JP2000102917A - セメント系マトリクスのフレッシュ性状のコントロール方法 - Google Patents

セメント系マトリクスのフレッシュ性状のコントロール方法

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JP2000102917A
JP2000102917A JP29145598A JP29145598A JP2000102917A JP 2000102917 A JP2000102917 A JP 2000102917A JP 29145598 A JP29145598 A JP 29145598A JP 29145598 A JP29145598 A JP 29145598A JP 2000102917 A JP2000102917 A JP 2000102917A
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cement
molecular weight
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cellulose ether
viscosity
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JP29145598A
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Tsutomu Yamakawa
勉 山川
Takeaki Sasage
剛明 捧
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Shin Etsu Chemical Co Ltd
Original Assignee
Shin Etsu Chemical Co Ltd
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  • Curing Cements, Concrete, And Artificial Stone (AREA)
  • Preparation Of Clay, And Manufacture Of Mixtures Containing Clay Or Cement (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 セメントに非イオン性セルロースエーテ
ルを添加したセメント系マトリクスのフレッシュ性状を
コントロールする方法であって、下記式(1)又は
(2) K ×(M0.67 ×C1.0
(1) K ×(1/(M0.67 ×C1.0))
(2)(式中、Mは非イオン性セルロースエーテルの分
子量、Cは非イオン性セルロースエーテルのセメント系
マトリクス中での添加量(セメントに対する重量%)を
示し、K は各フレッシュ性状特性値によって決定される
定数を示す。)に従って非イオン性セルロースエーテル
の分子量及びセメント系マトリクスへの添加量を選定し
てセメント系マトリクスが所望のフレッシュ性状を得る
ようにすることを特徴とするセメント系マトリクスのフ
レッシュ性状のコントロール方法。 【効果】 本発明によれば、セルロースエーテルを用い
たセメント系マトリクスのフレッシュ性状をコントロー
ルすることが容易である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セメントを結合材
とし、非イオン性セルロースエーテルを混和剤として添
加してなる混合物(セメント系マトリクス)のフレッシ
ュ性状(粘度、保水率、軟度、Jロート流出時間、粉塵
濃度、はね返り率、懸濁物質量、分離水量、ブリーディ
ング率、0打テーブルフロー、流動距離、流動速度な
ど)をコントロールする方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】セメン
トは、主要構造材料としてのコンクリート、左官材料と
してのモルタル、パネル、ボード類をはじめとする各種
二次製品等の結合材として、これまでに幅広く使用され
てきた。この理由としては、汎用性が高いこと、廉価で
あること、コストパフォーマンスが高いことなどであ
り、これを用いた場合に、成形の自由度の高さ、耐火
性、耐久性などが期待できる点が挙げられる。
【0003】また、近年の建築材料の多様化と高性能化
に対しては、セメントと化学混和剤をはじめとする各種
混和材料を適切に組み合わせることにより、その要求に
対応してきた。
【0004】これらセメントを結合材とする混合物(セ
メント系マトリクス)に要求される性能としては硬化後
の性状に係わるものも多いが、作業性およびその効率、
施工品質向上、成形性および生産性等の向上、すなわ
ち、セメント系マトリクスのフレッシュ時に関するもの
も少なくない。これらの要求性能に対し、最近、水溶性
高分子を含む各種混和剤が開発され、実用化されてい
る。
【0005】非イオン性セルロースエーテルは、Ca2+
の存在下およびアルカリ雰囲気でも凝集することなく、
安定した増粘作用を示し、このため、セメント系マトリ
クスに使用可能である。これに対して、イオン性セルロ
ースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース)
は、セメント系マトリクス中で凝集し、増粘作用などは
期待できない。
【0006】従って、非イオン性セルロースエーテル
(以下、単にセルロースエーテルという)はセメント系
マトリクスの混和剤として有用なものであるが、従来、
水溶性高分子物質、とりわけセルロースエーテルの化学
構造、特性などとセメント系マトリクスの特性との関係
についての検討は殆んどなく、このためセメント系マト
リクスにセルロースエーテルを混和剤として添加する場
合、セメント系マトリクスのフレッシュ性状のコントロ
ールは、試行錯誤的に行わざるを得ないものであった。
【0007】本発明は、かかる現状に鑑みなされたもの
で、セルロースエーテルを混和剤として配合したセメン
ト系マトリクスのフレッシュ性状(粘度、保水率、軟
度、Jロート流出時間、粉塵濃度、跳ね返り率、懸濁物
質量、分離水量、ブリーディング率、0打テーブルフロ
