JP2000158009A - フェライト系ステンレス鋼の薄板ストリップの製造方法と、それによって得られた薄板ストリップ - Google Patents
フェライト系ステンレス鋼の薄板ストリップの製造方法と、それによって得られた薄板ストリップInfo
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Abstract
逆方向に回転するた内部冷却されたロール間で液体金属
を直接凝固して、0.12%以下の炭素と、1%以下の
マンガンと、1%以下のケイ素と、0.040%以下の
リンと、0.030%以下の硫黄と、16〜18%のク
ロムとを含むフェライト系ステンレス鋼のストリップを
製造する方法。 【解決方法】 オーステナイトのフェライトおよび炭化
物への変態範囲内に維持されないようにしてストリップ
を冷却または放冷し、ストリップを600℃〜マルテン
サイト変態温度Msで巻取り、巻取られたストリップを
200℃から周囲温度まで最高速度300℃/時で放冷
し、次いで、ストリップをボックスアニーリングする。
Description
厚さが数mmのストリップ状フェライト系ステンレス鋼を
液体金属から直接鋳造する方法に関するものである。
ップを液体金属から直接鋳造する方法(いわゆる“双ロ
ール連続鋳造”プラント)の研究は古くから行われてき
た。このプラントは原則として水平軸を有する2本のロ
ールを並行に配置し、各ローラは良好な熱伝導体とし、
内部から強制冷却される外側表面を有し、ロール間で鋳
造空間を規定し、鋳造空間の最小幅が所望のストリップ
厚さに対応する。鋳造空間はロール端部に押圧された断
熱材料で作られた2枚の壁によって横方向が閉じられて
いる。ロールは互いに逆方向に回転し、鋳造空間には液
体鋼が供給される。ロール表面に接して凝固した鋼の
“皮、シェル”は“ニップ”、すなわちロール間距離が
最小になる点で合流して凝固ストリップとなってプラン
トから連続的に引き抜かれる。このストリップは放冷ま
たは強制冷却された後に巻き取られる。この方法を用い
て各種グレードの鋼、特にステンレス鋼のストリップを
鋳造することができる。
たストリップが空気中で放冷され、ストリップはその厚
さおよび鋳造速度に応じて、一般に約700〜900℃
の温度で巻取られる。巻取り温度も当然ロールとコイラ
との間の距離に依存する。巻取られたストリップは次い
で放冷され、その後、一般に従来の連続鋳造スラブから
製造された熱間圧延ストリップに対して実施される処理
と同等な冶金処理を受ける。この鋳造方法を17%のク
ロムを含む標準型のAISI430フェライト系ステン
レス鋼に適用して作ったストリップは延性が良くないこ
とがわかる。その結果、最も薄いストリップ(厚さが約
2〜3.5mm)は過剰に脆性で、周囲温度で実施され
るハンドリング操作、例えば巻出しおよび端縁部切断操
作に耐えることができず、これらの操作中にストリップ
の端縁部にクラックが生じるか、ストリップが巻出し中
に破壊する危険性さえある。
1)〜3)で説明される: 1)鋳造直後のストリップは基本的に粗フェライト粒子
(ストリップの厚さに対して平均粒径は300μm以
上)からなる柱状組織をしている。これはロール上で急
速な凝固を連続的に受け、ストリップがロールから出た
後に強制冷却されずに高温状態にあることの直接の結果
である。 2)侵入型元素(炭素および窒素)が過飽和であるた
め、フェライト粒子が高い硬度を有する。 3)高温で存在するオーステナイトの硬化によって生じ
るマルテンサイトの存在。この問題を解決するために、
コイルを冷却した後に、加熱中にフェライトをオーステ
ナイトに転移させるための温度(いわゆるAcl)以下
の温度でコイルをボックスアニーリング(recuit vas
e)してきた。一般に、このアニーリングは約800℃
で少なくとも4時間行う。この目的はフェライト系マト
リクスから炭化物を析出させ、マルテンサイトをフェラ
イトおよび炭化物に転移させ、炭化クロムを粗粒化して
金属を軟化させることにある。この処理は粗フェライト
