JP2000069954A - 分離型混合培養法 - Google Patents

分離型混合培養法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 複数の培養槽を用い、それらの間をフィルタ
ーを介した送液チューブで連結する、複数種の細胞を分
離して混合培養する方法において、通過する濾過培地流
量が大きく、フィルターの目詰まりも少ない培養法、及
びその培養法に適した分離型混合培養装置を提供する。 【解決手段】 セラミックフィルターを両端付近に装着
した送液チューブからなる濾過モジュールにより複数の
培養槽を相互に連結し、濾過モジュールに設けられた送
液ポンプを一定期間毎に反転させながら連続運転するこ
とから成る培養法、及び培養装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数種の細胞を培養す
る場合ないしは当該複数種の細胞の培養生産物を得る場
合において、複数種の細胞が同一培養槽に混在すること
による培養効率の低下ないしは培養生産物の生産効率の
低下を防ぐ目的で、複数種の細胞を各々一種づつ、一つ
の培養槽で培養し、両端またはその付近にセラミックフ
ィルターを装着したチューブからなる濾過モジュール
で、各培養槽を相互に連結して、ポンプによって培地の
みを交互に交換する、ことから成る細胞を分離して混合
培養する方法を提供する。更に、本発明は、上述の培養
方法に適した分離型混合培養装置を提供する。
【0002】本発明の細胞の培養法は、複数種の細胞を
混合して培養する際に、種類が異なる細胞のお互いの培
養特性に及ぼし合う影響を解析し、培養プロセスの効率
化、適正化をはかるための試験、研究目的にも使用でき
る。
【0003】
【従来の技術】複数種の細胞を同一培養槽内で混合培養
し、当該混合培養物から細胞ないしはその生産物を得る
場合は多い。こういった混合培養を行うのは、例えば、
一方の細胞種の代謝産物を他方の細胞種が別の物質に変
換する場合、あるいは一方の細胞種が生産する増殖促進
因子が、他方の細胞種の増殖を促進する場合などが考え
られる。
【0004】しかし、両細胞の培養特性や代謝産物の生
産条件が異なっている場合、両細胞を同一培養槽、すな
わち同一培養条件下で培養することは、培養効率や培養
産物の生産性の大幅な低下をもたらす場合がある。例え
ば、一方の微生物が他方の微生物の増殖促進因子を生産
することを利用して、2種の微生物を混合培養する場合
があるが、一方が好気性菌であり他方が嫌気性菌である
場合、同一培養槽で2種類の微生物を好気条件下あるい
は嫌気条件下で混合培養しても、適切な培養条件あるい
は生産条件とはならない。
【0005】また、複数の細胞種を混合培養した場合、
用いた細胞種間でお互いの培養特性に影響を与え合い、
結果として培養効率および生産物の生産性や品質に好ま
しくない影響を与える場合があり、そのような場合に
は、その原因の解明と、それを基にしたプロセスの適正
化を図る必要が生じる。
【0006】このような課題を克服するために、2つ培
養槽の間を濾過モジュールを介して培養液のみを循環さ
せる各種の培養装置が提案されている。すなわち、ホロ
ーファイバーを使用したクロスフロー方式(Journal of
Fermentation and Bioengineering, 84(1997), 59-6
4、特開平8-66178)、およびメンブレンフィルターを介
した混合培養装置(江畑朋治ら、生物化学工学会平成3
年度大会要旨集、47頁)がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上に記載の混合培養装
置の問題点はホローファイバーあるいはメンブレンフィ
ルターによる濾過効率が著しく低い点にある。例えば、
上記のホローファイバーを用いたクロスフロー方式の濾
過装置では、単位濾過面積当たりの濾過流量は1ml/h/c
m2と限定されたものであり、両培養槽中の培地の混和速
度は著しく低いといわざるを得ず、培地のみを交換する
混合培養という目的を十分に達成できない。またホロー
ファイバーあるいはメンブレンフィルターに対して一方
向に培養液を濾過する結果、これらの濾過担体が目詰ま
りを起こし、さらに濾過流量が低下するという問題もあ
る。
【0008】上記メンブレンフィルターは単位面積あた
りの濾過流量がホローファイバーよりも更に低いことが
最大の問題点である。この問題点をある程度解消したホ
ローファイバーにおいても濾過方向が一方向であること
から、培養液中の細胞によって濾過担体が目詰まりを起
こして濾過流量が低下するという問題が起きる。いずれ
にしても、上に記載の混合培養装置において両培養槽の