ー、流動距離、流動速度など)を容易かつ確実にコント
ロールする方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本
発明者は、上記目的を達成するため、セメント系マトリ
クスについてセルロースエーテルの分子量及び添加量
(濃度)とセメント系マトリクスの各種フレッシュ性状
との関係を鋭意検討した結果、本発明を完成するに至っ
た。
【0009】即ち、本発明者は、下記の仮定1)、
2)、3)および後述する実験に基づき、セルロースエ
ーテルの分子量と添加量の影響について検討した結果、
下記式(3)の関係が見出された。
【0010】
【数1】 上記1)〜3)の仮定の基に、α、β決定のためトライ
アンドエラーを行った結果、α、βには幾つかの係数が
見出されたが、おおよその範囲はα=0.6〜0.8、
β=0.8〜1.2であった。これらから、各実験結果
に共通して適合性の高いα、βを探すと、α=0.6
7、β=1.0となった。
【0011】
【数2】 そして、更に検討した結果、セメントに非イオン性セル
ロースエーテルを添加したセメント系マトリクスのフレ
ッシュ性状をコントロールするに際し、下記式(1)又
は(2) K ×(M0.67 ×C1.0) (1) K ×(1/(M0.67 ×C1.0)) (2) (式中、Mは非イオン性セルロースエーテルの分子量、
Cは非イオン性セルロースエーテルのセメント系マトリ
クス中での添加量(セメントに対する重量%、以下同
じ)を示し、K は各フレッシュ性状特性値によって決定
される定数を示す。)に従って非イオン性セルロースエ
ーテルの分子量およびセメント系マトリクスへの添加量
を選定することにより、セメント系マトリクスについて
所望のフレッシュ性状を得ることが可能であることを知
見したものである。
【0012】以下、本発明につき更に詳述する。
【0013】本発明に係るセメント系マトリクスは、コ
ンクリート乃至セメントペースト、モルタル、左官材料
(塗材)、セルフレベリング材料等、セメントを結合材
とする各種混合物を意味し、セメントに、用途に応じた
公知の各種添加材及びセルロースエーテルを添加してな
るものである。
【0014】ここで、本発明で用いられるセルロースエ
ーテルは、非イオン性セルロースエーテルであり、水溶
性のものが好適に用いられる。このセルロースエーテル
は、下記の性状を有する。 (1)非イオン性であり、金属塩や電解質の存在に対し
て比較的安定であり、また、酸および塩基の影響を受け
にくいため、セメント系マトリクス中で凝集せず、増粘
する。 (2)水溶液は、界面活性や非ニュートン流動を示す。 (3)これらの特徴から、セルロースエーテルを添加す
ることにより、セメント系マトリクスのフレッシュ性状
に増粘性、保水性、流動性(コンシステンシー)、材料
分離抵抗性、可塑性、潤滑性などを付与することが可能
である。
【0015】上記セルロースエーテルは、下記化学構造
式で表わされるものが使用できる。
【0016】
【化1】 (R=H、アルキル基又はヒドロキシアルキル基)
【0017】上記セルロースエーテルとしては、特にヒ
ドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチル
メチルセルロースなどが好適に用いられるが、これらに
限定されるものではない。
【0018】なお、上記セルロースエーテルは、重量平
均分子量(GPC法)が0.2〜500×104g/m
ol、特に20〜200×104g/molのものが好
適に用いられる。また、セルロースエーテルの添加量
(濃度)は、セメント系マトリクスの用途により相違す
るが、通常、セメント系マトリクス中、セメント(C)
に対して、C×0.01〜10重量%、特に0.1〜5
重量%が好ましい。
【0019】本発明において、セメントとしては、各種
ポルトランドセメント、混合セメント(高炉セメント、
シリカセメント、フライアッシュセメントなど)、特殊
セメント(アルミナセメント、膨張セメントなど)等が
挙げられ、特に、普通ポルトランドセメント、早強ポル
トランドセメントなどのポルトランド系セメントが有効
である。
【0020】なお、セメントの配合量は、用途により相
違するが、セメント系マトリクス中、5〜80重量%、
特に20〜60重量%が好ましい。
【0021】また、セメント以外の各種配合材として
は、骨材、混和材料(ポゾラン、AE剤、減水剤、凝結
促進剤、凝結遅延剤、防水材等)などが用途に応じて用
いられ、それらの種類、使用量は、公知の通常の範囲で
選定される。
【0022】なお、水の添加量も、用途等に応じ、適宜
選定されるが、通常セメント系マトリクス中、10〜9
0重量%、特に0〜80重量%が好ましく、水セメント
比は、通常20〜200%、特に30〜80%の範囲で
選定される。
【0023】而して、本発明は、セメントに上記セルロ
ースエーテルを添加したセメント系マトリクスのフレッ
シュ性状、すなわち粘度、保水率、軟度(特に押出し成
形の場合)、Jロート流出時間などを所望な値にコント
ロールする場合、下記式(1)に従ってセルロースエー
テルの分子量および添加量を選定し、また粉塵濃度とは
ね返り率(特に吹き付けコンクリートの場合)、懸濁物
質量(特に水中不分離性コンクリートの場合)、分離水
量(特に押出し成形の場合)、更にブリーディング率、
0打テーブルフロー、流動距離、流動速度などを所望な
値にコントロールする場合、下記式(2)に従ってセル
ロースエーテルの分子量および添加量を選定するもので
ある。
【0024】なお、粘度はmPa・s、保水率は%、軟
度はmm、Jロート流出時間はsec、粉塵濃度はC/
min、はね返り率は%、懸濁物質量はmg/L、分離
水量はg、ブリーディング率は%、0打テーブルフロー
はmm、流動距離はmm、流動速度はmm/minの単
位で与えられる。
【0025】 K ×(M0.67 ×C1.0) (1) (式中、Mは非イオン性セルロースエーテルの分子量、
Cは非イオン性セルロースエーテルのセメント系マトリ
クス中での添加量(セメントに対する重量%)を示し、
は粘度、保水率、軟度又はJロート流出時間などによ
