JP2000157260A - 初代前駆脂肪細胞の分化誘導方法及びその分化用培地 - Google Patents

初代前駆脂肪細胞の分化誘導方法及びその分化用培地

Info

Publication number
JP2000157260A
JP2000157260A JP10335156A JP33515698A JP2000157260A JP 2000157260 A JP2000157260 A JP 2000157260A JP 10335156 A JP10335156 A JP 10335156A JP 33515698 A JP33515698 A JP 33515698A JP 2000157260 A JP2000157260 A JP 2000157260A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
medium
differentiation
serum
growth factor
eagle
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10335156A
Other languages
English (en)
Inventor
Hidekazu Takahashi
秀和 高橋
Tatsuya Yamaguchi
達哉 山口
Takuya Ishibashi
石橋  卓也
Yoshihisa Kawamura
川村  良久
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyobo Co Ltd filed Critical Toyobo Co Ltd
Priority to JP10335156A priority Critical patent/JP2000157260A/ja
Publication of JP2000157260A publication Critical patent/JP2000157260A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】無血清あるいは低血清の条件下で、効率良く初
代前駆脂肪細胞を脂肪細胞に分化誘導させる方法及びそ
の分化用培地を提供する。 【解決手段】 インスリン、トランスフェリン、デキサ
メタゾン、ビオチン、アスコルビン酸、グルコース、上
皮成長因子若しくは繊維芽細胞成長因子、ならびに亜セ
レン酸若しくはその塩を含有し、かつインドメタシン、
プロスタグランジン、長鎖脂肪酸およびチアゾリジン誘
導体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を
含む栄養培地中において初代前駆脂肪細胞を脂肪細胞へ
分化誘導する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無血清あるいは低
血清の条件下において、効率良く初代前駆脂肪細胞を脂
肪細胞へと分化誘導させる方法及びその分化用培地に関
する。更に詳しくは、肥満やその病態等に関する細胞生
物学的、分子生物学的研究、あるいは肥満、糖尿病等の
治療薬開発における評価系に有用な、無血清あるいは低
血清の条件下において、効率良く初代前駆脂肪細胞を脂
肪細胞に分化誘導させる方法及びその分化用培地に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年の肥満研究の結果、脂肪細胞は脂肪
の合成、分解だけでなく、様々な生理活性物質を分泌
し、脂肪組織だけでなく全身性に強く影響を及ぼす細胞
であることが明らかになってきた。その為、肥満に伴う
糖尿病、高血圧といった生活習慣病の発症メカニズムを
理解する上で、また、これら疾患の治療法を開発する上
で、脂肪細胞の研究は不可欠となっている。特に、前駆
脂肪細胞培養系を用いた評価は脂肪組織形成の動的メカ
ニズムを研究する上で重要である。
【0003】前駆脂肪細胞とは発生上、脂肪細胞へ分化
する能力を有している細胞である。すなわち、脂肪組織
発生の初期段階では間葉系細胞から増殖性を有する繊維
芽細胞様の前駆脂肪細胞が形成される。前駆脂肪細胞は
増殖を停止した後、脂質合成酵素の発現が上昇し、細胞
内に油滴が蓄積され、成熟した脂肪細胞へと分化する。
【0004】この現象は、培養細胞系でも認められ、脂
肪組織から調製した前駆脂肪細胞をある誘導条件下で培
養すると、油滴の蓄積、成熟脂肪細胞への分化が認めら
れる。前駆脂肪細胞を用いた薬剤の評価は、前駆脂肪細
胞から脂肪細胞への分化過程での変化、あるいは分化し
た脂肪細胞に対する影響を調べることにより行う。いず
れの場合も、前駆脂肪細胞から脂肪細胞へ分化誘導する
ことが必要であり、その為にも、高い分化誘導能を有し
た分化用培地は必須である。前駆脂肪細胞を分化誘導さ
せる培地としては、いくつか報告されているが、例え
ば、血清、インスリン、デキサメタゾン及び分化促進剤
(例えば、インドメタシン、長鎖脂肪酸等)を含む培地
等が報告されている。
【0005】これまで、前駆脂肪細胞の分化機構は、主
に3T3−L1細胞や3T3−F442A細胞等の株化
細胞を用いて研究されてきた。これらの細胞は、無限増
殖が可能なうえに、前駆脂肪細胞様の性質を有する点
で、非常に有用である。しかしながら、株化細胞は生体
本来の機能を欠失している場合が多く、実際に3T3−
L1細胞や3T3−F442A細胞等の挙動は正常細胞
での結果と一致していないことが報告されている。例え
ば、株化細胞の分化は非可逆的であるのに対し、正常細
胞のそれは可逆的である。よって、より生体に近い結果
を得る為には、脂肪組織から調製した初代前駆脂肪細胞
を使用することが必要である。
