JP2000072888A - リグノフェノ―ル系成形体、その製造方法、リグノフェノ―ル系成形体の処理方法 - Google Patents

リグノフェノ―ル系成形体、その製造方法、リグノフェノ―ル系成形体の処理方法

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JP2000072888A
JP2000072888A JP11220410A JP22041099A JP2000072888A JP 2000072888 A JP2000072888 A JP 2000072888A JP 11220410 A JP11220410 A JP 11220410A JP 22041099 A JP22041099 A JP 22041099A JP 2000072888 A JP2000072888 A JP 2000072888A
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lignophenol
derivative
lignophenol derivative
molded article
lignin
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JP11220410A
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English (en)
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Masamitsu Funaoka
正光 船岡
Masayuki Maeda
雅之 前田
Masayuki Matsubara
正幸 松原
Karin Kinoshita
果林 木下
Isao Abe
勲 阿部
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MARUTOO KK
Original Assignee
MARUTOO KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】森林資源のリグノセルロース複合体構造の構成
成分であるリグニンを利用した複合体構造によって、容
易に再利用できる新たな成形体を提供する。 【解決手段】ファイバー状、チップ状、粉状等の成形材
料が成形された成形体であって、前記成形体には、リグ
ニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフェノ
ール誘導体が含まれている。リグノフェノール誘導体
は、リグノセルロース系材料にフェノール誘導体を添加
した後、濃酸を添加して得られたフェノール誘導体相と
濃酸相のうち、フェノール誘導体相から得られている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、木材の一構成成
分であるリグニンをフェノール誘導体化して得られるリ
グノフェノール誘導体を利用する技術に関し、詳しく
は、リグノフェノール誘導体を用いて成形体を製造し、
さらに、かかる成形体から再びリグノフェノール誘導体
を回収し再利用する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、工業原料として枯渇の予想される
石油、石炭等の化石資源に代わり、永続的使用が可能な
森林資源に対する関心が高まっている。ここに、森林資
源、すなわち、リグノセルロース系資源は、セルロース
やヘミセルロース等の親水性炭水化物と疎水性のリグニ
ン(ポリフェノール)とから構成され、これらは細胞壁
中で相互侵入高分子網目(IPN)構造をとり、複雑に
絡みあって複合体をなした状態となっている。リグノセ
ルロース系資源には、かかる複合体の構造により、各種
素材としての有用性が付与されている。
【0003】一方、従来からの、かかるリグノセルロー
ス系資源、すなわち、材料としての木材の利用形態を考
えてみると、一つは、複合体のまま、所定形状の建築用
材あるいは家具用材として加工して利用し、あるいは、
木質チップやファイバー等の成形用材料等として利用す
る直接的な利用形態と、複合体の構成成分であるセルロ
ースを抽出してパルプ化する間接的な利用形態とがあ
る。ここに、今後の化石資源の枯渇を考慮して森林資源
の有効利用を考えると、これらの双方の利用形態におい
て、森林資源の再利用を図ることが重要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、現状に
おいては、複合体たる木材をそのまま成形体として利用
する直接的利用形態では、その形状や大きさのために、
再利用が困難であり、使用後には廃棄処分されることが
多い。また、成形用素材として利用する場合には、バイ
ンダーとして熱硬化性樹脂を含有していることから、再
利用が困難であった。このように、直接的利用形態にお
いては、複合体を構成するセルロース等やリグニンにつ
いては、再利用されにくいのが現状であった。さらに、
間接的利用形態においては、ファイバー化とシート化と
を繰り返すことにより、再生利用が図られているもの
の、セルロース以外の構成成分であるリグニンがほとん
ど利用されていない状態にある。以上のように、双方の
利用形態において、リグニンはほとんど再利用されるこ
とがないのが現状である。一方で、リグニンは、地球上
において、セルロースに次いで多量に存在する有機物質
である。しかしながら、上述のように、現状において
は、複合体中のリグニンに着目して、再利用可能な形態
の木材加工体をつくり出すことや木材加工体の再利用を
図ることは全く考えられていない。
【0005】そこで、本発明では、森林資源のリグノセ
ルロース複合体構造の構成成分であるリグニンを利用し
た複合体構造によって、容易に再利用できる新たな成形
体を提供することを目的とする。また、本発明では、リ