粒子からなる柱状組織が維持され互いに状態で機械的特
性および延性を改良する。しかし、工業規模で行った試
験で、この方法は適当な延性のストリップを得るのには
不十分であることがわかった。
の脆性が持続する理由は、鋳造直後に一旦巻き取られた
ストリップは極めて緩やかにしか冷却されないないこと
で説明される。これはストリップの両面が溶融金属と接
触しており、その端縁部のみが外気と接触して自由に放
射することによる。この極めて緩やかな冷却によってフ
ェライトから多量の炭化物が析出し、一部のオーステナ
イトはフェライトおよび炭化物に転移する。一方、残り
のオーステナイトは、冷却時にマルテンサイトを生成す
る。ボックスアニーリングはマルテンサイトをフェライ
トおよび炭化物に完全に分解できるが、さらに、連続膜
状の粗炭化物の粗粒化の原因になる。金属の脆性は特に
径が約1〜5μmのこの粗炭化物によるものである。粗
炭化物はクラックの開始点となり、この開始点はそれを
取り囲むフェライト系マトリクス中への劈開によって大
きくなる。この望ましくない効果が粗粒子の柱状構造の
望ましくない効果に追加される。
ス鋼ストリップを双ロール鋳造する様々な試みが行われ
ている。これらの試みはストリップの冷却中に生成され
る析出物の種類を変えたり、粗フェライト粒子からなる
鋳造直後の構造を“破壊”することが目的である。これ
に関しては、特開JP-A-62247029号を挙げることができ
る。この特許では、300℃/秒以上で、1200〜1
000℃でインライン冷却し、次いで1000〜700
℃で巻取ることが勧められている。特開JP-A-5293595号
では鋼を700〜200℃の温度で巻き取り、炭素およ
び窒素含有率を低くし(0.030%またはそれ以
下)、しかも安定化剤として作用するニオブの含有率を
0.1〜1%にすることを勧めている。
特許もある。これは、炭素および窒素に予備的応力を加
え、ニオブ安定化または窒素安定化と組み合わせること
もできる(特開JP-A-2232317号、特開JP-A-6220545号、
特開JP-A-8283845号、特開JP-A-8295943号参照)。
対してニオブと、チタンと、アルミニウムと、バナジウ
ムとの合計含有率を0.05〜1.0%に、炭素と窒素
との合計含有率を最大0.030%に、モリブデン含有
率を0.3〜3%にする方法を開示している欧州特許第
0638653号を挙げることができる。この鋼の重量組成は
条件“γp≦0%”をさらに満足しなければならない。
γpは析出で生成されるオーステナイトの量を表す。こ
れは下記式を用いて計算する:γp=420×%C+4
70×%N+23×%Ni+9×%Cu+7×%Mn−
11.5×%Si−12×%Mo−23×%V−47×
%Nb−49×%Ti−52×%Al+189。さら
に、ストリップは1150〜900℃で5〜50%の圧
下率で熱間圧延し、次いで、20℃/秒以下の速度で冷
却するか、1150〜950℃の温度で少なくとも5秒
間保持し、次いで、700℃以下の温度で巻き取らなけ
ればならない。これらすべてを実施するには下記1)〜
3)を全て満足することが必要である: 1)炭素および窒素含有率を低くする(必要な場合には
さらに安定化元素を望ましい含有率にする)ためには高
価で難しい液体金属からのストリップの鋳造が必要にな
り、 2)高価なプラント(インライン熱間圧延ミル)を用い
た鋳造ラインでの熱処理が必要になり、 3)速い冷却速度または高温保持時間を得るのに必要な
特別なプラントを必要とする複雑な熱サイクルを実施す
る必要がある。
I430およびそれに類似の型のフェライト系ステンレ
ス鋼の薄板ストリップを双ロール鋳造で製造する経済的
な方法を提供することにある。本発明方法は巻出し、端
縁部切断および低温変形(酸洗、圧延等)操作をストリ
ップの破壊または端縁部に生じるクラック等を起こさず
に実施することができ、ストリップに十分な延性が得ら
れる。本発明方法は標準的な双ロール鋳造機に複雑なプ
ラントを加えなくてもできる経済性に優れたものであ