培地を迅速に混和して、実質上両培養槽の培養液組成を
均質にするためには、上記ホローファイバーやメンブレ
ンフィルターの濾過担体よりもはるかに濾過流量の高い
濾過担体が必要である。また、このような分離混合培養
法を長時間、安定に連続運転可能にするためには、細胞
による濾過担体の目詰まりを起こさないような濾過方法
の開発も望まれいた。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、濾過流量
の大きい濾過担体を鋭意研究した結果、濾過流量が大き
く、洗浄や殺菌が容易で、耐久性にも優れたセラミック
フィルターを両端またはその付近に装着したチューブか
ら成る濾過モジュールを作成した。この濾過モジュール
で2つの培養槽を連結し、チューブに装着したポンプに
よって両培養槽の培地のみを交互送液して迅速に交換で
きる分離型混合培養装置を開発した。具体的には、図1
に示すような装置である。本発明は、このような分離混
合培養装置、およびそれを使用することによる、複数の
培養槽中の培地組成が相互に均質であり、長時間安定に
連続培養可能な分離混合培養法を提供するものである。
【0010】上記の培養装置において、濾過モジュール
に設けられた送液ポンプにより、培養液の送液方向を一
定期間毎に反転させて運転することにより、両培養槽中
の培地組成が迅速に均質化され、同時に濾過液自身を用
いて定期的にフィルターの逆洗を行うことになり、フィ
ルターの目詰まりを防ぐことができた。この濾過モジュ
ールを用いた場合の単位面積当たりの濾過流量は、89
ml/h/cm2(濾過面積34cm2)とホローファイバーの1m
l/h/cm2 に比較して著しく大きく、2つに分離された培
養槽間の培地のみの交換を迅速に行うことができた。
【0011】本発明の培養方法の実施に適した培養装置
の該略図を図1に示した。
【0012】図1の上段に示した本発明の装置は、各々
撹拌用モーター(5)によって駆動される撹拌機(2)
を備えた2つの培養槽(1)、および両培養槽を連結す
るセラミック濾過モジュールから構成される。このモジ
ュールはセラミックフィルター(3)を両端に装着した
送液チューブ(6)及び送液チューブの途中に設けられ
た送液ポンプ(7)から成る。培養時には、両培養槽中
の培養液(4)を撹拌しながら、適切な培養条件下で培
養を行う。培養中、送液ポンプ(7)を作動して、培地
を一定時間毎に交互に方向を反転して送液する。この送
液により、各培養液(4)はセラミックフィルター
(3)で濾過されて細胞は培養液中に留まり、培地のみ
が他方の培養槽に送られ、その培養槽内の培養液と混合
される。送液方向が反転すると、セラミックフィルター
から排出される培地により、フィルター表面が逆洗され
るため、セラミックフィルターの細胞等による目詰まり
が防止される。
【0013】図1の下段には、別の態様の培養装置を示
している。すなわち、前の装置に比較して、濾過モジュ
ールを2本使用して両培養槽が連結されている。各々の
送液チューブには送液ポンプが設けられている。2つの
ポンプを相互に相反する方向に培溶液を送液することに
よって、両培養槽の液量の変化をなくし、しかも、より
迅速な培地の交換を行うこともできる。
【0014】図示しないが、3つ以上の培養槽のそれぞ
れを1本以上の当該濾過モジュールで相互に連結し、同
様の方法で各培養槽間の培地のみを交換することによ
り、3つ以上の細胞種の分離型混合培養装置も可能であ
る。
【0015】図1に示すような、培養装置を使用して両
培養槽で異なる2種類の酵母をそれぞれ培養したとこ
ろ、両培養槽間で酵母の混入もなく、両培養液の組成も
実質上均一であり、両種の酵母を同一培養槽で混合培養
したときよりも酵母の増殖速度が速いことが確認され
た。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例にて説明するが、本発
明の技術範囲は、これらの技術範囲に限定されるもので
はない。
【0017】[実施例1]−培養槽の培地交換能力 セラミックフィルター(マルチポアロンAD-1、三井研削
砥石社製)をチューブの両端に装着した濾過モジュール
を作成した。この濾過モジュールのチューブ部分にペリ
スタリック方式のポンプを装着し、2つの培養槽を連結
して図1に示すような分離型混合培養装置を作成した。
【0018】当該培養装置の両培養槽間の培地交換能力
を確認するため、グルコース溶液を用いて培地交換を行
い、両培養槽中の混和状態を測定した。セラミックフィ
ルター濾過モジュールを1セット装着した場合(濾過速
度3L/h)と3セット装着(濾過速度15L/h)した場合
を比較した。グルコース濃度が2%と0%の液を、各培養
槽に各々3Lづつ入れ、500ml送液する毎にペリスタ