グニンを利用した複合体構造をつくり出して、容易に再
利用できる成形体の製造方法を提供することを目的とす
る。また、本発明では、リグニンを利用した成形体から
のリグニン成分を再利用可能に回収する方法を提供する
ことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決する
ために、本発明者は、以下の発明を創作した。すなわ
ち、第1の発明は、ファイバー状、チップ状、粉状等の
成形材料が成形された成形体であって、前記成形体に
は、リグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグ
ノフェノール誘導体が含まれていることを特徴とするリ
グノフェノール系成形体である。この発明によると、リ
グニンがフェノール誘導体化され、成形体材料として利
用される。リグノフェノール誘導体により、成形材料の
一体性が向上される。また、リグノフェノール誘導体
は、リグノフェノール誘導体親和性の溶媒により、成形
体から容易に抽出され、成形材料と分離される。
【0007】この発明においては、前記成形材料は、セ
ルロース系ファイバーであることが好ましい。セルロー
ス系ファイバーは、入手が容易であり、しかも、リグノ
フェノール誘導体と容易に分離され、再び、多用途に利
用されるからである。
【0008】また、この発明においては、前記フェノー
ル誘導体は、クレゾールであることが好ましい。フェノ
ール誘導体をクレゾールとするリグノフェノール誘導体
は、疎水性が大きく、このリグノフェノール誘導体を含
んだ成形体は、疎水性の成形体を形成するからである。
【0009】第2の発明は、ファイバー状、チップ状、
粉状等の成形材料から成形体を製造する方法において、
リグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフ
ェノール誘導体が液化状態で添加されている成形材料に
対して、前記液化状態のリグノフェノール誘導体を固体
化する処理を施すことを特徴とするリグノフェノール系
成形体の製造方法である。この発明によると、成形材料
において、液化状態のリグノフェノール誘導体が固体化
する際に、粘結性を発揮する結果、成形材料に対して接
着性を発揮する。この結果、成形材料の一体性が向上さ
れる。
【0010】また、この発明において、前記リグノフェ
ノール誘導体は、リグノセルロース系材料にフェノール
誘導体を添加した後、濃酸を添加して得られたフェノー
ル誘導体相と濃酸相のうち、フェノール誘導体相から得
られていることが好ましい。この態様によれば、リグノ
セルロース系材料に含まれるリグニン成分が、リグノフ
ェノール誘導体として利用される。リグノセルロース系
材料としては、木材、廃材、端材、草本植物、農産廃棄
物等を用いることができ、リグノセルロース系材料の有
効利用や再利用が図られる。
【0011】さらに、この発明においては、前記成形材
料は、リグノセルロース系材料を解繊して得たセルロー
ス系ファイバーであることが好ましい態様である。前記
成形材料が、リグノセルロース系材料を解繊して得られ
たセルロース系ファイバーであると、リグノセルロース
系材料を用いて、新規な成形体が形成される。しかも、
セルロース系ファイバーは、入手が容易であり、リグノ
フェノール誘導体と容易に分離され、再び、多用途に利
用される。特に、リグノフェノール誘導体がリグノセル
ロース系材料から得られる場合には、リグノセルロース
系材料のセルロース成分とリグニン成分の双方が有効利
用される。
【0012】第3の発明は、リグニンがフェノール誘導
体で誘導体化されたリグノフェノール誘導体を含んでな
る成形体に、アセトン、エタノール、メタノール、ジオ
キサン、及びこれらそれぞれと水との混合液、アルカリ
溶液のうちから選ばれたいずれか1種類のリグノフェノ
ール誘導体親和性溶媒を添加して、リグノフェノール誘
導体を抽出することを特徴とするリグノフェノール系成
形体の処理方法である。この発明によれば、リグノフェ
ノール系成形体からリグノフェノール誘導体が分離抽出
され、再び、リグノフェノール誘導体が利用される。
【0013】この発明において、前記成形材料は、セル
ロース系ファイバーであることが好ましい態様である。
前記成形材料がセルロース系ファイバーであると、リグ
ノフェノール誘導体親和性溶媒で処理された結果、セル
ロース系ファイバーも同時に容易に分離される。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、詳細に説明する。本発明において、リグノフェノー
ル誘導体は、本質的には、リグニンを含有するリグノセ
ルロース系材料から得られる。リグニンを含有するリグ
ノセルロース系材料としては、木質化した材料、主とし
て木材である各種材料、例えば、木粉、チップ、廃材、
端材等を挙げることができる。また、用いる木材の種類
は、針葉樹、広葉樹等、種類を問わないで用いることが
できる。さらに、各種草本植物、それに関連する試料、
例えば農産廃棄物等も用いることができる。
【0015】リグノセルロース系材料から、リグノフェ
ノール誘導体を得るには、かかるリグノセルロース系材
料中のリグニンをフェノール誘導体で処理してリグノフ
ェノール誘導体として、リグノセルロース系材料中から
抽出する必要がある。現在、リグノセルロース系材料中
のリグニンを、リグノフェノール誘導体として抽出する
方法として2種類の方法がある。第1の方法は、特開平
2−233701号公報に記載されている方法である。
例えば、図1に示すように、木粉等のリグノセルロース
系材料に液体状のフェノール誘導体(クレゾール等)を
浸透させ、リグニンをフェノール誘導体により溶媒和さ
せ、次に、リグノセルロース系材料を濃酸(一例として
72%硫酸)を添加して、セルロース成分を溶解する。
この方法によると、リグニンを溶媒和したフェノール誘
導体と、セルロース成分を溶解した濃酸とが2相分離系
