JP2000128700A - 蛍石単結晶の熱処理方法並びに蛍石単結晶の加工方法 - Google Patents

蛍石単結晶の熱処理方法並びに蛍石単結晶の加工方法

Info

Publication number
JP2000128700A
JP2000128700A JP10310330A JP31033098A JP2000128700A JP 2000128700 A JP2000128700 A JP 2000128700A JP 10310330 A JP10310330 A JP 10310330A JP 31033098 A JP31033098 A JP 31033098A JP 2000128700 A JP2000128700 A JP 2000128700A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
single crystal
fluorite single
temperature
fluorite
processing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10310330A
Other languages
English (en)
Inventor
Shigeru Sakuma
繁 佐久間
Shuichi Takano
修一 高野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
OYO KOKEN KOGYO KK
Nikon Corp
Original Assignee
OYO KOKEN KOGYO KK
Nikon Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by OYO KOKEN KOGYO KK, Nikon Corp filed Critical OYO KOKEN KOGYO KK
Priority to JP10310330A priority Critical patent/JP2000128700A/ja
Publication of JP2000128700A publication Critical patent/JP2000128700A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)
  • Grinding And Polishing Of Tertiary Curved Surfaces And Surfaces With Complex Shapes (AREA)
  • Processing Of Stones Or Stones Resemblance Materials (AREA)
  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】作業工程に費やす時間を低減した蛍石単結晶の
熱処理方法並びに加工方法を提供する。 【解決手段】昇温速度を20℃/時間以上150℃未満
にする。このような速度でも、蛍石単結晶の内層部温度
と表層部温度との差が6℃以内であるなら、蛍石単結晶
は、適切な熱処理又は加工がなされる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蛍石単結晶の熱処
理方法と、蛍石単結晶の加工方法に関するものである。
特に波長250nm以下の光リソグラフィー装置(例え
ば、KrF、ArFエキシマレーザーやF2レーザーを
用いた光リソグラフィー装置)、光CVD、核融合装置
などの光学系に好適な蛍石単結晶の熱処理方法、加工方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、VLSIは、ますます高集積化・高機
能化が進行している。これに伴い、ウェハ上の微細加工
技術が要求されている。そして、シリコン等のウェハ上
に集積回路の微細パターンを露光・転写する光リソグラ
フィーにおいては、ステッパと呼ばれる露光装置が使用
されている。
【0003】VLSIの中でDRAMを例にあげると、近年256M
以上の容量が現実のものとなり、加工線幅が0.35μm 以
下と微細になっている。このため、光リソグラフィー技
