JP2000144105A - 摩擦材用アラミド繊維塊及び摩擦材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱性や耐候性に優れた摩擦材調整材並びに
摩擦特性に優れた摩擦材を提供する。 【解決手段】 フィブリル化したアラミドパルプ片を球
状化した摩擦材用アラミド繊維塊、及びこの摩擦材用ア
ラミド繊維塊を他の摩擦材原料とともに成形してなり、
かつ摩擦材用アラミド繊維塊が塊状を維持して存在して
いる摩擦材。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、各種車両や産業機
械等のブレーキやクラッチ等に使用される摩擦材並びに
摩擦材原料として好適なアラミド繊維塊に関する。

【０００２】

【従来の技術】各種車両や産業機械等のブレーキパッ
ド、ブレーキライニングやクラッチフェーシング等に広
く使用される摩擦材には、各種の摩擦調整材が配合され
ており、中でも制動時におけるブレーキノイズの低減に
は、ゴムやカシューダスト等に代表される有機質系摩擦
調整材が作用するものと考えられている。しかしなが
ら、これらの有機質系摩擦調整材は耐熱性や耐候性等に
問題のあるものもあり、使用状況によってはその機能を
十分に果たさなかったり、摩擦材そのものの性能を低下
させるおそれもある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑
みてなされたものであり、耐熱性や耐候性に優れた摩擦
材調整材並びに摩擦特性に優れた摩擦材を提供すること
を目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記の目的は、本発明
の、フィブリル化したアラミドパルプ片を球状化してな
ることを特徴とする摩擦材用アラミド繊維塊により達成
される。また、同様の目的は、本発明の、上記摩擦材用
アラミド繊維塊を他の摩擦材原料とともに成形してな
り、かつ前記摩擦材用アラミド繊維塊が塊状を維持して
存在していることを特徴とする摩擦材によっても達成さ
れる。

【０００５】アラミド繊維は、ゴムやカシューダスト等
に比べて格段に耐熱性及び耐候性に優れ、またそのパル
プは柔軟性に富み、容易に球状化できるとともに形状維
持性も高い。しかも、球状化に際してその内部に空気が
取り込まれ、空隙を多く含んだ強度の高いスポンジ状の
粒子となる。そして、このアラミド繊維塊を含有した摩
擦材はブレーキノイズの低減効果はもとより、ダンピン
グ（振動の減衰）特性も向上する。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下、本発明に関して詳細に説明
する。本発明の摩擦材用アラミド繊維塊（以下、単にア
ラミド繊維塊と呼ぶ）の製造は、先ずアラミドパルプを
所定長さに切断したアラミドパルプ片を攪拌容器に入れ
て解繊し、フィブリル化する。通常、アラミドパルプは
直径１０〜１５μｍ程度の単繊維であり、これを全長
０．５〜５ｍｍ程度に切断してパルプ片とする。攪拌条
件はアラミドパルプ片の量によって異なり、例えばアラ
ミドパルプ片が２０ｇの場合、攪拌は６００ｐｒｍで６
０秒間程度処理する。更に、この解繊に際して、特開平
７−１６７１８１号公報に記載されているように、電荷
を帯びた気体を吹き付けながら行ってもよい。

【０００７】次いで、アルコール（好ましはエタノー
ル）または水を噴霧しながら、更に攪拌を続ける。この
攪拌により、複数のアラミドパルプ片が会合して塊状と
なる。この時、アルコールまたは水の噴霧量は６０ｍｌ
／分、また攪拌は６００ｐｒｍで６０秒間程度行う。そ
して、アラミドパルプ片が球状の塊となったところで攪
拌を終了し、乾燥することでアラミド繊維塊が得られ
る。このアラミド繊維塊は、図１に示されるように、繊
維が複雑に絡み合い、その内部に多数の空隙が形成され
たスポンジ状の粒状物である。また、その粒径は、摩擦
材原料としての用途を考えると、０．５〜５ｍｍ程度で
あることが好ましい。また、乾燥は必ずしも完全にする
必要はなく、アルコールや水が若干残存していてもよ
い。

