JP2000159799A - 副甲状腺ホルモンに対するヒトモノクローナル抗体 - Google Patents

副甲状腺ホルモンに対するヒトモノクローナル抗体

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JP2000159799A
JP2000159799A JP10337263A JP33726398A JP2000159799A JP 2000159799 A JP2000159799 A JP 2000159799A JP 10337263 A JP10337263 A JP 10337263A JP 33726398 A JP33726398 A JP 33726398A JP 2000159799 A JP2000159799 A JP 2000159799A
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human monoclonal
pth
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Nobuaki Hori
伸明 堀
Kyoko Uehara
京子 上原
Chihiro Kusunoki
千洋 楠
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 ヒト副甲状腺ホルモン(PTH)の生物活性を
抑制する活性を有し、ヒトPTHの合成・分泌の亢進を伴
う種々の疾患の治療または予防において有用なヒトPTH
に対する種々のヒトモノクローナル抗体及びその医薬組
成物を提供するものである。 【解決手段】 遺伝子組換え技術を用いて作製したヒト
抗体産生トランスジェニックマウスをヒトPTHで免疫す
ることにより、抗原特異性、抗原親和性及びPTHの生物
機能の中和活性等の性質の点で各々異なる特性を有する
ヒトPTHに対する種々のヒトモノクローナル抗体を調製
した。これらのヒトモノクローナル抗体は、マウス抗
体、マウス/ヒトキメラ抗体及びCDR-grafted抗体等の
従来の非ヒト由来抗体が治療学上の大きな欠点として有
していたヒトに対する免疫原性等の副作用を惹起するこ
とがないことから抗体医薬品として極めて有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒト副甲状腺ホル
モン(Parathyroid Hormone、Parathormone、PTH)また
はその一部に反応性を有するヒトモノクローナル抗体、
該ヒトモノクローナル抗体を産生する細胞、及び該ヒト
モノクローナル抗体を含んでなる医薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】正常な哺乳動物の血清カルシウム濃度
は、厳格に約9〜10mg/100ml(約2.5mM)に維持されてお
り、これを生体のカルシウムホメオスタシス(calcium
homeostasis)と呼ぶ。この値が50%以下に低下する
と、テタニー(強直)を起こし、逆に50%上昇すると意
識の混濁を起こし、いずれの場合も生命を脅かす状態と
なる。このカルシウムホメオスタシスの維持には、十二
指腸がカルシウムの取込み器官として、骨がカルシウム
の貯蔵器官として、また腎臓がカルシウムの排泄器官と
してそれぞれ役割を担っている。さらに、そのようなカ
ルシウム動態の制御は、「カルシウム調節ホルモン」と
総称される種々のホルモンにより行われており、代表的
ホルモンには、活性型ビタミンD[1α,25(OH)2D3]、
副甲状腺ホルモン(Parathyroid Hormone, PTH)、カル
シトニン及びPTHrP(Parathyroid Hormone-Related Pro
tein, PTH-related Protein, PTHrP)などが挙げられ
る。
【0003】骨は、生体の支持組織として、及び運動器
官としての役割のみならず、その構成成分であるカルシ
ウムの貯蔵器官としての重要な役割を担っている。その
ような機能を果たすために、骨組織は、一生涯の間、そ
の形成(骨形成)と吸収(骨吸収)を繰り返している。
骨形成は、間葉系細胞由来の骨芽細胞が、また骨吸収
は、造血系細胞由来の破骨細胞が主な役割を担ってい
る。骨形成は、骨形成表面に存在する骨芽細胞が産生す
る骨有機質(I型コラーゲンなどの骨基質蛋白)による
類骨の形成とそれに引き続く石灰化を経るメカニズムで
ある。一方、骨吸収は、破骨細胞が骨表面に付着し、酸
分泌及びイオン輸送を介して細胞内にカルシウムを吸収
し、吸収したカルシウムを骨髄側に排出することによ
り、血中にカルシウムの送り出すメカニズムである。破
骨細胞により吸収された骨の欠損部は、骨芽細胞による
骨形成により修復される。このような一連の現象は、骨
のリモデリングと呼ばれ、リモデリングにより、古い骨
が新しい骨に置換され、骨全体の強度が維持されるとと
もに、カルシウムホメオスタシスが維持されている。
【0004】このような骨のリモデリング及びカルシウ
ムホメオスタシスに重要な役割を果たす骨芽細胞と破骨
細胞の生成(未熟細胞からの分化、誘導、増殖)には、
種々の因子(骨代謝調節ホルモン、骨形成制御サイトカ
イン、骨吸収制御サイトカインなど)が関与している。
骨代謝調節ホルモンとしては、ビタミンA、ビタミン
D、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺関連タンパク
(PTHrP)、カルシトニン、エストロゲン及びプロスタ
グランジンなどが挙げられる。
【0005】副甲状腺ホルモン(PTH)は、カルシウム
ホメオスタシスの維持において最も重要なホルモンであ
る。ヒトのPTHは、31アミノ酸配列からなるプレプロ
ペプチド(-31−-1)と引き続く84アミノ酸配列(PTH
(1-84))からなり、PTHの生物活性の発現に必要十分な
構造は、該PTH(1-84)のN末端側の1-34の領域(PTH(1-3
4))に保持されている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,
Vol.68, p.63, 1971;Endocrinology, Vol.93, p.134
9, 1973;Peptide and Protein Reviews, Vol.2, p.20
9, 1984)。PTHのホルモン作用は、骨や腎臓の細胞膜に
存在するPTH/PTHrP受容体(PTH及びPTHrPは同一の受容
体を共有する)に特異的に結合することにより発揮され
る。
【0006】PTHの最も重要な作用は、カルシウムホメ
オスタシスの維持であり、即ち、血中カルシウム濃度が
低下すると副甲状腺からPTHの分泌が直ちに促進され、
骨においては骨芽細胞に作用して(骨芽細胞による破骨
細胞の活性化、骨有機質分解酵素の産生など)破骨細胞
性再吸収を促進し、骨からカルシウムを動員し、また、
PTHは、腎臓においては、遠位尿細管でのカルシウムの
再吸収を促進するとともに、近位尿細管では25(OH)ビタ
ミンDを活性化して腸管からのカルシウム吸収を促進す
る機能を有する活性型ビタミンD[1α,25(OH)2D3]の
産生を促し、またリンの再吸収を抑制する。PTHの分泌
は、上述のような血清カルシウム濃度の低下のみなら
ず、血清マグネシウム濃度の低下、活性型ビタミンD
[1α,25(OH) 2D3]濃度の低下、交感神経のβ刺激ある
いはプロスタグランジンE2などによっても促進される。
一方、血中カルシウムイオン濃度が上昇すると、副甲状
腺からのPTHの分泌が直ちに抑制され、細胞外液へ供給
されるカルシウム量を減少させる(Brown, E.M., Homeo
static mechanisms regulating extracellular and int
racellular calcium metabolism, in The parathyroid
s, p.19, 1994, Raven press, New York)。PTHの分泌
はまた、活性型ビタミンD[1α,25(OH)2D3]によって
も抑制される。
【0007】このような生体のカルシウムホメオスタシ
スの維持に重要な役割を担うPTHではあるが、その過剰
な分泌が原因となって種々の疾患あるいは病状を惹起し
ていることもまた事実である。代表的疾患としては、例
えば、副甲状腺機能亢進症、異所性PTH産生腫瘍、腎性
骨異栄養症(繊維性骨炎)、先端肥大症、甲状腺機能亢
進症、ぺージェット病(Paget's Disease)、悪性腫
瘍、多発性骨髄腫、サルコイドーシス、ミルク・アルカ
リ症候群、及び家族性低カルシウム尿症性高カルシウム
血症などがあげられる。
【0008】副甲状腺機能亢進症には、原発性と続発性
(二次性)のものがある。原発性副甲状腺機能亢進症
は、副甲状腺の腫瘍や過形成により生理的必要量を超え
てPTHが分泌されることにより生じる疾患である。続発
性(二次性)副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺以外の先
行する疾患による血中カルシウムが低下にともないPTH
の分泌が促進されることにより生じる状態である。
【0009】原発性副甲状腺機能亢進症の原因として
は、副甲状腺腺腫によるものが約80%、副甲状腺の過
形成によるものが約15〜20%、及び癌によるものが
約1〜2%であると言われている。また、多発性内分泌
腺腫の一部としても認められる。この原発性副甲状腺機
能亢進症の臨床症状としては、(1)骨型(繊維性骨
炎、指骨の骨膜下吸収、頭蓋骨のsalt and pepper patt
ern、歯槽硬膜の消失、慢性骨減少症あるいは全身的び
まん性の骨石灰化など)、(2)腎・尿路結石型(腎臓
及び尿路における結石の形成)、及び(3)高カルシウ
ム血症型(全身倦怠、筋力低下、口渇、多飲、多尿、抑
うつ、嗜眠、意識障害、悪心、嘔吐、並びに潰瘍、慢性
膵炎等の消化器症状など)の3つに分類される(現代医
療、Vol.20,p.1572, 1988)。この原発性副甲状腺機能
亢進症において見られる他の病変としては、耐糖能異常
や高中性脂肪血症が挙げられる(医薬ジャーナル、Vol.
25, No.1, p.133, 1989)。
【0010】続発性副甲状腺機能亢進症の原因として
は、(1)リンの蓄積、(2)活性型ビタミンDの欠
乏、(3)活性型ビタミンDに対する感受性の低下(活
性型ビタミンD受容体の欠乏を含む)、(4)副甲状腺
のカルシウムに対する感受性の低下(カルシウム受容体
の異常を含む)、及び(5)骨のPTHに対する反応性の
低下(PTH受容体の異常)が挙げられる。リンの蓄積に
ついては、透析患者の場合には透析によるリンの排除が
唯一の有効な手段ではあるが透析のみでリンの蓄積を阻
止することは不可能であり、リン吸着剤としてのカルシ
ウム製剤を用いた透析あるいは低カルシウム透析液を用
いた透析によってもリンの蓄積を阻止する有効な方法と
しては確立されていない。
【0011】活性型ビタミンDは、直接及び間接的にPT
Hの合成・分泌を抑制するとともに、カルシウムの腸管
からの吸収と骨からの動員(骨吸収)を促進し、血中イ
オン化カルシウム濃度を上昇させる。この血中イオン化
カルシウム濃度の上昇を介して間接的にPTHの合成・分
泌を抑制する。即ち、PTHの合成・分泌は、血中活性型
ビタミンD濃度の上昇により抑制され、また血中活性型
ビタミンD濃度の低下により促進される。腎臓における
ビタミンDの活性化障害に起因する活性化ビタミンDの
欠乏は、主として3つのルート、即ち、(1)低カルシ
ウム血症、(2)活性型ビタミンDによる直接的なPTH
の合成・分泌抑制刺激の低下、及び(3)副甲状腺ビタ
ミンD受容体数の減少を介して二次性副甲状腺機能亢進
症を促進する。低カルシウム血症の是正は、活性型ビタ
ミンD製剤により一応の達成は得られてはいるものの、
該ビタミンD濃度をPTHの合成・分泌を抑制したりビタ
ミンD受容体数を増加できる生理的レベルに維持するこ
とは困難であり、透析患者においては活性型ビタミンD
の投与にも拘らず活性型ビタミンDが欠乏した状態にお
かれている。腎不全患者における副甲状腺活性型ビタミ
ンD受容体数の減少は、活性型ビタミンD濃度の低下の
以前、腎不全発症の初期から認められることから、ビタ
ミンD欠乏以外の他の腎不全病態が関与すると考えられ
ている。受容体数の減少を是正する手段としては、現在
のところ薬理学的濃度の活性型ビタミンDを投与する手
段しか知られていない。
【0012】続発性副甲状腺機能亢進症においては、高
カルシウムの場合であっても、PTHが高値を示す。これ
は、副甲状腺細胞のカルシウム受容体の異常による副甲
状腺細胞のカルシウムに対する感受性の低下にあり、こ
のカルシウム受容体の異常は、ビタミンD受容体数、ビ
タミンD濃度及びリン濃度が関与すると考えられてい
る。腎不全では、PTHの分泌が増加してもそれに見合っ
た骨吸収が進まず、血清カルシウム上昇が不十分とな
る。この現象は二次性副甲状腺機能亢進症の促進因子と
して作用するものの、二次性副甲状腺機能亢進症を合併
した透析患者では逆に高濃度のPTHから骨脱化を防止す
る作用を果たしているものと考えられている。この骨の
PTHに対する感受性の低下は、骨のビタミンD受容体やP
THの受容体の異常が原因であると推測されるが、この反
応性低下に対する有効な手段は未だ全く明らかにされて
いない。
【0013】この二次性副甲状腺機能亢進症は、腎性骨
症の主要な構成要因である繊維性骨炎の病因となるだけ
でなく、PTHの尿毒素としての広範な作用から、透析患
者のquality of lifeを阻害する重大な合併症である。P
THの尿毒素としての作用には、繊維性骨炎、中枢神経障
害、末梢神経障害、関節炎、関節周囲炎、腱断裂、貧血
(造血障害、赤血球寿命短縮)、心筋障害、心伝導障
害、肺拡散障害、脂質代謝異常、糖代謝異常、免疫不
全、掻痒症、及び性機能障害などがあげられる。
【0014】この二次性副甲状腺機能亢進症はさらに、
慢性腎不全に伴う骨代謝障害であり繊維性骨炎あるいは
高回転型骨症(骨吸収と骨形成が著しく亢進した骨病
変)とも呼ばれる腎性骨異栄養症(腎性骨症、renal os
teodystrophy、ROD)を引き起こす。この腎性骨異栄養
症は、骨組織学的には、(1)二次性副甲状腺機能亢進
症に伴う繊維性腎炎、(2)ビタミンD活性化障害によ
る骨軟化症、(3)アルミニウム沈着による骨軟化症及
び無形成骨、並びに(4)前記三者の混合型に分類する
ことができる。
【0015】近年、慢性腎不全の治療に透析療法が導入
されてからは、患者の生存期間が増加するようになった
反面、この腎性骨異栄養症の合併率が増加している(腎
と透析、Vol.36, No.6, p.1009, 1994)。この腎性骨異
栄養症は、疼痛性疾患や病的骨折を引き起こし、透析患
者の日常生活に支障を来すのみならず、生命予後をも左
右する重大な合併症として注目されている。1986年での
調査では、透析を10年以上継続している透析患者2,051
例における合併症のうち、骨及びカルシウム代謝異常が
最も頻度が高く、血管や軟部組織の異所性石灰化が29.1
%、骨折が6%、骨痛若しくは関節痛が36%であり、さ
らに副甲状腺摘出に到った患者は7.3%であった。ま
た、透析期間の延長とともに、骨・関節障害、副甲状腺
機能亢進症、透析アミロイドーシス、及び手根管症候群
などの合併症が増加し、これらが原因となる骨関節の運
動障害が増加する。
【0016】腎性骨異栄養症の主因は、上述した副甲状
腺過形成を伴う二次性副甲状腺機能亢進症である。この
二次性副甲状腺機能亢進症は、上述のとおり慢性腎不全
のような副甲状腺以外の先行する疾患に起因する種々の
原因によりPTHの合成・分泌が促進されることにより生