術のかなめであるステッパーの投影レンズは、高い結像
性能(解像度、焦点深度)が要求されている。解像度と
焦点深度は、露光に用いる光の波長とレンズのNA(開
口数)によって決まる。
【0004】露光波長λが同一の場合には、細かいパタ
ーンほど回折光の角度が大きくなるので、レンズのNA
が大きくなければ回折光を取り込めなくなる。また、露
光波長λが短いほど、同一パターンにおける回折光の角
度は小さくなるので、レンズのNAは小さくてよいこと
になる。解像度と焦点深度は、次式により表される。
【0005】 解像度=k1 ・λ/NA 焦点深度=k2 ・λ/(NA)2 (ここで、k1 、k2 は比例定数) 上式より、解像度を向上させるためには、レンズのNA
を大きくする(レンズを大口径化する)か、或いは露光
波長λを短くすればよいことが判る。更に、λを短くす
る方が焦点深度の点で有利であることが判る。そこで、
現在ではKrFエキシマレーザー光(波長248nm )を光
源とするステッパーも市場に登場するようになってき
た。
【0006】しかしながら、250 nm以下の短波長領域に
おいて、光リソグラフィー用として使える光学材料は非
常に少なく、このような光学系は、蛍石と石英ガラスの
2種類の材料のレンズを組み合わせて設計されている。
このため、蛍石が近年、この分野において注目を集めつ
つある。ところで、このような目的で使用される蛍石
は、口径が大きく(およそφ200mm以上)、また、複屈
折(ここでは、複屈折による単位長さあたりの光路差の
ことを単に複屈折と呼ぶ)などの品質が極めて良好であ
ることが求められている。このような目的で製造される
蛍石単結晶は、一般にブリッジマン法(ストックバーガ
ー法、ルツボ降下法)により製造される。
【0007】そして、目的の製品別に適切な大きさに切
断加工された後、蛍石単結晶は熱処理(アニール)が施
される。蛍石単結晶は、光学ガラスや石英ガラスと比較
して、非常に割れやすい物質である。従って、熱処理も
熱衝撃を加えないような条件で行われる。まず、室温か
ら1100℃まで20℃/H未満の速度で昇温し、11
00℃で24時間保持する。次に、900℃まで3℃/
Hで降温し、さらに室温まで20℃/Hで降温する。こ
の熱処理によって、蛍石単結晶は、複屈折が十分小さ
く、また、屈折率の均一性が優れたものとなる。よっ
て、上記の目的に使用することが可能となる。
【0008】上記の熱処理装置で極めて優れた品質にさ
れた蛍石単結晶は、目的に応じて研磨、研削、反射防止
膜のコーティングなどの加工が行われる。反射防止膜な
どのコーティングは、CVD(化学気相成長装置)又は
真空蒸着装置などで行われる。このような加工は蛍石単
結晶を加熱して行われるが、その昇温速度は、上記で説
明した熱処理の場合と同様に熱衝撃を与えないように2
0℃/H未満に設定される。
【0009】また、研磨、研削などの加工においては、
蛍石単結晶を治工具により固定し回転工具により加工す
る。このとき、蛍石単結晶は、回転工具との摩擦熱によ
り昇温する。これを冷却するため、あるいは、回転工具
との接触をなめらかにして摩擦熱の発生を抑制するため
に、蛍石単結晶に冷却剤や潤滑剤を吹きかけながら加工
する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】蛍石単結晶は、非常に
高価な物質である。しかしながら、熱的な衝撃に弱い物
質でもある。従って、破損による不良を避けて歩留まり
を上げねばならず、熱処理を施す際には、莫大な時間を
かけて昇温しているのが現状であった。また、反射防止
膜などのコーティング加工処理においても、昇温するの
で同様である。このように、蛍石単結晶の熱処理や加熱
を伴う加工では作業工程に費やす時間が長くなり、ま
た、それに伴い製造コストの高騰を招くという問題点が
あった。
【0011】一方、研磨・研削など回転工具による加工
処理において、蛍石単結晶は摩擦熱により温度が上昇す
る。このため冷却剤(潤滑剤)又は研磨剤を蛍石単結晶
に噴出させてこれを冷却する。しかし、蛍石単結晶は、
熱衝撃に弱いので、これらの薬剤が吹き付けられると、
急冷されて破損されるという問題点もあった。本発明
は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、蛍石