【0006】一方、細胞の維持、培養には、栄養培地中
に別途、増殖因子として血清成分をすることが一般的に
行われている。しかし、血清は特定不能なあらゆる成分
から構成されているため、薬剤評価等の実験に用いた場
合、原因と結果を論じる際に混乱が生じるという問題が
ある。また、細胞培養に血清を用いる場合、通常10%
量の添加が必要であり、高価な血清を大量に消費しなけ
ればならないという点も問題である。さらに、血清はロ
ット間の性能差が大きく、その選定に多大な労力が必要
とされる。よって、培養細胞を用いて薬剤評価等を行う
場合は、血清成分を抑えた無血清あるいは低血清培地を
使用することが望ましい。
【0007】しかしながら、これまで初代前駆脂肪細胞
の分化には、培地中に血清成分を添加する必要があっ
た。また、Kuri−Harcuchらの処方(Mol.Ce
ll.Biochem. 第79巻、第35頁、1987年)、So
rianoらの処方(Int.J Obesity 第17巻、第15
9頁、1993年)あるいはBjorntorpらの処
方(Exp.Cell Res. 第189巻、第247頁、1990
年)によると、無血清あるいは低血清の条件で前駆脂肪
細胞の分化誘導を行っているが、これらはすべて株化細
胞を用いた結果であり、これらを初代前駆脂肪細胞に適
用しても効率の良い分化は認められない。また、奥田ら
は初代前駆脂肪細胞の分化用培地を報告しているが(機
能細胞の分離と培養、1987年)、これには30%量
の血清成分の添加が必要である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
の問題点を解消すべく、無血清あるいは低血清の条件下
で、効率良く初代前駆脂肪細胞を脂肪細胞に分化誘導さ
せる方法及びその分化用培地を提供することを課題とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決するため鋭意検討を行った結果、ある特定の添加剤
を加えることにより、無血清あるいは低血清培地中で、
良好に初代前駆脂肪細胞を脂肪細胞へ分化誘導する方法
を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】(1)インスリン、トランスフェリン、デ
キサメタゾン、ビオチン、アスコルビン酸、グルコー
ス、上皮成長因子若しくは繊維芽細胞成長因子、ならび
に亜セレン酸若しくはその塩を含有し、かつインドメタ
シン、プロスタグランジン、長鎖脂肪酸およびチアゾリ
ジン誘導体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化
合物を含む栄養培地中において初代前駆脂肪細胞を脂肪
細胞へ分化誘導する方法。 (2)3%以下の血清を含む(1)の栄養培地を用いた
初代前駆脂肪細胞を脂肪細胞へ分化誘導する方法。 (3)(1)または(2)の栄養培地がイーグル基本培
地(MEM)、アルファイーグル基本培地(αME
M)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハム
のF−12培地から選ばれる少なくとも1種である初代
前駆脂肪細胞を脂肪細胞へ分化誘導する方法。 (4)栄養培地がインスリン、トランスフェリン、デキ
サメタゾン、ビオチン、アスコルビン酸、グルコース、
上皮細胞成長因子若しくは繊維芽細胞成長因子、ならび
に亜セレン酸若しくはその塩を含有し、かつインドメタ
シン、プロスタグランジン、長鎖脂肪酸およびチアゾリ
ジン誘導体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化
合物を含む初代前駆脂肪細胞の分化用培地。 (5)3%以下の血清を含む(4)の初代前駆脂肪細胞
の分化用培地。 (6)栄養培地がイーグル基本培地(MEM)、アルフ
ァイーグル基本培地(αMEM)、ダルベッコ改変イー
グル培地(DMEM)、ハムのF−12培地から選ばれ
る少なくとも1種である(4)または(5)の初代前駆
脂肪細胞の分化用培地。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明における初代前駆脂肪細胞
は、正常動物の脂肪組織に由来する細胞であり、発生
上、脂肪細胞に分化する能力を有する細胞である。初代
脂肪細胞はヒト、ラットなどの各種動物から摘出した脂
肪組織から物理的あるいは酵素処理により分離培養を行
うことにより得ることができるが、好ましくはコラゲナ
ーゼ消化法により調製する。例えば、ラットより摘出し
た脂肪組織を細切し、0.01〜10mg/ml、より
好ましくは0.1〜5mg/mlのコラゲナーゼ溶液中
で振とう消化させ、ナイロンメッシュでろ過後、遠心操
作により、好適に前駆脂肪細胞を得ることができる。
【0012】本発明における栄養培地とは、動物細胞が
増殖するに際して必須成分である、無機塩類、アミノ
酸、ビタミン類などを含むものであり、その組成により
種々の栄養培地がある。該栄養培地としては、例えば、
MEM、αMEM、DMEM、ハムのFー12培地など
が挙げられるが、なかでもDMEM、αMEMが特に好
適に使用される。
【0013】本発明における栄養培地は、インスリン、
トランスフェリン、デキサメタゾン、ビオチン、アスコ
ルビン酸、グルコース、上皮成長因子若しくは繊維芽細
胞成長因子、ならびに亜セレン酸若しくはその塩を含有
し、かつインドメタシン、プロスタグランジン、長鎖脂
肪酸及びチアゾリジン誘導体よりなる群から選ばれる少
なくとも1種の化合物を含む。さらには、好ましくは3
%以下、より好ましくは0.3〜1.0%の血清を含
む。
【0014】ここで、インスリンとはペプチドの一種で
