは照射条件決定部8へ送られ
る。照射条件決定部8は、一つの被照射物2に対して処
理を開始すると初期条件を設定すると共に(S50)、
X線CTユニット6から断層像データを取得する(S5
1)。以降、適切な吸収線量分布D(r)を与える照射条
件Cの解が得られるか、解なしの結果が得られるまで、
照射条件を変更しながら処理S52〜S64が繰り返さ
れる。
【0024】処理開始時には、いずれの照射条件Cにつ
いても線量分布計算は実行されていないので一般に未計
算の照射条件Cが存在し(S52)、照射条件変更ステ
ップS54に分岐し、照射条件S54においては照射条
件Cの変更の代わりに照射条件Cの初期値設定が行われ
る。ちなみに、照射条件Cは、ここでは各放射線照射ヘ
ッドそれぞれについての上述したエネルギーE、照射方
向θ及び照射線量Rの3つのパラメータの組み合わせで
ある。
【0025】照射条件決定部8は、断層像データとして
取得された被照射物2の密度分布データであるCT値
と、設定された照射条件Cとに基づいてシミュレーショ
ン計算を行い被照射物2の内部での吸収線量の3次元分
布D(r)を求める(S56)。ここでrは三次元座標を
表す。線量分布のシミュレーションの計算方法として
は、X線、電子線それぞれについて、経験データを取り
入れた方法から物理的現象を忠実に計算する方法に至る
まで様々なものが知られており、それらのうち許容され
る計算コストや要求される計算の精度又は放射線照射制
御の精度に基づいて適当なものを採用することができ
る。本装置では、複数の放射線照射ヘッドにより互いに
異なる方向から照射が行われるため、吸収線量分布D
(r)はそれら各ヘッドに起因する吸収線量を合成したも
のとなる。
【0026】設定された照射条件Cに対して吸収線量分
布が求まると、当該分布の変動が要求される基準幅に収
まっているかどうかが評価される(S58)。要求され
る条件としては、例えば、吸収線量分布が被照射物2内
において、所定の上限・下限で定められる目標範囲内に
収まっていることが挙げられる。この上限は、被照射物
2が食品や植物である場合には基本的に、当該被照射物
が受けるダメージが許容される程度以下であることに基
づいて定められる。一方、下限は、放射線照射処理の目
的である滅菌等が充分に行われることに基づいて定めら
れる。よって基本的に、上限は被照射物2の品種の耐放
射線性に依存し、下限は菌や害虫の種類の耐放射線性に
依存して定められるであろう。
【0027】照射条件決定部8は、他の照射条件との比
較の便宜のために処理S58において評価値Aを算出す
る。この実施形態では評価値Aは具体的には、全ての照
射条件Cについて吸収線量分布D(r)の変動が目標範囲
に収まっているという解が得られなかった場合におい
て、解ではないが最良と考えられる照射条件Cを選択し
て操作者に通知する際に利用される。
【0028】提供評価値Aは例えば、処理S56で得ら
れた吸収線量分布D(r)と目標範囲の中間値との差の二
乗を被照射物2内の空間Vにわたって(すなわちVに含
まれる座標rについて)積分した値を採用する。評価値
Aは小さい程、概して分布D(r)は目標範囲内に収まっ
ている割合が高く、また均一度(一様さ)も高いことが
期待される。
【0029】また、他の評価値Aの定義として、分布D
(r)の値が目標範囲から逸脱している空間について、そ
の逸脱量の絶対値の積分又は二乗積分を計算し、これを
採用することも好適である。この場合も評価値Aが小さ
いほど分布D(r)が目標範囲内に収まっていると言え、
その分布の好適さの判断に使用することができる。
【0030】照射条件決定部8は評価値Aの最小値A
bestとそれを実現する照射条件Cbestを記憶する。そし
て現照射条件Cについての評価値AがAbestより小さい
場合には(S60)、Cbest,Abestをそれぞれ現照射
条件Cとそれに対する評価値Aとで更新する(S6
2)。処理S58において分布D(r)が目標範囲内であ
ったかどうかが、処理S62に続く判断処理S64にて
判断され、目標範囲内であった場合には現照射条件Cを
照射制御部16へ出力し(S66)、現被照射物2につ
いての照射条件決定処理を終了する。
【0031】一方、処理S60において、現評価値Aが
最小値Abest以上であった場合には、評価値等の更新処
理S62を行わずに、直ちに判断処理S64に分岐す
る。評価値Aが最小ではなくても、分布D(r)の変動が
目標範囲内であれば解であるので、対応する照射条件C
を照射制御部16へ出力して(S66)処理を終了す
る。ちなみに、処理S60にて評価値Aが最小と判定さ
れても、解判定処理S64を行うのは、評価値Aの定義
によっては、評価値が最小であることと解であることと
が一致しない場合があるからである。例えば、上記2つ