単結晶を破損させずに、作業工程に費やす時間を低減し
た熱処理方法並びに加工方法を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】従来、蛍石単結晶を熱処
理する場合において昇温速度は、20℃/時間未満に設
定されていた。しかし、これは、経験的に蛍石単結晶が
破損しない速度として知られた値であって、理論的に又
は実験的に解析された値ではない。そこで、本発明者等
は、様々な昇温速度で設定温度まで上昇させて蛍石単結
晶を熱処理し、破損の有無及び特性評価を行った。その
結果、150℃/時間未満の昇温速度であるなら、蛍石
単結晶は、ほぼ破損しないことが判明し、100℃以下
であるなら、歩留まりや光学特性において、20℃/時
間未満の昇温速度と遜色ないものであることが判明し
た。よって、これまで用いられていた「20℃/時間未
満」という昇温速度が過度に小さかったことを本発明者
等は実験的に突き止め発明するに至った。
【0013】請求項1に記載された発明は、気密化可能
な容器内に蛍石単結晶を収納して前記容器を密閉し、前
記容器内を真空排気した後に、前記容器ごと前記蛍石単
結晶を該蛍石単結晶の融点よりも低い所定温度まで昇温
させることにより前記蛍石単結晶を熱処理する方法にお
いて、前記所定温度までの昇温速度は、20℃/時間以
上、且つ、150℃/時間未満であることを特徴とす
る。
【0014】この構成により、作業工程に費やす時間が
低減された熱処理方法を提供することが可能となる。ま
た、請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の蛍
石単結晶の熱処理方法において、前記所定温度までの昇
温速度は、50℃/時間以上、且つ、100℃/時間以
下であることを特徴とする。
【0015】昇温速度が100℃/時間以下ならば、蛍
石単結晶の歩留まりは、20℃/時間以下の昇温速度と
同様優れたものとなり、また、50℃/時間以上ならば
昇温工程の作業時間がこれまでの1/2以下となり、極
めて短縮される。請求項3に記載された発明は、請求項
1または2のいずれかに記載された蛍石単結晶の熱処理
方法において、前記所定温度は、当該熱処理方法の全行
程における最高温度であることを特徴とする。
【0016】蛍石単結晶の熱処理は、一般に1000℃
ほどで施される。このような高温に設定するときでも、
請求項1又は2に記載された昇温速度で設定温度まで上
昇させて構わない。このようにすれば、一段階の速度で
最高温度まで上昇するのでより効率的となる。請求項4
に記載された発明は、蛍石単結晶を加熱して該蛍石単結
晶の融点よりも低い所定温度まで昇温させて前記蛍石単
結晶を加工する蛍石単結晶の加工方法において、前記所
定温度までの昇温速度は、20℃/時間以上、且つ、1
50℃/時間未満であることを特徴とする。また、請求
項5に記載された発明は、請求項4に記載の蛍石単結晶
の加工方法において前記所定温度までの昇温速度は、5
0℃/時間以上、且つ100℃/時間以下であることを
特徴とする。
【0017】例えば、反射膜をコーティングするなどの
蛍石単結晶の加工でも、熱を加えて所定の設定温度に昇
温させる。従って、このような加工においても昇温速度
を請求項4に記載された範囲に設定すれば、加工時間が
短縮される。また、請求項5に記載された範囲に設定す
るのがより好ましい。以上の態様は、発明者等の精力的
な実験に基づきなされた発明である。ここで、本発明者
等は、上記の実験的な結果(蛍石単結晶の熱衝撃に対す
る耐久力)を理論的に解析することを更に試みた。
【0018】蛍石単結晶の線膨張係数、ヤング率、ポア
ソン比がそれぞれ、18.85E-6 1/K(E-6とは、十のマイ
ナス6乗を表す。また、Kはケルビンである)、75.8Gp
a、0.26であることは、公知である。これらの値より、
熱応力を計算することは可能である。また、蛍石単結晶
を破壊に至らす臨界応力が36.54Mpaであることも、公知
である。熱応力の最大値を前記の臨界応力値とすれば、
蛍石単結晶の熱衝撃による耐久性が求められる。
【0019】しかし、熱応力による耐久性は、個体の形
状や表面の微細な凹凸などにより変化するものであり、
