JP2000144333A - 溶解法による高硬度高速度工具鋼 - Google Patents

溶解法による高硬度高速度工具鋼

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JP2000144333A JP31442998A JP31442998A JP2000144333A JP 2000144333 A JP2000144333 A JP 2000144333A JP 31442998 A JP31442998 A JP 31442998A JP 31442998 A JP31442998 A JP 31442998A JP 2000144333 A JP2000144333 A JP 2000144333A
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Yukio Abe
行雄 阿部
Shiho Fukumoto
志保 福元
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶解法にて製造される工具用材料として、C
o無添加でも68HRC以上の高硬度が得られ、かつ実
用上必要な靭性をも維持する高速度工具鋼を提供する。 【解決手段】 重量%にて、C:1.05〜2.00
%、Si:0.3〜2.0%、Mn≦2.0%、Cr:
3.0〜5.0%、W、Moの1種以上を(W+2M
o):19.0〜25.0%、V:1.5〜5.0%、
残部実質的にFeからなり、2Mo/(W+2Mo)×
Si:0.4〜1.0を満たし、焼入れ焼戻し硬さが6
8HRC以上となる溶解法による高速度工具鋼である。
好ましくは、C:1.05〜1.40%、あるいは、S
i:0.3〜1.0%、あるいは、V:1.5〜2.5
%、あるいは、2Mo/(W+2Mo):0.7〜1.
0とし、焼入れ焼戻した時の断面組織中に確認される炭
化物のうち、円相当直径で1μm以上の炭化物が、断面
の14〜20(面積%)を占めることが望ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンドミル、タッ
プに代表される切削工具として使用される溶解法による
高硬度の高速度工具鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】エンドミル、タップに代表される切削工
具の材料のひとつとして、高速度工具鋼が用いられてい
る。高速度工具鋼は製造方法の観点からは溶解法と粉末
法に分類され、化学組成の観点からは主要元素である
W、Moの添加量及び両元素の添加割合によりW系、M
o系に主として分類される。また高速度工具鋼を構成す
る主要元素のひとつにCoがあるが、JIS SKH5
1に代表されるようなCo無添加材、及びSKH59の
ようにCoを含むものがある。
【0003】近年の加工技術の高度化、加工工数の合理
化に伴って、高硬度といった難削材には、高精度の切
削、仕上が求められており、これらに用いられる工具の
寿命向上の要求が高まっている。工具の寿命向上につい
ては、工具材料の耐摩耗性の更なる向上が求められてお
り、材料に含まれる硬質の炭化物量を増加させたり、材
料の基地の硬さを高めることで工具材料の硬度を上げる
ことが重要な項目となる。なお、炭化物量を増やすこと
は、炭化物自体の高硬度によりアブレッシブ摩耗の抑制
などによる耐摩耗性向上の効果もある。
【0004】高速度工具鋼においては、高硬度化を行な
う上で、材料の基地の硬さを高めるために基地に固溶す
るC量を高めたり、残留オーステナイトの分解を促進さ
せるなどのことが行なわれる。また炭化物量を増加させ
るために、炭化物を形成させる元素であるC、W、M
o、Vの添加量を増やしたりすることがなされている。
しかしながら、これらの手段による高合金化を単に進め
ると、靭性の低下を招き、高硬度は得られても工具とし
て使用する場合の折損、破壊の問題が生じる。
【0005】そこで、工具材料として靭性面をも考慮す
ると、JIS SKH51に代表されるようなCoを含
まない鋼種では実用上、68HRC以上の硬さを得るこ
とは困難であるのが現状である。一方、高速度工具鋼に
おいて硬さを高める目的でCoを添加したSKH59や
特公昭47−31485号等においては、実用的に必要
な靭性を保てる程度のW、Mo、V等の添加量にて、6
8HRC以上の硬度を得ることができる。しかし、70