あり、動物、例えばブタ、ウシ、ヒトの血中から生産さ
れたインスリン、または遺伝子組換技術により生産され
たインスリンのいずれも使用できる。該インスリンは、
好ましくは1〜100μg/ml、より好ましくは10
μg/mlの濃度で添加する。
【0015】トランスフェリンとは血中の輸送鉄と結合
するタンパク質であり、ウシあるいはヒト等の動物に由
来するセロトランスフェリン、オホトランスフェリンが
ある。該トランスフェリンは、好ましくは1〜100μ
g/ml、より好ましくは10μg/mlの濃度で添加
する。
【0016】デキサメタゾンはグルココルチコイドの一
種であり、好ましくは10〜500μM、より好ましく
は100μMの濃度で添加する。
【0017】ビオチンはビタミンB群の一種であり、好
ましくは0.01〜3μg/ml、より好ましくは0.
1μg/mlの濃度で添加する。
【0018】アスコルビン酸は分子量176.13の化
合物であり、本発明においてはL体が好適に使用でき
る。該アスコルビン酸は、好ましくは10〜500μg
/ml、より好ましくは50μg/mlの濃度で添加す
る。
【0019】グルコースは脂肪酸合成の炭素源として供
給されるものであり、本発明ではD体が好適に使用でき
る。該グルコースは、好ましくは1〜100mM、より
好ましくは15mMの濃度で添加する。
【0020】上皮成長因子は上皮系細胞や種々の細胞に
増殖刺激性を有するペプチドであり、動物組織、例えば
マウス顎下腺やウシ脳下垂体から精製したものや遺伝子
組換技術により生産したものがある。該上皮成長因子
は、好ましくは0.1〜10ng/ml、より好ましく
は3ng/mlの濃度で添加する。
【0021】繊維芽細胞成長因子とは分子量14〜18
kDのタンパク質であり、ヘパリン吸着性を有し、繊維
芽細胞をはじめ種々の細胞に対する増殖刺激性がある。
繊維芽細胞成長因子は酸性と塩基性の2種以外にそのア
ミノ酸配列の相同性から数種類に分かれ、それぞれの動
物組織、例えばマウス顎下腺やウシ脳下垂体から精製し
たものや遺伝子組換技術により生産したものが使用でき
る。該繊維芽細胞成長因子は、好ましくは0.1〜10
ng/ml、より好ましくは3ng/mlの濃度で添加
する。
【0022】本発明に用いられる亜セレン酸塩として
は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸カリウム等が挙
げられる。該亜セレン酸若しくはその塩は、好ましくは
1〜100nM、より好ましくは10nMの濃度で添加
する。
【0023】インスリン、トランスフェリン、ビオチ
ン、アスコルビン酸、グルコース、上皮成長因子、繊維
芽細胞成長因子、亜セレン酸若しくはその塩は、いずれ
も水溶性であり、そのまま添加しても良いが、各成分を
混合した高濃度溶液を調製しておき、その一定量を加え
るのも好ましい方法である。また、非水溶性のデキサメ
タゾンの場合は、エタノールにあらかじめ溶解したもの
を用いると良い。
【0024】また、インドメタシンは1−(p−コロロ
ベンゾイル)−5−メトキシー2−メチルインドール−
3−酢酸とも呼ばれる、分子量357.79の化合物で
ある。インドメタシンの場合、好ましくは10〜500
μM、より好ましくは100μMの濃度で添加する。
【0025】プロスタグランジンは、アラキドン酸のよ
うなエイコサポリエン酸から動物組織で合成される一群
の生理活性物質の総称である。具体的には、プロスタグ
ランジンD2 、プロスタグランジンF2a、プロスタグラ
ンジンI2 、プロスタグランジンJ2 等が好適に使用で
きる。プロスタグランジンの場合、種類により異なる
が、好ましくは1〜100μM、より好ましくは10μ
Mの濃度で添加する。
【0026】長鎖脂肪酸は高級脂肪酸ともいい、炭素数
11以上の脂肪酸の総称である。具体的には、オレイン
酸、リノール酸、パルミチン酸、アラキドン酸等が好適
に使用できる。長鎖脂肪酸の場合、種類により異なる
が、好ましくは0.5〜500μM、より好ましくは1
〜100μMの濃度で添加する。
【0027】チアゾリジン誘導体とはチアゾリジンから
合成される一群の化合物であり、例えば、〔〔ω−(ヘ
テロシクリルアミノ)アルコキシル〕ベンジル〕−2,
4−チアゾリジンジオン、(±)−5−〔〔2−(2−
ナフタレニルメチル)−5−ベンゾキサゾイル〕メチ
ル〕−2,4−チアゾリジンジオン等が例示される。具
体的に、インスリン抵抗性改善薬として利用されるトロ
グリタゾン(三共製薬製)、ピオグリタゾン(武田製薬
製)、T−147(田辺製薬製)、BRL49653
(スミスクライン・ビーチャム製)等が挙げられる。チ
アゾリジン誘導体の場合、種類により異なるが、好まし
くは1〜100μM、より好ましくは10μMの濃度で
添加する。
【0028】インドメタシン、プロスタグランジン、長
鎖脂肪酸及びチアゾリジン誘導体は、いずれも試験管内
において前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化を促進させる
作用を有する化合物である。したがって、今後上記のも
の以外に前駆脂肪細胞の分化を促進する化合物が同定さ
れれば、この化合物も本発明に使用しうることが予測さ
れる。
【0029】インドメタシン、プロスタグランジン、チ
アゾリジン誘導体はいずれも非水溶性である。この場
合、エタノールやジメチルスルホオキシド等を溶媒とし
て高濃度溶液を調製しておき、その一定量を加えるのも
好ましい方法である。また、長鎖脂肪酸は細胞毒性作用
を有するので、担体としてウシ血清アルブミンを加える
のも良い方法である。
【0030】本発明において使用する血清としては、例