これまでこのような解析はなされていない。ここでは、
蛍石単結晶が円板状の弾性板であり、且つ、表面は滑ら
かであると仮定する。そして、初期温度t0、厚さ2h
の円板状蛍石単結晶の表面が均一に非定常加熱されると
する。このとき、蛍石単結晶は、二軸の熱応力を生ず
る。また、蛍石単結晶の周囲を自由(又は単純支持)と
し、中央面をz=0、中央面内にx、y座標をとり、蛍
石単結晶の温度をtとすれば、式1が導かれる。この式
は、一般的な円板状物体の熱応力を導く式を応用したも
のである(機械工学便覧、改訂第6版、1977年、第
4−92頁乃至第4−99頁参照)。
【0020】
【数1】
【0021】ここで、σは蛍石単結晶の熱応力、νはポ
アソン比、Eはヤング率、Tはt−t0である。蛍石単
結晶が急激に加熱(又は冷却)され、結晶内部への熱伝
導が緩慢で表面層部(表面)のみが温度tになり、内層
部(内部)の温度は初期温度t0のままであると仮定す
ると、式1より式2が導かれる。 (1−ν)σ/(EαT)=−1 (z=±h) 式2 αは、蛍石単結晶の熱膨張係数である。式2の熱応力σ
に蛍石単結晶の臨界応力(36.54MPa)を代入すると、蛍
石単結晶に割れを生じさせる温度差(表面層部と内層部
との温度差)が算出される。
【0022】 T=(1−ν)σ/(Eα)=18.9(℃) しかし、この値は、蛍石単結晶の表面に凹凸が無いなど
幾つかの点を仮定して算出されたものである。このよう
な点を勘案すれば、算出された値の1/3である6℃が
表面に許容される温度差である。このような解析によ
り、表面層部と内層部の温度差が6℃以内であるなら、
蛍石単結晶を良好に熱処理することが可能であることが
理論的に判明された。そして、昇温速度が100℃/時
間以下であるなら、表面層部と内層部との温度差は6℃
以内が保持されるのである。
【0023】請求項6に記載された発明は、蛍石単結晶
を加熱することにより前記蛍石単結晶の光学的特性を向
上させる蛍石単結晶の熱処理方法において、前記蛍石単
結晶の表面層部と内層部の間に発生する温度差が6℃以
内であることを特徴とする。また、請求項7に記載され
た発明は、蛍石単結晶を加熱しつつ当該蛍石単結晶を加
工する蛍石単結晶の加工方法において、前記蛍石単結晶
の表面層部と内層部の間に発生する温度差が6℃以内で
あることを特徴とする。
【0024】これらの構成により、蛍石単結晶を破損さ
せずに作業工程に費やす時間が低減された熱処理方法又
は加工方法を提供することが可能となる。また、請求項
8に記載された発明は、請求項7に記載の蛍石単結晶の
加工方法において、前記蛍石単結晶の表面には無機膜が
形成されることを特徴とする。蛍石単結晶の表面に形成
される膜は、一般的には反射防止膜であり、これは無機
膜である。請求項8は、具体的な構成を開示したもので
ある。無機膜は、真空蒸着法、化学気相成長法、スパッ
タ法などにより成長される。
【0025】ところで、表面層部と内層部の温度差と蛍
石単結晶の熱応力の解析は、蛍石単結晶の熱処理や加熱
しての加工のみに適用されるとは限らない。回転工具を
使用して加工する場合も同様である。このような加工で
は蛍石単結晶がヒータなどで加熱されることはない。し
かし、回転工具との摩擦熱により加熱され、この昇温を
冷却剤(潤滑剤)または研磨剤にて防止する。このた
め、このような加工においても、上記の解析が適用され
る。
【0026】請求項9に記載された発明は、蛍石単結晶
を治工具により固定し、前記蛍石単結晶に冷却用または
研磨用の液体を噴出しつつ回転工具による摩擦力で加工
を施す蛍石単結晶の加工方法において、前記蛍石単結晶
の表面層部と内層部の間に発生する温度差が6℃以内で
あることを特徴とする。この構成により、回転工具によ
る蛍石単結晶の加工での歩留まりが向上する。
【0027】また、請求項10に記載された発明は、請
求項9に記載の蛍石単結晶の加工方法において、前記蛍
石単結晶、前記治工具、前記回転工具及び前記液体を概
略同一温度に施すことにより前記蛍石単結晶の表面層部
と内層部の間に発生する温度差を6℃以内としたことを
特徴とする。表面層部と内層部との温度差を6℃以内に
保持するためには、使用する部品や冷却剤の温度をほぼ
同一の温度に保持するのが好ましい。このような構成に