HRC以上の高硬度を得る場合は、W、Mo、V等の添
加による高合金化は避けられず、その場合は靭性の低下
を抑制するために、粉末法が用いられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、粉末法
による高硬度工具材料の製造は、コスト面及び製造工程
が複雑となる観点から溶解法によるものに比べ不利であ
る。また、溶解法による高硬度工具材料の製造の場合
は、希少・高価なCoの添加を必要とし、コスト面で不
利となる。また、Coを添加した場合は、高硬度を得る
にあたって、Co無添加の材料に比べ焼戻し回数を増や
す必要があり、製造工数面においても不利となる。
【0007】溶解法によるCo無添加の高速度工具鋼の
場合、その高硬度に係るものとしては、例えばDEW−
Technische Berichte 12. B
and 1972 Heft 3 S.213の開示が
あり、これは、W量とMo量に対するMoの割合が高い
もの、いわゆる高Mo系の高速度工具鋼において、その
Si添加の影響を述べたものである。つまり、高Mo系
の高速度工具鋼では、凝固時にMC型の共晶炭化物が
形成され、MC型の炭化物量が多いと、焼入れ焼戻し
時において板状のMC型の炭化物が残存することとな
る。しかし、Si添加量を高めると、共晶MC型炭化
物がMC型炭化物とMC型炭化物へと分解する反応が
促進され、その結果、凝固時の炭化物が微細になり、炭
化物量が増加する。また、Siの添加により残留オース
テナイトの分解も促進され、これらの作用によって硬度
の上昇がなされるというものである。
【0008】しかしながら、単にSi添加量を増加させ
たのみでは、十分な高硬度化及び諸特性が得られず、焼
入れ焼戻し時に68HRC以上の硬さを得るには、上記
の手段をしても不十分である。そこで、本発明は、溶解
法にて製造される工具用材料として、Co無添加でも6
8HRC以上の高硬度が得られ、かつ実用上必要な靭性
をも維持する高速度工具鋼を提供することを目的とし、
これによって、低合金でも高硬度の耐摩耗性に優れる工
具用材料の提供を可能とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の課
題を解決すべく、高速度工具鋼の焼入れ焼戻し硬さやそ
の他諸特性に及ぼす構成元素種およびその含有量、更に
は、その組織形態の影響について検討を行なった。その
結果、Co無添加でも68HRC以上の焼入れ焼戻し硬
さが得られ、かつ実用上必要な靭性を維持する成分バラ
ンスを見いだし、本発明に至った。
【0010】すなわち、本発明は、重量%にて、C:
1.05〜2.00%、Si:0.3〜2.0%、Mn
≦2.0%、Cr:3.0〜5.0%、W、Moの1種
以上を(W+2Mo):19.0〜25.0%、V:
1.5〜5.0%、残部実質的にFeからなり、2Mo
/(W+2Mo)×Si:0.4〜1.0を満たし、焼
入れ焼戻し硬さが68HRC以上となる溶解法による高
硬度高速度工具鋼であり、好ましくは、C:1.05〜
1.40%、あるいは、Si:0.3〜1.0%、ある
いは、V:1.5〜2.5%を満たすものである。
【0011】また、本発明の高硬度化には、WとMoに
対するMoの割合を高くすることが有効である。すなわ
ち、2Mo/(W+2Mo):0.7〜1.0を満たす
ものであることが望ましい。さらに、本発明の高硬度化
には、焼入れ焼戻した際の炭化物量を調節することが有
効である。すなわち、焼入れ焼戻した時の断面組織中に
確認される炭化物のうち、円相当直径で1μm以上の炭
化物が、断面の14〜20(面積%)を占めるものであ
ることが望ましい。
【0012】なお、本発明の高速度工具鋼は、Coを添
加せずとも十分な靭性を維持した上で硬度の向上が可能
であるところに特徴を有するが、Coの含有にて本発明
の作用・効果が損なわれるというものでもない。但し、
この場合、本発明においては、例えば重量%にて1.0
%未満、更には、0.5%以下のCoを含有するような
高速度工具鋼を対象とすることが、本発明の効果をより
有効に利用できるものとして好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の特徴は、成分バランス、
特にMo、W、Siのバランスにある。以下に、本発明
での成分の限定理由について述べる。Cは、Cr、W、
Mo、Vなどの炭化物形成元素と結合して炭化物を形成
