JP2000094297A - マルチワイヤーソー - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 マルチワイヤーソーの滑車溝の摩耗が少な
く、滑車の寿命が向上されたマルチワイヤーソーの滑車
を提供すること。 【解決手段】 マルチワイヤーソーのワイヤーを巻き付
ける滑車において、滑車外周面のワイヤー巻き付け部分
を硬質材料で構成し、その表面に直接又は中間被膜層を
介して硬質カーボン被膜（ＤＬＣ被膜）を形成する。そ
して、硬質材料は、超硬合金、サーメット又はセラミッ
クスで形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、シリコン、水晶、
磁気ヘッド等の硬脆材料を微小ピッチの精密切断、ある
いは精密溝加工を行うマルチワイヤーソーに関する。

【０００２】

【従来の技術】被加工物に多数の切断加工又は、溝入れ
加工するマルチワイヤーソーにおいて（図２参照）、新
線ボビン１３から供給され切断工具となるワイヤー１
は、多溝滑車３ａ、３ｂの溝に案内され所定ピッチ（図
示しない）で多条配列され、回収ボビン１５へ排出され
る。この多条配列されたワイヤー１を被加工物５に対し
て平行に高速往復走行させ、前記ワイヤー１に被加工物
５を押し付け、ワイヤーと被加工物の接触する、摺動部
に遊離砥粒を供給しながら多数の切断又は多数の溝入れ
加工を行う。ワイヤーを巻き付ける多溝滑車３ａ、３ｂ
の材質には、一般に製作が容易な樹脂材（例えば、超高
分子量ポリエチレン）が使用されている。

【０００３】又、精密切断あるいは精密な溝入れ加工を
行う場合には、多溝滑車３ａ、３ｂの材質をセラミック
ス等の低熱膨張、弾性変形の少ない、硬質材料が使用さ
れている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、樹脂材
の多溝滑車では、熱変形による伸び、ワイヤー張力及び
研磨抵抗の負荷により滑車の溝が変形し、多溝滑車の溝
ピッチ精度が保てず、切断ピッチ精度が悪く、又切断面
にうねりが発生する。この為、後工程での研磨代が増加
し、又歩留まりが低下し生産性が低い。

【０００５】また、精密加工を行う場合に使用されるセ
ラミックス等では、加工精度は良好であるが、ワイヤー
の供給側、及び排出側での滑車溝の摩耗が特に激しく、
滑車寿命が短いという欠点を有している。本発明の目的
は、被加工物を高精度に切断加工でき、且つ多溝滑車の
寿命を向上させるマルチワイヤーソーを提供することで
ある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によるマルチワイヤーソーは、ワイヤーを巻
き付ける多溝滑車を硬質材料で構成し、且つ前記多溝滑
車の外周表面に直接又は中間被膜層を介して硬質カーボ
ン被膜を形成したことを特徴とする。また、前記多溝滑
車を構成する硬質材料を、超硬合金、サーメット又はセ
ラミックスとしたものである。

【０００７】

【発明の実施の形態】被加工物に多数の切断加工、又は
溝入れ加工するマルチワイヤーソーにおいて、図２に示
す如く新線ボビン１３から供給される切断工具となるワ
イヤー１は、多溝滑車３ａ、３ｂの溝に案内され所定の
ピッチ（図示しない）で多条配列され、回収ボビン１５
へ排出される。この多条配列されたワイヤー１を被加工
物５に対して平行に高速往復走行させ、前記ワイヤー１
に被加工物５を押し付け、ワイヤーと被加工物の接触す
る、摺動部に遊離砥粒を供給しながら多数の切断、又は
溝入れ加工を行う。

【０００８】本発明によるマルチワイヤーソーで使用し
ている、ワイヤーを巻き付ける多溝滑車３ａ、３ｂの構
成を図１に基づいて説明する。

【０００９】図１（ａ）は、本発明による多溝滑車の概
略構成図である。図１（ｂ）は、図１（ａ）における多
溝滑車３ａ、３ｂのＡ部断面形状を示す部分拡大図であ
る。前記多溝滑車３ａ、３ｂは、金属材料からなる芯金
４と、芯金４の外周部に形成するワイヤー巻き付け部分
６とから構成され、ワイヤー巻き付け部分６は、超硬合
金、サーメット、又はセラミックスのような硬質材料で
構成し、且つ、前記ワイヤー巻き付け部分６の表面に
は、直接又は中間被膜層を介して非晶質の硬質カーボン
被膜（ＤＬＣ被膜）７ａが形成されている。

【００１０】更に、多溝滑車３ａ、３ｂにおける前記ワ
イヤー巻き付け部分６には、所定のピッチＰでＶ形の溝
２が多数設けられている。多溝滑車３ａ、３ｂの溝２の
作製は、旋盤等の回転装置に滑車を装着し、切削バイト
等の刃物で切削加工、又は研削砥石で研削加工により形
成している。

