JP2000106902A - 履 物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 歩行時に足の指にかかる負担を軽減し、すべ
りを防ぎ、甲皮を有するものではむれを防ぎ、つま先の
甲皮のしわの発生を少なくする履物を提供する。 【解決手段】 底下面のつま先および踵の後端にそれぞ
れ前方および後方切欠き部を設けるとともに、甲皮を有
する場合は前方切欠き部と中央非接地凹部において底を
貫通する通気孔を設ける。内部に設置する中敷はつま先
部を肉薄となし、肉薄部を除く上面および下面に通気溝
を設けるとともに、外周面には上下面の通気溝を連絡す
る通気溝を設け、これらの溝と底を貫通する通気孔を介
して内部に空気を流通吸排する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は靴、サンダル等の履物に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】履物は生活必需品であり、歩行に際して
足に負担がかからないこと、路面や床面に対して滑らな
いこと、特に雨中歩行においてはねが上がらないこと、
甲皮を有する靴では通気性がよくむれずに快適であるこ
となどの諸要件が課せられているが、従来これらの諸要
件のすべてを満足させたものは市販されていない。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】甲皮を有する靴は足全
体を覆っているから、通気性が悪く体温や発汗によって
内部温度と湿度の上昇により不快感が高まる。これを防
ぐためには靴内部の通気性を高くすればよいが、雨水な
どの内部への侵入を防いで通気性を高めるのは構造上極
めて困難である。

【０００４】人が靴やサンダル等（以下包括的に靴とい
う）を履いて歩くとき、正常な歩行では両足は次のよう
な動作を繰り返す。すなわち、踏み出した一方の足（先
行足という）では、通常靴裏が踵から先の方に向かって
床面ないし地面等（以下単に地面という）に接触してゆ
くと同時に、他方の足（後続足という）では靴裏が踵か
ら先の方向へ地面を離れてゆくとともに、靴内では足の
本体部分に対して足の指がそり返るように折れ曲がり、
足の指とその付け根部分で地面を踏んで体重を支えて身
体を前方に移動させ、体重が先行足に移ったとき後続足
の指、特に親指とその付け根部分で地面を蹴って後続足
を前方へ踏み出す。

【０００５】従って後続足は、一歩毎に足の指がそり返
るように折れ曲がるので負担が大きく、また靴自体も甲
皮の先端部上面に折れしわができ美観上好ましくない。
また、靴の内部で足が靴に対して不必要な程度にずれ動
くと歩行がしずらく靴ずれを生ずるおそれもある。さら
に、平坦な靴底表面は地面が濡れているときは、靴底表
面と地面の間に水の薄膜が介在して滑りやすく、また後
続足が地面から離れるとき踵の後縁から雨水や泥水をは
ね上げて衣服を汚すおそれがある。

【０００６】自動車を運転するとき、靴の底面を常時は
アクセルペダルに載置している。このとき足は靴の踵の
後縁で支持されるが、その後縁がわん曲していると支持
が不安定となる。

【０００７】

【問題点を解決するための手段】上記課題を解決するた
めに、本発明の履物は、底下面のつま先部に前方切欠き
部を設ける。切欠き部によって底下面より上方の平面部
と平面部の後縁から底下面に向かって下方に延長して底
下面に移行する移行面とが形成される。歩行において先
行足を踏み出すと、後続足の履物の底面は踵から地面を
離れ、前方切欠き部が存在するために履物底面は上記移
行面を支持面として前方に傾動する。このとき、つま先
部分は地面に接するまで下方へ傾動できるのでそれだけ
履物のつま先部分が後方部分に対して折れ曲がる角度が
小さくてすむ。

【０００８】履物底下面の中央部には非接地凹部が形成
され、踵後方には後方切欠き部が形成される。後方切欠
き部によって踵下面より上方の切欠き平面部とこの平面
部から垂下する垂下平面部が形成される。垂下平面部に
よって形成された踵下面の直線状後端縁からはね上がる
水や泥などは切欠き平面部で阻止されそれ以上はね上が
らない。自動車のアクセルペダルやブレーキペダルに履
物の裏を載せるときに踵下面の直線状後端縁を介して安
定した支持ができる。