し、一部は基地中に固溶することで、工具の高硬度及び
耐摩耗性、耐熱性、耐焼付性に寄与する。Cが少な過ぎ
ると工具に必要な硬度及び耐摩耗性が得られず、多過ぎ
ると巨大な炭化物が形成され靭性が低下するので、C
は、1.05〜2.00%とする。この範囲においても
目的の特性が得られるが、本発明の効果を特に引き出す
に好ましくは、1.05〜1.40%である。
【0014】Siは、本発明の効果を得る上で重要な元
素である。その重要な効果については、後述の2Mo/
(W+2Mo)×Siの限定理由の項目で述べるが、他
にSiは、溶製過程における脱酸剤として含有するもの
でもある。そのため、Siは0.3%以上の含有を必要
とするが、多過ぎると偏析による靭性の低下を招くので
2.0%以下とする。本発明の特徴を特に引き出すに好
ましくは、0.3〜1.0%の範囲である。Mnは、溶
製過程における脱酸及び脱硫を目的として含有させても
よいが、多過ぎると靭性の添加を招くので2.0%以下
とする。
【0015】Crは、焼入性、耐摩耗性、耐酸化性を得
るため、その含有量を3.0%以上とする。しかしなが
ら、多過ぎると高温強度、焼戻し軟化抵抗を低下させ、
また靭性も下げるので5.0%以下とする。W及びMo
は、本発明の効果を得る上で重要な元素である。W及び
MoはCと結合して特殊炭化物を形成し、一部基地中に
も固溶することで、高硬度化及び耐摩耗性、耐焼付性の
向上に寄与する。また、焼戻しによる二次硬化作用を大
きくし、高温強度に寄与する。以上の効果を得るため
に、W、Moの含有量は、その1種以上を(W+2M
o)で19.0%以上とする。しかしながら、多過ぎる
と靭性、熱間加工性を損なうので(W+2Mo)で2
5.0%以下とする。
【0016】Vは、Cと結合して硬いVC型炭化物を形
成し、耐摩耗性の向上に寄与する。この効果を得るため
に、Vの含有量は1.5%とするが、多過ぎると靭性の
低下を招くので5.0%以下とする。発明の特徴を特に
引き出すに好ましくは、1.5〜2.5%の範囲であ
る。
【0017】次に、本発明の効果を得るにあたって重要
な構成要素となる、2Mo/(W+2Mo)×Si及び
2Mo/(W+2Mo)の限定理由について述べる。2
Mo/(W+2Mo)は、W、Mo全量に対するMo量
の割合を示す値である。なお、高速度工具鋼において、
その含有されるWとMoの効果は、各特性に対して同等
のものが多く、その効果の程度は重量比でWがMoの2
倍相当であるため、高速度工具鋼の特性を考える上での
W、Moの含有量には、(W+2Mo)、いわゆるW当
量を用いることが有効である。
【0018】2Mo/(W+2Mo)の値が大きいも
の、いわゆる高Mo系で、かつC量も高い高速度工具鋼
の場合は、先述したように、その凝固過程にて生成され
たMC型の共晶炭化物が、その後の鍛造、焼入れ焼戻
しによっても板状の残留MC型炭化物として存在し、
この板状のMC型炭化物の存在は材料の靭性を損ね
る。これは、先述したSi量の増加による共晶MC型
炭化物の分解反応の促進にて、凝固時の炭化物の微細化
および炭化物量の増加、そして、板状MC型炭化物を
減少させることに加え、更には、焼戻し時の残留オース
テナイトの分解を促進させることで、焼入れ焼戻し硬さ
の増加及び靭性の低下を抑制できる。
【0019】以上より、W、Moに加えて、Si量を調
整することは、本発明の効果を得る上で重要な要素とな
るのだが、これらW、Mo量とSi量を単独で調整する
のみでは本発明の特徴である68HRC以上の焼入れ焼
戻し硬さを得、かつ実用上で必要な靭性を維持すること
は困難である。そこで、本発明者らは、これらW、Mo
およびSi含有の効果に加え、それら元素の含有バラン
スによる効果までをも考慮するに至り、その結果、2M
o/(W+2Mo)による値とSi量を相互適正化する
ことが、上記効果の達成・向上に有効である知見を得
た。
【0020】つまり、2Mo/(W+2Mo)による値
とSi量の兼ね合い、2Mo/(W+2Mo)×Si値
を調整することが本発明の効果を得るにおいて最も有効
であり、その適性値を見いだしたのである。具体的に
は、靭性低下を招かず、かつ68HRC以上の焼入れ焼
戻し硬さを得るために、2Mo/(W+2Mo)×Si
の範囲を0.4〜1.0とするものである。このバラン
スを損ねると、炭化物の分解の不十分により板状M
型炭化物量の残存による靭性低下を招き、高硬度も得ら
れない。
