JP3749688B2 - リグノフェノール誘導体と成形材料との複合化 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、リグニンをフェノール誘導体化して得られる化合物の利用技術に関し、詳しくは、リグノセルロースをフェノールで溶媒和した後に濃酸と接触させることにより得られるリグノフェノール誘導体と成形材料とのとの複合化技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物資源から採取されるリグノセルロースをフェノールで溶媒和した後、濃酸と接触させて得られるリグノフェノール誘導体が知られている(特開平9−278904号公報等)。
近年、かかるリグノフェノール誘導体を、植物資源由来の原料と複合化して成形体として利用することが試みられている。この場合、リグノフェノール誘導体は、少なくともバインダー機能を有している。
【0003】
リグノフェノール誘導体を、バインダーとしての側面からみてみると、従来のいわゆるバインダーとは性質が大きく異なっている。例えば、セルロースファイバーの成形体を、リグノフェノール誘導体の溶液に浸漬し、その後、リグノフェノール誘導体溶液を含浸した成形体から溶媒を留去させることによりリグノフェノール・ファイバー複合体を得ることができる。この場合、溶媒留去の際に、リグノフェノールが成形体表層に移行するため、表層側にはリグノフェノール誘導体の高含有層が形成される一方、内部にリグノフェノール誘導体の低含有部位が形成されるという現象が生じる。
したがって、原料との混合工程及びその成形工程等において、その性質を生かして、より強くあるいはより加工性のよい複合化技術が求められている。しかしながら、現在のところ、リグノフェノール誘導体を植物資源由来の原料とを複合化して成形体を得る場合において、その機能をより高く発現させる手法については見出されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、リグノフェノール誘導体を成形材料と複合化して成形体を得るのに際して、リグノフェノール誘導体の機能を高発現させることのできる複合化技術を提供することを、その目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するべく、本発明者らは、複合化工程における、リグノフェノール誘導体の使用形態、成形工程に着目して、研究した結果、リグノフェノール誘導体の特性に適した、成形材料との複合化技術を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0006】
(1) 成形体の製造方法であって、
フェノール誘導体が添加された植物資源由来材料と濃酸とを接触して得られるリグノフェノール誘導体を含有する組成物と成形材料とを含む成形前駆体を水相又は空気相を分散媒体として形成する工程と、
前記成形前駆体の成形空間内で水蒸気を発生させるかあるいは該成形空間の外部から水蒸気を供給しつつ前記成形前駆体を成形する工程と、
を備える、製造方法。
(2) 前記成形工程は、加圧及び加熱を伴う工程である、1に記載の製造方法。
(3) 前記成形材料は、植物系成形材料である、1又は2に記載の製造方法。
(4) 前記成形材料は、セルロース系材料又はリグノセルロース系材料である、(3)に記載の製造方法。
(5) 前記リグノフェノール誘導体含有組成物は、炭水化物及び/又はフェノール誘導体を含有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6) 前記リグノフェノール誘導体含有組成物は、フェノール誘導体と酸とを含有する、(5)に記載の製造方法。
(7) 前記リグノフェノール誘導体含有組成物は、フェノール誘導体で溶媒和された植物資源由来材料を濃酸と接触させた後の混合物に過剰の水を添加して得られる水不溶画分を含有する、(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8) 前記リグノフェノール誘導体含有組成物は、フェノール誘導体で溶媒和された植物資源由来材料を濃酸と接触させた後の混合物に過剰の水を添加して得られる水不溶画分のリグノフェノール誘導体親和性溶媒に対する不溶画分を含有する、(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(9) 前記植物資源由来材料に添加されるフェノール誘導体はクレゾールである、(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10) フェノール誘導体が添加された植物資源由来材料と濃酸とを接触して得られるリグノフェノール誘導体と、
炭水化物及び/又はフェノール誘導体と、
を含有する、成形用バインダーであって、
フェノール誘導体で溶媒和された植物資源由来材料を濃酸と接触させた後の混合物に過剰の水を添加して得られる水不溶画分のリグノフェノール誘導体親和性溶媒に対する不溶画分を含む、バインダー。
(11) フェノール誘導体と酸とを含有する、(10)に記載の成形用バインダー。