ずる。慢性腎不全患者における副甲状腺過形成は、二次
性副甲状腺機能亢進症と同義と言ってもよく、副甲状腺
の大きさの増大は、PTH等のホルモンの分泌量の増大に
つながる。前述のような二次性副甲状腺機能亢進症にお
けるPTHの合成・分泌刺激が持続することによって副甲
状腺の過形成が進行するものと考えられているが、原因
の詳細については未だ明らかではない。また、各種の悪
性新生物に見られる腫瘍の増殖パターンであるモノクロ
ーナルな増殖パターンが、慢性腎不全患者の60%以上
に見られることも事実であり、これは、PTHなどの各種
のホルモン合成・分泌促進因子や副甲状腺過形成因子の
刺激が持続することも影響しているものと考えられてい
る。しかしながら、腫瘍細胞の増殖と同様に、このよう
なモノクローナルな増殖パターンを抑制することは極め
て困難と考えられる。
【0017】上述のしたような、副甲状腺腫等に起因す
る原発性副甲状腺機能亢進症または慢性腎不全等に起因
する二次性副甲状腺機能亢進症、さらにはそのような副
甲状腺機能亢進症に伴い発症する腎性骨異栄養症等の種
々合併症は、いずれもPTHの合成・分泌の亢進あるいは
副甲状腺過形成によるPTHの分泌量の増大に起因するも
のであり、未だ明らかにされていない部分は多々あるも
のの、それらの病因、発症のメカニズム及び治療の試み
については多くの総説で報告されている(腎と骨代謝、
Vol.7, No.3, p.323, 1994;整形・災害外科、Vol.39,
p.201, 1996;Clinical Calcium, Vol.8, No.5, p.58
9, 1998;腎と透析、Vol.24, No.2, p.105, 1988;現代
医療、Vol.20, p.1572, 1988;ホルモンと臨床、Vol.4
0, No.2,p.563, 1992;ホルモンと臨床、Vol.45, No.8,
p.729, 1997;ホルモンと臨床、Vol.40, No.6, p.571,
1992;Clinical Calcium, Vol.6, No.5, p.602, 199
6;Clinical Calcium, Vol.6, No.5, p.538, 1996;臨
床と研究、Vol.72, No.12,p.3027, 1995;腎と透析、Vo
l.36, No.6, p.1099, 1994;総合臨床、Vol.44, No,12,
p.2805, 1995;医薬ジャーナル、Vol.33, No.5, p.87,
1997;医薬ジャーナル、Vol.25, No.1, p.133, 1989;
医薬ジャーナル、Vol.26, No.7, p.1371, 1990)。
【0018】前述したとおり、PTHの主作用は、破骨細
胞性骨吸収の促進による骨から血中へのカルシウムの動
員、並びに腎臓におけるカルシウムの再吸収の促進であ
ることから、上述のようなPTHの合成・分泌の亢進は、
直接的または副次的に高カルシウム血症を引き起こすこ
ととなる。原発性副甲状腺機能亢進症の治療は、病的副
甲状腺の外科的切除が原則であるが、全身状態が悪く外
科的切除が不可能な症例においては、高値となっている
カルシウム濃度を低減させるための薬物療法(高カルシ
ウム血症の治療)が行われている。薬物療法としては、
例えば、補液や利尿薬による尿中カルシウムの排泄、カ
ルシトニンによる骨吸収に抑制、グルココルチコイドに
よる小腸や腎尿細管でのカルシウム再吸収の抑制、リン
酸による骨や軟部組織へのカルシウム沈着の促進、Mith
ramycinやBisphosphonate系化合物(EHDP、Cl2MDP、APD
など)による破骨細胞機能の抑制による骨吸収の抑制な
どが挙げられる。
【0019】続発性(二次性)副甲状腺機能亢進症で
は、活性型ビタミンD値が低下することにより腸管での
カルシウム吸収が減少し低カルシウム血症を来すことか
ら、活性化ビタミンD[1α,25(OH)2D3]やそのアナロ
グである[1α(OH)2D3]の投与が行われている。また、
併存する高リン血症(リンの蓄積)を制御する目的で、
水酸化アルミニウムゲル(現在では使用禁忌とされてい
る)、炭酸化カルシウムあるいは酢酸カルシウムなどの
リン結合剤が用いられている。しかしながら、長期透析
患者に見られるような高度な二次性副甲状腺機能亢進症
では、もはやそのような内科的治療では効果が期待でき
ず、副甲状腺の外科的切除が行われている。上述のよう
に種々の合併症を惹起する副甲状腺機能亢進症の治療と
して一般的に行われている方法は、いずれも血中カルシ
ウム濃度の調節による対症療法あるいは副甲状腺自体の
外科的切除であり、副甲状腺機能亢進の主因である副甲
状腺ホルモン(PTH)の分泌抑制、機能抑制、活性阻害あ
るいは排除を行うものではない。
【0020】PTHの機能抑制あるいは活性阻害による治
療については、分泌されたPTHのPTH受容体への結合を阻
止することによりPTHの機能発現を抑制するよう設計さ
れたPTH拮抗剤の開発が報告されている(米国特許第5,2
29,489号公報、同5,446,130号公報、同5,001,233号公
報、同4,771,124号公報、同4,968,669号公報、同5,807,
823号公報など)。また、PTHの分泌抑制については、PT
HのmRNAの発現を抑制する薬剤の開発が試みられている
(Clinical Calcium, Vol.8, No.5, p.658, 1998)。し
かしながら、前記のような薬剤の開発は基礎的な研究に
留まっており、未だ医薬品として提供されていない。
【0021】一方、PTHに対する抗体を用いたPTHの機能
発現抑制あるいは除去による上記のような種々疾患の治
療効果の有効性に関しては未だ何ら報告されていない。
抗体による患者の治療においては、言うまでもなくヒト
PTHに対する抗体、特にはモノクローナル抗体が用いら
れる。ヒトPTHに対するモノクローナル抗体ついては、
ヒトPTHまたはその部分ペプチドをマウスやラット等の
非ヒト哺乳動物に免疫することにより作製される非ヒト
哺乳動物由来のモノクローナル抗体の作製についての報
告はあるものの、ヒトPTHに対するヒト由来のモノクロ
ーナル抗体の作製については未だ全く報告されておら
ず、ましてや、該ヒトモノクローナル抗体を用いた種々
疾患の治療の試みについては言うまでもない。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】これまでに報告された
マウスやラット等の非ヒト哺乳動物由来のモノクローナ
ル抗体は、ヒトを含む哺乳動物の血清あるいは組織での
PTHの発現のインビトロでの検出あるいは該モノクロー
ナル抗体の疾患治療効果の確認のための非ヒト哺乳動物
を用いたインビボ試験における使用の目途においては有
用であるかもしれない。しかしながら、そのような非ヒ
ト哺乳動物由来のモノクローナル抗体を、患者(人体)
に投与した場合には、該投与されたマウスあるいはラッ
ト等のモノクローナル抗体は人体にとって異物である
(免疫原性を有する)ため、人体の異物排除の免疫機構
により、該モノクローナル抗体は、急速に排除されるだ
けでなく、その過程において該投与されたモノクローナ
ル抗体に対する抗体が産生されるHAMA免疫応答(Human
Anti-Mouse/Murine Antibody Immune Response)が惹起
される。このHAMAのメカニズムにより、該マウスモノク
ローナル抗体等の非ヒト哺乳動物由来抗体の反復投与に
おいては該投与されたモノクローナル抗体が中和されて
その効果が減殺されるだけでなく、重篤なアレルギーな
どの副作用が引き起こされる。
【0023】このようなHAMA免疫応答を低減させる試み
として、近年、マウスモノクローナル抗体等の非ヒト哺
乳動物由来の抗体の部分アミノ酸配列を遺伝子工学的に
ヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸配列に改変させるこ
とによりヒト生体に対する免疫原性を低減させようとす
る手法が用いられている。その1つは、マウスモノクロ
ーナル抗体の定常領域をヒト免疫グロブリンの定常領域
に置き換えたマウス/ヒトキメラ抗体であり、他の1つ
は、マウスモノクローナル抗体の超可変領域の3つの相
補性決定領域(Complementarity-determining residu
e;CDR1, CDR2, CDR3)を除く全ての配列をヒト免疫グ
ロブリン由来の配列で置き換えたヒト型化抗体(humani
zed anitbody,CDR-grafted antibody)である。
【0024】しかしながら、このような遺伝子組換え抗
体であっても、その構造中にマウス等の非ヒト哺乳動物
由来の部分配列が残っている以上、ヒト生体にとっては
異物であり、HAMA免疫応答と同様のHACA免疫応答(Huma
n AntiChimeric Antibody Immune Response)やHAHA免
疫応答(Human AntiHumanized Antibody Immune Respon
se)が少なからず惹起される。従って、抗体を医薬品と
して用いるためにはそのようなHAMAによる副作用を惹起
しない抗体、即ちヒト由来の抗体(ヒト抗体)が最も望
ましい。
【0025】従って、ヒトPTHについても、副作用を伴
わず該PTHの合成・分泌の亢進を伴う前述のような種々
の疾患または症状(例えば、原発性副甲状腺機能亢進
症、続発性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺過形成、及び
異所性PTH産生腫瘍など)、また該疾患において合併す
る種々の疾患または症状(例えば、腎性骨異栄養症(繊
維性骨炎)、先端巨大症、甲状腺機能亢進症及びぺージ
ェット病などの高回転型骨症)、さらには該PTHの分泌
の亢進に伴って引き起こされる高カルシウム血症の予防
または治療に適用可能なヒトモノクローナル抗体の提供
が強く望まれている。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述のよ
うな臨床上の社会的ニーズを満たすために、ヒト副甲状
腺ホルモン(PTH)に対するヒトモノクローナル抗体の
作製に関して鋭意研究した結果、遺伝子工学技術を用い
て、ヒト由来の抗体を産生する能力を有するトランスジ
ェニックマウスを製造し、該トランスジェニックマウス
にヒトPTHまたはその一部を免疫し、モノクローナル抗
体の製造において慣用されているケーラー及びミルシュ
タインらの方法(Nature, Vol.256, p.495, 1975)を用
いることにより、各々種々の特性(抗原特異性、抗原親
和性、中和活性、及び交叉反応性等)及び生物活性(PT
H依存的細胞内cAMP上昇抑制活性、PTH依存的な骨からの
Ca放出の抑制活性、骨吸収抑制活性、骨溶解抑制活性な
ど)を有するヒトPTHに対する種々のヒトモノクローナ
ル抗体を作製することに世界に先んじて初めて成功し
た。即ち、本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒトに
対する抗原性を全く有せず、従来のマウス由来の抗体等
の非ヒト哺乳動物由来の抗体からなる抗体医薬品の治療
上の大きな問題点であったHAMAによる副作用を全く惹起
しないことから、抗体の医薬品としての価値を劇的に増
大させるものである。
【0027】即ち、本発明の下記のとおりの発明であ
る。 (1)ヒト副甲状腺ホルモンまたはその一部に反応性を
有するヒトモノクローナル抗体またはその一部。 (2)該ヒトモノクローナル抗体が、下記(a)乃至
(c)のいずれかに記載の性質を有することを特徴とす
る前記(1)に記載のヒトモノクローナル抗体またはそ
の一部: (a)副甲状腺ホルモン刺激に伴う細胞内でのcAMP
の上昇に対して抑制的に作用する; (b)副甲状腺ホルモン刺激に伴う骨からのカルシウム
の放出に対して抑制的に作用する;または (c)副甲状腺ホルモン刺激に伴う血中カルシウムの上
昇に対して抑制的に作用する。 (3)該ヒトモノクローナル抗体が、下記のアミノ酸配
列:SVSEIQLMHNLGKHLNSMERVEWLRKKLQDVHNF、を有するヒ
ト副甲状腺ホルモンの部分アミノ酸配列に反応性を有す
ることを特徴とする前記(1)に記載のヒトモノクロー
ナル抗体またはその一部。 (4)該ヒトモノクローナル抗体のイムノグロブリンク
ラスが、IgG2であることを特徴とする前記(1)乃
至前記(3)のいずれかに記載のヒトモノクローナル抗
体またはその一部。 (5)該ヒトモノクローナル抗体が、ヒト抗体を産生す
る能力を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物に由
来するモノクローナル抗体であることを特徴とする前記
(1)乃至前記(4)のいずれかに記載のヒトモノクロ
ーナル抗体またはその一部。 (6)該トランスジェニック非ヒト哺乳動物が、トラン
スジェニックマウスであることを特徴とする前記(5)
に記載のヒトモノクローナル抗体またはその一部。 (7) 該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲状腺ホル
モンとの結合速度定数(ka)が、1.0×103(1/M.Sec)
以上の数値であることを特徴とする前記(1)乃至前記
(6)のいずれかに記載のヒトモノクローナル抗体また
はその一部。 (8)該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲状腺ホルモ
ンとの解離速度定数(kd)が、1.0×10-3(1/Sec)以下
の数値であることを特徴とする前記(1)乃至前記
(6)のいずれかに記載のヒトモノクローナル抗体また
はその一部。 (9)該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲状腺ホルモ
ンとの解離定数(Kd)が、1.0×10-7(M)以下の数値で
あることを特徴とする前記(1)乃至前記(6)のいず
れかに記載のヒトモノクローナル抗体またはその一部。 (10)該結合速度定数(ka)が、1.0×104(1/M.Se
c)以上の数値であることを特徴とする前記(7)に記載
のヒトモノクローナル抗体またはその一部。 (11)該解離速度定数(kd)が、1.0×10-4(1/Sec)
以下の数値であることを特徴とする前記(8)に記載の
ヒトモノクローナル抗体またはその一部。 (12)該解離定数(Kd)が、1.0×10-8(M)以下の数
値であることを特徴とする前記(9)に記載のヒトモノ
クローナル抗体またはその一部。 (13)該解離定数(Kd)が、1.0×10-9(M)以下の数
値であることを特徴とする前記(12)に記載のヒトモ
ノクローナル抗体またはその一部。 (14)該解離定数(Kd)が、1.0×10-10(M)以下の
数値であることを特徴とする前記(13)に記載のヒト
モノクローナル抗体またはその一部。 (15)該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲状腺ホル
モンとの結合速度定数(ka)が、1.0×103(1/M.Sec)
以上の数値であることを特徴とする前記(2)または前
記(3)に記載のヒトモノクローナル抗体またはその一
部。 (16)該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲状腺ホル
モンとの解離速度定数(kd)が、1.0×10-3(1/Sec)以
下の数値であることを特徴とする前記(2)または前記
(3)に記載のヒトモノクローナル抗体またはその一
部。 (17)該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲状腺ホル