【０００９】底下面には縦溝およびこれに交差する横溝
が設けられ、縦溝は底の前方切欠き部、中央非接地凹部
および後方切欠き部に連通開口し、横溝は縦溝に連通す
るとともに、履物の両側に連通開口している。従って、
底下面の水はこれらの溝によって前後および両側方へ排
出される。横溝は縦溝に直交する中央部とこの中央部両
端から両側へ斜めに延長する斜交部とからなる。横溝は
滑り止め作用をも行なう。

【００１０】本発明による甲皮を有する靴では、前方切
欠き部および中央非接地凹部において靴底を上下に貫通
する通気孔が設けられる。靴内には中敷を設ける。中敷
には上面の先端部分に肉薄部を、中央部の内側には足の
土踏まずに対応する部分に隆起部をそれぞれ設ける。ま
た、中敷の上面肉薄部を除く全面および下面の全面には
互いに交差する縦横の通気溝を、側面には上下面の通気
溝を連絡する連絡通気溝をそれぞれ設ける。さらに、中
敷の下面には、中敷を靴内に納めたとき靴底の貫通通気
孔上端開口に対応する位置に中敷下面の縦横通気溝に連
通する凹所を設ける。

【００１１】靴を履いて歩行するときの足の動きにより
中敷の上下面の縦横通気溝、外周連絡通気溝および凹
所、並びに靴底の貫通通気孔を介して靴内への空気の吸
入、流通、排出が効果的に行なわれるのでむれを防止す
る。また中敷の上下面の通気溝、特に横通気溝は、靴内
での足裏のすべり防止にも役立つ。また、歩行中後続足
のつま先で地面を蹴って足を踏み出すとき、中敷上面の
肉薄部に足の指が入って下がるので、靴底の前方切欠き
部の存在とあいまって足指のそり返りが少なくてすむ。

【００１２】

【実施例】図面を参照して本発明を甲皮を有する靴とし
て実施した一例を説明する。一足の靴は左右対称である
ので、説明は一足の靴の一方（図示で左側の靴）につい
てのみ行ない、他方の構成は省略する。１は靴底、２は
甲皮で、それぞれの材質は問わない。３は踵、４は靴底
の下面の中央部に設けた非接地凹部、５は靴底下面のつ
ま先部に設けた前方切欠き部、６は踵３の下面の後端に
設けた後方切欠き部である。

【００１３】前方切欠き部５は、靴底つま先部の上面
（靴底の内面）にほぼ平行に広がる平面部５１とこの平
面部５１から鈍角αを挟んで延長して靴底下面に移行す
る曲面部５２とによって規定されている。平面部５１は
靴底下面より上方にあり、非歩行時は接地しない。足を
前方に踏み出すとき靴底は踵から接触面（地面）を離れ
これとともにつま先の前方切欠き部５の曲面部５２を支
点として傾動して、つま先部分が下方へ移動できるの
で、前方切欠き部５がない構成におけるように、つま先
部分（靴内の足指と指の付け根に対応する）に対し靴の
後半部分が上向きに折れ曲がって甲皮２に折れしわの生
じるおそれもなくなり、あるいは少なくなる。従って、
靴内の足の指、特に親指が反り返り屈曲する角度も少な
くなり、指にかかる負担を軽減できる。

【００１４】後方切欠き部６は、靴底踵の後縁から踵上
面（靴底の内面）に平行に広がる平面部６１とこの平面
部６１の前縁からほぼ直角βを挟んで垂下延長する垂下
平面部６２とによって規定されている。靴の踵からの水
や泥はねは、後方切欠き部６によって防止される。すな
わち、切欠き部６の垂下平面部６２によって形成された
靴底踵下面後端縁６４から水や泥がはね上っても切欠き
部の平面部６１によって遮断されそれより上方へはね上
ることがない。

【００１５】また自動車を運転中、ペダルに靴を載せて
いるとき、踵下面の後方切欠き部６で規定された後端縁
６４が床面に接するが、この後端縁６４は直線状である
ため靴を安定して支持できる。前方切欠き部５において
角αを直角またはそれにに近い角とし、わん曲面５２を
垂直平面とし、後方切欠き部６において角βを鋭角と
し、または角βを鈍角とするとともに垂下面部６２をわ
ん曲面としてもよい。