(12) フェノール誘導体で溶媒和された植物資源由来材料を濃酸と接触させた後の混合物に過剰の水を添加して得られる水不溶画分を含有する、(10)又は(11)に記載の成形用バインダー。
(13) 前記植物資源由来材料に添加されるフェノール誘導体はクレゾールである、(10)〜(12)のいずれかに記載の成形用バインダー。
(14) 成形体であって、
(1)〜(9)のいずれかに記載の成形体の製造方法によって得られる、成形体。
(15) 前記成形材料は、セルロース系材料又はリグノセルロース系材料である、(14)に記載の成形体。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に包含される一つの方法は、フェノール誘導体で溶媒和された植物資源由来原料を濃酸と接触させて得られるリグノフェノール誘導体を含有する組成物と成形材料とを空気相または水相を分散媒体として成形前駆体を形成する工程と、
この成形前駆体を少なくとも加熱を伴って成形する工程、
とを備えている。
本発明においては、成形前駆体形成に先立って、リグノフェノール誘導体粉末と成形材料とが混合されている。このため、成形前駆体において均一にリグノフェノール誘導体粉末が分散されている。さらに、この前駆体を加熱することにより、水の作用による結合性とリグノフェノール誘導体の熱可塑性の発現により、成形体の全体において強固な一体性を発現させることができる。
【0008】
本発明において使用する、リグノフェノール誘導体は、本質的には、リグニンを含有するリグノセルロース系材料から得られる。リグニンを含有するリグノセルロース系材料としては、木質化した材料、主として木材である各種材料、例えば、木粉、チップ、廃材、端材等を挙げることができる。また、用いる木材の種類は、針葉樹、広葉樹等、種類を問わないで用いることができる。さらに、各種草本植物、それに関連する試料、例えば農産廃棄物等も用いることができる。
【0009】
リグノセルロース系材料から、リグノフェノール誘導体を得るには、かかるリグノセルロース系材料中のリグニンをフェノール誘導体で処理する。フェノール誘導体によるリグノセルロースからのリグノフェノール誘導体への変換過程の概略を図1に示し、図2及び図3に、特にクレゾールによるリグニンの構造変換例を示す。
【0010】
リグノセルロース系材料中のリグニンを、リグノフェノール誘導体として抽出する方法として各種方法がある。以下、3種類の方法を例示するが、本発明において用いるリグノフェノール誘導体は、これらの製法によってのみ得られるものではない。
第1の方法は、特開平2−233701号公報に記載されている方法である(図4参照)。例えば、木粉等のリグノセルロース系材料に液体状のフェノール誘導体(クレゾール等)を浸透させ、リグニンをフェノール誘導体により溶媒和させ、次に、リグノセルロース系材料を濃酸(一例として72%硫酸や濃リン酸など)を添加して、セルロース成分を溶解する。この方法によると、リグニンを溶媒和したフェノール誘導体と、セルロース成分を溶解した濃酸とが2相分離系を形成する。フェノール誘導体により溶媒和されたリグニンは、フェノール誘導体相が濃酸相と接触する界面においてのみ、酸と接触され、この際生じたリグニンの高反応サイト(α位)のカチオンが、フェノール誘導体により攻撃される。この結果、リグニンの芳香族環のα位炭素にフェノール誘導体が導入されたリグノフェノール誘導体がフェノール誘導体相に生成される。このフェノール誘導体相から、リグノフェノール誘導体が抽出される。抽出は、例えば、次の方法で行うことができる。すなわち、フェノール誘導体相を、大過剰のエチルエーテルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに溶解する。不溶画分画分を遠心分離により除去し、アセトン可溶画分を濃縮する。このアセトン可溶画分を、大過剰のジエチルエーテルに滴下し、沈殿を集める。この沈殿から溶媒留去した後、五酸化リン入りデシケータ中で乾燥し、リグノフェノール誘導体とする。なお、フェノール誘導体相(液相)をリグノフェノール誘導体含有組成物として使用することができる。このフェノール誘導体相には、炭水化物の他、酸も含まれ得る。なお、この液相中のフェノール誘導体を単に減圧蒸留などにより除去することもできる。
なお、図示はしないが、フェノール誘導体相(フェノール誘導体相と水相との双方(全反応液)であってもよい。)に過剰の水を投入して得られる不溶画分、あるいはその水洗浄後(脱酸)および/または乾燥画分(以下、これらの画分を総称して第1の粗精製画分という。)には、リグノフェノール誘導体を含有している。この粗精製画分には、さらに、炭水化物の他、完全に洗浄しない限り酸が含まれうる(特に、全反応液の場合)。また、未反応のフェノール誘導体も含まれうる。この第1の粗精製画分に、アセトンあるいはアルコールなどのリグノフェノール親和性溶媒を加えてリグノフェノール誘導体を可溶画分に抽出することもできる。なお、リグノフェノール親和性溶媒可溶画分を、そのままリグノフェノール誘導体含有組成物として、成形体の製造に用いることもできる。さらにこのときの不溶画分に、リグノフェノール誘導体が炭水化物などと共に含まれることもあり、この不溶画分を、第2の粗精製画分という。
【0011】