を形成する。フェノール誘導体により溶媒和されたリグ
ニンは、フェノール誘導体相が濃酸相と接触する界面に
おいてのみ、酸と接触され、この際生じたリグニンの高
反応サイト(α位)のカチオンが、さらにフェノール誘
導体により攻撃される。この結果、リグノフェノール誘
導体がフェノール誘導体相に生成される(図3参照)。
このフェノール誘導体相から、リグノフェノール誘導体
が抽出される。抽出は、例えば、次の方法で行うことが
できる。すなわち、フェノール誘導体相を、大過剰のエ
チルエーテルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに
溶解する。不溶部を遠心分離により除去し、アセトン可
溶部を濃縮する。このアセトン可溶部を、大過剰のエチ
ルエーテルに滴下し、沈殿区分を集める。この沈殿区分
から溶媒留去した後、五酸化リン入りデシケータ中で乾
燥し、リグノフェノール誘導体とする。なお、粗リグノ
フェノール誘導体は、フェノール誘導体相を単に減圧蒸
留により除去することによって得られる。なお、アセト
ン可溶部を、そのままリグノフェノール誘導体溶液とし
て、成形体の製造に用いることもできる。
【0016】第2の方法は、図2に示すように、リグノ
セルロース系材料に、固体状あるいは液体状のフェノー
ル誘導体を溶解した溶媒(例えば、エタノールあるいは
アセトン)を浸透させた後、溶媒を留去する(フェノー
ル誘導体の収着工程)。次に、このリグノセルロース系
材料に濃酸を添加してセルロース成分を溶解する。この
結果、第1の方法と同様、フェノール誘導体により溶媒
和されたリグニンは、フェノール誘導体と濃酸とが接触
する界面において、酸と接触し、フェノール誘導体によ
り攻撃されて、リグノフェノール誘導体が生成される。
そして、第1の方法と同様にして、フェノール誘導体化
されたリグノフェノール誘導体を液体フェノール誘導体
にて抽出する。液体フェノール誘導体相からのリグノフ
ェノール誘導体の抽出も、第1の方法と同様にして行う
ことができる。あるいは、濃酸処理後の全反応液を過剰
の水中に投入し、不溶区分を遠心分離にて集め、透析
し、乾燥する。この乾燥物にアセトンあるいはアルコー
ルを加えてリグノフェノール誘導体を抽出する。さら
に、この可溶区分を第1の方法と同様に、過剰のエチル
エーテル等に滴下して、リグノフェノール誘導体を不溶
区分として得る。この方法においても、同様に、アセト
ン可溶部をリグノフェノール誘導体溶液として、成形体
の製造に用いることができる。
【0017】これらの2種類の方法においては、第2の
方法が、なかでも特に後者、すなわち、リグノフェノー
ル誘導体をアセトンあるいはアルコールにて抽出分離す
る方法が、フェノール誘導体の使用量が少なくてすむた
め、経済的である。また、この方法が、少量のフェノー
ル誘導体で、多くのリグノセルロース系材料を処理でき
るため、リグノフェノール誘導体の大量合成に適してい
る。
【0018】図4には、これらの方法におけるリグニン
側鎖のα位にフェノール誘導体が選択的に導入される状
態を示す。さらに、図5には、これらの方法にる、天然
リグニンから、リグノフェノール誘導体への変換工程
が、天然リグニンと、リグノフェノール誘導体の部分的
構造の変化を示すことにより表されている。
【0019】これらの方法に用いられるフェノール誘導
体としては、1価のフェノール、2価のフェノール、3
価のフェノール等を用いることができる、1価のフェノ
ールとしては、例えば、フェノール、クレゾールなどの
アルキルフェノール、メトキシフェノール、ナフトール
を挙げることができる。2価のフェノールとしては、例
えばカテコール、アルキルカテコール、レゾルシノー
ル、アルキルレゾルシノール、ハイドロキノン、アルキ
ルハイドロキノン等を挙げることができる。3価のフェ
ノールとしては、ピロガロール等を挙げることができ
る。このようなフェノール誘導体により合成されたリグ
ノフェノール誘導体の疎水性は、リグノモノフェノール
誘導体が最も疎水性が高く、リグノジフェノール誘導
体、リグノトリフェノール誘導体の順に疎水性が低下す
る。このため、疎水性成形体の製造を意図する場合に
は、リグノフェノール誘導体の合成に際して1価フェノ
ールをフェノール誘導体として用いるのが好ましく、特
に、コスト及び安定性及び取り扱い易さを考慮するとク
レゾールがより好ましい。
【0020】なお、リグノフェノール誘導体は、リグノ
フェノール誘導体が含まれたリグノフェノール系成形体
から回収されたリグノフェノール誘導体を用いることも
できる。かかるリグノフェノール系成形体から、アセト
ン、エタノール、メタノール、ジオキサン、これらそれ
ぞれと水の混合液、アルカリ溶液から選ばれた1種類以
上の溶媒に浸すことにより、この溶媒中に、リグノフェ
ノール誘導体は回収される。このリグノフェノール誘導
体は、再利用可能である。この方法によると、リグノフ
ェノール誘導体が繰り返し再利用することができ、資源
の有効利用につながる。
【0021】リグノフェノール系成形体の製造に用いる
成形材料としては、天然あるいは合成の、ファイバー
状、チップ状、粉状等の材料を用いることができる。成
形材料の形態は、これらの形態に限定するものではな
く、広く公知の各種形態のものを用いることができる。
ファイバー状の成形材料としては、天然、合成の各種炭
化水素系ファイバー、金属ファイバー、ガラスファイバ
ー、セラミックスファイバー等、あるいはこれらのリサ
イクルファイバー等の各種ファイバーを用いることがで
きる。なかでも、セルロース系ファイバーが、入手が容
易である点で好ましい。セルロース系ファイバーとして
は、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ、及
びこれらのリサイクルパルプ等を、さらには、これらの
パルプを原料として合成される人造の各種セルロース系
ファイバー等を用いることができる。
【0022】かかるセルロース系ファイバーの原料とし