【００１６】７は前方切欠き部５において靴底１に上下
に貫通穿設した一対の前方通気孔で、それぞれ上端は靴
底先端部上面に開口し、下端は切欠き部５の平面部５１
に開口する。８は靴底中央の非接地凹部４において靴底
１に上下に貫通穿設した一対の後方通気孔で、それぞれ
上端は靴底中央部上面（靴底の内面）に開口し、下端は
非接地凹部４に開口している。

【００１７】通気孔７、８はそれぞれ１個または３個以
上でもよく、または合計で１個または２個以上でもよ
い。１０は靴底下面（前半部および踵部）に設けた複数
本の縦溝で前方および後方切欠き部５、６に連通し、１
１は縦溝に交差連通して設けた複数本の横溝で靴底の両
側面に連通開口している。溝１０、１１の横断面はＶ字
型、Ｕ字形、半円形その他適当な形状とすることができ
る。各横溝１１は縦溝１０に直交する中央部１１１と中
央部１１１から両側に向かって後方へ屈折延長する斜行
部１１２、１１３とからなる。靴底下面と地表面の間に
雨水などが介在しても、これらの溝１０、１１によって
靴底下面から雨水を前後左右に誘導排出するので水膜に
よって靴底が滑るのを防止できる。前進歩行中には靴底
の横溝の縦溝との直交部分１１１が滑り止めとなり、歩
行中に向きを例えば左に変えるときは左右の靴の底面横
溝の左側斜行部１１３、１１２が歩行方向に直交して滑
り止め作用をする。また、大多数の人は歩行のときにつ
ま先を前進方向に対して外側に向けたり（いわゆるがに
また）内側に向けたり（いわゆる内また）するのが普通
であるが、がにまたの場合は横溝の内側斜交部１１２
が、また、内またの場合は外側斜交部１１３がそれぞれ
進行方向に対して直角方向となるので、滑り止めとな
る。

【００１８】斜交部１１２、１１３は図示例では中央部
１１１から靴の両側に向かって後方へ屈折しているが、
前方へ屈折延長するように設けてもよい。１２は左右の
中敷であり、それぞれ左右の靴底の内部形状に沿う形状
を有する。中敷として適当な材質であればその種類は問
はない。中敷も左右対称的であるので一方のみを説明す
る。

【００１９】１２１は中敷の先端部分に設けた肉薄部、
１２２は靴を履いたときの足の土踏まずに対応する隆起
部、１３は中敷の底面（裏面）において歩行方向に設け
た縦通気溝、１４は中敷底面に設けた円形凹所で、それ
ぞれが靴底の貫通孔７、８に上端開口に対応した位置に
設けられている。１５は中敷底面において縦通気溝１３
に交差して設けた屈折横通気溝で、その中央部分１５１
は縦通気溝１３に直交し、その両側斜交部分１５２、１
５３は中央部分１５１から歩行方向に対して斜め後方に
延長し、大部分は縦通気溝１３と斜交している。円形凹
所１４は通気溝１３、１５の一部に連通している。凹所
１４は円形に限定されない。横通気孔１５の両傾斜交部
分１５２、１５３は図示とは反対方向、すなわち、斜め
前方に延長するように設けてもよい。

【００２０】１６は中敷１２の上面の肉薄部１２１を除
く部分において歩行方向に設けた縦通気溝、１７は中敷
１２の上面前方部分において縦通気溝１６に対して直交
して設けた３本の直線横通気溝、１８は中敷の上面の上
記前方部分を除く残り部分において縦通気溝１６に対し
て交差して設けた屈折横通気溝で、その中央部分１８１
は縦通気溝１６に直交し、その両側斜交部分１８２、１
８３は中央部分１８１から両側へ向けて歩行方向に対し
て斜め前方に延長し一部は縦通気溝と交差している。両
側斜交部分１８２、１８３は図示とは反対に斜め後方へ
延長するように設けてもよい。１９は中敷１２の上下面
の通気溝１３、１５、１６、１７、１８を中敷１２の外
周面において連絡する連絡通気溝である。通気溝１３、
１５、１６、１７、１８、１９は横断面Ｖ字形、Ｕ字
形、半円形、その他適当な形状とすることができる。