モンとの解離定数(Kd)が、1.0×10-7(M)以下の数値
であることを特徴とする前記(2)または前記(3)に
記載のヒトモノクローナル抗体またはその一部。 (18)該結合速度定数(ka)が、1.0×104(1/M.Se
c)以上の数値であることを特徴とする前記(15)に記
載のヒトモノクローナル抗体またはその一部。 (19)該解離速度定数(kd)が、1.0×10-4(1/Sec)
以下の数値であることを特徴とする前記(16)に記載
のヒトモノクローナル抗体またはその一部。 (20) 該解離定数(Kd)が、1.0×10-8(M)以下の
数値であることを特徴とする前記(17)に記載のヒト
モノクローナル抗体またはその一部。 (21) 該解離定数(Kd)が、1.0×10-9(M)以下の
数値であることを特徴とする前記(20)に記載のヒト
モノクローナル抗体またはその一部。 (22)該解離定数(Kd)が、1.0×10-10(M)以下の
数値であることを特徴とする前記(21)に記載のヒト
モノクローナル抗体またはその一部。 (23)ヒト副甲状腺ホルモンまたはその一部に反応性
を有するヒトモノクローナル抗体を産生する細胞。 (24)該細胞が、ヒト抗体を産生する能力を有するト
ランスジェニック非ヒト哺乳動物に由来するB細胞であ
ることを特徴とする前記(23)に記載の細胞。 (25)該トランスジェニック非ヒト哺乳動物が、トラ
ンスジェニックマウスであることを特徴とする前記(2
4)に記載の細胞。 (26)該細胞が、ヒト抗体を産生する能力を有するト
ランスジェニック非ヒト哺乳動物に由来するB細胞と哺
乳動物由来のミエローマ細胞とを融合して得られるハイ
ブリドーマであることを特徴とする前記(23)に記載
の細胞。 (27)該トランスジェニック非ヒト哺乳動物が、トラ
ンスジェニックマウスであることを特徴とする前記(2
6)に記載の細胞。 (28)該細胞が、国際寄託番号FERM BP-6588で識別さ
れるハイブリドーマであることを特徴とする前記(2
7)に記載の細胞。 (29)該細胞が、ヒト副甲状腺ホルモンまたはその一
部に反応性を有するヒトモノクローナル抗体の重鎖をコ
ードするDNA若しくはその軽鎖をコードするDNAの
いずれか一方のDNA、または両方のDNAが細胞内に
導入されることにより形質転換された形質転換細胞であ
ることを特徴とする前記(23)に記載の細胞。 (30)ヒト副甲状腺ホルモンまたはその一部に反応性
を有するヒトモノクローナル抗体またはその一部であっ
て、国際寄託番号FERM BP-6588で識別されるハイブリド
ーマから産生されるヒトモノクローナル抗体若しくは該
ヒトモノクローナル抗体と実質的に同一の性質を有する
ヒトモノクローナル抗体、またはその一部。 (31)前記(1)乃至前記(22)または前記(3
0)のいずれかに記載のヒトモノクローナル抗体または
その一部、及び薬学的に許容されうる担体とを含んでな
る医薬組成物。 (32)前記(2)、前記(3)、前記(15)乃至前
記(22)または前記(30)のいずれかに記載のヒト
モノクローナル抗体またはその一部、及び薬学的に許容
されうる担体とを含んでなる医薬組成物。 (33)該医薬組成物が、副甲状腺ホルモンの分泌の亢
進状態を伴う疾患の治療に用いられることを特徴とする
前記(31)または前記(32)に記載の医薬組成物。 (34)該疾患が、原発性副甲状腺機能亢進症または原
発性副甲状腺機能亢進症に伴う合併症であることを特徴
とする前記(33)に記載の医薬組成物。 (35)該疾患が、続発性副甲状腺機能亢進症または続
発性副甲状腺機能亢進症に伴う合併症であることを特徴
とする前記(33)に記載の医薬組成物。 (36) 該続発性副甲状腺機能亢進症が、慢性腎不
全、活性型ビタミンDの欠乏、活性型ビタミンDに対す
る感受性の低下、活性型ビタミンD受容体の欠乏、リン
の蓄積、副甲状腺のカルシウムに対する感受性の低下、
カルシウム受容体の異常、骨のPTHに対する反応性の低
下、PTH受容体の異常、または偽性副甲状腺機能低下症
に伴い発症するものであることを特徴とする前記(3
5)に記載の医薬組成物。 (37)該疾患が、副甲状腺過形成であることを特徴と
する前記(33)に記載の医薬組成物。 (38)該疾患が、異所性PTH産生腫瘍であることを特
徴とする前記(33)に記載の医薬組成物。 (39)該疾患が、高回転型骨症であることを特徴とす
る前記(33)に記載の医薬組成物。 (40)該高回転型骨症が、腎性骨異栄養症であること
を特徴とする前記(39)に記載の医薬組成物。 (41)該医薬組成物が、副甲状腺ホルモンの分泌の亢
進状態に伴う高カルシウム血症の治療に用いられること
を特徴とする前記(31)または前記(32)に記載の
医薬組成物。 (42)該医薬組成物が、副甲状腺ホルモン依存的な骨
からのカルシウムの放出に起因する疾患の治療に用いら
れることを特徴とする前記(31)または前記(32)
に記載の医薬組成物。 (43)該医薬組成物が、血液透析を受けている腎不全
患者において併発するPTH分泌の亢進に起因する疾患の
治療に用いられることを特徴とする前記(31)または
前記(32)に記載の医薬組成物。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明で用いる語句の意味
を明らかにすることにより、本発明を詳細に説明する。
本発明における「哺乳動物」とは、ヒト、ウシ、ヤギ、
ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、及びモルモット
等を意味し、好ましくは、ヒト、ウサギ、ラット、ハム
スターまたはマウスであり、特に好ましくは、ヒト、ヤ
ギ、ウシ、ラット、またはマウスである。本願明細書ま
たは図面においてアミノ酸を表記するために用いられる
アルファベットの三文字あるいは一文字は、各々次に示
すアミノ酸を意味する。(Gly/G)グリシン、(Ala/
A)アラニン、(Val/V)バリン、(Leu/L)ロイシ
ン、(Ile/I)イソロイシン、(Ser/S)セリン、(Th
r/T)スレオニン、(Asp/D)アスパラギン酸、(Glu
/E)グルタミン酸、(Asn/N)アスパラギン、(Glu/
Q)グルタミン、(Lys/K)リジン、(Arg/R)アルギ
ニン、(Cys/C)システイン、(Met/M)メチオニン、
(Phe/F)フェニルアラニン、(Tyr/Y)チロシン、
(Trp/W)トリプトファン、(His/H)ヒスチジン、
(Pro/P)プロリン。
【0029】本発明でいう「ヒト副甲状腺ホルモン(Pa
rathyroid Hormone、Parathormone、PTH)」とは、前述
したような構造を有し、また前述に例示したような生物
活性及び/または機能を有するヒトの副甲状腺ホルモン
(PTH)である。ヒトのPTHは、31アミノ酸配列からな
るプレプロペプチド(配列番号1のアミノ酸番号1乃至
31)とそれに引き続く84アミノ酸配列(PTH(1-8
4)、配列番号1のアミノ酸番号32乃至115)からな
り、PTHの生物活性の発現に必要十分な構造は、該PTH(1
-84)のN末端側の1-34(配列番号1のアミノ酸番号32
乃至65)の領域(PTH(1-34))に保持されている(Pro
c. Natl. Acad. Sci. USA., Vol.68, p.63, 1971 ;End
ocrinology, Vol.93, p.1349, 1973;Peptide and Prot
ein Reviews, Vol.2, p.209, 1984)。(Critical Revi
ews in Biochemistry and Molecular Biology, Vol.26,
p.377-395, 1991;Bone Science, 「骨形成と骨吸収及
びそれらの調節因子(第2巻)」、p.307〜320, 1995,
廣川書店(発行))。
【0030】また、本発明で言う「ヒト副甲状腺ホルモ
ンの一部」とは、前記に定義される「ヒト副甲状腺ホル
モン」のアミノ酸配列の任意の部分配列を意味し、具体
的には5乃至80個のアミノ酸残基を有するヒトPTHの
部分配列、より具体的には5乃至50個のアミノ酸残基
を有するヒトPTHの部分配列、さらに具体的には5乃至
40個のアミノ酸残基を有するヒトPTHの部分配列が包
含される。
【0031】好ましくは、ヒトPTHがその生物学的機能
を発揮するために必要な領域(例えば骨吸収促進作用を
担うPTH(1-34)、あるいは受容体活性化を担うPTH(1-6)
などの活性部位)またはヒトPTHがその受容体と結合若
しくは相互作用する領域(PTH(22-32)といった受容体結
合部位など)等を含むヒトPTHの部分配列である。具体
的には例えば、PTHの主機能である骨吸収促進作用を担
うPTH(1-34)(配列番号1に記載されるアミノ酸配列の
アミノ酸番号32乃至65)を少なくとも含む部分ポリペプ
チドが挙げられる。
【0032】さらに、本発明における「副甲状腺ホルモ
ン」及びその「一部」には、後述する本願発明の「ヒト
モノクローナル抗体」が前述のような天然型のタンパク
一次構造(アミノ酸配列)を有するヒトPTHまたはその
一部に反応性を有する限り、該天然型のタンパク一次構
造と実質的に同一のアミノ酸配列を有するヒトPTH誘導
体及びその一部も包含される。
【0033】ここで「実質的に同一のアミノ酸配列を有
するヒトPTH誘導体」なる用語は、天然型のヒトPTHと実
質的に同等の生物学的性質を有する限り、該アミノ酸配
列中の数個のアミノ酸、好ましくは1乃至10個のアミ
ノ酸、特に好ましくは1乃至5個のアミノ酸が置換、欠
失及び/または修飾されているアミノ酸配列を有するタ
ンパク、並びに該アミノ酸配列に、数個のアミノ酸、好
ましくは1乃至10個のアミノ酸、特に好ましくは1乃
至5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列を有するタ
ンパクを意味する。さらに、そのような置換、欠失、修
飾及び付加の複数の組み合わせの場合であってもよい。
【0034】本発明におけるヒトPTHは、遺伝子組換え
技術のほか、化学的合成法、細胞培養方法等のような当
該技術的分野において知られる公知の方法あるいはその
修飾方法を適宜用いることにより製造することができ
る。またヒトPTHの部分配列は、後述する当該技術的分
野において知られる公知の方法あるいはその修飾方法に
従って、遺伝子組換え技術または化学的合成法により製
造することもできるし、また細胞培養方法により単離し
たヒトPTHをタ ンパク分解酵素等を用いて適切に切断す
ることにより製造することができる。
【0035】本発明における「ヒトモノクローナル抗
体」とは、前記に定義したような「ヒト副甲状腺ホルモ
ン」または「その一部」に反応性を有するヒトモノクロ
ーナル抗体である。具体的には、前記発明(1)乃至
(22)または(30)のいずれかに記載される特徴を
有するヒトモノクローナル抗体である。例えば、後述の
実施例に記載される様々な特性を有する各種のヒトモノ
クローナル抗体を挙げることができる。本発明の「ヒト
モノクローナル抗体」には、該抗体を構成する重鎖及び
/または軽鎖の各々のアミノ酸配列において、1または
数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ
酸配列を有する重鎖及び/または軽鎖からなるモノクロ
ーナル抗体も包含されるが、ここで、「数個のアミノ
酸」とは、複数個のアミノ酸を意味し、具体的には1乃
至10個のアミノ酸であり、好ましくは1乃至5個のア
ミノ酸である。本発明のPTHまたはモノクローナル抗体
のアミノ酸配列中に、前記のようなアミノ酸の部分的改
変(欠失、置換、挿入、付加)は、該アミノ酸配列をコ
ードする塩基配列を部分的に改変することにより導入す
ることができる。この塩基配列の部分的改変は、既知の
部位特異的変異導入法(Site specific mutagenesis )
を用いて常法により導入することができる(Proc. Nat
l. Acsd. Sci. USA, Vol.81, p.5662-5666, 1984)。
【0036】ここで、「ヒトモノクローナル抗体」と
は、イムノグロブリンを構成する重鎖(H鎖)の可変領
域(Variable region)及びH鎖の定常領域(Constant
Region)並びに軽鎖(L鎖)の可変領域及びL鎖の定常
領域を含む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコード
する遺伝子に由来するヒトイムノグロブリンである。L
鎖としては、ヒトκ鎖またはヒトλ鎖が挙げられる。本
発明のヒトモノクローナル抗体には、IgG(IgG1, Ig
G2, IgG3, IgG4)、IgM、IgA(IgA1, IgA2)、I
gDあるいはIgE等のいずれのイムノグロブリンクラ
ス及びアイソタイプを有するモノクローナル抗体をも包
含する。好ましくは、IgGまたはIgMであり、さら
に好ましくはIgGである。特に好ましくはIgG2または
IgG4である。
【0037】本発明のヒトモノクローナル抗体は、例え
ば、下記のような製造方法によって製造することができ
る。即ち、例えば、前記で定義したようなヒト副甲状腺
ホルモン(天然体、組換体、合成物、細胞培養上清を含
む)若しくはその一部、または抗原の抗原性を高めるた
めの適当な物質(例えば、KLH(keyhole limpet hemo
cyanin)など)との結合物を、必要に応じてフロイント
アジュバント(Freund's Adjuvant)とともに、後述す
るようなヒト抗体を産生するように遺伝子工学的に作出
されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物(好ましくは
ヒト抗体産生トランスジェニックマウス)に免疫する。
ポリクローナル抗体は、該免疫感作トランスジェニック
動物から得た血清から取得することができる。またモノ
クローナル抗体は、該免疫感作動物から得た該抗体産生
細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ
細胞)からハイブリドーマを調製し、該ハイブリドーマ
をクローン化し、哺乳動物の免疫に用いた抗原に対して
特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクロ
ーンを選択することによって製造される。
【0038】さらに具体的には下記のようにして製造す
ることができる。即ち、前記で定義したようなヒト副甲
状腺ホルモン(天然体、組換体、合成物、細胞培養上清
を含む)若しくはその一部、または抗原の抗原性を高め
るための適当な物質(例えば、KLH(keyhole limpet
hemocyanin)など)との結合物(コンジュゲ−ト)を、
必要に応じてフロイントアジュバント(Freund's Adjuv
ant)と ともに、後述するようなヒト抗体を産生するよ
うに遺伝子工学的に作出されたトランスジェニック非ヒ
ト哺乳動物(好ましくはヒト抗体産生トランスジェニッ
クマウス)の皮下内、筋肉内、静脈内、フッドパッド内
あるいは腹腔内に1乃至数回注射するかあるいは移植す
ることにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1
乃至14日毎に1乃至10回免疫を行って、最終免疫よ
り約1乃至5日後に免疫感作された該動物から抗体産生
細胞が取得される。免疫を施す回数及び時間的インター
バルは、使用する免疫原の性質などにより、適宜変更す
ることができる。
【0039】モノクローナル抗体を分泌するハイブリド
ーマの調製は、ケーラー及びミルシュタインらの方法