って決定される定数を示す。) K ×(1/(M0.67 ×C1.0)) (2) (式中、M,Cは上記と同じ意味を示し、K は粉塵濃
度、はね返り率懸濁物質量、分離水量、ブリーディング
率、0打テーブルフロー、流動距離又は流動速度などに
よって決定される定数を示す。)
【0026】ここで、K の値は、下記の方法によって決
定される。即ち、本発明において、まず分子量既知のセ
ルロースエーテルを所定量用い、所用の処方でセメント
系マトリクスを調製し(試験練り)、所用のフレッシュ
性状を求める。このフレッシュ性状値と上記セルロース
エーテルの分子量及び添加量を上記式(1)又は(2)
に代入して、上記処方におけるこのフレッシュ性状のK
値を求める。
【0027】このようにK値を求めることにより、上記
式(1)、(2)からセメント系マトリクスのフレッシ
ュ性状値を予測することができ、またセルロースエーテ
ルの分子量及び添加量を選定することにより、所望のフ
レッシュ性状値を有するセメント系マトリクスを得るこ
とができると共に、添加量削減のためのセルロースエー
テルの最適分子量を求めることができる。
【0028】この場合、従来は経験又は勘などにより数
回試験を行ってフレッシュ性状値を満たす適宜なセルロ
ースエーテルを選定していたが、本発明によれば、上記
試験練りは1〜2回行ってK値を求めればよく、配合コ
ントロールが容易なものになるものである。
【0029】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説
明する。
【0030】[実施例1]セルロースエーテルの分子量
がモルタルのフレッシュ性状に与える影響を把握するこ
とを目的に、分子量の異なる4種類のセルロースエーテ
ルを用い、基礎実験として砂セメント比の異なるモルタ
ル(S/C比1〜3)のフレッシュ性状に与える影響に
ついて検討した。 (1)セルロースエーテル セルロースエーテルとして分子量22×104g/mo
l、55×104g/mol、105×104g/l、1
65×104g/l(分子量はGPCにより測定)のヒ
ドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を使用
した。 (2)セメント及び細骨材 セメントは、普通ポルトランドセメント(比表面積3,
210cm2/g)を用い、細骨材は珪砂5号を用い
た。 (3)調合 下記調合のモルタルを調製した。 セメント 1.0重量部 細骨材 1.0,2.0又は3.0重量部 水 0.36〜0.81重量部 HPMC 0.002,0.004又は0.006
重量部(セメントCに対しそれぞれ0.2,0.4又は
0.6重量%、以下例えば0.2重量%の場合、C×
0.2%と記す) この場合、流動性(テーブルフロー)は水量を調整する
ことにより、170±5mmで一定とした。 (4)練混ぜ 練混ぜは、JIS R5201(ポルトランドセメン
ト)に準じて行った。 (5)フレッシュ性状の試験方法 モルタルのフレッシュ性状について、テーブルフロー、
粘度(見掛け粘度)、保水率を下記方法で測定した。 粘度:外筒回転型粘度計(ローター直径18mm)を用
い、ずり速度2.24sec-1(ローター回転数10r
pm)での見掛け粘度を測定した。測定温度20℃。 テーブルフロー:JIS R5201(ポルトランドセ
メント)に準じた。なお、衝撃を与えず測定したものに
ついては「0打テーブルフロー」とした。 保水率:住宅都市整備公団、特別共通仕様書、タイルモ
ルタルに準じた。 (6)HPMCの水溶液粘度 この実験で用いたHPMCを種々の濃度で水に溶解した
場合の水溶液濃度と粘度の関係を図1に示す。 (7)粘度測定結果 図2〜4に砂セメント比1.0,2.0,3.0の場合
のモルタル粘度を、及び図5にHPMCの添加量C×
0.2%の場合のモルタル粘度に関する実験結果を示
す。
【0031】砂セメント比にかかわらず、分子量の増加
に伴い、粘度は増加し、HPMC添加量C×0.2%で
は直線的に増加するのに対して、添加量C×0.4,
0.6%では、分子量105×104g/mol程度以
上でその増加の程度は小さくなる。これは流動性(テー
ブルフロー)を一定としたため、高分子領域では水セメ
ント比(W/C)が増加し、HPMCの水に対する程度
が相対的に低下したためと考えられる。
【0032】図5に見られるように、砂セメント比が異
なると同一分子量、同一添加量でも粘度は異なり、砂セ
メント比の小さい方が粘度が高く、添加量C×0.2
%、分子量105×104g/molを例にとると、砂
セメント比3.0の粘度を1とした場合、砂セメント比
2.0では1.4倍、砂セメント比1.0では3.1倍
の粘度となる。これは、砂セメント比が小さくなると、
単位体積あたりのセメント量が多くなり、可塑性も大き
くなるため、同一テーブルフローでの水量が少なくな
る。結果として、HPMCの水に対する濃度が高くな
り、粘度が増加すると考えられる(上記例での水セメン
ト比は、それぞれ0.375,0.48,0.63とな
る)。 (8)保水率の測定 図6〜8に砂セメント比1.0,2.0,3.0の保水
率を、及び図9にHPMCの添加量C×0.2%の場合
の保水率に関する実験結果を示す。
【0033】砂セメント比にかかわらず、分子量の増加
に伴い、保水率は増加し、HPMC添加量C×0.2%
では直線的に増加するのに対して、添加量C×0.4,
0.6%では、分子量105×104g/mol程度以
上でその増加の程度は小さくなる傾向にある。これは粘
度と同様にテーブルフローを一定としたためと考えられ
る。
【0034】図9に見られるように、砂セメント比が異
なると同一分子量、同一添加量でも保水率は異なり、砂
セメント比の小さい方が保水率が高く、添加量C×0.
2%、分子量105×104g/molを例にとると、
砂セメント比3.0の保水率を1とした場合、砂セメン
ト比2.0では1.1倍、砂セメント比1.0では1.
5倍の保水率となる。これは、粘度と同様に水セメント
比の低下によるものと考えられる。 (9)テーブルフローの測定 図10に同一テーブルフローにおける砂セメント比と水
セメント比に関する実験結果を示す。
【0035】砂セメント比の増加に伴い、水セメント比
は直線的に増加する。また、砂セメント比2.0,3.