ては、針葉樹や広葉樹を原料とする木材繊維、コウゾ、
ケナフ、マニラ麻、ワラ、バガスなどの非木材繊維のい
ずれをも利用可能である。また、セルロース系ファイバ
ーは、リグノセルロース系材料から製造されたパルプ加
工品であるボール紙、新聞紙等の各種製品を解繊して得
たものを用いることもできる。
【0023】また、チップ状の成形材料としては、天
然、合成の各種炭化水素系、金属系、ガラス系、セラミ
ックス系等の各種材料のものを用いることができる。炭
化水素系のチップとしては、木材あるいは木材以外を材
料とする天然のセルロース系チップを挙げることがで
き、金属系のチップとしては、アルミチップを挙げるこ
とができ、セラミックス製チップとしては、Al2 O
3 やSiO2 のチップを挙げることができる。ま
た、粉状の成形材料としては、上記チップ状の材料と同
様の材料を用いた、粉砕により、あるいは本来的に粉状
の成形材料を用いることができる。
【0024】リグノフェノール誘導体を用いて成形体を
形成するには、成形材料にリグノフェノール誘導体を液
化状態で添加されている状態とし、この液化状態にある
リグノフェノール誘導体を固体化する。リグノフェノー
ル誘導体は、液化状態から固体へ変化する際に粘結性を
発揮する。すなわち、溶媒に溶解した状態から溶媒が留
去されて固体として析出された際、あるいは、それ自体
が溶融している状態から冷却により固体化する際に、粘
結性を発揮する。このような粘結性発揮プロセスを利用
することにより、リグノフェノール誘導体を成形材料を
接着するバインダーとして用いることができる。したが
って、リグノフェノール誘導体は、成形体の製造に際し
ては、リグノフェノール誘導体溶液で成形材料に添加さ
れて溶媒留去されるプロセス、あるいは、固体状態で添
加されて、加熱溶融、冷却されるプロセスを経ることに
なる。ここに、リグノフェノール誘導体溶液とは、リグ
ノフェノール誘導体を、アセトン、エタノール、メタノ
ール、ジオキサン、及びこれらのそれぞれと水との混合
液に溶解したものを用いることができる。また、リグノ
セルロース系材料からのリグノフェノール誘導体を合成
分離する工程において、得られるリグノフェノール誘導
体溶液も用いることができる。
【0025】例えば、成形方法として図6〜9に示す工
程からなる方法を挙げることができる。図6に示すよう
に、セルロース系ファイバーを成形し、この成形体に、
リグノフェノール誘導体溶液を含浸した後、溶媒を留去
する。溶媒の留去によりリグノフェノール誘導体は粘結
性を発揮し、成形材料に対して接着性を発揮する。この
結果、リグノフェノール誘導体が添着されて、リグノフ
ェノール誘導体がバインダーとして作用した状態のリグ
ノフェノール系成形体が得られる。必要があれば、さら
に、この成形体を加圧及び/ 又は加熱して成形してもよ
い。
【0026】また、図7に示すように、セルロース系フ
ァイバーを成形し、リグノフェノール誘導体溶液を含浸
する。この後、この成形体を加圧及び/ 又は加熱するこ
とにより、同時に溶媒を留去させる。溶媒の留去により
リグノフェノール誘導体は粘結性を発揮し、成形材料に
対して接着性を発揮する。この結果、リグノフェノール
誘導体がバインダーとして作用した状態のリグノフェノ
ール系成形体が得られる。
【0027】図6及び図7に示す方法によると、溶媒留
去のステップで、リグノフェノール誘導体は、成形体の
表層側に移動する。すなわち、成形体の表層にリグノフ
ェノール誘導体が多く添着された状態となる。したがっ
て、少量のリグノフェノール誘導体の添着で、表層側に
リグノフェノール誘導体を多く存在させることができる
ため、表層側でのリグノフェノール誘導体のバインダー
作用によって、効率よく耐水性と強度が付与された成形
体を得ることができる。
【0028】さらに、図8に示すように、成形されてい
ない状態のセルロース系ファイバーにリグノフェノール
誘導体溶液を含浸した後、溶媒を留去する。この後、こ
のファイバーを加熱・加圧して成形する。この方法によ
れば、リグノフェノール誘導体が、溶媒留去プロセスに
よって粘着性を発揮したことによりファイバーに添着さ
れている。このように、予めリグノフェノール誘導体が
添着されたファイバーを用いて、加熱・加圧成形するこ
とにより、全体に均一にリグノフェノール誘導体が含有
された成形体を形成することができる。したがって、こ
の方法は均一な物性を有する成形体の製造法として好ま
しい。
【0029】さらに、図9に示すように、セルロース系
ファイバーに、粉末状のリグノフェノール誘導体を混合
して、加熱・加圧して成形する。なお、最終的な成形に
先んじて、加圧して仮成形することもできる。かかる仮
成形体に対しては、その後、加熱して成形し、必要あれ
ば、加圧する。この方法によると、溶媒留去の工程が不
要となる。また、成形体の全体に均一にリグノフェノー
ル誘導体が含有された成形体を形成することができ、均
一な物性を有する成形体を製造できる。
【0030】なお、各種成形材料とリグノフェノール誘
導体とから成形体を製造するに際しては、用いる成形材
料の種類によって、成形前の仮成形工程、あるいは成形
方法を各種選択し、付加し、さらに、他の追加的工程も
付加することができる。例えば、成形材料としてファイ
バー状のパルプを用いる場合には、成形体を形成するの
に、湿式法あるいは乾式法があり、湿式法と乾式法で
は、仮成形方法等も異なっている。
【0031】このような方法によって成形された成形体
は、リグノフェノール誘導体の添着により、強度が向上
される。また、リグノフェノール誘導体は疎水性である
ために、耐水性が向上される。さらに、同時に、成形体
の吸水性及び吸水による膨張性を低下させ、成形体に寸
法安定性を付与することができる。
【0032】さらに、図10に示すように、リグノフェ
ノール系成形体に再び溶媒を添加することによって、フ
ァイバーとリグノフェノール誘導体とに分離して、それ