(Nature, Vol.256, p.495-497, 1975)及びそれに準じ
る修飾方法に従って行うことができる。即ち、前述の如
く免疫感作されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物か
ら取得される脾臓、リンパ節、骨髄あるいは扁桃等、好
ましくはリンパ節または脾臓に含まれる抗体産生細胞
と、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ハムスタ
ー、ウサギまたはヒト等の哺乳動物、より好ましくはマ
ウス、ラットまたはヒトに由来する自己抗体産生能のな
いミエローマ細胞との細胞融合させることにより調製さ
れる。
【0040】細胞融合に用いられるミエローマ細胞とし
ては、例えばマウス由来ミエローマ細胞P3/X63-AG8.653
(ATCC No.: CRL 1580)、P3/NS1/1-Ag4-1(NS−
1)、P3/X63-Ag8.U1(P3U1)、SP2/0-Ag14(Sp2/
O、Sp2)、NSO、PAI、F0あるいはBW5147、ラット由
来ミエローマ210RCY3-Ag.2.3.、ヒト由来ミエローマU-2
66AR1、GM1500-6TG-A1-2、UC729-6、CEM-AGR、D1R11あ
るいはCEM-T15などを使用することができる。モノクロ
ーナル抗体を産生するハイブリドーマクローンのスクリ
ーニングは、ハイブリドーマを、例えばマイクロタイタ
ープレート中で培養し、増殖の見られたウェルの培養上
清の前述の免疫感作で用いた免疫抗原に対する反応性
を、例えばRIAやELISA等の酵素免疫測定法によ
って測定することにより行なうことができる。
【0041】ハイブリドーマからのモノクローナル抗体
の製造は、ハイブリドーマをインビトロで培養して培養
上清から単離することができる。また、マウス、ラッ
ト、モルモット、ハムスターまたはウサギ等、好ましく
はマウスまたはラット、より好ましくはマウスの腹水中
等でのインビボで培養し、腹水から単離することもでき
る。
【0042】また、当該ハイブリドーマからヒトモノク
ローナル抗体をコードする遺伝子をクローニングし、ト
ランスジェニック動物作製技術を用いて当該遺伝子が内
在性遺伝子に組み込まれたトランスジェニックなウシ、
ヤギ、ヒツジまたはブタを作製し、当該トランスジェニ
ック動物のミルク中から当該抗体遺伝子に由来するモノ
クローナル抗体を大量に取得することも可能である(日
系サイエンス、1997年4月号、第78頁乃至84頁)。
ハイブリドーマをインビトロで培養する場合には、培養
する細胞種の特性、試験研究の目的及び培養方法等の種
々条件に合わせて、ハイブリドーマを増殖、維持及び保
存させ、培養上清中にモノクローナル抗体を産生させる
ために用いられるような既知栄養培地あるいは既知の基
本培地から誘導調製されるあらゆる栄養培地を用いて実
施することが可能である。
【0043】基本培地としては、例えば、Ham'培地、MC
DB153培地あるいは低カルシウムMEM培地等の低カル
シウム培地及びMCD104培地、MEM培地、D-MEM培地、R
PMI1640培地あるいはRD培地等の高カルシウム培地、A
SF104培地(商標)、EX-CELL620培地(商標)あるいはH
YBRIDOMA-SFM培地(商標)等が挙げられ、該基本培地
は、目的に応じて、例えば血清、ホルモン、サイトカイ
ン及び/または種々無機あるいは有機物質等を含有する
ことができる。モノクローナル抗体の単離、精製は、上
述の培養上清あるいは腹水を、飽和硫酸アンモニウム、
ユーグロブリン沈澱法、カプロイン酸法、カプリル酸
法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはD
E52等)、抗イムノグロブリンカラムあるいはプロテ
インAカラム等のアフィニティカラムクロマトグラフィ
ーに供すること等により行うことができる。
【0044】本発明における「モノクローナル抗体の一
部」とは、前記で定義したヒトモノクローナル抗体の一
部分を意味し、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv
(variable fragment of antibody)、sFv、dsF
v(disulphide stabilised Fv)あるいはdAb(sin
gle domain antibody)が挙げられる(エキスパート
・オピニオン・オン・テラピューティック・パテンツ(E
xp. Opin. Ther. Patents),第6巻,第5号,第441〜4
56頁,1996年)。
【0045】ここで、「F(ab')2」及び「Fab'」とは、
イムノグロブリン(モノクローナル抗体)を、蛋白分解
酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理すること
により製造され、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在す
るジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体
フラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで
処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジ
スルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領
域)とCL(L鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H
鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領域中のγ1領域)と
からなるH鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド
結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントを製
造することができる。これら2つの相同な抗体フラグメ
ントを各々Fab'という。またIgGをペプシンで処理す
ると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフ
ィド結合の下流で切断されて前記2つのFab'がヒンジ領
域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメントを
製造することができる。この抗体フラグメントをF(ab')
2という。
【0046】本発明における「結合速度定数(ka)」
とは、抗原抗体反応速度論に基づき算出される該モノク
ローナル抗体の標的抗原への結合の強さ(程度)を示す
値を意味する。「解離速度定数(kd)」とは、抗原抗
体反応速度論に基づき算出される該モノクローナル抗体
の標的抗原からの解離の強さ(程度)を示す値を意味す
る。「解離定数(Kd)」とは、該「解離速度定数(k
d)」値を該「結合速度定数(ka)」値で除して求め
られる値である。これらの定数は、該モノクローナル抗
体の抗原に対する親和性及び抗原の中和活性を表す指標
として用いられる。当該定数は、種々の方法に従って解
析することができるが、市販の測定キットであるBiacor
eX(アマシャムファルマシア社製)または類似のキッ
トを用い、当該キットに添付の取扱い説明書及び実験操
作方法に従って容易に解析することができる。当該キッ
トを用いて求められるka値、kd値及びKd値は各
々、1/M.Sec、1/Sec及びM(モル)なる単位を以て表さ
れる。試験されたモノクローナル抗体は、ka値が大き
いほど強い抗原結合活性を有していることを示し、Kd
値が大きいほど強い中和活性を有していることを示す。
【0047】本発明のヒトモノクローナル抗体には、下
記(1)乃至(3)に示されるようなka値、kd値ま
たはKd値を有するヒトモノクローナル抗体が含まれ
る。 (1)ヒト副甲状腺ホルモンとの結合速度定数(ka)
が、1.0×103(1/M.Sec)以上の数値、好ましくは1.0×10
4(1/M.Sec)以上の数値であるヒ ト副甲状腺ホルモンま
たはその一部に反応性を有するヒトモノクローナル抗
体。 (2)ヒト副甲状腺ホルモンとの解離速度定数(kd)
が、1.0×10-3(1/Sec)以下、好ましくは1.0×10-4(1/Se
c)以下の数値であるヒト副甲状腺ホルモンまたはその一
部に反応性を有するヒトモノクローナル抗体。 (3)ヒト副甲状腺ホルモンとの解離定数(Kd)が、
1.0×10-7(M)以下、好ましくは1.0×10-8(M)以下、より
好ましくは1.0×10-9(M)以下、さらに好ましくは1.0×1
0-10(M)以下の数値であるヒト副甲状腺ホルモンまたは
その一部に反応性を有するヒトモノクローナル抗体。
【0048】より具体的には、例えば、ka値(1/M.Se
c)については、約1.6×104以上のヒトモノクローナル抗
体が挙げられ、さらに具体的には約1.6×104乃至約1.1
×105のヒトモノクローナル抗体が挙げられる。kd値
(1/Sec)については、約8.4×10 -5以下のヒトモノクロー
ナル抗体が挙げられ、さらに具体的には約1.1×10-5
至約8.4×10-5のヒトモノクローナル抗体が挙げられ
る。Kd値(M)については、約9.2×10-10以下のヒトモ
ノクローナル抗体が挙げられ、さらに具体的には、約1.
5×10-10乃至9.2×10-10のヒトモノクローナル抗体が挙
げられる。なお、上述のka、kd及びKdの各々の値
は、測定時の諸条件に依存して多少の変動は誤差範囲と
して起こり得ることが予測されるが、指数についてはほ
とんど変動しないのが一般的である。本発明の「ヒトモ
ノクローナル抗体を産生する細胞」とは、前述した本発
明のヒトモノクローナル抗体を産生する任意の細胞を意
味する。具体的には、例えば、下記(1)乃至(3)の
いずれかに記載される細胞を挙げることができる。 (1)ヒトPTH、その一部または該PTHを分泌する細胞等
でヒト抗体を産生する能力を有するトランスジェニック
非ヒト哺乳動物を免疫することにより得られ、該ヒトPT
Hまたはその一部に反応性を有するヒトモノクローナル
抗体を産生する該非ヒト哺乳動物由来のモノクローナル
抗体産生B細胞。 (2)そのようにして得られた抗体産生B細胞を哺乳動
物由来のミエローマ細胞と細胞融合して得られる前述の
ハイブリドーマ(融合細胞)。 (3)該モノクローナル抗体産生B細胞またはモノクロ
ーナル抗体産生ハイブリドーマから単離される該モノク
ローナル抗体をコードする遺伝子(重鎖をコードする遺
伝子若しくは軽鎖をコードする遺伝子のいずれか一方、
または両方の遺伝子)により該B細胞及びハイブリドー
マ以外の細胞を形質転換して得られるモノクローナル抗
体産生形質転換細胞(遺伝子組換え細胞)。 ここで、前記(3)に記載のモノクローナル抗体産生形
質転換細胞(遺伝子組換え細胞)は、即ち、前記(1)
のB細胞または(2)のハイブリドーマが産生するモノ
クローナル抗体の遺伝子組換え体を産生する遺伝子組換
え細胞を意味する。
【0049】本発明のヒトモノクローナル抗体の作製に
おいて被免疫動物として用いられるヒト抗体産生トラン
スジェニックマウスは、既報の方法に従って製造するこ
とができる(Nature Genetics, Vol.7, p.13-21, 199
4;Nature Genetics, Vol.15,p.146-156, 1997;特表平
4-504365号公報;特表平7-509137号公報;日経サイエン
ス、6月号、第40〜第50頁、1995年;国際出願
公開WO94/25585号公報;Nature, Vol.368,
p.856-859, 1994;及び特表平6−500233号公報
など)。具体的には、例えば下記の工程からなる手法を
用いることにより作製可能である。
【0050】(1)マウス内在性イムノグロブリン重鎖
遺伝子座の少なくとも一部を相同組換えにより薬剤耐性
マーカー遺伝子(ネオマイシン耐性遺伝子など)で置換
することにより該マウス内在性イムノグロブリン重鎖遺
伝子が機能的に不活性化されたノックアウトマウスを作
製する工程。 (2)マウス内在性イムノグロブリン軽鎖遺伝子座の少
なくとも一部を相同組換えにより薬剤耐性マーカー遺伝
子(ネオマイシン耐性遺伝子など)で置換することによ
り該マウス内在性イムノグロブリン軽鎖遺伝子(特にκ
鎖遺伝子)が機能的に不活性化されたノックアウトマウ
スを作製する工程。 (3)酵母人工染色体(Yeast artificial chromosome,
YAC)ベクター等に代表されるような巨大遺伝子を運搬
可能なベクターを用いて、ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝
子座の所望の領域がマウス染色体中に組み込まれたトラ
ンスジェニックマウスを作製する工程。 (4)YAC等に代表されるような巨大遺伝子を運搬可能
なベクターを用いて、ヒト免疫グロブリン軽鎖(特にκ
鎖)遺伝子座の所望の領域がマウス染色体中に組み込ま
れたトランスジェニックマウスを作製する工程。 (5)前記(1)乃至(4)のノックアウトマウス及び
トランスジェニックマウスを任意の順序で交配すること
により、マウス内在性免疫グロブリン重鎖遺伝子座及び
マウス内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座がともに機能
的に不活性化され、且つヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子
座の所望の領域及ヒト免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の所
望の領域がともにマウス染色体上に組み込まれたトラン
スジェニックマウスを作製する工程。
【0051】前記ノックアウトマウスは、マウス内在性
イムノグロブリン遺伝子座の適当な領域を外来性マーカ
ー遺伝子(ネオマイシン耐性遺伝子など)で相同組換え
により置換することにより該遺伝子座が再構成(リアレ
ンジメント)できないように不活性化することにより作
製できる。該相同組換えを用いた不活性化には、例え
ば、ポジティブ・ネガティブ・セレクション(Positive
Negative Selection; PNS)と呼称される方法を用いる
ことができる(日経サイエンス, 5月号, p.52-62, 199
4)。イムノグロブリン重鎖遺伝子座の機能的不活性化
には、例えば、J領域またはC領域(例えばCμ領域)
の一部に障害を導入することにより達成できる。またイ
ムノグロブリン軽鎖(例えばκ鎖)に機能的不活性化
は、例えば、J領域若しくはC領域の一部、またはJ領
域及びC領域にまたがる領域を含む領域に障害を導入す
ることにより達成可能である。
【0052】トランスジェニックマウスは、トランスジ
ェニック動物の製造において通常使用されるような常法
(例えば、最新動物細胞実験マニュアル、エル・アイ・
シー発行、第7章、第361〜第408頁、1990年
を参照)に従って作製することが可能である。具体的に
は、例えば、正常マウス胚盤胞(blastcyst)に由来す
るHPRT陰性(ヒポキサンチングアニン・フォスフォリボ
シルトランスフェラーゼ遺伝子を欠いている)ES細胞
(embryonic stem cell)を、該ヒトイムノグロブリン
重鎖遺伝子座または軽鎖遺伝子座をコードする遺伝子ま
たはその一部並びにHPRT遺伝子が挿入されたYACベクタ
ーを含む酵母とスフェロプラスト融合法により融合す
る。該外来性遺伝子がマウス内在性遺伝子上にインテグ