0ではHPMC添加モルタルの方が無添加モルタルより
も水セメント比が小さい。
【0036】これは、砂セメント比が小さい場合、セメ
ントペーストにより細骨材表面の潤滑性がよくなり、結
果としてより小さい水セメント比で同一テーブルフロー
となるためと考えられる。また、HPMCの添加によ
り、より高い潤滑性を与えられ、無添加系よりも小さい
水セメント比で同一テーブルフローとなる。これは、H
PMCの添加により貧調合のモルタル、低品質の細骨材
を用いたモルタルでも、より高品質のモルタルにできる
可能性を示唆しているものと考えられる。
【0037】以上の砂セメント比の異なるモルタルによ
る基礎実験結果をまとめると下記のようになる。 1)添加量0.2%では、分子量とフレッシュ性状(粘
度、保水率)は比較的直線的な関係が成り立つ。 2)添加量0.4%以上の場合、分子量105×104
g/mol以上では「頭打ち傾向」にある。 3)HPMCの添加により潤滑性が増加し流動性が増加
するため、同一テーブルフローでの水セメント比は無添
加系より小さくなる。 4)分子量よりも添加量の方がフレッシュ性状に与える
影響は大きいと考えられる。
【0038】[実施例2]HMPCの分子量と下記用途
のセメントマトリクスのフレッシュ性状との関係につい
て実験検討した。 (1)使用材料 表1に、本実験に使用した材料(骨材)を示す。 a)セメント(普通ポルトランドセメント) b)骨材 細骨材(信濃川採取川砂(安山岩系)、下濁川採取山砂
(安山岩系)、珪石粉(鳥屋根珪石)) 粗骨材(下濁川採取砕石(安山岩系)) 混和剤(HPMC,高性能減水剤(メラミン系)、消泡
剤(非イオン性エーテル型)、空気量調整剤(樹脂酸
系)、急結材(セメント鉱物系)、パルプ) なお、実験に用いたHPMCの分子量は、吹付コンクリ
ートでは、66×10 4〜160×104g/mol、水
中不分離性コンクリートでは、103×104〜157
×104g/mol、押出し成形では、107×104
173×104g/molである。
【0039】また、吹付コンクリート及び水中不分離性
コンクリートでは練混ぜ時の気泡除去のため消泡剤を用
いた。
【0040】
【表1】
【0041】(2)調合 表2に、本実験に用いたセメント系マトリクス(3例)
の調合を示す。
【0042】なお、吹付コンクリートでは、スランプ1
8±2cm、空気量4±2%、水中不分離性コンクリー
トでは、スランプフロー50±3cm、空気量4.5%
以下となるように減水剤、空気量調整剤、消泡剤にてそ
れぞれ調整した。
【0043】
【表2】
【0044】(3)練混ぜ シリーズIの吹付コンクリートでは、傾胴式ミキサ(容
量200L)を用い、空練り3分、注水後10分、練混
ぜた。
【0045】シリーズIIの水中不分離性コンクリート
では、パン式強制練りミキサ(容量55L)を用い、空
練り1分、注水後3分、練混ぜた。
【0046】シリーズIIIの押出し成形では、ヘンシ
ェルミキサを用い、5分練混ぜた後、双腕式ニーダーで
5分、練混ぜた。 (4)フレッシュ性状の試験方法 セメント系マトリクスのフレッシュ性状として、吹付コ
ンクリートでは、粉塵濃度、はね返り率(リバウンド
率)を、水中不分離性コンクリートでは水中分離度(懸
濁物質量)を、押出し成形では分離水量(保水性)、軟
度(可塑性)を測定した。その試験方法の概略を下記に
示す。セメント系マトリクス実験に用いた試験方法の概略 I 吹付コンクリート 粉塵濃度:高さ2.5m、幅3.5m、奥行5.0mの
蒲鉾型の模擬トンネルを用い、吹付にはリードガンを使
用し、吹付圧力約0.3N/mm3で吹き付けた。トン
ネルの入口から4mの場所で吹き付け、トンネルを塞
ぎ、入口から1mの場所にて粉塵濃度計にて30g毎に
測定した。 吹付開始:吹付開始から3min後の測定値(吹付時に
発生する粉塵)。 吹付終了:吹付終了から2min後の測定値(浮遊粉
塵)。 はね返り率:吹付場所の下にビニールシートを敷き、は
ね返り量を計量し、下記の式により、はね返り率を求め
た。 はね返り率(%)=(はね返り量/吹付量)×100 II 水中不分離性コンクリート 懸濁物質量:土木学会、水中不分離性コンクリート設計
施工者指針(案)コンクリート用水中不分離性混和剤品
質規格(案)に準じた。 III 押出し建材 分離性量:混練物(80g)に16tの荷重をかけ、絞
り出た水の量を測定し、分離水量とした。 軟度:混練物30gを丸めて、20kgで2min加圧
した後、拡がりの直径を直角方向測定、平均値を軟度と
した。 (5)結果 実験結果を、図11〜15に示す。これに基づき検討す
ると以下のようになる。 (I)シリーズI[吹付コンクリート](図11,12
参照) 吹付コンクリートでは、環境問題(作業環境)及び材料
コストの観点から、吹付時の粉塵発生、リバウンドが問
題となる。
【0047】図11に粉塵濃度を、図12にはね返り率
に関する実験結果を示す。
【0048】粉塵濃度は、吹付開始から吹付終了後5分
後まで、3秒毎に粉塵濃度計により測定した。データの
解析には、吹付開始から3分後(吹付時に発生する粉塵
濃度。以下、吹付開始という)及び吹付終了から2分後
(浮遊粉塵濃度。以下、吹付終了という)の粉塵濃度を
用いた。
【0049】吹き開始及び吹付終了共に、HPMCの分
子量の増加と共に粉塵濃度は低下するが、分子量115
〜148×104g/molで底を打ち、分子量155
×104g/mol以上では逆に粉塵濃度は増加する。
【0050】これは、分子量66〜155×104g/
molでは分子量の増加に伴い、セメントペースト粘度
が増加し、その粘着力により、粉塵の元になる微粒子が
細骨材、粗骨材により強く接着されるため、吹付時の粉
塵濃度は低くなると考えられる。これに対して、分子量
155×104g/mol以上では、その粘性のため、
コンクリートの粘度が高くなり、ポンプ圧送時に脈動が
起こり、かえって粉塵濃度は増加したものと考えられ
る。
【0051】また、分子量99〜148×104g/m
olの範囲では吹付開始と吹付終了の粉塵濃度に差が認
められるが、これはある一定以上の分子量の場合、粘着
力が強く、微粒子同士が接着され、粉塵となる粒子が比
較的大きく、重く、大気中に浮遊せず、速やかに沈降し
たためと考えられる。
【0052】はね返り率も粉塵濃度と同様に、分子量の
増加と共に低下するが、分子量135×104g/mo
l以上ではかえって増加する。これは粉塵濃度と同様に