すれば、温度管理が容易となる。
【0028】また、請求項11に記載された発明は、蛍
石単結晶を治工具により固定し、前記蛍石単結晶に冷却
用または研磨用の液体を噴出しつつ回転工具による摩擦
力で加工を施す蛍石単結晶の加工方法において、前記蛍
石単結晶及び前記治工具を雰囲気温度に保持し、次いで
回転工具によって前記蛍石単結晶を加工すると共に、前
記蛍石単結晶の表面層部の温度を計測し、雰囲気温度と
前記表面層部の温度との差を6℃以内となるように冷却
用又は研磨用の液体の温度又は噴出量を制御することを
特徴とする。
【0029】これは、さらに具体的な構成を開示したも
のである。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に関し
て説明する。 (実施形態1:熱処理)蛍石単結晶を複数の昇温速度で
昇温させて熱処理し、熱処理後の蛍石単結晶を評価し
た。図1は、各条件で熱処理された蛍石単結晶の破損数
及び複屈折の測定結果を示す一覧表である。
【0031】蛍石単結晶の熱処理は、真空排気可能なス
テンレス製の容器と、この容器の外側に配置された電気
抵抗加熱体からなる熱処理装置を用いて行った。熱処理
された蛍石単結晶は、φ200mm×50mm厚のサイズで
ある。各昇温速度で5個ずつ熱処理した。熱処理のスケ
ジュールは次の通りである。 昇温速度 20−1100 ℃ 20,50,100,150 ℃/時間 熱処理 1100 ℃ 24時間 降温(1) 1100−900℃ −3℃/時間(67時間) 降温(2) 900− 20℃ −20℃/時間(44時間) 図2は、昇温速度を50℃/時間としたときのタイムス
ケジュールである。
【0032】蛍石単結晶の融点は、1360℃である。
本実施形態における熱処理温度は、1100℃であり、
当然ながら融点より低い。図1から判るとおり、昇温速
度が150℃/時間のときに、一部の蛍石単結晶が破損
した。従って、150℃/時間以上の昇温速度では、蛍
石単結晶は、熱衝撃を強く受けて破損することが判明し
た。しかし、150℃/時間の昇温速度でも良好な蛍石
単結晶が存在する。このことより、150℃/時間未満
の昇温速度の範囲に良好な昇温速度であるしきい値が存
在することが判明した。なお、複屈折は、いずれも大差
なく良好な値であった。
【0033】さらに、100℃/時間以下の昇温速度な
らば、すべての蛍石単結晶が良好に熱処理されているこ
とから、上記のしきい値が少なくとも100℃以下では
ないことが判明した。よって、昇温速度が150℃/時
間未満であれば昇温工程の効率が向上し、また、100
℃/以下であれば、歩留まりも良好であることが判明し
た。
【0034】また、熱処理温度(処理工程における最高
温度)まで昇温させる際、一般には熱処理温度前に段階
的に昇温速度を低下させることが行われている。これ
は、オーバーシューティングを防止するための他、昇温
を止めるために生ずる熱衝撃を低減させる目的で実施さ
れる。しかし、このような配慮は不要である。上記のよ
うに、150℃/時間未満であれば最高温度まで同一の
速度で昇温して良い。 (実施形態2:コーティング)加熱を施す加工処理とし
て、蛍石単結晶のコーティング処理を行った。蛍石単結
晶は、150℃/時間または100℃/時間の速度で室
温から200℃まで昇温された。そして、200℃で真
空蒸着法により反射防止膜をコーティングされた。反射
防止膜には、フッ化マグネシウムを使用した。
【0035】蛍石単結晶は、いずれの昇温速度において
も破損しなかった。よって、所定温度まで加熱して蛍石
単結晶を加工する処理においても、昇温速度が150℃
/時間未満であるなら、蛍石単結晶は熱衝撃を受けない
ことが判明した。加熱を施して蛍石単結晶にコーティン
グ処理する方法としては、CVD法、スパッタリング法
などが挙げられる。このような膜成長法を用いても、昇
温速度が150℃/時間未満であるなら蛍石単結晶は熱
衝撃を受けることがない。 (実施形態3:切断)回転工具による摩擦力で加工を施
す処理として、回転刃による蛍石単結晶の切断を行っ
た。蛍石単結晶や各工具の温度管理は、次のようにして
成された。
【0036】本実施形態に使用した切断装置の回転刃の
周囲は、強化プラスチックにより覆われ切断室を成して