第2の方法を図5に例示する。この方法は、リグノセルロース系材料に、固体状あるいは液体状のフェノール誘導体を溶解した溶媒(例えば、エタノールあるいはアセトン)を浸透させた後、溶媒を留去する(フェノール誘導体の収着工程)。次に、このリグノセルロース系材料に濃酸を添加してセルロース成分を溶解する。この結果、第1の方法と同様、フェノール誘導体により溶媒和されたリグニンは、フェノール誘導体と濃酸とが接触する界面において、酸と接触し、フェノール誘導体により攻撃されて、リグノフェノール誘導体が生成される。
第2の方法では、この濃酸処理後の全反応液を過剰の水中に投入し、不溶画分中にリグノフェノール誘導体を得ることができる。この場合の不溶画分を、第3の粗精製画分という。この第3の粗精製画分には、リグノフェノール誘導体の他、セルロースなどの炭水化物を含むことになる。また、完全に洗浄しない限り、添加された酸やフェノール誘導体の一部を含有しうる。さらにこの不溶画分を水洗浄後(脱酸)画分および/または乾燥画分も第3の粗精製画分に含まれる。この粗精製画分を、遠心分離などにて集め、透析した上で乾燥することもできる。この乾燥物にアセトンあるいはアルコールなどのリグノフェノール親和性溶媒を加えてリグノフェノール誘導体を可溶画分に抽出することもできる。なお、このときの不溶画分には、炭水化物の他、リグノフェノール誘導体が含有されうる(以下、この画分を第4の粗精製画分という。)。さらに、この可溶画分を第1の方法と同様に、過剰のジエチルエーテル等に滴下して、リグノフェノール誘導体を不溶画分として得ることができる。この方法においても、同様に、アセトン可溶画分をリグノフェノール誘導体含有組成物として、成形体の製造に用いることができる。
なお、別法として、濃酸処理によって生成したリグノフェノール誘導体を液体フェノール誘導体にて抽出することができる。この液体フェノール誘導体相をそのまま粗リグノフェノール誘導体含有組成物とすることもできるし、添加したフェノール誘導体を留去することによっても粗リグノフェノール誘導体含有組成物とすることもできる。さらに、この液体フェノール誘導体相からのリグノフェノール誘導体の抽出も、第1の方法と同様にして行うこともできる。
【0012】
また、第3の方法として、特開2001−131201号公報に記載されるリグノフェノール誘導体の製造方法がある。この方法は、フェノール誘導体とリグノセルロース系物質及び酸を含む混合物と不活性低沸点疎水性有機溶媒とを混合し、得られた混合物を遠心分離により3層に分離し、3層のうちの中間層を回収する工程を含むことを特徴とするものである。また、予め、前記疎水性有機溶媒に溶解させたフェノール誘導体とリグノセルロース系物質とを混合して、過剰量の有機溶媒とフェノール誘導体とを除去し、残存した混合物と酸とを混合することによって、リグノセルロース系物質と酸とを反応させ、遠心分離して得られる中間層を回収する工程を含むことを特徴としている。このような中間層は、リグノフェノールを高濃度に有している。この中間層を、水で洗浄して、水不溶画分を回収することを適数回繰り返して脱酸することができる。得られた水不溶画分は、乾燥後、アセトンでリグノフェノール誘導体を抽出することができる。アセトン相は、濃縮乾固し、大過剰のジエチルエーテルに滴下し、不溶画分をさらにジエチルエーテルで洗浄し、溶媒を留去することにより、精製することができる。
【0013】
これらの方法においては、精製度が高いリグノフェノール誘導体を得るには、第2の方法が、なかでも特に後者、すなわち、リグノフェノール誘導体をアセトンあるいはアルコールにて抽出分離する方法が、フェノール誘導体の使用量が少なくてすむため、経済的である。また、この方法が、少量のフェノール誘導体で、多くのリグノセルロース系材料を処理できるため、リグノフェノール誘導体の大量合成に適している。
【0014】
これらの方法によれば、リグニンのフェニルプロパン単位の側鎖α位にフェノール誘導体が選択的に導入されたジフェニルプロパン単位を含む重合体が得られる。
【0015】
これらの方法に用いられるフェノール誘導体としては、1価のフェノール、2価のフェノール、3価のフェノール等を用いることができる、1価のフェノールとしては、例えば、フェノール、クレゾールなどのアルキルフェノール、メトキシフェノール、ナフトールを挙げることができる。2価のフェノールとしては、例えばカテコール、アルキルカテコール、レゾルシノール、アルキルレゾルシノール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン等を挙げることができる。3価のフェノールとしては、ピロガロール等を挙げることができる。このようなフェノール誘導体により合成されたリグノフェノール誘導体の疎水性は、リグノモノフェノール誘導体が最も疎水性が高く、リグノジフェノール誘導体、リグノトリフェノール誘導体の順に疎水性が低下する。このため、疎水性成形体の製造を意図する場合には、リグノフェノール誘導体の合成に際して1価フェノールをフェノール誘導体として用いるのが好ましく、特に、コスト及び安定性及び取り扱い易さを考慮するとクレゾールがより好ましい。
【0016】