の評価値Aの定義例のうち前者がこの場合に相当する。
また、評価値Aの定義によっては、評価値が最小でない
場合には解とはなり得ないことが明らかである場合もあ
り、その場合には処理S60から直ちに処理S52に分
岐させることができる。例えば、上記2つの評価値Aの
定義例のうち後者がこの場合に相当する。
【0032】判断処理S64において、分布D(r)の変
動が目標範囲外に及ぶことが検知された場合には、対応
する照射条件Cは解としての資格がないので、次の照射
条件Cについての処理に移行する(S52)。
【0033】もし、判断処理S52において、全ての許
される照射条件Cについての計算が完了したと判断され
た場合には、解となる照射条件Cを見出すことができな
かったことになる。この場合には、解なしである旨、及
び探索した照射範囲内で評価値が最小となる照射条件C
bestと当該最小値Abestとを参考のため操作者に通知し
(S68)、当該被照射物2についての照射条件決定処
理を終了する。
【0034】なお、上記処理手順では、計算コストの抑
制のため、ある一つの照射条件Cが解判定処理S64に
合格すると、それを解として処理を打ち切った。しか
し、考えられる全ての照射条件Cについて分布の変動幅
を評価し(S58)、解判定処理S64に合格する全て
の照射条件Cを抽出し、その中で最も好適なものを解と
して選択するように構成することもできる。その選択に
おいては、例えば変動幅が最も小さいもの、すなわち吸
収線量分布D(r)の一様さがより高いものが選ばれる。
【0035】照射条件CはエネルギーEについては、例
えば電子線については1〜10MeVの範囲で1MeV
単位で変更され、X線については1〜5MVの範囲で1
MV単位で変更される。照射線量についても、適当な範
囲内で段階的に変更される。なお、処理S54における
照射条件Cの変更の際、パラメータの可能な値の組み合
わせを単純に機械的に順次、設定することもできるが、
処理S58での分布D(r)の評価結果をフィードバック
することにより、解を得るまでの時間を短縮することが
可能である。例えば、分布D(r)が被照射物2の上側で
は目標範囲内であるが、下側で目標範囲以下となった場
合には、下側に配置された放射線照射ヘッドのエネルギ
ーE又は照射線量Rの値を増加させた照射条件Cを処理
S54で設定するようにする。
【0036】目標範囲は、上述したように被照射物2が
何であるかと殺滅対象となる菌や害虫が何であるかに依
存するところが大きいが、例えば、検疫処理においては
10%程度の吸収線量の変動幅に抑えることが要求され
ることが多い。
【0037】ちなみに、図3、図4はそれぞれX線深部
量百分率曲線、電子線深部量百分率曲線を表すグラフで
ある。これらにはそれぞれエネルギーをパラメータとし
て複数の曲線が示されている。横軸が水中での透過距離
を表し、縦軸が各エネルギーの吸収線量の最大値を10
0%とした相対的な吸収線量を表している。
【0038】被照射物2の箱の内容物が図3,4の横軸
のどの範囲に位置するかは、箱の壁の厚さや材質に依存
するが、例えば、E=4MVのX線の場合、水に換算し
て2〜3cm程度は10%の変動幅に収まり得る。被照
射物2の内容物が切り花などのように比較的隙間が多い
場合には、実質的により広い深さ範囲で10%の変動幅
に収まり得るであろう。本装置では、その内容物の疎密
の状態をX線CTユニット6で得た断層像データから把
握し、それを用いて、照射に先だって計算により例えば
変動幅を10%以下とする照射条件を求めることができ
る。また、さらに幅広い深さ範囲で一様さを確保したい
場合には、対向する方向から照射を行い、それぞれの吸
収線量分布を相補的に重ね合わせればよいことが定性的
には明かである。この場合にも、本装置では、被照射物
2の密度分布を考慮して好適な照射条件を具体的に求め
ることができる。
【0039】なお、ここでは被照射物2の個々について
それぞれ断層像を撮影し照射条件を決定する処理を行う
場合を説明したが、被照射物2として同一品種のものが
連続して投入される場合など、照射条件として同一のも
のを用いてもよい場合がある。その場合には、例えば1
つの被照射物2についてのみ、X線CTユニット6を用
いて断層像を撮影し、照射条件決定部8が照射条件を決
定し、以降の照射条件が同一とみなすことができる被照
射物2に対しては断層像撮影及び照射条件決定処理を省
略することとしてもよい。
【0040】また、ここでは、各放射線照射ヘッドにお
ける照射線量Rは一つの被照射物2に対しては水平方向
面内に関して平坦な強度で照射される場合を説明した。
しかし、ベルトコンベア10の移動に応じて照射線量R
を変化させるようにしてもよい。これは例えば、ベルト
コンベア10の移動速度を操作して照射時間tを変動さ
せることにより実現することができる。移動方向につい