えば、ウシ胎児血清、仔ウシ血清、馬血清などが挙げら
れる。血清の含有量は、通常は0〜3%であり、より好
ましくは約1%程度である。
【0031】本発明において、初代前駆脂肪細胞に分化
誘導を起こす方法は、例えば、初代前駆脂肪細胞をコン
フレントになるまで培養した後、本発明の分化用培地に
交換し、3〜10日間培養する。培養はCO2 インキュ
ベーター内で5%CO2 、37℃の条件で行うことが望
ましい。しかる後、細胞内に油滴の蓄積が光学顕微鏡に
より観察できるようになる。分化の程度の定量化は、細
胞内に蓄積された中性脂肪量を定量することにより簡便
に行うことができる。この場合、中性脂肪量が多いほど
分化効率は高いことを示す。本発明における分化用培地
では0〜3%量の無血清あるいは低血清の条件におい
て、従来よりも効率の良い分化が認められる。
【0032】
【実施例】以下、本発明を具体的に実施例にて説明す
る。本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0033】1 初代前駆脂肪細胞の調製 Wister系ラット(10週齢、雄)より得た皮下脂
肪組織を、PBSで洗浄後、ハサミで脂肪組織を約2m
m×2mm×2mmに細切し、1mg/mlコラゲナー
ゼ、10mg/mlウシ血清アルブミンを含むダルベッ
コ改変イーグル培地(DMEM)に浸積し、軽く振とう
しながら37℃で消化させた。約30分間反応の後、脂
肪組織が消化されたのを確認し、消化液を100μmナ
イロンメッシュで濾過した。この懸濁液を1000rp
m、5分間遠心して初代前駆脂肪細胞を沈殿分画として
回収した。このとき、成熟脂肪細胞は上層に浮遊層を形
成した。得られた初代前駆脂肪細胞を10%ウシ胎児血
清を含むDMEMに懸濁し、組織培養用シャーレに植え
込み、5%CO2 、37℃のインキュベーター内で約8
0%コンフレントになるまで培養し、初代前駆脂肪細胞
を得た。
【0034】2 初代前駆脂肪細胞の分化誘導 得られた初代前駆脂肪細胞を組織培養用24穴プレート
に播種し、コンフレントになるまで10%ウシ胎児血清
を含むDMEMにおいて培養した。コンフレントになっ
た後、分化を誘導するために以下のような培地に交換し
て、7日間培養した。
【0035】実施例1 10μg/mlインスリン、10μg/mlトランスフ
ェリン、100μMデキサメタゾン、0.1μg/ml
ビオチン、50μg/mlアスコルビン酸、15mMグ
ルコース、30ng/ml上皮成長因子、10nM亜セ
レン酸、100μMインドメタシン、及び0.15〜
2.00%範囲の各ウシ胎児血清濃度を含むDMEM
【0036】比較例1 10μg/mlインスリン、10μg/mlトランスフ
ェリン、100μMデキサメタゾン、15mMグルコー
ス、100μMインドメタシン、及び0.15〜2.0
0%範囲の各ウシ胎児血清濃度を含むDMEM
【0037】比較例2 0.15〜2.00%範囲の各ウシ胎児血清濃度を含む
DMEM
【0038】図1、図2及び図3に1%ウシ胎児血清濃
度で分化誘導を行った場合の、各細胞形態を示す。図1
の実施例1の細胞は図2及び図3の比較例1及び2に比
べて、油滴の蓄積が見られる分化した脂肪細胞像が高頻
度で認められた。
【0039】分化の程度を定量化する為に、蓄積された
中性脂肪量を中性脂肪測定試薬(東洋紡績製)にて測定
した。コントロール及び実施例の細胞の24穴プレート
1穴当たりに蓄積された中性脂肪量を図4に示す。0.
15〜2.00%の低血清条件下では、比較例1及び2
に比べ、実施例1では有意に高い中性脂肪の蓄積が認め
られ、高い分化誘導能を保持していることが確認され
た。
【0040】
【発明の効果】上述したように、本発明は、インスリ
ン、トランスフェリン、デキサメタゾン、ビオチン、ア
スコルビン酸、グルコース、上皮成長因子若しくは繊維
芽細胞成長因子、ならびに亜セレン酸若しくはその塩を
含有し、かつインドメタシン、プロスタグランジン、長
鎖脂肪酸およびチアゾリジン誘導体よりなる群から選ば
れた少なくとも1種の化合物を加えた栄養培地を使用す
ることにより、無血清あるいは低血清状態で初代前駆脂
肪細胞を分化誘導することができる。したがって、初代
前駆脂肪細胞を用いて、肥満やその病態等に関する細胞
生物学的、分子生物学的機構を詳細に解析する際、また
は肥満、糖尿病等の治療薬を評価する際、血清成分の影
響を考慮することなく、結果の分析を行うことができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の条件において、1%ウシ胎児血清濃
度で分化誘導を行った場合の細胞形態を示した顕微鏡写
真である。実施例の細胞では細胞中に油滴の蓄積が見ら
れる分化した脂肪細胞が高頻度で認められた。
【図2】比較例1の条件において、1%ウシ胎児血清濃
度で分化誘導を行った場合の細胞形態を示した顕微鏡写
真である。比較例1では分化した脂肪細胞が少ない。
【図3】比較例2の条件において、1%ウシ胎児血清濃
度で分化誘導を行った場合の細胞形態を示した顕微鏡写
真である。比較例2では分化した脂肪細胞はほとんど認
められない。
【図4】実施例1、比較例1及び比較例2について、
0.15〜2.00%の低血清条件下で分化誘導するこ
とにより蓄積された中性脂肪量を定量した結果を示した
グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川村 良久 福井県敦賀市東洋町10番24号 東洋紡績株 式会社敦賀バイオ研究所内 Fターム(参考) 4B065 AA90X BB02 BB10 BB13 BB15 BB19 BB20 BB25 BB34 BC50