なお、リグノフェノール誘導体は、リグノフェノール誘導体が含まれたリグノフェノール系成形体から回収されたリグノフェノール誘導体を用いることもできる。かかるリグノフェノール系成形体から、アセトン、エタノール、メタノール、ジオキサン、これらそれぞれと水の混合液、アルカリ溶液(アルカリ水溶液を含む)から選ばれた1種類以上の溶媒に浸すことにより、この溶媒中に、リグノフェノール誘導体は回収される。このリグノフェノール誘導体は、再利用可能である。この方法によると、リグノフェノール誘導体が繰り返し再利用することができ、資源の有効利用につながる。
【0017】
リグノフェノール誘導体を含有する組成物は、上記したリグノフェノール誘導体を含有している。本組成物は、リグノフェノール誘導体の発揮する粘結性により成形材料のバインダーあるいは接着材として機能することができる。
リグノフェノール誘導体自身は水に不溶である。リグノフェノール誘導体含有組成物を簡易に得るには、上記第1および第2の方法における、液体リグノフェノール誘導体相や粗リグノフェノール誘導体をそのまま本組成物とすることができる。すなわち、上記した第1〜第4の粗精製画分(懸濁液状の他沈殿物であってもよい)あるいはその乾燥物をそのまま用いることができる。なお、これらの粗精製画分をさらに水洗浄などして特に酸などの含有量を成形体において許容される範囲内に低減させておくこともできる。
【0018】
本発明におけるリグノフェノール誘導体含有組成物は、フェノール誘導体を含有することができる。フェノール誘導体を含有することにより、リグニン含有成形材料に対して本組成物をバインダーとして使用した場合に、このフェノール誘導体がリグニンと部分的に縮合し強固な高分子化合物が生成されて、成形体の強度を向上させることができる。フェノール誘導体としては、上記した各種フェノール誘導体の1種あるいは2種以上を含有することができる。
【0019】
さらに、本組成物は、酸を含有することができる。酸は、無機酸であっても有機酸であってもよいが、好ましくは、硫酸あるいはリン酸である。酸を含有している場合、リグニン含有成形材料に対してバインダーとして使用した場合に、リグニンとフェノール誘導体と酸とが共存することにより、加熱時あるいは加圧時に、リグノフェノール誘導体様化合物を生成することが期待され、このようなその場生成のリグノフェノール誘導体も、また成形体の強度の向上に寄与する。
【0020】
さらに、本組成物は、セルロースやヘミセルロース等の炭水化物(好ましくはOH基を有する炭水化物などの親水性炭水化物あるいは植物資源由来の炭水化物)を含有していることが好ましい。炭水化物が存在することにより、当該炭水化物自体が、セルロースを含有する材料との親和性があるために、セルロース含有材料間の水素結合を補強することができる。特に、親水性炭水化物においてはより強い親和性があるために補強効果も大きくなる。また、リグノフェノール誘導体と親水性の成形材料との親和性を向上し、成形体の強度向上に寄与する。さらに、炭水化物の存在により、加熱時、特に、水蒸気雰囲気下での加熱により、何らかの接着性化合物が生成され、成形体の強度向上が期待される。
特に、セルロースやヘミセルロースは、リグノフェノール誘導体の合成の出発原料として使用するリグノセルロース系材料が合成反応に伴ってリグニンとの結合が解けて、フェノール誘導体相あるいはこのフェノール誘導体相の水不溶画分に分配された成分として第1〜第4の粗精製画分に含有されうる。
【0021】
本組成物は、リグノフェノール誘導体の他に、フェノール誘導体、酸及び炭水化物のうち、少なくとも1種類を含有していることが好ましい。好ましくは、少なくとも炭水化物を含有している。
上記した、第1の方法及び第2の方法における第1〜第4の粗精製画分は、リグノフェノール誘導体以外の上記成分(フェノール誘導体、酸、及び炭水化物)の少なくとも1種類を含有している。特に、第1〜第4の粗精製画分は、リグノフェノール誘導体と炭水化物とを含有しているため、これらの画分は、本発明におけるリグノフェノール誘導体含有組成物の好ましい形態である。少なくとも効率よく本組成物を得る観点からは、第1及び第3の粗精製画分がより好ましい形態である。
【0022】
なお、リグノフェノール誘導体含有組成物は、固体、すなわち、粉末状態であっても、また、懸濁液状態であってもよい。複合化工程の必要に応じて必要な形態を採用することができる。
【0023】
本発明において使用する成形材料は特に限定しない。植物系、樹脂系、ガラス系、セラミックス等の各種成形材料を使用することができる。植物系成形材料としては、好ましくは、針葉樹、広葉樹、コウゾ、ケナフ、マニラ麻、ワラ、キビ等の草本植物等の各種植物資源を原料とする成形材料を使用することができる。このような成形材料の主成分は、リグノセルロースあるいはセルロースである。なお、植物資源由来材料としては、間伐材、剪定枝、バガス、新聞紙、ダンボール等の植物系廃棄物等由来の材料も包含している。
樹脂系材料としては、セルロース系高分子、乳酸系高分子、アルコール系高分子、アクリル系高分子など、天然由来あるいは人工的に得られた樹脂材料を使用することもできる。これらの樹脂材料にも、廃棄物由来の材料を包含している。
ガラス系材料としては、各種ガラス、強化ガラスなどを材料とすることができる。特に、ガラス系材料は、補強材料として使用することができる。