ての照射線量Rの変化を許容することにより照射条件探
索の自由度が増えるため、より適切な照射条件が得られ
やすい。
【0041】また、ここでは断層撮影手段としてX線C
Tを用いた例を示したが、他の非破壊断層撮影手段を用
いてもよい。例えば、医療の分野で活用されている核磁
気共鳴断層撮影法(MRI)を利用することもできる。
【0042】上述の構成は、放射線照射ヘッドを複数有
し、異なる方向からの照射を並列して行うことができる
構成であり、処理能力が高い。これに対して、異なる方
向からの照射を1門の放射線照射ヘッドで構成すること
も可能である。具体的には、その構成は現在、放射線治
療システムでよく見かけるように、放射線照射ヘッドが
ベルトコンベア10の周囲を回転可能なような構成で実
現される。この場合には被照射物2を放射線照射位置で
停止させて、ヘッドを回転させて順次異なる方向からの
照射が行われる。この構成は、上記独立な複数の加速器
を用いる構成より一般に処理能力は低下するが、加速器
の1台で構成することができるため、放射線照射ユニッ
ト14の小型化・低コスト化には有利であろう。
【0043】[実施の形態2]図5は、本発明の第2の
実施の形態である植物検疫処理用放射線照射装置の概略
のブロック図である。図において、上記実施の形態と同
様の構成要素には、同一の符号を付し説明を省略する。
本装置が上記実施の形態の装置と主として異なる点は、
放射線種の異なる複数の放射線照射ユニットを有してい
ることである。具体的には本装置は、電子線を照射可能
な放射線照射ユニットである電子線照射ユニット100
と、X線を照射可能な放射線照射ユニットであるX線照
射ユニット102とをシールドルーム12内に備えてい
る。
【0044】それら電子線照射ユニット100、X線照
射ユニット102は直列に配置され、被照射物2がベル
トコンベアで順に通過するように構成することもできる
が、ここでは図に示すような並列に配置した構成を説明
する。
【0045】X線CTユニット6からベルトコンベア1
0でシールドルーム12内に搬入された被照射物2は、
ベルトコンベア10の終端に設けられた振り分け手段1
04により、電子線照射ユニット100を通過するベル
トコンベア106とX線照射ユニット102を通過する
ベルトコンベア108とのいずれかに載せ替えられる。
振り分け手段104は例えばターンテーブルであり、照
射制御部110により制御される。
【0046】本装置は電子線とX線との2種類の放射線
を照射可能であることに対応して、照射条件決定部8は
照射条件Cの放射線種Pをパラメータとして含んでい
る。つまり、照射条件Cは、電子線照射ユニット10
0、X線照射ユニット102のエネルギーE、照射方向
θ及び照射線量Rの3つの条件に加えて、それらいずれ
の放射線照射ユニットを選択するかを条件の一つとして
含んでいる。
【0047】本装置の照射条件決定部8における照射条
件決定処理は、上記実施の形態と基本的には同様のフロ
ーで行われる。但し、その中で、放射線種Pが考慮され
る点が上記実施の形態と異なる点である。
【0048】図3、図4に示したように、X線と電子線
とでは深部量百分率曲線が大きく異なる。これは周知の
ように透過力がX線と電子線とでは大きく異なるためで
ある。この放射線の特性により、透過力が必要とされる
被照射物2に対する照射にはX線が適し、比較的透過力
が必要とされない被照射物2に対する照射には電子線で
もよいといえる。この必要とされる透過力は、概して箱
の大きさ(照射方向の寸法)に比例する傾向はあるが、
単純にそれだけでは精度良く決められない。本装置で
は、必要とされる透過力はX線CTユニット6で得られ
た断層像データを用いて精度良く決定できる。
【0049】また、放射線照射ユニットで用いる加速器
では、荷電粒子しか加速することができない。つまりX
線照射ユニット102では、電子線照射ユニット100
と同様の加速器を用いて電子を加速し、その電子をター
ゲットに当て、電子の制動放射により発生するX線を利
用する。そのためX線のエネルギーは元の電子のエネル
ギー以上とはなり得ず、例えば、エネルギー5MeVの
電子で発生させたX線のエネルギー変換効率はおよそ7
%程度である。よって、照射放射線として、電子線とX
線との両方で照射条件の解が得られる場合には、電子線
を使用する方がエネルギー効率がよい。
【0050】照射条件決定部8は、断層像データから得
た必要透過力が所定値以下である場合には、エネルギー
効率のよい電子線を用いる照射条件Cを優先的に探索す
る。もし、電子線を用いる照射条件Cが見出されなかっ
た場合には、X線を用いる照射条件で探索を行う。一
方、必要透過力が所定値より大きい場合には、当初より
X線を用いる照射条件Cの範囲内で解を探索する。この
ような手順により、エネルギー効率のよい解を効率的に