る。本発明方法はさらに、炭素および窒素等の元素の含
有率を極めて低くするために液体金属の精練をする必要
がなく、高価な合金元素を追加する必要がない。
有する2本の互いに隣接し且つ逆方向に回転するた内部
冷却されたロール間で液体金属を直接凝固して、0.1
2%以下の炭素と、1%以下のマンガンと、1%以下の
ケイ素と、0.040%以下のリンと、0.030%以
下の硫黄と、16〜18%のクロムとを含むフェライト
系ステンレス鋼のストリップを製造する方法において、
オーステナイトのフェライトおよび炭化物への変態範囲
内に維持されないようにしてストリップを冷却または放
冷し、ストリップを600℃〜マルテンサイト変態温度
Msで巻取り、巻取られたストリップを200℃から周
囲温度まで最高速度300℃/時で放冷し、次いで、ス
トリップをボックスアニーリングすることを特徴とする
方法を提供する。
れる0.12%以下の炭素と、1%以下のマンガンと、
1%以下のケイ素と、0.040%以下のリンと、0.
030%以下の硫黄と、16〜18%のクロムとを含む
型のフェライト系ステンレス鋼ストリップに関するもの
である。以下で説明するように、本発明は、まず第1
に、標準的な組成のフェライト系ステンレス鋼の双ロー
ル鋳造ストリップを特別な条件下で冷却して巻き取り、
次いで、それをボックスアニーリングする。この処理の
目的は基本的に脆弱化粗炭化物の生成をできるだけを制
限することにある。そのためには、炭化物の析出を制限
して鋳造直後におけるオーステナイトのマルテンサイト
への変態を促進し、一方で、ストリップが巻き取られる
までこのマルテンサイト変態が起こらないようにする必
要がある。
らより良く理解できよう。以下の明細書では、鋼はその
組成が標準的なフェライト系ステンレス鋼であるグレー
ドAISI430の一般的基準を満足する。すなわち、
0.12%以下の炭素と、1%以下のマンガンと、1%
以下のケイ素と、0.040%以下のリンと、0.03
0%以下の硫黄と、16〜18%のクロムとを含む。し
かし、本発明の用途では、含有率の高さが本発明の冶金
方法を妨げない限り、一般的基準によって必ずしも要求
されない合金元素(例えば、チタン、ニオブ、バナジウ
ム、アルミニウム、モリブデン)をさらに含む鋼にまで
拡張できるということは言うまでもない。特に、これら
の合金元素の存在によって、本発明のストリップが従わ
なければならない熱経路が双ロール鋳造プラントで不可
能になるまで図1の実施例の変態曲線の外観を変えるべ
きではない。
記)を有する。試験の結果は図1から図3に関連して記
載および注釈する。 炭素:0.043% ケイ素:0.24% 硫黄:0.001% リン:0.023% マンガン:0.41% クロム:16.36% ニッケル:0.22% モリブデン:0.043% チタン:0.002% ニオブ:0.004% 銅:0.042% アルミニウム:0.002% バナジウム:0.064% 窒素:0.033% 酸素:0.0057% ホウ素:0.001%以下 炭素+窒素の合計は0.076%(これはこのグレード
において一般的である)で、上記の一般式から計算され
たγpは37.6%(これは特に低いものではなく、特
に、バナジウム、モリブデン、チタンおよびニオブ含有
率が比較的低いことによる)で、Acl温度は851℃
に加熱した時にフェライトがオーステナイトに転移する
温度である。Acl温度は下記の公知の一般式によって
計算される:Acl=35×%Cr+60×%Mo+7
3×%Si+170×%Nb+290×%V+620×
%Ti+750×%Al+1400×%B−250×%
C−280×%N−115×%N−66×%Mn−18
×%Cu+310。
が強制冷却を受けずに約700〜900℃でコイルに巻
き取られ、巻き取られた状態で放冷され、その後、ボッ
クスアニーリングを受けた場合、アニーリング後のスト
リップの延性は十分なものではない。これは、コイル内
の緩やかな冷却によって金属がフェライトからCr2 3
C6型の炭化クロムが析出する部分(この析出はフェラ