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インスリン、トランスフェリン、デキサ
    メタゾン、ビオチン、アスコルビン酸、グルコース、上
    皮成長因子若しくは繊維芽細胞成長因子、ならびに亜セ
    レン酸若しくはその塩を含有し、かつインドメタシン、
    プロスタグランジン、長鎖脂肪酸およびチアゾリジン誘
    導体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を
    含む栄養培地中において初代前駆脂肪細胞を脂肪細胞へ
    分化誘導する方法。
  2. 【請求項2】 3%以下の血清を含む請求項1記載の栄
    養培地を用いた初代前駆脂肪細胞を脂肪細胞へ分化誘導
    する方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の栄養培地がイ
    ーグル基本培地(MEM)、アルファイーグル基本培地
    (αMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DME
    M)、ハムのF−12培地から選ばれる少なくとも1種
    である初代前駆脂肪細胞を脂肪細胞へ分化誘導する方
    法。
  4. 【請求項4】 栄養培地がインスリン、トランスフェリ
    ン、デキサメタゾン、ビオチン、アスコルビン酸、グル
    コース、上皮細胞成長因子若しくは繊維芽細胞成長因
    子、ならびに亜セレン酸若しくはその塩を含有し、かつ
    インドメタシン、プロスタグランジン、長鎖脂肪酸およ
    びチアゾリジン誘導体よりなる群から選ばれた少なくと
    も1種の化合物を含む初代前駆脂肪細胞の分化用培地。
  5. 【請求項5】 3%以下の血清を含む請求項4記載の初
    代前駆脂肪細胞の分化用培地。
  6. 【請求項6】 栄養培地がイーグル基本培地(ME
    M)、アルファイーグル基本培地(αMEM)、ダルベ
    ッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムのF−12培
    地から選ばれる少なくとも1種である請求項4または5
    に記載の初代前駆脂肪細胞の分化用培地。
JP10335156A 1998-11-26 1998-11-26 初代前駆脂肪細胞の分化誘導方法及びその分化用培地 Pending JP2000157260A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10335156A JP2000157260A (ja) 1998-11-26 1998-11-26 初代前駆脂肪細胞の分化誘導方法及びその分化用培地