ぞれを回収することができる。リグノフェノール誘導体
は、リグノフェノール系成形体からリグノフェノール誘
導体親和性溶媒により、溶媒中に抽出される。この場
合、リグノフェノール誘導体親和性溶媒としては、アセ
トン、エタノール、メタノール、ジオキサン、これらそ
れぞれと水との混合液、アルカリ水溶液等を挙げること
ができる。簡便さを考慮すれば、アセトン、アルコール
が好ましい。また、コストを考慮すると、アルカリ水溶
液が好ましい。
【0033】具体的には、成形体の原型を維持した状
態、あるいは小片に加工した状態で、リグノフェノール
誘導体親和性溶媒に浸漬し、あるいは、浸漬に加えて攪
拌する。この結果、リグノフェノール誘導体は、溶媒中
に溶出される。成形体を小片とするとともに、溶媒中で
攪拌することにより、迅速な分離抽出が可能となる。ま
た、成形体原型を維持したい場合には、リグノフェノー
ル誘導体親和性溶媒でも非水系の溶媒(例えばアセト
ン)に浸漬して、攪拌することなく放置して抽出する。
特に、成形材料がセルロース系である場合に、リグノフ
ェノール誘導体を抽出すると同時に、成形体を解繊等し
て成形材料に分解したい場合には、アルカリ水溶液に浸
漬し、攪拌を行う。
【0034】このように、回収されたリグノフェノール
誘導体は、再び、成形体の製造をはじめ各種分野におい
て利用することができる。また、同時に分離された成形
材料も、再び、成形体の製造をはじめとする各種加工品
に利用することができる。
【0035】本発明によれば、各種リグノセルロース系
材料に対して、フェノール誘導体と濃酸による相分離系
プロセスを経て、リグノフェノール誘導体を分離し、こ
のリグノフェノール誘導体と各種ファイバーとの複合化
による成形体を製造する。成形体中のリグノフェノール
誘導体は、成形体から分離される。したがって、リグノ
フェノール誘導体を成形体の材料として用いることによ
り、成形体の製造と分解とを繰り返し行えることにな
る。したがって、リグノセルロース系材料を有効に再利
用できる。
【0036】
【実施例】以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説
明する。以下の実施例においては、リグノフェノール誘
導体を用いたセルロース系ファイバーの成形体の製造及
び成形体からのリグノフェノール誘導体の回収について
説明する。
【0037】(実施例1) (リグノフェノール誘導体の合成)リグノセルロース系
材料として、クロマツ(Pinus Thunbergii)を用い、以
下の工程に従って、リグノフェノール誘導体としてリグ
ノクレゾールを合成した。すなわち、クロマツ脱脂木粉
100gに、このクロマツ脱脂木粉中のリグニンC9
単位あたり2molのp−クレゾールを含むアセトン溶
液を加えて一夜放置して、木粉にp−クレゾールを含浸
させた。その後、木粉をバットに薄く広げて、アセトン
臭がなくなるまで、ドラフト中で放置して、アセトンを
留去した。なお、クロマツ脱脂木粉中のリグニンのC9
単位量は、クロマツ脱脂木粉中のリグニンの元素分析
に基づいて算出されている。
【0038】次に、この全量に72%硫酸400mlを
加え、30℃の水浴に浸して60分間激しく攪拌した、
所定時間経過後、攪拌を停止し、反応を停止させるため
に、反応溶液を冷却下の大過剰のイオン交換水に激しく
攪拌しながら少量づつ加え、全量を4000mlとし
た。約60分後、攪拌を停止し、不溶解物を遠心分離に
より分離した。不溶解物は、透析膜に入れて流水及び大
量のイオン交換水で透析し、透析膜外の水のpHが6に
なり、かつ、ジアゾ化スルファニル酸によるp−クレゾ
ールの発色がなくなるまで透析を行った。透析終了後、
内容物を遠心分離し、沈殿物を60℃の乾燥機中で乾
燥、さらに、五酸化二リン上で減圧乾燥した。乾燥させ
た沈殿物はアセトン600mlで抽出し、遠心分離後、
上澄液をリグノクレゾール−アセトン溶液として得た。
【0039】(セルロース系ファイバーマットの調製)
本実施例では、リグノセルロース系材料として、再生
紙、ダンボール、及び新聞紙を用い、それぞれ25g
を、一晩水に浸し、小型拡散機(ULTRA-TURRAX T-250 J
ANKE &KUNKEL IKA-Labortechnik )で十分に解繊後、直
径約10cmの円筒を用いて、マットを製造した。各種
マットを脱水後、60℃の乾燥機中で乾燥し、重量を測
定した。
【0040】(セルロース系ファイバーマットへのリグ
ノクレゾールの添着)再生紙、ダンボール、新聞紙から
形成した各種マットについて、リグノクレゾールが5%
及び/又は10%の割合で添着させた。すなわち、前記
リグノクレゾール−アセトン溶液を適宜希釈して添着用
溶液を調製し、直径10cmの円筒状のステンレス容器
中にて、各種マットに対してリグノクレゾール添着量が
5%、あるいは10%となるように前記した添着用溶液
の所定量を加えて、この溶液に一晩浸して、マット内に
添着用溶液を十分に浸透させた。その後、1時間毎にマ
ットの上下面を返しつつ、アセトンを徐々に蒸発させ、
リグノクレゾールをセルロース系ファイバーマットへ添
着させた。
【0041】目視にて、容器内にアセトンがなくなった
時点で、マットを容器から取り出し、常温の送風乾燥器
中でマット内部に残存するアセトンを蒸発させた。さら
に、60℃の温度の乾燥器内で乾燥し、重量を測定し
た。リグノクレゾール添着後の重量からマットの初期重
量を差し引いて、リグノクレゾール添着量を算出した。
【0042】(リグノクレゾール添着マットからのボー
ドの作製)各種リグノクレゾール添着マットにつき、以
下の条件により圧締して、各種ボードを作製した。 圧締条件 Initial pressing 50kg/cm2、 3min Breathing 5kg/cm2、 2min Holding 50kg/cm2、 5min Temperature 170℃ 作製したボードのサイズは、直径10cm,厚さ約4.