【００１１】多溝滑車３ａ、３ｂに多数の溝２を形成し
た後、硬質カーボン被膜（ＤＬＣ被膜）７ａを形成す
る。硬質カーボン被膜（ＤＬＣ被膜）７ａは黒色である
が、ダイヤモンドによく似た性質を持つものである。即
ち、硬質カーボン被膜７ａは、ダイヤモンドと同様に、
高い機械的硬度、低い摩擦係数、高い熱伝導率、高い耐
食性を持ち、更に油性、水溶性の研磨液との濡れ性が高
いものであって、炭素を含むガス（例えばベンゼン、メ
タンガス等）を導入した真空層内でプラズマを発生する
ことによってコーティングするものであって、硬質カー
ボン被膜７ａの膜厚は、１μｍから５μｍ程度であり、
被膜の特性を長く維持するためには２μｍから３μｍに
形成することが望ましい。この硬質カーボン被膜７ａの
中間被膜層としては、周期律表第IV族のシリコンやゲル
マニウム及びその化合物、又はシリコンカーバイトやチ
タンカーバイト等の炭素を含む化合物が適当である。

【００１２】

【実施例】ここで、本発明の多溝滑車を使って実際の切
断加工を行い、従来の多溝滑車と本発明の硬質カーボン
被膜を外周面に形成した多溝滑車を比較した。

【００１３】従来の多溝滑車はアルミナセラミックスを
使用し、本発明の多溝滑車はアルミナセラミックスの表
面に厚さ３μｍの硬質カーボン被膜を形成している。そ
して切断加工条件は、下記に記す条件で行った。 被加工物 アルミナチタンカーバイト ５０(mm)×５０(mm)×２(mm) ワイヤー直径 ０．１４ｍｍ ワイヤー走行速度 ２００ｍ／ｍｉｎ 加工速度 ５ｍｍ／ｈ 研磨液 ＧＣ＃１２００をラッピングオイルに混合

【００１４】この切断加工試験の結果、従来の多溝滑車
では、数時間の運転時間で滑車溝が摩耗して、ワイヤー
が断線し加工不能となった。これに対して本発明の硬質
カーボン被膜を外周面に形成した多溝滑車では、被加工
物の連続切断加工試験において、２０時間の運転時間の
後にも滑車溝の摩耗は発生していなかった。

【００１５】

【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
マルチワイヤーソーにおける多溝滑車は、ワイヤーと接
触する滑車外周面であるワイヤー巻き付け部分に硬質カ
ーボン被膜を設ける。この硬質カーボン被膜は黒色を有
し、ダイヤモンドによく似た性質をもつ。すなわち硬質
カーボン被膜は、高い機械的硬度や低い摩擦係数や高い
熱伝導率や高い耐食性を持つものである。さらに、本発
明の多溝滑車は硬質カーボン被膜の下層となる基材であ
る硬質材料（超硬合金、サーメット又はセラミックス）
の構成成分である炭素やチタンが硬質カーボン被膜或い
は中間被膜層と基材との密着性を向上させるとともに、
研磨抵抗の負荷が加わったときにも硬質材料であるため
に変形し難く、大きな振動加速度が加わったときに硬質
カーボン被膜の下面が変形することによって生じる硬質
カーボン被膜の剥離や摩耗も生じ難い効果を有する。ま
た、基材と硬質カーボン被膜の間に中間被膜層を設けた
場合には、相互の密着性が更に向上し、より剥離や摩耗
が生じ難いものとなる。

【００１６】このため本発明のマルチワイヤーソーによ
れば、ワイヤーが接触する多溝滑車の溝の摩耗を抑える
ことができ、滑車寿命及び切断精度が向上し製品歩留ま
り及び生産性が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に使用する多溝滑車の概略構成を示した
正面図。

【図２】本発明によるマルチワイヤーソーの概略構成を
示した正面図。

【符号の説明】

１ ワイヤー ２ Ｖ形の溝 ３ａ、３ｂ 多溝滑車 ４ 芯金 ５ 被加工物 ６ ワイヤー巻き付け部分 ７ａ 硬質カーボン被膜 １１ 上下機構 １３ 新線ボビン １５ 回収ボビン

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 対向して平行に配設された一対の多溝滑
   車を有し、前記多溝滑車の多数の溝に、平行に多条配列
   したワイヤーが高速往復走行し、上記ワイヤーに被加工
   物を押し付け、被加工物とワイヤーの摺動部に遊離砥粒
   を供給しながら、切断又は溝加工を行うマルチワイヤー
   ソーであって、 前記多溝滑車が硬質材料で構成されており、且つその表
   面に直接又は中間被膜層を介して硬質カーボン被膜が形
   成されていることを特徴とするマルチワイヤーソー。
2. 【請求項２】 前記多溝滑車を構成する硬質材料が超硬
   合金、サーメット又はセラミックスであることを特徴と
   する請求項１記載のマルチワイヤーソー。