いる。切断室の雰囲気温度は、制御可能にされている。
これは、外部の温度変化や切断モータによる切断室内部
の温度変化を防止するためである。切断室には、切断
刃、及び、蛍石単結晶を搭載するステージが設けられて
いる。蛍石単結晶は、固定用治工具に固定され、治工具
ごとステージ上に固定されるようになっている。また、
切断刃や蛍石単結晶は、放射温度計による表面温度が計
測されるようになっている。切断刃、蛍石単結晶、及び
ステージには、噴出された冷却剤(ここでは水を使用し
た)が吹きかかるようになっている。冷却剤は、計測さ
れた蛍石単結晶の表面温度による温度制御が可能であ
る。これらの構成により、蛍石単結晶は温度制御が可能
となっている。
【0037】一方、蛍石単結晶の切断は、次のようにし
て行われた。まず、切断される蛍石単結晶は、保温材
(ここでは、発泡スチロールを用いた)上に載せられ
て、切断室内部に長時間放置された。切断室の雰囲気温
度は、所定の温度(ここでは25℃)に制御された。こ
れにより、蛍石単結晶の内層部温度と表面層部の温度
は、いずれも、切断室雰囲気温度にされた。この後、放
射温度計により蛍石単結晶の表面温度(表面層部の温
度)が計測され、冷却剤の温度がこの温度に設定され
た。なお、蛍石単結晶の内層部の温度は、この温度と同
一である。なお、上記の保温材は切断室から除去され
た。
【0038】次に、切断刃、ステージ、及び、固定用治
工具には温度制御された冷却剤が噴出された。これによ
って、これらの温度は蛍石単結晶の表面温度とほぼ同一
にされた。そして、蛍石単結晶は、固定治工具に固定さ
れ、固定治工具ごとステージ上に固定された。次いで、
切断刃を回転させ、これを接触させることによって蛍石
単結晶が切断された。切断の間、蛍石単結晶の表面温度
が放射温度計にて計測され、この温度と切断室雰囲気温
度との差が6℃以内となるように、冷却剤の噴出量を制
御した。よって、内層部の温度は、切断前の温度から変
化しない。また、例え、内層部の温度が変化するにせ
よ、表面層部の温度に近づくように変化する。従って、
上記のように温度制御することによって、内層部の温度
と表面層部の温度差を6℃以内に制御することができ
る。
【0039】この結果、蛍石単結晶は、熱衝撃による破
損を生ずることなく、良好に切断することができた。こ
のため、回転工具を用いた蛍石単結晶の加工において、
蛍石単結晶の表面層部の温度と内層部の温度差が6℃以
内であれば、蛍石単結晶は、熱衝撃を受けることなく良
好に加工される。ここでは、回転工具を用いる加工に切
断加工を実施した。しかし、本発明は、これに限られる
ものではなく、例えば、蛍石単結晶の研磨においても適
用可能である。この場合、研磨剤が切断における冷却剤
に対応する。
【0040】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明に係る蛍石
単結晶の熱処理方法及び加熱を伴う加工方法は、設定温
度まで昇温させる速度が従来より高速であるにも関わら
ず、熱衝撃による破損が無い。このため、歩留まりの低
下を防ぎながら作業工程時間が短縮されるという効果が
ある。
【0041】また、本発明に係る蛍石単結晶の回転工具
による加工方法は、蛍石単結晶の表面層部と内層部の温
度差が6℃以内であるため、熱衝撃による破損が無く、
歩留まりが向上するという効果がある。さらに、蛍石単
結晶の表面層部と内層部の温度差を6℃以内とすれば破
損しないのは降温時も同様である。よって、温度差6℃
以内と言う値は、蛍石単結晶の熱処理全行程、又は、加
工全行程においての熱管理の指標となる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】各条件で熱処理された蛍石単結晶の破損数及び
複屈折の測定結果を示す一覧表である。
【図2】昇温速度を50℃/時間としたときの実施形態
1に係る熱処理のタイムスケジュールである。
フロントページの続き Fターム(参考) 2K009 AA02 BB01 CC01 3C069 AA01 BA04 BB04 CA02 CB01 DA06 EA01 EA05 4G077 AA02 BE02 CD01 FE02 FE11 FE17 FG13 FJ06 HA01