レートされたES細胞をHATセレクション法により選別
する。次いで、選別したES細胞 を、別の正常マウス
から取得した受精卵(胚盤胞)にマイクロインジェクシ
ョンする(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.77, No.1
2, pp.7380-7384, 1980;米 国特許第4,873,191号公
報)。該胚盤胞を仮親としての別の正常マウスの子宮に
移植する。そうして該仮親マウスから、キメラトランス
ジェニックマウスが生まれる。該キメラトランスジェニ
ックマウスを正常マウスと交配させることによりヘテロ
トランスジェニックマウスを得る。該ヘテロ(heteroge
neic)トランスジェニックマウス同士を交配することに
より、メンデルの法則に従って、ホモ(homogeneic)ト
ランスジェニックマウスが得られる。
【0053】本発明における「医薬組成物」は、本発明
のヒトモノクローナル抗体またはその一部を有効成分と
して、薬学的に許容され得る担体、即ち、賦形剤、希釈
剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化
剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補
助剤あるいはその他の添加剤等の一つ以上とともに医薬
組成物とし、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、注射剤、液
剤、カプセル剤、トローチ剤、エリキシル剤、懸濁剤、
乳剤あるいはシロップ剤等の形態により経口あるいは非
経口的に投与することができる。
【0054】とりわけ注射剤の場合には、例えば生理食
塩水あるいは市販の注射用蒸留水等の非毒性の薬学的に
許容され得る担体中に0.1μg抗体/ml担体〜10mg抗体/ml
担体の濃度となるように溶解または懸濁することにより
製造することができる。このようにして製造された注射
剤は、処置を必要とするヒト患者に対し、1回の投与に
おいて1kg体重あたり、1μg〜100mgの割合で、好まし
くは50μg〜50mgの割合で、1日あたり1回〜数回投与
することができる。投与の形態としては、静脈内注射、
皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、腹膜注
射、脳脊髄注射、あるいは局所注射のような医療上適当
な投与形態が例示できる。好ましくは静脈内注射または
局所注射であるが、骨病変部位(骨溶解部位、骨破壊部
位、骨折部位など)、腫瘍部位または口腔(歯周、歯
肉、歯茎など)への局所注射も好ましい態様の1つであ
る。
【0055】本発明のモノクローナル抗体または医薬組
成物は、PTHの合成・分泌亢進に起因する可能性を有す
る種々の疾患または症状の治療または予防への適用が可
能である。具体的には、例えば、PTHの合成・分泌の亢
進を伴う代表的疾患として、原発性副甲状腺機能亢進
症;続発性(二次性)副甲状腺機能亢進症(例えば、慢
性腎不全、活性型ビタミンDの欠乏、活性型ビタミンD
に対する感受性の低下、活性型ビタミンD受容体の欠
乏、リンの蓄積、副甲状腺のカルシウムに対する感受性
の低下、カルシウム受容体の異常、骨のPTHに対する反
応性の低下、PTH受容体の異常、または偽性副甲状腺機
能低下症に伴い発症する続発性副甲状腺機能亢進症な
ど);副甲状腺過形成;及び異所性PTH産生腫瘍などが
挙げられる。
【0056】さらには、前記のような疾患において合併
する種々の疾患または症状(例えば、原発性副甲状腺機
能亢進症に伴う骨型疾患(繊維性骨炎、指骨の骨膜下吸
収、頭蓋骨のsalt and pepper pattern、歯槽硬膜の消
失、慢性骨減少症あるいは全身的びまん性の骨石灰化な
ど);腎・尿路結石型疾患(腎臓及び尿路における結石
の形成など)、及び高カルシウム血症型疾患(全身倦
怠、筋力低下、口渇、多飲、多尿、抑うつ、嗜眠、意識
障害、悪心、嘔吐、並びに潰瘍、慢性膵炎等の消化器症
状など)、腎性骨異栄養症(繊維性骨炎)、先端巨大
症、甲状腺機能亢進症及びぺージェット病などの高回転
型骨症)が挙げられる。また、血液透析を受けている腎
不全患者において併発するPTH分泌亢進性の疾患や症状
(例えば、骨痛、骨折などの骨病変)、さらには該PTH
の分泌の亢進に伴って引き起こされる高カルシウム血症
を挙げることができる。
【0057】また、本発明のモノクローナル抗体または
医薬組成物の治療または予防効果については、常法に従
って、インビトロ試験または既知の疾患モデル動物を用
いたインビボ試験により検討することができる。副甲状
腺ホルモン依存的な骨からのカルシウムの放出に対する
抑制効果は、45Caを投与した妊娠マウスから生まれた
新生仔の頭頂骨を、PTHと抗PTHモノクローナル抗体の存
在下で培養し、培地中へ放出された45Caの量を液体シ
ンチレーションカウンターで測定することにより検討す
ることができる。
【0058】PTH依存的に引き起こされる高カルシウム
血症に対する治療効果は、正常マウスにPTHを投与する
ことにより人為的に作製される高カルシウム血症モデル
マウスに対して、本発明の抗PTHモノクローナル抗体を
前投与しておくことにより抑制される該高カルシウム血
症の発症の程度を血中カルシウムイオン濃度を測定する
ことにより検討できる。
【0059】
【実施例】以下、実施例を以て本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明が該実施例に記載される態様のみに限
定されるものではないことは言うまでもない。
【0060】実施例1 ヒト抗体産生トランスジェニッ
クマウスの作製 前述したノックアウトマウス及びトランスジェニックマ
ウスの作製において慣用される遺伝子工学技術を基礎と
して、既報の方法に従ってイムノグロブリンクラスがIg
G2/κであるヒト免疫グロブリンを産生するヒト抗体産
生トランスジェニックマウスを製造した(Nature Genet
ics, Vol.7, p.13-21, 1994;Nature Genetics, Vol.1
5, p.146-156, 1997;特表平4-504365号公報;特表平7-
509137号公報;日経サイエンス、6月号、第40〜第5
0頁、1995年;国際出願公開WO94/25585
号公報;Nature, Vol.368, p.856-859, 1994;及び特表
平6−500233号公報など)。このヒト抗体産生ト
ランスジェニックマウスを後述の実施例で用いた。
【0061】実施例2 ヒトPTH部分ペプチドの調製 <2-1> ヒトPTH(1-34)-KLHの調製 ヒトPTHのN末端1-34の配列(PTH(1-34)、配列番号1の
アミノ酸番号32乃至65、ペプチド研究所(製))に、コ
ンジュゲーション緩衝液(10ml (0.1MのMES, 0.9MのNaC
l, pH4.7)中に6.6mgとなるように調製)とKLH(keyh
ole limpet hemocyanin、40mg/2ml H2O、ピアース(PIER
CE)社製)を混和し、EDC(1-Ethyl-3-(3-dimethylam
inopropyl)carbodiimide、70mg)を加え、室温で撹拌し
な がら3時間反応させた。反応溶液を、リン酸緩衝液
で3回透析(500mlで1時間、1000mlで14時間、1000ml
で6時間)し、リン酸緩衝液で洗浄し、PTH(1-34)-KLH
コンジュゲート(3.4mg/ml)を調製した。得られたPTH
(1-34)-KLHを後述の実施例に述べるヒト抗体産生マウス
の免疫感作における抗原(免疫原)として用いた。
【0062】実施例3 ヒトPTHに対するヒトモノクロ
ーナル抗体の調製 本実施例におけるモノクローナル抗体の作製は、実験医
学(別冊)細胞工学ハンドブック(黒木登志夫ら編集、
羊土社発行、第66〜第74頁、1992年)及び単ク
ローン抗体実験操作入門(安東民衛ら著作、講談社発
行、1991年)等に記載されるような一般的方法に従
って調製した。免疫原としてのヒトPTHは、実施例2で
調製したPTH(1-34)-KLHを用いた。被免疫動物は、実施
例1で作製したIgG2/κヒト免疫グロブリンを産生する
ヒト抗体産生トランスジェニックマウスを用いた。な
お、細胞培養操作は、マルチウェルマイクロプレートを
用いて行った。
【0063】ヒト抗体産生トランスジェニックマウス
(30匹)の各々に、PTH(1-34)-KLH(50μg/匹)を、
完全フロインドアジュバント(Complete Freund's Adju
vant)とともにフッドパッド内注射することにより初回
(0日)免疫した。初回免疫から1週間毎に同抗原(同
量。但し完全フロインドアジュバントなし)をフッドパ
ッド内注射により4回以上追加免疫し、さらに以下に述
べる脾臓細胞及びリンパ節細胞の取得の4日及び3日前
にPTH(1-34)(50μg/匹)を同様にして免疫した。各々
の動物から脾臓及びリンパ節を外科的に取得し、各々の
組織から回収した脾臓細胞及びリンパ節細胞をマウスミ
エローマP3/X63-AG8.653(ATCC No.: CRL1580)と5:
1で混合し、融合剤としてポリエチレングリコール4000
またはポリエチレングリコール1500(Boehringer Mannh
eim社製)を用いて細胞融合させることにより多数のハ
イブリドーマを作製した。ハイブリドーマの培養は、10
%のウシ胎児血清(Fetal Calf Serum、FCS)とアミ
ノプテリンを含有するHAT含有EX-CELL620-HSF培地
(JRH Bioscience社製)中で培養することにより行っ
た。抗ヒトPTHヒトモノクローナル抗体を産生するハイ
ブリドーマクローンの選択(スクリーニング)及び各々
のハイブリドーマが産生するヒトモノクローナル抗体の
特徴付けは、後述するELISAにより測定することに
より行った。
【0064】実施例4 ヒトモノクローナル抗体産生ハ
イブリドーマのELISAによるスクリーニング 以下に述べる4種類のELISAにより、ヒト免疫グロブリ
ン重鎖(hIgH)及びヒト免疫グロブリン軽鎖κを有し、
かつヒトPTHに特異的な反応性を有するヒトモノクロー
ナル抗体を産生する多数のハイブリドーマを得た(表1
及び表2)。なお、本実施例を含め以下のいずれの実施
例中、並びに当該実施例における試験結果として示した
表または図中においては、各々の本発明のヒト抗ヒトPT
Hモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクロー
ンを記号を用いて命名した。以下のハイブリド−マクロ
ーンは親クローンを表わす:12D7、15G2、22C5、5C5、3
6D11、18H4、18H5、37G10、2C8、及び13F5。また、上記
各々の親クローンからサブクローニングされたハイブリ
ドーマクローンは、その親クローン名の次にさらなる番
号を付加することによって命名した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】それらの内の1つのハイブリドーマクロー
ン22C5-3を、平成10年11月27日付で通商産業省工
業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば
市東一丁目1番3号)に国際寄託した(国際寄託番号FERM
BP-6588)。
【0068】<4-1> ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)
を有するモノクローナル抗体の検出 ヒトPTH(1-34)とオバルブミン(OVA、シグマ社製)とか
らなるコンジュゲート(ヒトPTH(1-34)-OVA;25〜50μg
/ml, 50μl/ウェル)を、ELISA用96穴マイクロプレート
(ELISA用プレートS、住友ベークライト社製)の各ウェ
ルに加え、室温で2時間インキュベートし、ヒトPTH(1-
34)-OVAをマイクロプレートに吸着させた。次いで、上
清を捨て、0.05%Tween20含有リン酸緩衝液(PBS-T)で3
回洗浄後、各ウェルにブロッキング試薬(100μl、0.5%
ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS-T)を加え室
温で2時間インキュベートし、ヒトPTH(1-34)-OVAが結
合していない部位をブロックした。各ウェルを、PBS-T
で3回洗浄した。このようにして、各ウェルをヒトPTH
(1-34)-OVAでコーティングしたマイクロプレートを作製
した。
【0069】各ウェルに、各々のハイブリドーマの培養
上清(50μl)を加え、室温下で2時間反応させた後、
各ウェルを、0.05%のTween20を含有するリン酸緩衝液
(200μl)で3回 洗浄した。次いで、各ウェルに、パ
ーオキシダーゼ(Peroxidase)で標識したヤギ抗ヒトIg
G(Fc)抗体(1,000倍希釈、50μl/ウェル、Rockland社
製、カタログNo.709-1317)を加え、室温下で1時間イ
ンキュベートした。マイクロプレートを、0.05%Tween20
を含有するリン酸緩衝液で3回洗浄後、基質緩衝液(10
0μl/ウェル;クエン酸/リン酸緩衝液(pH5.0, 50m
l)、オルトフェニレンジアミン(O-Phenylenediamine,
OPD;20mg)、30%過酸化水素水(15μl))を各ウェル
に加え、室温下 で10〜30分間インキュベートし
た。次いで、2M硫酸(50μl)を各ウェルに加え、反応
を止めた。波長490nmでの吸光度をフルオロスキャンマ
イクロプレーリーダー(Labsystems/大日本社製)で測
定した。なお、対照として、培養液のみ、BSA溶液の
み、またはOVA溶液のみを被験物質として用い、上述と
同様にしてアッセイを行った。
【0070】<4-2> ヒト免疫グロブリン軽鎖κ(IgL
κ)を有するモノクローナル抗体の検出 ヒトPTH(1-34)とオバルブミン(OVA、シグマ社製)とか
らなるコンジュゲート(ヒトPTH(1-34)-OVA;25〜50μ
g/ml、50μl/ウェル)を、ELISA用96穴マイクロプレー
ト(ELISA用プレートS、住友ベークライト製)の各ウ
ェルに加え、室温で2時間インキュベートし、PTH(1-3
4)-OVAをマイクロプレートに吸着させた。次いで、上清
を捨て、リン酸緩衝液(PBS)で洗浄後、各ウェルにブロ
ッキング試薬(200 μl、0.5%OVAを含有する緩衝液)を
加え室温で2時間インキュベートし、ヒトPTH(1-34)-OV
Aが結合していない部位をブロックした。各ウェルを、
0.05%のTween20を含有するリン酸緩衝液(PBS, 200μ
l)で3回洗浄した。このようにして、各ウェルをヒトP
TH(1-34)-OVA でコーティングしたマイクロプレートを
作製した。
【0071】各ウェルに、各々のハイブリドーマの培養
上清(50μl)を加え、2時間反応させた後、各ウェル
を、0.05%のTween20を含有するリン酸緩衝液(200μl)
で3回洗浄した。次いで、各ウェルに、過酸化酵素(Pe
roxidase)で標識したヤギ抗ヒトIgκ抗体(1,000倍希
釈、50μl/ウェル、PROTOS社製、カタログNo.726)を
加え、室温下で1時間インキュベートした。マイクロプ
レートを、0.05%Tween20を含有するリン酸緩衝液で3回
洗浄後、基質緩衝液(100μl/ウェル;クエン酸/リン
酸緩衝液(pH5.0,50ml)、オルトフェニレンジアミン(O
-Phenylenediamine, OPD;20mg)、30%過酸化水素水(1
5μl))を各ウェルに加え、室温下 で20分間インキ