セラミックス系成形材料としては、各種酸化物系、炭化物系、窒化物系、あるいはこれらの複合系のセラミックスを材料とすることができる。セラミックス系材料も補強材料として使用することができる。
リグノフェノール誘導体の親和性を考慮すると、好ましくは植物系材料である、リグノセルロース系材料、セルロース系材料を主成分とする。
【0024】
成形材料の形態も特に限定しないで、ファイバー状、チップ状、粉状等の各種形状を採用することができる。入手容易性、成形性、強度等を考慮すると、好ましくは、ファイバー状である。特に、リグノセルロース系あるいはセルロース系のファイバーを使用することが最も好ましい。
セルロース系ファイバーとしては、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ、及びこれらのリサイクルパルプを使用することができる。
【0025】
本発明方法においては、リグノフェノール誘導体含有組成物と成形材料とを水相あるいは空気相を分散媒体として成形前駆体を形成する。
水相を分散媒体として混合する場合を図6に示す。この場合、予め、湿式解繊されている繊維を利用することができる。混合性を考慮すると、成形材料を予め、水に分散させて混合しておくことが好ましい。
リグノフェノール誘導体含有組成物は、粉末状で直接成形材料スラリーに添加することもできるが、予め、懸濁液状としておいて添加することもできる。この場合、粗リグノフェノール(不溶画分)としてそのまま添加することもできるし、一旦乾燥後、水に分散させて得た懸濁液として添加することもできる。
混合手段としては、従来の湿式プロセスに使用されている装置を利用することができる。
【0026】
空気相を分散媒体として混合する場合を図7に示す。この方法では、成形材料とリグノフェノール誘導体含有組成物とを空気中で混合する。この場合、ファイバー状の成形材料を使用する場合には、乾式解繊されたファイバー状成形材料を使用することが好ましい。空気相を介する混合工程では、従来の各種乾式プロセスに使用されている装置を利用することができる。
【0027】
水相あるいは空気相を介する混合工程のいずれにおいても、リグノフェノール誘導体自体は粒子状(固体)として供給されることが好ましい。粒子状で供給されることにより、混合工程の間、リグノフェノール誘導体粒子は成形材料と均一に混合され、成形材料に分散される。また、熱圧工程における成形前駆体内の移動・拡散が防止される。
【0028】
次いで、図6及び図7に示すように、成形材料とリグノフェノール誘導体含有組成物との混合工程で得られた混合物から成形前駆体を形成する。本明細書では、成形前駆体は、成形材料を3次元的に交絡させて一定の形状が保有するものをいうものとする。水相を分散媒体とする混合物の場合、成形前駆体は、通常、抄造によって得ることができる。また、空気相を分散媒体とする場合には、エアフェルティングやニードルパンチング等によって、成形前駆体を得ることができる。
【0029】
水相を分散媒体とする場合には、これらの成形前駆体を、乾燥することが一般的である。一般的には、乾燥には加圧を伴う。また、乾燥促進のために加熱も伴うことが多い。
乾燥及び加圧の過程で、水分が可塑剤として作用し、同時に成形材料間の水素結合による結合力を発生させることができる。
【0030】
次に、この成形前駆体を最終的に成形する。乾燥及び加圧によって、成形前駆体を強化し剛性を付与して最終成形体を得ることも可能であるが、さらに、加熱あるいは加熱及び加圧によって、その過程でリグノフェノールの熱可塑性と結合力を発現させることにより、より強固な剛性成形体を得ることができる。
成形前駆体においては、リグノフェノール誘導体の粒子が、均一に分散されているので、加熱により粒子が軟化し流動性を発揮することにより、均一に成形体内部に拡散した状態となる。この状態で硬化されることにより、リグノフェノール誘導体の結合力が有効に発現された成形体を得ることができる。したがって、加熱は、リグノフェノール誘導体の軟化温度以上に加熱することが好ましい。
この結果、耐水性が向上された成形体を得ることができる。また、切削加工などの後加工が容易に実施できる成形体を得ることができる。
【0031】
また、加熱によって、リグノフェノール誘導体含有組成物中に、フェノール誘導体を含有し、成形材料中にリグニンを含有する場合には、成形体の強度向上に寄与するようになる。これは、リグニンとフェノール誘導体との間で縮合反応が生じ、成形体内で3次元高次構造体が形成されることによるものと推測される。
さらに、リグノフェノール誘導体含有組成物中に、酸を含有している場合には、成形材料中のリグニンと、フェノール誘導体および/またはリグノフェノール誘導体と、酸との共存により、リグニンがリグノフェノール誘導体様に変換されて、これにより、成形体の強度が向上されるようになる。
リグノフェノール誘導体含有組成物中に、炭水化物を含有する場合には、特にセルロースやリグノセルロースなどの親水性高分子との親和性が向上される点において強度が向上されるようになる。
【0032】