イト粒界およびフェライト/オーステナイト界面で起こ
る)、さらに、オーステナイトがフェライトおよびCr
23C6型の炭化クロムに分解する部分を通ることに因
る。この機構は脆弱化粗炭化物の成長にとって都合が良
く、後のボックスアニーリングは連続フィルムの形をし
た粗い炭化物の粗粒化を強める。図1の変態曲線は、該
グレードAISI430に対して有効であり、この現象
を説明している。
ステナイトへの変態が終了した後のAc5温度、冷却時
のこの同じ変態の開始温度Acl、γ−オーステナイト
のα’−マルテンサイトへの変態の開始温度Msおよび
終了温度Mfを示している。さらに、Cr23C6型の
炭化クロムの析出がフェライト粒界およびフェライト/
オーステナイト界面で起こる温度範囲を規定する曲線1
およびオーステナイトのフェライトおよび炭化クロムへ
の変態開始部分を規定する曲線2を示している。さら
に、鋳造ストリップがロールから出た後に受ける加熱処
理の4つの実施例A,B,C,Dを示しており、2つの
実施例(CおよびD)は本発明のものである。上記の従
来法による処理Aでは、鋳造ロールから出たストリップ
を外気で放冷し、次いで約800℃でストリップをコイ
ルに巻き取る。この間、ストリップはフェライト粒界お
よびフェライト/オーステナイト界面で炭化クロムが析
出する部分にある。既に述べたように、この巻き取りに
よってストリップの冷却は大幅に減速され、この減速は
オーステナイトのフェライトおよび炭化クロムへの変態
部分で長時間強制的に維持され、周囲温度に戻る。
取らずに周囲温度に戻す。ストリップはオーステナイト
のフェライトおよび炭化クロムへの変態部分で止まらず
に、Ms温度〜Mf温度で大部分のマルテンサイト変態
が起こる。この処理を本発明に含むことができない理由
は明らかであろう。本発明の処理Cは、まず第1に、ス
トリップを放冷し、次いでコイルに巻き取り、ストリッ
プがオーステナイトのフェライトおよび炭化クロムへの
変態部分で維持されないようにし、約600℃の温度で
のみ巻き取り操作を実施する。巻き取られたストリップ
が冷却されると、その後は処理Aの最終熱経路と多かれ
少なかれ合流して終わる。
であるが、ストリップの巻き取りを約300℃の温度の
みで行う。しかし、この温度はMs温度(鋼の化学組成
に依存する)以上に保持する必要があり、さらにコイル
の冷却中に、マルテンサイト変態が極めて大きく起こる
部分にストリップを維持しないようにする。この最終熱
経路は処理Aおよび処理Cの熱経路と合流する。図2の
写真は図1の熱経路A(すなわち800℃の巻き取り)
に従い、巻き取られた形で周囲温度に戻され、次いで標
準条件下、すなわち滞留時間が6時間、約800℃でボ
ックスアニーリングした対照ストリップからの試験片の
一部を示している。ストリップは上記化学組成を有し、
厚さが3mmである。写真では大部分の試験片がフェラ
イト粗粒子3からなることがわかる。領域4はボックス
アニーリング中にα’マルテンサイトの変態から生じる
小さいフェライト粒子を有し、試験片の小さい断片のみ
を表している。さらに、構造内に炭化クロム連続フィル
ム5の存在が認められる。これらの炭化フィルムはまず
第1に、巻き取られたストリップがオーステナイトのフ
ェライトおよび炭化クロムへの変態部分で緩やかに冷却
されて大量の炭化物の析出が生じ、次いで、ボックスア
ニーリングがこれら炭化物の粗粒化を強めることから生
じる。写真から分かるように、これらの連続炭化フィル
ムの存在は金属の不良な延性が一因となっている。
出した(図2と同じ組成および厚さの)試験片の一部を
示している。このストリップは図1の経路Cと経路Bと
の間の中間熱経路に従って周囲温度(ストリップは50
0℃で巻き取られた)に戻され、次いで図2の対照試験
片と同じボックスアニーリングを受けた。フェライト粗
粒子3は依然として存在しているが、α’マルテンサイ
トの変態から生じる小さなフェライト粒子からなる領域
6の比率が大きくなっていることがわかる。ストリップ
を炭化物および窒化物析出部分に迅速に通すことおよび