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気密化可能な容器内に蛍石単結晶を収納
    して前記容器を密閉し、前記容器内を真空排気した後
    に、前記容器ごと前記蛍石単結晶を該蛍石単結晶の融点
    よりも低い所定温度まで昇温させることにより前記蛍石
    単結晶を熱処理する方法において、 前記所定温度までの昇温速度は、20℃/時間以上、且
    つ、150℃/時間未満であることを特徴とする蛍石単
    結晶の熱処理方法。
  2. 【請求項2】 前記所定温度までの昇温速度は、50℃
    /時間以上、且つ、100℃/時間以下であることを特
    徴とする請求項1に記載の蛍石単結晶の熱処理方法。
  3. 【請求項3】 前記所定温度は、当該熱処理方法の全行
    程における最高温度であることを特徴とする請求項1ま
    たは2のいずれかに記載された蛍石単結晶の熱処理方
    法。
  4. 【請求項4】 蛍石単結晶を加熱して該蛍石単結晶の融
    点よりも低い所定温度まで昇温させて前記蛍石単結晶を
    加工する蛍石単結晶の加工方法において、 前記所定温度までの昇温速度は、20℃/時間以上、且
    つ、150℃/時間未満であることを特徴とする蛍石単
    結晶の加工方法。
  5. 【請求項5】 前記所定温度までの昇温速度は、50℃
    /時間以上、且つ、100℃/時間以下であることを特
    徴とする請求項4に記載の蛍石単結晶の加工方法。
  6. 【請求項6】 蛍石単結晶を加熱することにより前記蛍
    石単結晶の光学的特性を向上させる蛍石単結晶の熱処理
    方法において、 前記蛍石単結晶の表面層部と内層部の間に発生する温度
    差が6℃以内であることを特徴とする蛍石単結晶の熱処
    理方法。
  7. 【請求項7】 蛍石単結晶を加熱しつつ当該蛍石単結晶
    を加工する蛍石単結晶の加工方法において、 前記蛍石単結晶の表面層部と内層部の間に発生する温度
    差が6℃以内であることを特徴とする蛍石単結晶の加工
    方法。
  8. 【請求項8】 前記蛍石単結晶の表面には無機膜が形成
    されることを特徴とする請求項7に記載の蛍石単結晶の
    加工方法。
  9. 【請求項9】 蛍石単結晶を治工具により固定し、前記
    蛍石単結晶に冷却用または研磨用の液体を噴出しつつ回
    転工具による摩擦力で加工を施す蛍石単結晶の加工方法
    において、 前記蛍石単結晶の表面層部と内層部の間に発生する温度
    差が6℃以内であることを特徴とする蛍石単結晶の加工
    方法。
  10. 【請求項10】 前記蛍石単結晶、前記治工具、前記回
    転工具及び前記液体を概略同一温度に施すことにより前
    記蛍石単結晶の表面層部と内層部の間に発生する温度差
    を6℃以内としたことを特徴とする請求項9に記載の蛍
    石単結晶の加工方法。
  11. 【請求項11】 蛍石単結晶を治工具により固定し、前
    記蛍石単結晶に冷却用または研磨用の液体を噴出しつつ
    回転工具による摩擦力で加工を施す蛍石単結晶の加工方
    法において、 前記蛍石単結晶及び前記治工具を雰囲気温度に保持し、
    次いで回転工具によって前記蛍石単結晶を加工すると共
    に、前記蛍石単結晶の表面層部の温度を計測し、雰囲気
    温度と前記表面層部の温度との差を6℃以内となるよう
    に冷却用又は研磨用の液体の温度又は噴出量を制御する
    ことを特徴とする蛍石単結晶の加工方法。
JP10310330A 1998-10-30 1998-10-30 蛍石単結晶の熱処理方法並びに蛍石単結晶の加工方法 Pending JP2000128700A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10310330A JP2000128700A (ja) 1998-10-30 1998-10-30 蛍石単結晶の熱処理方法並びに蛍石単結晶の加工方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10310330A JP2000128700A (ja) 1998-10-30 1998-10-30 蛍石単結晶の熱処理方法並びに蛍石単結晶の加工方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000128700A true JP2000128700A (ja) 2000-05-09