また、加熱工程は、特に水分を付与することなく実施できるが、水の存在下で行うこともできる。加熱工程で、水蒸気が発生すれば、当該水蒸気が成形体内における水素結合のさらなる発現に寄与することができる。なお、水は、成形前駆体内部に本来的に存在するため、加熱工程を実施することにより、当該水素結合の発現は想定できる。なお、加熱工程を水の存在下において行うには、具体的には、成形前駆体を熱圧するための密閉された空間内で水蒸気を発生させるか、あるいは外部から供給するようにする。
【0033】
なお、各種成形材料とリグノフェノール誘導体とから成形体を製造するに際しては、用いる成形材料の種類によって、成形前の仮成形工程、あるいは成形方法を各種選択し、付加し、さらに、他の追加的工程も付加することができる。例えば、成形材料としてファイバー状のパルプを用いる場合には、成形体を形成するのに、湿式法あるいは乾式法があり、湿式法と乾式法では、仮成形方法等も異なっている。
【0034】
以上のようにして、本発明によれば、成形材料にリグノフェノール誘導体を均一に分散させた上でその熱可塑性を発現させることにより、成形体全体に均一にリグノフェノール誘導体により結合力を発現させて剛性成形体を得ることができる。また、水分を含有する状態、あるいは水蒸気雰囲気下で加熱、あるいは加熱および加圧することにより(上記乾燥工程、熱圧工程、水蒸気加熱工程など)では、水の可塑性発現と水素結合による結合力の発現とによって強度の高い剛性成形体を得ることができるようになっている。
【0035】
特に、リグノフェノール誘導体含有組成物が、フェノール誘導体、酸、及び炭水化物のいずれか1つ以上を含有する場合には、それぞれ得られる剛性成形体の強度が一層向上されることになる。また、フェノール誘導体で溶媒和されたリグノセルロース材料を濃酸と接触させて得られるリグノフェノール誘導体相に過剰の水を加えて得られる不溶画分画分をそのままあるいは乾燥粉末として利用することにより、リグノフェノール誘導体の製造工程を省略するとともに、廃棄物の排出も抑制して、リグニンおよびフェノール誘導体を有効利用することができる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明する。これらの実施例は、本発明を説明するための例示される具体例であって、本発明を限定するものではない。
【0037】
(実施例1:リグノフェノール誘導体含有組成物の調製)
リグノセルロース系材料として、針葉樹(ベイマツとニュージーランドマツとの混合木粉)と広葉樹(ブナ木粉)とを用いて、第2法によりリグノフェノール誘導体を合成し、粗リグノフェノール誘導体をリグノフェノール誘導体含有組成物として採取した。
まず、各木粉の脂分を常法に従いアセトンで抽出(2回)して、脱脂処理を行った。
脱脂後の各木粉において、リグニンC9 単位あたり3molのp−クレゾールを含むアセトン溶液を加え、よく攪拌して約1日放置した。1日後、収着むらを防ぐために、攪拌しながら、アセトンを留去し、p−クレゾールを収着させた。
【0038】
収着木粉に72%硫酸をよく攪拌しながら加えて、1時間攪拌し、予め硫酸量に対して10倍量の浄水を入れた容器に投入し、反応を停止させた。しばらく攪拌し、攪拌停止後、1日静置した。
1日経過後、上澄み液をデカンテーションし、再び浄水を加え、しばらく攪拌した。これをpHが6〜7になるまで繰り返し実施した。これにより、沈殿物(不溶画分)から酸と未反応のp−クレゾールの大部分が除去された。
酸洗浄後、不溶画分を40℃に設定した乾燥機にて過剰な水分が蒸発するまで乾燥し、その後、五酸化ニリン上で減圧乾燥を行い、乾燥物を得た。
【0039】
(実施例2:空気相を分散媒体とする成形前駆体の作製)
成形材料として、100%再生紙、段ボール、新聞紙、わら半紙を、それぞれ4mm×25mmのクロスカット・シュレッダーにて一次カットし、さらにレッチェ社製超遠心粉砕機を用いて単繊維まで解した。
【0040】
実施例1で調製した針葉樹由来及び広葉樹由来のリグノフェノール誘導体含有組成物(以下、粗リグノクレゾールという。本組成物は、炭水化物を約30wt%含有していた。)各50gと乾式にて解繊された各種繊維150gとをブレンダーにて均一に混合した。
底板をステンレス板、側面を木枠で240mm×240mmの型を作製し、この混合物を導入して、混合物の比重が均一となるようにフォーミングした。また、コントロールとして、各種ファイバーのみ150gを同様にしてフォーミングした。
各フォーミング後、手押しプレスで厚さを約10mmまで初期圧締して計8種の成形前駆体を得た。
【0041】
(実施例3:実施例2で作製した成形前駆体の熱圧工程)
初期圧締後の8種の成形前駆体を、密閉容器に入れて、密閉容器内に、水蒸気源として加圧含水させた木片を入れた。この密閉容器にステンレス製の蓋をして、温度150℃、15分、水蒸気雰囲気下で厚さ4.2mmまでプレスして熱圧工程を実施した。
熱圧工程実施後、熱圧成形体を取り出し、多孔質乾燥板に挟んで固定し、変形を抑制した。
【0042】
(実施例4:物性試験)
実施例3で得た3種の熱圧成形体につき、予め作成したファイバーモールド比重分布測定結果から、比重の安定しない端部から60mmまでを切り落とし、中心部から電動丸鋸にて20mm×90mmの試験片を6片切り出した。
▲1▼曲げ試験