ストリップをオーステナイトのフェライトおよび炭化物
析出部分から避けることはまず第1にフェライト中の微
細な炭化物の析出を制限することになる(これらの析出
が急速である場合は避けられない)。さらに、面積の大
きいオーステナイトは、フェライトよりも炭素および窒
素が多く、従って残留する。これらは次いでマルテンサ
イトに転移する。次のボックスアニーリング中に、微細
な炭化物はフェライト中に析出し、マルテンサイトはフ
ェライトおよび微細な炭化物に分解した。これらは図2
の対照試験片内よりはるかに均質に分散している。従っ
て粗粒化した炭化物の連続フィルムは見られなくなり、
むしろ、最大で、小さな炭化物(0.5μm以下)の不
連続ストリング7が、粗フェライト粒子と、炭化物が分
散した小さなフェライト粒子からなる領域との境界で見
られる。これらの小さな炭化物は対照試験片の連続フィ
ルムよりはるかに敏感でない。ボックスアニーリング中
の小さなフェライト粒子からなる領域の顕著な外観はマ
ルテンサイト生成中に蓄積された応力が緩和したためで
あり、再生現象が生じる。これらの小さなフェライト粒
子の領域は粗フェライト粒子からなるマトリクスよりは
るかに延性があり、金属の脆性を、特に劈開によるクラ
ックの増加を減速することによって、制限することがで
きる。
本発明方法で得られたものとを“V”ノッチ付きシャル
ピー試験片に対する衝撃曲げ試験で評価した。この試験
では強靭性を20℃で試験片が吸収するエネルギーを測
定して評価した。試験はボックスアニーリングの前後に
取り出されたストリップ試験片に対して実施した。結果
は表1の通り:
ける前の鋳造直後のストリップの20℃の延性に対して
効力がないことがわかる。高温で巻取られた対照ストリ
ップの場合はこの延性は極めて不良でボックスアニーリ
ングによって改良されていない。図2の写真からわかる
ように、ボックスアニーリングは、この対照例の場合、
良好な延性に有利な金属マトリクス構造および炭化物分
布を促進することができない。一方、本発明の望ましい
条件下で巻き取られたストリップの延性は、ボックスア
ニーリングによって大幅に改良され、十分に満足するレ
ベルにまで上げることができる。これは、約30から4
0J/cm2の強靱性が、ストリップを損なわずに低温
処理(特に、巻出しおよび端縁部切断)を実施可能にす
るのに十分であることが経験によって示されているから
である。
トのフェライトおよび炭化クロムへの変態部分を通らな
いようにしたことで、ストリップの冷却時に、フェライ
ト中に微細な炭化物が生成し、その形態および分布は、
ボックスアニーリング後の微細で均一に分布された炭化
物の生成に非常に有利である。従ってこれらは対照試験
片で見られた連続炭化フィルムと比べてストリップの延
性に対してはるかに不利にならない。低温で巻き取られ
たストリップを冷却後、得られた金属マトリクスはマル
テンサイトが豊富で、最終ストリップの良好な延性にさ
らに有利である。これはボックスアニーリングがマルテ
ンサイトに有効に作用してマルテンサイトを基本的に小
さな粒子のフェライトに分解するからである。これらの
同じストリップのボックスアニーリング後の延性を示す
別の試験を実施した。この試験は端縁部を切断直後また
は切削した直後の試験片を逆向きに90°曲げる。曲げ
の1サイクルは、試験片を90°まで曲げ、次いでこれ
を最初の直線形に戻す操作に対応する。試験片が破壊す
るか、または曲げ部分でクラックが見られるまでに実施
可能な曲げサイクルの回数を求める。表2はこれらの実
験の結果の平均値を示す。
プが一回の曲げにも耐えられずに、最初のクラックが生
じるか、またはストリップが単純に破壊することを意味
する。また、本発明によって製造されたストリップは既
に述べた理由によって対照ストリップよりはるかに良い
特性を有することも顕著である。
ロールから出たストリップに冷却経路を与えることで炭
化物の析出を制限し、さらに、オーステナイトの分解で
生じそうなものおよび、ボックスアニーリング中に連続