ポンプ圧送時の脈動が原因と考えられる。
【0053】以上の結果から、吹付コンクリート用混和
剤としてはHPMCの分子量99〜148×104g/
mol程度が好ましいことがわかる。 (II)シリーズII[水中不分離性コンクリート]
(図13参照) 水中不分離性コンクリートは、従来の水中コンクリート
と異なり、水中打設時の材料分離を抑制したものであ
り、流動性に富み、しかも材料分離が極めて少ないとい
う特徴を持ち、各種水中構造物、地下構造物などに利用
されている。
【0054】図13に懸濁物質量に関する実験結果を示
す。
【0055】水中での材料分離抵抗性の指標の1つであ
る懸濁物質量は、分子量の増加と共に低下する。これは
分子量の増加に伴い、モルタル粘度が増加し、モルタル
が粗骨材と強く接着し、水中でもモルタル分が分離・流
出しないためと考えられる。
【0056】懸濁物質量は、土木学会基準では50mg
/l以下とされており、セルロースエーテルの標準的添
加量である2.5kg/m3を基準に考えると、要求品
質を満たすためには分子量117×104g/mol以
上が必要である。以上の結果及び流動性を考慮すると、
水中不分離性コンクリート用混和剤としては、HPMC
の分子量117〜180×104g/mol程度が好ま
しいことがわかる。 (III)シリーズIII[押出し成形](図14,1
5参照) 押出し成形板は、生産性の高いセメント成形板であり、
外壁材料などとして幅広く建築分野で使用されている。
押出し成形では、押出し成形機の中が高圧となるため、
混練物から水が分離し、成形圧力が増加し、成形不能と
なる場合がある。また、押出し時には開口部(ダイ開口
形状)に沿って成形される必要があり、このため、混練
物には可塑性が必要である。これらの品質を確保するた
めには、保水性、可塑性を与えることのできるセルロー
スエーテルが押出し成形には不可欠である。
【0057】図14に分離水量(保水性)を、図15に
軟度(可塑性)に関する実験結果を示す。
【0058】分離水量については、HPMCの分子量の
増加と共に、分離水量は低下し、成形性を確保できる。
これは、分子量の増加に伴い、混練物の保水性が向上し
たためであると考えられる。
【0059】軟度についても、分離水量と同様に、分子
量の増加に伴い、軟度は大きくなり、混練物は軟らか
く、成形しやすくなる。
【0060】以上の結果から、押出し成形用混和剤とし
ては、HPMCの分子量130×104g/mol程度
以上が好ましいことがわかる。
【0061】以上のセメント系マトリクスに関する実験
結果をまとめると下記のようになる。 1)各セメント系マトリクスのフレッシュ性状(粉塵濃
度、はね返り率、懸濁物質量、分離水量、軟度)はHP
MCの分子量と相関がある。 2)各セメント系マトリクスに用いるHPMCの最適分
子量は、吹付コンクリートでは99〜148×104
/mol程度、水中不分離性コンクリートでは117〜
180×104g/mol程度、押出し成形では130
×104g/mol以上である。
【0062】上述した式(3)に基づき、上記実施例
1,2の実験結果(セメント系マトリクスの各種フレッ
シュ性状)をセルロースエーテルの分子量及び添加量に
関する関数で表わすと以下のようになる。
【0063】検討結果を図16〜22に示す。 (1)モルタル(S/C=1〜3)について 図16にモルタル粘度を、図17に保水率と分子量
(M)及び添加量(C)に関する検討結果を示す。
【0064】分子量(M)及び添加量(C)の係数をそ
れぞれ0.67,1.0とした時、粘度との関係による
寄与率(r2)は砂セメント比1.0,2.0,3.0
でそれぞれ0.752,0.937,0.934といず
れも0.75以上の高い相関が認められ、いずれにおい
ても式(3)の適合性は高い。
【0065】また、保水率についても、保水率との関係
による寄与率(r2)は砂セメント比1.0,2.0,
3.0でそれぞれ0.726,0.915,0.973
といずれも0.72以上の高い相関が認められ、いずれ
においても式(3)の適合性は高い(保水率において、
実用上使用可能な水量のデータのみを取り扱った)。 (2)セメント系マトリクスについて 図18〜22に、吹付コンクリート、水中不分離性コン
クリート、押出し成形による分子量及びフレッシュ性状
に関する検討結果を示す。
【0066】これらもモルタルの場合と同様、α,βは
上記と同じ係数で表わすことができ、吹付コンクリート
(図18,19参照)では、粉塵濃度(吹付開始・吹付
終了)、はね返り率との関係による寄与率(r2)はそ
れぞれ0.976,0.947,0.918、水中不分
離性コンクリート(図20参照)では、懸濁物質量との
関係による寄与率(r2)は0.836(セルロースエ
ーテル添加量2.0,2.5kg/m3混合)、押出し
成形(図21,22参照)では、分離水量及び軟度との
関係による寄与率(r2)はそれぞれ0.984,0.
991といずれも0.83以上の高い相関が認められ、
セメント系マトリクスのフレッシュ性状においても式
(3)の適合性は高い(吹付コンクリートの粉塵濃度に
おいて、ポンプ脈動による異常値は除いた)。
【0067】以上のように、コンクリートを含むセメン
ト系マトリクスにおいて、種々のフレッシュ性状につい
て上述した式(1)、(2)が適用できることを確認し
た。
【0068】[実施例3]セルロースエーテルの分子量
がセメント系マトリクスのフレッシュ性状に与える影響
を把握することを目的に、分子量の異なる4種類のセル
ロースエーテルを用い、各用途に要求されている品質特
性である、粘度、保水性、ブリーディング、流動性(コ
ンシステンシー)と分子量との関係及び濃度(添加量)
による影響について、セメントペースト、モルタル、左
官材料(塗料)及びセルフレベリング材について検討し
た。 (1)セルロースエーテル セルロースエーテルとしては、実施例1と同様のものを
用いた。 (2)セメント及び細骨材 セメントは、普通ポルトランドセメント(比表面積3,
210cm2/g)を用い、細骨材は、モルタルでは、
JIS R5201(ポルトランドセメント)に規定さ
れているものを用いた。また、左官材料(塗料)では珪
砂5号を、セルフレベリング材では珪砂5・6号及び珪
砂8号を用いた。 (3)セメントペースト及びモルタルの調合 表3に本実験に用いたセメントペースト及びモルタルの
調合を示す。セメントペーストでは水セメント比を0.