島津製作所製AUTOGRAPHを用い、JIS A1408の試験法に準じて、中央集中荷重、スパン長を80mm、荷重変位速度2mm/minとして、曲げ試験を行った。荷重−たわみ曲線を測定し、この曲線から、曲げヤング係数(MOE)及び曲げ破壊係数(MOR)を算出した。
結果を、表1及び2に示す。
【0043】
▲2▼剥離強さ試験
剥離強さ試験は、島津製作所製AUTOGRAPHを用い、JIS A5905の試験法に準じて行った。ただし、試験片のサイズに対応させて、接着面を20mm×20mmの鋼のブロックを用いた。また、ブロックと試験片との接着には、2液性エポキシ樹脂を用いた。引張荷重速度を2mm/minとし、剥離破壊時の最大荷重を測定し、次の式によって剥離強さを算出した。結果を表3に示す。
剥離強さ(N/mm2)=P’/b×L
ただし、P’:剥離破壊時の最大荷重(N)
b:試験片の幅(mm)
L:試験片の長さ(mm)
【0044】
【表1】
【表2】
表1及び2に示すように、リグノフェノール誘導体含有組成物をバインダーとして含有する熱圧成形体の強度は、コントロールに対して顕著に高かった。
【0045】
【表3】
表3に示すように、いずれの試験片における剥離強さも十分なものであった。すなわち、MDFのJIS規格を超える結果が得られた。
【0046】
(実施例5:水相を分散媒体とする成形前駆体の作製)
100%再生紙を4mmのストレートカット・シュレッダーにかけたものを、水に浸して柔かくした後、ウルトラホモミキサーにかけ、粗解繊を行い、パルプスラリーを得た。
このパルプスラリー(パルプ量190g)に対して、実施例1で調製した粗リグノクレゾール(乳鉢にて微粉化したもの)40gを混合して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラクスT−50)にて単繊維となるまで解繊し、均一な混合パルプスラリーを得た。この各パルプスラリーを、100メッシュのステンレス製金網を備えるアクリル製抄造器にて240mm×240mmの板状に抄造した。さらにこの抄造体を、自作ステンレス製多孔質乾燥板にて7mm厚にそれぞれ予備圧締後、乾燥板をクリップで挟んで80℃に設定した送風乾燥機にて完全に乾燥して、成形前駆体を得た。
【0047】
(実施例6:実施例5で作製した成形前駆体の熱圧工程)
実施例5で得た成形前駆体を電動丸鋸にて20mm×90mmの試験片を切りだし、密閉容器内にセットし、合わせて水蒸気源として加圧含水させた木材を入れた。密閉容器にステンレス製の蓋をして、150℃で15分間、蒸気雰囲気下で厚さ4.2mmまでプレスした。プレス機は、太平製作所社製を用いた。プレス終了後、圧力容器内部の蒸気を開放し、サンプルを取り出した。それぞれの成形前駆体からの熱圧体を80℃に設定した送風乾燥機で乾燥させ、乾燥重量を測定した。また、デジタルノギスを用いて0.01mm単位までの寸法を測定し、比重を算出した。
【0048】
(実施例7:物性試験)
実施例6で得た2種の熱圧成形体につき、実施例3に示すのと同様の条件で曲げ試験を行い、曲げヤング係数(MOE)及び曲げ破壊係数(MOR)を算出した。結果を、表4に示す。
【表4】
【0049】
表4に示すように、2種の粗リグノクレゾールについていずれも十分に強い曲げヤング係数と曲げ破壊係数が得られた。これらの値は、実施例1で得た粗リグノクレゾール各50gを乾式で解繊した100%再生紙150gに対して混合して、この混合物200gを、150℃で15分間加熱加圧して得られた成形体のもっとも良好な曲げヤング係数及び曲げ破壊係数に対してそれぞれ平均で2.5倍程度高い結果であった。
【0050】
以上のことから、水相を分散媒体として製造した成形前駆体によれば、水相を分散媒体として成形材料の成形と同時にとリグノクレゾールとを混合しているために、成形体内部までリグノクレゾールが浸透しバインダー作用を発現するとともに、水分によって成形材料間の水素結合が有効に作用しているものと考えられる。
さらに、バインダー作用が発現する程度に熱圧することにより、熱圧時にプレス熱板に接する面でリグノクレゾールが熱融解したため、成形体表面に樹脂様の光沢及び表面平滑性を与えることができた。したがって、成形体の製造後に、表面処理等を特にしなくても光沢のあるボードを得られることがわかった。
【0051】
(実施例8:水相を分散媒体とする他の成形前駆体の作製)
100%再生紙を4mmのストレートカット・シュレッダーにかけたものを、水に浸して柔かくした後、ウルトラホモミキサーにかけ、粗解繊を行い、パルプスラリーを得た。
このパルプスラリー(パルプ量150g)に対して、実施例1で調製した粗リグノクレゾール(針葉樹系のもののみである。乳鉢にて微粉化したもの)150gを混合して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラクスT−50)にて単繊維となるまで解繊し、均一な混合パルプスラリーを得た。この各パルプスラリーを、100メッシュのステンレス製金網を備えるアクリル製抄造器にて240mm×240mmの板状に抄造した。さらにこの抄造体を、自作ステンレス製多孔質乾燥板にて7mm厚にそれぞれ予備圧締後、乾燥板をクリップで挟んで80℃に設定した送風乾燥機にて完全に乾燥して、成形前駆体を得た。
【0052】
(実施例9:実施例8で作製した成形前駆体の熱圧工程)