粗フィルムに粗粒化しそうなものを避けることである。
第2の考えは、同じ製造段階で、ボックスアニーリング
中にできるだけ微細な粒子のフェライトを得るために、
オーステナイトのマルテンサイトへの変態を促進するこ
とである。これらの条件はフェライトから炭化物および
窒化物が析出する部分に鋳造ストリップが滞留する時間
が制限されるとき、さらにストリップがオーステナイト
のフェライトおよび炭化物への変態部分に維持されない
ときに得られる。実際に、AISI430グレードでこ
れらの条件およびそれに類似の条件を得るにはストリッ
プを600°またはそれ以下でコイルに巻き取る必要が
ある。これはストリップをコイルに巻き取る間、オース
テナイトのフェライトおよび炭化物への変態部分にスト
リップが維持されないようにするためである。特に鋳造
条件、例えばストリップの厚さ、鋳造速度およびコイラ
とロールとの間の距離に応じて、これらの条件は単にス
トリップを空気中に放冷することによって満足すること
ができ、あるいは、ストリップが例えば、水または水/
空気混合液等の冷却液を噴霧することによって強制冷却
されるプラントの使用を必要としてもよい。望ましい結
果は一般に、ストリップがロールから出て巻き取りが可
能な600℃またはそれ以下の温度に達するまでの間、
冷却速度を10℃/秒以上にして得られる。
ルテンサイトの生成は生成自体が問題にならないように
制御しなければならない。まず第1に、巻き取り時にス
トリップが破壊する危険が高くなるので、巻き取り前に
マルテンサイトが生成するのを防がなければならない。
このために、巻取はオーステナイトのマルテンサイトへ
の変態温度Ms、すなわち約300℃以上で実施できる
ことが必要である。さらに、コイルが急速(300℃/
時以上)に冷却される場合、非常に硬いマルテンサイト
が過剰に生成される。これによってストリップは脆化
し、アニーリング前のコイルのマニプレーションに容易
に耐えることができない。図1の処理Bの実施例はスト
リップを急速に冷却することによって生じる欠陥を示し
ている。巻き取らない場合は平均冷却速度は約1000
℃/時になる。この冷却後のストリップの硬度は192
Hvで、これは高すぎる。一方、経路Aに従った対照ス
トリップの硬度は155Hvである。本発明のストリッ
プは、経路Cと経路Dとの間の中間処理を受け、硬度は
約180Hvである。巻き取られたストリップは300
℃/時以上の速度で冷却しなければならないと考えるべ
きであろう。実際に、コイルの冷却速度(通常見られる
空気中の放冷速度は約100℃/時である)を上げるた
めに特別な手段を用いていない場合、この条件は一般に
産業型プラントで十分である。
スアニーリングを実施する前に、巻き取られたストリッ
プが十分に冷却するまで待つ必要がある。これは望まし
い変態、特にオーステナイトのマルテンサイトへの変態
が起こるための時間が存在するからである。 実際に、
ボックスアニーリングは周囲温度〜200℃の初期温度
のコイルに実施しなければならない。一般に、800〜
850℃の温度で少なくとも4時間実施する。約17%
のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼ストリップの
延性を改良することを目的とした既存の他の方法と比較
すると、本発明方法はグレードの特別且つ高価な変更、
例えば安定剤の混和および/または炭素および窒素含有
率を異常に低い率に低下させるなどの変更を必要としな
いという利点がある。本発明方法はロールから出たスト
リップを熱間圧延するためのプラントを備える必要がな
い双ロール連続鋳造機で実施することができる。また、
本発明方法は製造サイクルにおける鋳造後の段階(ボッ
クスアニーリング、端縁部切断、酸洗等)を特別に適用
する必要がない。標準的な双ロール鋳造プラントに対す
る、取付けが必要とされそうな唯一の変更点はロールの
下側でストリップを冷却するための装置を追加すること
ができる点である。この装置は、極めて単純な設計にす
ることができ、ストリップがオーステナイトのフェライ