ュベートした。次いで、2M硫酸(50μl)を各ウェルに
加え、反応を止めた。波長490nmでの吸光度をフルオロ
スキャンマイクロプレーリーダー(Labsystems/大日本
社製)で測定した。なお、対照として、培養液のみ、BS
A溶液のみ、またはOVA溶液のみを被験物質として用い、
上述と同様にしてアッセイを行った。
【0072】<4-3> N-Bio-PTHを用いたヒトPTHに対
する反応性の検出 リン酸緩衝液で希釈したヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体(2.4μ
g/ml, 50μl/ウェル,Organon Teknika社製)を、ELISA
用96穴マイクロプレート(Nunc-Immuno Plate、Nunc社
製、カタログ番号:#439454)の各ウェルに加え、室温
で2時間インキュベートし、ヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体を
マイクロプレートに吸着させた。次いで、上清を捨て、
0.05%Tween20含有リン酸緩衝液(PBS-T)で3回洗浄後、
各ウェルにブロッキング試薬(200μl、0.5%ウシ血清ア
ルブミン(BSA)を含有するPBS-T)を加え室温で2時間
インキュベートし、ヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体が結合して
いない部位をブロックした。
【0073】各ウェルを、PBS-T(0.05%のTween20を含
有するリン酸緩衝液、200μl)で3回洗浄した。このよ
うにして、各ウェルをヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体でコーテ
ィングしたマイクロプレートを作製した。各ウェルに、
ブロッキング試薬で希釈した各々のハイブリドーマの培
養上清(50μl)を加え、室温下で2時間反応させた
後、各ウェルを、PBS-Tで3回洗浄した。次いで、アミ
ノ末端(N末)をビオチン(Biotin)で標識したヒトPT
H(1-34)(以下、N-Bio-PTH(1-34)と称する場合もある。
ペプチド研究所製)のブロッキング試薬希釈溶液(100n
g/ml, 50μl/ウェル)を、各ウェルに加え、室温下で2
時間インキュベートした。
【0074】インキュベーションの後、マイクロプレー
トを、PBS-Tで3回洗浄後、2mMのMgCl2を含むブロッキ
ング試薬で10,000倍に希釈したストレプトアビジン−β
−ガラクトシダーゼ(Streptoavidin-β-galactosidas
e、50μl/ウェル、Gibco BRL社製)を各ウェルに加
え、室温下で1時間インキュベートした。マイクロプレ
ートを、PBS-Tで4回洗浄後、基質緩衝液(100mMのNaC
l、1mMのMgCl2、10mMのリン酸緩衝液(Na及びKを含
有)、BSA(1mg/ml))(pH7.0)で希釈した5mg/mlの4−
メチル−ウンベリフェリル−β−D−ガラクトシド(4-
Methyl-umbelliferyl-β-D-galactoside、100μl/ウェ
ル、Sigma社製)を各ウェルに加え、室温下で30分間
インキュベートした。各ウェルに、2MのNa2CO3(21.2g/
200ml、50μl/ウェル)を加え、反応を止めた。波長46
0nm(励起:355nm)での蛍光強度をフルオロスキャンマ
イクロプレートリ−ダ−(Labsystems/大日本社製)で
測定した。なお、対照として、培養液のみ、BSA溶液の
み、またはOVA溶液のみを被験物質として用い、上述と
同様にしてアッセイを行った。
【0075】<4-4> C-Bio-PTHを用いたヒトPTHに対
する反応性の検出 前記実施例<4-3>で使用したN-Bio-PTH(1-34)の代り
に、カルボキシル末端(C末)を同様にしてビオチンで
標識したC-Bio-PTH(1-38)-Cys(CysのSH基を介してビオ
チンと結合している、ペプチド研究所製)を標識抗原と
して用いる以外は、前記実施例<4-3>と同様にして行
った。
【0076】実施例5 ヒト副甲状腺ホルモン関連タン
パク(Parathyroid Hormone-RelatedProtein、PTHrP)
との交叉反応性の確認 前記実施例で調製した抗ヒトPTHヒトモノクローナル抗
体のヒトPTHrPへの交叉反応性の有無を分析した。試験
方法は、前記実施例<4-1>において用いたヒトPTH(1-3
4)-OVAの代りに、ヒトPTHrP(1-34)-OVA(配列番号2)
を用いること以外は全て同様の操作を行う過酸化酵素
(Peroxidase)標識ELISAを用いた。なお、各々のヒト
抗ヒトPTHモノクローナル抗体のヒトPTHに対する反応性
は、前記実施例<4-1>と同一の過酸化酵素標識ELISAに
より測定した。対照抗体としては、実施例1で作製した
ヒト抗体産生トランスジェニックマウスを、ヒト副甲状
腺ホルモン関連タンパク(Parathyroid Hormone-Relate
d Protein、PTHrP)のN末端アミノ酸配列からなるペプ
チド(PTHrP(1-34)、配列番号2)で、実施例3と同様
にして免疫することにより調製した抗ヒトPTHrPヒトモ
ノクローナル抗体(クローン:2F8)を用いた。結果を
図1(PTHへの反応性)及び図2(PTHrPへの交叉反応
性)に示す。いずれのヒト抗ヒトPTHモノクローナル抗
体も、ヒトPTHのみに特異的な反応性を示し、ヒトPTHrP
には反応性を有しないことが確認された。
【0077】実施例6 モノクローナル抗体の精製 後述のインビトロ試験に用いるために、実施例4で取得
した各々のハイブリドーマの培養上清からヒトモノクロ
ーナル抗体を下記のようにして精製した。各ハイブリド
ーマの抗体産生量(μg/ml)を表3に示した。
【0078】
【表3】
【0079】10%のウシ胎児血清(Fetal Calf Serum、
FCS)とアミノプテリンを含有するHAT含有EX-CEL
L-620-HSF培地(JRH Bioscience社製)中で培養した各
々のハイブリドーマの培養上清(30〜40ml/50mlチュー
ブ)を加え、吸着緩衝液(20mMのKH2PO4, 180mMのNa2HP
O4及び154mMのNaCl、pH7.6)並びに組換えプロテインA
(rProtein A Fast Flow、0.2ml、IgG吸着量:35mg/ml
ゲル、ファルマシア社製)を加え、15℃で5時間撹拌す
ることにより、各々の培養上清中に含まれる抗体をProt
ein Aに吸着させた。各々のチューブを遠心分離(3,000
rpm, 10分)した後、遠心上澄を捨て、緩衝液(20mMのN
aPi, 150mMのNaCl, pH6.0)(10ml)を添加し、培養上
清中に含まれるウシIgGを溶出させた。遠心分離(3,000
rpm, 10分)した後、遠心上澄(ウシIgGが溶出されてい
る)を捨て、緩衝液(20mMのNaPi, 150mMのNaCl, pH6.
0)(10ml)を添加した後、さらに遠心分離(3,000rpm,
10分)した。この遠心後、遠心上澄を捨て、遠心残渣
に緩衝液(20mMのNaPi, 150mMのNaCl, pH6.0)(0.65m
l)を2回加え混和した後、1.5mlマイクロチュ−ブに移
した。
【0080】各々のマイクロチュ−ブについて、以下の
操作を1乃至3回行い、ヒト抗ヒトPTHモノクローナル
抗体の精製物を得た。各々のマイクロチュ−ブを遠心分
離 (14,000rpm, 2分)し、上澄を捨て、溶出緩衝液(1
50mMのNaClを含む100mMのクエン酸ナトリウム緩衝液、p
H3.0)(0.7ml)を加え、撹拌後さらに遠心分離(1400r
pm, 2分)した。遠心上澄をフィルターで濾過した後、
中和緩衝液(500mMのNa2HPO4, 50mMのKH2PO4, pH8.7)
(0.3ml)中に注入し溶出画分を得た。得られた溶出画
分を、リン酸緩衝液で透析し、ヒト抗ヒトPTHモノクロ
ーナル抗体の精製物を得た。
【0081】実施例7 ヒト抗ヒトPTHモノクローナル
抗体によるPTH依存的細胞内cAMPの上昇の抑制 PTHの主作用は、例えば、骨では骨芽細胞に作用してア
デニレートシクラーゼ(AC)やフォスフォリパーゼC
(PLC)を賦活化し破骨細胞性の骨吸収を誘導する作
用、また腎臓ではサイクイックAMP(cAMP)やリ
ン排泄を促進しカルシウムの再吸収を促進するという作
用が挙げられる。cAMPは、細胞表面に作用するホルモン
や神経伝達物質などの細胞外からの情報(第1メッセン
ジャー)を細胞内に伝達する役割を有する第2メッセン
ジャーとしての役割を担っており、該ホルモンやアミン
などの種々の第1メッセンジャーによるシグナルに依存
して、その産生が上昇し、細胞内での引き続く反応を制
御する。
【0082】本試験では、前記で得た種々のヒト抗ヒト
PTHモノクローナル抗体の、ヒトPTHの作用の制御のため
に機能的に働く活性の有無を、PTH依存的な細胞内cAMP
の産生の上昇に対する抑制効果を指標として検討した。
10%ウシ胎児血清(FCS)含有RPMI1640培地を含む24穴マ
イクロタイタープレートにラット骨肉腫細胞株UMR106
(ATCC CRL-1661)(1×104個/ウェル)を播種し3日
間培養した。各ウェルをRPMI1640培地で洗浄した後、修
飾RPMI1640培地(PPMI1640培地100ml中に、0.1%ウシ血
清アルブミン(BSA)を100mg、1mMのIBMX(cAMP分解酵
素阻害作用を有する。シグマ社製)を22.2mgを含む)を
1ml/ウェル濃度で加え、37℃で20分培養した。培地
を、ヒトPTH(10ng/ml)及び各々のヒト抗ヒトPTHモノ
クローナル抗体(0.3、1.0または5.0μg/ml)を含有す
る10%FCS含有RPMI1640培地(PTHと抗体を添加して室温
下1時間の前培養、0.5ml/ウェル)に交換し、37℃で20
分培養した。次いで培地を除いた後、cAMPを抽出操作と
して、3mM塩酸を含む95%エタノール(0.25ml/ウェル)
を加え、4℃で2時間処理することにより抽出液を回収
し、1.5mlマイクロチュ−ブに注入した。各上清サンプ
ルを乾燥させた後、cAMP検出EIAキット(Amersham社
製)を用いて該キッ トに添付の実験操作法に従って、
各々の培養上清サンプル中に含まれるcAMPの量を測定し
た。
【0083】いずれのヒト抗ヒトPTHモノクローナル抗
体を含まずヒトPTH(1-34)のみを含む培地を用いて同様
にして培養した場合の結果を対照とした。なお、陽性対
照(ポジティブコントロール)として、ヒトPTH(1-34)
に特異的なマウスモノクローナル抗体3H9(Biogenesis
製、カタログ番号:7170-6206)を用いた。結果を図3
乃至図9に示した。この試験結果から、いずれのヒト抗
ヒトPTHモノクローナル抗体も、PTH依存的細胞内cAMPの
上昇を有意に抑制し、ヒトPTHの作用を機能的に抑制す
る活性を有していることが確認された。
【0084】実施例8 ヒト抗ヒトPTHモノクローナル
抗体によるPTH依存的骨吸収の抑制 前述したとおり、PTHは、骨においては骨芽細胞に作用
して(骨芽細胞による破骨細胞の活性化、骨有機質分解
酵素の産生など)破骨細胞性再吸収を促進し骨からカル
シウムを動員するという骨吸収作用を有している。本試
験では、前記実施例で得た種々のヒト抗ヒトPTHモノク
ローナル抗体の、ヒトPTHの作用の制御のために機能的
に働く活性の有無を、PTH依存的な骨吸収作用の抑制効
果を指標として検討した。
【0085】妊娠15日目のICRマウス(6〜8匹/抗
体、日本チャールズリバー社製)に、45Ca放射性同位
体(50μCi/匹)を皮下投与した。投与から7日後、新
生仔(6〜7日齢)の左右の頭頂骨を無菌的に取りだし、
BG-Jb培地(Gibco BRL社製)中で24時間前培養した。次
いで、培地を捨て、ヒトPTHのN末端1-34の配列(PTH(1
-34)、配列番号1のアミノ酸番号32乃至65、ペプチド研
究所(製))(10ng/ml)並びに各々のヒト抗ヒトPTHモ
ノクローナル抗体(0.1, 1.0, 10または100μg/ml)を
含むBG-Jb培地(Gibco BRL社製)を加え培養した。48時
間の培養後、前記と同濃度のヒトPTH(1-34)及びヒト抗
ヒトPTHモノクローナル抗体を含む培地に交換し、さら
に48時間培養した。培養後、培地中及び頭頂骨中(2N塩
酸で60℃24時間処理して溶解した)の各々に含まれる45
Ca量を液体シンチレーションカウンターを用いて測定
した。試験は各モノクローナル抗体につき3乃至4回行
った。
【0086】いずれのヒト抗ヒトPTHモノクローナル抗
体を含まずヒトPTH(1-34)のみを含む培地を用いて同様
にして培養した場合の結果、並びヒト抗ヒトPTHモノク
ローナル抗体及びヒトPTH(1-34)のいずれも加えないで
同様にして培養した場合の結果を対照とした。なお、陰
性対照として、前記実施例で作製したヒト抗体産生トラ
ンスジェニックマウスにKLH(keyhole limpet hemocy
anin、ピアース(PIERCE)社製)を免疫して調製した抗KL
Hヒトモノクローナル抗体を用いた。結果を図10乃至
図14に示した。また、本試験結果から算出されるPTH
依存的骨吸収を50%阻害する抗体濃度(IC50、3乃至4回
の試験結果の平均値)を表4に示した。
【0087】
【表4】
【0088】実施例9 モノクローナル抗体の抗原に対
する親和性及び中和活性の測定 前記実施例で作製された種々のヒト副甲状腺ホルモンに
対するヒトモノクローナル抗体のヒト副甲状腺ホルモン
との結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)並び
に解離定数(Kd)を、市販の測定キットであるBiacor
e X(アマシャムファルマシア社製)を用いて測定し
た。なお、下記に述べる抗原のセンサーチップへの固定
化以外の操作は、当該キットに添付の取扱説明書及び実
験操作法に従って行った。センサーチップに固定化する
ヒト甲状腺ホルモンは、前記実施例で作製したヒトPTH
(1-38)-Cysを用いた。抗原のセンサーチップへの固定
は、 センサーチップの表面に被覆されているカルボシ
キメチルデキストラン(CM)が有するカルボキシル基
に、リンカーを介してヒトPTH(1-38)-Cysのシステイン
残基が有するメルカプト基(SH基)と結合させることに
より行われた。
【0089】キットに付随のフローセル1(Flow Cell
1)に、0.01MのHEPES緩衝液(0.15MのNaCl、3mMのEDTA
及び0.005%の界面活性剤P20を含有。pH7.4)を5μl/分
で流し、100μlの0.05M NHS(N-Hydroxysuccinimide)
/0.2M EDC(N-Ethyl-N'-(dimethylaminopropyl)carbod
iimido)を添加し、センサーチップ表面に被覆されてい
るCMのカルボキシル基を活性化させた。次いで、100
μlの80mM PDEA(2-(2-pyridinyldithio)ethaneamine)
/0.1M ほう酸緩衝液(pH8.5)を添加し、SH基の反応を
受けるSS基を導入した。さらに、8μlの1μg/ml ヒトPT
H(1-38)-Cys /10mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を
添加することによりヒトPTH(1-38)-Cysをセンサーチッ
プに固定化した。固定化されたヒトPTH(1-38)-Cysの量
は、167RU(resonance unit)であった。なお、未反応