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10335156A JP2000157260A (ja) 1998-11-26 1998-11-26 初代前駆脂肪細胞の分化誘導方法及びその分化用培地

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000157260A true JP2000157260A (ja) 2000-06-13

Family

ID=18285405

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10335156A Pending JP2000157260A (ja) 1998-11-26 1998-11-26 初代前駆脂肪細胞の分化誘導方法及びその分化用培地

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000157260A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU2003274735B2 (en) * 2002-10-23 2008-12-04 Sucampo Ag Prostaglandin compounds for the treatment of obesity
WO2016013352A1 (ja) * 2014-07-23 2016-01-28 学校法人日本大学 脱分化脂肪細胞の製造方法
CN110832321A (zh) * 2017-06-29 2020-02-21 K·埃瑟 鉴定诱导未分化或去分化的实体肿瘤细胞(再)分化的制剂的方法
CN112877286A (zh) * 2021-02-26 2021-06-01 张若冰 一种干细胞体外诱导方法
CN117625527A (zh) * 2023-12-20 2024-03-01 中国肉类食品综合研究中心 一种哺乳动物脂肪前体细胞分离、鉴定和成脂分化的方法及组合物及应用
CN117721074A (zh) * 2024-01-10 2024-03-19 中国肉类食品综合研究中心 一种禽类无血清成脂诱导分化培养基及诱导方法及应用