6で一定、モルタルでは水セメント比、砂セメント比を
それぞれ0.6,2.0で一定とし、セルロースエーテ
ルの添加量を0.002,0.004,0.006とし
た(以下、0.2,0.4,0.6%という)。
【0069】また、表4に、左官材料(塗料)及びセル
フレベリング材の調合を示す。セルフレベリング材で
は、減水剤はメラミン系を、消泡剤はプルロニック系を
用い、両者とも、流動性(テーブルフロー又はフロー
値)を一定とし、水量で調整した。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】(4)練混ぜ 練混ぜは、JIS R5201(ポルトランドセメン
ト)に準じて行った。 (5)フレッシュ性状の試験方法 セメントペースト及びモルタルのフレッシュ性状につい
て、粘度、テーブルフロー、Jロート流出時間、ブリー
ディング率、保水率を、また、左官材料(塗料)及びセ
ルフレベリング材のフレッシュ性状については、粘度、
テーブルフロー、フロー値、流動距離、流動速度、ブリ
ーディング率、保水率を測定した。その試験方法の概略
を下記に示す。なお、粘度、テーブルフロー、保水率の
試験方法は実施例1と同様である。試験方法の概略 Jロート試験:土木学会基準、PCグラウト試験方法に
準じた。 ブリーディング率:土木学会基準(プレパックドコンク
リートの注入モルタルのブリーディング率及び膨張率試
験方法)に準じ、3時間経過後の値を測定した。 フロー値:JASS 15 M=103(セルフレベリ
ング材の品質試験)に準じた。 流動距離:幅25mm、深さ25mm、長さ700mm
の桶状容器(塩ビ製)を用い、この長さ160mmの部
分(堰を設置)にセルフレベリング材を充填し、その停
止までの流動距離を測定した。 流動速度:流動距離測定時、長さ200mmの到達時間
を測定し、流動速度(mm/min)を求めた。 (6)粘度 図23〜26に粘度に関する実験結果を示す。 (i)セメントペースト(図23参照) セルロースエーテル無添加の場合のセメントペースト粘
度は912mPa・sであった。これに対して、セルロ
ースエーテル添加の場合のセメントペースト粘度は、分
子量の増加に伴い、どの添加量でも増加し、添加量C×
0.2%では、直線的に増加するのに対して、添加量C
×0.4,0.6%では、分子量105×104g/m
ol以上で、その増加の程度はやや大きくなる。
【0073】セメントペースト粘度の増加は、分子量の
増加に伴って水溶液粘度が増加すると共に、セメント粒
子にセルロースエーテルが吸着し、一部、橋かけ構造を
とるため増加すると考えられる。
【0074】高分子量、高添加量ほど、セメントペース
ト粘度は高い値を示す。 (ii)モルタル(図24参照) モルタル粘度も、セメントペースト粘度と同様に分子量
の増加に伴い、どの添加量でも増加する。添加量C×
0.2%では、直線的に増加するのに対して、添加量C
×0.4,0.6%では、分子量105×104g/m
ol以上で、その増加の程度はやや小さくなる。前述の
セメントペースト粘度と若干傾向が異なるのは細骨材の
添加による単位体積あたりの固形分量の増加に原因があ
ると考えられる。このため、同添加量でもセメントペー
ストと比較してモルタル粘度の方が5倍以上の高い値を
示す。 (iii)左官材料(塗料)(図25参照) 塗材の粘度も前二者と同様に分子量の増加に伴い、どの
添加量でも増加する。但し、分子量105×104g/
mol以上で、その増加の程度はモルタルと同様、小さ
くなる。また、その程度はモルタルより顕著である。こ
れは、塗材ではコンシステンシー一定(テーブルフロー
170±5mm)としており、高分子量を添加した場
合、水セメント比が増加したためであると考えられる。 (iv)セルフレベリング材(図26参照) セルフレベリング材の粘度は、分子量の増加に伴い、増
加する傾向にあるが、高分子量添加域ではその増加は少
ない。これは、塗材と同様、コンシステンシー一定(フ
ロー値200±5mm)としたため、高分子量添加域で
は水セメント比が増加し、セルロースエーテルの水に対
する濃度が低下したためである。また、セルフレベリン
グ材では流動性を重視するため、一般に減水剤が併用さ
れ、このため、モルタルと比較して比較的低粘度であ
る。 (7)保水性 図27〜29に保水性に関する実験結果を示す。 (i)モルタル(図27参照) モルタルの保水率は、分子量の増加に伴い、増加する。
その増加の程度は添加量が多くなるほど大きい。また、
添加量C×0.2%では直線的に増加するのに対して、
添加量0.4%以上では分子量105×104g/mo
l程度でほぼ一定の値となる。
【0075】保水率と分子量との関係はモルタル粘度と
分子量の関係と傾向が同じである。これは、分子量10
5×104g/mol以上では分子量よりも添加量の影
響が大きいためと考えられる。 (ii)左官材料(塗料)(図28参照) 塗材の保水率も分子量の増加に伴い、増加する。また、
その傾向もモルタルと同様である。但し、コンシステン
シー一定としているため、水セメント比52%以上とな
る添加量C×0.4%以上、分子量105×104g/
mol以上の場合、保水率は若干、低下する。 (iii)セルフレベリング材(図29参照) セルフレベリング材の保水率も分子量の増加に伴い、増
加するが、分子量105×104g/mol以上では逆
に低下する。これは、塗材と同様、コンシステンシー一
定のため、水セメント比が66%以上となる分子量10
5×104g/mol以上では保水率は低下する。 (8)ブリーディング率 図30,31にブリーディング率に関する実験結果を示
す。 (i)セメントペースト(図30参照) セルロースエーテル無添加の場合のブリーディング率は
13.4%であった。これに対して、セルロースエーテ
ル添加の場合のブリーディング率は、分子量及び添加量
の増加に伴い、低下する傾向を示すが、添加量C×0.