5mmであった。なお、比較対照のために、各種リグノ
セルロース系材料を原料とするマットを調製し、リグノ
クレゾールを添着工程を行わない以外は、全く実施例と
同様の工程によって、各種コントロールボードを作製し
た。各コントロールボードのサイズは、直径10cm,
厚さ約4.5mmであった。
【0043】このようにして調製した各種ボード等につ
いて、以下の項目について試験を行った。 (マット及びボードの外観)各種マット及びボードを目
視にて観察した。再生紙マットは、全体的に茶色に着色
しており、このマットを熱圧締して作製したボードは、
色調が、均一に、濃色化されていた。この結果から、熱
圧締においても、リグノクレゾールはマット内部に保持
されていることがわかった。
【0044】また、ダンボールマットは、全体的に茶褐
色に着色され、このマットを熱圧締して作製したボード
は、均一に濃色化されていた。新聞紙マットも、上記2
種のマットと同様に、均一に着色しており、色調は、赤
みを帯びた灰色であった。また、このマットを熱圧締す
ることにより、色調は黒色に変化した。なお、いずれの
マットにおいても、マットを軽く叩くと、プラスチック
のような音と感触が得られた。
【0045】(ボードの強度試験)作製したボードを、
20mm×90mm×4.5mmの大きさに裁断して試
験体とし、スパン長を80mmとして、インストロン万
能試験機1000型(INSTRON CORPORA
TION製)を用いて荷重−たわみ曲線を測定し、この
曲線から、曲げヤング係数(MOE)及び曲げ破壊係数
(MOR)を算出した。なお、本強度試験は、試験体の
サイズとスパン長以外については、JISA5905に
基づいて行った。
【0046】結果を、表1に示す。
【表1】
【0047】この結果から、いずれの成形材料を用いた
成形体においても、それぞれのコントロールに比較し
て、ヤング係数及び曲げ破壊係数とも上昇していた。し
たがって、リグノフェノール誘導体を成形体にバインダ
ーとして添着することにより、成形体の強度を向上させ
ることができることが明らかであった。
【0048】(ボードの吸水試験)再生紙及びダンボー
ルのコントロールボードと、ファイバー重量当たり約5
%、10%量のリグノクレゾールを添着した再生紙ボー
ド及びダンボールボードを25℃の水に浸し、ボードの
上面を水面下3cmに維持するべく、金網を重りとしてボ
ード上面に載置して、1時間放置した。所定時間経過
後、浸漬したボードを取出し、ステンレスバットの上に
壁面に立てかけて10分間放置した。10分後に、サン
プル表面に残った水滴を除去し、その後、重量及び寸法
を測定した、得られた値からボードの吸水率及び体積膨
張率を測定した。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】この表から明らかなように、再生紙ボード
では、コントロールボードが200%以上の吸水率を呈
したのに対し、5%及び9%添着ボードにおいて、それ
ぞれ72%、41%と、著しく低い吸水率を呈した。ま
た、膨張率についても、コントロールボードでは、18
8%であるのに対して、5%ボードでは88%、9%ボ
ードでは20%であった。このように、添着ボードにあ
っては、コントロールに比して、いずれも低い吸水率及
び膨張率を呈し、リグノクレゾールの添着量が多い方
が、低い吸水率と膨張率を呈した。
【0051】また、ダンボールボードにおいては、コン
トロールボードが200%近い吸水率を呈したのに対
し、リグノクレゾール添着ボード(5%、8%)は、そ
れぞれ15%、28%の低い吸水率であった。また、膨
張率は、コントロールボードが200%近いのに対し、
添着ボード(5%。9%)では、それぞれ27%、24
%であった。このように、ダンボールボードにおいて
も、コントロールボードに比較して、著しく低い吸水率
及び膨張率を有していた。また、ダンボールボードは、
再生紙ボードに比較して、コントロールボードに対する
低下率が大きかった。
【0052】これらの結果から、リグノクレゾールを成
形材料に添着することによって、ボードの吸水性及び膨
張性を低下して、この結果、湿気に対する寸法安定性が
付与されることになっていた。
【0053】(ボードからのリグノクレゾール回収試
験)再生紙のファイバーマットから、2cm×2cmサ
イズのブロックを切り出し、これに10%量のリグノク
レゾールを添着後、上記条件にて加圧、加熱し、回収試
験用ボードを調製した。このボードをバイアル中でアセ
トン約30mlに浸した。攪拌等を行うことなく、2日
間放置後、浸漬液をろ過し、アセトンで洗浄後、ろ液及
び洗浄液を合わせ、アセトンを留去後、抽出画分を回収
リグノクレゾールとした。結果を表3に示す。
【表3】
【0054】この結果から明らかなように、このボード
に添着されていたリグノクレゾールの97%を回収する
ことができた。また、ボードをアセトンに浸漬した際、
速やかにアセトンが黄色に着色すると同時にボード表面
は、茶色から白色に変色されており、リグノクレゾール