トおよび炭化物への変態部分内に維持されないこと、お
よび巻き取りが常に600℃またはそれ以下で行われる
ことを、任意の鋳造速度およびストリップの厚さで、さ
らにはコイラがロールの極めて近くにある場合(これ
は、逆に、他の型の鋼の鋳造に望ましい)においても保
証することができる。
リップ巻き取り条件が満たされるとき、上記の本発明方
法を鋳造ロールの下側で熱間圧延される双ロール鋳造ス
トリップに適用することは本発明の精神に含まれる。ス
トリップの内部安定度をその中のあらゆる孔を密閉する
ことによって高めるために、さらにその表面の品質を高
めるために、この熱間圧延を実施するのが望ましい。さ
らに、熱間圧延は900〜1150℃の温度で少なくと
も5%の圧下率で実施され、ストリップの延性に対して
有利な効果をもたらす。結果から、本発明方法の効果に
よって延性が高くなり、既に記載の欧州特許第0,638,65
3号に記載の極めて厳密な分析条件を満たす必要がない
ことがわかる。従ってストリップは熱間圧延のみを適
用、または本発明方法の基本型のみを適用して得ること
ができる延性より高い延性を有することができる。
る厚さ2.7mmの双ロール鋳造鋼ストリップに対して
試験を実施した: 炭素:0.040% ケイ素:0.23% 硫黄:0.001% リン:0.024% マンガン:0.40% クロム:16.50% ニッケル:0.57% モリブデン:0.030% チタン:0.002% ニオブ:0.001% 銅:0.060% アルミニウム:0.003% バナジウム:0.060% 窒素:0.042% 酸素:0.0090% ホウ素:0.001%以下 この組成は46.5%のγp基準および826℃のAc
l温度に対応する。
の巻き取りがボックスアニーリング前に800℃で実施
したときに(図1の処理A)、ストリップは端縁部切断
ストリップに対する1回の曲げサイクルに耐えることが
できず、すぐに破壊する。670℃で巻き取る場合は、
ストリップは端縁部切断ストリップに対する曲げサイク
ルに1回しか耐えることができない。しかし、本発明方
法によって巻き取りを500℃で実施する場合は、スト
リップは端縁部切断ストリップに対する曲げサイクルに
4回耐えることができる。これらの試験によって図1〜
図3に示された実施例が確認される。さらに、上記スト
リップが30%の厚さ−圧下率で1000℃の熱間圧延
を受けたとき、本発明の500℃で実施される巻き取り
は表1の条件と同じ試験条件下で、(ボックスアニーリ
ング後に)20℃で吸収されるエネルギー160J/c
m2をストリップに与える。比較例として、巻き取りを
800℃で実施した場合、20℃で吸収されるエネルギ
ーは100J/cm2のみである。
ストリップは基本的に下記a)〜d)の点で従来技術に
よるストリップより優れている: a)炭化物が分散した小さなフェライト粒子からなる多
くの領域と共存する粗フェライト粒子からなる柱状組
織、 b)粗炭化物の連続フィルムが存在しない。これらの代
わりに、粗フェライト粒子と、小さなフェライト粒子か
らなる領域との境界で見られる小さな炭化物の不連続ス
トリングが存在する。 c)本発明の基本型では、ストリップを巻き取る前に熱
間圧延しない場合、ストリップが熱間圧延されたことを
一般に示す組織は存在しない。 d)一般に、大量の安定化元素、例えばニオブ、バナジ
ウム、チタン、アルミニウムおよびモリブデンは存在し
ない。この元素は様々な理由で存在する可能性がある
が、ストリップの延性に大きな影響はない。この良好な
延性によってこのストリップは、全く損傷なく、次の通
常の冶金操作、特に冷間圧延を受けることができ、顧客
の使用可能な最終製品に変換される。
示す図で、鋳造ロールから出た後のストリップの熱経路
の4つの実施例A,B,C,Dを表している。2つの実
施例CおよびDは本発明の処理である。
ーリングしたストリップから取り出した薄片の透過電子
顕微鏡写真。
の中間熱経路に従い、次いでボックスアニーリングした
ストリップから取り出した薄片の透過電子顕微鏡写真。