【0021】なお、共晶MC型炭化物の生成及び分解
反応は、高Mo系、つまり2Mo/(W+2Mo)の値
が大きい方が顕著であるため、本発明においては、この
2Mo/(W+2Mo)の値は高い方が硬度と靭性のバ
ランスを考えた上でより効果的である。好ましくは、2
Mo/(W+2Mo):0.7〜1.0である。
【0022】本発明においては、上述してきた成分範囲
及びSi、W、Mo量のバランスの適正化により低合金
でも高硬度の耐摩耗性に優れる工具用材料が得られる
が、より高硬度化を行なう場合は、Si、W、Mo量の
バランス適正化により共晶MC型炭化物の生成及び分
解反応を促進させることに加え、焼入れによる炭化物、
特にMC型炭化物の固溶をさせ過ぎず、適度に残して
おくことが望ましい。しかし、炭化物量が多すぎると靭
性の低下を招くので、焼入れ焼戻した時の断面組織中に
確認される炭化物のうち、円相当直径で1μm以上の炭
化物が、断面の14〜20(面積%)であることが望ま
しい。円相当直径とは、炭化物の断面形状を円相当に考
慮した場合の、その断面積から求められる相当直径であ
る。
【0023】本発明の高速度工具鋼は、Coを添加せず
とも十分な靭性を維持した上で硬度の向上が可能である
ところに特徴を有するが、Coの含有にて本発明の作用
・効果が損なわれるというものでもない。但し、この場
合、本発明においては、例えば重量%にて1.0%未
満、更には、0.5%以下のCoを含有するような高速
度工具鋼を対象とすることが、本発明の効果をより有効
に利用できるものとして好ましい。よって、本発明の高
速度工具鋼は、その省資源の観点からリサイクル素材を
用いて製造することによるCoの含有によっても、本発
明の特徴を十分に発揮することができ、更なる低コスト
化に有効である。
【0024】また、本発明の高速度工具鋼に含有される
Vにおいては、その他の4a、5a族元素(Ti、Z
r、Hf、Nb、Ta)との置換が可能である。4a、
5a族元素は、Vと同様にMC型の炭化物を形成し、耐
摩耗性を得るのに有効な元素である。つまり、(V+
[Vを除く4a、5a族元素の少なくとも1種以上の総
量])を、重量%にて、1.5〜5.0%、好ましく
は、1.5〜2.5%にするものである。
【0025】加えて、本発明の高速度工具鋼は、Alの
含有も可能である。つまり、Alは溶製過程における脱
酸剤であると共に、MC型炭化物の絶対量を増やす効
果、更に、MC型炭化物を微細に晶出させる効果を有
し、耐摩耗性や砥石による研削性の向上に寄与する。し
かし、多量の含有はAl系介在物を増加させ、疲労強度
を劣化させることから、重量%にて、0.2%以下の含
有を可能とする。
【0026】そして、本発明の高速度工具鋼は、Nの含
有も可能である。つまり、NはSiに同じく、共晶M
C型炭化物のMC型炭化物とMC型炭化物への分解を
促進する効果を有する。重量%にて、0.05%を越え
る含有ではその効果は飽和し、また、その固溶限をも考
慮して、本発明では、0.05%以下とする。
【0027】
【実施例】以下に本発明の実施例について説明する。真
空炉により所定の合金を溶解し、表1に示す化学組成を
有する鋼塊を製作した。鋼塊を鍛造して18mm×18
mmの鋼材に仕上げ、焼鈍を行なった。
【0028】
【表1】
【0029】そして、焼鈍後の鋼材に焼入れ(1200
℃)、焼戻し(550℃)の熱処理を行なった後、炭化
物の分布、焼入れ焼戻し硬さ、抗折力、耐摩耗性を調べ
た。炭化物については、試料をナイタールにて強腐食
後、1000倍にて観察し、画像解析によって円相当直
径で1μm以上の炭化物について、その断面に占める面
積率を測定した。抗折力は、スパン50mmの中央一点
荷重方式で行なった。耐摩耗性の評価は、大越式迅速摩
耗試験法により、相手材をSCM415とし、摩擦距離
400m、荷重6.8kgf、摩擦速度1.96m/s
の条件で行ない、比摩耗量で評価した。炭化物の測定結
果を表1に示し、それ以外の結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】まず、焼入れ焼戻し硬さについて説明す
る。表2に示すように、本発明鋼は68HRC以上の焼
入れ焼戻し硬さが得られている。その中でも本発明鋼N
o.3、4は、円相当直径で1μm以上の炭化物の占め
る面積率が大きく、硬さも高い。比較鋼については、い
ずれも2Mo/(W+2Mo)×Si値が本発明の0.