【００２１】中敷１２の上面に肉薄部１２１があるの
で、後続足のつま先で地面を蹴って足を踏み出すとき足
の指が肉薄部１２１内へ下がるので指のそり返りが少な
くてすむ。また歩行による靴および足の動きによって靴
底１の貫通通気孔７、８を介して空気が吸入排出され、
靴内で空気は中敷の円形凹所１４、通気溝１３、１５、
１６、１７、１８、１９を通って流れるので靴内部のむ
れを防ぐのに有効である。また横通気溝１５、１７、１
８は靴内での中敷および足裏の滑り止めの機能をも併有
している。中敷は靴に対して着脱自在としてもよいし、
接着固定してもよい。

【００２２】靴裏の溝および中敷の溝のパターンは図示
例に限定されない。液体の靴裏から外方への排出、ある
いは、靴内の空気の流通、並びに靴裏および靴内での滑
り止めを効率よく実現できるものであれば、他のパター
ンを採用することもできる。なお、図示実施例は甲皮を
有する短靴であるが、本発明は長靴、甲皮がメッシュ構
造のもの、サンダル、鼻緒付きの草履等にも実施でき
る。

【００２３】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、歩行に際
して、特に足指に対する負担が少なく通気性がよく、水
はねや泥はねがなく、滑らない履物を得ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施例の立面図。

【図２】 図１の靴が地面を離れる直前の状態を示す立
面図。

【図３】 図１の底面図。

【図４】 中敷の一例の平面図。

【図５】 図４の底面図。

【図６】 図４の右側面図。

【図７】 図４の左側面図。

【符号の説明】

１・・・靴底、 ２・・・甲皮、 ３・・・踵、 ４・・・非接地凹部、 ５・・・前方切欠き部、 ６・・・後方切欠き部、 ７、８・・・通気孔、 １０、１１・・・靴底の溝、 １２・・・中敷、 １３、１５、１６、１７、１９・・・中敷の通気溝、 １４・・・中敷の円形凹所。

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 底のつま先部および踵の後端部にそれぞ
   れ前方および後方切欠き部を設け、前記前方切欠き部は
   底下面より上位の平面部とこの平面部後方から所定の角
   を挟んで底下面に移行する移行面部とで形成し、前記後
   方切欠き部は踵の後縁から踵上面に平行に広がる平面部
   とこの平面部の前端から所定の角を挟んで延長する垂下
   面部とによって形成してなる履物。
2. 【請求項２】 底を甲皮で覆うとともに、底の前方切欠
   き部および中央非接地凹部のいずれか一方または両方に
   おいて底を貫通する少なくとも一つの貫通通気孔を設け
   た請求項１の履物。
3. 【請求項３】 底の平面形状に適合した外形を有し、上
   面つま先部分に肉薄部を設け、この肉薄部を除く上面お
   よび下面に通気溝を設け、外周面には前記上下面の通気
   溝を連絡する連絡溝を設けた中敷を甲皮で覆われた底内
   面に設置し、前記通気溝および連絡溝と底の前記貫通通
   気孔を介して内部に空気を吸入流通排出するようにした
   請求項２の履物。
4. 【請求項４】 中敷の下面において、底の貫通通気孔上
   端開口に対応する位置に下面の前記縦横通気溝に連通す
   る凹所を設けた請求項３の履物。
5. 【請求項５】 甲皮で覆われた底の中央非接地凹部にこ
   の底を貫通する貫通通気孔を設けた履物。
6. 【請求項６】 上面のつま先部分に肉薄部を、上面中央
   部の片側には足の土踏まずに対応する部分に隆起部をそ
   れぞれ設け、また、前記上面肉薄部を除く全面および下
   面の全面には互いに交差する縦横の通気溝を、側面には
   上下面の前記通気溝を連絡する連絡通気溝をそれぞれ設
   けた履物用中敷。