Family

ID=18003944

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10310330A Pending JP2000128700A (ja) 1998-10-30 1998-10-30 蛍石単結晶の熱処理方法並びに蛍石単結晶の加工方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000128700A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6702891B2 (en) 1999-03-11 2004-03-09 Canon Kabushiki Kaisha Method of heat treating fluoride crystal

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6702891B2 (en) 1999-03-11 2004-03-09 Canon Kabushiki Kaisha Method of heat treating fluoride crystal

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0972863B1 (en) Method for annealing single crystal fluoride and method for manufacturing the same
Clark et al. Ultraviolet-laser-induced periodic surface structures
EP0939147B1 (en) A manufacturing method for calcium fluoride and calcium fluoride for photolithography
KR100607188B1 (ko) 와이어 톱및 절단방법
US7754011B2 (en) Method of manufacturing a calcium fluoride single crystal
WO1993019484A1 (en) Rapid thermal annealing using thermally conductive overcoat
JP2003501339A (ja) 結晶成長およびアニーリング方法および装置
JPH0263293B2 (ja)
JP2009135501A (ja) 結晶化方法
Hawkins et al. Growth of single‐crystal silicon islands on bulk fused silica by CO2 laser annealing
US6702891B2 (en) Method of heat treating fluoride crystal
Ishino et al. Study of damage structure formation on aluminum film targets by picosecond soft X-ray laser ablation around threshold region
JP2000128700A (ja) 蛍石単結晶の熱処理方法並びに蛍石単結晶の加工方法
JP4892192B2 (ja) 減じられた応力複屈折及びより均質な屈折率をもつ低応力大容積の非(111)配向結晶の製造方法及び同方法により製造される結晶
JP2000281493A (ja) 結晶処理方法および結晶並びに光学部品及び露光装置
WO2003054590A1 (fr) Materiau en cristal de fluorure pour un dispositif optique utilise pour un materiel photolithographique et son procede de fabrication
JP2000317896A (ja) 薄膜平面構造体の製造方法
JP3698848B2 (ja) 蛍石単結晶の熱処理装置および熱処理方法
JPH09232279A (ja) エッチングによりウエーハを平坦化する方法およびウェーハ平坦化装置
JP7481128B2 (ja) ウェーハ表面の改質装置および方法
JP2002004043A (ja) 曲面を有する構造体及びその製造方法
JPH025295B2 (ja)
TWI439586B (zh) 晶棒表面之調質方法及其晶棒
KR20220138538A (ko) 잉곳성장기용 냉각자켓 표면처리방법
Ignat’ev et al. Physicochemical methods of increasing the thermal strength of LiYF 4: Nd laser crystals

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050518

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20050518

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20070516

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080317

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080401

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20080509

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20081028