イト粒子を有し、試験片の小さい断片のみを表す領域 5 炭化クロム連続フィルム 6 α’マルテンサイトの変態から生じる小さなフェラ
イト粒子からなる領域 7 不連続ストリング A、B 従来法 C、D 本発明
Claims (6)
- 【請求項1】 水平な軸線を有する2本の互いに隣接し
且つ逆方向に回転するた内部冷却されたロール間で液体
金属を直接凝固して、0.12%以下の炭素と、1%以
下のマンガンと、1%以下のケイ素と、0.040%以
下のリンと、0.030%以下の硫黄と、16〜18%
のクロムとを含むフェライト系ステンレス鋼のストリッ
プを製造する方法において、 オーステナイトのフェライトおよび炭化物への変態範囲
内に維持されないようにしてストリップを冷却または放
冷し、 ストリップを600℃〜マルテンサイト変態温度Msで
巻取り、 巻取られたストリップを200℃から周囲温度まで最高
速度300℃/時で放冷し、次いで、 ストリップをボックスアニーリングすることを特徴とす
る方法。 - 【請求項2】 ボックスアニーリングを800〜850
℃の温度で少なくとも4時間行う請求項1に記載の方
法。 - 【請求項3】 少なくとも凝固したストリップがロール
から出て600℃の温度に達するまでの間、冷却速度を
10℃/秒以上にすることによって、ストリップをオー
ステナイトのフェライトおよび炭化物への変態領域内に
維持しないようにする請求項1または2に記載の方法。 - 【請求項4】 ストリップの表面に冷却液を噴霧するこ
とによってストリップに冷却速度にする請求項3に記載
の方法。 - 【請求項5】 ストリップを巻取る前に900〜115
0℃の温度でストリップ厚圧化率を少なくとも5%にし
て熱間圧延する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方
法。 - 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか一項に記載の方
法で得られる0.12%以下の炭素と、1%以下のマン
ガンと、1%以下のケイ素と、0.040%以下のリン
と、0.030%以下の硫黄と、16〜18%のクロム
とを含む型のフェライト系ステンレス鋼ストリップ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10336302A JP2000158009A (ja) | 1998-11-26 | 1998-11-26 | フェライト系ステンレス鋼の薄板ストリップの製造方法と、それによって得られた薄板ストリップ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10336302A JP2000158009A (ja) | 1998-11-26 | 1998-11-26 | フェライト系ステンレス鋼の薄板ストリップの製造方法と、それによって得られた薄板ストリップ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000158009A true JP2000158009A (ja) | 2000-06-13 |
Family
ID=18297713
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10336302A Withdrawn JP2000158009A (ja) | 1998-11-26 | 1998-11-26 | フェライト系ステンレス鋼の薄板ストリップの製造方法と、それによって得られた薄板ストリップ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2000158009A (ja) |
-
1998
- 1998-11-26 JP JP10336302A patent/JP2000158009A/ja not_active Withdrawn
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