2%では、ほぼ直線的に低下するのに対して、添加量C
×0.4,0.6%では、分子量55×104g/mo
l以上でその低下の程度は大きくなる。ブリーディング
率の低下した原因は、分子量の増加に伴ってセメントペ
ースト粘度が増加し、水とセメント粒子との分離が抑制
されたためと考えられる。 (ii)モルタル(図31参照) モルタルのブリーディング率は、分子量の増加に伴っ
て、低下し、分子量105×104g/mol以上では
ブリーディングは認められなかった。セメントペースト
と比較してブリーディング率が低かった原因はセルロー
スエーテル無添加の値からもわかるように、単位体積あ
たりの固形分が多いためと考えられる。
【0076】なお、左官材料(塗料)及びセルフレベリ
ング材では、実験の範囲内ではほとんどブリーディング
は認められなかった。 (9)流動性 図32〜35に流動性に関する実験結果を示す。 (i)セメントペースト(図32参照) Jロート流出時間は、分子量の増加に伴い、どの添加量
でも増加し、添加量C×0.2%では、直線的に増加す
るのに対して、添加量C×0.4,0.6%では、分子
量55×104g/mol以上でその増加の程度は大き
くなる。
【0077】この傾向は、セメントペースト粘度と分子
量の関係と同様であるが、原因は粘度の増加とこれに伴
って管壁との抵抗が大きくなることにより、Jロート流
出時間が増加したと考えられる。 (ii)モルタル(図33参照) 0打テーブルフローは、分子量の増加に伴い、低下す
る。この傾向は他のモルタル物性と比較すると影響が少
なく、最も差が小さい。
【0078】また、添加量による0打テーブルフローの
差も小さい。
【0079】この原因は、添加量の増加及び分子量の増
加に伴い、モルタル粘度は高くなり、流動性は低下し、
0打テーブルフローは小さくなる傾向にあるが、可塑性
は増加の方向にあり、これらの結果として、分子量及び
添加量のテーブルフローへの影響が少なかったと考えら
れる。 (iii)セルフレベリング材(図34,35,36参
照) 直線方向での流動性評価方法である流動距離は、分子量
の増加に伴い、どの添加量でもほぼ直線的に低下する。
添加量C×0.4%では他の添加量と比較して流動距離
の低下が少ないのは、添加量の増加に伴い、可塑性が増
加したためと考えられる。
【0080】なお、添加量と流動性との関係が前述の塗
材と異なるのはセルフレベリング材の方が減水剤を併用
し、よりコンシステンシーの大きい調合であることによ
ると考えられる。図36にフロー値及び流動距離と分子
量の関係について示す。
【0081】本実験では、一般的にセルフレベリング材
の流動性評価に用いられているフロー値(放射線状の拡
がり)を一定(200±5mm)としていることから、
フロー値よりも流動距離の方がより、分子量及び添加量
の影響を受けやすいと考えられる。
【0082】一方、流動速度は、分子量の増加に伴い、
どの添加量でも低下する。流動距離がほぼ直線的に低下
するのに対して、流動速度は分子量22〜55×104
g/molの間で急激に低下する。セルロースエーテル
を添加したセメント系マトリクスでは水中不分離性コン
クリート、高流動コンクリートに見られるように、変形
性が持続し、その結果として流動速度は遅いが、高粘度
でもスランプフローの大きいコンクリートが得られるこ
とが知られている。これと同様に、分子量の増加に伴
い、モルタル粘度は増加し、骨材の動きが抑制され、流
動速度は低下するが、変形性が持続するため、流動距離
への影響は流動速度へのそれと比較して少なかったと考
えられる。
【0083】以上の各調合での実験結果をまとめると下
記のようになる。 1)添加量C×0.2%では、分子量と各フレッシュ性
状は比較的直線関係が成り立つ。 2)分子量105×104g/mol以上では「頭打ち
傾向」にある。 3)分子量よりも添加量の方がフレッシュ性状に与える
影響は大きいと考えられる。
【0084】上述した式(3)に基づき、上記実施例3
の実験結果(各種フレッシュ性状)をセルロースエーテ
ルの分子量および濃度に関する関数で表すと以下のよう
になる。検討結果を図37〜43に示す。 (1)粘度について 図37にセメントペースト、モルタル、左官材料
(塗材)、セルフレベリング材における分子量(M)
および濃度(C)と粘度との関係について示す。
【0085】分子量(M)および濃度(C)の係数をそ
れぞれ0.67、1.0とした時、寄与率(r2)はそ
れぞれ0.859、0.986、0.937、0.88
5といずれも0.80以上の高い相関が認められ、いず
れにおいても式(3)の適合性は高い。
【0086】なお、それぞれの粘度は次式で表される。
【0087】 Y1= 140500X1− 2580 (4)式 Y2=1067000X2−22200 (5)式 Y3= 630800X3+16400 (6)式 Y4= 108400X4+ 1720 (7)式 モルタルおよび左官材料は固形分濃度が高いため、高粘
度となったのに対して、セメントペーストでは固形分濃
度が低いため、またセルフレベリング材では減水剤を併
用しているため、比較的低い粘度となった。 (2)保水率について 図38〜40にモルタル、左官材料(塗材)、セルフレ
ベリング材における分子量および濃度と保水率との関係
について示す(左官材料およびセルフレベリング材につ
いては実用上使用されている水セメント比の範囲とし
た)。
【0088】これらも粘度と同様、α、βは上記と同じ
係数で表すことができ、寄与率(r2)はそれぞれ0.
986、0.918、0.811といずれも0.80以
上の高い相関が認められ、保水性においても式(3)の
適合性は高い。 (3)ブリーディングについて セメントペーストのブリーディング率(B)についても
以下の式で表される。ここで、α、βは上記と同じ係数
で表され、寄与率(r2)は0.883と高い。
【0089】 B=0.098×1/(M0.67×C1.0)−0.57 (8)式 (4)流動性について 粘度、保水率、ブリーディング率とは異なり、流動性は
本来、粘性とは異なった因子により構成されていると考
えられる。
【0090】図41〜43にセメントペースト(Jロー
ト流出時間)、セルフレベリング材(流動距離、流動速
度)における分子量及び濃度と流動性との関係について
示す。
【0091】これらも他のフレッシュ性状と同様に、
α、βは同じ係数で表すことができ、寄与率(r2)は
それぞれ、0.899、0.736、0.950、0.