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU2003274735B2 (en) * 2002-10-23 2008-12-04 Sucampo Ag Prostaglandin compounds for the treatment of obesity
US8114911B2 (en) 2002-10-23 2012-02-14 Sucampo Ag Prostaglandin compounds for the treatment of obesity
WO2016013352A1 (ja) * 2014-07-23 2016-01-28 学校法人日本大学 脱分化脂肪細胞の製造方法
JP5991687B2 (ja) * 2014-07-23 2016-09-14 学校法人日本大学 脱分化脂肪細胞の製造方法
CN110832321A (zh) * 2017-06-29 2020-02-21 K·埃瑟 鉴定诱导未分化或去分化的实体肿瘤细胞(再)分化的制剂的方法
CN112877286A (zh) * 2021-02-26 2021-06-01 张若冰 一种干细胞体外诱导方法
CN112877286B (zh) * 2021-02-26 2022-12-27 张若冰 一种干细胞体外诱导方法
CN117625527A (zh) * 2023-12-20 2024-03-01 中国肉类食品综合研究中心 一种哺乳动物脂肪前体细胞分离、鉴定和成脂分化的方法及组合物及应用
CN117721074A (zh) * 2024-01-10 2024-03-19 中国肉类食品综合研究中心 一种禽类无血清成脂诱导分化培养基及诱导方法及应用
CN117721074B (zh) * 2024-01-10 2024-04-30 中国肉类食品综合研究中心 一种禽类无血清成脂诱导分化培养基及诱导方法及应用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Benayahu et al. Bone marrow‐derived stromal cell line expressing osteoblastic phenotype in vitro and osteogenic capacity in vivo
Cornish et al. Effects of calcitonin, amylin, and calcitonin gene-related peptide on osteoclast development
JP2021104021A (ja) 軟骨細胞系統細胞及び/又は軟骨様組織を作製するための方法及び組成物
CN103060264B (zh) 一种干细胞培养基及其应用和干细胞培养方法
Li et al. Myokine IL-15 regulates the crosstalk of co-cultured porcine skeletal muscle satellite cells and preadipocytes
US10335437B2 (en) Injectable brown adipose microtissues for treatment and prevention of obesity and diabetes
Ninomiya et al. Development of a rapid culture method to induce adipocyte differentiation of human bone marrow-derived mesenchymal stem cells
JP2002529071A (ja) 軟骨細胞様細胞のための無血清培地
JP2005515753A (ja) 幹細胞分化
US20110195921A1 (en) Elimination of a contaminating non-human sialic acid by metabolic competition
KR20060076781A (ko) 세포 배양 배지
EP3365436B1 (en) Methods of preparing a primary cell sample
TW200927927A (en) Stem cell medium
Mikami et al. Current status of drug therapies for osteoporosis and the search for stem cells adapted for bone regenerative medicine
Zhao et al. Rutin promotes the formation and osteogenic differentiation of human periodontal ligament stem cell sheets in vitro
KR102034496B1 (ko) 인공 근위세뇨관 시스템 및 사용 방법
JP2000157260A (ja) 初代前駆脂肪細胞の分化誘導方法及びその分化用培地
Robledo et al. Spheroids derived from the stromal vascular fraction of adipose tissue self-organize in complex adipose organoids and secrete leptin
Motwani et al. Multiple Hormone Requirement for the Synthesis of α2u-Globulin by Monolayers of Rat Hepatocytes in Long Term Primary Culture
WO2019134498A1 (zh) 一种蛋白在细胞培养中的应用
US20190269732A1 (en) Agent for promoting wound healing comprising platelet-like cell co-expressing platelet surface antigen and mesenchymal cell surface antigen
CN105695400A (zh) 一种纯化干细胞来源的心肌细胞的无血清培养基
JPWO2012029863A1 (ja) 成長因子に結合する硫酸化多糖類およびその利用
Mantalaris et al. Production of human osteoclasts in a three-dimensional bone marrow culture system
Dakshinamurti 11 Regulation of Gene Expression by Biotin, Vitamin B6 and Vitamin C

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060202

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20060602