のSS基は、100μlの50mM システイン/1M NaCl/0.1M
ギ酸ナトリウム緩衝液(pH4.3)を添加することにより
ブロックした。
【0090】リファレンスとしてのフローセル2(Flow
Cell 2)は、ヒトPTH(1-38)-Cysの代わりにシステイン
を用いて上記と同様にしてキャッピングした。フローセ
ルに、リン酸緩衝液を30μl/分の流速で流し、前記実施
例で作製した下記ハイブリドーマクローン由来の精製ヒ
トモノクローナル抗体(20〜60μg/ml、60μl)または
下記対照モノクローナル抗体を添加した。 <クローン>36D11-1、15G2-23、18H4-5、18H5-1、22C5
-3、5C5-6、12D7-9-34、2C8、13F5、及び37G10 測定は、結合相2分間及び解離相15分間を標準条件と
して行い、センサーグラムを得た。得られたセンサーグ
ラムのデータに基づき、キットに付随の解析ソフト(BI
Aevaluation3.1)を用いて、結合速度定数(ka)、解
離速度定数(kd)及び解離定数(Kd)を算出した。
結果を表5に示す。いずれのモノクローナル抗体も、極
めて高い抗原親和性及び抗原中和活性を有していた。
【0091】
【表5】
【0092】実施例10 抗ヒトPTHヒトモノクローナ
ル抗体によるPTH誘導性高カルシウム血症の治療効果 前述したとおり、PTHは、骨においては骨芽細胞に作用
して(骨芽細胞による破骨細胞の活性化、骨有機質分解
酵素の産生など)破骨細胞性再吸収を促進し骨からカル
シウムを動員するというカルシウムホメオスタシスの維
持において極めて重要な骨吸収作用を有している。しか
しながら、前述したように、原発性副甲状腺機能亢進
症、続発製副甲状腺機能亢進症、副甲状腺過形成、異所
性PTH産生腫瘍、腎不全のために長期の血液透析を受け
ている患者、あるいはそれらの疾患に伴う種々の合併症
(腎性骨異栄養症など)においては、PTHの合成・分泌
の亢進しており、PTHの過剰分泌は高カルシウム血症を
引き起こす。本試験では、前記で得た種々のヒト抗ヒト
PTHモノクローナル抗体の高カルシウム血症の治療効果
を、PTHを投与することにより人為的に作製したPTH依存
性高カルシウム血症モデルマウスを用いて検討した。
【0093】一晩絶食させた正常CRJ ICRマウス(5乃
至7週齢、雄、約300匹、日本チャールズリバー社製)
の各々について、眼底採血を行い、血中カルシウム濃度
を測定することにより10匹ずつに群分けした。血中カ
ルシウム濃度は、634型自動Ca2+/PHアナライザーを用い
て測定した。眼底採血から3時間後、該マウス(各群1
0匹)の各々に、ヒト抗ヒトPTHモノクローナル抗体
(クローン:15G2-23-1;濃度:3、10若しくは30mg/k
g)を静脈内投与し、さらにその直後にヒトPTHのN末端
1-34の配列(PTH(1-34)、配列番号1のアミノ酸番号32
乃至65、ペプチド研究所(製))(0.05μg/body)を皮
下投与した。該PTHの投与から1時間後、各々のマウスに
ついて眼底採血を行い、前記と同様にして血中カルシウ
ム濃度を測定した。なお、前記と同様にして下記の対照
実験を行った。 (1)眼底採血から3時間後にリン酸緩衝液を静脈内投
与し、その直後に生理食塩水を皮下投与した場合。 (2)眼底採血から3時間後にリン酸緩衝液を静脈内投
与し、その直後に前記PTH(0.05μg/body)を皮下投与
した場合。 結果を、図15に示した。この試験から、本発明のヒト
抗ヒトPTHモノクローナル抗体は、PTH依存性の高カルシ
ウム血症に対して有意な抑制及び治療効果を有している
ことが示された。
【0094】実施例11 抗体フラグメントF(ab')2
びFabの調製 前述のようにして調製した各種のヒト抗ヒトPTHモノク
ローナル抗体の抗体フラグメントF(ab')2及びFabは、下
記のようにして調製できる。モノクローナル抗体(5mg/
ml)を、20mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)に加
え、37℃で30分間インキュベートする。次いで、不溶化
ペプシン(1ml、ピアス社製)を加え、ローテーターで
回転させながら37℃で12時間インキュベートする。反応
液を回収し、遠心分離(3,000rpm、10分間)し、上清を
回収する。プロテインAアフィニティークロマトグラフ
ィーを、プロテインAカラムキット(Amersham社製)の
プロトコールに従って以下のようにして行う。遠心沈殿
物に結合緩衝液を加え、遠心分離(3,000rpm、10分間)
し、上澄を回収する。2回の遠心分離で回収した上澄を
集め、等量の結合緩衝液を加え、さらに1Nの水酸化ナ
トリウムを加えてpH8.9に調整する。該混合溶液を、該
結合緩衝液で平衡化した該プロテインAカラムに添加し
た後、該結合緩衝液(5ml)で2回洗浄し、溶出分画を
回収する。得られた溶出分画を、5mMのリン酸緩衝液
(2L、pH6.8)で透析(4℃、24時間)する。
【0095】さらなる精製のためヒドロキシアパタイト
カラム(バイオラッド社製)を用いて、高速液体クロマ
トグラフィー(HPLC)を行う。透析により得られる
溶液を、該ヒドロキシアパタイトカラムに添加し、5m
Mのリン酸緩衝液を15分間流した後、5mM〜0.4Mのリ
ン酸緩衝液で直線濃度勾配溶出させる。溶出液をフラク
ションコレクターで分取し、280nmでの吸光度を測定
し、F(ab')2を含む分画を回収する。得られた分画をリ
ン酸緩衝液(2L)で透析(4℃、24時間)し、モノク
ローナル抗体の精製F(ab')2を得る。上記方法に加え、
次の別法によっても調製できる。即ち、モノクローナル
抗体を、市販のペプシンを結合させたマイクロビーズと
混合し反応させた後、遠心分離により上澄を回収する。
当該上清を、市販のプロテインAを結合させたマイクロ
ビーズ(例えが、ピアス社製)に加え、溶出液を回収す
る。この溶出液を、F(ab')2溶液とする。
【0096】
【発明の効果】本発明は、未だ社会に提供されていない
ヒトPTHに対するヒトモノクローナル抗体を世界に先ん
じて初めて提供するものである。本発明のヒト抗ヒトPT
Hモノクローナル抗体の一態様として開示したヒトモノ
クローナル抗体は、各々種々の特性(抗原特異性、抗原
親和性、中和活性、等)及び生物活性(PTH依存的細胞
内cAMP上昇抑制活性、PTH依存的な骨からのカルシウム
(Ca)放出の抑制活性、骨吸収抑制活性、骨溶解抑制活
性など)を有するものである。本発明のヒトモノクロー
ナル抗体は、ヒトに対する抗原性を全く有せず、従来の
マウス由来の抗体等の非ヒト哺乳動物由来の抗体からな
る抗体医薬品の治療上の大きな問題点であったHAMA、HA
CAあるいはHAHAによる副作用を全く惹起しないことか
ら、抗体の医薬品としての価値を劇的に増大させるもの
である。
【0097】即ち、本発明のモノクローナル抗体は、ヒ
トPTHの生物活性を機能的に制御する活性を有し、また
従来の抗体医薬品の大きな問題点であったアレルギーや
拒絶反応等の副作用を惹起しないことから、本発明のヒ
トPTHに対するヒトモノクローナル抗体またはその医薬
組成物は、PTHの合成・分泌亢進に起因する可能性を有
する下記のような種々の疾患または症状の治療または予
防に有用である。そのような疾患または症状としては、
例えば、PTHの合成・分泌の亢進を伴う代表的疾患とし
て、原発性副甲状腺機能亢進症;続発性(二次性)副甲
状腺機能亢進症(例えば、慢性腎不全、活性型ビタミン
Dの欠乏、活性型ビタミンDに対する感受性の低下、活
性型ビタミンD受容体の欠乏、リンの蓄積、副甲状腺の
カルシウムに対する感受性の低下、カルシウム受容体の
異常、骨のPTHに対する反応性の低下、PTH受容体の異
常、または偽性副甲状腺機能低下症に伴い発症する続発
性副甲状腺機能亢進症など);副甲状腺過形成;及び異
所性PTH産生腫瘍などが挙げられる。
【0098】さらには、前記のような疾患において合併
する種々の疾患または症状(例えば、原発性副甲状腺機
能亢進症に伴う骨型疾患(繊維性骨炎、指骨の骨膜下吸
収、頭蓋骨のsalt and pepper pattern、歯槽硬膜の消
失、慢性骨減少症あるいは全身的びまん性の骨石灰化な
ど);腎・尿路結石型疾患(腎臓及び尿路における結石
の形成など)、及び高カルシウム血症型疾患(全身倦
怠、筋力低下、口渇、多飲、多尿、抑うつ、嗜眠、意識
障害、悪心、嘔吐、並びに潰瘍、慢性膵炎等の消化器症
状など)、腎性骨異栄養症(繊維性骨炎)、先端巨大
症、甲状腺機能亢進症及びぺージェット病などの高回転
型骨症)が挙げられる。また、血液透析を受けている腎
不全患者において併発するPTH分泌亢進性の疾患や症状
(例えば、骨痛、骨折などの骨病変)、さらには該PTH
の分泌の亢進に伴って引き起こされる高カルシウム血症
を挙げることができる。
【0099】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Japan Tobacco,Inc. <120> Human Monoclonal Antibody For Parathyroid Hormone <130> J98-0107 <140> <141> <160> 2 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 115 <212> PRT <213> Homo sapiens <220> <221> PROPEP <222> (1)..(31) <400> 1 Met Ile Pro Ala Lys Asp Met Ala Lys Val Met Ile Val Met Leu Ala 1 5 10 15 Ile Cys Phe Leu Thr Lys Ser Asp Gly Lys Ser Val Lys Lys Arg Ser 20 25 30 Val Ser Glu Ile Gln Leu Met His Asn Leu Gly Lys His Leu Asn Ser 35 40 45 Met Glu Arg Val Glu Trp Leu Arg Lys Lys Leu Gln Asp Val His Asn 50 55 60 Phe Val Ala Leu Gly Ala Pro Leu Ala Pro Arg Asp Ala Gly Ser Gln 65 70 75 80 Arg Pro Arg Lys Lys Glu Asp Asn Val Leu Val Glu Ser His Glu Lys 85 90 95 Ser Leu Gly Glu Ala Asp Lys Ala Asp Val Asn Val Leu Thr Lys Ala 100 105 110 Lys Ser Gln 115 <211> 34 <212> PRT <213> Homo sapiens <220> <221> PEPTIDE <222> (1)..(34) <400> 2 Ala Val Ser Glu His Gln Leu Leu His Asp Lys Gly Lys Ser Ile Gln 1 5 10 15 Asp Leu Arg Arg Arg Phe Phe Leu His His Leu Ile Ala Glu Ile His 20 25 30 Thr Ala
【0100】
【図面の簡単な説明】
【図1】抗ヒトPTHヒトモノクローナル抗体のヒトPTHへ
の反応性を示す図。縦軸は吸光度を示し、横軸は抗体濃
度を示す。
【図2】抗ヒトPTHヒトモノクローナル抗体のヒトPTHrP
への交叉反応性を示す図。縦軸は吸光度を示し、横軸は
抗体濃度を示す。
【図3】PTH依存的細胞内cAMPの上昇に対する各種の抗
ヒトPTHヒトモノクローナル抗体の抑制効果を示す図。
縦軸は、cAMPの産生量を示し、また横軸は、抗体濃度が
0.3、1または5μg/mlにおける各々のモノクローナル
抗体のクローン名を表わす。なお、横軸において、「PT
H(+)」は、いずれのモノクローナル抗体も含まずPTH(1-
34)のみを含む培地を用いた試験における結果を示し、
「PTH(-)」は、培地のみ(抗体及びPTH(1-34)のいずれ
をも含まない)を用いた試験における結果を示す。
【図4】PTH依存的細胞内cAMPの上昇に対する各種の抗
ヒトPTHヒトモノクローナル抗体の抑制効果を示す図。
縦軸は、cAMPの産生量を示し、また横軸は、抗体濃度が
0.3または1μg/mlにおける各々のモノクローナル抗体
のクローン名を表わす。なお、横軸において、「PTH
(+)」は、いずれのモノクローナル抗体も含まずPTH(1-3
4)のみを含む培地を用いた試験における結果を示し、
「PTH(-)」は、培地のみ(抗体及びPTH(1-34)のいずれ
をも含まない)を用いた試験における結果を示す。
【図5】PTH依存的細胞内cAMPの上昇に対する各種の抗
ヒトPTHヒトモノクローナル抗体の抑制効果を示す図。
縦軸は、cAMPの産生量を示し、また横軸は、抗体濃度が
0.3または1μg/mlにおける各々のモノクローナル抗体
のクローン名を表わす。なお、横軸において、「PTH
(+)」は、いずれのモノクローナル抗体も含まずPTH(1-3
4)のみを含む培地を用いた試験における結果を示し、
「PTH(-)」は、培地のみ(抗体及びPTH(1-34)のいずれ
をも含まない)を用いた試験における結果を示す。
【図6】PTH依存的細胞内cAMPの上昇に対する各種の抗
ヒトPTHヒトモノクローナル抗体の抑制効果を示す図。
縦軸は、cAMPの産生量を示し、また横軸は、抗体濃度が
0.3または1μg/mlにおける各々のモノクローナル抗体
のクローン名を表わす。なお、横軸において、「PTH
(+)」は、いずれのモノクローナル抗体も含まずPTH(1-3
4)のみを含む培地を用いた試験における結果を示し、
「PTH(-)」は、培地のみ(抗体及びPTH(1-34)のいずれ
をも含まない)を用いた試験における結果を示す。
【図7】PTH依存的細胞内cAMPの上昇に対する各種の抗
ヒトPTHヒトモノクローナル抗体の抑制効果を示す図。
縦軸は、cAMPの産生量を示し、また横軸は、抗体濃度が
0.3または1μg/mlにおける各々のモノクローナル抗体
のクローン名を表わす。なお、横軸において、「PTH
(+)」は、いずれのモノクローナル抗体も含まずPTH(1-3
4)のみを含む培地を用いた試験における結果を示し、
「PTH(-)」は、培地のみ(抗体及びPTH(1-34)のいずれ
をも含まない)を用いた試験における結果を示す。
【図8】PTH依存的細胞内cAMPの上昇に対する各種の抗
ヒトPTHヒトモノクローナル抗体の抑制効果を示す図。
縦軸は、cAMPの産生量を示し、また横軸は、抗体濃度が
0.3または1μg/mlにおける各々のモノクローナル抗体
のクローン名を表わす。なお、横軸において、「PTH
(+)」は、いずれのモノクローナル抗体も含まずPTH(1-3
4)のみを含む培地を用いた試験における結果を示し、
「PTH(-)」は、培地のみ(抗体及びPTH(1-34)のいずれ
をも含まない)を用いた試験における結果を示す。
【図9】PTH依存的細胞内cAMPの上昇に対する各種の抗
ヒトPTHヒトモノクローナル抗体の抑制効果を示す図。
縦軸は、cAMPの産生量を示し、また横軸は、抗体濃度が
0.3または1μg/mlにおける各々のモノクローナル抗体
のクローン名を表わす。なお、横軸において、「PTH
(+)」は、いずれのモノクローナル抗体も含まずPTH(1-3
4)のみを含む培地を用いた試験における結果を示し、
「PTH(-)」は、培地のみ(抗体及びPTH(1-34)のいずれ
をも含まない)を用いた試験における結果を示す。
【図10】PTHの骨吸収促進作用に対する各種の抗ヒトP