699(0打テーブルフロー)といずれも比較的高い相
関が認められた。分子量および濃度とあまり相関が認め
られないと予想された流動性であるが、比較的高い相関
が得られた理由については、セルロースエーテル特有の
可塑性および潤滑性の付与が考えられる。つまり、セル
ロースエーテルの分子量および添加量(濃度)の増加に
より、粘度が増し、流動性は低下するが、可塑性および
潤滑性により、変形性が増すため、結果として、分子量
および濃度の関数として表されたと考えられる。
【0092】以上のように、セメント系マトリクスにお
いて、粘度および粘度以外のフレッシュ性状についても
式(1)、(2)が適用できることを確認した。
【0093】
【発明の効果】本発明によれば、セルロースエーテルを
用いたセメント系マトリクスのフレッシュ性状をコント
ロールすることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒドロキシプロピルメチルセルロースの分子量
および濃度とヒドロキシプロピルメチルセルロースとの
関係を示すグラフである。
【図2】モルタル粘度とヒドロキシプロピルメチルセル
ロースの分子量との関係を示すグラフである。
【図3】モルタル粘度とヒドロキシプロピルメチルセル
ロースの分子量との関係を示すグラフである。
【図4】モルタル粘度とヒドロキシプロピルメチルセル
ロースの分子量との関係を示すグラフである。
【図5】モルタル粘度とヒドロキシプロピルメチルセル
ロースの分子量との関係を示すグラフである。
【図6】モルタル保水率とヒドロキシプロピルメチルセ
ルロースの分子量との関係を示すグラフである。
【図7】モルタル保水率とヒドロキシプロピルメチルセ
ルロースの分子量との関係を示すグラフである。
【図8】モルタル保水率とヒドロキシプロピルメチルセ
ルロースの分子量との関係を示すグラフである。
【図9】モルタル保水率とヒドロキシプロピルメチルセ
ルロースの分子量との関係を示すグラフである。
【図10】ヒドロキシプロピルメチルセルロース添加の
有無による水セメント比への影響を示すグラフである。
【図11】粉塵濃度とヒドロキシプロピルメチルセルロ
ースの分子量との関係を示すグラフである。
【図12】はね返り率とヒドロキシプロピルメチルセル
ロースの分子量との関係を示すグラフである。
【図13】懸濁物質量とヒドロキシプロピルメチルセル
ロースの分子量との関係を示すグラフである。
【図14】分離水量とヒドロキシプロピルメチルセルロ
ースの分子量との関係を示すグラフである。
【図15】軟度とヒドロキシプロピルメチルセルロース
の分子量との関係を示すグラフである。
【図16】モルタル軟度と濃度のα乗と分子量のβ乗と
の積との関係を示すグラフである。
【図17】モルタル保水率と濃度のα乗と分子量のβ乗
との積との関係を示すグラフである。
【図18】粉塵濃度(吹付開始・吹付終了)と濃度のα
乗と分子量のβ乗との積との関係を示すグラフである。
【図19】はね返り率と濃度のα乗と分子量のβ乗との
積との関係を示すグラフである。
【図20】懸濁物質量と濃度のα乗と分子量のβ乗との
積との関係を示すグラフである。
【図21】分離水量と濃度のα乗と分子量のβ乗との積
との関係を示すグラフである。
【図22】軟度と濃度のα乗と分子量のβ乗との積との
関係を示すグラフである。
【図23】セメントペースト粘度と濃度のα乗と分子量
のβ乗との積との関係を示すグラフである。
【図24】モルタル粘度と濃度のα乗と分子量のβ乗と
の積との関係を示すグラフである。
【図25】左官材料(塗材)の粘度と濃度のα乗と分子
量のβ乗との積との関係を示すグラフである。
【図26】セルフレベリング材の粘度と濃度のα乗と分
子量のβ乗との積との関係を示すグラフである。
【図27】モルタル保水率と濃度のα乗と分子量のβ乗
との積との関係を示すグラフである。
【図28】左官材料(塗材)の保水率と濃度のα乗と分
子量のβ乗との積との関係を示すグラフである。
【図29】セルフレベリング材の保水率と濃度のα乗と
分子量のβ乗との積との関係を示すグラフである。
【図30】セメントペーストのブリーディング率とヒド
ロキシプロピルメチルセルロースの分子量との関係を示
すグラフである。
【図31】モルタルのブリーディング率とヒドロキシプ
ロピルメチルセルロースの分子量との関係を示すグラフ
である。
【図32】セメントペーストのJロート流出時間とヒド
ロキシプロピルメチルセルロースの分子量との関係を示
すグラフである。
【図33】モルタルの0打テーブルフローとヒドロキシ
プロピルメチルセルロースの分子量との関係を示すグラ
フである。
【図34】セルフレベリング材の流動距離とヒドロキシ
プロピルメチルセルロースの分子量との関係を示すグラ
フである。
【図35】セルフレベリング材の流動速度とヒドロキシ
プロピルメチルセルロースの分子量との関係を示すグラ
フである。
【図36】セルフレベリング材の流動性(フロー値、流
動距離)とヒドロキシプロピルメチルセルロースの分子
量との関係を示すグラフである。
【図37】濃度のα乗と分子量のβ乗との積と粘度との
関係を示すグラフである。
【図38】濃度のα乗と分子量のβ乗との積とモルタル
保水率との関係を示すグラフである。
【図39】濃度のα乗と分子量のβ乗との積と左官材料
(塗材)の保水率との関係を示すグラフである。
【図40】濃度のα乗と分子量のβ乗との積とセルフレ
ベリング材の保水率との関係を示すグラフである。
【図41】濃度のα乗と分子量のβ乗との積とセメント
ペーストのJロート流出時間との関係を示すグラフであ
る。
【図42】濃度のα乗と分子量のβ乗との積とセルフレ
ベリング材の流動距離との関係を示すグラフである。
【図43】濃度のα乗と分子量のβ乗との積とセルフレ
ベリング材の流動速度との関係を示すグラフである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セメントに非イオン性セルロースエーテ
    ルを添加したセメント系マトリクスのフレッシュ性状を
    コントロールする方法であって、下記式(1)又は
    (2) K ×(M0.67 ×C1.0) (1) K ×(1/(M0.67 ×C1.0)) (2) (式中、Mは非イオン性セルロースエーテルの分子量、
    Cは非イオン性セルロースエーテルのセメント系マトリ
    クス中での添加量(セメントに対する重量%)を示し、
    は各フレッシュ性状特性値によって決定される定数を
    示す。)に従って非イオン性セルロースエーテルの分子
    量及びセメント系マトリクスへの添加量を選定してセメ
    ント系マトリクスが所望のフレッシュ性状を得るように
    することを特徴とするセメント系マトリクスのフレッシ
    ュ性状のコントロール方法。
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