見つけることができる。
【0051】例えば、被照射物2の内容物がイチゴであ
る場合には、そのパックを箱内に多段に積み重ねること
ができないため、平たい箱形状となる。その上面に垂直
な方向からの照射に関する照射条件には電子線を用いる
という解が得られる可能性がある。一方、被照射物2の
内容物が例えば、グレープフルーツのように大きく、ま
た比較的水分を多く含み箱内に多段に積み重ねることが
できるような物の場合には、透過力を有するX線を用い
る解が得られるであろう。
【0052】なお、放射線の生物学的効果は、吸収線量
が同じでも放射線種によって異なる。この生物学的効果
を含めて表す指標として線量当量という概念がある。し
かし、X線と電子線との生物学的効果の違いを修正する
線質係数は近似的に1である、つまりX線と電子線とは
吸収線量が同じであれば生物学的効果は近似的に等しい
とみなしてよく、本実施の形態の照射条件決定部8で
は、線量当量の代わりに吸収線量を用いて照射条件を決
定している。
【0053】
【発明の効果】本発明の放射線照射装置によれば、被照
射物の内部の吸収線量の分布の変動が抑制される照射条
件が、断層撮影手段で得られた被照射物の密度分布を利
用して計算により予め決定され、それに基づいて放射線
照射が行われる。これにより、植物や食品等の被照射物
のダメージを防ぎつつそれに付着した菌や害虫を殺滅す
ることを当該被照射物全体にわたって可能とする一様な
放射線照射が容易に実現され、よって照射条件の決定の
作業が省力できるという効果と、被照射物に対する放射
線照射処理が適正・確実に行われ、例えば食品等の被照
射物の安全性が確保されるという効果が得られる。
【0054】本発明の放射線照射装置によれば、放射線
種として、物質中での吸収線量の曲線が互いに異なる電
子線とX線とを有するので、より適切な照射条件を見つ
けやすくなるという効果が得られる。
【0055】本発明の放射線照射装置によれば、放射線
照射手段を通過するように被照射物を搬送する搬送手段
を有し、その速度に応じて照射線量を容易に調整できる
という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態である植物検疫処
理用放射線照射装置の概略のブロック図である。
【図2】 照射条件決定部の処理の概略を示すフロー図
である。
【図3】 X線深部量百分率曲線を表すグラフである。
【図4】 電子線深部量百分率曲線を表すグラフであ
る。
【図5】 本発明の第2の実施の形態である植物検疫処
理用放射線照射装置の概略のブロック図である。
【符号の説明】
2 被照射物、6 X線CTユニット、8 照射条件決
定部、10 ベルトコンベア、14 放射線照射ユニッ
ト、16 照射制御部、100 電子線照射ユニット、
102 X線照射ユニット。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B021 LA07 LP10 LT02 LT03 LT06 LW02 LW07 LW09 4C058 AA12 AA30 BB06 CC01 CC02 KK03 KK21 KK32

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 放射線を照射して滅菌、殺菌、殺虫又は
    発芽防止を行う放射線照射装置において、 放射線照射方向の断層像を撮影し被照射物の密度分布を
    取得する断層撮影手段と、 前記密度分布に基づいて、前記被照射物中での照射放射
    線の線量分布の変動を所定の基準幅以下に抑制するよう
    に照射条件を定める照射条件決定手段と、 を有し、放射線照射手段を制御して前記照射条件に応じ
    た放射線照射を実施することを特徴とする放射線照射装
    置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の放射線照射装置におい
    て、 前記放射線照射手段は、放射可能な放射線種として電子
    線またはX線またはその両方を有し、 前記照射条件決定手段は、前記放射線種を含めた前記照
    射条件を求めること、 を特徴とする放射線照射装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の放射線照
    射装置において、 前記被照射物を前記断層撮影手段から前記放射線照射手
    段へ搬送すると共に、前記被照射物が必要照射線量と前
    記放射線照射手段の放射線出力とに応じた速度で前記放
    射線照射手段を通過するように駆動される搬送手段を有
    すること、 を特徴とする放射線照射装置。
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