【０００８】本発明はまた、従来の有機質系摩擦調整材
に代えて、もしくはその一部に代えて上記のアラミド繊
維塊を含有する摩擦材を提供することを目的とする。以
下に、その好ましい実施形態について説明する。出発原
料として、アラミド繊維等の有機繊維原料、チタン酸カ
リウム繊維やアルミナ繊維等のセラミック繊維、ガラス
繊維、炭素繊維、ロックウール等の無機繊維原料、銅や
硫黄、アルミニウム、亜鉛等の金属もしくはアルミナや
シリカ、ジルコニア等の金属酸化物等の無機質系摩擦調
整材、グラファイトや二硫化モリブデン等の固体潤滑
剤、バーミキュライトやマイカ等の鱗片状無機物、硫酸
バリウムや炭酸カルシウム等の充填材、フェノール樹脂
（ストレートフェノール樹脂及びゴム等による各種変性
フェノール樹脂を含む）、メラミン樹脂、エポキシ樹
脂、シアン酸エステル樹脂等の熱硬化性樹脂からなるバ
インダー、並びに上記アラミド繊維塊、必要に応じてゴ
ムやカシューダスト等の従来の有機質系摩擦調整材を所
定量配合し、十分に攪拌混合して調製する。ここで、ア
ラミド繊維塊以外は従来と同等の配合割合で構わない。
また、アラミド繊維塊は１〜１０体積％程度となるよう
に配合することが好ましい。アラミド繊維塊が１体積％
未満ではブレーキノイズ低減の効果が不十分で、一方１
０体積％を越える場合には、増量に見合う効果が得られ
ず不経済であり、また摩擦材の機械的強度が低下する。

【０００９】次いで、上記の出発原料をタブレット状に
予備成形した後、これをプレッシャープレートがセット
された熱プレスに投入して熱成形して所定の厚さ及び密
度の成形品とし、アフターキュア、仕上げ処理を施して
摩擦材が完成する。これら一連の工程は、常法に従って
行うことができ、例えば予備成形は面圧１００〜５００
Ｋｇｆ／ｃｍ² で行い、熱成形は温度１３０〜１８０
℃、面圧２００〜１０００Ｋｇｆ／ｃｍ² で３〜１５分
間程度行い、アフターキュアは温度１５０〜３００℃で
１〜１５時間程度行う。また、必要に応じてアフターキ
ュア後にスコーチ処理を施してもよい。このスコーチ処
理では、例えば摩擦材の表面をバーナーを用いて３０〜
３００秒間火炎処理したり、４００〜７００℃に熱した
熱板を３０〜３００秒間接触させる等して表面を焼くこ
とが行われる。

【００１０】このようにして得られた摩擦材は、アラミ
ド繊維塊を含有しない摩擦材と比較して、ブレーキノイ
ズの発生頻度が減少し、また減衰特性が１０〜２０％向
上する。図２は、アラミド繊維塊の配合率を変えて作製
した摩擦材について、摺動試験によりブレーキノイズの
発生頻度を測定した結果を示すグラフである。図示され
るように、アラミド繊維塊の配合率が多くなるのに伴っ
て、ブレーキノイズの発生が少なくなっているのがわか
る。また、この試験結果から、アラミド繊維塊の配合率
が１体積％未満では、ブレーキノイズ低減の効果が小さ
く、１０体積％を越えて多量に配合しても、増量に見合
う効果が得られないことがわかる。

【００１１】また、図３は、アラミド繊維塊の配合率を
変えて作製した摩擦材の曲げ試験（３点曲げ）の結果を
示すグラフである。図示されるように、アラミド繊維塊
の配合率が１０体積％までであれば、強度低下が実質的
に見られないことがわかる。

【００１２】また、図４は、アラミド繊維塊を全く含有
しない摩擦材（Ａ）とアラミド繊維塊を１０体積％含有
する摩擦材（Ｂ）について、減衰特性を測定したグラフ
である。図示されるように、摩擦材（Ｂ）は摩擦材
（Ａ）に比べて振動が早期に収斂しており（約１０〜２
０％）、減衰特性にも優れることがわかる。これは、ア
ラミド繊維塊が摩擦材中に塊状を維持したまま存在し、
アラミド繊維塊中の多数の空隙が緩衝材として機能して
いることが原因と考えられる。

【００１３】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
従来の摩擦調整材に比べてブレーキノイズの発生を低減
できるとともに、摩擦材のダンピング特性も向上させる
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のアラミド繊維塊の外観を示す図であ
る。

【図２】アラミド繊維塊の配合率を変えて作製した摩擦
材の摺動試験によるブレーキノイズの発生頻度を測定し
た結果を示すグラフである。

【図３】アラミド繊維塊の配合率を変えて作製した摩擦
材の曲げ試験（３点曲げ）の結果を示すグラフである。

【図４】アラミド繊維塊を全く含有しない摩擦材（Ａ）
とアラミド繊維塊を１０体積％含有する摩擦材（Ｂ）に
ついて、減衰特性を測定したグラフである。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 フィブリル化したアラミドパルプ片を球
   状化してなることを特徴とする摩擦材用アラミド繊維
   塊。
2. 【請求項２】 請求項１に記載の摩擦材用アラミド繊維
   塊を他の摩擦材原料とともに成形してなり、かつ前記摩
   擦材用アラミド繊維塊が塊状を維持して存在しているこ
   とを特徴とする摩擦材。