4〜1.0を満たしていない。その上、比較鋼No.8
はC量が本発明より低く、比較鋼No.11はSi量が
本発明より低く、比較鋼No.12は(W+2Mo)値
が本発明より低い。比較鋼No.8、12については、
本発明に規定する炭化物の好ましい面積率も小さい。そ
のため、68HRC以上の硬さが得られていない。な
お、比較鋼No.13は、Coが添加されているため、
2Mo/(W+2Mo)×Si値が本発明の範囲外でも
68HRC以上の焼入れ焼戻し硬さが得られているが、
Coの添加がコスト面や製造工数面において不利である
ことは先述の通りである。以上より、本発明によって焼
入れ焼戻し硬さが向上し、68HRC以上の焼入れ焼戻
し硬さが得られることが分かる。
【0032】次に、抗折力について説明する。本発明鋼
は、その高硬さにより、比較鋼No.8〜12に比して
抗折力こそ劣っているものもあるが、同等の硬度でCo
添加の比較鋼No.13に比べて抗折力はほぼ同程度、
もしくはそれ以上である。なお、比較鋼No.13はJ
IS SKH59であり、実用されている鋼種である。
以上より、本発明であれば、Coを添加せずとも、Co
添加材と同程度の硬度と抗折力が得られ、実用に必要な
靭性を維持できることが分かる。
【0033】次に、耐摩耗性について説明する。本発明
鋼は、比較鋼No.8〜12に比して耐摩耗性が改善さ
れていることが分かる。またCo添加材である比較鋼N
o.13に比して、同等の耐摩耗性を有している。本発
明であれば、Coの添加なしでも、Co添加材と同等程
度の耐摩耗性を付与できることが分かる。
【0034】
【発明の効果】以上述べたように、本発明であれば、成
分の適正なバランス調整により、Coが無添加でも68
HRC以上の硬度が得られ、かつ実用上必要な靭性が維
持され、耐摩耗性も向上した溶解法による高速度工具鋼
が提供できる。よって、コスト面や製造面で不利な粉末
法やCo添加の適用をせずとも、高硬度、高耐摩耗性の
高速度工具鋼が得られ、高性能な工具を製造し得ること
から、工業上の価値は大きい。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、C:1.05〜2.00
    %、Si:0.3〜2.0%、Mn≦2.0%、Cr:
    3.0〜5.0%、W、Moの1種以上を(W+2M
    o):19.0〜25.0%、V:1.5〜5.0%、
    残部実質的にFeからなり、2Mo/(W+2Mo)×
    Si:0.4〜1.0を満たし、焼入れ焼戻し硬さが6
    8HRC以上となることを特徴とする溶解法による高硬
    度高速度工具鋼。
  2. 【請求項2】 重量%にて、C:1.05〜1.40%
    であることを特徴とする請求項1に記載の溶解法による
    高硬度高速度工具鋼。
  3. 【請求項3】 重量%にて、Si:0.3〜1.0%で
    あることを特徴とする請求項1ないし2に記載の溶解法
    による高硬度高速度工具鋼。
  4. 【請求項4】 重量%にて、V:1.5〜2.5%であ
    ることを特徴とする請求項1ないし3に記載の溶解法に
    よる高硬度高速度工具鋼。
  5. 【請求項5】 重量%にて、2Mo/(W+2Mo):
    0.7〜1.0であることを特徴とする請求項1ないし
    4に記載の溶解法による高硬度高速度工具鋼。
  6. 【請求項6】 焼入れ焼戻した時の断面組織中に確認さ
    れる炭化物のうち、円相当直径で1μm以上の炭化物
    が、断面の14〜20(面積%)を占めることを特徴と
    する請求項1ないし5に記載の溶解法による高硬度高速
    度工具鋼。
  7. 【請求項7】 重量%にて、Feの一部を1.0%未満
    のCoにて置換したことを特徴とする請求項1ないし6
    に記載の溶解法による高硬度高速度工具鋼。
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