ポンプの運転方向を切り替えながら運転した。各培養槽
中のグルコース濃度をグルコスタット法で経時的に測定
した。
【0019】図2に示すように各培養槽中のグルコース
濃度は、運転条件から求めたシュミレーションの結果と
ほぼ同一の挙動を示し、濾過流量を増加させることに伴
い混和速度が上昇し、両培養槽間での迅速な培地の交換
が確認された。
【0020】[実施例2]−分離型混合培養装置による
異種酵母の培養 2種類の醸造用酵母が、混合培養中にお互いの培養特性
に及ぼす影響を分離型培養装置で評価した。醸造用酵母
A株とB株(どちらも Saccharomycescerevisiae に分
類される)を、上記の分離型混合培養装置を用い菌体同
士は分離した状態で混合培養した場合と、同一培養槽の
中で混合培養した場合で酵母増殖特性を比較した。
【0021】糖源として、グルコース2%およびマルト
ース7%を含む完全合成培地を用いた。培養液量は3Lと
し、A株、B株を培地の容量の各々0.5%と0.25%
に植菌し、培養温度は 27℃で、通気を行わずに攪拌
培養を行った。培養槽間での培地交換の流量は3L/hで
行った。培養中の菌数の測定は、培養液を希釈して寒天
平板培地にまき、生じたコロニー数により生菌数を算出
した。同一培養槽でA株とB株を混合培養した場合、個
々の菌株の菌数測定は、色素培地上でのA株とB株のコ
ロニーの発色の違いを利用して行った。
【0022】A株、B株各々の増殖挙動を図3に示す。
分離型培養装置を使用してA株とB株間の接触無しに混
合培養を行わせた場合は、両株を同一培養槽で混合培養
を行った場合に比べ、特にB株の増殖速度が増加してい
ることが確認された。これらの醸造用酵母2株では同一
培養槽で混合培養を行うことにより、特にB株の増殖量
が低下することが明らかになった。また、分離型培養装
置によって両株を培養した場合、一方の株を培養した培
養槽に他方の菌株の混入が無いことを、上記色素培地に
よって確認した。
【0023】
【発明の効果】本発明の分離型混合培養装置による細胞
の培養方法により、同一培養槽で複数種の細胞を混合培
養した場合の培養効率の低下や培養産物の生産効率の低
下を防ぐことができ、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 分離型混合培養装置の概略図であり、上段は
濾過モジュール1本で両培養槽を連結した場合、下段は
濾過モジュール2本で両培養槽を連結した場合を示す。 1:培養槽 2:撹拌機 3:セラミックフィルタ
ー 4:培養液 6:送液チューブ 7:送液ポンプ
【図2】 分離型混合培養槽でのグルコース溶液の混和
状態を示すグラフであり、左側は理論値から、右側は実
験値から作成したものである。
【図3】 分離型混合培養装置で2種類の酵母を培養し
たときの生菌数の変化を示すグラフであり、左側はA株
を培養した培養槽の生菌数を、右側はB株を培養した培
養槽の生菌数を示している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B029 AA02 BB07 CC01 DA05 DF05 DG06 4B065 AA72X BC25

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の培養槽を用意し、それらの間を両
    端付近にセラミックフィルターを装着したチューブで連
    結し、このチューブを介して、双方向に送液可能なポン
    プにより培養槽内の培地のみを交互に交換することによ
    って、各培養槽の細胞は混合することなしに複数種の細
    胞を分離して混合培養する細胞の培養方法。
  2. 【請求項2】 所望の時間毎に送液方向を変えることに
    より、培養している細胞によるセラミックフィルターの
    目詰まりを防止することを特徴とした、請求項1に記載
    の培養法。
  3. 【請求項3】 細胞が2種類の酵母であり、培養槽が2
    つであり、その各々の培養槽で1種類の酵母を培養する
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の培養法。
  4. 【請求項4】 複数の培養槽、該複数の培養槽のそれぞ
    れを連結する両端にセラミックフィルターを装着した送
    液チューブ、該チューブに設けられた双方向に送液可能
    なポンプを構成要素として含むことを特徴とする分離型
    混合培養装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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