THヒトモノクローナル抗体の阻害効果を示す図。縦軸
は、阻害率(%)を示し、また横軸は、抗体濃度を示
す。nは、試験したマウスの匹数を示す。なお、各値
は、複数のマウスを用いた試験の平均値(±SEM)。PK1
6.1.4は、陰性抗体である抗KLHヒトモノクローナル抗体
を意味する。
【図11】PTHの骨吸収促進作用に対する各種の抗ヒトP
THヒトモノクローナル抗体の阻害効果を示す図。縦軸
は、阻害率(%)を示し、また横軸は、抗体濃度を示
す。nは、試験したマウスの匹数を示す。なお、各値
は、複数のマウスを用いた試験の平均値(±SEM)。
【図12】PTHの骨吸収促進作用に対する各種の抗ヒトP
THヒトモノクローナル抗体の阻害効果を示す図。縦軸
は、阻害率(%)を示し、また横軸は、抗体濃度を示
す。nは、試験したマウスの匹数を示す。なお、各値
は、複数のマウスを用いた試験の平均値(±SEM)。
【図13】PTHの骨吸収促進作用に対する各種の抗ヒトP
THヒトモノクローナル抗体の阻害効果を示す図。縦軸
は、阻害率(%)を示し、また横軸は、抗体濃度を示
す。nは、試験したマウスの匹数を示す。なお、各値
は、複数のマウスを用いた試験の平均値(±SEM)。
【図14】PTHの骨吸収促進作用に対する各種の抗ヒトP
THヒトモノクローナル抗体の阻害効果を示す図。縦軸
は、阻害率(%)を示し、また横軸は、抗体濃度を示
す。nは、試験したマウスの匹数を示す。なお、各値
は、複数のマウスを用いた試験の平均値(±SEM)。
【図15】抗ヒトPTHヒトモノクローナル抗体15G2-23-1
が有するPTH誘導性高カルシウム血症の治療効果を示す
図。縦軸は血中イオン化カルシウムの量を示す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 19/08 A61K 31/00 619D 43/00 643D A61K 39/395 39/395 M 39/44 39/44 C12N 5/10 C12P 21/08 15/02 G01N 33/53 E 15/09 ZNA 33/577 B C12P 21/08 C12N 5/00 B G01N 33/53 15/00 C 33/577 ZNAA (72)発明者 楠 千洋 神奈川県横浜市金沢区福浦1−13−2 日 本たばこ産業株式会社医薬探索研究所内 Fターム(参考) 4B024 AA01 BA55 DA02 GA03 GA18 4B064 AG27 CA10 CA20 CC24 CE06 CE12 DA01 4B065 AA91X AA93Y AB05 BA08 BD15 BD17 CA25 CA44 4C085 AA14 BB36 CC05 CC23 GG01 GG02 4H045 AA11 AA30 BA18 BA41 CA40 DA30 DA86 EA26 EA27 EA30 FA72 GA10 GA15 GA24 GA26

Claims (43)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト副甲状腺ホルモンまたはその一部に
    反応性を有するヒトモノクローナル抗体またはその一
    部。
  2. 【請求項2】 該ヒトモノクローナル抗体が、下記
    (a)乃至(c)のいずれかに記載の性質を有すること
    を特徴とする請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体
    またはその一部: (a)副甲状腺ホルモン刺激に伴う細胞内でのcAMP
    の上昇に対して抑制的に作用する; (b)副甲状腺ホルモン刺激に伴う骨からのカルシウム
    の放出に対して抑制的に作用する;または (c)副甲状腺ホルモン刺激に伴う血中カルシウムの上
    昇に対して抑制的に作用する。
  3. 【請求項3】 該ヒトモノクローナル抗体が、下記のア
    ミノ酸配列:SVSEIQLMHNLGKHLNSMERVEWLRKKLQDVHNF、を
    有するヒト副甲状腺ホルモンの部分アミノ酸配列に反応
    性を有することを特徴とする請求項1に記載のヒトモノ
    クローナル抗体またはその一部。
  4. 【請求項4】 該ヒトモノクローナル抗体のイムノグロ
    ブリンクラスが、IgG2であることを特徴とする請求
    項1乃至請求項3のいずれかに記載のヒトモノクローナ
    ル抗体またはその一部。
  5. 【請求項5】 該ヒトモノクローナル抗体が、ヒト抗体
    を産生する能力を有するトランスジェニック非ヒト哺乳
    動物に由来するモノクローナル抗体であることを特徴と
    する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のヒトモノ
    クローナル抗体またはその一部。
  6. 【請求項6】 該トランスジェニック非ヒト哺乳動物
    が、トランスジェニックマウスであることを特徴とする
    請求項5に記載のヒトモノクローナル抗体またはその一
    部。
  7. 【請求項7】 該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲状
    腺ホルモンとの結合速度定数(ka)が、1.0×103(1/
    M.Sec)以上の数値であることを特徴とする請求項1乃至
    請求項6のいずれかに記載のヒトモノクローナル抗体ま
    たはその一部。
  8. 【請求項8】 該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲状
    腺ホルモンとの解離速度定数(kd)が、1.0×10-3(1/
    Sec)以下の数値であることを特徴とする請求項1乃至請
    求項6のいずれかに記載のヒトモノクローナル抗体また
    はその一部。
  9. 【請求項9】 該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲状
    腺ホルモンとの解離定数(Kd)が、1.0×10-7(M)以下
    の数値であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の
    いずれかに記載のヒトモノクローナル抗体またはその一
    部。
  10. 【請求項10】 該結合速度定数(ka)が、1.0×104
    (1/M.Sec)以上の数値であることを特徴とする請求項7
    に記載のヒトモノクローナル抗体またはその一部。
  11. 【請求項11】 該解離速度定数(kd)が、1.0×10
    -4(1/Sec)以下の数値であることを特徴とする請求項8
    に記載のヒトモノクローナル抗体またはその一部。
  12. 【請求項12】 該解離定数(Kd)が、1.0×10-8(M)
    以下の数値であることを特徴とする請求項9に記載のヒ
    トモノクローナル抗体またはその一部。
  13. 【請求項13】 該解離定数(Kd)が、1.0×10-9(M)
    以下の数値であることを特徴とする請求項12に記載の
    ヒトモノクローナル抗体またはその一部。
  14. 【請求項14】 該解離定数(Kd)が、1.0×10
    -10(M)以下の数値であることを特徴とする請求項13に
    記載のヒトモノクローナル抗体またはその一部。
  15. 【請求項15】 該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲
    状腺ホルモンとの結合速度定数(ka)が、1.0×103(1
    /M.Sec)以上の数値であることを特徴とする請求項2ま
    たは請求項3に記載のヒトモノクローナル抗体またはそ
    の一部。
  16. 【請求項16】 該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲
    状腺ホルモンとの解離速度定数(kd)が、1.0×10
    -3(1/Sec)以下の数値であることを特徴とする請求項2
    または請求項3に記載のヒトモノクローナル抗体または
    その一部。
  17. 【請求項17】 該ヒトモノクローナル抗体とヒト副甲
    状腺ホルモンとの解離定数(Kd)が、1.0×10-7(M)以
    下の数値であることを特徴とする請求項2または請求項
    3に記載のヒトモノクローナル抗体またはその一部。
  18. 【請求項18】 該結合速度定数(ka)が、1.0×104
    (1/M.Sec)以上の数値であることを特徴とする請求項1
    5に記載のヒトモノクローナル抗体またはその一部。
  19. 【請求項19】 該解離速度定数(kd)が、1.0×10
    -4(1/Sec)以下の数値であることを特徴とする請求項1
    6に記載のヒトモノクローナル抗体またはその一部。
  20. 【請求項20】 該解離定数(Kd)が、1.0×10-8(M)
    以下の数値であることを特徴とする請求項17に記載の
    ヒトモノクローナル抗体またはその一部。
  21. 【請求項21】 該解離定数(Kd)が、1.0×10-9(M)
    以下の数値であることを特徴とする請求項20に記載の
    ヒトモノクローナル抗体またはその一部。
  22. 【請求項22】 該解離定数(Kd)が、1.0×10
    -10(M)以下の数値であることを特徴とする請求項21に
    記載のヒトモノクローナル抗体またはその一部。
  23. 【請求項23】 ヒト副甲状腺ホルモンまたはその一部
    に反応性を有するヒトモノクローナル抗体を産生する細
    胞。
  24. 【請求項24】 該細胞が、ヒト抗体を産生する能力を
    有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物に由来するB
    細胞であることを特徴とする請求項23に記載の細胞。
  25. 【請求項25】 該トランスジェニック非ヒト哺乳動物
    が、トランスジェニックマウスであることを特徴とする
    請求項24に記載の細胞。
  26. 【請求項26】 該細胞が、ヒト抗体を産生する能力を
    有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物に由来するB
    細胞と哺乳動物由来のミエローマ細胞とを融合して得ら
    れるハイブリドーマであることを特徴とする請求項23
    に記載の細胞。
  27. 【請求項27】 該トランスジェニック非ヒト哺乳動物
    が、トランスジェニックマウスであることを特徴とする
    請求項26に記載の細胞。
  28. 【請求項28】 該細胞が、国際寄託番号FERM BP-6588
    で識別されるハイブリドーマであることを特徴とする請
    求項27に記載の細胞。
  29. 【請求項29】 該細胞が、ヒト副甲状腺ホルモンまた
    はその一部に反応性を有するヒトモノクローナル抗体の
    重鎖をコードするDNA若しくはその軽鎖をコードする
    DNAのいずれか一方のDNA、または両方のDNAが
    細胞内に導入されることにより形質転換された形質転換
    細胞であることを特徴とする請求項23に記載の細胞。
  30. 【請求項30】 ヒト副甲状腺ホルモンまたはその一部
    に反応性を有するヒトモノクローナル抗体またはその一
    部であって、国際寄託番号FERM BP-6588で識別されるハ
    イブリドーマから産生されるヒトモノクローナル抗体若
    しくは該ヒトモノクローナル抗体と実質的に同一の性質
    を有するヒトモノクローナル抗体、またはその一部。
  31. 【請求項31】 請求項1乃至請求項22または請求項
    30のいずれかに記載のヒトモノクローナル抗体または
    その一部、及び薬学的に許容されうる担体とを含んでな
    る医薬組成物。
  32. 【請求項32】 請求項2、請求項3、請求項15乃至
    請求項22または請求項30のいずれかに記載のヒトモ
    ノクローナル抗体またはその一部、及び薬学的に許容さ
    れうる担体とを含んでなる医薬組成物。
  33. 【請求項33】 該医薬組成物が、副甲状腺ホルモンの
    分泌の亢進状態を伴う疾患の治療に用いられることを特
    徴とする請求項31または請求項32に記載の医薬組成
    物。
  34. 【請求項34】 該疾患が、原発性副甲状腺機能亢進症
    または原発性副甲状腺機能亢進症に伴う合併症であるこ
    とを特徴とする請求項33に記載の医薬組成物。
  35. 【請求項35】 該疾患が、続発性副甲状腺機能亢進症
    または続発性副甲状腺機能亢進症に伴う合併症であるこ
    とを特徴とする請求項33に記載の医薬組成物。
  36. 【請求項36】 該続発性副甲状腺機能亢進症が、慢性
    腎不全、活性型ビタミンDの欠乏、活性型ビタミンDに
    対する感受性の低下、活性型ビタミンD受容体の欠乏、
    リンの蓄積、副甲状腺のカルシウムに対する感受性の低
    下、カルシウム受容体の異常、骨のPTHに対する反応性
    の低下、PTH受容体の異常、または偽性副甲状腺機能低
    下症に伴い発症するものであることを特徴とする請求項
    35に記載の医薬組成物。
  37. 【請求項37】 該疾患が、副甲状腺過形成であること
    を特徴とする請求項33に記載の医薬組成物。
  38. 【請求項38】 該疾患が、異所性PTH産生腫瘍である
    ことを特徴とする請求項33に記載の医薬組成物。
  39. 【請求項39】 該疾患が、高回転型骨症であることを
    特徴とする請求項33に記載の医薬組成物。
  40. 【請求項40】 該高回転型骨症が、腎性骨異栄養症で
    あることを特徴とする請求項39に記載の医薬組成物。
  41. 【請求項41】 該医薬組成物が、副甲状腺ホルモンの
    分泌の亢進状態に伴う高カルシウム血症の治療に用いら
    れることを特徴とする請求項31または請求項32に記
    載の医薬組成物。
  42. 【請求項42】 該医薬組成物が、副甲状腺ホルモン依
    存的な骨からのカルシウムの放出に起因する疾患の治療
    に用いられることを特徴とする請求項31または請求項
    32に記載の医薬組成物。
  43. 【請求項43】 該医薬組成物が、血液透析を受けてい
    る腎不全患者において併発するPTH分泌の亢進に起因す
    る疾患の治療に用いられることを特徴とする請求項31
    または請求項32に記載の医薬組成物。
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WO2006039258A2 (en) * 2004-09-30 2006-04-13 Abgenix, Inc. Human antibodies against parathyroid hormone

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2006039258A2 (en) * 2004-09-30 2006-04-13 Abgenix, Inc. Human antibodies against parathyroid hormone
WO2006039258A3 (en) * 2004-09-30 2006-09-14 Abgenix Inc Human antibodies against parathyroid hormone

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