が、ボードの表面から抽出されたことが明らかであっ
た。さらに、アセトン中から得られたリグノクレゾール
について、ゲルクロマトグラフィーにより分子量分布を
確認したところ、添着したリグノクレゾールの分子量分
布と大きく変わりはなく、熱圧締によって、リグノクレ
ゾールの縮合が生じていないことが確認された。ゲルク
ロマトグラフィーの結果を図11に示す。したがって、
成形体から回収されたリグノクレゾールは、再び利用で
きるものとなっていた。なお、本実施例においては、抽
出時において、攪拌、解繊処理を行っていないためボー
ドは、初期の形態を維持していた。
【0055】これらの試験結果から、リグノクレゾール
を添加したボードは、リグノクレゾールを添着いないボ
ードに比して、強度が向上されるとともに、吸水性、膨
潤性が低下され、ボードとしてより好ましい機能が付与
されたことがわかった。
【0056】(実施例2)次に、再生紙を成形材料の原
料として用いて、加圧しないでボードを作製した例につ
いて説明する。 (リグノフェノール誘導体の合成)リグノフェノール誘
導体の合成は、実施例1と同様にクロマツ脱脂木粉を用
いて、同様の方法により、リグノクレゾール−アセトン
溶液を得た。
【0057】(セルロース系ファイバーの調製)本実施
例では、リグノセルロース系材料として、再生紙(KO
KUYO KB−K39)を用いる他は、実施例1と同
様にして解繊後、直径約10cmの円筒を用いて、マッ
トを製造した。各マットを脱水後、60℃の乾燥機中で
乾燥し、重量を測定した。
【0058】(セルロース系ファイバーマットへのリグ
ノクレゾールの添着)前記再生紙から形成したマットに
ついて、実施例1と同様にして、リグノクレゾールをセ
ルロース系ファイバーに添着させた。本実施例において
は、マットに対して5、10、20%の割合でリグノク
レゾールを添着するようにした。さらに、実施例1と同
様に、アセトンを蒸発させた。さらに、一部のマットに
つき、170℃で60分間加熱して、加熱処理ボードを
作製した。これら2種類(加熱処理無/加熱処理有)の
マットについて、60℃の温度の乾燥器内で乾燥し、重
量を測定した。リグノクレゾール添着後の重量からマッ
トの初期重量を差し引いて、それぞれのリグノクレゾー
ル添着量を算出した。作製したボードのサイズは、それ
ぞれ直径約10cm、厚み9mmであった。なお、比較対照
のために、同じ再生紙を材料として、リグノクレゾール
を添着工程を行わない以外は、全く実施例と同様の工程
によって、2種類(加熱処理無/加熱処理有)のコント
ロールボードを作製した。
【0059】これらのボードにつき、実施例1と同様
に、外観、強度、吸水性、リグノクレゾールの回収試験
を行った。但し、強度試験は、試験体のサイズを20m
m×90mm×9mmとして行った。
【0060】試験結果を以下に示す。 (外観)ボードの外観は、加熱処理したものと加熱処理
しないものとでは、着色程度が異なり、加熱処理ボード
では、より茶褐色を呈していた。 (強度)結果を表4及び図12に示す。
【表4】
【0061】表4及び図12から明らかなように、いず
れの添着量においても、加熱処理の有無によってボード
の強度に大きな差は認められなかった。
【0062】(吸水性及び膨張性)結果を表5及び6及
び図13及び14に示す。
【表5】
【表6】 * 吸水前の体積に対する膨張率
【0063】この試験結果から明らかなように、リグノ
クレゾールの添着量が5%以下では、加熱処理をしない
ボードの方が吸水率が大きく、10%、20%添着ボー
ドでは、加熱処理の有無で差は認められなかった。ま
た、体積膨張率についても、添着量が5%以下の場合に
は、加熱処理をしないボードの方が、加熱処理をしたボ
ードよりも体積膨張率が大きく、10%、20%添着ボ
ードでは、両者に大きな差はなく、吸水率の結果に対応
していた。すなわち、添着量によっては、加熱処理が有
効に作用して、リグノクレゾールのバインダー作用を向
上させることができる場合があることが示された。
【0064】(回収率)10%添着の加熱処理をしない
ボード及び加熱処理ボードについて試験した結果は、そ
れぞれ、100.0%、96.4%であった。また、そ
れぞれから回収されたリグノクレゾールにつき、ゲルパ
ーミエーションクロマトグラフィーを行って分子量分布
を確認したところ、図15に示すように、いずれのリグ
ノクレゾールも、添着に用いたリグノクレゾールの分子
量分布とかわりなく、ボード作製の際に、縮合が生じて
いないことが確認された。
【0065】
【発明の効果】このように第1の発明及び第2の発明に
よれば、森林資源のリグノセルロース複合体構造の構成
成分であるリグニンを有効に利用して、繰り返し利用で
きる成形体を提供することができ、森林資源を有効に利
用することができる。また、第3の発明によれば、リグ
ニンを利用した成形体から、リグニン成分を再利用可能
に回収することができ、森林資源のリグニン成分を有効