実施例8で得た成形前駆体を電動丸鋸にて20mm×90mmの試験片を切りだし、開放系下で、140℃で1時間プレスし、厚さ4.2mmとした。プレス機は、太平製作所社製を用いた。プレス終了後、サンプルを取り出し、重量を測定した。また、デジタルノギスを用いて0.01mm単位までの寸法を測定し、比重を算出した。
【0053】
(実施例10:物性試験)
実施例9で得た1種の熱圧成形体につき、実施例3に示すのと同様の条件で曲げ試験を行い、曲げヤング係数(MOE)及び曲げ破壊係数(MOR)を算出した。結果を、表5に示す。
【表5】
【0054】
表5に示すように、十分に強い曲げヤング係数と曲げ破壊係数が得られた。これらの値は、実施例1で得た粗リグノクレゾール各50gを乾式で解繊した100%再生紙150gに対して混合して、この混合物200gを、150℃で15分間加熱加圧して得られた成形体のもっとも良好な曲げヤング係数及び曲げ破壊係数に対してそれぞれ平均で3倍程度、8倍程度高い結果であった。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、リグノフェノール誘導体を成形材料と複合化して成形体を得るのに際して、リグノフェノール誘導体の機能を高発現させることのできる複合化技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フェノール誘導体によるリグニンの変換過程を示す図である。
【図2】リグノクレゾールによるリグニンの構造変換例を示す図である。
【図3】リグノクレゾールによるリグニンの構造変換例を示す図である。
【図4】リグノフェノール誘導体の製造工程の一例を示す図である。
【図5】リグノフェノール誘導体の製造工程の他の一例を示す図である。
【図6】乾式解繊法による複合化工程を示す図である。
【図7】湿式解繊法による複合化工程を示す図である。
Claims (15)
- 成形体の製造方法であって、
フェノール誘導体が添加された植物資源由来材料と濃酸とを接触して得られるリグノフェノール誘導体を含有する組成物と成形材料とを含む成形前駆体を、空気相又は水相を分散媒体として形成する工程と、
前記成形前駆体の成形空間内で水蒸気を発生させるかあるいは該成形空間の外部から水蒸気を供給しつつ前記成形前駆体を成形する工程と、
を備える、製造方法。 - 前記成形工程は、加圧及び加熱を伴う工程である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記成形材料は、植物系成形材料である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記成形材料は、植物系成形材料は、セルロース系材料又はリグノセルロース系材料である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記リグノフェノール誘導体含有組成物は、炭水化物及び/又はフェノール誘導体を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記リグノフェノール誘導体含有組成物は、フェノール誘導体と酸とを含有する、請求項5に記載の製造方法。
- 前記リグノフェノール誘導体含有組成物は、フェノール誘導体で溶媒和された植物資源由来材料を濃酸と接触させた後の混合物に過剰の水を添加して得られる水不溶画分を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 前記リグノフェノール誘導体含有組成物は、フェノール誘導体で溶媒和された植物資源由来材料を濃酸と接触させた後の混合物に過剰の水を添加して得られる水不溶画分のリグノフェノール誘導体親和性溶媒に対する不溶画分を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 前記植物資源由来材料に添加されるフェノール誘導体はクレゾールである、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- フェノール誘導体が添加された植物資源由来材料と濃酸とを接触して得られるリグノフェノール誘導体と、
炭水化物及び/又はフェノール誘導体と、
を含む成形用バインダーであって、
フェノール誘導体で溶媒和された植物資源由来材料を濃酸と接触させた後の混合物に過剰の水を添加して得られる水不溶画分のリグノフェノール誘導体親和性溶媒に対する不溶画分、
を含有する、成形用バインダー。 - フェノール誘導体と酸とを含有する、請求項10に記載の成形用バインダー。
- フェノール誘導体で溶媒和された植物資源由来材料を濃酸と接触させた後の混合物に過剰の水を添加して得られる水不溶画分を含有する、請求項10又は11に記載の成形用バインダー。
- 前記植物資源由来材料に添加されるフェノール誘導体はクレゾールである、請求項10〜12のいずれかに記載の成形用バインダー。
- 成形体であって、
請求項1〜9のいずれかに記載の成形体の製造方法によって得られる、成形体。 - 前記成形体の成形材料は、セルロース系材料又はリグノセルロース系材料である、請求項14に記載の成形体。
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