に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リグノフェノール誘導体を合成する第1の方法
を示した図である。
【図2】リグノフェノール誘導体を合成するための第2
の方法を示した図である。
【図3】フェノール誘導体相と濃酸相との2相分離系に
おける、フェノール誘導体相の界面での濃酸との接触を
介したリグニンとフェノール誘導体との反応を示した図
である。
【図4】リグニンの側鎖のα位にフェノール誘導体が選
択的に導入される状態を示す図である。
【図5】リグニンの側鎖のα位にフェノール誘導体が導
入されることにより構造変換されるリグニンの部分的構
造を示した図である。
【図6】セルロース系ファイバーを用いたリグノフェノ
ール系成形体の製造工程を示す図である。
【図7】セルロース系ファイバーを用いたリグノフェノ
ール系成形体の成形体の製造工程を示す図である。
【図8】セルロース系ファイバーを用いたリグノフェノ
ール系成形体の成形体の製造工程を示す図である。
【図9】セルロース系ファイバーを用いたリグノフェノ
ール系成形体の成形体の製造工程を示す図である。
【図10】リグノフェノール系成形体からのリグノフェ
ノール誘導体の回収工程を示す図である。
【図11】実施例1のリグノフェノール系成形体から回
収されたリグノフェノール誘導体のゲルクロマトグラフ
ィーのクロマトグラムを示す図である。
【図12】実施例2のリグノフェノール系成形体の強度
試験結果を示す図である。
【図13】実施例2のリグノフェノール系成形体の吸水
性試験結果を示す図である。
【図14】実施例2のリグノフェノール系成形体の膨潤
率試験結果を示す図である。
【図15】実施例2のリグノフェノール系成形体から回
収されたリグノフェノール誘導体のゲルクロマトグラフ
ィーのクロマトグラムを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松原 正幸 静岡県清水市殿沢2−3−10 (72)発明者 木下 果林 三重県津市栗真町屋町1089 町屋ハイツ 203 (72)発明者 阿部 勲 三重県安芸郡安濃町清水 清水ケ丘団地 903−41

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ファイバー状、チップ状、粉状等の成形材
    料が成形された成形体であって、 前記成形体には、リグニンがフェノール誘導体で誘導体
    化されたリグノフェノール誘導体が含まれていることを
    特徴とするリグノフェノール系成形体。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のリグノフェノール系成形
    体において、 前記成形材料は、セルロース系ファイバーであることを
    特徴とするリグノフェノール系成形体。
  3. 【請求項3】請求項1又は2に記載のリグノフェノール
    系成形体において、 前記フェノール誘導体がクレゾールであることを特徴と
    するリグノフェノール系成形体。
  4. 【請求項4】ファイバー状、チップ状、粉状等の成形材
    料から成形体を製造する方法において、 リグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフ
    ェノール誘導体が液化状態で添加されている成形材料に
    対して、前記液化状態のリグノフェノール誘導体を固体
    化する処理を施すことを特徴とするリグノフェノール系
    成形体の製造方法。
  5. 【請求項5】請求項4に記載のリグノフェノール系成形
    体の製造方法において、 前記リグノフェノール誘導体は、リグノセルロース系材
    料にフェノール誘導体を添加した後、濃酸を添加して得
    られたフェノール誘導体相と濃酸相のうち、フェノール
    誘導体相から得られていることを特徴とするリグノフェ
    ノール系成形体の製造方法。
  6. 【請求項6】請求項4又は5に記載のリグノフェノール
    系成形体の製造方法において、 前記成形材料は、リグノセルロース系材料を解繊して得
    たセルロース系ファイバーであることを特徴とするリグ
    ノフェノール系成形体の製造方法。
  7. 【請求項7】リグニンがフェノール誘導体で誘導体化さ
    れたリグノフェノール誘導体を含んでなる成形体に、ア
    セトン、エタノール、メタノール、ジオキサン、及びこ
    れらそれぞれと水との混合液、アルカリ溶液のうちから
    選ばれたいずれか1種類のリグノフェノール誘導体親和
    性溶媒を添加して、リグノフェノール誘導体を抽出する
    ことを特徴とするリグノフェノール系成形体の処理方
    法。
  8. 【請求項8】請求項7に記載のリグノフェノール系成形
    体の処理方法において、 前記成形材料は、セルロース系ファイバーであることを
    特徴とするリグノフェノール系成形体の処理方法。
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